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特許7621635三次元発光ダイオードを備えた光電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】三次元発光ダイオードを備えた光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10H 20/81 20250101AFI20250120BHJP
【FI】
H01L33/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020536272
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2018083890
(87)【国際公開番号】W WO2019129473
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】1763316
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515113307
【氏名又は名称】アルディア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】チョウルフィアン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】アムスタット,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ジレー,フィリップ
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】芝沼 隆太
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/208993(WO,A1)
【文献】特表2016-521459(JP,A)
【文献】特表2015-511776(JP,A)
【文献】特表2017-503333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
H01L 31/00-31/02
H01L 31/08-31/10
H01L 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイスであって、
基板と、
主にガリウム及び窒素で形成され、前記基板に置かれているワイヤ状又は角錐状の三次元半導体素子と、
前記三次元半導体素子の側壁を少なくとも部分的に覆って電磁放射線を放射することができ、主にガリウム及び窒素で形成された少なくとも第1の層、並びに主にガリウム、窒素及びインジウムで形成された少なくとも第2の層の積層体を有するアクティブ領域と、
前記アクティブ領域を覆って、主にガリウム、窒素、インジウム及びアルミニウムで形成された電子遮断層と
を備えており、
前記電子遮断層のインジウム及びアルミニウムの両方の質量比率が、前記基板との距離が増加するにつれていずれも増加又はいずれも減少し、
前記光電子デバイスは、前記電子遮断層を覆って、主にガリウム及び窒素で形成された層を更に備えていることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項2】
前記電子遮断層のインジウムの含有量が0.1 ~10%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記電子遮断層のアルミニウムの含有量が10~40%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記電子遮断層のバンドギャップの最大変化が、インジウムを含まない場合のバンドギャップの最大変化より小さいことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は一般に、半導体材料から構成された三次元発光ダイオードを備えた光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
画像の画素は、光電子デバイスによって表示される画像の単位素子に相当する。カラー画像を表示するために、光電子デバイスは一般に、画像の各画素を表示すべく表示サブ画素とも称される少なくとも3つの要素を備えており、これらの要素は実質的に単一色(例えば赤、緑及び青)で光放射線を夫々放射する。3つの表示サブ画素によって放射される放射線を重ね合わせることにより、表示画像の画素に対応する色付けの感覚が観察者に与えられる。この場合、画像の画素を表示するために使用される3つの表示サブ画素によって形成される集合体が光電子デバイスの表示画素と称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
三次元発光ダイオード(つまりLED )の形成を可能にする三次元半導体素子を備えた光電子デバイスがある。各発光ダイオードは、三次元半導体素子の側壁を覆うアクティブ領域を有している。アクティブ領域は、発光ダイオードによって放射される放射線の大部分を放射する発光ダイオードの領域である。アクティブ領域は電子遮断層(EBL) で覆われている。EBL の製造中、ある元素の含有量がEBL に亘って均一ではない場合がある。同様に、アクティブ領域は正孔遮断層(HBL) を覆ってもよく、ある元素の含有量がHBL に亘って均一ではない場合がある。このため、アクティブ領域に供給する電流が均一に分散しない場合がある。従って、アクティブ領域によって放射される放射線の強度がアクティブ領域に亘って均一ではない場合があり、発光ダイオードの効率は最適に及ばない場合がある。
【0004】
従って、実施形態の目的は、前述した光電子デバイスの不利点を少なくとも部分的に克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、実施形態は、光電子デバイスであって、
基板と、
主に第1の化学元素及び第2の化学元素で形成され、前記基板に置かれている三次元半導体素子と、
前記三次元半導体素子の側壁を少なくとも部分的に覆って、主に前記第1の化学元素及び前記第2の化学元素で形成された少なくとも第1の層、並びに主に前記第1の化学元素、前記第2の化学元素及び第3の化学元素で形成された少なくとも第2の層の積層体を有するアクティブ領域と、
前記アクティブ領域を覆って、主に前記第1の化学元素、前記第2の化学元素、前記第3の化学元素及び第4の化学元素で形成された第3の層と
を備えており、
前記第3の層の前記第3の化学元素及び前記第4の化学元素の質量比率が、前記基板との距離が増加するにつれて増加又は減少し、
前記光電子デバイスは、前記第3の層を覆って、主に前記第1の化学元素及び前記第2の化学元素で形成された第4の層を更に備えていることを特徴とする光電子デバイスを提供する。
【0006】
実施形態によれば、前記アクティブ領域は電磁放射線を放射することができ、前記第3の層は電荷担体遮断層である。
【0007】
実施形態によれば、前記第3の層の前記第3の化学元素の含有量が0.1 ~10%の範囲内である。
【0008】
実施形態によれば、前記第3の層の前記第4の化学元素の含有量が10~40%の範囲内である。
【0009】
実施形態によれば、前記第1の化学元素はIII 族元素である。
【0010】
実施形態によれば、前記第1の化学元素はガリウムである。
【0011】
実施形態によれば、前記第2の化学元素はV 族元素である。
【0012】
実施形態によれば、前記第2の化学元素は窒素である。
【0013】
実施形態によれば、前記第3の化学元素はIII 族元素である。
【0014】
実施形態によれば、前記第3の化学元素はインジウムである。
【0015】
実施形態によれば、前記第4の化学元素はIII 族元素である。
【0016】
実施形態によれば、前記第4の化学元素はアルミニウムである。
【0017】
実施形態によれば、前記三次元半導体素子はワイヤ状である。
【0018】
実施形態によれば、前記三次元半導体素子は角錐状である。
【0019】
実施形態によれば、前記第3の層のバンドギャップの最大変化が、前記第3の化学元素を含まない同一の層のバンドギャップの最大変化より小さい。
【0020】
実施形態によれば、前記第3の層は電子遮断層又は正孔遮断層である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
前述及び他の特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【0022】
図1】三次元発光ダイオードを備えた光電子デバイスを示す部分的な断面略図である。
図2】発光ダイオードが形成された基板との距離に応じた、図1に示された発光ダイオードの層の内の1つのアルミニウム含有量の変化の曲線及びバンドギャップの変化の曲線を示す図表である。
図3】発光ダイオードが形成された基板との距離に応じた、図1に示された発光ダイオードの層の内の1つのアルミニウム含有量及びインジウム含有量の変化の曲線並びにバンドギャップの変化の曲線を示す図表である。
図4】発光ダイオードが形成された基板との距離に応じた、図1に示された発光ダイオードの層の内の1つのバンドギャップ(eV)の、試験により得られた変化の曲線を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
同一の要素は様々な図面において同一の参照番号で示されており、更に様々な図面は正しい縮尺で示されていない。明瞭化のために、記載された実施形態の理解に有用な工程及び要素のみが示され詳述されている。特に、以下に記載される光電子デバイスを制御するための手段は、当業者の技能の範囲内であり、説明されていない。
【0024】
以下の記載では、「上側」、「下側」などの相対位置を表す用語に言及する場合、図面における該当する要素の向きを指す。「約」及び「実質的に」という用語は、該当する値のプラスマイナス10%、好ましくはプラスマイナス5%の許容値を示すために本明細書に使用されている。
【0025】
本開示は、発光ダイオードのアクティブ領域が三次元形状、例えばマイクロワイヤ、ナノワイヤ又は角錐の形状を有する半導体素子上に形成されているラジアルタイプの三次元形状を有する発光ダイオードを備えた光電子デバイスに関する。
【0026】
「マイクロワイヤ」又は「ナノワイヤ」という用語は、所望の方向に、例えば円筒状、円錐状又はテーパ状の細長い形状の三次元構造を表し、三次元構造は、5nm~2.5 μmの範囲、好ましくは50nm~2.5 μmの範囲の小寸法と称される少なくとも2つの寸法と、小寸法の内の最大値以上であり、好ましくは最大値の5倍以上であり、更に好ましくは最大値の10倍以上である大寸法と称される第3の寸法とを有する。ある実施形態では、小寸法は、約1μm以下であってもよく、好ましくは100 nm~1μmの範囲内であってもよく、更に好ましくは100 nm~800 nmの範囲内であってもよい。ある実施形態では、夫々のマイクロワイヤ又はナノワイヤの高さは50nm以上であってもよく、好ましくは50nm~50μmの範囲内であってもよく、より好ましくは1μm~10μmの範囲内であってもよい。ワイヤの底面は、例えば楕円形、円形又は多角形の形状を有し、特には三角形、矩形、正方形又は六角形の形状を有する。
【0027】
以下の記載では、「ワイヤ」という用語は「マイクロワイヤ」又は「ナノワイヤ」を意味すべく用いられている。
【0028】
以下の記載では、角錐又は角錐台という用語は、角錐形状を有する三次元構造を表す。角錐形構造は、先端が切り取られた形状であってもよく、すなわち、円錐形の先端がなく、平坦な領域と取り替えられている。角錐の底面は、辺寸法が100 nm~10μmであり、好ましくは1μm~3μmである多角形内に内接している。角錐の底面を形成する多角形は六角形であってもよい。角錐の底面と頂点又は頂部の平坦部との間の角錐の高さは100 nm~25μmの範囲内、好ましくは1μm~10μmの範囲内である。
【0029】
図1は、電磁放射線を放射することができる光電子デバイス10を示す部分的な断面略図である。
【0030】
光電子デバイス10は、平行な面14及び面16を有する、例えば半導体の基板12を備えている。面14は第1のバイアス電極18と接している。
【0031】
複数の半導体素子20(これらの半導体素子20の内の1つが図1に示されている)が基板12の面16と接している。図1の例では、各半導体素子20は基板12から延びているワイヤの形状を有している。しかしながら、半導体素子20は別の三次元形状を有してもよい。
【0032】
電気絶縁層22が基板12の面16を覆っており、各ワイヤ20の下方部分、すなわち基板12に最も近い各ワイヤ20の部分を囲んでいる。
【0033】
各ワイヤ20の上方部分の側壁、すなわち絶縁層22に囲まれていない部分は、アクティブ領域24で少なくとも部分的に覆われており、ここでは完全に覆われている。
【0034】
アクティブ領域24は電子遮断層26、つまりEBL で覆われている。
【0035】
EBL 26は、半導体層28と、第2の電極を形成する導電層30とで覆われている。
【0036】
ワイヤ20、アクティブ領域24、EBL 26及び半導体層28によって形成された集合体が発光ダイオードを形成している。電圧が電極18と電極30との間に印加されると、光放射線がアクティブ領域24によって放射される。複数の発光ダイオードが基板12上に形成される場合、発光ダイオードは直列及び/又は並列に接続されてもよく、発光ダイオードの集合体を形成してもよい。特に、導電層30は、複数の発光ダイオードの半導体層28を覆ってもよい。同様に、電子遮断層26及び半導体層28は複数のワイヤ20のアクティブ領域24を覆ってもよい。光電子デバイスの発光ダイオードの数は1から数億の範囲内であってもよい。
【0037】
第1のバイアス電極18は、基板12の面14に延びる導電層に相当してもよい。第1のバイアス電極18を形成する材料は、例えばニッケルシリサイド(NiSi)、アルミニウム(Al)、アルミニウムシリサイド(AlSi)、チタン(Ti)又はチタンシリサイド(TiSi)である。
【0038】
基板12はモノブロック構造に相当してもよく、又は別の材料で形成された支持体を覆う層に相当してもよい。基板12は、半導体基板であり、例えばシリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、III-V 族化合物又はII-VI 族化合物、例えばZnO で形成された基板であることが好ましい。基板12は更にサファイア又はグラフェンで形成されてもよい。基板12は単結晶シリコン基板であることが好ましい。基板は、マイクロエレクトロニクスで実施される製造方法と適合する半導体基板であることが好ましい。基板12は、SOI とも称されるシリコン・オン・インシュレータタイプの多層構造に相当してもよい。基板12は高濃度にドープされてもよく、低濃度にドープされてもよく、又はドープされなくてもよい。
【0039】
II族化学元素の例として、IIA 族化学元素、特にベリリウム(Be)及びマグネシウム(Mg)、並びにIIB 族化学元素、特に亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)が挙げられる。VI族化学元素の例として、VIA 族化学元素、特に酸素(O) 及びテルル(Te)が挙げられる。II-VI 族化合物の例として、ZnO 、ZnMgO 、CdZnO 、CdZnMgO 、CdHgTe、CdTe又はHgTeが挙げられる。一般に、II-VI 族化合物の化学元素は異なるモル分率で組み合わせられてもよい。
【0040】
絶縁層22は誘電体材料で形成されてもよく、又は、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SixNy 、ここでxは略3であり、yは略4であり、例えばSi3N4 )、(特に一般的な式SiOxNyの)酸窒化シリコン(例えばSi2ON2)、酸化ハフニウム(HfO2)若しくはダイヤモンドの誘電体材料の積層体を有してもよい。例として、絶縁層22の厚さは1nm~20μmの範囲内であり、好ましくは5nm~150 nmの範囲内である。
【0041】
各半導体素子20は基板12の面16と接している。変形例として、半導体素子20の成長を有利にする材料で形成されたシード層が、基板12と半導体素子20との間に配置されてもよい。例として、シード層を形成する材料は、化学元素の周期表のIV列、V 列又はVI列の遷移金属の窒化物、炭化物又はホウ化物、或いはこれらの化合物の組合せであってもよい。例として、シード層は、窒化アルミニウム(AlN) 、酸化アルミニウム(Al2O3) 、ホウ素(B) 、窒化ホウ素(BN)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN) 、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN) 、ハフニウム(Hf)、窒化ハフニウム(HfN) 、ニオブ(Nb)、窒化ニオブ(NbN) 、ジルコニウム(Zr)、ホウ化ジルコニウム(ZrB2)、窒化ジルコニウム(ZrN) 、炭化シリコン(SiC) 、炭窒化タンタル(TaCN)、又はMgxNy の形態の窒化マグネシウム(ここでxは略3であり、yは略2であり、例えばMg3N2の形態の窒化マグネシウム)で形成されてもよい。シード層は、基板12の導電型と同一の導電型でドープされてもよい。シード層の厚さは、例えば1~100 ナノメートルの範囲内であり、好ましくは10~30ナノメートルの範囲内である。変形例として、シード層は基板12の面16に置かれる複数のシードパッドと置き換えられ、各ワイヤ20はシードパッドの内の1つに置かれてもよい。
【0042】
半導体素子20は、主に第1の化学元素及び第2の化学元素を含む化合物、特に二元化合物で形成されてもよい。第1の化学元素はIII 族元素であってもよい。第2の化学元素はV 族元素であってもよい。従って、半導体素子20はIII-V 族化合物で形成されてもよい。
【0043】
III 族化学元素の例として、ガリウム(Ga)、インジウム(In)又はアルミニウム(Al)が挙げられる。V 族化学元素の例として、窒素、リン又はヒ素が挙げられる。III-N 化合物の例として、GaN 、AlN 、InN 、InGaN 、AlGaN 又はAlInGaN が挙げられる。一般に、III-V 族化合物の化学元素は異なるモル分率で組み合わせられてもよい。
【0044】
半導体素子20は主にAlGaInP タイプの合金で形成されてもよい。
【0045】
半導体素子20はドーパントを含んでもよい。例として、III-V 族化合物に関して、ドーパントは、例えばマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)又は水銀(Hg)であるP型II族ドーパント、例えば炭素(C) であるP型IV族ドーパント、及び例えばシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、硫黄(S) 、テルビウム(Tb)又はスズ(Sn)であるN型IV族ドーパントを含む群から選択されてもよい。
【0046】
光電子デバイスの三次元半導体素子20がワイヤに相当する場合、各ワイヤの高さは50nm~50μmの範囲内であってもよい。各ワイヤ20は、面16に実質的に垂直な軸芯Dに沿って細長い半導体構造を有してもよい。
【0047】
光電子デバイス10の三次元半導体素子20が角錐に相当する場合、夫々の角錐の高さは100 nm~25μmの範囲内であってもよい。夫々の角錐20は、面16に実質的に垂直な軸芯に沿って細長い半導体構造を有してもよい。
【0048】
各ワイヤ20又は各角錐の断面は、楕円形、円形又は多角形タイプの一般的な形状、特に三角形、矩形、正方形又は六角形の形状を有してもよい。2つの隣り合うワイヤ20又は角錐の中心は、0.25μm~10μm、好ましくは1.5 μm~5μm離れてもよい。例として、ワイヤ20又は角錐は特に六角形の網目状に規則的に分散してもよい。
【0049】
アクティブ領域24は単一量子井戸を有してもよい。従って、アクティブ領域24は、III-V 族三元化合物で主に形成された層を含んでもよい。アクティブ領域24は、半導体素子20に関連して前述した第1の化学元素及び第2の化学元素と、第1の化学元素以外で第1の化学元素の族と同一の族の第3の化学元素とを主に含む層を有していることが好ましい。
【0050】
アクティブ層24は多重量子井戸を有してもよい。そのため、アクティブ層24は、量子井戸及び障壁層が交互に形成された半導体層の積層体を有している。アクティブ層24は、III-V 族二元化合物で主に形成された層及びIII-V 族三元化合物で主に形成された層を交互に形成することにより形成されてもよい。アクティブ領域24は、第1の化学元素及び第2の化学元素を主に含む層と、第1の化学元素、第2の化学元素及び第3の化学元素を主に含む層とが交互に形成された積層体を有していることが好ましい。
【0051】
半導体層28は、半導体素子20の元素と同一の元素で形成されてもよい。半導体層28は、例えば第1の元素及び第2の元素を主に含んでもよい。半導体層28は、例えば半導体素子20のドーピング型と反対のドーピング型でドープされている。
【0052】
電極30は、各半導体素子20を覆うアクティブ領域24にバイアスをかけて発光ダイオードによって放射される電磁放射線を通すことが可能である。電極30を形成する材料は、酸化インジウムスズ(ITO) 、アルミニウム若しくはガリウムがドープされているか若しくはドープされていない酸化亜鉛、又はグラフェンのような透明な導電性材料であってもよい。例として、電極層30の厚さは、5nm~200 nmの範囲内であり、好ましくは20nm~50nmの範囲内である。
【0053】
公知のように、EBL 26は、第1の化学元素と、第2の化学元素と、第1の化学元素の族と同一の族であるが、第1の化学元素又は第3の化学元素以外の第4の化学元素とを含む三元合金で主に形成されている。ワイヤ20がGaN で形成され、量子井戸が一般にInGaN と表されるInyGa(1-y)N 層(ここでyはInの比率である)を含む場合、EBL 26が、一般にAlGaN と表される窒化アルミニウムガリウムAlxGa(1-x)N(ここでxはアルミニウムの比率である)で主に形成され、アクティブ領域24と接してアクティブ領域24の電荷担体を適切に分散させることが知られている。例として、電子遮断層26の厚さは5nm~60nmの範囲内であってもよく、アルミニウムの比率xは5%~60%の範囲内であってもよく、好ましくは15%~25%の範囲内であってもよい。比率は、窒素無しの原子比率を意味する。例えば、Al0.2Ga0.8N 成分の場合、窒素でない原子の20%はアルミニウムであり、窒素でない原子の80%はガリウムである。
【0054】
各半導体素子20、アクティブ領域24、EBL 26及び半導体層28を成長させる方法は、化学蒸着法(CVD) 、又は有機金属気相エピタキシ(MOVPE) としても公知の有機金属化学蒸着法(MOCVD) のような方法であってもよい。しかしながら、分子線エピタキシ(MBE) 、ガスソースMBE (GSMBE) 、有機金属MBE (MOMBE) 、プラズマ支援MBE (PAMBE) 、原子層エピタキシ(ALE) 又はハイドライド気相エピタキシ(HVPE)のような方法を使用してもよい。
【0055】
例として、この方法では、第1の化学元素の前駆体及び第2の化学元素の前駆体、並びに任意には第3の化学元素の前駆体及び/又は第4の化学元素の前駆体を反応器に注入してもよい。
【0056】
以下の記載では、第1の化学元素がガリウム(Ga)であり、第2の化学元素が窒化物(N)であり、第3の化学元素がインジウム(In)であり、第4の化学元素がアルミニウム(Al)であるとみなされている。しかしながら、記載される様々な現象を、前述した化学元素のような他の化学元素に適用してもよい。
【0057】
図2は、基板12との距離に応じた、主にAlGaN で形成された図1に示された発光ダイオードのEBL 26におけるアルミニウム含有量x(パーセント)の変化の曲線40、及びEBL 26のバンドギャップ(電子ボルト)の変化の曲線42を示す。
【0058】
本発明者らは、EBL 26の形成中、第4の化学元素の含有量、ここではAlGaN 化合物のアルミニウムの含有量が電子遮断層26に亘って一定ではない場合があることを示した。実際、基板12と電子遮断層26の対象とするポイントとの距離が増加すると、電子遮断層26のアルミニウム含有量は増加したり減少したりする場合がある。曲線40によって図示されている例では、アルミニウム含有量は、ワイヤ20の下方部分(「底部」)とワイヤ20の頂部(「頂部」)との間で増加する。
【0059】
このような含有量の変化は、主にAlGaN で形成されたEBL 26のバンドギャップの曲線42によって示されている同様の変化と共に生じる。バンドギャップの変化は、現状の技術で知られているように決定されてもよく、特にSakalauskas 等著の"Dielectric function and optical properties of quaternary AlInGaN alloys"という題名の刊行物(Journal of Applied Physics 110, 013102 (2011))に記載されているように決定されてもよい。ワイヤ20の頂部のレベルのバンドギャップは、ワイヤ20の下方部分のレベルのバンドギャップより高い。従って、アクティブ領域24を通って流れる電流の分散、ひいてはアクティブ領域24によって放射される放射線の強度は均一ではない。従って、発光ダイオードの効率は最適に及ばない。
【0060】
実施形態によれば、第3の元素がEBL 26の組成に追加されている。従って、EBL 26は、第1の化学元素、第2の化学元素、第3の化学元素及び第4の化学元素を含む四元化合物で主に形成されている。図3及び図4に関連して記載されている実施形態では、EBL 26が、AlGaN で形成される代わりに、一般にAlInGaN と表されるAlxInzGa(1-x-z)N(ここでxはアルミニウム含有量であり、zはインジウム含有量である)で形成されている。
【0061】
図3は、ここでは主にAlInGaN で形成された、図1に示されている発光ダイオードのEBL 26のアルミニウム及びインジウムの含有量(パーセント)の変化の曲線43, 44を示す。図3は、基板12との距離に応じた、AlGaN で形成された層及びAlInGaN で形成された層のバンドギャップ(電子ボルト)の変化の、比較用の曲線42及び曲線46を更に示す。
【0062】
曲線43によって図示されたEBL 26のアルミニウム含有量の変化は、主にAlGaN で形成されたEBL 26のアルミニウム含有量の変化と同様のままである。更に、曲線44によって図示された主にAlInGaN で形成されたEBL 26のインジウム(In)含有量の変化も一定ではなく、ここではワイヤ20の下方部分と頂部との間で増加している。
【0063】
本発明者らは、図3に実質的に一定の曲線46によって概略的に図示されている主にAlInGaN で形成されたEBL 26のバンドギャップの変化が、曲線42によって図示されている主にAlGaN で形成されたEBL 26のバンドギャップの変化と比較して減少していることを示した。従って、アクティブ領域24を通って流れる電流の分散が発光ダイオードに亘ってより均一であり、ひいてはアクティブ領域24によって放射される放射線の強度もより均一である。従って、発光ダイオードの効率を高める。
【0064】
例えば第1の化学元素、第2の化学元素、第3の化学元素及び第4の化学元素の化合物で主に形成されたEBL 26は、10~40%の範囲、例えば15~35%の範囲の含有量の第4の化学元素を有している。例えば第1の化学元素、第2の化学元素、第3の化学元素及び第4の化学元素の化合物で主に形成されたEBL 26は、0.5~10%の範囲、例えば1~5%の範囲の含有量の第3の化学元素を有している。
【0065】
図4は、発光ダイオードが形成された基板との距離に応じた、図1に示された発光ダイオードのEBL 26のバンドギャップの、試験により得られた変化の曲線を示す。曲線48は、図3の曲線42のように、主にAlGaN で形成されたEBL 26に対応し、曲線50は、図3の曲線46のように、主にAlInGaN で形成されたEBL 26に対応する。
【0066】
試験のために、EBL 26は、例えば75~500 トルの範囲内の圧力及び800 ~1,000 ℃の範囲内の温度で形成されている。使用された前駆体は、例えばガリウムに関して82.75 sccm(標準立方センチメートル毎分)の流量のトリメチルガリウムであり、窒素に関して50 l/minの流量のアンモニアであり、インジウムに関して900 sccmの流量のトリメチルインジウムであり、アルミニウムに関して570 sccmの流量のトリメチルアルミニウムである。
【0067】
図3に関連して記載されているように、特にワイヤの上方部分に関して、AlInGaN に対応する曲線50がAlGaN に関連付けられた曲線48より著しく低く変化することが観察され得る。更に、曲線50のバンドギャップの値は、曲線48のバンドギャップの値より小さい。
【0068】
より具体的には、前述した条件で行われた試験によれば、主にAlGaN で形成されたEBL を有するワイヤの下方部分(B) では、アルミニウム含有量は実質的に15%であり、バンドギャップは実質的に3.75eVである。ワイヤの中途部分(M) では、アルミニウム含有量は実質的に25%であり、バンドギャップは実質的に3.96eVである。ワイヤの上方部分(T) では、アルミニウム含有量は実質的に30%であり、バンドギャップは実質的に4.1 eVである。
【0069】
前述した試験によれば、主にAlInGaN で形成されたEBL を有するワイヤの下方部分(B) では、アルミニウム含有量は実質的に15%であり、インジウム含有量は実質的に1%であり、バンドギャップは実質的に3.7 eVである。ワイヤの中途部分(M) では、アルミニウム含有量は実質的に25%であり、インジウム含有量は実質的に2%であり、バンドギャップは実質的に3.88eVである。ワイヤの上方部分(T) では、アルミニウム含有量は実質的に30%であり、インジウム含有量は実質的に5%であり、バンドギャップは実質的に3.9 eVである。
【0070】
利点は、EBL の組成に追加された第3の元素が発光ダイオードの他の層の組成、特にはアクティブ領域に既に存在しているということである。第3の元素の前駆体はこのように既に注入されている。従って、既存の方法に行う変更が減少する。
【0071】
特定の実施形態が述べられている。様々な変更及び調整が当業者に想起される。特に、三次元素子の形状は本開示に述べられている例に限定されない。
【0072】
本開示全体に亘って、光電子デバイスが発光ダイオードを備えているとみなされている。しかしながら、本明細書に記載されている実施形態はフォトダイオードの場合にも実施され得る。この場合、アクティブ領域は電磁放射線を取り込んで、取り込んだ光子を電荷担体に変換することができる。
【0073】
更に、前述した実施形態はHBL にも適用され得る。更に、EBL 又はHBL はアクティブ領域と三次元半導体素子との間に配置されてもよい。
【0074】
異なる変形例を有する様々な実施形態が上記に述べられている。当業者は、いかなる進歩性も示すことなくこれらの様々な実施形態及び変形例の様々な要素を組み合わせてもよいことに注目すべきである。
【0075】
本特許出願は、本明細書の不可欠な部分とみなされる仏国特許出願第17/63316 号明細書の優先権を主張している。
図1
図2
図3
図4