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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023569709
(86)(22)【出願日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2023029306
(87)【国際公開番号】W WO2024053335
(87)【国際公開日】2024-03-14
【審査請求日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2022141588
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】福島(塩飽) 乃野海
(72)【発明者】
【氏名】小澤 博道
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-033365(JP,A)
【文献】特開2015-109542(JP,A)
【文献】特開2017-112531(JP,A)
【文献】特開2019-047406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
前記振動板を前面に備えるドライバユニットと、
前記ドライバユニットを収容するユニットキャップと、
前記ユニットキャップの前面に連結され、前記振動板の前面に前側空気室を形成する音響管と、
を備え、
前記ユニットキャップは、
前記ドライバユニットの側壁を保持するユニット保持壁と、
前記ユニット保持壁の前方において、前記ユニット保持壁の内側と外側、および前記ユニットキャップの前面と後面とを連通する連通孔と、
を備え、
前記ユニット保持壁により規定されるユニット収容部の中心軸は、前記ユニットキャップの中心軸から偏心している、
イヤホン。
【請求項2】
前記音響管は、前記ユニットキャップの軸方向の中心に対して、前記ユニット保持壁の中心軸側に偏心した位置に連結されている、
請求項1記載のイヤホン。
【請求項3】
前記音響管は前記ユニットキャップの前記前面に対して斜めに連結され、
前記ドライバユニットは前記音響管の軸方向に傾斜して収容されていて、前記音響管内部に形成される前記前側空気室に正対する、
請求項1記載のイヤホン。
【請求項4】
前記ユニットキャップと前記音響管との連結部分には、前記振動板と前記前側空気室とを連通する通気孔が形成され、前記音響管の中心軸に沿う仮想直線は、前記通気孔の中心を通る、
請求項1乃至3のいずれかに記載のイヤホン。
【請求項5】
前記連通孔は、前記ユニットキャップの半径方向において、前記音響管とは反対側に形成されている、
請求項1記載のイヤホン。
【請求項6】
前記ユニットキャップは、前記ユニットキャップの後面側であって前記ユニット保持壁の半径方向外側に配設され、前記連通孔と連通する後側空気室を形成する後室壁をさらに備える、
請求項1記載のイヤホン。
【請求項7】
前記ユニットキャップの後面には、前記ドライバユニットの後面を覆うハウジングが連結され、前記ハウジングの内側の空間は、前記後側空気室と連通する、
請求項6記載のイヤホン。
【請求項8】
少なくとも、前記ユニット保持壁の前端部および前記ユニットキャップの前面の内壁のいずれかには、前記ユニット保持壁又は前記内壁を厚さ方向に切欠いた切欠部が形成され、
前記切欠部には音響抵抗材が収容され、
前記前側空気室と前記後側空気室とは、前記音響抵抗材を介して連通している、
請求項6記載のイヤホン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
外耳道に挿入する、耳栓形状のカナル型ヘッドホン(イヤホン)が知られている。
【0003】
これまでにも、例えば、ドライバユニットより出力される音波を耳内に放音する開口を有するとともに、円筒支持部材の外側面が露出された状態で該円筒支持部材におけるドライバユニット放音側の端縁に取り付けられる放音部材と、円筒支持部材の外側面が露出された状態で、該円筒支持部材のドライバユニット放音側とは反対側の端縁に取り付けられる蓋部材とを備えるイヤホンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
耳栓形状のカナル型イヤホンにおいては、小型のドライバユニットを外耳道内に設けることができるため、振動板を鼓膜に近接させることで、振動板の面積が小さくても低域音の損失を少なくすることができる。一方で、振動板と鼓膜の間の空間が小さくなるため、イヤホンを耳に挿入する際の圧力が振動板に与えられた結果、振動板が変形したり、潰れてしまったりするおそれがある。しかしながら、先行技術文献には、このような課題を解決する技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-158045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、振動板への圧力を軽減しつつ、高音質なイヤホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るイヤホンは、振動板と、前記振動板を前面に備えるドライバユニットと、前記ドライバユニットを収容するユニットキャップと、前記ユニットキャップの前面に連結され、前記振動板の前面に前側空気室を形成する音響管と、を備え、前記ユニットキャップは、前記ドライバユニットの側壁を保持するユニット保持壁と、前記ユニット保持壁の前方において、前記ユニット保持壁の内側と外側、および前記ユニットキャップの前面と後面とを連通する連通孔と、を備え、前記ユニット保持壁により規定されるユニット収容部の中心軸は、前記ユニットキャップの中心軸から偏心している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動板への圧力を軽減しつつ、高音質なイヤホンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にかかるイヤホンの実施形態を示す概略正面図であって、ハウジングを外した状態を示す図である。
図2】上記イヤホンの概略縦断面図である。
図3】上記イヤホンの概略底面図である。
図4】上記イヤホンが備える筐体の概略平面図である。
図5】上記筐体の概略斜視図である。
図6】上記イヤホンの周波数特性、および関連技術の周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかるイヤホンの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以降の説明において、ドライバユニット5の軸方向をz方向、z方向に直交する方向をx方向およびy方向ともいう。また、+z方向に向く面を後面、-z方向に向く面を前面ともいう。
【0011】
●イヤホン●
図1に示すように、イヤホン1は外観上、主として、ユニットキャップ2と、音響管3と、ハウジング4と、を有する。ユニットキャップ2は、前面側に底を有する有底円筒状の部材である。音響管3は、ユニットキャップ2の前面に連結される略円筒状の部材である。音響管3は、ユニットキャップ2の軸に対して斜めに伸び出ている。ユニットキャップ2と音響管3との連結部分は通気孔25(図2参照)が形成されており、この通気孔25により、ユニットキャップ2の内側空間と音響管3の内側空間は連通している。
【0012】
図2に示すように、ユニットキャップ2は、主として、ユニット保持壁21と、連通孔22と、後室壁23と、切欠部24と、通気孔25と、を備える。
【0013】
ユニット保持壁21は、ユニットキャップ2の内側に形成される円筒状の部材である。ユニット保持壁21は、ドライバユニット5の側壁を保持する。すなわち、ユニット保持壁21の内側空間は、ドライバユニット5を収容するユニット収容部21aとなっている。ドライバユニット5はユニット収容部21aに略隙間なく嵌り込んでいるため、ドライバユニット5の中心軸は、ユニット収容部21aの中心軸21xと略同位置である。
【0014】
ドライバユニット5の前面には、振動板6が配設されている。振動板6の前方は、通気孔25を介して音響管3の内側空間と接続されている。その結果、音響管3の内側空間は、前側空気室3sとなっている。
【0015】
ユニット保持壁21により規定されるユニット収容部21aの中心軸21xは、ユニットキャップ2の中心軸2xから偏心している。この構成によれば、ドライバユニット5がユニットキャップ2の軸方向中央に配設される構成に比べて、ユニットキャップ2が小型であってもドライバユニット5の側方に空間2sを形成することができる。
【0016】
図2および図3に示すように、ユニットキャップ2には、ユニット保持壁21の前方に連通孔22が形成されている。連通孔22は、ユニットキャップ2の前面と後面とを連通する貫通孔である。連通孔22は、ユニットキャップ2の前面であって、空間2sを区画する壁面に形成される。すなわち、連通孔22は、ユニットキャップ2の半径方向において音響管3とは反対側に形成されている。
【0017】
連通孔22は、ユニット保持壁21の半径方向内側および外側に渡って形成される。その結果、ユニット保持壁21の内側と外側とは、連通孔22およびユニットキャップ2外側の前方空間を介して連通される。また、連通孔22のy方向(図3参照)上下端部には、ユニットキャップ2の厚さを一部切り欠いた段部22aが形成され、この段部22aを適宜の形状に形成することにより通気量や空気の抜け方を調整してもよい。
なお、連通孔22の図面上の位置は例示であり、図2のように音響管3の略中央を通る縦断面に配設される構成には限定されないのは勿論である。連通孔22は、ユニット保持壁21の半径方向内側および外側にまたがって形成されていればよく、ユニット保持壁21の湾曲面に沿って、図4中の位置よりも図中上方又は下方に配設されていてもよい。その場合、連通孔22は、ユニット保持壁21の湾曲に応じて図4中の位置よりも図中左方に配設される。
【0018】
図2および図4に示すように、空間2sには、後室壁23が配設されている。後室壁23は、ユニット保持壁21の半径方向外側に配設される部分筒状体である。後室壁23は、平面視(図4参照)においてU字状になっている。また、後室壁23の内側の空間は、連通孔22と連通している。その結果、後室壁23とユニット保持壁21とに囲まれた空間は、連通孔22を介して前側空気室3sに連通する後側空気室23sとなっている。
【0019】
上述のような構成によれば、イヤホン1を外耳道に装着する際に生じる空気の圧力は、前側空気室3sから連通孔22を介して抜けていく。また、上述のような構成によれば、取り外す際に生じる振動板6を引っ張る方向の圧力、および梱包から取り出す際に生じる圧力変化に対しても、連通孔22を介して空気が流動する。したがって、振動板6と鼓膜の間の空間が小さい小型のイヤホンであっても、振動板6の前面にかかる空気の圧力変化を低減できる。ひいては、振動板6の変形や破損を防止できる。また、装着時の他、梱包や輸送時にかかる空気の圧力変化に対しても同様に軽減できる。
【0020】
また、連通孔22が空間2sと連通する構成によれば、空気を後面側に逃がすことができるため、振動板6にかかる負荷を軽減し、振動板6を応答性よく精確に振動させることができる。すなわち、高音質なイヤホンを実現できる。
【0021】
さらに、空間2sに後室壁23を配設し、後側空気室23sが形成されている構成によれば、空気の流入出が制御されるため、低域の音圧を担保できる。
【0022】
ユニットキャップ2の後面には、ドライバユニット5の後面を覆うハウジング4が連結されている。ハウジング4の内側の空間4sは、後側空気室23sと連通している。この構成によれば、後側空気室23sにおける空気の振動を空間4sにも伝達できる。また、本実施形態では、ハウジング4には、外気との図示しない連通孔が設けられているが、ハウジング4に当該連通孔を設けず、1つの連通孔22のみを介してハウジング4の内側の空間4sおよび後側空気室23sが外気と連通する構成であってもよい。
また、後室壁23を備えない構成であってもよい。この場合、ハウジング4の内側の空間4sおよび空間2sが、連通孔22を介して外気と連通する。
【0023】
図2図4および図5に示すように、切欠部24は、連通孔22周辺の壁面、すなわちユニット保持壁21の一部およびユニットキャップ2の前面の内壁を厚さ方向に切り欠いて形成されている。本実施形態においては、切欠部24は、ユニット保持壁21およびユニットキャップ2が縦断面視略L字状に切欠かれた形状である。また、切欠部24は、ユニット保持壁21を矩形に切欠かいた形状である。なお、詳細な態様は上述に限られない。
【0024】
切欠部24には音響抵抗材7が収容されている。音響抵抗材7は、切欠部24に沿って略L字状に配設される。音響抵抗材7は、連通孔22の少なくとも一部を覆っている。より具体的には、音響抵抗材7は、連通孔22のうち、ユニット収容部21aとユニットキャップ2の前方空間との間に介在している。すなわち、前側空気室3sと後側空気室23sとは、音響抵抗材7を介して連通している。
【0025】
音響管3は、ユニットキャップ2の軸方向の中心に対して、ユニット収容部21aの中心軸21x側に偏心した位置に連結されている。すなわち、音響管3により形成される前側空気室3sは、ドライバユニット5の前面側に形成される。したがって、振動板6の振動が振動板6前面から前側空気室3sに伝達される。
【0026】
ここで、振動は、周波数が高いほど直線的に進行する性質がある。この点、音響管3がドライバユニット5の位置に合わせて偏心している本構成によれば、振動板6が通気孔25を介して前側空気室3sに面しているため、中高域の音の振動を音響管3の開口まで十分に伝達できる。すなわち、本構成によれば、小型のイヤホンでありながら、中高域の音源を高音質に再生できる。
【0027】
また、より具体的には、音響管3は、音響管3の中心軸に沿う仮想直線3xが通気孔25の中心を通る位置に配設されていてもよい。この構成によれば、通気孔25が、音響管3により構成される前側空気室3sに対して十分に開口し、振動板6の振動が前側空気室3sに直線的に伝達されるため、小型のイヤホン1であっても中高域の音源を一層高音質に再生できる。
【0028】
また、図2においては、ユニット収容部21aの中心軸21xは、ユニットキャップ2の中心軸2xと略平行に描画されている。すなわち、ドライバユニット5の中心軸は、ユニットキャップ2の中心軸2xと略平行である。しかしながら、本発明の技術的範囲はこれに限られず、ユニット収容部21aの中心軸21xはユニットキャップ2の中心軸2xに対して傾いて形成されていてもよい。すなわち、ドライバユニット5がユニットキャップ2の中心軸2xに対して傾いて収容されるようになっていてもよい。
【0029】
また、音響管3はユニットキャップ2の前面に対して斜めに連結され、ドライバユニット5は音響管3の軸方向に傾斜して収容されていてもよい。ユニット収容部21aの中心軸21xおよびドライバユニット5の中心軸は、音響管3の中心軸に沿う仮想直線3xと略平行になっていてもよい。この場合、ドライバユニット5および振動板6は、通気孔25および音響管3内部に形成される前側空気室3sに正対する。この構成によっても、振動板6により生成される中高域の音の振動を音響管3の開口まで十分に伝達できる。また、イヤホン1の大きさを小型化することができる。さらに、このような構成によればイヤホンの意匠や構造設計の自由度を向上することができる。
【0030】
また、本発明にかかる構成によれば、音質を担保したままイヤホンを小型化できるため、従来よりも音響管の細いイヤホンを実現できる。したがって、本発明にかかる構成によれば、耳が小さい、又は外耳道が細いユーザにも好適なイヤホンを実現することもできる。
【0031】
●周波数応答特性
図6は、イヤホンの周波数特性を示している。すなわち横軸は周波数を、縦軸は出力レベル(dBV)を示している。破線は、関連技術に係るイヤホンの周波数特性を示しており、実線は、本発明に係るイヤホン1の周波数特性を示している。また、図6には、関連技術のイヤホンの周波数特性が重畳して示されている。関連技術のイヤホンは、ドライバユニットがユニットキャップの軸方向略中心に収容され、空間2sに対応する構成を有さない構造である。また、関連技術のイヤホンの音響管は、ユニットキャップの軸方向中心に連結されている。
【0032】
図6に示すように、イヤホン1は、1kHz超の低周波数帯域F1において、関連技術のイヤホンよりも音圧が保たれている。すなわち、イヤホン1は、ユニットキャップ2の外形が小さいにも関わらず、低域の音を高音質に再生できる。また、低周波数帯域F1よりも高周波数の帯域である高周波数帯域F2においては、関連技術のイヤホンと比較して音圧の変動幅が小さい。すなわち、イヤホン1は、高域においても安定して出力できる。
【0033】
以上説明した実施の形態によれば、振動板への圧力を軽減しつつ、高音質なイヤホンを提供できる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 イヤホン
2 ユニットキャップ
21 ユニット保持壁
21a ユニット収容部
21x ユニット収容部の中心軸
22 連通孔
23 後室壁
23s 後側空気室
3 音響管
3s 前側空気室
4 ハウジング
5 ドライバユニット
6 振動板
図1
図2
図3
図4
図5
図6