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特許7621700ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法、システム、デバイス及び媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法、システム、デバイス及び媒体
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/06 20060101AFI20250120BHJP
   A61B 5/00 20060101ALN20250120BHJP
   A61B 5/22 20060101ALN20250120BHJP
   G16H 50/30 20180101ALN20250120BHJP
【FI】
A63B71/06 J
A61B5/00 G
A61B5/22 100
G16H50/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024113719
(22)【出願日】2024-07-17
【審査請求日】2024-07-17
(31)【優先権主張番号】202310877848.1
(32)【優先日】2023-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524269686
【氏名又は名称】北京師範大学-香港浸会大学聯合国際学院
【氏名又は名称原語表記】Beijing Normal University-Hong Kong Baptist University United International College
【住所又は居所原語表記】2000 Jintong Road, Tangjiawan, Zhuhai, Guangdong Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】馬綽欣
(72)【発明者】
【氏名】彭小令
(72)【発明者】
【氏名】叶華軍
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-000646(JP,A)
【文献】特開2019-169158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/06
A61B 5/00
A61B 5/22
G16H 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリと、プロセッサと、メモリに記憶されかつプロセッサで実行できるコンピュータプログラムとを含むコンピュータデバイスであって、前記コンピュータプログラムが前記プロセッサにより実行される場合に、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法を実現し、前記運動リスク評価方法は、
評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得するステップであって、前記履歴運動データが異なる運動強度での履歴心電信号を含むステップと、
前記履歴心電信号に基づいて、異なる時間帯の心拍動間隔系列を得るステップと、
異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれ予め構築されたファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、対応する運動ファジィエントロピー系列を得るステップと、
前記運動ファジィエントロピー系列及び前記運動強度を予め構築された系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行い、変化点識別結果を得るステップであって、前記変化点識別結果が突然変化点位置及び対応する変化点運動強度を含むステップと、
前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るステップであって、前記リスク状態遷移モデルが状態レベル分位数及び状態遷移リスク関数を含むステップとを含み、
上記した前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るステップは、
前記評価待ち時点、前記運動強度及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、評価待ち時点ファジィエントロピーを得て、且つ前記評価待ち時点ファジィエントロピー及び前記状態レベル分位数に基づいて、評価待ち時点運動状態を得るステップと、
前記変化点運動強度、前記突然変化点位置及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、突然変化時点ファジィエントロピーを得て、且つ前記突然変化時点ファジィエントロピー及び前記状態レベル分位数に基づいて、次の運動状態を得るステップと、
前記評価待ち運動者の生理的特徴を取得し、前記生理的特徴、前記評価待ち時点運動状態、前記次の運動状態及び前記評価待ち時点を前記状態遷移リスク関数に入力して、対応する状態遷移リスク確率を得るステップと、
前記状態遷移リスク確率、前記次の運動状態及び対応する突然変化点位置に基づいて、前記リスク評価結果を得るステップとを備えることを、特徴とするコンピュータデバイス
【請求項2】
上記した評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得するステップの前に、前記運動リスク評価方法は、
異なる運動強度での異なる運動者の心電信号データを取得し、運動心電信号データセットを構築するステップと、
前記運動心電信号データセットに基づいて、対応する心拍動間隔系列セットを得るステップであって、前記心拍動間隔系列セットが異なる運動強度での異なる運動者の心拍動間隔系列を含むステップと、
前記心拍動間隔系列セットに基づいて、前記ファジィエントロピーモデル、前記系列変化点識別モデル及び前記リスク状態遷移モデルをそれぞれ構築するステップとを更に備えること、を特徴とする請求項1に記載のコンピュータデバイス
【請求項3】
前記ファジィエントロピーモデルの構築ステップは、
前記心拍動間隔系列セットのうちの最高運動強度及び最低運動強度での心拍動間隔系列を取得するステップと、
いくつかのファジィエントロピー算出パラメータ群を予め設定し、且つ各ファジィエントロピー算出パラメータ群に基づいて、最高運動強度及び最低運動強度での心拍動間隔系列のそれぞれに対してファジィエントロピー算出を行い、対応する最高強度ファジィエントロピー値及び最低強度ファジィエントロピー値を得るステップと、
各ファジィエントロピー算出パラメータ群の最高強度ファジィエントロピー値と最低強度ファジィエントロピー値の差分をそれぞれ算出し、且つ最大差分に対応するファジィエントロピーモデルのパラメータ群をファジィエントロピー算出に最適するパラメータ群とするステップと、
前記ファジィエントロピー算出に最適するパラメータ群に基づいて、前記ファジィエントロピーモデルを得るステップとを備えること、を特徴とする請求項2に記載のコンピュータデバイス
【請求項4】
前記系列変化点識別モデルの構築ステップは、
前記心拍動間隔系列セット及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、心拍変動ファジィエントロピー系列セットを得るステップであって、前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットが異なる運動強度での異なる運動者の心拍変動ファジィエントロピー系列を含むステップと、
尤度比検定方法及び循環バイナリセグメンテーションアルゴリズムに基づいて、異なる運動強度での心拍変動ファジィエントロピー系列に対して変化点位置の推定及び分布パラメータのフィッティングを行い、前記系列変化点識別モデルを得るステップとを備えること、を特徴とする請求項2に記載のコンピュータデバイス
【請求項5】
前記リスク状態遷移モデルの構築ステップは、
前記系列変化点識別モデルに基づいて、前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットのうちの異なる運動強度での異なる運動者の心拍変動ファジィエントロピー系列のそれぞれに対して変化点識別を行い、変化点識別結果セットを得るステップと、
前記変化点識別結果セットに対して統計分析を行い、前記状態レベル分位数を得るステップと、
前記状態レベル分位数に基づいて、前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットのうちの各運動者の運動状態を得るステップと、
すべての運動者の運動状態に基づいて、前記状態遷移リスク関数を構築するステップと、
前記状態レベル分位数及び前記状態遷移リスク関数に基づいて、前記リスク状態遷移モデルを得るステップとを備えること、を特徴とする請求項4に記載のコンピュータデバイス
【請求項6】
上記したすべての運動者の運動状態に基づいて、状態遷移リスク関数を構築するステップは、
前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットのうちの各運動者の個人の生理的特徴を取得するステップであって、前記個人の生理的特徴が身長、体重及び肺活量を含むステップと、
すべての運動者の個人の生理的特徴に基づいて、予め設定された偏尤度関数を最大化することによって、特徴的な状態遷移リスク関係値を推定するステップと、
すべての運動者の運動状態に基づいて、基準リスク関数を得るステップと、
前記特徴的な状態遷移リスク関係値及び前記基準リスク関数に基づいて、前記状態遷移リスク関数を得るステップとを備えること、を特徴とする請求項5に記載のコンピュータデバイス
【請求項7】
評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得するためのモジュールであって、前記履歴運動データが異なる運動強度での履歴心電信号を含むデータ取得モジュールと、
前記履歴心電信号に基づいて、異なる時間帯の心拍動間隔系列を得るための指標分析モジュールと、
異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれ予め構築されたファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、対応する運動ファジィエントロピー系列を得るためのファジィエントロピー算出モジュールと、
前記運動ファジィエントロピー系列及び前記運動強度を予め構築された系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行い、変化点識別結果を得るためのモジュールであって、前記変化点識別結果が突然変化点位置及び対応する変化点運動強度を含む変化点識別モジュールと、
前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るためのモジュールであって、前記リスク状態遷移モデルが状態レベル分位数及び状態遷移リスク関数を含むリスク評価モジュールと、を含み、
上記した前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るステップは、
前記評価待ち時点、前記運動強度及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、評価待ち時点ファジィエントロピーを得て、且つ前記評価待ち時点ファジィエントロピー及び前記状態レベル分位数に基づいて、評価待ち時点運動状態を得るステップと、
前記変化点運動強度、前記突然変化点位置及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、突然変化時点ファジィエントロピーを得て、且つ前記突然変化時点ファジィエントロピー及び前記状態レベル分位数に基づいて、次の運動状態を得るステップと、
前記評価待ち運動者の生理的特徴を取得し、前記生理的特徴、前記評価待ち時点運動状態、前記次の運動状態及び前記評価待ち時点を前記状態遷移リスク関数に入力して、対応する状態遷移リスク確率を得るステップと、
前記状態遷移リスク確率、前記次の運動状態及び対応する突然変化点位置に基づいて、前記リスク評価結果を得るステップとを備えること、を特徴とするファジィエントロピーに基づく運動リスク評価システム。
【請求項8】
コンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムがプロセッサにより実行される場合に、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法を実現し、前記運動リスク評価方法は、
評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得するステップであって、前記履歴運動データが異なる運動強度での履歴心電信号を含むステップと、
前記履歴心電信号に基づいて、異なる時間帯の心拍動間隔系列を得るステップと、
異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれ予め構築されたファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、対応する運動ファジィエントロピー系列を得るステップと、
前記運動ファジィエントロピー系列及び前記運動強度を予め構築された系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行い、変化点識別結果を得るステップであって、前記変化点識別結果が突然変化点位置及び対応する変化点運動強度を含むステップと、
前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るステップであって、前記リスク状態遷移モデルが状態レベル分位数及び状態遷移リスク関数を含むステップとを含み、
上記した前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るステップは、
前記評価待ち時点、前記運動強度及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、評価待ち時点ファジィエントロピーを得て、且つ前記評価待ち時点ファジィエントロピー及び前記状態レベル分位数に基づいて、評価待ち時点運動状態を得るステップと、
前記変化点運動強度、前記突然変化点位置及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、突然変化時点ファジィエントロピーを得て、且つ前記突然変化時点ファジィエントロピー及び前記状態レベル分位数に基づいて、次の運動状態を得るステップと、
前記評価待ち運動者の生理的特徴を取得し、前記生理的特徴、前記評価待ち時点運動状態、前記次の運動状態及び前記評価待ち時点を前記状態遷移リスク関数に入力して、対応する状態遷移リスク確率を得るステップと、
前記状態遷移リスク確率、前記次の運動状態及び対応する突然変化点位置に基づいて、前記リスク評価結果を得るステップとを備えることを、特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項9】
上記した評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得するステップの前に、前記運動リスク評価方法は、
異なる運動強度での異なる運動者の心電信号データを取得し、運動心電信号データセットを構築するステップと、
前記運動心電信号データセットに基づいて、対応する心拍動間隔系列セットを得るステップであって、前記心拍動間隔系列セットが異なる運動強度での異なる運動者の心拍動間隔系列を含むステップと、
前記心拍動間隔系列セットに基づいて、前記ファジィエントロピーモデル、前記系列変化点識別モデル及び前記リスク状態遷移モデルをそれぞれ構築するステップとを更に備えること、を特徴とする請求項8に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動リスク評価の技術分野に関し、特に、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法、システム、コンピュータデバイス及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
人々の生活水準及び品質の不断の向上に伴い、運動とフィットネスは人々の生活に不可欠な活動となっている。しかし、すべての運動者が専門的なトレーニングや指導を受けているわけではなく、運動とフィットネスの中で、運動強度が大きすぎることによる身体損傷のリスクが極めて発生しやすく、例えば、運動の介入強度が大きすぎると心筋虚血などが誘発される。したがって、運動者・ボディビルダーに適時かつ効果的な運動リスク評価を提供する意義は大きい。
【0003】
従来の運動リスク評価方法は、ほとんど心拍変動性(Heart rate variablity;HRV)の算出、例えば、心拍動間隔(R-R Interval)の標準偏差、時系列信号の周波数領域及び/又は時間領域の特徴などを算出することに限られており、ある程度にリスク評価の需要を満たすことができるが、このような評価方法は事後リスク評価と似ているだけであり、リアルタイム性が強くなく、かつ定量化されたリスク評価結果を与えることができず、運動の期間中にリアルタイムの運動負荷の変化に応じて運動者の将来の時点で存在する可能性のある運動リスクに対して確実な事前予断を行うことができず、かつ運動強度と運動リスクの間の関連研究に関与していなく、つまり、潜在的な運動リスクの発生を本当に効果的に回避できず、運動者の生命・健康に確実な保障を提供することができない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法を提供しており、生理的負荷強度の定量化指標HRVを運動負荷の判定の指標とし、且つ異なる運動強度でのファジィエントロピーの算出、ファジィエントロピー系列の突然変化点の予測及び状態遷移リスクの予測と結合して、運動負荷の非線形成長法則をリアルタイムに分析し、リアルタイムの運動リスク評価結果を与え、従来の運動リスク評価方法の応用欠陥を効果的に解決し、運動リスクと運動強度との間の関係を効果的に定量化し、運動リスク評価の信頼性及び正確性を向上させることができ、これにより、運動負荷の過度の増加による運動リスクを効果的に防止することである。
【0005】
上記の目的を達成するために、上記の技術的課題に対して、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法、システム、コンピュータデバイス及び記憶媒体を提供する必要がある。
【0006】
本発明の第1の実施態様では、評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得するステップであって、前記履歴運動データが異なる運動強度での履歴心電信号を含むステップ;
前記履歴心電信号に基づいて、異なる時間帯の心拍動間隔系列を得るステップ;
異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれ予め構築されたファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、対応する運動ファジィエントロピー系列を得るステップ;
前記運動ファジィエントロピー系列及び前記運動強度を予め構築された系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行い、変化点識別結果を得るステップであって、前記変化点識別結果が突然変化点位置及び対応する変化点運動強度を含むステップ;及び
前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るステップであって、前記リスク状態遷移モデルが状態レベル分位数及び状態遷移リスク関数を含むステップ、を備える
ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法を提供する。
【0007】
更に、上記した評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得するステップの前に、
異なる運動強度での異なる運動者の心電信号データを取得し、運動心電信号データセットを構築するステップ;
前記運動心電信号データセットに基づいて、対応する心拍動間隔系列セットを得るステップであって、前記心拍動間隔系列セットが異なる運動強度での異なる運動者の心拍動間隔系列を含むステップ;及び
前記心拍動間隔系列セットに基づいて、前記ファジィエントロピーモデル、前記系列変化点識別モデル及び前記リスク状態遷移モデルをそれぞれ構築するステップを更に備える。
【0008】
更に、前記ファジィエントロピーモデルの構築ステップは、
前記心拍動間隔系列セットのうちの最高運動強度及び最低運動強度での心拍動間隔系列を取得するステップ;
いくつかのファジィエントロピー算出パラメータ群を予め設定し、且つ各ファジィエントロピー算出パラメータ群に基づいて、最高運動強度及び最低運動強度での心拍動間隔系列のそれぞれに対してファジィエントロピー算出を行い、対応する最高強度ファジィエントロピー値及び最低強度ファジィエントロピー値を得るステップ;
各ファジィエントロピー算出パラメータ群の最高強度ファジィエントロピー値と最低強度ファジィエントロピー値の差分をそれぞれ算出し、且つ最大差分に対応するファジィエントロピーモデルのパラメータ群をファジィエントロピー算出に最適するパラメータ群とするステップ;及び
前記ファジィエントロピー算出に最適するパラメータ群に基づいて、前記ファジィエントロピーモデルを得るステップを備える。
【0009】
更に、前記系列変化点識別モデルの構築ステップは、
前記心拍動間隔系列セット及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、心拍変動ファジィエントロピー系列セットを得るステップであって、前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットが異なる運動強度での異なる運動者の心拍変動ファジィエントロピー系列を含むステップ;及び
尤度比検定方法及び循環バイナリセグメンテーションアルゴリズムに基づいて、異なる運動強度での心拍変動ファジィエントロピー系列に対して変化点位置の推定及び分布パラメータのフィッティングを行い、前記系列変化点識別モデルを得るステップを備える。
【0010】
更に、前記リスク状態遷移モデルの構築ステップは、
前記系列変化点識別モデルに基づいて、前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットのうちの異なる運動強度での異なる運動者の心拍変動ファジィエントロピー系列のそれぞれに対して変化点識別を行い、変化点識別結果セットを得るステップ;
前記変化点識別結果セットに対して統計分析を行い、前記状態レベル分位数を得るステップ;
前記状態レベル分位数に基づいて、前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットのうちの各運動者の運動状態を得るステップ;
すべての運動者の運動状態に基づいて、前記状態遷移リスク関数を構築するステップ;及び
前記状態レベル分位数及び前記状態遷移リスク関数に基づいて、前記リスク状態遷移モデルを得るステップを備える。
【0011】
更に、上記したすべての運動者の運動状態に基づいて、状態遷移リスク関数を構築するステップは、
前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットのうちの各運動者の個人の生理的特徴を取得するステップであって、前記個人の生理的特徴が身長、体重及び肺活量を含むステップ;
すべての運動者の個人の生理的特徴に基づいて、予め設定された偏尤度関数を最大化することによって、特徴的な状態遷移リスク関係値を推定するステップ;
すべての運動者の運動状態に基づいて、基準リスク関数を得るステップ;及び
前記特徴的な状態遷移リスク関係値及び前記基準リスク関数に基づいて、前記状態遷移リスク関数を得るステップを備える。
【0012】
更に、上記した前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るステップは、
前記評価待ち時点、前記運動強度及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、評価待ち時点ファジィエントロピーを得て、且つ前記評価待ち時点ファジィエントロピー及び前記状態レベル分位数に基づいて、評価待ち時点運動状態を得るステップ;
前記変化点運動強度、前記突然変化点位置及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、突然変化時点ファジィエントロピーを得て、且つ前記突然変化時点ファジィエントロピー及び前記状態レベル分位数に基づいて、次の運動状態を得るステップ;
前記評価待ち運動者の生理的特徴を取得し、前記生理的特徴、前記評価待ち時点運動状態、前記次の運動状態及び前記評価待ち時点を前記状態遷移リスク関数に入力して、対応する状態遷移リスク確率を得るステップ;及び
前記状態遷移リスク確率、前記次の運動状態及び対応する突然変化点位置に基づいて、前記リスク評価結果を得るステップを備える。
【0013】
本発明の第2の実施態様では、評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得するためのモジュールであって、前記履歴運動データが異なる運動強度での履歴心電信号を含むデータ取得モジュール;
前記履歴心電信号に基づいて、異なる時間帯の心拍動間隔系列を得るための指標分析モジュール;
異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれ予め構築されたファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、対応する運動ファジィエントロピー系列を得るためのファジィエントロピー算出モジュール;
前記運動ファジィエントロピー系列及び前記運動強度を予め構築された系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行い、変化点識別結果を得るためのモジュールであって、前記変化点識別結果がいくつかの突然変化点及び対応する突然変化運動強度を含む変化点識別モジュール;及び
前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るためのモジュールであって、前記リスク状態遷移モデルが状態レベル分位数及び状態遷移リスク関数を含むリスク評価モジュール、を備える
ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価システムを提供する。
【0014】
本発明の第3の実施態様では、メモリと、プロセッサと、メモリに記憶されかつプロセッサで実行できるコンピュータプログラムとを含むコンピュータデバイスであって、前記コンピュータプログラムが前記プロセッサにより実行される場合に、前記方法のステップを実現するコンピュータデバイスを更に提供する。
【0015】
本発明の第4の実施態様では、コンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムがプロセッサにより実行される場合に、前記方法のステップを実現するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を更に提供する。
【0016】
前記本出願は、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法、システム、コンピュータデバイス及び記憶媒体を提供しており、前記方法によって、評価待ち運動者の評価待ち時点の前の評価待ち時点と同じ運動強度での履歴心電信号を取得し、履歴心電信号に基づいて、異なる時間帯の心拍動間隔系列を得て、かつ異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれ予め構築されたファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、対応する運動ファジィエントロピー系列を得た後、運動ファジィエントロピー系列及び運動強度を予め構築された系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行い、変化点識別結果を得て、そして評価待ち時点、変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、評価待ち時点のリスク評価結果を得るという技術方案を実現している。従来の技術と比較して、このファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法は、心拍変動性の無秩序度及び複雑度を確実に定量化することができるだけでなく、運動負荷の非線形成長法則をリアルタイムに分析し、運動リスクと運動強度との間の関係を効果的に定量化し、さらに運動リスク評価の信頼性及び正確性を向上させ、運動負荷の過度の増加による運動リスクを効果的に防止し、運動者の生命・健康に確実な保障を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施態様におけるファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法の応用場面の模式図である。
図2】本発明の実施態様におけるファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法の流れの模式図である。
図3】本発明の実施態様における心拍変動ファジィエントロピー系列のアナログシミュレーション結果の模式図である。
図4】本発明の実施態様における運動の過程中の運動リスク状態遷移の模式図である。
図5】本発明の実施態様におけるファジィエントロピーに基づく運動リスク評価システムの構成模式図である。
図6】本発明の実施態様におけるコンピュータデバイスの内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願の目的、技術方案及び有益な効果をより明確にするために、以下、添付図面及び実施態様と結合して、本発明をさらに詳細に説明するが、以下に説明する実施態様は、本発明の実施態様の一部であり、本発明を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を制限するものではないことは明らかである。本発明における実施態様に基づいて、当業者が創造的な労働をすることなく得られるすべての他の実施態様は、いずれも本発明の保護の範囲に属する。
【0019】
本発明が提供するファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法は、異なる運動強度での心拍変動性の指標HRVを基礎データとし、ファジィエントロピー(Fuzzy entropy)アルゴリズムを採用して心拍変動性の無秩序度及び複雑度を定量化し、得られた異なる運動強度(出力、単位w)での運動ファジィエントロピー系列に対して突然変化点識別分析を行い、且つ対応する変化点識別結果を状態遷移リスク評価の根拠として、運動履歴情報に基づいてある運動強度での運動状態遷移(運動ファジィエントロピーに突然変化点を出現する)の確率を推定しえるリアルタイムの運動リスク評価方法であり、図1に示すような端末又はサーバに応用することができる。ここで、端末は、様々なパソコン、ノート型コンピュータ、スマートフォン、タブレット型コンピュータ及び携帯型ウェアラブルデバイスであってもよいが、これらに限定されず、サーバは、独立したサーバや複数のサーバからなるサーバクラスタによって実現されてもよい。サーバは、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法を採用して運動者に対してリアルタイムの運動リスク評価を行い、かつ得られたリスク評価結果を端末に送信して端末の分析に使用するようにしたり、後の研究に使用するためにサーバに保持することができる。以下の実施態様では、本発明が提供するファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法を詳述する。
【0020】
一つの実施態様では、図2に示すように、以下のステップを含むファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法を提供する。
【0021】
S11、評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得し、前記履歴運動データが異なる運動強度での履歴心電信号を含む。ここで、運動強度は、実際の運動の過程中で運動者が受ける物理的負荷であると理解でき、運動の過程全体において、運動時間の長さが増加するにつれて、異なる時間帯において運動者が実際の運動需要に応じて運動強度を調整することができ、それに対応して、異なる運動強度での心電信号も異なり、異なる心電信号データに反映されるHRV指標も異なり、含まれる潜在的な運動リスクも異なる。実際のリスク評価において、HRV指標が高いほど心血管機能及びストレス耐性が強く、運動リスクが低いことを示し、逆に、運動リスクが高いことを示す。運動強度が運動リスクに直接関係し、且つ実際の運動時間の長さ及び異なる運動強度の切り替えも運動リスクレベルに影響することを考慮して、ある運動時点のある運動強度でのリスク評価は、すべての履歴データに基づいて分析するだけで信頼性があり、本実施態様では、ある運動者のある運動時点(評価待ち時点)に対してリスク評価を行うとき、この運動時点の運動強度を取得するとともに、この運動者の評価待ち時点の前のすべての履歴心電信号データを後の評価分析の基礎データとして取得することが好ましい。
【0022】
実際のリスク評価の応用において、運動リスクに対するリアルタイムのインテリジェント評価を実現し、運動リスク評価のリアルタイム性及び効率性を保証するために、評価待ち運動者の前記評価待ちデータを取得した後に、それを自動的に分析する必要があり、したがって、異なる運動強度での異なる運動者の心電信号データを収集して必要な自動化分析モデルを構築することが必要であり、すなわち、評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得するステップの前に、以下のことを更に備える。
【0023】
異なる運動強度での異なる運動者の心電信号データを取得し、運動心電信号データセットを構築する。ここで、異なる運動強度での異なる運動者の心電信号データは、従来の運動リスク研究で収集した関連心電信号データを採用することができ、ここでは、具体的な取得方式は限定されない。なお、本実施態様で構築された運動心電信号データセットは、本発明のリスク評価に使用されるファジィエントロピーモデル、系列変化点識別モデル及びリスク状態遷移モデルのモデリングの基礎となる。
【0024】
前記運動心電信号データセットに基づいて、対応する心拍動間隔系列セットを得て、前記心拍動間隔系列セットが異なる運動強度での異なる運動者の心拍動間隔系列を含む。ここで、心拍動間隔系列は、異なる運動強度での心電信号データにおけるピークR点に基づく間隔時系列であると理解でき、心電R-R間隔系列とも呼ぶことができる。実際のリスク評価において、心拍動間隔系列におけるR-R間隔の差が大きいほど、HRVが高く、運動リスクが低いことを示し、逆に、心拍動間隔系列におけるR-R間隔の差が小さいほど、HRVが小さく、運動リスクが高いことを示す。
【0025】
前記心拍動間隔系列セットに基づいて、前記ファジィエントロピーモデル、前記系列変化点識別モデル及び前記リスク状態遷移モデルをそれぞれ構築する。
【0026】
前記ファジィエントロピーモデルは、心拍動間隔系列に対してファジィエントロピー算出を行うためのデータモデルであると理解でき、これは、運動心電信号データセットに基づいて最適なファジィエントロピー算出パラメータを決定したファジィエントロピー算出式である。ある一定の運動強度で、運動者は自転車エルゴメーターの運動を続けると仮定し、ある時間帯[t-h,t+h]において、心拍動間隔系列u={u(1),u(2),...,u(N)}を計測し、且つm、r及びNはそれぞれ位相空間の次元数、類似許容度及び心拍動間隔系列の長さを示す場合に、ファジィエントロピー算出式を採用してファジィエントロピー算出を行う具体的なプロセスは以下の通りである。
【0027】
1)非負整数m(m≦N-2)を導入し、uに対して位相空間の再構築を行い、
(8)
【0028】
式(8)におけるファジィエントロピーFuzzyEn(m,r,N)の値は、算出パラメータm、r及びNの選択に依存するため、ファジィエントロピーを採用して心拍変動性を正確に定量化することを保証するために、本実施態様では、目的に応じて算出パラメータm、r及びNの最適値の選択方法を設計し、さらに理想的なファジィエントロピーモデルを得る。具体的には、前記ファジィエントロピーモデルの構築ステップは、以下のことを備える。
【0029】
前記心拍動間隔系列セットのうちの最高運動強度及び最低運動強度での心拍動間隔系列を取得する。ここで、上記のように、心拍動間隔系列セットは、異なる運動強度での心電データから算出された心拍動間隔系列を含み、この系列セットのうちの運動強度を順序付け、最高運動強度の値及び最低運動強度の値を見つけて、且つ対応する心拍動間隔系列を得て、パラメータm、r及びNの最適値の選択の根拠とする。
【0030】
いくつかのファジィエントロピー算出パラメータ群を予め設定し、且つ各ファジィエントロピー算出パラメータ群に基づいて、最高運動強度及び最低運動強度での心拍動間隔系列のそれぞれに対してファジィエントロピー算出を行い、対応する最高強度ファジィエントロピー値及び最低強度ファジィエントロピー値を得る。ここで、ファジィエントロピー算出パラメータ群は、経験に応じて設定された異なる候補群であり、又は、各パラメータの取りうる値の範囲を順番に羅列して組み合わせるように得られた候補群であると理解でき、ファジィエントロピー算出パラメータ群を予め設定する具体的な方式は、実際の応用需要に応じて決定することができ、ここでは、具体的な限定はしなく、それに対応して、各予め設定されたファジィエントロピー算出パラメータ群において、いずれも最高運動強度での心拍動間隔系列に対応するファジィエントロピー値及び最低運動強度での心拍動間隔系列に対応するファジィエントロピー値を算出する必要がある。
【0031】
各ファジィエントロピー算出パラメータ群の最高強度ファジィエントロピー値と最低強度ファジィエントロピー値の差分をそれぞれ算出し、且つ最大差分に対応するファジィエントロピーモデルのパラメータ群をファジィエントロピー算出に最適するパラメータ群とする。ここで、ファジィエントロピー算出に最適するパラメータ群を選択する原則は、ファジィエントロピー算出が異なる運動強度での心拍変動性の差異をできるだけ反映し、心拍変動性を確実に定量化するという考量に基づいて、運動強度の差が最も大きい場合にファジィエントロピー値の差も最も大きくなることを保証することが好ましい選別原則である。すなわち、ファジィエントロピー算出に最適するパラメータ群は、すべての予め設定されたファジィエントロピー算出パラメータ群のうちの最高強度ファジィエントロピー値と最低強度ファジィエントロピー値の差が最も大きいファジィエントロピー算出パラメータ群であると理解できる。
【0032】
前記ファジィエントロピー算出に最適するパラメータ群に基づいて、前記ファジィエントロピーモデルを得る。ここで、ファジィエントロピーモデルは、式(8)の中の算出パラメータm、r及びNのそれぞれを前記方法のステップによって得られたファジィエントロピー算出に最適するパラメータ群のうちの対応するパラメータ値に置き換えた後に決定された、異なる運動強度での心拍変動性を確実に定量化するという要求を満たすことができる最適なファジィエントロピー算出式であると理解できる。
【0033】
なお、前記ファジィエントロピー算出に最適するパラメータ群の決定については、交差検証(cross validation)という考え方を利用して、心拍動間隔系列セットのうちの全ての心拍動間隔系列を一定の割合でトレーニングセットとテストセットに分割し、トレーニングセットを用いてm、r及びNの最適な取りうる値を見つけて、そして、テストセットを用いてパラメータの最適な取りうる値の有効性を検証することにより、選別してもよい。
【0034】
前記系列変化点識別モデルは、前記心拍動間隔系列セット及びファジィエントロピーモデルに基づいて算出された異なる運動強度でのファジィエントロピー系列をフィッティングして得られた、異なる運動強度でのファジィエントロピー系列に対して有効な変化点識別を行うことに使用できる正規分布モデルであると理解できる。具体的には、前記系列変化点識別モデルの構築ステップは、以下のことを備える。
【0035】
前記心拍動間隔系列セット及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、心拍変動ファジィエントロピー系列セットを得て、前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットが異なる運動強度での異なる運動者の心拍変動ファジィエントロピー系列を含む。ここで、心拍変動ファジィエントロピー系列は、ある運動強度(負荷出力の大きさがx)で各観測時点tに対応する最適なパラメータファジィエントロピーFuzzyEnOptim(x,t)からなるファジィエントロピー系列であると理解できる。なお、観測時点tに対応する最適なパラメータファジィエントロピーFuzzyEnOptim(x,t)は、運動強度(出力がx)で[t-h,t+h]という時間帯におけるサブ系列に基づいて算出された最適なパラメータファジィエントロピーであると理解でき、かつhが時間帯の調整間隔である。ある心拍動間隔系列に対応する観測点時系列t={t1,...,tk}にK個の観測時点tがあると、このK個の観測時点により、心拍動間隔系列全体を各観測時点tに対応するK個のサブ系列に分割しており、例えば、ある運動者を6時間観測したが、現在、観測時系列全体を3個のサブ系列に等分してファジィエントロピーをそれぞれ算出し、かつ、K=3、t=1、t=3、t=5、h=1とし、得られた3個のサブ系列は、それぞれ[0,2]時間帯の1番目のサブ系列、[2,4]時間帯の2番目のサブ系列、及び[4,6]時間帯の3番目のサブ系列であり、分割された各サブ系列はいずれも[t-h,t+h]という時間帯に対応し、ファジィエントロピーモデルを採用することで各サブ系列のファジィエントロピーを算出し、更に心拍変動ファジィエントロピー系列全体を得ることができる。
【0036】
尤度比検定方法及び循環バイナリセグメンテーションアルゴリズムに基づいて、異なる運動強度での心拍変動ファジィエントロピー系列に対して変化点位置の推定及び分布パラメータのフィッティングを行い、
前記系列変化点識別モデルを得る。ここで、変化点位置は、1つの時系列で著しい変化が発生した点の位置(時点)であると理解でき、データの分布、平均値、傾向又は他の統計的特徴の突然変化を示すことができ、
例えば、ある時系列の長さはK=500であり、500個の観測値があり、且つ図3に示すアナログシミュレーション結果から分かるように、この系列に3個の変化点が存在し、且つ変化点の位置
【0037】
系列変化点識別モデルは、全ての運動強度及び全てのサブ系列に対応するファジィエントロピーをまとめて一つのデータセットを構成しそのデータセットに基づいて推定することによって得られた、全ての運動強度での全てのサブ系列の算出により得られたファジィエントロピーの変化点の識別予測に適用できる分布モデルであると理解できる。実際の応用では、具体的には、尤度比検定方法及び循環バイナリセグメンテーションアルゴリズム(generic binary segmentation algorithm)を採用して、長さがKである時系列FuzzyEnOptim(x,t),t=t1,...,tに対して、変化点数の識別、変化点位置の予測、及び各変化点により分割されたサブ系列に対応する正規分布モデルのパラメータの推定を行う詳細なプロセスは、以下の通りである。
【0038】
ステップ1:全長がKである時系列FuzzyEnOptim(x,t),t=t1,...,tに対して、まず、時系列全体を2つのセグメントに分割する1番目の変化点を見つけ、変化点の位置がその中の一つの時刻t_kに位置すると仮定するが、具体的にどの時刻に位置するか、すなわち、取りうる値がどの値であるかは、不明であり、まず、この変化点位置をk(すな
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
ステップ2:前のステップで分割された2つのサブ系列に対して、前のステップでのパラメータの推定及び尤度比検定という操作をそれぞれ行い、2つのサブ系列にそれぞれ新しい変化点が存在するかどうかを確認する。例えば、2つのサブ系列にいずれも新しい変化点が見つかると、それぞれが2つに分割し続け、合計4つのサブ系列が形成され、もちろん、ステップ1で得られた2つのサブ系列にいずれも新しい変化点が存在しなく、又は1つのサブ系列のみに新しい変化点が存在する可能性もある。
【0043】
ステップ3:現在のすべてのサブ系列に対して循環バイナリセグメンテーションアルゴリズムを実行しても新しい変化点が見つからないまで、以上の操作を繰り返して、系列全体の変化点の個数、各変化点の位置を決定して、対応する分布モデルを得る。
【0044】
本実施態様では、尤度比検定方法及び循環バイナリセグメンテーションアルゴリズムを採用して、異なる運動強度での心拍変動ファジィエントロピー系列に対して変化点位置の推定及び分布パラメータのフィッティングを行って得られた系列変化点識別モデルは、心拍変動ファジィエントロピー系列の取りうる値が運動強度x及び観測時刻系列tの両方に関連することを効果的に検証することができ、且つ変化点により分割された各ファジィエ
たす。同時に、得られた系列変化点識別モデルは、異なる運動強度でのファジィエントロピー系列の変化点の正確な識別に適用することができ、良好な普遍性及び汎用性を有し、後のリスク状態評価に確実な根拠を提供する。
【0045】
実際の応用では、リスク状態遷移モデルは、評価待ち運動者の評価待ち時点及び履歴心電データに対応する心拍変動ファジィエントロピー系列の変化点識別結果に基づいて、次の運動状態、突然変化時点(次の状態に入る時点)、及び評価待ち時点に対応する運動状態から次の運動状態に遷移する状態遷移リスク確率を含むリスク評価結果を直接に与えるインテリジェントな状態分析モデルであると理解できる。このモデルも同様に一定のデータセットに基づいて事前にトレーニングされる必要があり、前記ファジィエントロピーモデル及び系列変化点識別モデルとの応用の一致性を保証し、さらにリスク評価の正確性及び信頼性を保証するために、本実施態様では、すでにトレーニングされたファジィエントロピーモデル及び系列変化点識別モデルを用いて運動心電信号データセットの分析によって得られたデータに基づいて分析構築を行うことが好ましい。具体的には、前記リスク状態遷移モデルの構築ステップは、以下のことを備える。
【0046】
前記系列変化点識別モデルに基づいて、前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットのうちの異なる運動強度での異なる運動者の心拍変動ファジィエントロピー系列のそれぞれに対して変化点識別を行い、変化点識別結果セットを得る。ここで、変化点識別結果セットは、上記した得られた系列変化点識別モデルに基づいて心拍変動ファジィエントロピー系列セットのうちの各心拍変動ファジィエントロピー系列に対して変化点識別を行うことで得られた各系列変化点識別結果の群であると理解できる。
【0047】
前記変化点識別結果セットに対して統計分析を行い、前記状態レベル分位数を得る。ここで、状態レベル分位数の個数及び各分位数の具体的な取りうる値は、いずれも実際の応用需要に応じて設定することができ、例えば、五分位数を選択して、且つそれぞれが95%、75%、50%、25%、5%の分位数の値であることを決定することで、実際に得られた変化点識別結果セットのうちの変化点位置及び運動強度をまとめて統計して、図4に示す運動状態リスクが累増する変化点範囲Q,...,Qを得ることができる。実際の応用では、運動者の心拍変動ファジィエントロピー系列が一つの変化点の分位数に達すると、1回の運動状態の遷移を経たことを示す。図4に示すように、経路「Q-Q」は、運動者が極低運動リスク状態から低リスク状態に入ることを示し、「Q-Q」は、運動者が高リスク状態から極高運動リスク状態に入ることを示す。なお、ここで得られた状態レベル分位数は、ある時点のファジィエントロピー値に基づいて対応する運動状態を決定すること、及び次の近隣の変化点位置に基づいて次の運動状態を決定することにのみ使用することができ、実際に状態遷移が発生するリスク確率を定量化することができなく、運動リスクを定量化して正確に評価するために、本実施態様では、運動者が現在のある運動状態から次の運動状態に入る時点及び確率を運動者の生理的特徴及び評価時点に基づいて正確に予断できる数学的モデルを以下の方法により構築することが好ましい。
【0048】
前記状態レベル分位数に基づいて、前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットのうちの各運動者の運動状態を得る。
【0049】
すべての運動者の運動状態に基づいて、前記状態遷移リスク関数を構築する。ここで、状態遷移リスク関数は次のように表現される。
【0050】
【0051】
【0052】
前記心拍変動ファジィエントロピー系列セットのうちの各運動者の個人の生理的特徴を取得し、前記個人の生理的特徴が身長、体重及び肺活量を含む。
【0053】
すべての運動者の個人の生理的特徴に基づいて、予め設定された偏尤度関数を最大化することによって、特徴的な状態遷移リスク関係値を推定する。ここで、予め設定された
【0054】
【0055】
すべての運動者の運動状態に基づいて、基準リスク関数を得る。ここで、基準リスク関数は、ブレスロー(Breslow)推定量によって算出されることが好ましく、次のように表される。
【0056】
【0057】
前記特徴的な状態遷移リスク関係値及び前記基準リスク関数に基づいて、前記状態遷移リスク関数を得る。
【0058】
前記状態レベル分位数及び前記状態遷移リスク関数に基づいて、前記リスク状態遷移モデルを得る。
【0059】
本実施態様では、各種の運動状態を定義することができるファジィエントロピー時系列の変化点の分位数を統計分析によって決定し、そして隣接する運動状態の間の転移リスク確率を正確に与えることができる状態転移リスク関数を偏尤度関数を極大化する方法によって推定することで、各運動者の履歴心電信号データの各時間帯の運動状態転移及び対応する転移リスクに基づいてリアルタイムの確実な評価を直接、効果的に行うことができ、リアルタイムのインテリジェントリスク評価に確実な保障を提供する。
【0060】
S12、前記履歴心電信号に基づいて、異なる時間帯の心拍動間隔系列を得る。ここで、心拍動間隔系列の異なる時間帯は、前記ファジィエントロピーモデルを構築する時の分割方式によって得られることができ、同時に、心拍動間隔系列の取得も、前記運動心電信号データセットに対する処理方法を参照することができ、モデルのトレーニングデータと実際の応用データとの処理の一致性を保証する面から、後の心拍動間隔系列を用いてリスク評価を行うことに確実なデータサポートを提供する。
【0061】
S13、異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれ予め構築されたファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、対応する運動ファジィエントロピー系列を得る。ここで、運動ファジィエントロピー系列の取得プロセスは、前記ファジィエントロピーモデルの構築ステップにおける関連内容を参照することができるので、ここでは詳しく説明しない。
【0062】
S14、前記運動ファジィエントロピー系列及び前記運動強度を予め構築された系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行い、変化点識別結果を得て、前記変化点識別結果が突然変化点位置及び対応する変化点運動強度を含む。ここで、突然変化点位置は、次の運動状態に入る位置であると理解でき、対応する突然変化点位置は、系列における突然変化点に対応する時刻、すなわち次の運動状態に入る時点であると理解できる。
【0063】
S15、前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得て、前記リスク状態遷移モデルが状態レベル分位数及び状態遷移リスク関数を含む。ここで、状態レベル分位数は、評価待ち時点及び突然変化点位置に基づいて評価待ち時点の運動状態、及び突然変化点位置に対応する運動状態を決定するリスク状態レベル分割範囲であると理解でき、状態遷移リスク関数は、評価待ち時点の運動状態及び突然変化点に対応する運動状態、及び運動者の生理的特徴に基づいて対応する状態遷移の潜在的なリスクの大きさを直接に得るモデルであると理解できる。具体的には、上記した前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るステップは、以下のことを備える。
【0064】
前記評価待ち時点、前記運動強度及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、評価待ち時点ファジィエントロピーを得て、且つ前記評価待ち時点ファジィエントロピー及び前記状態レベル分位数に基づいて、評価待ち時点運動状態を得る。ここで、評価待ち時点運動状態の取得プロセスは、評価待ち時点ファジィエントロピーが存在する状態レベル分位数の範囲を判断することであると理解でき、評価待ち時点ファジィエントロピーが1つの分位数の値より大きくかつ2番目の分位数の値より小さいと、対応する運動状態が第1の運動状態であると理解でき、その他の状況は、この例を参考に類推することができるので、ここでは詳しく説明しない。
【0065】
前記変化点運動強度、前記変化点位置及び前記ファジィエントロピーモデルに基づいて、突然変化時点ファジィエントロピーを得て、且つ前記突然変化時点ファジィエントロピー及び前記状態レベル分位数に基づいて、次の運動状態を得る。ここで、次の運動状態は、突然変化点位置に対応する運動状態であると理解でき、具体的な取得プロセスは、評価待ち時点運動状態の取得に関する説明を参照することができるので、ここでは詳しく説明しない。
【0066】
前記評価待ち運動者の生理的特徴を取得し、前記生理的特徴、前記評価待ち時点運動状態、前記次の運動状態及び前記評価待ち時点を前記状態遷移リスク関数に入力して、対応する状態遷移リスク確率を得る。ここで、状態遷移リスク確率は、評価待ち運動者の生理的特徴、評価待ち時点運動状態、次の運動状態及び評価待ち時点を式(10)に示す状態遷移リスク関数に入力して得られた、評価待ち運動者が評価待ち時点で評価待ち時点運動状態から次の運動状態に入る確率の予測値であると理解できる。
【0067】
前記状態遷移リスク確率、前記次の運動状態及び対応する突然変化点位置に基づいて、前記リスク評価結果を得る。ここで、リスク評価結果は、潜在的な運動リスクの発生を避けるように運動者にヒントをリアルタイムに与えるとともに、分析プロセスで決定された異なる運動時間のリスクに基づいて、運動が安全で、リスクが低い時間区間を逆に推定することに使用されることができ、例えば、運動時間が5分である場合、算出によって得られた危険状態に遷移する確率は0.2であり、運動時間が10分である場合、遷移確率は0.4であり、運動時間が20分である場合、遷移確率が0.9であり、これにより、リスクが50%を下回るためには、運動時間が10分を下回る必要があると大まかに判断することができ、また、この分析結果に基づいて、ある運動強度での適切な運動時間の長さを運動者に与えることができ、運動者が運動リスクをリアルタイムに知るのに便利であるとともに、合理的な運動時間の長さのアドバイスを与えることができ、ユーザーの体験を効果的に向上させることができる。
【0068】
本出願の実施態様では、評価待ち運動者の評価待ち時点の前の評価待ち時点と同じ運動強度での履歴心電信号を取得し、履歴心電信号に基づいて、異なる時間帯の心拍動間隔系列を得て、かつ異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれ予め構築されたファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、対応する運動ファジィエントロピー系列を得た後、運動ファジィエントロピー系列及び運動強度を予め構築された系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行い、変化点識別結果を得て、そして評価待ち時点、変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、評価待ち時点のリスク評価結果を得るという技術方案によって、心拍変動性の無秩序度及び複雑度を確実に定量化することができるだけでなく、運動負荷の非線形成長法則をリアルタイムに分析し、運動リスクと運動強度との間の関係を効果的に定量化し、さらに運動リスク評価の信頼性及び正確性を向上させ、運動負荷の過度の増加による運動リスクを効果的に防止し、運動者の生命・健康に確実な保障を提供することができる。
【0069】
なお、前記フローチャートにおける各ステップは、矢印の指示に従って順次表示されるが、これらのステップは、必ずしも矢印で指示される順序に従って順次実行されるわけではない。本明細書に明確な説明がない限り、これらのステップの実行には厳密な順序制限がなく、これらのステップは他の順序で実行されることができる。
【0070】
一つの実施態様では、図5に示すように、評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の履歴運動データを取得するためのモジュールであって、前記履歴運動データが異なる運動強度での履歴心電信号を含むデータ取得モジュール1;
前記履歴心電信号に基づいて、異なる時間帯の心拍動間隔系列を得るための指標分析モジュール2;
異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれ予め構築されたファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、対応する運動ファジィエントロピー系列を得るためのファジィエントロピー算出モジュール3;
前記運動ファジィエントロピー系列及び前記運動強度を予め構築された系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行い、変化点識別結果を得るためのモジュールであって、前記変化点識別結果がいくつかの突然変化点及び対応する突然変化運動強度を含む変化点識別モジュール4;及び
前記評価待ち時点、前記変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、前記評価待ち時点のリスク評価結果を得るためのモジュールであって、前記リスク状態遷移モデルが状態レベル分位数及び状態遷移リスク関数を含むリスク評価モジュール5、を備える
ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価システムを提供する。
【0071】
なお、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価システムの具体的な限定については、上記したファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法に対する限定を参照することができ、対応する技術的効果も同等に得られることができるので、ここでは詳しく説明しない。上記したファジィエントロピーに基づく運動リスク評価システムにおける各モジュールは、全体的にまたは部分的に、ソフトウェア、ハードウェア及びそれらの組み合わせによって実現されることができる。前記各モジュールは、ハードウェアとしてコンピュータデバイスの中のプロセッサに埋め込まれ、又はコンピュータデバイスの中のプロセッサから独立していてもよいし、ソフトウェアとしてコンピュータデバイスの中のメモリに格納されていてもよいし、プロセッサが上記の各モジュールに対応する操作を呼び出して実行するのを容易にするようにする。
【0072】
図6には、一つの実施態様におけるコンピュータデバイスの内部構成図を示し、このコンピュータデバイスは、具体的には端末またはサーバであってもよい。図6に示すように、このコンピュータデバイスは、システムバスにより接続されたプロセッサ、メモリ、ネットワークインタフェース、ディスプレイ及び入力装置を備える。ここで、このコンピュータデバイスのプロセッサは、算出能力及び制御能力を提供するためのものである。このコンピュータデバイスのメモリは、不揮発性記憶媒体、内部メモリを含む。この不揮発性記憶媒体には、オペレーティングシステム及びコンピュータプログラムが記憶されている。この内部メモリは、不揮発性記憶媒体におけるオペレーティングシステム及びコンピュータプログラムに対して実行環境を提供する。このコンピュータデバイスのネットワークインタフェースは、ネットワーク接続を介して外部の端末と通信するためのものである。このコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されるとき、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法を実現する。このコンピュータデバイスのディスプレイスクリーンは、液晶ディスプレイスクリーン又は電子インクディスプレイスクリーンであってもよく、このコンピュータデバイスの入力装置は、ディスプレイスクリーン上に覆われたタッチ層であってもよく、コンピュータデバイスの筐体に設けられるキー、トラックボール又はタッチパッドであってもよく、外付けのキーボード、タッチパッド又はマウスなどであってもよい。
【0073】
当業者であれば、図6に示す構造は、本出願の方案に関連する部分的な構造のブロック図に過ぎず、本出願の方案が応用されるコンピュータデバイスに対する限定を構成するものではなく、具体的なコンピュータデバイスは、図に示す部品よりも多くの部品または少ない部品を含んでもよいし、又は一部の部品を組み合わせてもよいし、又は同じ部品配置を有しても良いことが理解される。
【0074】
一つの実施態様では、メモリと、プロセッサと、メモリに記憶されかつプロセッサで実行できるコンピュータプログラムとを含むコンピュータデバイスであって、コンピュータプログラムがプロセッサにより実行される場合に、前記方法のステップを実現するコンピュータデバイスを提供する。
【0075】
一つの実施態様では、コンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、コンピュータプログラムがプロセッサにより実行される場合に、前記方法のステップを実現するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0076】
以上をまとめると、本発明の実施態様は、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法、システム、コンピュータデバイス及び記憶媒体を提供しており、ファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法により、評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度、及び前記評価待ち時点の前の異なる運動強度での履歴心電信号を含む履歴運動データを取得し、履歴心電信号に基づいて、異なる時間帯の心拍動間隔系列を得て、異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれ予め構築されたファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、対応する運動ファジィエントロピー系列を得た後、運動ファジィエントロピー系列及び運動強度を予め構築された系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行い、変化点識別結果を得て、そして変化点識別結果及び予め構築されたリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、評価待ち時点のリスク評価結果を得るという技術方案を実現している。このファジィエントロピーに基づく運動リスク評価方法は、心拍変動性の無秩序度及び複雑度を確実に定量化することができるだけでなく、運動負荷の非線形成長法則をリアルタイムに分析し、運動リスクと運動強度との間の関係を効果的に定量化し、さらに運動リスク評価の信頼性及び正確性を向上させ、運動負荷の過度の増加による運動リスクを効果的に防止し、運動者の生命・健康に確実な保障を提供することができる。
【0077】
本明細書における各実施態様は、いずれも漸進的に記載されており、各実施態様の同一又は類似の部分は互いに参照すればよく、各実施態様では、いずれも他の実施態様との相違点を中心に説明する。特に、システムに係る実施態様については、方法に係る実施態様と基本的に類似しているので、説明は比較的簡単であり、関連する点については、方法に係る実施態様の部分説明を参照すればよい。なお、前記実施態様の各技術的特徴は、任意に組み合わせることが可能であり、説明を簡潔にするために、前記実施態様における各技術的特徴の可能な組み合わせの全てを説明するものではないが、これらの技術的特徴の組み合わせが矛盾しない限り、本明細書に記載されている範囲と考えるべきである。
【0078】
以上で述べた実施態様は、本出願のいくつかの好ましい実施形態を示すに過ぎず、その説明がより具体的かつ詳細であるが、それによって発明の特許請求の範囲の制限と理解することはできない。なお、この技術分野の一般的な技術者にとって、本発明の技術的原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び置換を行うことができ、これらの改良及び置換も本出願の保護範囲と見なされるべきである。したがって、本出願の特許の保護範囲は、前記特許請求の範囲の保護範囲に準ずるものとする。
【要約】      (修正有)
【解決手段】本発明の運動リスク評価方法は、評価待ち運動者の評価待ち時点の運動強度及び前の異なる運動強度での履歴心電信号を取得するステップ;履歴心電信号に基づいて得られた異なる時間帯の心拍動間隔系列をそれぞれファジィエントロピーモデルに入力してファジィエントロピー算出を行い、運動ファジィエントロピー系列を得るステップ;及び評価待ち時点、運動ファジィエントロピー系列及び運動強度を系列変化点識別モデルに入力して変化点識別を行って得られた変化点識別結果、及びリスク状態遷移モデルに基づいてリスク評価を行い、評価待ち時点のリスク評価結果を得るステップ、を備える。
【効果】心拍変動性の無秩序度及び複雑度を確実に定量化することができるだけでなく、運動負荷の非線形成長法則をリアルタイムに分析し、運動リスクと運動強度との間の関係を効果的に定量化し、さらに運動リスク評価の信頼性及び正確性を向上させることができる。
【選択図】図2
図1
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図5
図6