IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太啓建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-シート天井 図1
  • 特許-シート天井 図2
  • 特許-シート天井 図3
  • 特許-シート天井 図4
  • 特許-シート天井 図5
  • 特許-シート天井 図6
  • 特許-シート天井 図7
  • 特許-シート天井 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】シート天井
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/22 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
E04B9/22 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021124242
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2023019484
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594080840
【氏名又は名称】太啓建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 康裕
(72)【発明者】
【氏名】岡本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】新実 茂樹
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-280607(JP,A)
【文献】特開昭63-289154(JP,A)
【文献】特開平03-051455(JP,A)
【文献】実開昭56-114229(JP,U)
【文献】実開昭63-117810(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
E04F 17/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の対向する壁に固定された、長さ方向が壁幅方向である支持フレーム(5)と、対向する支持フレーム(5)の間に拡げられた可撓性のシート(1)と、シート(1)の辺縁に取り付けられて支持フレーム(5)に掛け止めされた複数の掛け止め具(7)とを含むシート天井において、
シート(1)の辺縁には厚さ方向に膨出した膨出部(3)が該辺縁に沿って延びるように形成され、
掛け止め具(7)は、膨出部(3)が係入することでシート(1)の辺縁に取り付けられており、
掛け止め具(7)は、支持フレーム(5)と平行である長さ方向の長さ(L)が200~2000mmであり、
シート(1)の辺縁に複数の掛け止め具(7)が、隣り合う掛け止め具(7)の間の間隔(S)が50mm以下であるように、取り付けられていることを特徴とするシート天井。
【請求項2】
シート(1)の中間部を調節可能に上げて又は押し下げてシート(1)を変形させるシート変形装置(10)を備える請求項1記載のシート天井。
【請求項3】
支持フレーム(5)は、型材である請求項1又は2記載のシート天井。
【請求項4】
掛け止め具(7)は、シート(1)の辺縁を掴む掴持部(8)と、支持フレーム(5)に掛止する部位(9)とを含む請求項1~3のいずれか一項に記載のシート天井。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性のシートが拡げられてなるシート天井に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、部屋の壁に固定されたL形棒材からなる支持フレームと、支持フレームの水平フランジの端部上に設けられた肩部と、支持フレームの内側に横方向に拡げられたシートと、シートの各側面上に取り付けられて肩部に掛け止めされているステープル(U形釘)形式の縁と、部屋の天井に固定されたプーリーを巡って通過するケーブルとを具備したシート天井が記載されている。
【0003】
そして、ケーブルの垂直側の下端に掛け止めされた重量物が、シートの少なくとも一点に調節自在な下方への作用力を及ぼして、シートを審美的に下方へ変形させる。審美性は、重量物の接触点の形状(球形や星形)から生じる。
【0004】
あるいは、ケーブルの垂直側の下端に掛け止めされたスポットライトのような照明装置が、シートの少なくとも一点に調節自在な上方への作用力を及ぼして、シートを審美的に上方へ変形させる。
【0005】
【文献】特開昭63-289154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、シートの各側面上に取り付けられたステープル(U形釘)形式縁を、支持フレームに設けた肩部に掛け止めしている。支持フレームは、壁に沿って水平方向に長く伸びるものであるのに対して、ステープル型式縁は、支持フレームに沿う方向には非常に短い小片と考えられる。このようなステープル型式縁は、シートの各側面上に多数個が相互間隔をおいて具備されるから、シートのステープル型式縁取付部位に引張力が集中して、同部位が伸びたり傷んだりするおそれがある。また、隣り合うステープル型式縁の間のシートが接近して皺になったり内側へ湾曲したりして、シート辺縁が非直線状になるため見栄えが良くない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、支持フレームに掛け止めするシートの辺縁部位にかかる引張力を分散させて、同部位が伸びたり傷んだりしないようにすることにある。また、シートの辺縁が皺や湾曲のない直線状になるようにして、見栄えを良くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシート天井は、部屋の対向する壁に固定された、長さ方向が壁幅方向である支持フレームと、対向する支持フレームの間に拡げられた可撓性のシートと、シートの辺縁に取り付けられて支持フレームに掛け止めされた複数の掛け止め具とを含むシート天井において、
掛け止め具は、支持フレームと平行である長さ方向の長さが200~2000mmであり、
シートの辺縁に複数の掛け止め具が、隣り合う掛け止め具の間の間隔が50mm以下であるように、取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
ここで、シートの中間部を調節可能に上げて又は押し下げてシートを変形させるシート変形装置を備えることが好ましい。
【0010】
(作用)
掛け止め具の長さが200~2000mmであることにより、掛け止め具の取扱性がよく、シートの辺縁に取り付けやすい。
隣り合う掛け止め具の間の間隔が50mm以下であることにより、隣り合う掛け止め具の間のシートが接近して皺になったり内側へ湾曲したりすることを防ぐことができる。
掛け止め具の長さが200~2000mmであり、且つ、隣り合う掛け止め具の間の間隔が50mm以下であるという組み合わせにより、シートの辺縁部位にかかる引張力が分散する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシート天井によれば、支持フレームに掛け止めするシートの辺縁部位にかかる引張力を分散させて、同部位が伸びたり傷んだりしないようにすることができる。また、シートの辺縁が皺や湾曲のない直線状になるようにして、見栄えを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1のシート天井の断面図である。
図2図2は、同シート天井を上から見た斜視図である。
図3図3は、同シート天井に用いたシート変形装置の斜視図である。
図4図4は、同シート天井に用いた支持フレームと掛け止め具を示し、(a)は断面図、(b)は斜視図である。
図5図5は、同シート天井の施工方法を示し、(a)は丸めたシートをシート変形装置に止めたときの断面図、(b)はシートを拡げる途中の断面図、(c)は拡げたシートの辺縁を支持フレームに掛け止めした時の断面図である。
図6図6は、実施例2のシート天井の断面図である。
図7図7は、実施例3のシート天井の断面図である。
図8図8は、実施例4のシート天井の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1>シート
可撓性のシートとしては、特に限定されないが、布、樹脂シート、これらを複合したシート等を例示できる。布の材料としては、有機繊維、無機繊維等を例示できる。
【0014】
<2>支持フレーム
支持フレームとしては、特に限定されないが、型材(金属が所定の断面形状で押出成形されてなるもの)を例示できる。型材の断面形状としては、特に限定されないが、L(アングル)、コ(チャンネル)、T、H、角管等を例示できる。
【0015】
<3>掛け止め具
掛け止め具としては、特に限定されないが、シートの辺縁を掴む掴持部と、支持フレームに掛止する部位とを含むものを例示できる。
掛け止め具は、支持フレームと平行である長さ方向の長さが200~2000mmであり、シートの辺縁に複数の掛け止め具が、隣り合う掛け止め具の間の間隔が50mm以下であるように、取り付けられていることが好ましい。
この掛け止め具の長さは300~1800mmがより好ましく、500~1500mmが最も好ましい。なお、複数の掛け止め具のうちの一部は、部屋の壁幅に応じてまちまちであるシートの辺幅にアジャストするように、長さを200mm未満としてもよい。
この掛け止め具の間隔は30mm以下がより好ましく、10mm以下が最も好ましい。
【0016】
<4>シート変形装置
シート変形装置は、シートに上に凸又は下に凸のライン状ピークを有する変形をさせるものであることが好ましい。
シートの変形におけるライン状ピークの長さは、特に限定されないが、シートのライン状ピーク部位にかかる作用力が大きく分散される点で1000mm以上が好ましく、1500mm以上がより好ましく、2000mm以上がさらに好ましい。ライン状ピークの長さの上限は、特になく、部屋の大きさにより制約される。
【0017】
ライン状ピークは、その全長にわたって高さのばらつきが小さいことが好ましく、具体的には、ぱらつき量(ライン状ピークの最高部と最低部との差)が200mm以下が好ましく、100mm以下がより好ましく、50mm以下が最も好ましい。上に凸のライン状ピークの場合、シートの中間部の下面にシートよりも剛性が高いライン状作用部材を当てることにより、ぱらつき量を小さくすることができる。
ここで、ライン状は、平面視で直線状が好ましいが、緩やかな曲線状でもよい。
【0018】
シート変形装置としては、特に限定されないが、次の(a)~(c)を例示できる。
(a)シートの中間部の下面に当てられた、シートよりも剛性が高く水平方向に延びるライン状作用部材と、該中間部をライン状作用部材とともに吊り上げる作動装置とを含むもの
(b)シートの中間部の上面に当てられた、シートよりも剛性が高く水平方向に延びるライン状作用部材と、該中間部をライン状作用部材とともに押し下げる作動装置とを含むもの
(c)シートの中間部を掴んだ、シートよりも剛性が高く水平方向に延びるライン状作用部材と、該中間部をライン状作用部材とともに吊り上げ又は押し下げる作動装置とを含むもの
【0019】
ライン状作用部材としては、特に限定されないが、棒状体、幅10~200mmの細幅板状体、型材等を例示できる。ライン状作用部材の長さは、特に限定されないが、後述するようにライン状ピークの長さを決めるから、1000mm以上が好ましく、1500mm以上がより好ましく、2000mm以上がさらに好ましい。
ライン状作用部材の材料としては、特に限定されないが、金属、樹脂等を例示できる。
作動装置としては、特に限定されないが、複数本の吊り線状体と、吊り線状体を引張・弛緩調節する調節機構とを含むものを例示できる。
吊り線状体としては、特に限定されないが、ワイヤー、ロープ、チェーン等を例示できる。
調節機構としては、特に限定されないが、ターンバックル、ロック機能付き巻き取り機構等を例示できる。
【0020】
複数本の吊り線状体の端部が壁の一箇所に集められ、該一箇所の近傍に調節機構が配されることが好ましい。
【実施例
【0021】
本発明を具体化した実施例のシート天井について、図面を参照して説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で、数値、材料、接合手段等を適宜変更して具体化することもできる。
【0022】
[実施例1]
図1図5に示す実施例1のシート天井は、シート1の中間部に上に凸のライン状ピーク2を有する谷型の変形をさせるものである。
シート天井は、部屋の対向する壁に固定された、長さ方向が壁幅方向である支持フレーム5と、対向する支持フレーム5の間に拡げられた可撓性のシート1と、シート1の辺縁に取り付けられて支持フレーム5に掛け止めされた複数の掛け止め具7と、シート1の対向する辺縁の間の中間部を調節可能に上げて又は下げてシート1を変形させるシート変形装置10とを含み構成されている。
【0023】
なお、図2に示すように、部屋の別の対向する壁にも支持フレーム(図示略)が取り付けられ、シートの別の辺縁は複数の掛け止め具によりその支持フレームに掛け止めされている。当該別の対向する壁間の距離よりも、後述するシート変形装置10のライン状作用部材11は短く設定されているため、当該別の辺縁は水平となる。
【0024】
シート1は、例えばグラスファイバー(ガラス繊維)製である。図4に示すように、シート1の辺縁には厚さ方向に膨出した膨出部3が該辺縁に沿って延びるように形成されている。膨出部3は、例えば樹脂製の棒を芯材として辺縁に巻き込むことにより形成することができる。
【0025】
図4に示すように、支持フレーム5は、アルミニウム合金製のL形型材であり、その縦部において壁にネジ止めされている。また、L形型材は、その横部の突端に縦部へ向かう返し部6が立設されている。
【0026】
図4に示すように、掛け止め具7は、アルミニウム合金製であり、膨出部3が係入することでシート1の辺縁を掴むC字状の掴持部8と、支持フレーム5の返し部6に掛止する部位としての返し部9とを一体的に含む。
掛け止め具7は、支持フレーム5と平行である長さ方向の長さLが200~2000mmである。
シート1の辺縁に複数の掛け止め具7が、隣り合う掛け止め具7の間の間隔Sが50mm以下であるように、取り付けられている。
【0027】
シート変形装置10は、シート1に上に凸のライン状ピーク2を有する山型の変形をさせるものである。
図1図3に示すように、シート変形装置10は、
シート1の中間部の下面に当てられた、シート1よりも剛性が高く水平方向(対向する辺縁と平行)に延びるライン状作用部材11と、
シート1の中間部の上方にライン状作用部材11と平行に配されたシート上通し材12と、
ライン状作用部材11、シート1及びシート上通し材12を下方から順に貫通した複数のボルト13と、
シート上通し材12の上でボルトに調節可能に止められたナット14と、
シート1の中間部をライン状作用部材11等とともに吊り上げる作動装置15とを含み構成されている。
【0028】
ライン状作用部材11は、アルミニウム合金製で幅10~200mm(好ましくは20~100mm)の細幅板状体である。シート1はライン状作用部材11により下から支えられて変形し、上に凸のライン状ピーク2が生じる。よって、ライン状ピーク2の長さはライン状作用部材11の長さとはほぼ同じになり、本実施例ではライン状作用部材11の長さが1000mm以上であるから、ライン状ピーク2の長さも1000mm以上である。
シート上通し材12は、アルミニウム合金製のL形型材である。
複数のボルト13は、ライン状作用部材11の長さ方向に分散している。
【0029】
作動装置15は、複数本の吊り線状体16と、吊り線状体16を引張ったり繰り出したりして長さ調節する調節機構17とを含む。
吊り線状体16は例えばワイヤーであり、一端部がシート上通し材12に止められてそこから上方へ延び、中間部が部屋の天井に設けられたプーリー18に掛けられ、他端部が壁の止め具19に結合されている。図2に示すように、複数本の吊り線状体16の他端部が集められて、壁の一箇所の止め具19に結合されている。
調節機構17は、吊り線状体16の他端近傍に介装されたターンバックルである。
【0030】
ライン状作用部材11の剛性と、ボルト及びナットの調節と、調節機構17の調節により、ライン状ピーク2はその全長にわたって高さのばらつき量を50mm以下とすることができる。
【0031】
以上のように構成された実施例1のシート天井は、例えば次の[1]及び[2]のようにして施工することができる。
[1]シート1の掛け止め
図5(a)に示すように、シート1の中間部からみて両側部を巻いた状態で、該中間部をシート変形装置10のライン状作用部材11の上に止める。次に、(b)に示すように、シート1の該両側部を巻き解いて横方向に拡げる。続いて、(c)に示すように、シート1の左右辺縁の掛け止め具7を支持フレーム5に掛け止めする。このとき、シート1の該両側部は下方へややたるんで軽く張った状態となる。
【0032】
(主たる作用効果)
掛け止め具7の長さLが200~2000mmであることにより、掛け止め具7の取扱性が非常によく、シート1の辺縁に取り付けやすい。
隣り合う掛け止め具7の間の間隔Sが50mm以下であることにより、隣り合う掛け止め具7の間のシート1が接近して皺になったり内側へ湾曲したりすることを防ぐことができ、シート1の辺縁が直線状になるようにして、見栄えを良くすることができる。
また、長さLが200~2000mmであり、且つ、間隔Sが50mm以下であるという組み合わせにより、シート1の辺縁部位にかかる引張力が分散し、同部位が伸びたり傷んだりしないようにすることができる。
【0033】
(その他の作用効果)
・シート1を中間部で吊った状態で拡げて、壁に掛け止めすることができるので、作業が簡単になり、高度な技術を必要としない。
・シート1を床に広げないので、床に機械、配管等の物が置いてあってもシート1を張りでき、
・シート1を床に広げないので、床の養生やシート1のこすれ傷を減らせる。
・掛け止めは掛け止め具7の返し部を支持フレーム5の返し部に掛けるだけなので、高度な技術が必要なく、取り外しも簡単にできる。何度でも繰り返し使用できる。
・常時、シート1が掛け止め具7を引っ張っているので、掛け止めが外れない。
・掛け止め具7の返し部9と支持フレーム5の返し部6との合わせ面を斜めに加工することで、シート1の引張力を利用してくさびで締めるようにしっかり食い込ませて掛止することができる。
【0034】
[2]シート1の変形
次に、上記のようにシート1の両側部が下方へたるんで軽く張った状態から、図1,2に示すように、調節機構17のターンバックルを操作して吊り線状体16を引っ張ることにより、シート1の中間部を吊り上げて、シート1に上に凸のライン状ピーク2を有する山型の変形をさせる。この変形によりシート1に張力が加わり、適度な張力が確保されて、シート天井が完成する。
【0035】
(主たる作用効果)
シート変形装置10が、シート1に上に凸のライン状ピーク2を有する変形をさせるため、シート1のライン状ピーク2部位にかかる作用力は該部位の全体に均一に分散する。よって、該部位が伸びたり傷んだりしないようにすることができる。
このライン状ピーク2を有する変形は、見栄えがよく、シート天井に新しい審美性をもたらすことができる。
【0036】
(その他の作用効果)
・シート1を水平に張る場合には、シート1に大きな張力を加える必要があるが、本実施例ではシート1を山型に張るので、シート1に適度な張力を加えれば足り、よって小さい吊り上げ力でもシート1をしっかり張れる。
・シート1を山型にすることで、スパンも例えば1/2と短くなるので、小さな力でもしっかり張れる。同じ張力でもたわみが小さくなる。
・シート1に大きな張力を加える場合には、シート1と取合う壁は鉄筋コンクリート造や鉄骨造の高強度壁に限定されるが、本実施例ではシート1に加える張力は適度なものなので、シート1と取合う壁は一般壁(普通の軽量鉄骨下地壁、木軸壁)でよく、施工範囲が大幅に広がる。
・壁に固定する支持フレーム5は、適度な張力に抗する軽量なもので足りる。
・万が一、地震などで吊り線状体16が外れても、シート1は辺縁で壁に掛け止めしてあるので、シート1は落下しない。
・複数本の吊り線状体16の端部が壁の一箇所に集められ、該一箇所の近傍に調節機構17(ターンバックル)が配されているので、シート1の吊り上げ量の調節、均一な張り具合の調整、定期点検等を効率的に行うことができる。
・ターンバックルによる調節は簡単であり、高度な技量を必要としない。
【0037】
[実施例2]
図6に示す実施例2のシート天井は、調節機構17として、ターンバックルに代えて、吊り線状体16の他端部を調節可能に巻き取る巻き取り機構を用いた点において実施例1と相違し、その他は実施例1と共通である。
【0038】
巻き取り機構は、壁に取り付けられており、シート1よりも下方にある。但し、シート1よりも上方にあってもよい。
巻き取り機構は、巻き取り調節したところで吊り線状体16の繰り出しを止めるロック機能を備えている。
複数本の吊り線状体16は、それぞれの他端部が別々の巻き取り機構に巻き取られてもよいし、全他端部が一本の吊り線状体16に結合されたうえで一つの巻き取り機構に巻き取られてもよい。
【0039】
実施例2によっても、実施例1と同様の作用効果が得られる。また、巻き取り機構はシート1よりも下方にあるため、室内で操作しやすい。
【0040】
[実施例3]
図7に示す実施例3のシート天井は、シート変形装置10が、シート1の中間部に下に凸のライン状ピーク2を有する谷型の変形をさせるものである点において実施例2と相違し、その他は実施例2と共通である。
【0041】
シート変形装置10は、
シート1の上方でシート1の中間部を掴んだ、シート1よりも剛性が高く水平方向(対向する辺縁と平行)に延びるライン状作用部材11と、
ライン状作用部材11の上方に平行に配された上下動可能なスライダ21と、
ライン状作用部材11及びスライダ21を下方から順に貫通した複数のボルト22と、
スライダ21の上でボルトに調節可能に止められたナット23と、
部屋の天井に取り付けられて、スライダ21を上下動可能に案内する案内部材24と、
シート1の中間部をライン状作用部材11等とともに押し下げる作動装置15とを含み構成されている。
【0042】
シート1の中間部には厚さ方向に膨出した中間膨出部4が該中間部に沿ってライン状に延びるように形成されている。中間膨出部4は、例えば樹脂製の棒を芯材として辺縁に巻き込むことにより形成することができる。そして、ライン状作用部材11は、中間膨出部4が係入することでシート1の中間部を掴んだC字状でライン状に延びる掴持部11aと、ボルトが係止するフランジ部11bとを含む。
【0043】
作動装置15は、複数本の吊り線状体16と、吊り線状体16を引張ったり繰り出したりして調節する調節機構17とを含む。
吊り線状体16は例えばワイヤーであり、一端部がスライダ21に止められてそこから上方へ延び、中間部が部屋の天井に設けられたプーリー25に掛けられ、他端部が調節機構17としての巻き取り機構に巻き掛けられている。
【0044】
実施例3でもライン状作用部材11の長さが1000mm以上であるから、ライン状ピーク2の長さも1000mm以上である。
ライン状作用部材11の剛性と、ボルト22及びナット23の調節と、調節機構17の調節により、ライン状ピーク2はその全長にわたって高さのばらつき量を50mm以下とすることができる。
【0045】
実施例3のシート天井は、例えば次の[1]及び[2]のようにして施工することができる。
[1]シート1の掛け止め
実施例1における[1]と同様であり、シート1の両側部が下方へたるんで軽く張った状態とする。
[2]シート1の変形
上記の状態から、調節機構17の巻き取り機構を操作して吊り線状体16を繰り出すとともに、点検口20からスライダ21を押し下げてボルトにより案内部材24に固定することにより、スライダ21と共にライン状作用部材11を下動させ、シート1の中間部を押し下げて、シート1に下に凸のライン状ピーク2を有する谷型の変形をさせる。この変形によりシート1に張力が加わり、適度な張力が確保されて、シート天井が完成する。
【0046】
実施例3によれば、下に凸のライン状ピーク2を有するシート1の変形により、実施例1,2とは異なる審美性が得られ、それ以外は基本的に実施例1,2と同様の作用効果が得られる。
【0047】
[実施例4]
図8に示す実施例4のシート天井は、シート1に3つの中間部を設定し、左右2つの中間部に、実施例1と同様のシート変形装置10により、上に凸のライン状ピーク2を有する谷型の変形をさせ、中央1つの中間部に、実施例3と同様のシート変形装置10により、下に凸のライン状ピーク2を有する谷型の変形をさせるものであり、その他は実施例1と基本的に共通である。
【0048】
吊り線状体16は、左のシート変形装置10のプーリー18、中央のシート変形装置10の案内部材24のプーリー26、及び、左のシート変形装置10のプーリー18に掛けられて連続しており、調節機構17としてのターンバックルを介して、壁の一箇所の止め具19に結合されている。
【0049】
実施例4のシート天井は、例えば次の[1]及び[2]のようにして施工することができる。
[1]シート1の掛け止め
シート1の3つの中間部を3つのシート変形装置10に止める。次に、シート1の左右辺縁の掛け止め具7を支持フレーム5に掛け止めする。このとき、シート1は4つの波状に下方へややたるんで軽く張った状態となる。
[2]シート1の変形
上記の状態から、調節機構17のターンバックルを操作して吊り線状体16を引っ張ることにより、左右2つの中間部に上に凸のライン状ピーク2を有する谷型の変形をさせ、それと相対的に、中央1つの中間部に下に凸のライン状ピーク2を有する谷型の変形をさせる。この変形によりシート1に張力が加わり、適度な張力が確保されて、シート天井が完成する。
【0050】
実施例4によれば、上に凸のライン状ピーク2を有するシート1の変形と、下に凸のライン状ピーク2を有するシート1の変形との組み合わせにより、変化のある審美性が得られ、それ以外は基本的に実施例1,2と同様の作用効果が得られる。
【0051】
なお、実施例1と同様にしてシートの別の辺縁を水平にして別の対向する壁に掛け止めすることができるが、図8では、別の対向する壁間の距離とライン状作用部材11の長さとをほぼ同じ設定して、シートの別の辺縁を山谷状にしている。その場合は、図8にB-B断面を示すように、別の対向する壁に対してシートの別の辺縁を上下スライド可能にすればよい(金具を使って固定させない)。
【0052】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 シート
2 ライン状ピーク
5 支持フレーム
7 掛け止め具
8 掴持部
10 シート変形装置
11 ライン状作用部材
15 作動装置
16 吊り線状体
17 調節機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8