(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】ワーク保持機構及びワーク保持方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250120BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20250120BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20250120BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20250120BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20250120BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20250120BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20250120BHJP
【FI】
H01L21/68 N
C09J7/30
C09J7/38
C09J5/00
C09J201/00
B32B7/12
B32B7/06
(21)【出願番号】P 2022109237
(22)【出願日】2022-07-06
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】山本 留生
(72)【発明者】
【氏名】並木 恵一
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038466(WO,A1)
【文献】特開2012-222118(JP,A)
【文献】特開2017-002334(JP,A)
【文献】特開2005-307338(JP,A)
【文献】特開2015-216364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C09J 7/30
C09J 7/38
C09J 5/00
C09J 201/00
B32B 7/12
B32B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持具と、
前記支持具の表面に設けられた接着テープと、
前記接着テープに対し前記支持具と反対側から設けられた弾性シートと、
前記弾性シートに対し、前記支持具と反対側から被覆するようにして粘着し、端部が当該弾性シートを回り込むようにして前記接着テープに粘着し、前記支持具と反対側の面にはワークが粘着可能な粘着シートとを備え、
前記弾性シートと前記接着テープとの接着力を第1接着力とし、前記粘着シートと前記接着テープとの粘着力を第1粘着力とし、前記粘着シートと前記ワークとの粘着力を第2粘着力とし、前記弾性シートと前記粘着シートとの粘着力を第3粘着力とする場合、当該第1接着力>当該第2粘着力>当該第3粘着力、かつ、当該第1粘着力>当該第2粘着力>当該第3粘着力である
ワーク保持機構。
【請求項2】
支持具と、
前記支持具の表面に設けられた接着テープと、
前記接着テープに対し前記支持具と反対側から設けられた弾性シートと、
前記弾性シートの全体を内包して当該弾性シートに粘着し、前記支持具側の面が前記接着テープに粘着し、前記支持具と反対側の面にはワークが粘着可能な粘着シートとを備え、
前記粘着シートと前記接着テープとの粘着力を第1粘着力とし、前記粘着シートと前記ワークとの粘着力を第2粘着力とし、前記弾性シートと前記粘着シートとの粘着力を第3粘着力とする場合、当該第1粘着力>当該第2粘着力>当該第3粘着力である
ワーク保持機構。
【請求項3】
前記ワークに対する表面処理中に生じる当該ワークを前記粘着シートから引き離す方向の剥離力を第1剥離力とし、当該ワークを前記粘着シートから取り外す剥離力を第2剥離力とする場合、前記第2粘着力>当該第2剥離力>前記第3粘着力>当該第1剥離力である
請求項1又は2に記載のワーク保持機構。
【請求項4】
前記第2剥離力が加わると、前記粘着シートと前記弾性シートとの間に隙間が生じ、当該粘着シートは、前記ワークとの接触部分の中央を最上部とした弧を描く形状となる
請求項3に記載のワーク保持機構。
【請求項5】
支持具の表面に接着テープを設け、
前記接着テープに対し前記支持具と反対側から弾性シートを設け、
粘着シートを、前記弾性シートに対し前記支持具と反対側から被覆するようにして粘着させ、端部が当該弾性シートを回り込むようにして前記接着テープに粘着させ、
前記粘着シートの前記支持具と反対側の面にワークを粘着させ、
前記ワークを前記粘着シートから取り外す剥離力を加えた場合に、当該粘着シートが、前記ワークとの接触部分の中央を最上部とした弧を描く形状となる
ワーク保持方法。
【請求項6】
支持具の表面に接着テープを設け、
前記接着テープに対し前記支持具と反対側から弾性シートを設け、
粘着シートを、前記弾性シートの全体を内包して当該弾性シートに粘着させ、前記支持具側の面を前記接着テープに粘着させ、
前記粘着シートの前記支持具と反対側の面にワークを粘着させ、
前記ワークを前記粘着シートから取り外す剥離力を加えた場合に、当該粘着シートが、前記ワークとの接触部分の中央を最上部とした弧を描く形状となる
ワーク保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着やスパッタリング等の表面処理を行う成膜室においてワークを保持する機構及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、ホルダ本体の表面に樹脂シートを設け、さらに樹脂シートの表面に粘着シートを設け、そこにワーク(基板)を接着させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された方法では、表面処理の際に室内の気圧を低下させた際に、ワークが粘着シートから外れてしまう虞がある。また、これを防ぐために、より粘着力の高い粘着シートを用いると、表面処理が完了した後に作業者がワークを引き剥がすことが困難になってしまうという課題があった。
【0005】
本発明では、上述の課題を鑑みて、表面処理の際にはワークが外れにくく、かつ表面処理後には作業者が容易にワークを剥がすことができる、ワーク保持機構及びワーク保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1態様に係るワーク保持機構は、
支持具と、
前記支持具の表面に設けられた接着テープと、
前記接着テープに対し前記支持具と反対側から設けられた弾性シートと、
前記弾性シートに対し、前記支持具と反対側から被覆するようにして粘着し、端部が当該弾性シートを回り込むようにして前記接着テープに粘着し、前記支持具と反対側の面にはワークが粘着可能な粘着シートとを備え、
前記弾性シートと前記接着テープとの接着力を第1接着力とし、前記粘着シートと前記接着テープとの粘着力を第1粘着力とし、前記粘着シートと前記ワークとの粘着力を第2粘着力とし、前記弾性シートと前記粘着シートとの粘着力を第3粘着力とする場合、当該第1接着力>当該第2粘着力>当該第3粘着力、かつ、当該第1粘着力>当該第2粘着力>当該第3粘着力である。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第2態様に係るワーク保持機構は、
支持具と、
前記支持具の表面に設けられた接着テープと、
前記接着テープに対し前記支持具と反対側から設けられた弾性シートと、
前記弾性シートの全体を内包して当該弾性シートに粘着し、前記支持具側の面が前記接着テープに粘着し、前記支持具と反対側の面にはワークが粘着可能な粘着シートとを備え、
前記粘着シートと前記接着テープとの粘着力を第1粘着力とし、前記粘着シートと前記ワークとの粘着力を第2粘着力とし、前記弾性シートと前記粘着シートとの粘着力を第3粘着力とする場合、当該第1粘着力>当該第2粘着力>当該第3粘着力である。
【0008】
本発明の第3態様では、
前記ワークに対する表面処理中に生じる当該ワークを前記粘着シートから引き離す方向の剥離力を第1剥離力とし、当該ワークを前記粘着シートから取り外す剥離力を第2剥離力とする場合、前記第2粘着力>当該第2剥離力>前記第3粘着力>当該第1剥離力である。
【0009】
本発明の第4態様では、
前記第2剥離力が加わると、前記粘着シートと前記弾性シートとの間に隙間が生じ、当該粘着シートは、前記ワークとの接触部分の中央を最上部とした弧を描く形状となる。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第5態様に係るワーク保持機構は、
支持具の表面に接着テープを設け、
前記接着テープに対し前記支持具と反対側から弾性シートを設け、
粘着シートを、前記弾性シートに対し前記支持具と反対側から被覆するようにして粘着させ、端部が当該弾性シートを回り込むようにして前記接着テープに粘着させ、
前記粘着シートの前記支持具と反対側の面にワークを粘着させ、
前記ワークを前記粘着シートから取り外す剥離力を加えた場合に、当該粘着シートが、前記ワークとの接触部分の中央を最上部とした弧を描く形状となる。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第6態様に係るワーク保持機構は、
支持具の表面に接着テープを設け、
前記接着テープに対し前記支持具と反対側から弾性シートを設け、
粘着シートを、前記弾性シートの全体を内包して当該弾性シートに粘着させ、前記支持具側の面を前記接着テープに粘着させ、
前記粘着シートの前記支持具と反対側の面にワークを粘着させ、
前記ワークを前記粘着シートから取り外す剥離力を加えた場合に、当該粘着シートが、前記ワークとの接触部分の中央を最上部とした弧を描く形状となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るワーク保持機構及びワーク保持方法によれば、表面処理の際にはワークが外れにくく、かつ、表面処理後には作業者が容易にワークを剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係る成膜装置の概略図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るワーク保持機構及びワークの概略的断面図である。
【
図3】ワークに対して成膜を施している最中における、本発明の実施例1に係るワーク保持機構及びワークを表わす概略的断面図である。
【
図4】作業者によってワークを外す際における、本発明の実施例1に係るワーク保持機構及びワークを表わす概略的断面図である。
【
図5】本発明の実施例2に係るワーク保持機構及びワークの概略的断面図である。
【
図6】ワークに対して成膜を施している最中における、本発明の実施例2に係るワーク保持機構及びワークを表わす概略的断面図である。
【
図7】作業者によってワークを外す際における、本発明の実施例2に係るワーク保持機構及びワークを表わす概略的断面図である。
【
図8】作業者によってワークを外す際における、本発明の実施例2に係るワーク保持機構及びワークの他の例を表わす概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るワーク保持機構及びワーク保持方法は、ワーク(基板)に対して成膜等の表面処理を行う際に、当該ワークを保持するものである。以下では、本発明に係るワーク保持機構及びワーク保持方法について、実施例により図面を用いて説明する。
【0015】
なお、下記実施例中において、「粘着」とは、液体と固体の両方の性質を有し、濡れたまま貼り付いている状態を指し、「接着」とは、(接着面の状態が)貼り付く前は液体であり、貼り付いた状態では固体になることを指すものとする。
【0016】
[実施例1]
本実施例に係るワーク保持機構1は、
図1に示すように、成膜を行う成膜装置3の構成の一部である成膜室4内において、ワーク100を保持するものである。この成膜室4には減圧手段5が設けられており、ワーク100に対して成膜する際には、室内が減圧(真空引き)された状態とする。
【0017】
なお、図示していないが、成膜室4については、ワーク保持機構1の他に真空蒸着やスパッタリングを行う各種装置を内包しており、ワーク100については、例えばガラス基板であるものとする。
【0018】
図2に示すように、本実施例に係るワーク保持機構1は、支持具(基板ホルダ)11、接着テープ12、弾性シート13、及び、粘着シート14を備えている。
【0019】
図2に示す支持具11は、表面が平らな形状の部材である。また、接着テープ12は、支持具11の表面に接着して設けられるものであり、好ましくはポリイミドテープである。
【0020】
弾性シート13は、接着テープ12に対しワーク100側から接着するようにして設けられた、弾性変形が可能なものである。粘着シート14は、弾性シート13に対してそのワーク100側(支持具11側と反対側)から被覆するようにして粘着し、端部14bが弾性シート13を回り込むようにして接着テープ12に粘着している。
【0021】
このような構成としたワーク保持機構1に対して、
図2における破線矢印で示すように支持具11と反対側からワーク100を載置することで、粘着シート14のワーク100側の面14aにワーク100を粘着させることができ、これによりワーク100を保持することができる。
【0022】
図3は、ワーク保持機構1によって保持されたワーク100に対して成膜を施している最中の、ワーク保持機構1の状態を示す概略図である。
【0023】
図3中に各黒矢印で示すように、弾性シート13と接着テープ12との接着力を第1接着力A0とし、粘着シート14と接着テープ12との粘着力を第1粘着力A1とし、粘着シート14とワーク100との粘着力を第2粘着力B1とし、弾性シート13と粘着シート14との粘着力を第3粘着力C1とする場合、第1接着力A0>第2粘着力B1>第3粘着力C1、かつ、第1粘着力A1>第2粘着力B1>第3粘着力C1であるように設定されている。
【0024】
成膜は成膜室4内を減圧(真空引き)した状態において行われる。その際、
図3における白抜き矢印で示すように、ワーク100をワーク保持機構1から引き離す方向に力が働く。以下ではこれを第1剥離力Dと呼称する。第3粘着力C1はこの第1剥離力Dに対し、第3粘着力C1>第1剥離力Dとなるように設定されている。
【0025】
すなわち、ワーク100に対して成膜が行われている最中(ワーク100に対する表面処理中)に真空引きによって発生する第1剥離力Dよりも、粘着シート14とワーク100との第3粘着力C1の方が大きい。したがって、
図3のように、ワーク保持機構1における粘着シート14のワーク100側の面14aにワーク100が粘着した状態が維持される。また、ワーク保持機構1の各構成の形状が大きく変形することもない。
【0026】
一方、
図4は、ワーク100に対して成膜が終了した後(表面処理後)、作業者によってワーク保持機構1からワーク100を外す際の、ワーク保持機構1の状態を示す概略図である。
【0027】
図4において白抜き矢印で示すように、作業者がワーク100を粘着シート14から取り外す際に加える剥離力を、第2剥離力Eと呼称する。第2粘着力B1及び第3粘着力C1は第2剥離力Eに対し、第2粘着力B1>第2剥離力E>第3粘着力C1(>第1剥離力D)となるように設定されている。
【0028】
すなわち、作業者によりワーク100を取り外す力である第2剥離力Eよりも、粘着シート14とワーク100との第2粘着力B1の方が大きい。当然これだけではワーク100を取り外すことができない。
【0029】
ただし、それと同時に、弾性シート13と粘着シート14との第3粘着力C1が第2剥離力Eよりも小さいことによって、弾性シート13のワーク100側の面13aから粘着シート14が離れ、粘着シート14と弾性シート13との間に隙間G1が生じる。この状態において粘着シート14は、ワーク100側の面14aにおけるワーク100との接触(粘着)部分が第2剥離力Eによって引っ張られることで、当該接触部分の中央14cを中心としてワーク100側に引っ張られる。
【0030】
この状態においては、上記接触部分の中央14c近傍以外がワーク100から剥がれ、結果として上記接触部分は、その中央14cを最上部とした弧を描く形状となる。
【0031】
なお、
図3,4に示すように、ワーク100が粘着シート14におけるワーク100側の面14a全体に接するようにして設けられている場合においては、上述の「(ワーク100側の面14aにおけるワーク100との)接触(粘着)部分」はそのまま「ワーク100側の面14a」に置き換えて説明することができる。
【0032】
いずれにせよ、上述の状態においては、作業者は第2剥離力Eのままの力でワーク100を外すことができる。すなわち、作業者は、本来ワーク100を取り外せない程度の力である第2剥離力Eによって、ワーク100を取り外すことができる。
【0033】
したがって、ワーク保持機構1及びワーク保持方法では、成膜等の表面処理の際には保持したワーク100が外れにくく、かつ、表面処理後には作業者が容易にワーク100を剥がすことができる。
【0034】
[実施例2]
本実施例に係るワーク保持機構2は、実施例1に係るワーク保持機構1と同様、成膜室4内においてワーク100を保持するものであり、
図5に示すように、支持具11、接着テープ12、弾性シート23、及び、粘着シート24を備えている。
なお以下では、実施例1と重複する部分については極力省略して説明する。
【0035】
図5に示す弾性シート23は、実施例1における弾性シート13と同一のものである。粘着シート24は、弾性シート23に対してその全体を内包して、内側全面24aが弾性シート23の全面に粘着し、支持具11側の外側面24bが接着テープ12に粘着している。
【0036】
このような構成としたワーク保持機構2に対して、
図5における破線矢印で示すように、支持具11と反対側からワーク100を載置することで、粘着シート24のワーク100側(支持具11と反対側)の外側面24cにワーク100を粘着させることができ、これによりワーク100を保持することができる。
【0037】
図6は、ワーク保持機構2によって保持されたワーク100に対して成膜を施している最中の、ワーク保持機構2の状態を示す概略図である。
【0038】
図6中に各黒矢印で示すように、粘着シート24と接着テープ12との粘着力を第1粘着力A2とし、粘着シート24とワーク100との粘着力を第2粘着力B2とし、弾性シート23と粘着シート24との粘着力を第3粘着力C2とする場合、第1粘着力A2>第2粘着力B2>第3粘着力C2であるように設定されている。
【0039】
実施例1において説明したとおり、成膜の際、
図6における白抜き矢印で示すように、ワーク100をワーク保持機構2から引き離す方向に第1剥離力Dが働く。第3粘着力C2はこの第1剥離力Dに対し、第3粘着力C2>第1剥離力Dとなるように設定されている。
【0040】
すなわち、ワーク100に対して成膜が行われている最中に真空引きによって発生する第1剥離力Dよりも、粘着シート14とワーク100との第3粘着力C2の方が大きい。したがって、
図6のように、ワーク保持機構1における粘着シート24のワーク100側の外側面24cにワーク100が粘着した状態が維持される。また、ワーク保持機構1の各構成が大きく変形することもない。
【0041】
一方、
図7は、ワーク100に対して成膜が終了した後、作業者によってワーク保持機構2からワーク100を取り外す際の、ワーク保持機構2の状態を示す概略図である。
【0042】
図7において白抜き矢印で示す、ワーク100を粘着シート14から作業者が取り外す際の第2剥離力Eに対し、第2粘着力B2及び第3粘着力C2は、第2粘着力B2>第2剥離力E>第3粘着力C2(>第1剥離力D)となるように設定されている。
【0043】
すなわち、作業者によりワーク100を取り外す力である第2剥離力Eよりも、粘着シート24とワーク100との第2粘着力B2の方が大きい。当然これだけでは取り外すことができない。
【0044】
ただし、それと同時に、弾性シート23と粘着シート24との第3粘着力C2が第2剥離力Eよりも小さいことによって、弾性シート23のワーク100側の面23aから粘着シート24が離れ、隙間G2が生じる。この状態において粘着シート24は、ワーク100側の外側面24cにおけるワーク100との接触(粘着)部分が第2剥離力Eによって引っ張られることで、当該接触部分の中央24dを中心としてワーク100側に引っ張られる。
【0045】
この状態においては、上記接触部分の中央24d近傍以外がワーク100から剥がれ、結果として上記接触部分は、その中央24dを最上部とした弧を描く形状となる。
【0046】
なお、
図6,7に示すように、ワーク100が粘着シート24におけるワーク100側の外側面24c全体に接するようにして設けられている場合においては、上述の「(ワーク100側の外側面24cにおけるワーク100との)接触(粘着)部分」はそのまま「ワーク100側の外側面24c」に置き換えて説明することができる。
【0047】
いずれにせよ、上述の状態においては、作業者は第2剥離力のままの力でワーク100を外すことができる。すなわち、作業者は、本来ワーク100を取り外せない程度の力である第2剥離力Eによって、ワーク100を取り外すことができる。
【0048】
また、
図8は、ワーク100に対して成膜が終了した後、作業者によってワーク保持機構2からワーク100を外す際の、ワーク保持機構2の(
図7とは異なる)状態を示す概略図である。
【0049】
図7で説明したように、第2粘着力B2>第2剥離力E>第3粘着力C2(>第1剥離力D)となるように設定される場合、
図7のように弾性シート23におけるワーク100側の面23aが粘着シート24から離れるのではなく、
図8のように支持具11側の面23bが粘着シート24から離れ、隙間G3が生じる場合も有り得る。
【0050】
そのような場合であっても、結果的に粘着シート24は、ワーク100側の外側面24cにおけるワーク100との接触部分が引っ張られることで、当該接触部分の中央24dを中心として(内包する弾性シート23ごと)ワーク100側に引っ張られる。
【0051】
この状態においては、上記接触部分の中央24d近傍以外がワーク100から剥がれ、結果として上記接触部分は、その中央24dを最上部とした弧を描く形状となる。
【0052】
なお、
図8に示すように、ワーク100が粘着シート24におけるワーク100側の外側面24c全体に接するようにして設けられている場合においては、上述の「(ワーク100側の外側面24cにおけるワーク100との)接触(粘着)部分」はそのまま「ワーク100側の外側面24c」に置き換えて説明することができる。
【0053】
いずれにせよ、上述の状態においては、作業者は第2剥離力Eのままの力でワーク100を外すことができる。すなわち、作業者は、本来ワーク100を取り外せない程度の力である第2剥離力Eによって、ワーク100を取り外すことができる。
【0054】
したがって、ワーク保持機構2及びワーク保持方法では、成膜等の表面処理の際には保持したワーク100が外れにくく、かつ、表面処理後には作業者が容易にワーク100を剥がすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、成膜等の表面処理を行う際にワークを保持する機構及び方法として好適である。
【符号の説明】
【0056】
1,2 ワーク保持機構
3 成膜装置
4 成膜室
5 減圧手段
11 支持具
12 接着テープ
13,23 弾性シート
14,24 粘着シート
100 ワーク