(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】微細ショート防止のための高分子層を含む全固体電池用負極及びこれを含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20250120BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20250120BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250120BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20250120BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/0565
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2023518521
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 KR2021012742
(87)【国際公開番号】W WO2022065813
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0123098
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0130623
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・リ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジュ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】スル・チャム・キム
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0144599(US,A1)
【文献】特開2020-009548(JP,A)
【文献】特表2020-510292(JP,A)
【文献】特開2019-179731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-66
H01M 10/052-0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体、及び前記負極集電体の少なくとも一面に位置したコーティング層を含む全固体電池用負極であって、
前記コーティング層は、下記1)及び2)のうち少なくとも一つ以上
の高分子重合体を含
み、
1)イオン伝導性を有する高分子重合体A、
2
)高分子重合体B、
前記コーティング層は、リチウム親和性物質を含み、
前記高分子重合体:前記リチウム親和性物質の重量混合比は、30:70乃至90:10であり、
前記コーティング層は、100nm乃至10μmの厚さであり、
前記リチウム親和性物質は、リチウム親和性金属、前記金属の塩、前記金属の酸化物、及び前記金属の水和物を含むグループから少なくとも一つ以上を含み、
前記リチウム親和性金属は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)及びマグネシウム(Mg)からなる群から選択される一以上を含む、全固体電池用負極。
【請求項2】
前記コーティング層はイオン伝導性を有する、請求項1に記載の全固体電池用負極。
【請求項3】
前記高分子重合体Aはリチウムイオンを含む、請求項1
又は2に記載の全固体電池用負極。
【請求項4】
前記高分子重合体Bは、前記金属との互換性が良い酸素又は窒素が含まれた官能基を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の全固体電池用負極。
【請求項5】
前記コーティング層には固体電解質が付加された、請求項1から
4のいずれか一項に記載の全固体電池用負極。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の全固体電池用負極を含む全固体電池であって、
前記コーティング層は、固体電解質層と対面する面に位置する、全固体電池。
【請求項7】
前記全固体電池の初期充放電後、前記コーティング層と前記負極集電体との間にリチウムが堆積する、請求項
6に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年09月23日付け韓国特許出願第2020-0123098号、2020年10月08日付け韓国特許出願第2020-0130623号に基づいた優先権の利益を主張し、該当の韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、微細ショート防止のための高分子層を含む全固体電池用負極及びこれを含む全固体電池に関する。具体的には、負極集電体、及び前記負極集電体の少なくとも一面に位置したコーティング層を含み、前記コーティング層は、イオン伝導性及び電気伝導性を有し、構成成分として高分子重合体と金属の混合物又はイオン伝導性を有する高分子重合体を含む全固体電池用負極及びこれを含む全固体電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、エネルギー密度が高く、自己放電率が低く、寿命が長いので、多様な高容量電池に使用される。リチウム二次電池においては、充放電時に生成されるリチウムデンドライトによって正極と負極との間で存在する分離膜が損傷したり、電池の体積が増加するという問題が発生する。
【0004】
液体電解質の漏液や過熱による安全性問題を解決するために、全固体電池がその代案として提示されている。全固体電池は、リチウム二次電池と異なり、固体電解質を含む固体電解質層を有しており、前記固体電解質層は、正極と負極との間に配置され、分離膜としての役割をする。
【0005】
全固体電池は、従来の電池に使用されていた液状の電解液の代わりに、固体電解質を使用するので、温度変化による電解液の蒸発又は外部衝撃による漏液がなく、爆発及び火事から安全である。固体電解質は、固体の特性によって正極又は負極が接触する部位が限定され、正極と固体電解質層との間及び負極と固体電解質層との間に界面が容易に形成されないという短所を有する。
【0006】
正極と固体電解質層との間及び負極と固体電解質層との間の接触面が少ない場合、電気抵抗が高く、出力が減少する。固体電解質を含む単位セルを加圧する方式で接触面を広げ、界面抵抗を減少させている。
【0007】
上記のように加圧する方式の場合、リチウムデンドライトの成長による固体電解質層の損傷又はリチウムデンドライトと正極との間の反応によるショート問題が発生する。
【0008】
【0009】
図1に示すように、従来技術に係る全固体電池は、正極集電体11及びその両面にコーティングされた正極活物質層12を含む正極10と、分離膜/固体電解質層20と、負極集電体31及びその両面にコーティングされた負極活物質層32を含む負極30とを有する。
【0010】
図1と異なり、負極は、電池の全体的な容量を向上させるために別途の負極活物質層32を用いることなく、負極集電体単独或いはリチウム金属を用いてリチウムプレーティング及びストリッピングメカニズムとして使用することもできる。
【0011】
従来技術に係る全固体電池は、電池の上部及び下部から圧力Fを加えることによって固体電解質層20と正極との間及び固体電解質層20と負極との間の界面抵抗を減少させる。初期充放電を加圧して行う場合、負極活物質にリチウムが挿入されながら活物質が膨張したり、負極にリチウムが堆積することによって全固体電池の厚さ(z軸)が増加するようになり、これによって、全固体電池の内部に加えられる圧力も増加するようになる。初期充放電による圧力が増加するほど、リチウムデンドライトが前記固体電解質層20を損傷させやすく、また、前記リチウムデンドライトが正極10と反応してセルショートを発生させる可能性が高い。
【0012】
容量増大のためにリチウム金属を使用する場合、リチウム金属の性質が軟らかいので、加圧の程度や時間によって単位セルの容量及び性能に差が生じる。圧力Fが大きくなるほど、固体電解質と前記リチウム金属との反応が活発になる。これによって、前記リチウム金属が固体電解質層にさらに多く浸透し、結局、全固体電池内でショートが発生する可能性が大きくなる。
【0013】
一方、全固体電池の内部に加えられる圧力が過度に大きくなると、全固体電池内部の正極、固体電解質層、負極の位置及び形態が変形し得る。均一でないように負極に堆積したリチウムによって内部圧力も均一でなくなり、結局、外部で加圧するジグも損傷するおそれがある。
【0014】
上記のような問題を解決するためには、リチウム金属との反応性を低下させたり、全固体電池内部の応力を均一に分布又は減少させる必要がある。
【0015】
特許文献1は、伝導性、電子伝導性、及びリチウムイオン伝導性を向上させるために正極、固体電解質層、及び負極からなる積層体を加圧しているが、全固体電池に加えられる応力を均一に分布又は減少させ、単位セルのセルショート現象を防止する点に対しては認識していない。
【0016】
特許文献2も、界面抵抗を減少させるために正極、固体電解質層、及び負極からなる積層体を加圧しているが、全固体電池に加えられる応力を均一に分布又は減少させ、単位セルの安全性を向上させようとする点に対しては認識していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2018-181451号公報
【文献】特開2019-200890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであって、リチウムデンドライトの形成による固体電解質層の損傷、及び前記リチウムデンドライトが正極と接触してショートされることを防止することを目的とする。
【0019】
また、全固体電池内部の応力を均一に分布又は減少させ、イオン伝導度を向上させることによって寿命を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記のような目的を達成するために、本発明に係る全固体電池用負極は、負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一面に位置したコーティング層を含み、前記コーティング層は、下記の1)及び2)のうち少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0021】
1)イオン伝導性を有する高分子重合体A、
2)i)高分子重合体B、並びにii)金属、前記金属の塩、前記金属の酸化物、及び前記金属の水和物を含むグループから少なくとも一つ以上を含む混合物。
【0022】
前記コーティング層は、イオン伝導性を有することができる。
【0023】
前記コーティング層は、リチウム親和性(lithiophilic)物質を含むことができ、前記リチウム親和性物質の非制限的な例示として、リチウム親和性金属、前記金属の塩、前記金属の酸化物、及び前記金属の水和物を含むグループから少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0024】
前記高分子重合体Aは、リチウムイオンを含むことができる。
【0025】
前記高分子重合体Bは、金属との互換性が良い酸素又は窒素が含まれた官能基を含むことができる。
【0026】
前記金属は、リチウム親和性を有することができる。
【0027】
また、前記コーティング層には、固体電解質が付加されていてもよい。
【0028】
前記高分子重合体A及び高分子重合体B:前記リチウム親和性物質の重量混合比は、30:70乃至90:10であり得る。
【0029】
前記コーティング層は、100nm乃至10μmの厚さであり得る。
【0030】
本発明は、前記記載による全固体電池用負極のうちいずれか一つを含む全固体電池であり得る。
【0031】
前記全固体電池の初期充放電後、前記コーティング層と前記負極集電体との間にリチウムが堆積し得る。
【0032】
前記コーティング層は、固体電解質層と対面する面に位置し得る。
【0033】
本発明は、前記言及した全固体電池を含むバッテリーモジュール又はバッテリーパックであり得る。また、本発明は、前記全固体電池が装着されたデバイスであり得る。
【0034】
本発明は、前記のような各構成のうち相反しない構成を一つ又は二つ以上選んで組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上で説明したように、本発明に係る全固体電池用負極は、負極に発生するリチウムデンドライトが前記コーティング層と前記負極集電体との間で形成できるようにし、固体電解質層が損傷したり、正極と前記リチウムデンドライトとが反応することを防止することができる。これを通じて、全固体電池の内部で発生するセルショート現象が減少する。
【0036】
また、前記コーティング層に高分子重合体を使用することによって全固体電池内部の応力を解消することができ、前記コーティング層自体がイオン伝導性を有しており、負極の性能を向上させながら安全性の向上を期することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図3】本発明に係る全固体電池を充放電した後の模式図である。
【
図4】本発明の実施例1に係るAg-PEO/LiTFSIコーティング層のSEM写真である。
【
図5】本発明に係る製造例4(実施例4)で製造されたコーティング層のSEM写真である。
【
図6】本発明に係る製造例6(実施例5)で製造されたコーティング層のSEM写真である。
【
図7】本発明に係る実施例7で製造されたコーティング層のSEM写真である。
【
図8】本発明の実施例1のAg-PEO/LiTFSIコーティング層を適用した全固体電池を1回充電した後の断面SEM写真である。
【
図9】本発明の実施例4のコーティング層を適用した全固体電池を1回充電した後の断面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付の図面を参照して、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できる実施例を詳細に説明する。ただし、本発明の好ましい実施例に対する動作原理を詳細に説明するにおいて、関連する公知機能又は構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を必要以上に不明瞭にし得ると判断される場合は、それについての詳細な説明を省略する。
【0039】
また、図面全体にわたって類似する機能及び作用をする部分に対しては、同一の図面符号を使用する。明細書全体において、一つの部分が他の部分と連結されているとしたとき、これは、直接連結されている場合のみならず、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、一つの構成要素を含むことは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0040】
また、構成要素を限定したり付加して具体化する説明は、特別な制限がない限り、全ての発明に適用可能であり、特定の発明に限定しない。
【0041】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示されたものは、別途に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0042】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって、「又は」は、別途に言及しない限り、「及び」を含むものである。そのため、「A又はBを含む」は、Aを含むか、Bを含むか、A及びBを含む前記3つの場合を全て意味する。
【0043】
また、全ての数値範囲は、明確に除外するという記載がない限り、両端の値及びその間の全ての中間値を含む。
【0044】
本発明に係る全固体電池用負極は、全固体電池全体の模式図を通じて説明する。
図2は、本発明に係る全固体電池の模式図である。
【0045】
図2に示すように、本発明に係る全固体電池は、正極集電体110及びその少なくとも一面にコーティングされている正極活物質層120を含む正極100と、固体電解質層200と、負極集電体310及び前記負極集電体310の少なくとも一面に位置したコーティング層320を有している負極300とからなっている。このとき、前記コーティング層320は、下記の1)及び2)のうち少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0046】
1)イオン伝導性を有する高分子重合体A、
2)i)高分子重合体B、並びにii)金属、金属酸化物、及び金属と金属酸化物を含むグループから少なくとも一つ以上を含む混合物。
【0047】
前記コーティング層320は、イオン伝導性を有することができる。
【0048】
前記コーティング層は、リチウム親和性物質を含み、前記リチウム親和性物質の非制限的な例としては、リチウム親和性金属、前記金属の塩、前記金属の酸化物、及び前記金属の水和物を含むグループから少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0049】
前記正極100は、例えば、正極集電体110に、各正極活物質粒子で構成された正極活物質、導電材及びバインダーが混合された正極合剤を塗布することによって正極活物質層120を形成する方法で製造することができ、必要によっては、前記正極合剤に充填剤をさらに添加することができる。
【0050】
前記正極集電体110は、一般に3μm乃至500μmの厚さで製造され、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、高い導電性を有するものであれば特に限定されなく、例えば、前記正極集電体110としては、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、及びアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン又は銀で表面処理したものから選ばれる一つを使用することができ、詳細には、アルミニウムを使用することができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成することによって正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0051】
前記正極活物質層120内に含まれる正極活物質は、例えば、前記正極活物質粒子の他に、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や1又はそれ以上の遷移金属に置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは、0乃至0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B又はGaで、x=0.01乃至0.3である)で表現されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn又はTaで、x=0.01乃至0.1である)又はLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、Cu又はZnである)で表現されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンに置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などで構成可能であり、これらのみに限定されることはない。
【0052】
ただし、本発明で使用される正極活物質は、負極300にリチウムを堆積させるためにリチウムを含む金属酸化物を使用したり、これを含むことが好ましい。
【0053】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして0.1重量%乃至30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、導電性を有するものであれば特に限定されなく、例えば、前記導電材としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0054】
前記正極に含まれるバインダーは、活物質と導電材などとの結合及び集電体に対する結合を促進する成分であって、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして0.1重量%乃至30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
【0055】
前記固体電解質層200としては、有機固体電解質や無機固体電解質などが使用され得るが、これらのみに限定されるのではない。
【0056】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0057】
前記無機固体電解質としては、硫化物系固体電解質及び酸化物系固体電解質を一例として挙げることができる。
【0058】
酸化物系固体電解質としては、例えば、Li6.25La3Zr2Al0.25O12、Li3PO4、Li3+xPO4-xNx(LiPON)、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOHなどのLiの窒化物、ハロゲン化物などが使用され得る。
【0059】
前記硫化物系粒子としては、本発明で特に限定しなく、リチウム電池分野で使用する公知の全ての硫化物系材質が使用可能である。前記硫化物系材質としては、市販のものを購入して使用したり、非晶質硫化物系材質の結晶化工程を経て製造されたものを使用することができる。例えば、前記硫化物系固体電解質としては、結晶系硫化物系固体電解質、非晶質系硫化物系固体電解質、及びこれらのうちいずれか一つ又はこれらの混合物を使用することができる。使用可能な複合化合物の例としては、硫黄-ハロゲン化合物、硫黄-ゲルマニウム化合物、硫黄-シリコン硫化物がある。具体的には、硫黄-ハロゲン化合物には、SiS2、GeS2、B2S3などの硫化物が含まれてもよく、Li3PO4、ハロゲン、ハロゲン化合物などが添加されていてもよい。好ましくは、10-4S/cm以上のリチウムイオン伝導度を具現できる硫化物系電解質を使用することができる。
【0060】
代表的には、Li6PS5Cl(LPSCl)、Thio-LISICON(Li3.25Ge0.25P0.75S4)、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、Li3PS4、Li7P3S11、LiI-Li2S-B2S3、Li3PO4-Li2S-Si2S、Li3PO4-Li2S-SiS2、LiPO4-Li2S-SiS、Li10GeP2S12、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、Li7P3S11などを含む。
【0061】
本発明に係る負極300は、負極集電体310の少なくとも一面にコーティング層320が位置している形態であり得る。
【0062】
前記負極集電体310は、一般に3μm乃至500μmの厚さで作られる。このような負極集電体310は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、導電性を有するものであれば特に限定されなく、例えば、前記負極集電体310としては、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、前記負極集電体310は、正極集電体110と同様に、表面に微細な凹凸を形成することによって負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使用され得る。
【0063】
前記コーティング層320は、前記全固体電池で少なくとも前記固体電解質層200と対面する面に位置していてもよい。前記コーティング層320が前記固体電解質層200と対面する面に位置し、リチウムデンドライトが前記負極集電体310上に形成されるとき、前記固体電解質層200を保護する役割をすることができる。
【0064】
前記コーティング層は、下記の1)及び2)のうち少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0065】
1)イオン伝導性を有する高分子重合体A、
2)i)高分子重合体B、並びにii)金属、金属酸化物、及び金属と金属酸化物を含むグループから少なくとも一つ以上を含む混合物。
【0066】
また、前記コーティング層は、1)及び2)のうち少なくとも一つにリチウム親和性物質を含む。
【0067】
前記イオン伝導性を有する高分子重合体Aとしては、電池の作用を妨害しないものであればいずれも使用することができる。前記高分子重合体Aは、リチウムイオンを含むことができる。一例として、前記高分子重合体Aは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルエーテルアクリレート(PMEA)、これらの共重合体、これらのスルホン化誘導体、これらの化学的誘導体又はこれらの組み合わせなどの高分子をリチウム塩又はリチウムイオン-伝導性添加剤と混合して形成され得る。
【0068】
前記高分子重合体Aは、リチウムイオン伝導度が10-5S/cm以上、さらに好ましくは10-4S/cm以上であり得る。
【0069】
前記高分子重合体Bとしては、電池の作用を妨害しないものであればいずれも使用することができる。前記高分子重合体Bとしては、金属との互換性が良い高分子を使用することができる。前記高分子重合体Bは、酸素又は窒素が含まれた官能基を有する物質を含むことができる。一例として、前記高分子重合体Bは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-co-HFP)、ポリブチルメタクリレート(PBMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などで構成される群から選ばれたいずれか一つ以上であり得る。
【0070】
前記高分子重合体A及び高分子重合体Bは、弾性力を有するので、全固体電池の内部で発生した応力を解消できる素材からなっていてもよい。
【0071】
また、前記コーティング層320は、電気伝導性及びイオン伝導性を向上させるために金属、金属酸化物、及び金属と金属酸化物を含むグループから少なくとも一つ以上を含むことができる。前記金属は、負極の性能を向上させながら、リチウムデンドライトが前記コーティング層320と前記負極集電体310との間に形成できるようにする金属であれば、その種類に限定がない。このとき、前記金属は、リチウム親和性を有しており、リチウムデンドライトが前記コーティング層320と前記負極集電体310との間に形成できるように誘導することができる。
【0072】
特に、高分子重合体Aが使用される場合、前記金属は、前記コーティング層320の電気伝導性のために前記コーティング層320内に均一に分布し、前記全固体電池の電気伝導性を向上させる役割をすることができる。このために、前記金属は、溶媒を除いた前記コーティング層320のスラリーの全体組成物に10重量%乃至60重量%以上で含まれていてもよい。
【0073】
他の構成として、前記リチウム親和性の金属は、リチウムデンドライトが前記固体電解質層200方向に成長することを防止するために、前記コーティング層320の下部、すなわち、前記負極集電体310に近い面に配置され得る。前記コーティング層320にリチウム親和性の金属が位置する場合、前記リチウム親和性の金属上でリチウムプレーティングが起こり、リチウム核が形成され、前記リチウム核で成長したリチウムデンドライトは、前記コーティング層320でのみ成長するようになる。
【0074】
前記リチウム親和性の金属としては、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれか一つ以上が選ばれ得る。例えば、前記金属は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)及びマグネシウム(Mg)などに該当し、前記金属酸化物は、非金属として、銅酸化物、亜鉛酸化物、コバルト酸化物などに該当し得る。
【0075】
また、本発明に係るコーティング層320には、電気伝導度とイオン伝導度の均衡を調整するために固体電解質が付加されていてもよい。このとき、前記コーティング層320は、前記固体電解質層200より高いイオン伝導度を有することが好ましい。前記コーティング層320が前記固体電解質層200より高いイオン伝導度を有する場合、充放電時に形成されるリチウムデンドライト、すなわち、リチウム層330が前記コーティング層320の下側、すなわち、前記コーティング層320と前記負極集電体310との間に形成される。
【0076】
前記高分子重合体A及び高分子重合体B:前記リチウム親和性物質の重量混合比は、30:70乃至90:10であり得る。
【0077】
前記高分子重合体(A及びBを含む)が過度に多い場合、前記コーティング層のイオン伝導度及び電気伝導度が減少し、前記コーティング層320と前記固体電解質層200との間のイオン伝導度及び電気伝導度に差が発生しないので、別途のコーティング層320を形成し、リチウムデンドライトを所望の場所に形成できなくなるという問題が発生し得る。
【0078】
また、高分子重合体Bが使用される場合、本発明に係るコーティング層320は、厚さが100nm乃至10μmであり得る。これは、前記コーティング層320が過度に厚い場合は、前記負極のイオン伝導性を低下させるおそれがあり、前記コーティング層320が過度に薄い場合は、前記コーティング層320がリチウムデンドライトによる固体電解質層200の損傷を防止する役割をしにくいためである。前記コーティング層320の厚さは、コーティング層320内部の金属含量及びイオン伝導性を有する高分子重合体の付加有無によって変わり得る。高分子重合体Bの場合、イオン伝導度がないか低いので、薄膜の厚さであることが好ましい。
【0079】
また、本発明に係るコーティング層320としては、下記の1)及び2)をそれぞれのコーティング層組成物とするコーティング層が別途に形成され得る。
【0080】
1)イオン伝導性を有する高分子重合体A、
2)i)高分子重合体B、並びにii)金属、金属酸化物、及び金属と金属酸化物を含むグループから少なくとも一つ以上を含む混合物。
【0081】
前記コーティング層320を形成する方法は、特に限定されなく、例えば、液浸(Immersing)、スピンコーティング(Spin Coating)、ディップコーティング(Dip Coating)、スプレーコーティング(Spray Coating)、ドクターブレード(Doctor Blade)、溶液キャスティング(Solution Casting)、ドロップコーティング(Drop Coating)、PVD(Physical Vapor Deposition)又はCVD(Chemical Vapor Deposition)によって行われ得る。
【0082】
また、前記コーティング層は、リチウム親和性物質を含む。
【0083】
前記コーティング層320は、一定の気孔を有し、前記気孔に前記リチウム親和性金属を含むことができる。前記コーティング層320が気孔を有している場合、前記気孔を通じてリチウムデンドライトが前記負極集電体310上に形成され、前記リチウムデンドライトが固体電解質層200と反応しなくなる。
【0084】
図3は、本発明に係る全固体電池を充放電した後の模式図である。
【0085】
図3に示したように、本発明に係る全固体電池は、充電後にリチウムが堆積し、前記負極集電体310と前記コーティング層320との間にリチウム層330を形成するようになる。前記リチウム層330は、定電流/定電圧(CC/CV)の条件で充電され、このときのリチウム二次電池全体に加えられる加圧力Fは、電池内に形成されるリチウムの量、充放電速度及び時間などによって変わり得る。
【0086】
前記リチウム層330は、前記コーティング層320の気孔などを通じて前記負極集電体310上に堆積するようになる。このとき、前記コーティング層320は、一定の弾性力を有しており、前記リチウム層330の形成による応力を解消する役割をすることができる。前記コーティング層320は、応力を解消するために内部の気孔を減少させたり、前記コーティング層320の形態が変形し得る。
【0087】
以下では、本発明に係る実験例と従来技術に係る比較例とを比較した実験例を通じて、本発明を説明する。
【実施例】
【0088】
<実施例1>
アセトニトリル(Acetonitrile、AN)溶媒にポリエチレンオキシド(Polyethyleneoxide、PEO、Mw=1,000,000g/mol)を溶かし、4重量%の高分子溶液を準備した。このとき、リチウム塩としてLiTFSIを[EO]/[Li+]=18/1のモル比になるように共に入れた。前記高分子溶液でPEOとリチウム塩が十分に溶けるように70℃で撹拌して溶解させた。
【0089】
前記高分子溶液で溶媒を除いた重量とAgナノ粒子を80重量%:20重量%の比率で混合した後、これを1日間撹拌した。前記混合溶液(スラリー)をNiホイル(foil)上にドクターブレードを用いて塗布及びコーティングして乾燥した後、10μmの厚さの負極コーティング層を製作した。
【0090】
<実施例2>
高分子溶液で溶媒を除いた重量:Agナノ粒子の比率が50重量%:50重量%である点を除いては、実施例1と同一に負極を製作した。
【0091】
<実施例3>
実施例1のAgナノ粒子の代わりにZnO(10nm乃至30nm)を使用したことを除いては、実施例1と同一に負極を製作した。
【0092】
<比較例1>
別途のコーティング層を用いることなく、Niホイルのみで負極を製作した。
【0093】
<比較例2>
実施例1でAgナノ粒子を含んでいない高分子溶液がコーティングされた負極を製作した。
【0094】
<比較例3>
実施例1で高分子溶液を含んでおらず、Agナノ粒子コーティング層のみを適用して負極を製作した。
【0095】
<比較例4>
高分子溶液で溶媒を除いた重量:Agナノ粒子の比率が20重量%:80重量%であることを除いては、実施例1と同一に負極を製作した。
【0096】
<実験例1:高分子重合体Aによるイオン伝導度の測定>
Ag-PEO/LiTFSIイオン伝導度を測定し、これを下記の表1に示した。イオン伝導度の測定は、下記のような方法で行った。
【0097】
各実施例1、2及び比較例2、4によるコーティング層のみを1.7671cm2の円形に切断した後、2枚のステンレススチール(SUS)の間に配置することによってコインセルを製作した。
【0098】
分析装置(VMP3、bio logic science instrument)を使用して60℃で振幅(amplitude)10mV及びスキャン範囲500kHz乃至20MHzの条件で電気化学的インピーダンスを測定し、これに基づいてイオン伝導度を計算した。
【0099】
【0100】
前記表1に示したように、比較例2のPEO/LiTFSIのイオン伝導度が最も高いが、実施例1及び実施例2は、Agナノ粒子が含まれたとしても、比較例2のイオン伝導度と類似する値を示すことを確認することができる。しかし、比較例4のようにAgの含量が高い場合、Agナノ粒子がネットワークを形成し、これを通じて電気伝導チャンネルを形成し、イオン伝導度の測定が不可能であることを確認することができる。
【0101】
<実験例2:高分子重合体Aによる電池の特性>
実験例2では、下記のような正極及び固体電解質層、及び前記実施例1乃至実施例3、比較例1乃至比較例4による負極を含む全固体電池を使用して実験を行った。
【0102】
前記正極は、正極活物質であるNCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、固体電解質であるアルジロダイト(Li6PS5Cl)、導電材であるカーボン、及びバインダーであるPTFEを77.5:19.5:1.5:1.5の重量比でアニソール(Anisole)に分散及び撹拌することによって正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを14μmの厚さのアルミニウム集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、100℃で12時間真空乾燥することによって正極を製造した。
【0103】
固体電解質であるアルジロダイト(Li6PS5Cl)とバインダーであるPTFEを95:5の重量比でアニソールに分散及び撹拌することによって固体電解質層スラリーを製造し、これをPET離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することによって固体電解質層を形成した。
【0104】
前記正極、固体電解質層及び下記の負極を順次積層することによって電池を製作した。
【0105】
前記電池に対して電圧範囲4.5V乃至2.5Vで0.5C充電/1.0C放電実験を行い、ショートが発生したサイクルを確認し、これを下記の表2に示した。
【0106】
【0107】
前記表2に示したように、本発明のようなコーティング層を形成した場合、本発明のコーティング層がない集電体を使用する場合である比較例1よりも遥かに優れた寿命特性を有することを確認することができる。また、リチウム親和性粒子或いは高分子固体電解質層のみを使用した比較例2及び比較例3に比べても寿命が増加することを確認することができる。比較例4は、Ag粒子の含量が高い場合であって、比較例2及び3よりも寿命特性が低いことが分かる。これは、比較例4において、Ag粒子の含量が高いのでコーティング層が電気的に連結され、これによって、コーティング層の上部に露出したAg粒子に電子が集中し、ショートの発生時点が速まったためであると見なされる。
【0108】
図4は、実施例1に係るAg-PEO/LiTFSIコーティング層のSEM写真で、
図8は、実施例1に係るAg-PEO/LiTFSIコーティング層を含む全固体電池を1回充電した後の断面SEM写真である。
【0109】
図4に示したように、本発明に係るコーティング層は、リチウムイオン伝導度を有しており、コーティング層内のリチウム親和性物質が集電体側へのリチウムイオンの伝達を助けることが分かる。これは、シード(seed)の形成時に過電圧(overpotential)を減少させ、これを含む電池の寿命を向上させる。
【0110】
図8に示したように、本発明に係る負極の場合、充放電時、コーティング層の下側と集電体の上部にリチウムが均一にプレーティング(plating)されたことを観測することができる。これは、コーティング層がリチウムデンドライトの成長を抑制したためであると分析される。また、コーティング層がリチウムイオン伝導度を有しており、リチウム親和性物質が集電体方向へのLiイオンの伝達を助けることによって、シード(seed)の形成時に過電圧(overpotential)を減少させたためであると解釈される。結局、コーティング層は、リチウムイオンの伝達を助けながら過電圧を減少させ、分離膜の短絡を防止する役割をすることが分かる。
【0111】
<実験例3:高分子重合体Bによるイオン伝導度の測定>
高分子重合体Bによるイオン伝導度を測定し、これを下記の表3に示した。イオン伝導度の測定は、下記のような方法で行った。
【0112】
下記の各製造例によって製作したコーティング層を1.7671cm2の円形に切断した。直径が2cmであるチタンモールドに固体電解質であるアルジロダイト(Li6PS5Cl)を入れ、1次成形することによってペレットを製作した。その後、ペレットの上端と下端に下記で製作した製造例1乃至製造例7を積層させ、2枚のステンレススチール(SUS)の間に配置することによってジグセルを製作した。
【0113】
製造例8の場合は、コーティング層のみでペレットを製造したものである。
【0114】
分析装置(VMP3、Bio logic science instrument)を使用して23℃で振幅10mV及びスキャン範囲500KHz乃至20MHzの条件で電気化学的インピーダンスを測定し、これに基づいてイオン伝導度を計算した。
【0115】
<製造例1>
別途のコーティング層を製造しなかった。
【0116】
<製造例2>
Agナノ粒子(20nm、US Research Nanomaterials, Inc.)とポリビニルピロリドンを20wt%:80wt%の比率でNMPに均一に分散させた。その後、これをニッケル集電体にコーティングして乾燥した後、30μmのコーティング層を形成した。前記重量比率において、ポリビニルピロリドンは高分子自体のみの重さである。
【0117】
<製造例3>
コーティング層の厚さが10μmであることを除いては、製造例2と同一に製作した。
【0118】
<製造例4>
コーティング層の厚さが5μmであることを除いては、製造例2と同一に製作した。
【0119】
<製造例5>
コーティング層の厚さが1μmであることを除いては、製造例2と同一に製作した。
【0120】
<製造例6>
Agとポリビニルピロリドンの比率が50wt%:50wt%であることを除いては、製造例4と同一に製作した。ポリビニルピロリドンは、高分子自体のみの重さである。
【0121】
<製造例7>
Agとポリビニルピロリドンの比率が80wt%:20wt%であることを除いては、製造例4と同一に製作した。ポリビニルピロリドンは、高分子自体のみの重さである。
【0122】
<製造例8>
アルジロダイト(Li6PS5Cl)ペレットを適用することなく、製造例1のコーティング層のみでペレットを製作した。
【0123】
【0124】
前記表3に示したように、コーティング層を使用することなく、固体電解質を単独で使用した場合(製造例1)のイオン伝導度が最も高い。最も厚いコーティング層が適用された製造例2の場合のイオン伝導度が非常に低く、コーティング層の厚さが10μm以下である場合に、セルを製作するのに適正な水準になることが確認された。また、Agの含量が50wt%水準まで増加した場合(製造例6)にも、イオン伝導度は類似しているが、80%水準の場合(製造例7)にAgナノ粒子がネットワークを形成し、これを通じて電気伝導チャンネルを形成し、イオン伝導度の測定が不可能であることを確認することができる。そして、製造例8のようにコーティング層を単独で使用した場合、リチウム(Li)ソースがないのでイオン伝導度の測定が不可能であった。
【0125】
<実験例4:高分子重合体Bによる電池の特性>
実験例4では、下記のような正極及び固体電解質層、及び前記製造例による負極を含む全固体電池を使用して実験を行った。このとき、前記実験例3の結果を参照して、厚さ因子影響を確認するためには製造例2と製造例4を、含量影響を確認するためには製造例6を前記負極に適用して評価した。
【0126】
<実施例4>
前記製造例4で製作されたコーティング層を適用することによってセルを製作した。
【0127】
前記正極は、正極活物質であるNCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、固体電解質であるアルジロダイト(Li6PS5Cl)、導電材であるカーボン、及びバインダーであるPTFEを77.5:19.5:1.5:1.5の重量比でアニソール(Anisole)に分散及び撹拌することによって正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを14μmの厚さのアルミニウム集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、100℃で12時間真空乾燥することによって正極を製造した。
【0128】
固体電解質であるアルジロダイト(Li6PS5Cl)とバインダーであるPTFEを95:5の重量比でアニソールに分散及び撹拌することによって固体電解質層スラリーを製造し、これをPET離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することによって固体電解質層を形成した。
【0129】
前記正極、固体電解質層及び下記の負極を順次積層することによって電池を製作した。
【0130】
前記電池を用いて60℃で電圧範囲4.2V乃至3.7Vで0.1C充電/0.1C放電実験を行い、ショートが発生したサイクルを確認し、これを下記の表4に示した。
【0131】
<実施例5>
前記製造例6で製作したコーティング層を適用したことを除いては、実施例4と同一に製作及び評価した。
【0132】
<実施例6>
Agナノ粒子の代わりにAgNO3を適用したことを除いては、実施例4と同一に製作及び評価した。
【0133】
<実施例7>
Agナノ粒子の代わりにZnO(10nm乃至30nm)を適用したことを除いては、実施例4と同一に製作及び評価した。
【0134】
<比較例5>
コーティング層が適用されることなく、ニッケルホイルのみが適用されたことを除いては、実施例4と同一に製作及び評価した。
【0135】
<比較例6>
コーティング層内にAg粒子が形成されることなく、すなわち、ポリビニルピロリドンのみで形成されたことを除いては、実施例4と同一に製作及び評価した。
【0136】
<比較例7>
前記製造例2で製作したコーティング層を適用したことを除いては、実施例4と同一に製作及び評価した。
【0137】
【0138】
前記表4に示したように、本発明のようなコーティング層を形成した場合、コーティング層がない集電体を使用する場合である比較例5より遥かに優れた寿命特性を有することを確認することができ、また、高分子層のみを使用した比較例6に比べても寿命が増加することを確認することができる。しかし、比較例7の結果のようにコーティング層が厚くなった場合、イオン伝導度が低いため抵抗が大きくなり、これによって寿命特性の改善効果が表れないので、適正な水準の厚さ(100nm乃至10μm以下)を有するときに、寿命改善に効果的であって好ましいことが分かる。一方、リチウム親和性物質として、Ag金属粒子のみならず、塩の形態(実施例6)及びZnOなどの金属酸化物(実施例7)でも寿命改善効果があることを確認することができる。
【0139】
図5は、本発明に係る製造例4(実施例4)で製造されたコーティング層のSEM写真で、
図6は、本発明に係る製造例6(実施例5)で製造されたコーティング層のSEM写真で、
図7は、本発明に係る実施例7で製造されたコーティング層のSEM写真である。
【0140】
図5乃至
図7に示したように、本発明に係るコーティング層は、リチウムイオン伝導度を有しており、コーティング層内のリチウム親和性物質が集電体側へのリチウムイオンの伝達を助けることが分かる。これは、シード(Seed)の形成時に過電圧(Overpotential)を減少させ、これを含む電池の寿命を向上させる。
【0141】
図9は、本発明に係る実施例4で製造されたコーティング層を適用した全固体電池の1回充電後の断面SEM写真である。
【0142】
図9に示したように、本発明に係る負極の場合、充放電時、コーティング層の下側と集電体の上部にリチウムが均一にプレーティング(plating)されたことを観測することができる。これは、コーティング層がリチウムデンドライトの成長を抑制したためであると分析される。また、コーティング層がリチウムイオン伝導度を有しており、リチウム親和性物質が集電体方向へのLiイオンの伝達を助けることによって、シード(Seed)の形成時に過電圧(Overpotential)を減少させたためであると解釈される。結局、コーティング層は、リチウムイオンの伝達を助けながら過電圧を減少させ、分離膜の短絡を防止する役割をすることが分かる。
【0143】
また、本発明は、前記全固体電池を含む電池モジュール、電池パック及び前記電池パックを含むデバイスを提供するが、前記電池パック及びデバイスは、当業界で公知となっているので、本明細書では、それについての具体的な説明を省略する。
【0144】
前記デバイスは、例えば、ノート型パソコン、ネットブック、タブレットPC、携帯電話、MP3、ウェアラブル電子機器、パワーツール(power tool)、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)、電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)、電気ゴルフカート(electric golf cart)、又は電力貯蔵用システムであり得るが、これらのみに限定されないことは当然である。
【0145】
本発明の属した分野で通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形が可能であろう。
【符号の説明】
【0146】
10、100:正極
11、110:正極集電体
12、120:正極活物質層
20、200:固体電解質層
30、300:負極
31、310:負極集電体
32:負極活物質層
320:コーティング層
330:リチウム層
F:加圧力
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、微細ショート防止のための高分子層を含む全固体電池用負極及びこれを含む全固体電池に関するものであるので、産業上の利用が可能である。