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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】薄壁製品用の堆肥化可能な木材複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20250120BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20250120BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L67/00
C08L1/00
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021531337
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 FI2019050863
(87)【国際公開番号】W WO2020115363
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】20186033
(32)【優先日】2018-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519318096
【氏名又は名称】スラパック オイ
【氏名又は名称原語表記】SULAPAC OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】タネリ ヴァイサネン
(72)【発明者】
【氏名】アンティ パルシネン
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154725(JP,A)
【文献】特開2004-359939(JP,A)
【文献】特開2005-146261(JP,A)
【文献】特開2010-270290(JP,A)
【文献】特開2008-037022(JP,A)
【文献】特開2014-015531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
110°Cを超える融点を有する連続熱可塑性ポリマーマトリックスであって、前記熱可塑性ポリマーが生分解性ポリマーまたは生体ポリマーである、連続熱可塑性ポリマーマトリックスと、
前記マトリックス内に分布する、1.0mm未満のふるい分けサイズを有する親水性天然繊維材料の粒子と、を備え、
前記熱可塑性ポリマーと前記親水性天然繊維材料の粒子との重量比は99:1~35:65であり、
加工前の前記親水性天然繊維の含水量は前記親水性天然繊維の総重量から計算して2%未満であり、
前記生分解性ポリマーまたは前記生体ポリマーの含水量は、前記生分解性ポリマーまたは前記生体ポリマーの総重量から計算して0.05%未満である、組成物。
【請求項2】
1.0mm未満の総厚を有するシートまたはプレートに成形することが可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスは、1~70g/10minのMFRを有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、1~50g/10minのMFRを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーは、150°Cを超える融点を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーは、生分解性ポリマーの群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記親水性天然繊維材料は、一年生植物もしくは多年生植物または木質材料から得られるリグノセルロース材料の群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記親水性天然繊維材料は、針葉樹または広葉樹から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記親水性天然繊維材料の粒子は木材粒子であり、
前記熱可塑性ポリマーと前記木材粒子との重量比は、65:35~95:5である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
金属ステアリン酸塩の群から選択される1つ以上の添加剤、およびそれらの混合物を含有し、前記1つ以上の添加剤は、最大10重量%の量で組み込まれる、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記親水性天然繊維は、150~170°Cで少なくとも1時間蒸気に曝されるように蒸気処理される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記天然繊維は、1~10w%の塩基性溶液を使用して化学的に修飾され、前記繊維を前記溶液に浸漬することにより、ヘミセルロースおよび他の容易に溶解する化合物が前記繊維から分離され、その後前記繊維は乾燥され、複合材料の生産に使用される、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記複合材料は、前記複合材料に色の特性を付与することが可能である、細かく分割された材料の粒子をさらに含有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記複合材料は、
粒子、または
天然染料、または
それらの混合物、
をさらに含有する、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
前記天然繊維は、異なる木材種から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、リサイクルされた生分解性ポリマーまたは天然繊維を含有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記材料の処理温度は、220°C以下に保たれている、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物を備える、または組成物からなる、容器または物品。
【請求項19】
熱可塑性ポリマーと木材繊維とのバージン混合物の一部は、射出成形または押出後に機械的に破砕され、生分解性ポリマーと木材とのバージン混合物に添加される、生分解性ポリマーと木材との同一混合物を備え、同一混合物からなる、リサイクル材料で置換されており、ここで、バージン混合物の一部は、1w%~99w%のリサイクル材料で置換されている、請求項18に記載の容器または物品。
【請求項20】
10w%エタノールについての総移行レベルは、1w%~30w%の間の木材繊維を含有する壁の場合10mg/dm未満である、請求項18または19に記載の容器または物品。
【請求項21】
50w%エタノールの総移行レベルは、1w%~30w%の木材繊維を含有する壁の場合、10mg/dm未満である、請求項18から20のいずれか一項に記載の容器または物品。
【請求項22】
3w%酢酸の総移行レベルは、1w%~30w%の木材繊維を含有する壁について10mg/dm未満である、請求項18から21のいずれか一項に記載の容器または物品。
【請求項23】
前記複合材料の密度は、0.8~1.4g/cmである、請求項18から22のいずれか一項に記載の容器または物品。
【請求項24】
前記複合材料のショアD硬度は、60~90である、請求項18から23のいずれか一項に記載の容器または物品。
【請求項25】
壁厚が0.1mm~5mmのボトルを、射出ブロー成形によって製造するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項26】
壁厚が0.3mm~1.5mmの連続押出製品を製造するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆肥化可能な複合材料に関する。特に、本発明は、堆肥化可能な木材複合材料およびそれを製造する方法に関する。本発明はまた、薄壁物品における木材複合材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への意識の高まりと資源の不足により、多くの用途でのバイオベースの材料の使用を取り巻く関心が高まっている。立法レベルでは、より厳格な政策により、多くの産業は、再生不可能な化石資源に由来する従来の材料に取って代わるために、再生可能な資源から新しい材料を探すか開発することを余儀なくされている。
【0003】
ここ数十年の間に最も顕著な課題の1つは、環境、特に海洋におけるプラスチックの蓄積であった。これは主に、廃棄物処理プロセスが不十分であり、その結果、廃棄物処理施設から環境に細片が漏出していることが原因である。海洋のプラスチックの細片は、海洋動物にかなりの脅威をもたらし、最終的には海洋生態系に壊滅的な出来事をもたらし得る。2018年10月、欧州議会は、プラスチック製のカトラリーとプレート、綿棒、ストロー、ドリンクスターラー、バルーンスティックの禁止を承認した。決定の時点で、EUはその禁止が2021年までにブロック全体で発効されることを望んでいた。他の既存の代替材料がない他のアイテム(ハンバーガーボックスやサンドイッチラッパーなど)の消費は、2025年までに各国で25%削減する必要がある。もう1つの目標は、すべてのプラスチック製飲料ボトルの90%が2025年までにリサイクルのために回収されるようにすることである。
【0004】
高分子材料の分解性を改善するために、様々なタイプのアプローチが提案されてきた。考えられる1つの方法は、生分解性または非生分解性ポリマーを、段ボールなどのセルロースベースの材料に置き換えることである。残念ながら、これらの材料は生態学的な利点を提供するが、ポリマーの代替品としては多くの点で不十分である。例えば、湿気のある環境でのこれらの材料の機械的耐久性は十分ではなく、優れたバリア特性を欠いている。別の可能性は、ポリマーの特性を改質して、より速く分解するようにすることである。これは通常、さまざまな種類の添加剤をポリマーに添加することによって行われる。これは、例えば、オキソ分解性ポリマーの開発につながった。これらのポリマーは確かにマクロスケールでより速く分解するが、環境中のマイクロサイズのポリマー粒子、すなわちマイクロプラスチックの蓄積の問題は依然として残っている。
【0005】
定義上、マイクロプラスチックは、物理的サイズが直径5mm未満のプラスチック粒子であり、さらに一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチックに分けられ得る。一次マイクロプラスチックは、環境に入る前にすでに5mm未満のサイズであるプラスチック粒子である。このタイプのマイクロプラスチックは、例えば化粧品や衣類中に見られ得る。二次マイクロプラスチックは、大きなプラスチック製品が環境に入ると自然に分解するプロセスから生じる。したがって、二次マイクロプラスチックは、例えば、ビニール袋または飲料用ボトルに由来し得る。
【0006】
したがって、より効率的な廃棄物処理プロセスが緊急に必要とされていることは明らかである。
【0007】
石油ベースの非生分解性および使い捨てプラスチックに関連する環境問題を排除するために、非分解性の対応物と比較した場合に同様の特性を有する生分解性ポリマーを開発するための、広範囲の研究が行われてきた。これにより、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、およびそれらのブレンドなど、さまざまな物品でのポリマーの使用のための、多数のポリマーが開発された。
【0008】
こうして、JP469568B2(特許第4699568号公報)は、0.3~0.7mmの範囲の厚さを有する薄壁容器を製造する方法に関する。使用されるポリマーは1~28w%の量の無機充填材を含有し得るPLAである。
【0009】
US210071528B2(米国特許第210071528号明細書)は、補強された薄壁繊維複合製品、および強化材として天然繊維を含む同じタイプの繊維を製造する方法を開示している。
【0010】
CN101429328A(中国特許出願公開第101429328号明細書)は、食器用の自然分解性深窪薄壁ソフトボトルおよびそのソフトボトルの製造に使用され得る材料を提供する。この材料は、85~90w%のPLA、9~14w%のポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、残りの材料はPET添加剤からなる。ボトルの壁の厚さは0.07~0.09mmである。
【0011】
US20030216492A1(米国特許出願公開第2003/0216492号明細書)は、例えば、ジャガイモ、紙またはトウモロコシから得られるデンプンに基づく材料を開示している。材料の特性は、デンプン懸濁液に木粉または繊維(アスペクト比1:2~1:8)を添加することによって変更される。木材繊維を添加することにより、材料成形が可能となる。成形品は、製品に耐液コーティング(PROTECoat、Zein(R)、PLAなど)を施すことで防水加工を施している。これらの製品は、カップ、トレイ、ボウル、調理器具、またはプレートとして使用され得る。物品の厚さは、0.001mm~10mmの範囲であり得る。他のデンプンベースの材料は、US6168857B1(米国特許第6168857号明細書)に記載されている。
【0012】
無機的に充填されたマトリックスを備える密封可能な液密容器を製造するための組成物および方法は、US5738921A(米国特許第5738921号明細書)に記載されている。容器は、有機ポリマー結合剤(PLAまたはデンプン)、約20%~約90%の濃度範囲を有する無機凝集体充填材、および繊維状材料(木材繊維など)からなる液密バリアを有する。有機粒子のサイズは決定されていない。
【0013】
US8455575(米国特許第8455575号明細書)は、木粉(1μm~約5mmのサイズ)およびPLAからなる材料について説明している。これらの成分に加えて、縮合リン酸エステルが組成物に含まれる。
【0014】
最後に、EP2888323B1(欧州特許第2888323号明細書)は、0.3~0.8mmの壁厚を有する薄壁射出成形部品を製造するためのポリマー混合物を開示している。使用される材料は、脂肪族芳香族ポリエステル(PLAなど)、木材繊維などの有機材料、および一般的に使用される添加剤である。
【0015】
特に生分解性の点でそれらの有利な特性にもかかわらず、当技術分野で知られている生分解性プラスチックは、物品の厚さが1mmを超えるとき、およびそれらが低温および乾燥条件にさらされるとき、ゆっくりと分解する。
【0016】
したがって、そのような生分解性プラスチックは、分解プロセスを加速するために、高温(例えば、60°C超)およびより高い湿度レベル(例えば、80%超)にさらされる廃棄物処理施設で処理する必要がある。
【0017】
いくつかの研究によると、PLAなどの生分解性ポリマーで作られた製品の壁の厚さが約1mmに保たれている場合でも、湖や海での生分解には過度の時間(つまり、数年)がかかり得る。したがって、既知の材料は、真に海洋分解性であると特徴づけられ得ない。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、従来技術の不利な点の少なくとも一部を排除し、薄壁物品での使用に適した新しい複合材料を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、新規の薄壁物品を提供することである。
【0020】
本発明は、材料の吸水率を高め、同時にまたその機械的特性を改善するために、生分解性補強材を材料に組み込むというコンセプトに基づいている。
【0021】
したがって、一実施形態では、本発明は、粗い木材粒子などの天然の親水性粒子と、組成物を形成するための少なくとも1つの生分解性ポリマーとの組み合わせを備える。組成物において、親水性粒子は、ポリマーと混合され、好ましくはポリマー全体にわたって混合される。吸水による親水性粒子の膨潤は、ポリマーマトリックスに亀裂を形成するのに十分な力を有し、こうして水がより効率的に材料に浸透することを可能にし、したがって材料の劣化を加速する。材料が分解すると、長いポリマー鎖が短い鎖画分に分解され、最終的に二酸化炭素(CO)、水、バイオマス、無機化合物などの天然化合物に分解され、マイクロプラスチックなどのプラスチック粒子、または環境中の有毒な残留物が残らない。
【0022】
一実施形態では、親水性粒子は、0.5mm(ふるいにかけられたサイズ)以下の粒子サイズを有する、繊維などの木材粒子を含むか、それらからなるか、または実質的にそれらからなる。
【0023】
本材料が特に適している製品は、約1.5mm以下、特に1mm以下、好ましくは少なくとも0.1mm、例えば少なくとも0.4mmの壁厚を有する。
【0024】
本発明は、堆肥化環境で急速に分解する能力を有し、また、多数の用途で利用されるのに十分な剛性を有する材料を提供するであろう。対象となる製品には、容器、ならびにストローおよびその他の薄壁のパイプやチューブなどのその他の中空製品が含まれ、それらは生分解性に機械的強度特性が組み合わされている。
【0025】
物品は、射出成形または押出成形などの従来の溶融加工方法で製造され得る。
【0026】
より具体的には、本発明は、独立請求項の特徴的な部分に記載されていることを特徴とする。
【0027】
本発明により、かなりの利点が得られる。こうして、上記のように、PLA、ポリグリコール酸(PGA)、PBATなどの従来の生分解性ポリマーは、厚さが1mm未満の物品に成形されたとき、海洋環境で通常数年または数十年のオーダーの生分解速度でのみ生分解可能であるのに対して、本発明の材料はより速く分解し、湖や海、および同様の海洋環境で40°C未満の温度でも良好な分解をもたらす。
【0028】
生分解性の薄壁製品を製造するために使用される現在の解決策と比較したとき、本発明の物品の明らかな利点には、より高い生分解速度だけでなく、より優れた美観も含まれる。本材料はまた、特に湿った暖かい環境において、良好な加工性およびより良好な寸法安定性を提供する。試験は、木材繊維の添加後の材料の弾性率の大幅な改善が達成され得ることを示している。堆肥化性と吸水挙動の改善に加えて、木材繊維を含めることで材料の延性も改善される。対照的に、生分解性ポリマーのみを使用して壁厚1mmの製品を製造すると、多くの用途には不十分で高価格の機械的特性を有する製品となる。
【0029】
さらに、本明細書に開示される天然繊維の本物品への包含は、カーボンフットプリントの減少およびさもなければ廃棄されるかまたはエネルギー源として使用される副流副産物の利用に関して、より生態学的な付加価値材料をもたらす。
【0030】
本組成物は、新しい機械の取得という形で追加費用なしに射出成形または押出を使用して物品に容易に製造することができ、すなわち、本材料を既存の機械で処理することができる。
【0031】
以下では、本発明の実施形態を、詳細な説明および添付の図面を参照して、より詳細に検討する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】製造後の3つの異なる木材繊維含有量(10w%、20w%、30w%)の薄壁カップ状製品の写真である。この図は、製品の物理的寸法を示している。
図2】50°Cの水浴に15日間浸漬した後の、3つの異なる木材繊維含有量(10w%、20w%、および30w%)の薄壁カップ状製品の写真である。この図には、木材繊維を含む製品の優れた寸法安定性を示すための参照として、PLAから作られた製品も含まれている。
図3】10°C/minの一定の加熱速度での低温結晶化温度の木材含有量への依存性を示すグラフである。
図4】加熱速度の関数としての結晶化温度の低下を示すサーモグラムのオーバーレイプロットである。
図5】さまざまな種類の添加剤を含むサンプル間の木材繊維の凝集の違いを示す写真の集合である。
図6】押出によって製造された薄壁パイプ状の製品の写真である。この図には、製品の物理的寸法が含まれている。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、薄壁の物品での使用に適した新規のバイオコンポジットを提供する。
【0034】
この文脈において、「薄壁物品」という用語は、約1.5mm以下、特に1mm以下、好ましくは0.1mmを超える壁厚を有する製品を表す。
【0035】
「バイオコンポジット」は、ポリマーマトリックス内の天然繊維の強化によって形成された複合材料である。「複合材料」は、著しく異なる化学的特性または物理的特性を有する2つ以上の構成要素を備えるか、それらからなるか、または実質的にそれらからなり、完成した構造内で構成要素が分離されおよび別個のままである材料として定義される。その結果、複合材料の特性は、個々の構成要素と比較すると異なる。
【0036】
生分解性ポリマーと天然繊維、特に本明細書に開示される木材繊維との組み合わせは、生分解性ポリマーから作られた対応する部品と比較した場合、低価格、改善された機械的耐久性、自然な外観、および物品の軽量化などの複数の利点を提供する。加えて、特に本材料は、水性条件、特に海洋条件で分解性を示す物品を製造するのに有用である。
【0037】
本文脈において、「海洋分解性」または「海洋分解可能な」および「海または湖の条件で分解可能な」という用語は、それぞれ、本組成物の特性および海や湖に広がる条件の淡水または塩水中で分解するように作製された物品の特性を示すために交換可能に使用される。これらの条件は、「周囲条件」と呼ばれ得る。通常、本材料および物品は、例えば、海水/沈殿物界面において好気性生分解にさらされるであろう。このような分解性は、ISO18830およびISO19679の規格を使用して評価され得る。海洋分解性は、定義された微生物コンソーシアムまたは天然海水種菌によって、海洋環境におけるプラスチック材料の好気性生分解を測定するためのASTM D6691-17試験方法でも評価され得る。
【0038】
一実施形態では、本組成物は、0.8~1.4g/cm(800~1400kg/m)の範囲の密度を有する。特定の一実施形態では、本組成物は、1g/cmを超える(1000kg/mを超える)密度を有し、これは、それらから作製された物品が「非浮遊(non-floating)」であることを意味する。
【0039】
現在の状況では、特に明記しない限り、パーセンテージは、問題の存在物の全体の重量から計算された重量パーセンテージとして示される。
【0040】
「モル質量」および「分子量」は、別段の定めがない限り、重量平均分子量(Mw)を指す。
【0041】
「室温」は、15~30°C、特に15~25°C、例えば約23°Cの温度を表す。
【0042】
本組成物は、一般に、植物由来の親水性粒子と混合された生分解性ポリマー、通常は熱可塑性ポリマーを備える。粒子は繊維状であり得る。
【0043】
一実施形態では、本組成物は、
融点が110°Cを超える、特に150°Cを超える、連続熱可塑性ポリマーマトリックスと、
マトリックス内に分布し、1.0mm以下のふるいにかけられたサイズを有する親水性粒子と、
を備える。
【0044】
「分散」とは、粒子がポリマーと混合されて、一般にマトリックス全体に存在するようになることを意味する。特に、それらはマトリックス内に一様にまたは均一に分布する。
【0045】
一実施形態では、親水性粒子は、特に植物由来の天然繊維材料であり、1.0mm未満のふるいにかけられたサイズを有する。
【0046】
本組成物で使用される繊維の化学構造は、通常、3つの主要な化学高分子成分、すなわち、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンに基づいている。
【0047】
通常、天然繊維で最も豊富な成分はセルロースであり、これは繊維の総質量の約26~83w%を構成する。セルロースは、分子内部の内部分子構造のタイプに基づいて、アモルファスセルロースおよび結晶セルロースにさらに分類され得、アモルファスセルロース分子は長距離秩序を欠いているが、結晶セルロースは高度に配向した微視的構造を有している。大きなセルロース分子内のアモルファス領域は、水分子が水素結合を形成し得る無配向の緩いポリマー構造内に多くの遊離ヒドロキシル基(-OH)があるため、親水性を構成する。結晶セルロースの場合はそうではない。これらの基を密封化する高度に秩序化された構造のために、水分子が結合を形成するために利用できる遊離の-OH基がないからである。
【0048】
ヘミセルロースは、キシラン、グルコマンナン、アラビノキシラン、キシログルカンなどのいくつかのヘテロポリマーの系統であり、天然繊維の総質量の約12~39w%を構成する。天然繊維の親水性は、主に非分岐のセルロース(7,000~15,000単位)分子とは対照的に、かなり短く、分岐した糖単位鎖(500~3,000単位)からなるため、主にヘミセルロースに起因し得る。したがって、分子構造の-OH基は、水分子が水素結合を形成するためにより自由に利用可能である。
【0049】
リグニンは、いくつかのタイプのヘテロポリマーからなるため、複合構造を有する分子でもある。リグニンの構造は不均一であり、定義された一次構造を欠いている。リグニンは、ヘミセルロースと共にセルロース鎖を結合するため、天然繊維の「接着剤」として機能する。セルロースやヘミセルロースの化学的性質とは対照的に、リグニンは疎水性であり、芳香族サブユニットに富む。リグニンからは、p-クマリルアルコール、コニフェリルアルコール、シナピルアルコールの3つの主成分が特定されている。
【0050】
適切な天然繊維材料は、リグノセルロース材料から直接、動物から直接、または工業プロセスの副産物または副流から得られ得る。この種の材料の例には、一年生または多年生の植物、または亜麻、麻、ジュート、コイア、綿、サイザルアサ、ケナフ、竹、草、干し草、わら、米、大豆、草の種子などの木質材料、および穀物粒からの砕いた種子、特にオート麦、小麦、ライ麦、大麦、およびココナッツの殻が含まれる。また、ウール、フェザーおよびシルクも利用され得る。
【0051】
木材材料は、マツ、トウヒ、カラマツ、スギ、カバノキ種、ハンノキ、アスペン、ポプラ、ユーカリ種および熱帯木種などの、針葉樹または広葉樹由来であり得る。好ましい実施形態では、木材材料は、広葉樹と針葉樹との両方から、特にポプラまたはアスペンなどのポプラ種の広葉樹、またはトウヒまたはマツなどのマツ属またはトウヒ属の針葉樹から選択される。
【0052】
一実施形態では、親水性繊維材料は、1mm以下のふるいにかけられたサイズを有する粒子を備える。したがって、一実施形態では、粒子の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、通常80~95重量%が、0.1~1mm、特に0.3~0.95mmの範囲のふるいにかけられたサイズを有する。
【0053】
組成物の親水性粒子の供給源として木材を使用する場合、適切な粒子は、例えば、木材の破砕、粉砕、チッピング、鋸引きまたは精製などの機械的処理によって得られ得る。一実施形態では、材料は、主に、細かく分割された木材材料によって形成される。このような材料は、「おがくず」または「木粉」として特徴付けられ得る。
【0054】
一実施形態では、材料は、木材繊維を備えるか、それからなるか、または実質的に木材繊維からなる。
【0055】
一実施形態では、材料は、木材粒子を備えるか、それからなるか、または実質的に木材粒子からなる。
【0056】
一実施形態では、材料は、木材繊維と木材粒子との混合物を備えるか、それからなるか、または実質的にそれからなる。
【0057】
本文脈において、「繊維」は、典型的には、6:1以上、例えば、10:1以上、または15:1以上のアスペクト比を有する。
【0058】
一実施形態では、材料は、立方体形状を有する粒子を含有する。
【0059】
一実施形態では、材料は、非立方体の形状を有する木材粒子を含有する。そのような粒子は、チップであると特徴付けられ得、そのような粒子は、通常、「平らな」または「平らな形状」の「プレート状」または「スレート様」である。本発明の一実施形態では、そのような形状の木材粒子は、木材原料のチッピングによって得られる。本文脈において、木材粒子は、それらが粒子の平面の最大寸法の通常40%未満、特に25%未満、例えば10%未満である平面の断面厚さを有する、一般的な平面構造を有するとき、木材チップであると見なされる。
【0060】
通常、例えば破砕、粉砕、チッピング、鋸引きまたは精製による木材の機械的処理によって、繊維状、立方体および非立方体を含む様々な形状を有する粒子を含有する細かく分割された物質が得られる。一実施形態では、組成物は、おがくずおよび木粉(サイズが1mm以下であることが好ましい)とともに、非立方体形状を有する粒子、特にチップ(サイズが1mm以下であることが好ましい)を含む。一実施形態では、木材粒子の体積の大部分は、立方体粒子(すなわち、おがくずまたは木粉粒子であり、それらの一般的な形状は非立方体ではない)、または繊維、または立方体粒子と繊維との組み合わせである。
【0061】
一実施形態では、未処理(例えば「バージン」)の木材粒子が使用される。そのような粒子は、例えば機械的に粉砕またはチッピングすることによって、未処理の木材から調製されている。
【0062】
一実施形態では、粉砕またはチッピングの前または後に、粒子に対して化学的処理または熱処理は行われていない。
【0063】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、約150°Cを超える、特に約155°Cを超える融点を有する。熱可塑性ポリマーは、特に、ポリラクチドおよびポリ(乳酸)、ポリグリコリドおよびポリ(グリコール酸)、酢酸プロピオン酸セルロース、または例えばポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシアルカノエート、を含むポリエステルなどの生分解性ポリマーの群から選択され得るが、ポリオレフィン、ポリエステル、特に生分解性ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの非生分解性ポリマーも、本明細書に記載のように、木材粒子で満たされた複合材料を達成するために使用され得る。
【0064】
好ましい実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリラクチドおよびポリ(乳酸)、ポリグリコリドおよびポリ(グリコール酸)または酢酸プロピオン酸セルロースを含むポリエステルなどの生分解性ポリマーの群から選択される。
【0065】
生分解性ポリマーの分子量は、ポリマー分子間の絡み合いを可能にするのに十分高い量であるべきであり、また溶融加工されるのに十分低い量であるべきである。
【0066】
一実施形態では、ポリ乳酸またはポリラクチド(両方とも略語「PLA」と呼ばれる)が使用される。1つの特に好ましい実施形態は、約10,000g/mol~約600,000g/mol、好ましくは約500,000g/mol未満または約400,000g/mol未満、より好ましくは約50,000g/mol~約300,000g/molまたは約30,000g/mol~約400,000g/mol、最も好ましくは約100,000g/mol~約250,000g/mol、または約50,000g/mol~約200,000g/mol、の重量平均分子量(Mw)を有するPLAポリマーまたはコポリマーを使用することを含む。
【0067】
PLAを使用する場合、PLAは半結晶性または部分的に結晶性の形態であることが好ましい。半結晶性PLAを形成するために、ポリラクチド中の繰り返し単位の少なくとも約90モルパーセントがL-またはD-ラクチドのいずれかであることが好ましく、さらにより好ましくは少なくとも約95モルパーセントである。
【0068】
別の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、約110~120°Cの範囲の融点を有する。このような熱可塑性プラスチックは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(略称PBAT)から選択され得る。
【0069】
この種類の熱可塑性ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー、例えば、アジピン酸、1,4-ブタンジオールおよびジメチルテレフタレートのコポリエステルなどのランダムコポリマーのいずれかの形態の、ニートポリマーを備え得る。
【0070】
PBATポリマーは通常、生分解性、統計的、脂肪族-芳香族コポリエステルである。適切な材料は、BASFからEcoflex(R)の商品名で供給されている。PBATのポリマー特性は、分子量が大きく長鎖分岐分子構造であるため、PE-LDと同様である。
【0071】
PBATは、そのランダムな構造により、ランダムコポリマーとして分類される。これはまた、いかなる種類の構造的秩序も広く存在しないため、それが有意な程度に結晶化できないことを意味する。これは、いくつかの物理的特性、すなわち広い融点、低い弾性率と剛性、しかし高い柔軟性と靭性につながる。
【0072】
バージンポリマーに加えて、組成物はまた、リサイクルされたポリマー材料、特にリサイクルされた生分解性ポリマーを含有し得る。さらに、組成物はまた、繊維強化PLA、セラミック材料およびガラス材料(例えば、バイオガラス、リン酸塩ガラス)などのポリエステルの複合材料を含有し得る。
【0073】
本技術の一実施形態では、組成物は、90°Cを超える融点または1~70g/10minの、特に1~30g/10minの溶融流量(MFR、190°C/2.16kg)を有するポリマーマトリックスを備える。特に、前述の特性を有するポリマーマトリックスは、ポリ(乳酸)もしくはポリラクチドまたはそれらのコポリマーを含むか、それらからなるか、または実質的にそれらからなる。特に、ポリマーは、ポリラクチドまたはポリ(乳酸)のホモポリマーを備える。
【0074】
一実施形態では、複合材料は、1~50g/10minの範囲、特に1~30g/10minの範囲(190°C/2.16kg)、特に1~30g/10minの範囲のMFRを有する。
【0075】
水にさらされるとマトリックス内部で膨潤可能である親水性の天然繊維または粒子は、マトリックス全体に分布している。一実施形態では、粒子は、マトリックス内部に均一に分布している。これは、材料の各mm内に少なくとも1つの粒子、好ましくは少なくとも2つ、特に少なくとも5つの粒子が存在することを意味する。
【0076】
一実施形態では、これらの繊維または粒子は、好ましくは、1.0mm以下のふるいにかけられたサイズを有する非フィブリル化木材粒子から形成される。さらに、木材粒子の少なくとも一部は、平らな形の木材チップの形で存在する。製品は薄壁である。すなわち、総壁厚は1.5mm以下である。
【0077】
熱可塑性ポリマーと天然繊維粒子(木材など)との重量比は、通常35:65~99:1である。好ましい実施形態では、複合材料は、熱可塑性ポリマーと天然繊維粒子との総重量のうち、1~60重量%、特に10~30重量%の天然繊維粒子を備える。したがって、好ましい実施形態では、熱可塑性ポリマーと木材粒子との重量比は、65:35~95:5、特に70:30~90:10である。
【0078】
射出成形製品の十分な表面品質および機械的性能を達成するために、加工に使用される原材料は、加工前に乾燥させる必要がある。原材料の含水量が高すぎると、加工中に水分が材料から蒸発し、製品に細孔や筋が形成される。これにより、材料特性が劣化し得る。
【0079】
天然繊維中の含水量は、処理前に2%未満に減少し、例えば、天然繊維の総重量から計算して0.025%未満であり、熱可塑性ポリマー、特にPLAなどの生分解性ポリマーまたは生体ポリマー中の水分含有量は、生分解性ポリマーまたは生体ポリマーの総重量の0.05%未満、特にそれぞれ0.025%未満に減少する。
【0080】
一実施形態では、第1の組成物は、タルク、炭酸カルシウム(CaCO)またはカオリンなどの鉱物充填材をさらに含有し得る。他の可能な充填材は、シリカから形成される。鉱物充填材の通常の含有量は、もしあれば、約0.1~40w%、特に約1~20w%の量である。他の鉱物充填材および顔料もまた、第1の組成物中に存在し得る。鉱物充填材および顔料のさらなる例は、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、二酸化チタン、酸化アルミニウム、およびアルミノケイ酸塩である。
【0081】
一実施形態では、複合材料は、複合材料に色特性を与える細かく分割された材料の粒子をさらに含有する。染色材料は、例えば、最大210°Cであり得る溶融加工温度で適切な安定性を有するバイオベースの材料から選択され得る。この用途に適した染色材料の例は、カーボンブラック(黒色顔料)、二酸化チタン(TiO)、酸化鉄、硫酸銅および炭酸銅、酸化クロム、コバルトベースの化合物および炭酸カルシウムである。
【0082】
一実施形態は、複合配合物において他の添加剤を使用することを含む。例えば、無水マレイン酸グラフト化PLA(MA-PLA)を使用して、木材繊維およびポリマーマトリックスを化学的に結合し得る。これにより、複合材料の機械的特性が向上し、天然繊維の表面にある遊離-OH基の数が減少することに基づいて、材料の耐水性も向上する。無水マレイン酸は、あらゆる種類の生分解性ポリマー(PBAT、PCLなど)にグラフト化され得る。使用されるMAグラフトポリマーの量は1~7w%、特に1~3w%である。
【0083】
オレイン酸アミド、ワックス、ステアリン酸金属(亜鉛やカルシウムなど)、鉱物充填材(タルクなど)、リグニンを加工助剤として配合物に添加して、薄壁用途向けの材料の加工性を向上させ得る。オレイン酸アミド、ワックス、およびステアリン酸金属を添加して、押出成形および射出成形中の材料の内部摩擦を低減する。これにより、処理中に熱劣化する材料固有の傾向が減少し、材料内での木材繊維の分散が向上する。さらに、これらの添加剤は離型剤として機能し、完成品の離型を容易にし、材料の加工性の向上に貢献する。オレイン酸アミド、ワックス、リグニン、およびステアリン酸金属に存在する長い脂肪鎖も、材料の吸水率を低下させ得る。金属ステアリン酸塩およびCaCOなどの一部の鉱物充填材は、処理中に天然繊維およびポリマーから放出される酸を中和する酸スカベンジャーとしても機能する。リグニンは、複合材料の機械的特性を改善することも可能である。
【0084】
オレイン酸アミドおよびワックスの一般的な投与量は0.1~7w%であるが、複合材料中のステアリン酸金属の量は0.5~7w%である。鉱物充填材の使用量は0.1w%~20w%である。リグニンの投与量は0.1~2w%である。
【0085】
一実施形態では、上記に提示された添加剤の1つまたは多数は、最大20w%、特に約10w%、好ましくは約5w%の投与量で複合配合物に組み込まれる。添加剤または添加剤の混合物は、製品のさらなる処理および製造の前に、生分解性ポリマーおよび木材チップの混合物に添加される。
【0086】
一実施形態では、天然繊維は、繊維の親水性を低下させ、したがって繊維と疎水性ポリマーマトリックスとの間の化学的適合性を高めるために化学的に修飾される。化学修飾は、酸無水物、無機酸エステル、酸塩化物などの化学試薬、および水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム(NaOHまたはKOH)などの塩基性成分を使用して実行され得る。
【0087】
別の実施形態では、天然繊維材料は、蒸気を使用して修飾される。こうして、蒸気処理抽出物によって、ヘミセルロースおよび他の容易に水溶性である化合物が天然繊維から抽出される。繊維は通常、加圧環境で繊維に蒸気を供給することにより、150~170°Cで少なくとも1時間処理される。
【0088】
一実施形態は、融点が110°Cを超え、特に150°Cを超え、MFRが1~70g/10min(190°C/2.16kg)、特に1~40g/10minの範囲である熱可塑性ポリマーから製造された薄壁複合材料の調製に関する。
【0089】
一実施形態では、ポリマーは、生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーの混合物であり、これは、99:1~35:65の重量混合比で、1.0mm以下のふるい分けサイズを有する天然繊維粒子と混合されている。
【0090】
一実施形態では、複合材料を製造する方法は、熱可塑性ポリマーを提供するステップと、1.0mm未満のふるい分けサイズを有する親水性天然繊維材料の粒子を提供するステップと、熱可塑性ポリマーを親水性天然繊維粒子と、35:65~99:1の重量混合比で溶融混合して複合材料溶融物を形成するステップと、を含む。
【0091】
溶融混合後、溶融物は通常冷却される。一実施形態では、冷却ステップは、溶融物が所定の形状を有する物品に成形される金型内で実施される。
【0092】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、微細に分割された粒子またはペレットの形態で、1.0mm未満のふるい分けサイズを有する親水性天然繊維材料の粒子と共に、溶融加工ポリマー処理デバイスの供給ゾーンに供給される。混合比は、好ましくは、重量で35:65~99:1である。
【0093】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーとして、ニートポリマーの形態で親水性天然繊維材料の粒子と混合するように供給される。
【0094】
一実施形態では、射出成形機または押出機のホッパーに供給する前に、混合物をペレット化して、顆粒またはペレットを形成し得る。
【0095】
別の実施形態では、混合物は、ペレット化工程なしで直接供給される。
【0096】
一実施形態では、天然繊維の熱劣化を防ぐために、プロセス中の処理温度は、220°C未満に保たれる。
【0097】
さらなる実施形態では、処理中のポリマーおよび天然繊維の劣化を低減または防止するために、射出成形処理で使用されるスクリューのL/D比は、少なくとも20:1である。
【0098】
一実施形態では、製品の形状を決定する金型は、使用されるポリマーのTg未満の温度に冷却される。例えば、PLAの場合、アモルファス製品を形成するために、約25~60°C、好ましくは35~55°Cの金型温度が好ましい。
【0099】
一実施形態では、生分解性ポリマーおよび天然繊維(例えば、木材)の組み合わせから作られた製品は、製品を機械的に破砕し、破砕された材料を1w%~100w%の用量で生分解性ポリマーと天然繊維とのバージン混合物に混合することによってリサイクルされる。破砕された材料とバージン材料との混合物は、最終的に押出成形機または射出成形機のホッパーに供給され、5~100w%のリサイクル材料を含む新しい製品を形成する。
【0100】
一実施形態では、上記の実施形態のいずれかに開示されるような組成物を備える、それからなる、または実質的にそれからなる容器または物品において、熱可塑性ポリマーと木材繊維との混合物の一部は、生分解性ポリマーと木材の混合物とによって形成されるリサイクル材料によって形成され、これは、射出成形または押出成形後に機械的に破砕され、生分解性ポリマーおよび木材のバージン混合物に添加される。リサイクルされた材料は、容器または物品の製造に使用される組成物の総重量の1w%~99w%、好ましくは5w%~20w%に達する。
【0101】
一実施形態では、組成物はまた、リサイクルされたポリマー材料、特にリサイクルされた生分解性ポリマーをも含み得る。さらに、組成物に使用される天然繊維はまた、機械的および/または化学的にリサイクルされ得る。
【0102】
本組成物は、1.5mm以下、特に1.0mm以下の厚さを有するシートまたはプレートに加工することができる。好ましくは、厚さは1mm以下である。このようなシートまたはプレートは、通常、機械的に一体化されている。それらは、例えば、容器または他の中空構造の壁として存在する。
【0103】
一実施形態では、生分解性ポリマーと天然繊維、例えば、粒子サイズが0.5mm未満の木材繊維との組み合わせを使用して、射出ブロー成形によって薄壁のボトルを製造する。まず、パリソンは上記のプロセスに従って射出成形によって製造され、その後、パリソンはコアピンのブロー金型に移される。ブロー金型を閉じると、材料が加熱され、空気がコアピン(約3~15バール)に供給される。これにより、材料が金型内で膨張し、所定の形状のボトルが形成される。その後、製品は機械から排出される。ボトルの壁厚は0.1mm~5mmの間で変化し、最終製品の体積範囲は10-10 cmになり得る。この用途に適した天然繊維の含有量は1~50w%である。ボトルの形状は、パリソン型の寸法を変更することで変更され得る。
【0104】
本材料は、射出ブロー成形により、壁厚が0.1mm~5mm、特に0.3~1mmのボトルの製造に使用することができる。
【0105】
一実施形態では、本複合材料から製造された容器または他の物品は、1w%~30w%の間の木材繊維を含む壁について、10mg/dm未満の10w%エタノールの総移行レベルを有する。
【0106】
一実施形態では、20w%エタノールの総移行レベルは、1w%~30w%の木材繊維を含有する壁について10mg/dm未満であり、特に、50w%エタノールの総移行レベルは1w%~30w%の木材繊維を含有する壁について10mg/dm未満であり、例えば95w%エタノールの総移行レベルは1w%~30w%の木材繊維を含有する壁について10mg/dm未満である。
【0107】
一実施形態では、本複合材料から製造された容器または他の物品は、1w%~30w%の間の木材繊維を含有する壁について、10mg/dm未満の3w%酢酸の総移行レベルを有する。
【0108】
一般に、複合材料の密度は、上記のように、0.8~1.4g/cmであり、実施形態では、密度は、1g/cmより大きく、最大1.3g/cmである。
【0109】
一実施形態では、複合材料のショアD硬度は、60~90の間である。
【0110】
以下の非限定的な例は、本技術の実施形態を示している。
【実施例
【0111】
ここで説明する実験テストの結果は、PLAを天然繊維、つまり木材、と混合することによる生分解性の改善を裏付けている。一方、木材繊維を追加すると、熱変形に耐える材料の能力が向上する。木材繊維を含めると、材料の結晶化傾向も高まる。これはガラス転移温度(Tg)が低下することを意味する。これは、材料の堆肥化性を考慮すると利点と見なされ得る。次に、本発明の特定の実施形態を、例を参照して説明する。
【0112】
第1の例は、壁厚が1mmのカップ状の製品である。カップの高さは41mm、直径は約45mmである。図1は、木材繊維の含有量が変化する3つのサンプルの写真を示している。この図は、木材繊維の含有量が10w%(A)、20w%(B)および30w%(C)の薄壁カップ状製品の例を示している。製品の物理的測定値は写真に記されている。この製品の木材繊維のサイズは0.5mm以下であった。第1の試験は、50°Cの強制対流オーブン内のウォーターバスにサンプルを浸すことによって実施された。結果は、木材繊維の添加が熱変形抵抗の大幅な改善につながることを明確に示している。
【0113】
図2にサンプル間の違いを示す。この図は、50°Cで15日間水浴に浸した後の薄壁のカップ状の製品を示している。木材繊維を含有しないサンプルでは、大きな熱変形が見られる(A)。10w%(B)の木材繊維を含有するサンプルでも小さな変形が見られる。20w%(C)および30w%(D)の木材繊維を含有するサンプルは、その形状を維持している。
【0114】
表1に、これらの材料の吸水率を示す。
【0115】
表1:壁厚1mmのカップ状製品の吸水率。サンプルは50°Cの水に浸した。
【0116】
【表1】
【0117】
総移行試験(EN1186-9およびEN1186-14に準拠)は、さまざまな模擬物質にさらされたときの薄壁のカップ状製品の不活性を研究するために実施された。試験で使用された模擬物質は、10%エタノール(EtOH)、50%EtOH、95%EtOH、および3%酢酸であった。親水性を有し、親水性物質を抽出可能な食品は、10%のEtOHと3%の酢酸に割り当てられ、一方50%のEtOHは、親油性を有し、親油性の物質(牛乳など)を抽出できる食品に割り当てられる。脂肪の多い食品は、95%エタノールを模擬物質として使用して模擬化された。試験は40°Cで10日間続いた。これは、室温以下での長期保管に相当する。また、最大70°Cで最大2時間の加熱、または最大100°Cで最大15分の加熱も含まれる。カップ状製品の総移行結果を表2に示す。
【0118】
表2:さまざまな木材含有量を有するカップ状製品(N=3)の総移行結果。食品接触を目的としたプラスチック材料に関する規制(EC)10/2011によると、総移行量は10mg/dmを超えるべきでない。総移行制限を超える場合、数字は斜体で表記される。
【0119】
【表2】
【0120】
表2の結果は、薄壁のバイオコンポジット製品は、最大70oCまたは100oCの2時間または15分間の長期保管または短期加熱には適していない場合があり得ることを示している。ただし、これらの製品は、食品との短期間の接触が発生する用途で引き続き使用され得る。これらの用途の例には、ミルクまたはジュースの容器または飲料用ストローのキャップが含まれる。ストローが、2021年までに使い捨てプラスチック以外の材料で作らなければならない製品としてEUによってリストされたことは注目に値する。
【0121】
総移行試験は、10w%の木材粒子および2w%のPLAベースの白色マスターバッチまたは0.5w%のPLAベースの赤いマスターバッチを含有するサンプルに対しても実施された。試験の結果は表3にまとめられている。結果は、これらの色の追加が材料の移行特性に影響を与えないことを裏付けている。
【0122】
表3:10w%の木材とさまざまなPLAベースのマスターバッチ含有量とのカップ状製品(N=3)の総移行結果。食品接触を目的としたプラスチック材料に関する規制(EC)10/2011によると、総移行量は10mg/dmを超えるべきではない。
【0123】
【表3】
【0124】
示差走査熱量測定(DSC)分析は、0、10、および20w%の木材を含有するサンプルで実施され、木材の添加が材料の結晶化挙動に影響を与えるかどうかを調査した。結果(図3)は、木材の添加が材料の低温結晶化時間の短縮につながることを明確に示している。図3は、一定の加熱速度(10°C/min)での材料の低温結晶化温度に対する木材含有量の影響を示している。
【0125】
図3は、結晶化温度の低下を示している。Tが過ぎた直後に低温結晶化が始まるが、この種の組成のエンタルピー変化が検出限界を下回っているためである。
【0126】
図4は、材料の低温結晶化温度に対する加熱速度の影響を示している。表示されるように、図4は、結晶化温度が加熱速度の関数として低下したことを示している。結晶化速度の低下は、木材の添加が材料の不均一な核形成を増加させ(つまり、木材繊維がポリマーの「不純物」として機能する)、ポリマーの核形成に必要なエネルギー量を減少させるという事実によるものである。これらの結果は、複合材料の生分解プロセスを加速するのは木材繊維の親水性と膨潤挙動であるだけでなく、複合材料構造への水の浸透を加速する核形成挙動の変化でもあることを意味する。
【0127】
木材繊維を含有しない材料、およびチップサイズが0.5mm未満の木粉を含有する材料(20w%)の機械的特性を、ISO527、ISO178、およびISO179に従って決定した。
【0128】
結果(表4)は、木材を含有しない材料と比較した場合、木材繊維の添加後の材料の弾性率が大幅に改善されたことを示している。堆肥化性と吸水挙動の改善に加えて、木材繊維を含めることで材料の延性も改善される。シャルピー衝撃強度と引張ひずみの低下は、木材繊維の添加により材料がより脆くなることを示している。これは、例えば材料を堆肥化するとき、材料をより小さな断片に機械的に分解しやすく、その結果、堆肥化と分解の速度が加速するため、利点と見なされ得る。
【0129】
表4:チップサイズが0.5mm未満の木材粒子を0w%および20w%含むサンプルの機械的特性。
【0130】
【表4】
【0131】
PLA、25w%の木材繊維(チップサイズ0.5mm未満)および2~4w%のさまざまな添加剤を含有する薄壁のカップ状サンプル(図1)の耐水性は、サンプルを水に浸して室温での室内試験で決定される。サンプルの組成を表5に示す。
【0132】
表5:吸水試験で使用された薄壁(1mm)のカップ状サンプルの組成。
【0133】
【表5】
【0134】
サンプルの重量増加、崩壊、膨潤および美的特性を追跡した。表6は、サンプルの耐水性に対する添加剤の影響を示している。
【0135】
表6:薄壁のカップ状サンプルの水浸試験の結果。参照サンプル(サンプル番号1)との違いは括弧内に示されている。
【0136】
【表6】
【0137】
表6に示す結果は、材料の耐水性に対する添加剤のプラスの効果を示す。最終的な目標は材料をできるだけ速く分解することであるが、分解速度を制御する機能を有することも重要である。これにより、さまざまな用途に応じて複合材料の特性を微調整することが可能である。これにより、一般的なプラスチックに代えてこの材料を使用し得る製品の数が増加する。
【0138】
組成物の加工性(表5)もまた、射出成形プロセス中に観察された。添加剤の添加により、材料の加工性が大幅に向上した。図5は、添加剤を含有しないサンプル(サンプル番号1)と添加剤を含有するサンプル(サンプル番号2~9)との繊維分布の違いを示している。組成物にアミドベースの添加剤を含むと、製品中の繊維の凝集が減少することがはっきりとわかる。2w%のMA-PLAを含有するサンプルでは、同様の向上は観察され得なかった。これは、MA-PLAがカップリング剤としてのみ機能する、つまり、天然繊維とポリマーマトリックスとの間に化学結合を形成するためである。カップリング剤は、材料の摩擦に影響を及ぼさない、すなわち、それらは潤滑効果を有さないのが一般的である。したがって、潤滑剤と組み合わせてMA-PLAを含有する組成物が試験され(サンプル9)、それによりサンプル内の繊維のより均一な分布がもたらされた。
【0139】
加工性の向上は、射出成形パラメータでも観察された。すなわち、潤滑剤を含有しない組成物(サンプル1および8)は、製品を製造するために約1500~1600barの注入圧力を必要としたが、潤滑剤を含有するサンプル(サンプル2~7および9)は、約20%低い圧力(1200~1300bar)を必要とした。圧力が低いということは、添加剤を含有する材料の場合、プロセス中に発生する摩擦が少ないことをも示している。これにより、塊の摩擦熱負荷がより低くなり、機械内の塊の滞留時間が短くなるため、天然繊維に熱劣化を引き起こすことなく、プロセスでより高い温度を使用できるようになる。処理温度が高くなると、塊の粘度が低下し、生産量が増加する。上記の観察に加えて、潤滑剤を含有するサンプルは、金型から排出されやすく、本発明で提示された添加剤が離型剤としても作用したことを示している。
【0140】
さまざまな材料のMFRは、ISO1133に従って決定された。190oC/2.16kgでのPLAのMFRは22.9g/10minであったが、PLA+20w%木材粒子(粒子サイズ0.5mm未満)およびPLA+40w%木材粒子に対応する値は、それぞれ17.0g/10minおよび7.8g/10minであった。
【0141】
材料の密度もまた、特に生分解性材料を考慮する場合に重要な指標である。通常、生分解性ポリマーは、水および最も一般的に使用されるプラスチックよりも高い密度を有する(水の密度は1.0g/cmであり、一般的なプラスチックの密度は通常1.0g/cm未満である)。これらの物質が水生環境(湖や海など)に巻き込まれると、水面に蓄積するのではなく沈下する。沈下材料は、水面に残る材料よりも海および湖でより効率的に分解される可能性が高い。
【0142】
本発明で提示される材料の密度が決定された。PLAの密度は1.287g/cmであったが、20w%の木材を含有するPLAの密度は1.272g/cmであった。これは、密度の低下に関係なく、木材の添加が材料の沈下性に悪影響を及ぼさないことを示している。
【0143】
第2の例は、壁厚が0.3mm以上の押出製品である。製品の木材含有量は10w%~20w%の間で変動し、生体ポリマー含有量は70w%~90w%の間で変動する。この製品は、プラスチックストローを置換する飲料用ストローとして使用することを目的としている。製品を図6に示す。上記のカップ状の製品と同様に、ストローの総移行値は、EN1186-9およびEN1186-14に従って決定された。ストローの使用期間は非常に短いため、試験期間は40oCで6時間および24時間に短縮された。これは、EU規則No10/2011に規定されている要件に準拠している。表7は、40oCで6時間実施した試験の結果を示し、表8は、40oCで24時間実施した試験の結果を示している。木材チップを含有するストローの水浸は、純粋な生体ポリマーストローと比較して大幅に増加した(表9および10)。
【0144】
表7:さまざまな木材含有量の薄壁ストロー(N=3)の総移行結果(6時間、40oC)。食品接触を目的としたプラスチック材料に関する規制(EC)10/2011によると、総移行量は10mg/dmを超えるべきではない。
【0145】
【表7】
【0146】
表8:さまざまな木材含有量の薄壁ストロー(N=3)の総移行結果(24時間、40oC)。食品接触を目的としたプラスチック材料に関する規制(EC)10/2011によると、総移行量は10mg/dmを超えるべきではない。
【0147】
【表8】
【0148】
表7および8の結果は、どの模擬物質でも移行限界を超えていないことを示しており、この特定の用途に対するこの材料の食品接触承認を裏付けている。
【0149】
薄壁押出製品の熱特性も、射出成形製品と同様の方法で測定された。結果は両方の材料で同様であった。つまり、木材繊維を追加すると、材料の低温結晶化時間が短縮される。
【0150】
押出材料(木材含有量10w%および20w%)の機械的試験は、パイプ状の製品と押出パイプから切り出されたフィルムとの両方に対して実施された。また、市販品との比較のため、市販の紙・プラスチック(PP/PE)ストローについても試験を実施した。表9に、引張試験の結果を示す。
【0151】
表9:2つの異なるフィルム(N=5)とすでに市販されているストロー材料の引張試験(23°C、3N/min)の結果。
【0152】
【表9】
【0153】
表9の結果は、市販の非分解性製品は、生分解性組成物と比較した場合、より優れた弾性特性を持っていることを示している。それにもかかわらず、生分解性複合材料で同様のレベルの強度が達成され、生分解性材料が同じ用途で利用され得ることを示している。紙ストローから切り出されたフィルムと比較すると、紙から作られた製品は弾性挙動を示さないため、かなりの違いが見られ得る(ヤング率または降伏強度は決定できなかった)。
【0154】
表10に、10w%および20w%の木粉を含有する材料の曲げ試験の結果を示す。射出成形製品で行われた観察と同様に、木材を追加すると、材料の延性がより高くなる。つまり、材料を曲げるのにより多くの力が必要になる。ただし、木材の含有量を減らすと、材料を破壊するためにより多くの力が必要になる。
【0155】
表10:木材含有量が10w%および20w%の材料の曲げ試験の結果。試験は、ISO178に従って、80mmのサンプル、64mmのスパンで、r=5mmのツールを使用して実施された。曲げ速度は2mm/minであった。
【0156】
【表10】
【0157】
射出成形製品と同様に、押出材料の特性は、さまざまな添加剤、生分解性ポリマーの混合物、および天然繊維を添加することにより、用途の要件に応じて変更され得る。これらの試験の結果は、この材料が飲料用ストローなどの使い捨て製品に適していることを示している。
【0158】
図6は、押出によって製造された薄壁のパイプ状の製品を示している。写真には製品の壁厚が記載されている。薄壁押出製品の吸水率(図6)は、サンプルをウォーターバスに4か月間浸漬することによって測定された。試験に使用した組成を表11に示す。試験の結果を表12に示す。
【0159】
表11:吸水試験で使用された薄壁(1mm)押出製品の組成。
【0160】
【表11】
【0161】
表12:薄壁押出製品の水浸試験の結果。
【0162】
【表12】
【0163】
射出成形サンプルの結果が示したように、木材繊維の含有量が増えると吸水率が高くなる。これは、生分解性が懸念される場合の重要な長所である。親水性成分を含まない生分解性ポリマーの吸水率は低いままであった。これにより、これらの材料が水中でゆっくりと分解する理由が説明されている。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明による材料、ならびに上記の実施形態は、例えば、化粧品、食品(冷・温)および飲料(炭酸および非炭酸)用の容器(ジャー、ボトル、チューブなど)として多数の用途を見出す。また、温飲料や冷飲料のコップ、皿、ボウル、使い捨てカトラリー、食品トレイ、ボトルや容器のキャップやクロージャー、飲料用ストロー、衣服ハンガー、3D印刷などにも利用され得る。本組成物は、射出ブロー成形または押出によって処理され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0165】
【文献】JP4699568B2(特許第4699568号公報)
【文献】US210071528B2(米国特許第210071528号明細書)
【文献】CN101429328A(中国特許出願公開第101429328号明細書)
【文献】US20030216492A1(米国特許出願公開第2003/0216492号明細書)
【文献】US6168857B1(米国特許第6168857号明細書)
【文献】US5738921A(米国特許第5738921号明細書)
【文献】US8455575(米国特許第8455575号明細書)
【文献】EP2888323B1(欧州特許第2888323号明細書)
図1
図2
図3
図4
図5
図6