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特許7621728プロテアーゼ活性化受容体2のモジュレーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】プロテアーゼ活性化受容体2のモジュレーター
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20250120BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250120BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
A61K38/10
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/12
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/04
A61P17/06
A61P19/02
A61P29/00
A61P31/04
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/08
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2018544771
(86)(22)【出願日】2016-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 US2016061489
(87)【国際公開番号】W WO2017083618
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】62/255,334
(32)【優先日】2015-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518167918
【氏名又は名称】オアシス ファーマシューティカルズ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】OASIS PHARMACEUTICALS, LLC
【住所又は居所原語表記】64 Fifer Lane, Lexington, MA 02420, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ルービー,リチャード
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】北田 祐介
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-511866(JP,A)
【文献】特表2003-530875(JP,A)
【文献】特表2013-504577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
UniProt/GeneSeq
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の配列:
1011121314151617181920(配列番号42)、
ここで:X1011は、GLHHDSEP、またはGLDENSEKであり;
12は、K、R、またはPであり;
13は、RまたはFであり;
14は、KまたはD-リジンであり;
15は、Q、S、またはベータ-Aであり;
16は、Aまたは2-アミノイソ酪酸(B)であり;
17は、Iであり;
18は、K、I、またはFであり;
19は、D-アラニン、I、L、V、D-ロイシン、またはD-バリンであり;および
20は、I、L、V、D-イソロイシン、D-ロイシン、D-バリン、または不在である、
を含む、16~18アミノ酸長であるペプチドであって、
該ペプチドは、疎水性部分を含み、前記疎水性部分は、カプリロイル(C);ノナノイル(C);カプリル(C10);ウンデカノイル(C11);ラウロイル(C12);トリデカノイル(C13);ミリストイル(C14);ペンタデカノイル(C15);パルミトイル(C16);フィタノイル(メチル置換C16);ヘプタデカノイル(C17);ステアロイル(C18);ノナデカノイル(C19);アラキドイル(C20);ヘニコサノイル(C21);ベヘノイル(C22);トルシサノイル(C23);およびリグノセロイル(C24);からなる群より選択される脂質部分を含み;
ここで、該ペプチドは、細胞において10μMの該ペプチドおよび8μMのSLIGRL(配列番号73)を用いるカルシウム流により評価されるとき少なくとも70%のPAR2の阻害を示すか;または、該ペプチドは、細胞において3μMの該ペプチドおよび8μMのSLIGRL(配列番号73)を用いるカルシウム流により評価されるとき少なくとも40%のPAR2の阻害を示す、前記ペプチド。
【請求項2】
18が、KもしくはIである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
19が、L、I、V、D-ロイシン、またはD-バリンである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
以下の配列:
SEX11121314151617KX19(配列番号43)、
ここで:XSEX11は、GLHHDSEP、またはGLDENSEKであり;
12は、K、R、またはPであり;
13は、RまたはFであり;
14は、KまたはD-リジンであり;
15は、Q、S、またはベータ-Aであり;
16は、Aまたは2-アミノイソ酪酸(B)であり;
17は、Iであり;および
19は、D-アラニン、I、L、V、D-ロイシン、またはD-バリンである、
を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
N末端においてXをさらに含み、ここで、Xが、S、G、P、イプシロンリジン、アミノヘキサン酸(Ahx)、W、またはNからなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
がイプシロンリジンである、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
1011が、GLHHDSEPである、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
1011が、GLDENSEKである、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項9】
15が、Sであり;X20が、I、V、L、D-イソロイシン、D-ロイシン、またはD-バリンである、請求項1~8のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項10】
12 は、Kである、請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
13 は、Rである、請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
13 は、Fである、請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項13】
14 は、D-リジンである、請求項1~12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項14】
14 は、Kである、請求項1~12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項15】
16 は、Aである、請求項1~14のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項16】
GLHHDSEPKRKSAIKLdI(配列番号9)、GLHHDSEPKRdKSAIKdV(配列番号10)、eKGLHHDSEPKRdKSAIKLdI(配列番号12)、eKGLDENSEKKFdKSAIKLdV(配列番号13)、GLHHDSEPKRdKSBIKdV(配列番号15)、GLHHDSEPKRdKSBIKLdV(配列番号18)、eKGLDENSEKKFdKSAIKL(配列番号19)、GLHHDSEPKRKSAIKLdV(配列番号22)、およびGLHHDSEPKRKSAIKLI(配列番号29)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで、eKはイプシロンリジンであり、dIはD-イソロイシンであり、dKはD-リジンであり、およびdVはD-バリンである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項17】
GLHHDSEPKRdKSAIKdV(配列番号10)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項18】
eKGLDENSEKKFdKSAIKLdV(配列番号13)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項19】
GLHHDSEPKRdKSBIKdV(配列番号15)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項20】
GLHHDSEPKRKSAIKLdI(配列番号9)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項21】
SEX11121314151617KX19(配列番号43)、
GLXSEX11KX13141516171819(配列番号46)、
GLHHDXEX11KX13141516171819(配列番号49)、
GLDENXEX11KX13141516171819(配列番号50)、
GLXEX11KX131415AIKX19(配列番号51)、
GLHHDXEX11KX131415AIKX19(配列番号52)、
GLDENXEX11KX131415AIKX19(配列番号53)、
GLHHDSEX11KX13141516171819(配列番号54)、
GLDENSEX11KX13141516171819(配列番号55)、
GLXSEX11KX131415AIKX19(配列番号56)、
GLHHDSEX11KX131415AIKX19(配列番号57)、
GLDENSEX11KX131415AIKX19(配列番号58)、
HHDX101112131415AIKX19(配列番号59)、
HHDSEX11KXX13141516171819(配列番号60)、
DENSEX111213141516171819(配列番号61)、
DENSEKX1213141516171819(配列番号62)、
101112131415AIKX19(配列番号63)、
SEX1112131415AIKX19(配列番号64)、X10KKRKX1516171819(配列番号66)、
DX1011KX131415AIKX19(配列番号67)、
およびXLXSEX11KX13141516IKX19(配列番号68)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
ここでX1011は、GLHHDSEP、またはGLDENSEKである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項22】
脂質部分が、ミリストイル(C14)およびパルミトイル(C16)からなる群から選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項23】
疎水性部分が、ペプチドのN末端に付着している、請求項1~22のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項24】
17アミノ酸長である、請求項1~17および19~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項25】
1500Da~2500Daの分子量範囲を有する疎水性部分を含む、1700Da~2300Daの分子量範囲を有する疎水性部分を含む、2000Da~2300Daの分子量範囲を有する疎水性部分を含む、または少なくとも2000Daの分子量範囲を有する疎水性部分を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項26】
水溶液中で、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、100mg/mL、または120mg/mLまでの溶解度を有する、請求項1~25のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載のペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項28】
障害を処置することにおける使用のための、請求項27に記載の医薬組成物または請求項1~26のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項29】
障害を処置することにおける使用のための、請求項27または2に記載の医薬組成物または請求項1~26のいずれか一項に記載のペプチドであって、障害が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、特発性肺線維症(IPF)、アトピー性皮膚炎(AD、湿疹)、腎線維症、アルコール性脂肪性肝炎、臓器の線維症、腎線維症、骨髄線維症、肺動脈性高血圧症(PAH)、肺線維症、掻痒症(掻痒)、膵炎、慢性腎疾患、腎炎、多発性硬化症、がん、白血病、メラノーマ、炎症性の障害および状態、敗血症、炎症関連CNS障害、気管支炎、喘息、糖尿病、糖尿病およびNASHの合併症、肥満、メタボリックシンドローム、線維性疾患、心臓線維症、肺線維症、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、硬変、関節炎、間接線維症、ケロイド、骨髄線維症、全身性線維症、強皮症、乾癬、蕁麻疹、膿痂疹、発疹、または酒さであり;好ましくは、障害は炎症性の障害であるか、または障害は肺の状態である、前記医薬組成物またはペプチド。
【請求項30】
障害を処置することにおける使用のための、請求項27または28に記載の医薬組成物または請求項1~26のいずれか一項に記載のペプチドであって、障害が、慢性疼痛、内臓疼痛、またはがん性疼痛である、前記医薬組成物またはペプチド。
【請求項31】
インスリンレベルを40%~60%低下させる、方法における使用のための、請求項2730のいずれか一項に記載の医薬組成物または請求項1~26のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項32】
インスリンレベルを45%低下させる、方法における使用のための、請求項2730のいずれか一項に記載の医薬組成物または請求項1~26、および31のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項33】
使用についての対象がヒトである、請求項2730のいずれか一項に記載の医薬組成物または請求項31もしくは32に記載のペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2015年11月13日に出願された米国仮出願U.S.S.N. 62/255,334に対する35 U.S.C.§119(e)下における優先権を主張し、当該仮出願は、本明細書において参照することにより援用される。
【0002】
政府の支援
本発明は、国立衛生学研究所-国立糖尿病消化器腎臓疾患研究所(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)により付与された助成金番号R42DK101240下における政府の支援によりなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
多様なホルモン、神経伝達物質および生物学的に活性な物質は、細胞膜に位置する特異的な受容体を介して、生体の機能を制御、調節または調整する。酵母および哺乳動物を含む真核生物において、これらの受容体のうちの多くは、受容体がカップリングしているグアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を活性化させることにより、細胞内シグナルの伝達を媒介する。かかる受容体は、一般に、Gタンパク質共役受容体(GPCR)と称され、Gタンパク質連動型(G protein-linked)受容体(GPLR)または7回膜貫通型ドメイン受容体(GPCR)としても知られている。GPCRに対する、特異的なシグナル伝達分子、すなわちリガンドの結合は、受容体の立体構造変化を引き起こし得、Gタンパク質に結合してこれを活性化することができる形態をもたらし、それにより、最終的に生物学的応答をもたらす細胞内イベントのカスケードの引き金を引く。典型的には、GPCRは、Gタンパク質と相互作用して、サイクリックAMP、イノシトールリン酸、ジアシルグリセロールおよびカルシウムイオンなどの細胞内セカンドメッセンジャーの合成を調節する。
【0004】
既知の特徴づけられていないGPCRは、それらが多くの疾患に関連するため、薬物の作用および開発の主要な標的となっている(Jacoby et al., Chem. Med. Chem. 2006, 1:760-782)。GPCRは、通常、3つの細胞内(IL-1/i1~IL-3/i3)ループおよび3つの細胞外ループ(EL-1/e1~EL-3/e3)により連結される7つの膜貫通ヘリックスドメイン(TM1~TM7)の共通の構造モチーフを共有する。7つの膜貫通ヘリックスは、細胞膜中にバレル様の空洞を形成し、リガンドとの細胞外相互作用により惹起されるこの構造における立体構造変化こそが、ドメインを細胞内でのGタンパク質共役のためにさらに活性化する。GPCRは、細胞の代謝、線維化、組織リモデリング、細胞の増殖および運動性、接着、炎症、神経型のシグナル伝達、ならびに凝血を制御するシグナル伝達プロセスにおいて、不可欠の役割を果たす。
【0005】
GPCRは、Gタンパク質とエフェクター(Gタンパク質により調節される細胞内の酵素およびタンパク質、ならびにチャネル)と共に、細胞内セカンドメッセンジャーの状態を細胞外の入力に接続するモジュラーシグナル伝達系の成分である(Pierce et al., Nature Rev Mole Cell Bio 2002, 3, 639-650)。GPCRのスーパーファミリーは大きく、ヒトゲノムのシークエンシングにより、それらをコードする850個の遺伝子が明らかとなっている(Hopkins and Groom Nature Reviews Drug Discovery 2002, 1, 727-730)。GPCRは、配列相同性および機能的類似性に基づいて6つのクラスに分けることができる(Foord et al., Pharmacol Rev 2005, 57(2): 279-88);クラスA(または1)(ロドプシン様)、クラスB(または2)(セクレチン受容体ファミリー)、クラスC(または3)(代謝型グルタミン酸/フェロモン)、クラスD(または4)(真菌の接合フェロモン受容体)、クラスE(または5)(サイクリックAMP受容体)、およびクラスF(または6)(Frizzled/Smoothened)。
【0006】
ロドプシン様GPCR(クラスAまたは1)の中には、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)があり、これは、7回膜貫通型GPCRのサブファミリーであり、それらの細胞外ドメインの部分の切断を通して活性化され、細胞外プロテアーゼ勾配のセンサーとして作用し、細胞が、線維症、がん、凝血、ならびに無数の他のプロセス(例えば急性および慢性の炎症に関与するものなど)における組織リモデリングの間に、タンパク質分解性微小環境に対して反応することを可能にする。PARファミリーのメンバーは、細胞外プロテアーゼ勾配のセンサーとして作用し、細胞が、組織リモデリングなどの広範な生理学的活動の間に、タンパク質分解性微小環境に反応することを可能にする。今日まで、4つの異なるPAR:PAR1、PAR2、PAR3およびPAR4が同定されている。それらは、ヒトの身体全体にわたり発現される。トリプシン、トロンビン、Xa、VIIa、マトリプターゼ、ヘプシン、トリプターゼおよびMMP-1などのプロテアーゼは、個々のPARメンバーのN末端細胞外ドメインを切断し、それにより、繋留されたリガンドをアンマスクし、これが、受容体の外表面に結合して、細胞内Gタンパク質への膜貫通型シグナル伝達を活性化する。PAR1は、元々、血小板において発見されており、この特殊化されたクラスのGPCRについてのプロトタイプとして役立つ。PAR1は、それが受容体のN末端細胞外ドメイン中に位置する残基R41-S42の間でトロンビンにより切断された場合に、活性化される。PAR3およびPAR4もまた、トロンビンにより活性化されるが、一方、PAR2は、トリプシン/トリプターゼ/Xa/VIIa受容体として最もよく知られている。タンパク質分解による切断は、新たなN末端を露出させ、これが、通常とは異なる細胞内モードにおいて、受容体の本体に結合する。PAR(例えばSFLLRNPAR1(配列番号80)、TFLLRNPAR1(配列番号71)、PRSFLLRNPAR1(配列番号72)、SLIGRLPAR2(配列番号73)、AYPGKFPAR4(配列番号74)の新たに切断されたN末端 の第1の新しいアミノ酸に対応する合成ペプチドもまた、PARに対する選択的な可溶性の分子間アゴニストとして機能することができる。
【0007】
主要なトロンビン受容体であるPAR1は、内皮バリア機能、血管反応性(vasoreactivity)、内膜過形成、炎症、および恒常性を含む、心血管系の広範な生理学的および病理学的プロセスに影響を及ぼすことが知られている(Ossovskaya et al., Physiol Rev 2004, 84:579-621)。PAR1は、in vitroで内皮細胞の増殖および遊走のメディエーターであり、発達中のマウスにおける血管新生のために必須である。PAR1欠損マウスは、不完全な血管形成のために、妊娠中期(E9.5)において胎仔の半分の死亡をもたらす。驚くべきことに、PAR1欠損マウスは、血小板機能の表現型の変化は有さず、このことが、PAR4の発見につながった。ヒトにおける場合とは異なり、PAR4は、マウスの血小板においては主要なトロンビン受容体であり、PAR4欠損マウスは、トロンビンに対してシグナル応答しない。トリプシン様プロテアーゼの細胞表面受容体であるPAR2は、炎症性細胞、間葉系細胞(例えば線維芽細胞、筋線維芽細胞、平滑筋細胞)、間質細胞、内皮, 肝細胞、星状細胞、ケラチノサイト、膵細胞、神経細胞、心臓細胞、ならびに肺、腸、および肝胆道を含む上皮において広く発現される。PAR2は、皮膚、関節、肺、脳、胃腸管および肝臓、ならびに血管系の多くの急性および慢性の炎症性疾患において重要な役割を果たし、肝臓、肺、腎臓および他の線維性疾患、アトピー性皮膚炎、慢性および急性の疼痛状態、掻痒、および肺動脈性高血圧症の進行に関連付けられている。PAR3の機能的役割は不明であり、合成のPAR3に繋留されたリガンドTFRGAP(配列番号75)は、検出可能な下流のシグナル伝達を刺激しない。PARはまた、機能的なホモダイマー/オリゴマー、およびヘテロダイマー/オリゴマーを形成することが示されている。PAR1およびPAR3は、PAR4のためのコファクターとして役立つことができ、PAR1は、PAR2をトランス活性化することができる(Kaneider et al., Nat. Immunol. 2007, 8:1303-12)。
【0008】
各々のPARは、Gタンパク質の区別し得るサブセットにカップリングする。例えば、PAR1は、Gα-サブユニットG、GおよびG12/13とカップリングし、これらは、異なるプロテアーゼにより個別的に活性化される。トロンビンは、3つ全てのヘテロ三量体サブユニットを同時に活性化することができ、一方、MMP-1は、より選択的にG12/13シグナル伝達を活性化する。PAR1-Gは、Ca2+を動態化するlnsPのホスホリパーゼC-β生成、およびタンパク質キナーゼC-α(PKCα)を活性化するジアシルグリセロール(DAG)を刺激する。これらが次いで、ホスホリパーゼAおよびホスホリパーゼDを活性化する。G12/13は、細胞の形状変化、遊走、およびrho依存的な癌化において主要な役割を果たす。PAR2は、Gq、Giおよびベータ-アレスチンシグナル伝達を刺激し得る。先に、PAR1-PAR2ヘテロダイマーに関してG12/13からGへのGタンパク質シグナル伝達のスイッチが起こることが、内皮バリア機能の維持に関与していることが示されている。Gは、rac、PI3Kの活性化、およびアデニル酸シクラーゼの阻害およびcAMPの抑制に関与している。PAR1およびPAR2が、どのようにしてERK1/2などのMAPキナーゼカスケードのメンバーを調節するかは、まだよく理解されていない。
【発明の概要】
【0009】
PEPDUCINS(商標)と称される細胞浸透性ペプチドは、膜浸透性の疎水性部分を野生型GPCRから誘導されるペプチドに付着させて、それにより、特異的な受容体-Gタンパク質シグナル伝達経路に対する人工のアゴニストおよび/またはアンタゴニストを生成することにより考案された(Covic L. et al. 2002, PNAS 99: 643-48;米国特許第6,864,229号;同第7,696,168号;同第8,389,480号;これらの各々は、本明細書において参照することにより援用される)。これらの脂質付加されたペプチドまたはポリペプチド(「リポペプチド」)は、膜を迅速にフリッピング(flip)するかまたは越えて、高度に特異的な様式において、すなわち、アロステリックな機構によるそれらのコグネートな受容体についての高い選択性により受容体-Gタンパク質シグナル伝達を妨害する能力を有する。PAR、例えばPAR1、PAR2およびPAR4についてのリポペプチド、コレシストキニンAおよびB(CCKA、CCKB)、ソマトスタチン-2(SSTR2)、メラノコルチン-4(MC4R)、グルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1R)、およびP2Y12ADP受容体が作られており、それらが由来する受容体のアゴニストおよび/またはアンタゴニストとして作用する。これらの組成物は、タンパク質ファミリーPARを含む広範なGPCRの活性を活性化または阻害するために有用である。ヒトPARは、PAR1(Genbankアクセッション番号AF019616)、PAR2(Genbankアクセッション番号XM003671)、PAR3(Genbankアクセッション番号NM004101)、およびPAR4(Genbankアクセッション番号NM003950.1)を含み、これらは、本明細書において参照することにより援用される。
【0010】
PEPDUCINs(商標)は、PARファミリーのメンバーについて顕著かつ実質的なアゴニスト効果を有しない効果的なアンタゴニストとして用いられてきたが、一方で、受容体-Gタンパク質共役の機構、および受容体とGタンパク質との間の選択的な接触に対するその関与をさらに研究するため、ならびに、GPCRが関連付けられる多様な疾患および状態の処置および/または予防のための治療剤を作るために、より効果的なPAR2アンタゴニストについての必要性がなお存在する。候補のpepducinsは、疎水性の第2のドメインを、多かれ少なかれ、i3ループなどのインターフェイス接触のいずれかを担う可能性が高いGPCRセグメントと、TM6およびTM5を含むその隣接領域とを含む第1のドメインに付着させること、ならびに/または、受容体中の類似のループ/TMセグメントを潜在的に置き換えるかまたはこれに挿入して、それにより受容体-Gタンパク質シグナル伝達を修飾することにより構築される。
【0011】
本開示は、全長PAR2またはそのフラグメントの修飾に基づく新たなペプチドを提供する。ある態様において、ペプチドは、キメラポリペプチドである。新たなペプチドは、PAR2により調節されるシグナル伝達イベントをターゲティングするために、ならびにPAR2に関連する疾患および状態の処置および/または予防のために有用である。例えば、本明細書におけるペプチドおよび組成物は、増大した、または異常なPAR2の活性またはシグナル伝達に関連する、あるいは増大した、または異常なPAR2プロテアーゼ活性に関連する疾患または状態を処置するために用いられる。本明細書におけるペプチドおよび組成物はまた、構成的なPAR2活性を処置するために用いることができる。
【0012】
一側面において提供されるのは、PAR2に対して実質的なアンタゴニスト効果を有し、実質的なアゴニスト効果を有さない、ペプチドおよびその組成物である。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列のアミノ酸位置270~290に対応するペプチドの領域において、1つ以上の点変異を含む。点変異は、置換、付加、または欠失のうちのいずれかであってよく、ここで、付加または欠失は、野生型配列において、変異の点での8個までの連続した残基の付加または欠失を含む。野生型ヒトPAR2配列は、以下に配列番号69として提供される。本明細書において用いられる場合、句「野生型ヒトPAR2」とは、配列番号69のヒトPAR2配列を指す。
【数1】
【0013】
別の側面において、ペプチドは、細胞膜を越えてのペプチドの通過を可能にする疎水性部分(例えば脂質部分、アシル部分、ステロイド部分、またはアミノ酸部分)を含む、リポペプチドである。
【0014】
ある態様において、ペプチドは、配列:
SEX11121314151617KX19(配列番号43)を含み、ここで、X~X19変数は、本明細書において定義されるとおりであり、野生型ヒトPAR2配列のアミノ酸残基273~288に対応する。本明細書において提供される表1は、例示のペプチド配列を列記する。ある態様において、ペプチドは、配列番号1~41から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、ペプチドは、配列番号1~41のアミノ酸配列に対して約50%~約99%相同な配列を含む。ある態様において、ペプチドは、配列番号1~41のアミノ酸配列に対して約50%~約99%同一な配列を含む。
【0015】
ある態様において、ペプチドは、配列番号43のアミノ酸配列に対して約50%~約99%相同な配列を含む。ある態様において、ペプチドは、配列番号43のアミノ酸配列に対して約50%~約99%同一な配列を含む。
【0016】
ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を含み;およびここで、ペプチドは、少なくとも15アミノ酸長である。
【0017】
ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を、ならびにX19およびX20において追加のアミノ酸を含み、ここで、X20は、疎水性アミノ酸またはD-アミノ酸である。
【0018】
ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を、ならびにX19およびX20において追加のアミノ酸を含み、ここで、X14およびX20は、D-アミノ酸である。
【0019】
別の側面において、ペプチドは、野生型PAR2の変異フラグメントを含み、ここで、ペプチドは、配列中、少なくとも2個の連続したアミノ酸残基の少なくとも2つのセクションが、野生型PAR2配列と共通する(shares)。ある態様において、少なくとも2個の連続したアミノ酸残基は、ヒトPAR2配列のアミノ酸位置270~290に対応するペプチドの位置において見出され、ここで、前記のPAR2の変異フラグメント中の少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置272、273、274、275、276、277、280、282、283、284、285、286、288、および/または289に対応するアミノ酸位置にある。少なくとも2個の連続したアミノ酸の追加のセクションもまた企図される。例えば、ペプチドは、少なくとも2個の連続したアミノ酸の3つのセクション;少なくとも2個および少なくとも3個の連続したアミノ酸の1つのセクション;少なくとも3個の連続したアミノ酸の2つのセクション;少なくとも3個の連続したアミノ酸の3つのセクション;少なくとも3個の連続したアミノ酸の2つのセクションおよび 少なくとも2個の連続したアミノ酸の1つのセクション;少なくとも3個の連続したアミノ酸の1つのセクションおよび少なくとも4個の連続したアミノ酸の1つのセクション;少なくとも3個の連続したアミノ酸の1つのセクション、少なくとも4個の連続したアミノ酸の1つのセクション、および少なくとも2個の連続したアミノ酸の1つのセクション;少なくとも4個の連続したアミノ酸の2つのセクション;少なくとも4個の連続したアミノ酸の1つのセクション、少なくとも6個の連続したアミノ酸の1つのセクションを有していてもよい。連続したアミノ酸のセクションは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸残基により分離される。
【0020】
ある態様において、ペプチドは、野生型プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)の変異フラグメントを含み、ここで、ペプチドは、配列中、少なくとも3個の連続したアミノ酸残基が、ヒトPAR2配列のアミノ酸位置270~290と共通し、ここで、前記のPAR2の変異フラグメント中の少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置272、273、274、275、276、277、280、282、283、284、285、286、288、および/または289に対応するアミノ酸位置にある。
【0021】
別の側面において、本明細書において記載されるペプチドおよび薬学的に許容し得る賦形剤を含む医薬組成物が提供される。ある態様において、医薬組成物は、経口、エアロゾル、鼻、局所、直腸、膣または非経口投与、または静脈内、皮下、皮内、または筋肉内注射のために好適である。
【0022】
さらに別の側面において、本明細書において記載されるペプチドおよび組成物を用いて多様な状態または障害を処置する方法が提供される。ある態様において、ペプチドまたはその組成物の治療有効量を、本明細書において記載されるような障害または状態を処置および/または予防するために、それを必要としている対象に投与する。例えば、本明細書におけるペプチドおよび組成物は、増大した、または異常なPAR2の活性またはシグナル伝達に関連する、あるいは増大した、または異常なPAR2プロテアーゼ活性に関連する疾患または状態を処置するために用いられる。本明細書におけるペプチドおよび組成物はまた、構成的なPAR2活性を処置するために用いることができる。例示の障害または状態は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、特発性肺線維症(IPF)、アトピー性皮膚炎(AD、湿疹)、腎線維症、アルコール性脂肪性肝炎、臓器の線維症、腎線維症、骨髄線維症、肺動脈性高血圧症(PAH)、肺線維症、掻痒症(pruritis)(掻痒(itch))、膵炎、慢性腎疾患、腎炎、多発性硬化症、がん、白血病、メラノーマ、炎症性の障害および状態、敗血症、炎症関連CNS障害、気管支炎、喘息、糖尿病、糖尿病およびNASHの合併症、肥満、メタボリックシンドローム、線維性疾患、心臓線維症、肺線維症、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、硬変、関節炎、間接線維症、ケロイド、骨髄線維症、全身性線維症、強皮症、乾癬、蕁麻疹、膿痂疹、発疹、および酒さを含む。
【0023】
ペプチドは、多様な状態または障害の処置における使用のために、他の医薬剤(例えばペプチド、低分子)と組み合わせることができる。
【0024】
ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、グルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体アゴニストと組み合わせて用いてもよい。かかる組み合わせは、例えば、NASH、糖尿病、糖尿病およびNASHの合併症、ならびに他の代謝障害を処置するために有用であるか、あるいは、膵炎または炎症の副作用を抑制するための抗炎症剤として有用である。GLP-1受容体アゴニストの非限定的な例は、リラグルチド(VICTOZA(登録商標))、リキシセナチド、およびエキセナチドを含む。ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、リラグルチド、リキシセナチド、またはエキセナチドと組み合わせて用いてもよい。
【0025】
ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせて用いてもよい。かかる組み合わせは、例えば、特発性肺線維症(IPF)または他の線維化障害を処置するために有用である。
【0026】
さらなる側面において、本明細書において提供されるのは、本明細書において記載されるとおりのペプチドまたは組成物を含むキットである。
【0027】
本発明の1つ以上の態様の詳細は、以下の付随する説明において記載される。本発明の他の特徴、目的および利点は、説明から明らかとなるであろう。明細書および添付の請求の範囲において、単数形態はまた、文脈が明らかに別段に指示しない限り、複数を含む。別段に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野における当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。加えて、材料、方法および例は、単に説明的なものであり、限定的であることを意図しない。本明細書において引用される全ての特許および刊行物は、適用可能な法律により許される程度まで、本明細書において参照することにより援用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1A~1B。オスの肥満-糖尿病(db/db) マウス、6~8週齢を、Charles River Labs.から購入した。db/dbマウスは、糖尿病、肥満および脂質異常症のためのモデルとして役立つレプチン欠損動物である。動物を、第2日における血中グルコースおよび体重により無作為化し、通常の固形試料を自由に食べさせた。第0日から処置を開始し、動物に、毎日7~10AMに皮下(SC)注射(5mL/kg)を行った。第0、7、14および21日に、HbA1cをモニタリングした。マウス(n=10)を、毎日、10mg/kgのN-パルミトイル化SEQ70(PZ-235)またはビヒクル(「Veh」)のいずれかで処置した。摂食量(8±2g/日/マウス)および体重増加量(第0日における40±1gが第21日には47±1gまで増加した)は、処置群の間で3週間の期間にわたって有意には異ならなかった。非常に予想外なことに、PZ-235で処置した糖尿病マウスは、3週目のエンドポイントにおいてビヒクル群と比較して高度に有意(P<0.001)な0.8%の平均糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルの低下を有した。ビヒクル群の動物は、ビヒクル処置マウスにおいて、3週間の期間にわたって、4.7%から7.4%へのHbA1cの平均値の増加を有し、一方、PZ-235処置動物のHbA1cレベルは、4.8%から6.6%までのみ増大した。HbA1cレベルは、長期の血中グルコースレベルを反映する。PZ-235によるこの予想外の結果は、i3-ループ由来のペプデュシンによるPAR2の阻害が、重篤な糖尿病のセッティングにおいて、比較的短い期間(例えば3週間の処置)において、平均グルコースレベルを低下させることに対して、顕著な効果を有することを示すであろう。
【0029】
図2図2図1Aおよび1Bにおける実験からの糖尿病マウスの朝の血中グルコースを、週3回測定した。図2において示すとおり、平均の基線(朝)グルコースレベルは、ビヒクル対照群において漸増した(19mmol/Lが26mmol/Lまで増大した)。PZ-235処置コホートにおいては、朝の血中グルコースレベルは相対的に低下し、このことは、図1Aおよび1Bにおいて観察されたHbA1cに対する有益な効果と一致する。
【0030】
図3図3.第1、8および22日に、糖尿病マウスの血中グルコースプロフィールをモニタリングした。図3において示すとおり、平均血中グルコースは、PZ-235処置動物において、対照と比較して、初めの6時間の間に、一貫して2mmol/L低下した。
【0031】
図4図4A~4B.インスリン抵抗性は、2型糖尿病(T2DM)に関して、メタボリックシンドロームを定義する、重要な病因性の異常である。肥満により誘導されるインスリン耐性は、メタボリックシンドロームおよびT2DMの両方の根底にあるドミナントな要因である。肥満-糖尿病db/dbマウスは、速やかに重篤なインスリン抵抗性となり、これは、血漿インスリンの大幅な増加と、同時のグルコースの増加により反映される。3週間の実験の終了時に、全血からの血漿を、糖尿病マウスから採取した。図4Aおよび4Bにおいて示されるとおり、PZ-235処置動物において、対照群と比較して、顕著な45%の平均血漿インスリンの低下(図4A)およびグルカゴンレベルの22%の増大(図4B)があった。この予想外の結果は、PZ-235により例示されるようなPAR2阻害剤が、糖尿病の動物におけるインスリンレベルを改善すること、および類似のPAR2ペプデュシンが、糖尿病のヒトにおいてインスリン抵抗性を改善することにおいて有益な効果をもたらし得ることを、初めて示すものである。
【0032】
図5図5A~5B.糖尿病マウスの血漿トリグリセリドレベルを、基線において、および3週間のPZ-235(対ビヒクル)による処置の後で、測定した。図5Aおよび5Bにおいて示すとおり、PZ-235処置動物において、対照動物と比較して、高度に有意(P<0.01)な0.7mmol/Lの平均血漿トリグリセリド(TG)の低下があった。
【0033】
図6図6.糖尿病マウスの肝臓トリグリセリドレベルを、3週間のPZ-235(対ビヒクル)による処置の後で、測定した。3週間の実験の終了時において、糖尿病マウスから肝臓を単離し、急速凍結し、肝臓トリグリセリドを測定した。図6において示すとおり、3週間のPZ-235による糖尿病マウスの処置の後で、対照動物と比較して、有意(P<0.05)な15%の肝臓トリグリセリド低下があった。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
別段に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。以下の定義は、本願の開示および請求の範囲の解釈を補助するために提供される。本セクションにおける定義が他の場所における定義と一致しない場合は、本セクションにおいて記載される定義が支配する。
【0035】
本明細書において用いられる場合、用語「約(about)」または「約(approximately)」は、数と組み合わせて用いられる場合、参照される数の1、3、5、10または15%以内の任意の数を指す。
【0036】
本明細書において用いられる場合、「膜近傍」とは、膜に近いことを意味する。
【0037】
本明細書において用いられる場合、用語「ペプチド」または「ポリペプチド」とは、アミド結合(別名ペプチド結合)により直鎖状に連結されたモノマー(アミノ酸)からなる分子を指す。用語「ポリペプチド」とは、2個以上のアミノ酸の任意の鎖を指し、生成物の特定の長さを指さない。「ペプチド」または「ポリペプチド」とは、本明細書において用いられる場合、天然の生物学的ソースから誘導されたものであっても、組み換え技術により生成されたものであってもよいが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されたものではない。それは、化学合成によりものを含む任意の様式において生成される。本発明のポリペプチド中のアミノ酸の1つ以上は、例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、アシル基(例えばアセチル基)、抱合のためのリンカー、官能化、または他の既知の保護基もしくはブロッキング基などの化学的実体の付加により、修飾されていてもよい。ある態様において、ペプチドの修飾は、より安定なペプチド(例えばin vivoでのより長い半減期)をもたらす。
【0038】
用語「アミノ酸」とは、アミノ基およびカルボキシル基の両方を含む分子を指す。ある態様において、アミノ酸は、アルファ-アミノ酸である。ある態様において、アミノ酸は、天然のアミノ酸である。ある態様において、アミノ酸は、非天然のアミノ酸である。多くの既知の非天然のアミノ酸が存在し、それらのうちの任意のものを、本発明のペプチド中に含めることができる。例えば、Chemistry and Biochemistry of the Amino Acids(G. C. Barrett編、Chapman and Hall、1985年)中のS. Hunt、The Non-Protein Amino Acidsを参照。
【0039】
例示のアミノ酸は、限定することなく、アルファ-アミノ酸、例えばペプチド中に見出される20個の一般的に天然に存在するアルファアミノ酸のD-およびL-異性体、20個の一般的に天然に存在するアミノ酸ではない天然のアミノ酸、および非天然のアルファ-アミノ酸を含む。本発明のペプチドの構築において用いられるアミノ酸は、有機合成により調製されても、他の経路(例えば天然のソースの分解または天然のソースからの単離など)により得られてもよい。アミノ酸は、市販のものであっても、合成されてもよい。疎水性側鎖を有するアミノ酸は、Gly、Pro、Ala、Ile、Leu、Val、Phe、Met、TrpおよびTyrを含む。ある態様において、疎水性側鎖を有するアミノ酸は、Gly、Pro、Ala、Ile、Leu、ValおよびPheを含む。ある態様において、疎水性側鎖を有するアミノ酸は、Ala、Ile、LeuおよびValを含む。極性側鎖を有するアミノ酸は、Gln、Asn、His、Ser、Thr、Tyr、Cys、Met、Trpを含む。ある態様において、極性側鎖を有するアミノ酸は、Asn、Cys、Gln、Met、SerおよびThrを含む。芳香族側鎖を有するアミノ酸は、Phe、Trp、Tyr、およびHisを含む。疎水性芳香族側鎖を有するアミノ酸は、Phe、Typ、およびTyrを含む。荷電した側鎖を有するアミノ酸は、Asp、Glu、Arg、HisおよびLysを含む。負に荷電した側鎖は、AspおよびGluを含む。正に荷電した側鎖は、Arg、HisおよびLysを含む。中性のアミノ酸は、Ala、Ser、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Trp、Met、Gly、Thr、Cys、Tyr、AsnおよびGlnからなる群より選択される。
【0040】
本明細書において用いられる場合、用語「投与」、「投与すること」などは、医薬組成物を対象に提供することに関して用いられる場合、一般に、剤、例えばPAR2シグナル伝達経路のアゴニストまたはアンタゴニストを、適切な送達ビヒクルと組み合わせて含む、1つ以上の医薬組成物を、投与された化合物が、当該化合物がそのために投与された意図される生物学的効果のうちの1つ以上を達成するような任意の手段により、対象に提供することを指す。非限定的な例として、組成物は、非経口、皮下、静脈内、冠状動脈内(intracoronary)、直腸、筋肉内、腹腔内、経皮、または頬側の送達の経路で投与することができる。
【0041】
一態様において、剤、例えばPAR2シグナル伝達経路のアゴニストまたはアンタゴニストの、患者への「投与」は、制御放出、すなわち、同じ量の活性成分を含む即時放出処方物が同じ期間の間に放出するであろうものよりも、持続的かつ調節された様式における、長期間にわたる、処方物からの活性成分の放出を必要とする。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康、体重、および/または血栓性疾患の状態、および/または他の関連するリスク要因、併用治療がある場合はその種類、処置の頻度、および/または所望される効果の性質に依存するであろう。
【0042】
本明細書において用いられる場合、「アゴニスト」とは、任意の天然または合成のペプチド、分子、またはそれらの組み合わせであって、標準的なバイオアッセイにおいて、またはin vivoで、または治療有効用量において用いられた場合に、生物学的活性を、対照試料(例えばペプチドアゴニストを含まないバッファーまたは試料)の基線より高く、少なくとも約1.5倍、約1.8倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約7倍、約10倍、約20倍、約50倍、または約100倍、またはそれより高く増大させるものを指す。
【0043】
「部分アゴニスト」とは、任意の天然または合成のペプチド、分子、またはそれらの組み合わせであって、生物学的活性を、標準的なバイオアッセイにおいて、またはin vivoで、または治療有効用量において用いられた場合に、対照試料の基線より高く、少なくとも約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、または約1.5倍、またはそれより高く増大させるものを指す。
【0044】
「アンタゴニスト」または「阻害剤」は、本明細書において交換可能に用いることができ、任意の天然または合成のペプチド、分子、またはそれらの組み合わせであって、標準的なバイオアッセイにおいて、またはin vivoで、または治療有効用量において用いられた場合に、標的の生物学的活性を、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、または約100%妨害するものを指す。
【0045】
本明細書において用いられる場合、「調節する(modulate)」とは、アンタゴニストとして作用すること、すなわち、部分的にまたは完全に、阻害するか、減少させるか、軽減するか、遮断するかまたは防止すること;あるいは、増大させるかまたは刺激すること、すなわち、アゴニスト、部分アゴニストまたはインバースアゴニストとして作用することを意味する。調節は、直接的または間接的またはアロステリックなものであってよい。
【0046】
ヒト野生型PAR2は、Genbankアクセッション番号XM-003671を有し、これは、本明細書により参照することにより援用される。ヒトPAR2の配列は、配列番号33として提供される。
【0047】
本開示において、PARファミリーメンバー一般、またはPARファミリーメンバーのうちの任意の個々のメンバー、例えばPAR2への言及は、全てのスプライスバリアント、変異体(これらに限定されないが、欠失、挿入、または多型、またはアミノ酸置換を含む)、アイソフォーム、およびこれらの相同体を指すものと理解される。
【0048】
用語「患者」または「対象」は、本明細書において用いられる場合、任意の個々の生物を指す。例えば、生物は、霊長類(すなわち、例えばヒト)などの哺乳動物であってよい。さらに、生物は、飼育動物(すなわち、例えばネコ、イヌなど)、家畜(すなわち、例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、または研究動物(すなわち、例えばマウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)であってよい。
【0049】
句「薬学的に許容し得る」は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、妥当な利益/リスク比と釣り合った、ヒトおよび動物の組織と接触しての使用のために好適な化合物、材料、組成物および/または製剤を指すために採用される。
【0050】
本明細書において用いられる場合、「PEPDUCIN(商標)」および「リポペプチド」は、交換可能に用いられ、受容体からGタンパク質へのシグナル転移の細胞内阻害剤として作用する、細胞浸透性ペプチドである。リポペプチドは、細胞内Gタンパク質共役受容体のループの脂質付加されたフラグメントを利用して、ターゲティングされた細胞-シグナル伝達経路におけるGPCRの作用を調節する。リポペプチドは、疎水性部分に繋留されたGPCR 細胞内ループから誘導される短いペプチドを含む。この構造が、リポペプチドが細胞膜脂質二重層中に繋留されて、ユニークな細胞内アロステリック機構を介して、GPCR/Gタンパク質インターフェイスをターゲティングすることを可能にする。PEPDUCIN(商標)リポペプチドの例は、PCT特許出願番号WO2012/139137において、および米国特許第6,864,229号;同第8,324,172号;同第8,354,378号;同第8,389,480号;同第8,440,627号;同第8,563,519号において記載され、これらの各々は、本明細書において参照することにより援用される。
【0051】
用語「治療有効量」は、本明細書において用いられる場合、組織、系、動物またはヒトにおいて、研究者、獣医師、医師、または他の臨床家により求められている生物学的または医学的応答を誘発する、活性なペプチドまたはその組成物の量を意味する。
【0052】
本明細書において用いられる場合、「処置すること」または「処置」は、哺乳動物における、特にヒトにおける血栓性疾患状態の処置をカバーし、これらに限定されないが、以下を含む:(a)哺乳動物において疾患状態が起きることを予防すること(かかる哺乳動物が疾患状態に罹患しやすいが、まだそれを罹患していると診断されていない場合は特に);(b)疾患状態を阻害すること、すなわち、その発症を停止させること;および/または(c)疾患状態を緩和すること、すなわち、疾患状態の退行を引き起こすこと。
【0053】
用語「相同」とは、本明細書において用いられる場合、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列のレベルにおいて高度に関連する核酸またはタンパク質を指す、当該分野において理解される用語である。互いに相同である核酸またはタンパク質は、相同体と称される。相同とは、2つの配列(すなわち、ヌクレオチド配列またはアミノ酸)の間の配列類似性の程度を指してもよい。本明細書において言及される相同性のパーセンテージの数値は、2つの配列の間で可能な最大の相同性、すなわち、2つの配列が最大数の一致する(相同な)位置を有するようにアラインメントされた場合のパーセント相同性を反映する。相同性は、公知の方法、以下において記載されるものなどにより容易に計算することができる:Computational Molecular Biology、Lesk, A. M.編、Oxford University Press、New York、1988年;Biocomputing: Informatics and Genome Projects、Smith, D. W.編、Academic Press、New York、1993年;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje, G.、Academic Press、1987年;Computer Analysis of Sequence Data、第I部、Griffin, A. M.およびGriffin, H. G.編、Humana Press、New Jersey、1994年;ならびにSequence Analysis Primer、Gribskov, M.およびDevereux, J.編、M Stockton Press、New York、1991年;これらの各々は、本明細書において参照することにより援用される。配列間の相同性を決定するために一般的に採用される方法は、これらに限定されないが、本明細書において参照することにより援用されるCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J Applied Math., 48:1073 (1988)において開示されるものを含む。相同性を決定するための技術は、公共で利用可能なプログラム中にコードされている。2つの配列の間の相同性を決定するための例示のコンピューターソフトウェアは、これらに限定されないが、GCGプログラムパッケージ、Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12(1), 387 (1984))、BLASTP、BLASTNおよびPASTA Atschul, S. F. et al., J Molec. Biol., 215, 403 (1990))を含む。
【0054】
用語「相同」は、2つの配列の間の比較を指す。2つのヌクレオチド配列は、それらがコードするポリペプチドが、少なくとも20個のアミノ酸の少なくとも1つの伸長部について、少なくとも約50~60%同一、好ましくは約70%同一である場合に、相同であるとみなされる。好ましくは、相同なヌクレオチド配列はまた、少なくとも4~5個のユニークに特定されるアミノ酸の伸長部をコードする能力によっても特徴づけられる。これらのアミノ酸の互いに相対的な同一性およびおよそのスペーシングの両方を、ヌクレオチド配列が相同であるとみなすために考慮しなければならない。60ヌクレオチド長未満のヌクレオチド配列については、相同性は、少なくとも4~5個のユニークに特定されるアミノ酸の伸長部をコードする能力により決定される。
【0055】
本明細書において用いられる場合、用語「同一性」とは、重合体分子の間、例えば核酸分子(例えばDNA分子および/またはRNA分子)の間、および/またはポリペプチド分子の間の、全体的な関連性を指す。2つのアミノ酸配列のパーセント同一性の計算は、例えば、最適な比較を目的として2つの配列をアラインメントすることにより行うことができる(例えば、第1および第2のアミノ酸配列の一方または両方において、最適なアラインメントのためにギャップを導入してもよく、比較を目的として非同一の配列を無視してもよい)。ある態様において、比較を目的としてアラインメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで、対応する位置におけるアミノ酸を比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置として、同じアミノ酸により占められている場合、分子はその位置において同一である。2つの配列の間のパーセント同一性は、配列により共有される同一の位置の数の関数であり、これは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入することが必要なギャップの数、各ギャップの長さを考慮する。配列の比較および2つの配列の間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。例えば、パーセント同一性は、Henikoff S. and Henikoff J.G., P.N.A.S. USA 1992, 89: 10915-10919において記載されるBlosum62マトリックスなどの、類似性スコア付けマトリックスを用いる最適な配列のアラインメントにより計算することができる。Blosum62類似性マトリックスならびにNeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(J. Mol. Biol. 1970, 48: 443-453)を用いる2つの配列のパーセント同一性および最適なアラインメントの計算は、Genetics Computer Group(GCG, Madison, Wl, USA)のGAPプログラムを用いて、当該プログラムのデフォルトのパラメーターを用いて行うことができる。本発明に関するタンパク質配列および核酸配列についてのパーセント同一性を計算するための具体的なパラメーターは、以下に記載される。
【0056】
「硬化剤(rigidifier)」または「ヘリックス破壊剤」部分は、アルファ-ヘリックス骨格の立体構造の規則性を破壊する。天然および非天然のアミノ酸は、硬化剤/ヘリックス破壊剤となり得る。硬化剤/ヘリックス破壊剤の非限定的な例は、Pro、Gly、TrpおよびAsnなどのアミノ酸;プロリン側鎖を置換する4、5、6または7員環を有するプロリン相同体、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン;ペプチド結合においてメチル-アミノ基を有するアミノ酸;1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACC);パラ-アミノ安息香酸(Paba);アルファ置換されたチロシンアナログであってよい。
【0057】
詳細な説明
PEPDUCIN(商標)リポペプチドは、GPCRを阻害または活性化するために開発された細胞浸透性ペプチドまたはポリペプチドである(例えば米国特許第6,864,229号および同第7,696,168号を参照)。ある態様において、リポペプチドは、脂質二重層の内側表面においてGPCRを阻害する。本明細書において提供されるのは、新たなペプチドおよびリポペプチドは、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)膜貫通受容体をターゲティングする。本明細書において提供される新たなペプチドおよびリポペプチドは、他のPEPDUCIN(商標)の文献において先に教示されていない新たな変異を含む。研究は、PAR2を、喘息(Schmidlin et al., J Immunol 2002, 169: 5315-5321)、関節炎(Ferrell et al., 2010)、痛覚過敏(Vergnolle et al., 2001)、神経性およびがん性疼痛(Lam et al., 2010)、がんの浸潤(Shi et al., Mol Cancer Res 2004, 2: 395-402)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肺動脈性高血圧症(PAH)、アトピー性皮膚炎(AD)、膵炎およびIBDを含む広範な疾患において役割を果たすものと関連付けてい。広範な疾患は、PAR2シグナル伝達を伴い、これは、炎症性、線維化性、および代謝性の反応を伴う多くのものを含んでいる。
【0058】
ある態様において、本明細書において提供されるのは、以下を含むキメラポリペプチドである:(a)ヒトプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)の変異した全長またはフラグメントを含む第1のドメイン;および(b)前記第1のドメインに付着した(attached)第2のドメインであって、ここで、第2のドメインは、疎水性部分を含み;ここで、前記キメラポリペプチドは、有効なPAR2アンタゴニストである。ある態様において、疎水性部分は、天然に存在するか、または天然には存在しない。
【0059】
ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、疎水性部分を含む。本明細書において用いられる場合、少なくとも1つの疎水性部分を含む本発明のペプチドは、リポペプチドと称される。例えば、本明細書においてペプチドに付着している疎水性部分は、脂質部分、アシル部分、ステロイド部分、またはアミノ酸部分であってよく、これらは、本明細書においてさらに説明される。本明細書において記載されるペプチドおよびリポペプチドは、典型的には、PAR2の細胞内表面をターゲティングし、シグナル伝達の調節をもたらす。
【0060】
ある態様において、ペプチドは、配列:
1011121314151617181920(配列番号42)
を含み、ここで:
は、不在、A、G、P、またはN末端リンカーであり;
は、M、G、P、I、L、V、ノルロイシン(J)、メチオニンスルホキシド(M(SO))、またはメチオニンスルホン(M(SO))、またはXが不在である場合は不在であり;
は、D、E、H、またはX~Xが不在である場合は不在であり;
は、D、E、H、またはX~Xが不在である場合は不在であり;
は、N、D、またはEであり;
は、任意のアミノ酸であり;
10は、任意のアミノ酸であり;
11は、任意のアミノ酸もしくはそのD-アミノ酸、2-アミノイソ酪酸(B)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、P、プロリン相同体、G、または硬化剤/ヘリックス破壊剤部分であり;
12は、K、R、P、または不在であり;
13は、任意のアミノ酸またはシトルリン(Cit)であり;
14は、K、またはX13とX14との間のペプチド結合を切断不可能にする任意のアミノ酸、または正の電荷を減少させる任意のアミノ酸であり;
15は、任意のアミノ酸またはベータ-Aであり;
16は、A、S、T、G、Q、ベータ-A、2-アミノイソ酪酸(B)、または不在であり;
17は、I、A、LまたはVであり;
18は、K、I、またはFであり;および
19は、疎水性アミノ酸、そのD-アミノ酸、または不在である。
【0061】
ある態様において、ペプチドは、配列:
SEX11121314151617KX19(配列番号43)
を含み、ここで:
は、不在、A、G、P、またはN末端リンカーであり;
は、M、G、P、I、L、V、ノルロイシン(J)、メチオニンスルホキシド(M(SO))、またはメチオニンスルホン(M(SO))、またはXが不在である場合は不在であり;
は、D、E、H、またはX~Xが不在である場合は不在であり;
は、D、E、H、またはX~Xが不在である場合は不在であり;
は、N、D、またはEであり;
11は、任意のアミノ酸もしくはそのD-アミノ酸、2-アミノイソ酪酸(B)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、P、プロリン相同体、G、または硬化剤/ヘリックス破壊剤部分であり;
12は、K、R、P、または不在であり;
13は、任意のアミノ酸またはシトルリン(Cit)であり;
14は、K、またはX13とX14との間のペプチド結合を切断不可能にする任意のアミノ酸、または正の電荷を減少させる任意のアミノ酸であり;
15は、任意のアミノ酸またはベータ-Aであり;
16は、A、S、T、G、Q、ベータ-A、2-アミノイソ酪酸(B)、または不在であり;
17は、I、A、LまたはVであり;および
19は、疎水性アミノ酸、そのD-アミノ酸、または不在である。
【0062】
ある態様において、ペプチドは、配列番号43の配列を含み、ここで:
は、不在、A、またはN末端リンカーであり;
は、M、G、I、L、ノルロイシン(J)、M(SO)、M(SO)、またはXが不在である場合は不在であり;
は、D、E、H、またはX~Xが不在である場合は不在であり;
は、D、E、H、またはX~Xが不在である場合は不在であり;
は、N、D、またはEであり;
11は、K、P、dP、2-アミノイソ酪酸(B)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、プロリン相同体、または硬化剤/ヘリックス破壊剤部分であり;
12は、Kまたは不在であり;
13は、R、F、W、Y、シトルリン(Cit)、または別のアミノ酸であり;
14は、K、dK、または別のアミノ酸であり;
15は、Q、S、またはベータ-Aであり;
16は、A、S、T、G、ベータ-A、2-アミノイソ酪酸(B)、または不在であり;
17は、IまたはAであり;
19は、疎水性アミノ酸、そのD-アミノ酸であり;および
20は、疎水性アミノ酸、そのD-アミノ酸である。
【0063】
ある態様において、ペプチドは、配列:
AIXSEX11KX13141516171819(配列番号44)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0064】
ある態様において、ペプチドは、配列:
AMXSEX11KX13141516171819(配列番号45)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0065】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLXSEX11KX13141516171819(配列番号46)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0066】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GDENSEX11KX13141516171819(配列番号47)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0067】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GDENXEX11KX13141516171819(配列番号48)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0068】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLHHDXEX11KX13141516171819(配列番号49)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0069】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLDENXEX11KX13141516171819(配列番号50)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0070】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLXEX11KX131415AIKX19(配列番号51)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0071】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLHHDXEX11KX131415AIKX19(配列番号52)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0072】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLDENXEX11KX131415AIKX19(配列番号53)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0073】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLHHDSEX11KX13141516171819(配列番号54)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0074】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLDENSEX11KX13141516171819(配列番号55)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0075】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLXSEX11KX131415AIKX19(配列番号56)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0076】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLHHDSEX11KX131415AIKX19(配列番号57)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0077】
ある態様において、ペプチドは、配列:
GLDENSEX11KX131415AIKX19(配列番号58)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0078】
ある態様において、ペプチドは、配列:
HHDX101112131415AIKX19(配列番号59)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0079】
ある態様において、ペプチドは、配列:
HHDSEX11KX13141516171819(配列番号60)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0080】
ある態様において、ペプチドは、配列:
DENSEX111213141516171819(配列番号61)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0081】
ある態様において、ペプチドは、配列:
DENSEKX1213141516171819(配列番号62)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0082】
ある態様において、ペプチドは、配列:
101112131415AIKX19(配列番号63)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0083】
ある態様において、ペプチドは、配列:
SEX1112131415AIKX19(配列番号64)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0084】
ある態様において、ペプチドは、配列:
SEX111213141516171819(配列番号65)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0085】
ある態様において、ペプチドは、配列:
10KKRKX1516171819(配列番号66)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0086】
ある態様において、ペプチドは、配列:
DX1011KX131415AIKX19(配列番号67)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0087】
ある態様において、ペプチドは、配列:
LXSEX11KX13141516IKX19(配列番号68)
を含み、ここで、X(可変)は、本明細書において定義される。
【0088】
ある態様において、配列番号42~68を含むペプチドは、X、X、X、X19および/またはX20に位置する追加のアミノ酸残基をさらに含む。ある態様において、配列番号70を含むペプチドは、X19および/またはX20に位置する追加のアミノ酸残基をさらに含む。ある態様において、ペプチドは、Xをさらに含み、これは、XのN末端側に位置する。ある態様において、ペプチドは、Xをさらに含む。ある態様において、ペプチドは、Xをさらに含む。X、XおよびXは、本明細書において定義されるとおりである。ある態様において、ペプチドは、X20が不在である場合、X19を含まない。X19は、X18のC末端側に位置する。ある態様において、ペプチドは、X1920をさらに含む。X19およびX20は、本明細書において定義されるとおりである。
【0089】
ある態様において、ペプチドは、アミノ酸位置のいずれかの間に少なくとも1個の挿入を含む。ある態様において、ペプチドは、アミノ酸位置のいずれかの間に少なくとも2個の挿入を含む。ある態様において、挿入は、Pである。ある態様において、ペプチドは、アミノ酸位置のいずれかの間に少なくとも2個のPの挿入を含む。ある態様において、ペプチドは、アミノ酸XとX;X11とX12;またはX12とX13との間に挿入を含む。ある態様において、挿入は、Pである。ある態様において、ペプチドは、アミノ酸XとX;X11とX12;またはX12とX13との間にPの挿入を含む。
【0090】
本明細書において一般的に定義されるとおり、Xは、XのN末端側に位置し、RまたはKであってよい。ある態様において、Xは、Rである。
【0091】
本明細書において一般的に定義されるとおり、Xは、XのN末端側に位置し、SまたはTであってよい。ある態様において、Xは、Sである。
【0092】
本明細書において一般的に定義されるとおり、Xは、XのN末端側に位置し、S、G、P、N末端リンカー、またはヘリックス破壊剤であってよい。ある態様において、Xは、S、G、Pである。ある態様において、Xは、eKおよびアミノヘキサン酸(Ahx)からなる群より選択されるN末端リンカーである。ある態様において、Xは、Ahxである。ある態様において、Xは、eKである。ある態様において、Xは、本明細書において定義されるようなヘリックス破壊剤である。ある態様において、Xは、Pである。ある態様において、Xは、Gである。
【0093】
本明細書において一般的に定義されるとおり、Xは、N末端リンカー、A、G、P、または不在である。ある態様において、Xは、eKまたはAhxである。ある態様において、Xは、A、G、もしくはPである。ある態様において、Xは、Gである。ある態様において、Xは、Aである。ある態様において、Xは、Pである。ある態様において、Xは、不在である。
【0094】
本明細書において一般的に定義されるとおり、Xは、M、G、P、I、L、V、ノルロイシン(J)、メチオニンスルホキシド(M(SO))、またはメチオニンスルホン(M(SO))、または不在である。ある態様において、Xは、M、G、P、I、L、またはVである。ある態様において、Xは不在であり、Xは、M、G、P、I、L、V、ノルロイシン(J)、メチオニンスルホキシド(M(SO))、またはメチオニンスルホン(M(SO))である。ある態様において、Xは、LまたはP(すなわち、XとXとの間の挿入)である。ある態様において、Xは、Lである。
【0095】
ある態様において、XおよびXは、不在である。ある態様において、XおよびXは、いずれも存在する。ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:Xは、Pであり、Xは、Lである。ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:Xは、eK、Ahx、G、もしくはPであり;Xは、Lである。ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:Xは、Gであり、Xは、LまたはPである。ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:Xは、Gであり、Xは、Lである。ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:Xは、Aであり、Xは、Iである。ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:Xは、Aであり、Xは、Mである。ある態様において、ペプチドは、Xを含まず、Xは、M、G、P、I、L、またはVである。
【0096】
本明細書において一般的に定義されるとおり、Xは、H、D、E、またはX~Xが不在である場合は不在である。ある態様において、Xは、Hである。ある態様において、Xは、Dである。ある態様において、Xは、Eである。
【0097】
本明細書において一般的に定義されるとおり、Xは、H、D、E、またはX~Xが不在である場合は不在である。ある態様において、Xは、Hである。ある態様において、Xは、Dである。ある態様において、Xは、Eである。
【0098】
ある態様において、ペプチドは、X~Xを含まない。
【0099】
本明細書において一般的に定義されるとおり、Xは、D、E、またはNである。ある態様において、Xは、Nである。ある態様において、Xは、Dである。ある態様において、Xは、Eである。
【0100】
ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:Xは、H、D、またはEであり、Xは、HまたはEであり、Xは、DまたはEである。ある態様において、Xは、Dであり、Xは、Hであり、Xは、Nである。ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:Xは、Hであり、Xは、Hであり、Xは、Dである。ある態様において、Xは、Hであり、Xは、Hであり、Xは、Eである。ある態様において、Xは、Hであり、Xは、Hであり、Xは、Nである。ある態様において、Xは、Dであり、Xは、Eであり、Xは、Nである。ある態様において、Xは、Hであり、Xは、Eであり、Xは、Nである。
【0101】
本明細書において一般的に定義されるとおり、Xは、任意のアミノ酸である。ある態様において、Xは、S、T、H、R、およびKである。ある態様において、Xは、SまたはHである。ある態様において、Xは、SまたはTである。ある態様において、Xは、RまたはLである。
【0102】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X10は、任意のアミノ酸である。ある態様において、X10は、EまたはDである。ある態様において、X10は、Eである。ある態様において、X10は、Dである。
【0103】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X11は、任意のアミノ酸もしくはそのD-アミノ酸、2-アミノイソ酪酸(B)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、P、プロリン相同体、G、または硬化剤/ヘリックス破壊剤部分であってよい。ある態様において、X11は、Kである。ある態様において、X11は、2-アミノイソ酪酸(B)である。ある態様において、X11は、硬化剤/ヘリックス破壊剤部分である。ある態様において、X11は、Pまたはプロリン相同体である。ある態様において、X11は、Pである。ある態様において、X11は、Gである。ある態様において、X11は、dPまたはHypである。
【0104】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X12は、K、R、P、または不在であってよい。ある態様において、X12は、Kである。ある態様において、X12は、Rである。ある態様において、X12は、Pである。ある態様において、X12は不在(すなわち欠失)である。
【0105】
ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:X11は、Kであり、X12は、Kである。ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:X11は、Bであり;X12は、Kである。ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:X11は、P、dP、またはHypであり;X12は、Kである。ある態様において、ペプチドは、以下のアミノ酸を含む:X11は、K、P、dP、またはHypであり;X12は、不在である。
【0106】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X13は、任意のアミノ酸またはシトルリン(Cit)であってよい。ある態様において、X13は、シトルリンである。ある態様において、X13は、任意の中性の芳香族アミノ酸である。ある態様において、X13は、Rである。ある態様において、X13は、F、W、またはYである。ある態様において、X13は、Yである。ある態様において、X13は、Fである。ある態様において、X13は、Wである。
【0107】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X14は、K、またはプロテアーゼによるX13とX14との間のペプチド結合の切断を不可能にする任意のアミノ酸、または正の電荷を減少させる任意のアミノ酸(すなわち、中性の、または負に荷電したアミノ酸)である。ある態様において、X14は、Kである。プロテアーゼによるペプチド結合の切断を不可能にするアミノ酸は、D-アミノ酸、またはペプチド結合においてN-メチルを有するアミノ酸を含む。ある態様において、X14は、任意のD-アミノ酸である。ある態様において、X14は、ペプチド結合においてN-メチルを有するアミノ酸である。ある態様において、X14は、正の電荷を減少させる任意のアミノ酸(すなわち、中性の、または負に荷電したアミノ酸)である。ある態様において、X14は、dKである。ある態様において、X14は、L、I、またはVである。ある態様において、X14は、dL、dI、またはdVである。ある態様において、X14は、正の電荷を減少させる任意のアミノ酸(すなわち、中性の、または負に荷電したアミノ酸)である。ある態様において、X14は、中性のアミノ酸である。ある態様において、X14は、負に荷電したアミノ酸である。ある態様において、X14は、DおよびEなどの負に荷電した側鎖である。ある態様において、X14は、A、S、V、L、I、P、F、W、M、G、T、C、Y、N、およびQから選択される中性の荷電した側鎖である。
【0108】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X15は、任意のアミノ酸、またはベータ-Aである。ある態様において、X15は、Q、N、H、S、T、Y、C、M、またはWなどの極性アミノ酸である。ある態様において、X15は、QまたはSなどの極性アミノ酸である。ある態様において、X15は、W、Y、またはFである。ある態様において、X15は、Q、S、またはWである。ある態様において、X15は、ベータ-Aである。
【0109】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X16は、A、S、T、G、Q、N、ベータ-A、2-アミノイソ酪酸(B)、または不在(すなわち欠失)である。ある態様において、X16は、不在である。ある態様において、X16は、A、BまたはQである。ある態様において、X16は、Aである。ある態様において、X16は、Bである。ある態様において、X16は、Qである。
【0110】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X17は、I、A、LまたはVである。ある態様において、X17は、IまたはAである。ある態様において、X17は、Aである。ある態様において、X17は、Iである。
【0111】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X18は、K、I、またはFである。ある態様において、X18は、KまたはIである。ある態様において、X18は、Iである。ある態様において、X18は、Kである。ある態様において、X18は、Fである。ある態様において、X18は、Fではない。
【0112】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X19は、疎水性アミノ酸、そのD-アミノ酸、またはプロテアーゼによるX18とX19との間のペプチド結合の切断を不可能にする任意のアミノ酸、または不在。ある態様において、X19は、プロテアーゼによるX18とX19との間のペプチド結合の切断を不可能にする任意のアミノ酸である。ある態様において、X19は、G、P、A、I、L、V、F、またはそれらのD-アミノ酸である。ある態様において、X19は、L、I、V、dL、dI、またはdVである。
【0113】
本明細書において一般的に定義されるとおり、X20は、X19のC末端側にあり、疎水性アミノ酸、そのD-アミノ酸、プロテアーゼによるX19とX20との間のペプチド結合の切断を不可能にする任意のアミノ酸、または不在。ある態様において、X20は、プロテアーゼによるX19とX20との間のペプチド結合の切断を不可能にする任意のアミノ酸である。ある態様において、X20は、G、P、A、I、L、V、F、またはそれらのD-アミノ酸である。ある態様において、X20は、L、I、V、dL、dI、またはdVである。
【0114】
位置X~X20におけるアミノ酸について列記される前述のおよびこの後の態様ならびに請求される態様のうちのいずれも、ヒトPAR2配列の位置280~289に対応するアミノ酸に対して適用可能であり、逆もまた然りである。
【0115】
本明細書において言及される野生型PAR2は、任意のソースに由来するものであってよい。ある態様において、野生型プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)は、霊長類またはげっ歯類に由来するものである。ある態様において、野生型PAR2は、サルに由来するものである。ある態様において、野生型PAR2は、マウスまたはラットに由来するものである。ある態様において、野生型PAR2は、ヒトに由来するものである。
【0116】
ある態様において、ペプチドは、配列番号1~68および70から選択されるアミノ酸を含む。表1は、例示のペプチド配列を列記する。位置X~X20は、ヒトPAR2配列の位置270~289に対応する。野生型ヒトPAR2の位置274~287において見出されるアミノ酸は、表1において提供される配列番号41のX~X18として示される。本明細書において用いられる場合、eKは、イプシロンリジンであり、Ahxは、アミノヘキサン酸であり、Bは、2-アミノイソ酪酸であり、Hypは、ヒドロキシプロリンであり、Citは、シトルリンであり、βAは、ベータ-アラニンであり、Jは、ノルロイシンである。D-アミノ酸は、1文字略号の前の小文字のdで示される(例えばdK、dI、dP)。ダッシュ(-)は、欠失を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0117】
ある態様において、ペプチドは、配列番号1~68および70のアミノ酸配列のうちのいずれかに対して、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%相同である配列を含む。ある態様において、ペプチドは、配列番号1~68および70のアミノ酸配列のうちのいずれかに対して約50%~約99%、約60%~約99%、約70%~約99%、約75%~約99%、約80%~約99%、約85%~約99%、約90%~約99%、約95%~約99%相同である配列を含む。
【0118】
ある態様において、ペプチドは、少なくとも13アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも15アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、13~25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、13~20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、13~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、16~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長である。
【0119】
ある態様において、ペプチドは、少なくとも1個の非天然のアミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1個または2個の非天然のアミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、少なくとも1個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド1個または2個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1~5個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1~10個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、全てD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、分子量が少なくとも2000Daである。
【0120】
ある態様において、ペプチドは、配列番号1~68および70のアミノ酸配列のうちのいずれかに対して、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一である配列を含む。ある態様において、ペプチドは、配列番号1~68および70のアミノ酸配列のうちのいずれかに対して、約50%~約99%、約60%~約99%、約70%~約99%、約75%~約99%、約80%~約99%、約85%~約99%、約90%~約99%、約95%~約99%同一である配列を含む。
【0121】
ある態様において、ペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸の変更(例えばアミノ酸置換、欠失および/または付加)を有する、配列番号1~68および70のアミノ酸配列を含む。ある態様において、アミノ酸の変更は、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸が別のアミノ酸へと変異しているアミノ酸置換である。ある態様において、アミノ酸の変更は、野生型配列中の変異の点において1、2、3、4、5、6、7または8残基までの添加または欠失を含む、付加または欠失である。添加されるかまたは欠失する残基は、連続した残基であっても、非連続の残基であってもよい。
【0122】
別の側面において、ペプチドは、野生型PAR2の変異フラグメントを含み、ここで、ペプチドは、配列中、少なくとも2個の連続したアミノ酸残基の少なくとも2つのセクションが、野生型PAR2配列と共通する。ある態様において、少なくとも2個の連続したアミノ酸残基は、ヒトPAR2配列のアミノ酸位置270~290に対応する野生型PAR2のアミノ酸位置において見出され、ここで、前記のPAR2の変異フラグメント中の少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、および/または289に対応するアミノ酸位置にある。少なくとも2個の連続したアミノ酸の追加のセクションもまた企図される。ある態様において、ペプチドは、少なくとも2個の連続したアミノ酸の3つのセクション;少なくとも2個および少なくとも3個の連続したアミノ酸の1つのセクション;少なくとも3個の連続したアミノ酸の2つのセクション;少なくとも3個の連続したアミノ酸の3つのセクション;少なくとも3個の連続したアミノ酸の2つのセクションおよび 少なくとも2個の連続したアミノ酸の1つのセクション;少なくとも3個の連続したアミノ酸の1つのセクションおよび少なくとも4個の連続したアミノ酸の1つのセクション;少なくとも3個の連続したアミノ酸の1つのセクション、少なくとも4個の連続したアミノ酸の1つのセクション、および少なくとも2個の連続したアミノ酸の1つのセクション;少なくとも4個の連続したアミノ酸の2つのセクション;または、少なくとも4個の連続したアミノ酸の1つのセクションおよび少なくとも6個の連続したアミノ酸の1つのセクションを、野生型PAR2配列と共に含む。連続したアミノ酸のセクションは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12アミノ酸残基により分けられる。ある態様において、アミノ酸の連続したセクションを分けるアミノ酸残基は、野生型PAR2配列の配列の対応する位置において見出されるものと同じ残基である。ある態様において、アミノ酸の連続したセクションを分けるアミノ酸残基は、野生型PAR2配列の配列の対応する位置において見出される残基とは異なる。
【0123】
ある態様において、ペプチドは、野生型プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)の変異フラグメントを含み、ここで、ペプチドは、配列中、少なくとも3個の連続したアミノ酸残基が、ヒトPAR2配列の位置270~290に対応する位置における野生型PAR2のアミノ酸と共通し、ここで、前記のPAR2の変異フラグメント中の少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置282に対応するアミノ酸位置におけるものである。
【0124】
ある態様において、ペプチドは、野生型プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)の変異フラグメントを含み、ここで、ペプチドは、配列中、ヒトPAR2配列の位置270~290に対応する位置において、少なくとも3個の連続したアミノ酸残基が、野生型PAR2のアミノ酸と共通し、ここで、前記のPAR2の変異フラグメント中の少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置280に対応するアミノ酸位置におけるものである。
【0125】
ある態様において、アミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置280または282に対応するアミノ酸位置におけるものであるが、位置280または282の両方にはない。ある態様において、アミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置280および282の両方に対応するアミノ酸位置にある。
【0126】
ある態様において、前記のPAR2の変異フラグメントにおける少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置273に対応するアミノ酸位置におけるものである。
【0127】
ある態様において、前記のPAR2の変異フラグメントにおける少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置275、276、および/または277に対応するアミノ酸位置におけるものである。
【0128】
ある態様において、前記のPAR2の変異フラグメントにおける少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置273、274、282、および/または284に対応するアミノ酸位置におけるものである。
【0129】
ある態様において、前記のPAR2の変異フラグメントにおける少なくとも1つの変異は、ヒトPAR2配列の位置274、275、276、277、および/または284に対応するアミノ酸位置におけるものである。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置280に対応するアミノ酸位置において、さらに変異を含む。
【0130】
ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、ヒトPAR2配列の位置289に対応するアミノ酸位置において、さらに変異を含む。
【0131】
ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、ヒトPAR2配列の位置288に対応するアミノ酸位置において、さらに変異を含む。
【0132】
ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、ヒトPAR2配列の位置283に対応するアミノ酸位置において、さらに変異を含む。
【0133】
ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、ヒトPAR2配列の位置285に対応するアミノ酸位置において、さらに変異を含む。
【0134】
ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、ヒトPAR2配列の位置282に対応するアミノ酸位置において、さらに変異を含む。
【0135】
ある態様において、PAR2の変異フラグメントは、ヒトPAR2配列の位置270~290に対応するアミノ酸を有するPAR2配列を指す。ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、前記のPAR2の変異フラグメント中に、ヒトPAR2配列の位置273、274、275、276および/または277に対応する位置において、少なくとも1つの変異を含む。ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、前記のPAR2の変異フラグメント中に、ヒトPAR2配列の位置274、284または287に対応する位置において、少なくとも1つの変異を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置273~277に対応する位置において、配列AIHHD(配列番号76)を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置273~277に対応する位置において、配列AIDEN(配列番号77)を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置273~277に対応する位置において、配列GLHHD(配列番号78)を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置273~277に対応する位置において、配列GLDEN(配列番号79)を含む。ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、前記のPAR2の変異フラグメント中に、ヒトPAR2配列の位置273、274、282、および/または284に対応する位置において少なくとも1つの変異を含む。ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、前記のPAR2の変異フラグメント中に、ヒトPAR2配列の位置274、275、276、277、および/または284に対応する位置において少なくとも1つの変異を含む。ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、前記のPAR2の変異フラグメントにおいて、ヒトPAR2配列の位置275、276、および/または277に対応する位置において、少なくとも1つの変異を含む。ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、前記のPAR2の変異フラグメントにおいて、ヒトPAR2配列の位置287に対応する位置において、少なくとも1つの変異を含む。ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、前記のPAR2の変異フラグメント中に、ヒトPAR2配列の位置287に対応する位置における変異、および位置274または位置284に対応する位置における変異を含む。ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、ヒトPAR2配列の位置289に対応する位置において、さらに変異を含む。ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、ヒトPAR2配列の位置280に対応する位置において、さらに変異を含む。
【0136】
ある態様において、記載されるペプチドの連続したアミノ酸残基のセクションは、PAR2の3番目の細胞内(i3)ループ、5番目の膜貫通ヘリックス(TM5)、および/または6番目の膜貫通ヘリックス(TM6)において見出される。ある態様において、記載されるペプチドの連続したアミノ酸残基のセクションは、ヒトPAR2配列の位置270~290中のアミノ酸残基に対応する野生型PAR2の位置に配置される。ある態様において、ペプチドは、配列中、3個以上の連続したアミノ酸残基が、野生型ヒトPAR2のi3ループと共通する。ある態様において、ペプチドは、配列中、4個以上の連続したアミノ酸残基、5個以上の連続したアミノ酸残基、または6個以上の連続したアミノ酸残基が、野生型ヒトPAR2のi3ループと共通する。ある態様において、ペプチドは、配列中、3個以上の連続したアミノ酸残基が、野生型ヒトPAR2のTM6と共通する。ある態様において、ペプチドは、配列中、4個以上の連続したアミノ酸残基、5個以上の連続したアミノ酸残基、または6個以上の連続したアミノ酸残基が、野生型ヒトPAR2のTM6と共通する。ある態様において、ペプチドは、配列中、2個以上の連続したアミノ酸残基が、野生型ヒトPAR2のTM5と共通する。ある態様において、ペプチドは、配列中、3個以上の連続したアミノ酸残基、4個以上の連続したアミノ酸残基、5個以上の連続したアミノ酸残基、または6個以上の連続したアミノ酸残基が、野生型ヒトPAR2のTM5と共通する。
【0137】
ある態様において、ペプチドは、配列中、少なくとも4、5、6、7、8、9または10個の連続したアミノ酸残基が、ヒトPAR2配列と共通する。
【0138】
ある態様において、ペプチドは、当該ペプチドが誘導される元の野生型PAR2フラグメントと比較して、2~15個の変異を含む。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、2~10個の変異を有する。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、5~10個の変異を有する。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、5個の変異を有する。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、6個の変異を有する。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、7個の変異を有する。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、8個の変異を有する。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、9個の変異を有する。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、10個の変異を有する。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、11個の変異を有する。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、12個の変異を有する。ある態様において、ペプチドは、野生型PAR2フラグメントと比較して、6~12個の変異を有する。
【0139】
ある態様において、ペプチドは、それぞれヒトPAR2配列の位置278および279に対応するペプチドの位置において、SおよびEを含む。ある態様において、ペプチドは、それぞれヒトPAR2配列の位置278および279に対応するペプチドの位置において、HおよびEを含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置287に対応するペプチドの位置において、Kを含む。ある態様において、ペプチドは、それぞれヒトPAR2配列の位置278および279に対応するペプチドの位置においてSおよびEを、ヒトPAR2配列の位置287に対応するペプチドの位置においてKを含む。
【0140】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置273に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、A、G、P、またはN末端リンカーである。本明細書において用いられる場合、N末端リンカーは、これらに限定されないが、eK、アミノヘキサン酸(Ahx)、プロリンおよびグリシンを含む。ある態様において、ペプチドは、ペプチドのN末端における開始残基がヒトPAR2配列の位置274に対応するアミノ酸である場合、位置273に対応するアミノ酸を含まない。
【0141】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置274に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、M、G、P、I、L、ノルロイシン(J)、メチオニンスルホキシド(M(SO))、またはメチオニンスルホン(M(SO))である。ある態様において、ペプチドは、ペプチドのN末端における開始残基が、ヒトPAR2配列の位置275に対応するアミノ酸である場合、位置273および274に対応するアミノ酸を含まない。
【0142】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置275に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、D、E、Hである。ある態様において、ペプチドのN末端における開始残基が、ヒトPAR2配列の位置276に対応するアミノ酸である場合、ペプチドは、位置273、274および275に対応するアミノ酸を含まない。
【0143】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置276に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、D、E、Hである。ある態様において、ペプチドのN末端は、位置277に対応するアミノ酸である。ある態様において、ペプチドのN末端における開始残基が、ヒトPAR2配列の位置277に対応するアミノ酸である場合、ペプチドは、位置273、274、275および276に対応するアミノ酸を含まない。
【0144】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置277に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、N、D、またはEである。
【0145】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置278に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、任意のアミノ酸である。ある態様において、ヒトPAR2配列の位置278に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、S、T、H、R、およびKである。
【0146】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置279に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、任意のアミノ酸である。ある態様において、ヒトPAR2配列の位置279に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、N、D、またはEである。
【0147】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置280に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、任意のアミノ酸またはそのD-アミノ酸である。ある態様において、ヒトPAR2配列の位置280に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、K、P、dP、2-アミノイソ酪酸(B)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、プロリン相同体、G、または硬化剤/ヘリックス破壊剤部分である。
【0148】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置282に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、任意のアミノ酸またはシトルリン(Cit)である。ある態様において、ヒトPAR2配列の位置282に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、R、F、W、Y、またはシトルリン(Cit)である。
【0149】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置284に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、任意のアミノ酸またはベータ-アラニン(ベータ-A;β-A)である。ある態様において、ヒトPAR2配列の位置284に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、Q、S、またはベータ-アラニン(ベータ-A;β-A)である。
【0150】
ある態様において、ヒトPAR2配列の位置289に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの変異は、I、V、L、A、またはそのD-アミノ酸である。
【0151】
ある態様において、本明細書において記載されるペプチドは、前記のPAR2の変異フラグメントにおいて、ヒトPAR2配列の位置275、276、および/または277に対応する位置において、少なくとも1つの変異を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置275~277に対応する配列HHDを含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置275および276に対応する位置においてHを、ヒトPAR2配列の位置277に対応する位置において負に荷電したアミノ酸(例えばN、D、E)を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置275~277に対応する位置において、配列DENを含む。ある態様において、ペプチドは、位置276および277に対応する位置においてENを、ヒトPAR2配列の位置275に対応する位置においてDまたはHを含む。態様のうちの任意のもののある態様において、ペプチドはさらに、ヒトPAR2配列の278(すなわち配列番号42のX)および279(すなわち配列番号42のX10)に対応する位置においてSEを含む。
【0152】
ある態様において、ペプチドは、野生型ヒトPAR2の位置287(すなわち配列番号42のX18)に対応する位置において、KからFへの変異を含まない。ある態様において、ペプチドは、野生型ヒトPAR2の位置287に対応する位置において、KからAへの変異を含まない。ある態様において、ペプチドは、野生型ヒトPAR2の位置274(すなわち配列番号42のX)に対応する位置において、MからAへの変異を含まない。ある態様において、ペプチドは、野生型ヒトPAR2の位置274に対応する位置において、MからGへの変異を含まない。ある態様において、ペプチドは、野生型ヒトPAR2の位置284(すなわち配列番号42のX15)に対応する位置において、RからSへの変異を含まない。ある態様において、ペプチドは、野生型ヒトPAR2位置284に対応する位置において、RからQへの変異を含まない。
【0153】
本明細書において記載されるとおり、ペプチドは、野生型PAR2と比較して、アミノ酸付加、欠失、または置換を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置281(すなわち配列番号42のX12)に対応する位置において、欠失を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置285(すなわち配列番号42のX16)に対応する位置において、欠失を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置274に対応する位置において、メチオニン(M)の、別の残基による置換または欠失を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置284に対応する位置において、アルギニン(R)の、別の残基による置換または欠失を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置284に対応する位置において、アルギニン(R)の、より短い側鎖を有する別の残基による置換を含む。ある態様において、ペプチドは、ヒトPAR2配列の位置287に対応する位置において、リジン(K)の置換または欠失 を含む。
【0154】
ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここでアミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を含み、ここで、Xは、M、G、P、I、L、ノルロイシン(J)、M(SO)、M(SO)であり、およびここで、ペプチドは、少なくとも15アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を含み、ここで、Xは、M、G、P、I、L、ノルロイシン(J)、M(SO)、M(SO)であり、ここでX15は、SまたはQであり、およびここで、ペプチドは、少なくとも15アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、16~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも1個の非天然のアミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1個または2個の非天然のアミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、少なくとも1個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド1個または2個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1~5個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1~10個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、全てD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、分子量が少なくとも2000Daである。ある態様において、ペプチドは、PAR2の70%または少なくとも80%の阻害を示すことが、細胞において10μMのペプチドおよび8μMのSLIGRL(配列番号73)アゴニストを用いるカルシウム流により評価される。ある態様において、ペプチドは、少なくとも40%または少なくとも50%のPAR2の阻害を示すことが、細胞において3μMのペプチドおよび8μMのSLIGRL(配列番号73)アゴニストを用いるカルシウム流により評価される。
【0155】
ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を含み、位置XおよびX19において、追加のアミノ酸をさらに含む。ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を含み、位置X、X19およびX20において、追加のアミノ酸をさらに含む。。ある態様において、位置Xにおける追加のアミノ酸は、Aである。ある態様において、位置Xにおける追加のアミノ酸は、eK、アミノヘキサン酸(Ahx)、プロリン、またはグリシンからなる群より選択されるN末端リンカーである、ある態様において、位置Xにおける追加のアミノ酸は、eKである。ある態様において、位置Xにおける追加のアミノ酸は、Ahxである。ある態様において、位置Xにおける追加のアミノ酸は、プロリンである。ある態様において、位置Xにおける追加のアミノ酸は、グリシンである。ある態様において、位置X19における追加のアミノ酸は、疎水性アミノ酸、そのD-アミノ酸、または不在である。ある態様において、位置X19における追加のアミノ酸は、疎水性アミノ酸である。ある態様において、位置X19における追加のアミノ酸は、A、I、L、F、V、PまたはGである。ある態様において、位置X19における追加のアミノ酸は、Lである。ある態様において、位置X19における追加のアミノ酸は、疎水性アミノ酸のD-アミノ酸である。ある態様において、位置X19における追加のアミノ酸は、LのD-アミノ酸である。ある態様において、位置X19における追加のアミノ酸は、VのD-アミノ酸である。X19についての態様は、X20に対しても適用可能である。ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を含み、位置XおよびX19においてさらに追加のアミノ酸を含み、ここでXはGであり、X19は、疎水性アミノ酸またはそのD-アミノ酸である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、16~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも1個の非天然のアミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1個または2個の非天然のアミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、少なくとも1個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド1個または2個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1~5個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1~10個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、全てD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、分子量が少なくとも2000Daである。ある態様において、ペプチドは、PAR2の70%または少なくとも80%の阻害を示すことが、10μMのペプチドを用いるカルシウム流により評価される。
【0156】
ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15における変異、ならびに、XにおけるEまたはH;XにおけるDまたはH;およびXにおけるDまたはEから選択される少なくとも1つの変異を含む。ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15における変異、ならびに、XにおけるH;XにおけるH;およびXにおけるDから選択される少なくとも1つの変異を含む。ある態様において、前述のペプチドは、XにおけるH;XにおけるH;およびXにおけるDを含む。ある態様において、ペプチドは、少なくとも20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、16~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも1個の非天然のアミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1個または2個の非天然のアミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、少なくとも1個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド1個または2個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1~5個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、1~10個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、全てD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、分子量が少なくとも2000Daである。ある態様において、ペプチドは、PAR2の70%または少なくとも80%の阻害を示すことが、10μMのペプチドを用いるカルシウム流により評価される。
【0157】
ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を、X14においてD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を、X19において追加のアミノ酸を含み、ここで、X19は、D-アミノ酸である。ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を、X19およびX20において追加のアミノ酸を含み、ここで、X20は、疎水性アミノ酸またはD-アミノ酸である。ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を、X19において追加のアミノ酸を含み、ここで、X14およびX19は、D-アミノ酸である。ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を、X19およびX20において追加のアミノ酸を含み、ここで、X14およびX20は、D-アミノ酸である。
【0158】
ある態様において、ペプチドは、配列番号41の配列を含み、ここで、アミノ酸配列は、位置XおよびX15において変異を含み、およびここで、ペプチドは、少なくとも15アミノ酸長である。ある態様において、前述のペプチドは、最長で20アミノ酸長である。ある態様において、前述のペプチドは、少なくとも2000Daの長さである。ある態様において、前述のペプチドは、PAR2の70%または少なくとも80%の阻害を示すことが、細胞において10μMのペプチドおよび8μMのSLIGRL(配列番号73)アゴニストを用いるカルシウム流により評価される。ある態様において、前述のペプチドは、¥少なくとも40%または少なくとも50%のPAR2の阻害を示すことが、細胞において3μMのペプチドおよび8μMのSLIGRL(配列番号73)アゴニストを用いるカルシウム流により評価される。
【0159】
ある態様において、ペプチドは、少なくとも1個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、前述のペプチド1個または2個のD-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチドは、位置X13においてさらに変異を含む。X13についての態様は、本明細書において記載される。ある態様において、ペプチドは、位置X11においてさらに変異を含む。X11についての態様は、本明細書において記載される。ある態様において、前述のペプチドは、X11またはX13のいずれかにおいて変異を含むが、両方の位置においてではない。
【0160】
ある態様において、ペプチドは、疎水性部分を含む。ある態様において、ペプチドは、少なくとも2個の疎水性部分を含む。ある態様において、ペプチドは、少なくとも3つの疎水性部分を含む。 疎水性部分は、N末端、C末端に、および/または、N末端とC末端との間のアミノ酸残基に付着していてもよい。疎水性部分は、ペプチドが細胞膜を越えることを可能にする。ある態様において、疎水性部分は、天然に存在する。ある態様において、疎水性部分は、天然には存在しない。ある態様において、疎水性部分は、脂質部分、アシル部分、ステロイド部分、またはアミノ酸部分を含む。ある態様において、疎水性部分は、リン脂質、コレステロール、ステロイド、スフィンゴシン、セラミド、オクチルグリシン、2-シクロヘキシルアラニン、ベンゾイルフェニルアラニン、またはCもしくはCアシル基を含む。ある態様において、疎水性部分は、ステロイド部分を含む。ある態様において、ステロイド部分は、デオキシコール酸、リトコール酸、またはそれらの塩である。ステロイド部分は、ペプチド上の、N末端上またはアミノ酸側鎖上のものなどの、遊離のアミノ基にカップリングしていてもよい。
【0161】
脂質部分は、直鎖脂肪酸であってよい。ある態様において、脂質部分は、以下からなる群より選択される:カプリロイル(C);ノナノイル(C);カプリル(C10);ウンデカノイル(C11);ラウロイル(C12);トリデカノイル(C13);ミリストイル(C14);ペンタデカノイル(C15);パルミトイル(C16);フィタノイル(メチル置換C16);ヘプタデカノイル(C17);ステアロイル(C18);ノナデカノイル(C19);アラキドイル(C20);ヘニコサノイル(heneicosanoyl)(C21);ベヘノイル(C22);トルシサノイル(trucisanoyl)(C23);およびリグノセロイル(C24)。ある態様において、脂質部分は、ミリストイル(C14)、ペンタデカノイル(C15)、またはパルミトイル(C16)である。ある態様において、疎水性部分は、パルミトイルである。
【0162】
疎水性部分は、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、炭素-炭素結合、炭素-窒素結合、炭素-酸素結合、または硫黄-硫黄結合を通して、ペプチドに付着していてもよい。疎水性部分は、ペプチド上の基、例えば、これらに限定されないが、スルフヒドリル、アミン、アルコールおよびフェノール性の基を用いて、当該ペプチドに付着していてもよい。疎水性部分を付着させるために有用な他のペプチド基および結合の型は、当該分野において公知である。他の細胞浸透性および/または膜繋留性の疎水性部分は、コレステロール、リン脂質、ステロイド、スフィンゴシン、セラミド、オクチル-グリシン、2-シクロヘキシルアラニン、ベンゾイルフェニルアラニン、CもしくはCアシル基、またはC~C脂肪酸を含む。
【0163】
ある態様において、疎水性部分は、ペプチドのN末端に、C末端に、N末端とC末端の両方の端部に、またはペプチド内部残基(すなわち、C末端アミノ酸とN末端アミノ酸との間のアミノ酸に付着している。
【0164】
ある態様において、疎水性部分は、ペプチドのN末端に付着している。ある態様において、疎水性部分は、ペプチドのC末端に付着している。ある態様において、疎水性部分は、N末端またはC末端に位置しない、ペプチドの内部残基に付着している。ある態様において、疎水性部分は、N末端から3残基以内である残基に付着している。ある態様において、疎水性部分は、N末端から5残基以内である残基に付着している。ある態様において、疎水性部分は、N末端から8残基以内である残基に付着している。ある態様において、疎水性部分は、C末端から3残基以内である残基に付着している。ある態様において、疎水性部分は、C末端から5残基以内である残基に付着している。ある態様において、疎水性部分は、C末端から8残基以内である残基に付着している。 前述のペプチドの疎水性部分の位置は、本明細書において記載されるペプチドおよび多様な態様のうちのいずれかに適用可能なものである。
【0165】
ある態様において、ペプチドは、約10~30アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、約10~20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、約10~15アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも13アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも15アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、少なくとも25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、13~25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、13~20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、13~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~25アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~20アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、16~18アミノ酸長である。ある態様において、ペプチドは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長である。前述のペプチドの長さは、本明細書において記載されるペプチドおよび多様な態様のうちのいずれかに適用可能なものである。
【0166】
ある態様において、ペプチドは、約1500Da~約2500Daの分子量範囲を有する疎水性部分を含む。ある態様において、ペプチドは、約1700Da~約2300Daの分子量範囲を有する疎水性部分を含む。ある態様において、ペプチドは、約2000Da~約2300Daの分子量範囲を有する疎水性部分を含む。前述の分子量範囲は、本明細書において記載されるペプチドおよび多様な態様のうちのいずれかに適用可能なものである。
【0167】
ある態様において、ペプチドは、水溶液中で、約30mg/mL、約40mg/mL、約50mg/mL、約60mg/mL、約100mg/mL、または約120mg/mLまでの溶解度を有する。
【0168】
本明細書において記載されるペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。ある態様において、ペプチド中の全ての残基は、L-アミノ酸である。ある態様において、ペプチド中の全ての残基は、D-アミノ酸である。ある態様において、ペプチド中の残基は、L-アミノ酸とD-アミノ酸との組み合わせである。ある態様において、ペプチドは、D-アミノ酸である1~5個の残基を含む。ある態様において、ペプチド配列の少なくとも5%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の少なくとも10%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の少なくとも20%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の最大15%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の最大20%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の最大50%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の最大60%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の最大80%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の最大90%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の約5~15%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の約5~20%は、D-アミノ酸を含む。ある態様において、ペプチド配列の約5~50%は、D-アミノ酸を含む。
【0169】
ある態様において、ペプチドは、PAR2アンタゴニストである。ある態様において、ペプチドは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、または95%のPAR2の阻害を示す。ある態様において、ペプチドは、少なくとも70%のPAR2の阻害を示す。ある態様において、ペプチドは、少なくとも80%のPAR2の阻害を示す。アンタゴニスト活性を測定するための多様な方法が公知である。例えば、アンタゴニスト活性は、例えば3μMまたは10μMのペプチドを用いるカルシウム流の実験により測定することができる。最大カルシウムシグナルまたは勾配の減少は、アンタゴニスト活性を示す。
【0170】
ある態様において、ペプチドは、実質的なアンタゴニスト効果を示し、実質的なアゴニスト効果を示さない。ある態様において、ペプチドは、約30%、25%、20%、15%、10%、または5%未満のアゴニスト効果を示す。
【0171】
使用および処置の方法
トリプシン様プロテアーゼの細胞表面受容体であるPAR2は、炎症性細胞、間葉系細胞(例えば線維芽細胞、筋線維芽細胞、平滑筋細胞)、間質細胞、内皮、肝細胞、星状細胞、ケラチノサイト、膵細胞、神経細胞、心臓細胞、ならびに肺、腸および肝胆道を含む上皮において、広く発現される。PAR2は、皮膚、関節、肺、脳、胃腸管および肝臓、ならびに血管系の多くの急性および慢性の炎症性疾患において役割を果たし、肝臓、肺、腎臓および他の線維性疾患、アトピー性皮膚炎、慢性および急性の疼痛状態、掻痒、ならびに肺動脈性高血圧症の進行において関連付けられてきた。
【0172】
血管の生物学におけるそのよく認識された役割に加えて、PARはまた、生存。アポトーシス、および腫瘍の増殖の調節に関与することが提案されている(例えばYang et al., Cancer Res 2009, 69:6223-31)。PAR2は、メラノーマにおける腫瘍細胞の生物学において(Tellez C, et al., Oncogene 2003, 22:3130-37)、肝細胞癌において、ならびに乳がん、卵巣がん、結腸がんおよび膵臓がんの浸潤および転移のプロセスにおいて、重要である。
【0173】
PAR2は、急性および慢性の炎症、関節炎、アレルギー反応、敗血症、炎症性疼痛、ならびにがん細胞の浸潤および転移に関与する多くの(病態)生理学的経路を媒介する。PAR2により活性化される多面的な下流の経路は、カルシウムの動態化、ホスホリパーゼC-β依存的なイノシトールリン酸およびジアシルグリセロールの生成、RhoおよびRacの活性化、MAPKおよびベータ-アレスチンシグナル伝達、および遺伝子転写を含む(Ossovskaya et al., 2004、上記)。
【0174】
プロテアーゼの細胞表面センサーとして、PAR2は、炎症の間に起こる迅速に変化するタンパク質分解性微小環境に対して応答または過剰応答する能力を与える。PAR2欠損マウスは、顆粒球の浸潤および組織損傷の減少、ならびに腸の炎症のモデルにおける炎症性サイトカインの抑制、自己免疫、ならびに脳脊髄炎を示す(Noorbakhsh, et al., J Exp Med 2006, 203:425-35; Cenac et al., Am J Pathol 2002, 161:1903-15)。PAR2欠損マウスにおいては、心虚血/再灌流傷害の減少もまた観察され、これは、炎症メディエーターの低下と相関した(Antoniak et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2010, 30: 2136-42)。逆に、PAR2の過剰刺激は、重篤な浮腫、顆粒球の浸潤、増大した組織浸透性、組織の損傷および低血圧をもたらし得る(Vergnolle et al., Br J Pharmacol 1999, 127: 1083-90;Cenac et al., 2002、上記)。トリプシンおよび合成のSLIGRL(配列番号73)ペプチドを含むPAR2のアゴニストはまた、感覚ニューロンからのカルシトニンおよびサブスタンスPの放出を引き起こし、これは、好中球の浸潤、浮腫、痛覚過敏、およびがん性疼痛を引き起こす(Vergnolle et al., Nat Med 2001, 7:821-26; Lam et al., Pain 2010, 149: 263-72)。PAR2は、関節炎に関連付けられており、これは、PAR2欠損マウスにおける関節の炎症の著しい減少(Ferrell et al. J Clin Invest 2003, 111: 35-41)、ならびに変形性関節症および関節リウマチの滑膜組織における受容体の発現の上方調節(Ferrell et al., Ann Rheum Dis. 2010, 69: 2051-2054)により証明されている。Sievertおよび同僚ら(Knight V, Tchongue J, Lourensz D, Tipping P, Sievert W. Protease-activated receptor 2 promotes experimental liver fibrosis in mice and activates human hepatic stellate cells. Hepatology 2012;55:879-87)は、PAR2欠損マウスが、マウスモデルにおける肝臓線維症に対して顕著な保護を提供することを示した。RufおよびSamadによる最近の報告(Badeanlou L, Furlan-Freguia C, Yang G, Ruf W, Samad F. Tissue factor-protease-activated receptor 2 signaling promotes diet-induced obesity and adipose inflammation. Nat Med 2011;17:1490-7)は、食餌誘発性の肥満および脂肪組織の炎症をもたらす、マクロファージ由来組織因子(TF)により媒介されるPAR-2シグナル伝達の役割についてのエビデンスを提供する。
【0175】
アトピー性皮膚炎(AD)または重篤な湿疹は、米国において約1800万人において存在する、最も一般的な慢性炎症性皮膚疾患である。典型的な臨床所見は、複数の炎症病変、苔癬化を伴う糜爛、線維性丘疹、および感染に対する感受性が増大した重篤な乾燥肌を含む。主要な制御されていない症状は、強い痒みおよびさらなる剥脱、糜爛および感染を引き起こし得る過剰な引っ掻きである。現在の処方箋に基づく薬物処置は、局所または全身性副腎皮質ステロイド、または最も深刻に患っている患者に対するカルシニューリン阻害剤からなり、これは、重篤な副作用を示し得、一般に、長期の処置には適していない。PAR2は、ADの病態形成における重要なメディエーターとして同定されている(Steinhoff, M., C.U. Corvera, M.S. Thoma, W. Kong, B.E. McAlpine, G.H. Caughey, J.C. Ansel, and N.W. Bunnett. Proteinase-activated receptor-2 in human skin: tissue distribution and activation of keratinocytes by mast cell tryptase. (1999) Exp Dermatol 8: 282-94;Lee, S.E., S.K. Jeong, and S.H. Lee. Protease and protease-activated receptor-2 signaling in the pathogenesis of atopic dermatitis. (2010) Yonsei Med J 51: 808-22)。PAR2は、急性から慢性皮膚炎への進行の間に、ケラチノサイト、炎症性細胞および感覚神経末端を含む、複数の皮膚の細胞型において上方調節される(Frateschi, S., E. Camerer, G. Crisante, S. Rieser, M. Membrez, R.P. Charles, F. Beermann, J.C. Stehle, B. Breiden, K. Sandhoff, S. Rotman, M. Haftek, A. Wilson, S. Ryser, M. Steinhoff, S.R. Coughlin, and E. Hummler. PAR2 absence completely rescues inflammation and ichthyosis caused by altered CAP1/Prss8 expression in mouse skin. (2011) Nat Commun 2: 161;Seeliger, S., C.K. Derian, N. Vergnolle, N.W. Bunnett, R. Nawroth, M. Schmelz, P.Y. Von Der Weid, J. Buddenkotte, C. Sunderkotter, D. Metze, P. Andrade-Gordon, E. Harms, D. Vestweber, T.A. Luger, and M. Steinhoff. Proinflammatory role of proteinase-activated receptor-2 in humans and mice during cutaneous inflammation in vivo. (2003) FASEB J 17: 1871-85;Rattenholl, A. and M. Steinhoff. Proteinase-activated receptor-2 in the skin: receptor expression, activation and function during health and disease. (2008) Drug News Perspect 21: 369-81;Buddenkotte, J., C. Stroh, I.H. Engels, C. Moormann, V.M. Shpacovitch, S. Seeliger, N. Vergnolle, D. Vestweber, T.A. Luger, K. Schulze-Osthoff, and M. Steinhoff. Agonists of proteinase-activated receptor-2 stimulate upregulation of intercellular cell adhesion molecule-1 in primary human keratinocytes via activation of NF-kappa B. (2005) J Invest Dermatol 124: 38-45)。環境的なソース(例えばイエダニからのDerP/F)、および肥満細胞トリプターゼ(Kawakami, T., T. Ando, M. Kimura, B.S. Wilson, and Y. Kawakami. Mast cells in atopic dermatitis. (2009) Curr Opin Immunol 21: 666-78)、カリクレイン-5およびカテプシンS(Viode, C., O. Lejeune, V. Turlier, A. Rouquier, C. Casas, V. Mengeaud, D. Redoules, and A.M. Schmitt. Cathepsin S, a new pruritus biomarker in clinical dandruff/seborrhoeic dermatitis evaluation. (2014) Exp Dermatol 23: 274-5)などの局所炎症性プロテアーゼからの皮膚におけるプロテアーゼ活性の増加が、異常なPAR2シグナル伝達ならびに炎症応答および掻痒の活性化の原因となる(Briot, A., C. Deraison, M. Lacroix, C. Bonnart, A. Robin, C. Besson, P. Dubus, and A. Hovnanian. Kallikrein 5 induces atopic dermatitis-like lesions through PAR2-mediated thymic stromal lymphopoietin expression in Netherton syndrome. (2009) J Exp Med 206: 1135-47; de Veer, S.J., L. Furio, J.M. Harris, and A. Hovnanian. Proteases: common culprits in human skin disorders. (2014) Trends Mol Med 20: 166-178)。PAR2の切断は、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)の過剰発現を刺激し(Duchatelet, S. and A. Hovnanian. Genetics of Atopic Dermatitis: Beyond Filaggrin-the Role of Thymic Stromal Lymphopoietin in Disease Persistence. (2014) JAMA Dermatol 150: 248-50)、C線維のサブセットを通して、ADの病変形成および掻痒を引き起こす(Wilson, S.R., L. The, L.M. Batia, K. Beattie, G.E. Katibah, S.P. McClain, M. Pellegrino, D.M. Estandian, and D.M. Bautista. The epithelial cell-derived atopic dermatitis cytokine TSLP activates neurons to induce itch. (2013) Cell 155: 285-95)。
【0176】
間質性肺疾患(ILD)の最も一般的なものである特発性肺線維症(IPF)は、米国において約128,000人において起こり、毎年48,000人の新たな症例が診断される。典型的な臨床経過は、組織が酸素を輸送する能力の不可逆的な喪失を引き起こす、肺の瘢痕形成および「蜂巣状化(honeycombing)」により特徴づけられる、進行性の線維性疾患である。合併型(co-morbid)肺高血圧症は、IPFを有する患者において一般的に観察され、臨床的予後の悪化の原因となる。IPFは、最終的に患者から呼吸する能力を奪い、診断後5年時において66%の致死率をもたらす。このことは、認められていない多さの1年間あたりの死亡数に対応し(n=40,000)、これは、乳がんに起因する死亡数とほぼ同じ年率である。現在の処置は、主に、肺線維芽細胞の増殖を遮断することに注目してきた。汎用チロシンキナーゼ阻害剤であるニンテダニブは、患者にとって重要な予後において、何らかの利益(より遅い疾患の進行)を有すると考えられるが、3回の臨床治験において、死亡率に対する著しい効果は検出されなかった。作用機序が不明なIPF薬であるピルフェニドンは、死亡率の僅かな減少と努力肺活量(FVC)減少の速度の低下を示した。これらの2つの新たに承認された薬物の出現にも関わらず、IPFのための(特により進行した疾患を有する対象のための)真に有効な処置は、今だ存在せず、両方の薬物により著しいGIおよび肝臓の毒性が起こり、ピルフェニドンは、発疹/光線過敏症を誘発する。PAR2は、最近、IPFの病態形成における重要なメディエーターとして同定されてきた(Wygrecka, M., G. Kwapiszewska, E. Jablonska, S. von Gerlach, I. Henneke, D. Zakrzewicz, A. Guenther, K.T. Preissner, and P. Markart. Role of protease-activated receptor-2 in idiopathic plumonary fibrosis. (2011) Am J Respir Crit Care Med 183: 1703-14;Wygrecka, M., B.K. Dahal, D. Kosanovic, F. Petersen, B. Taborski, S. von Gerlach, M. Didiasova, D. Zakrzewicz, K.T. Preissner, R.T. Schermuly, and P. Markart. Mast cells and fibroblasts work in concert to aggravate plumonary fibrosis: role of transmembrane SCF and the PAR-2/PKC-alpha/Raf-1/p44/42 signaling pathway. (2013) Am J Pathol 182: 2094-108;Park, Y.S., C.M. Park, H.J. Lee, J.M. Goo, D.H. Chung, S.M. Lee, J.J. Yim, Y.W. Kim, S.K. Han, and C.G. Yoo. Clinical implication of protease-activated receptor-2 in idiopathic plumonary fibrosis. (2012) Respir Med 107: 256-62)。PAR2は、IPFの進行の間に肺上皮、線維芽細胞、および炎症性細胞 において上方調節され、肺においてPAR2が高発現しているIPF患者は、より悪い全体的な生存率および肺の蜂巣状化を有する。肺における血液凝固促進性のプロテアーゼ(VIIa/Xa/TF因子)活性および肥満細胞トリプターゼなどの局所炎症性プロテアーゼの増大は、異常なPAR2シグナル伝達および線維化応答の活性化を誘発する。線維性肺疾患を有する患者の肺における肥満細胞の数もまた増加し、線維症の重篤度と相関する。PAR2のタンパク質分解による切断は、TGF-βの過剰発現を刺激し、ERK1/2経路を通しての線維芽細胞の病変形成およびαSMAの産生を誘発する。したがって、有効なPAR2の遮断は、肺上皮、線維芽細胞および炎症性細胞における、トリプターゼにより駆動される慢性の正のフィードバック機構、およびPAR2の血液凝固促進性プロテアーゼ活性を妨げ、IPF患者における線維化応答がユニークな疾患改変剤として作用することを抑制する。
【0177】
PAR2の発現の増大はまた、膵臓および実験的なラットの肝臓線維症においても実証され、IgA腎症における間質性線維症の程度と相関することが示された(Michael, E.S., A. Kuliopulos, L. Covic, M.L. Steer, and G. Perides. Pharmacological inhibition of PAR2 with the pepducin P2pal-18S protects mice against acute experimental biliary pancreatitis. (2013) Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 304: G516-26;Grandaliano, G., P. Pontrelli, G. Cerullo, R. Monno, E. Ranieri, M. Ursi, A. Loverre, L. Gesualdo, and F.P. Schena. Protease-activated receptor-2 expression in IgA nephropathy: a potential role in the pathogenesis of interstitial fibrosis. (2003) J Am Soc Nephrol 14: 2072-83;Ikeda, O., H. Egami, T. Ishiko, S. Ishikawa, H. Kamohara, H. Hidaka, S. Mita, and M. Ogawa. Expression of proteinase-activated receptor-2 in human pancreatic cancer: a possible relation to cancer invasion and induction of fibrosis. (2003) Int J Oncol 22: 295-300)。肺疾患においては、PAHにおけるPAR2の高い発現(Kwapiszewska, G., P. Markart, B.K. Dahal, B. Kojonazarov, L.M. Marsh, R.T. Schermuly, C. Taube, A. Meinhardt, H.A. Ghofrani, M. Steinhoff, W. Seeger, K.T. Preissner, A. Olschewski, N. Weissmann, and M. Wygrecka. PAR-2 inhibition reverses experimental pulmonary hypertension. (2012) Circ Res 110: 1179-91)、気管支肺異形成症および小児呼吸促迫症候群(Cederqvist, K., C. Haglund, P. Heikkila, M.D. Hollenberg, R. Karikoski, and S. Andersson. High expression of pulmonary proteinase-activated receptor 2 in acute and chronic lung injury in preterm infants. (2005) Pediatr Res 57: 831-6)が観察されている。PAR2は、線維化肺において、過形成性のATII細胞および線維芽細胞/筋線維芽細胞に局在した。加えて、IPFの肺から単離した線維芽細胞は、ドナー肺から抽出された線維芽細胞が示すよりも、著しく高いPAR2レベルを示した。IPFの病態形成に決定的に関与することが知られているサイトカインであるTGF-βは、ドナー肺線維芽細胞において、PAR2合成を強力に誘導した。静止状態の組織線維芽細胞は、より低いレベルのPAR2を構成的に発現するが、線維芽細胞の活性化を促進する条件は、PAR2発現を著しく増大する。したがって、低PAR2から高PAR2への正の線維芽細胞の形質転換は、創傷モデル、ならびにヒトの正常および肥厚性瘢痕において起こる(Materazzi, S., S. Pellerito, C. Di Serio, M. Paglierani, A. Naldini, C. Ardinghi, F. Carraro, P. Geppetti, G. Cirino, M. Santucci, F. Tarantini, and D. Massi. Analysis of protease-activated receptor-1 and -2 in human scar formation. (2007) J Pathol 212: 440-9)。まとめると、これらのデータは、組織傷害/損傷が、細胞外プロテアーゼによるPAR2の誘導および活性化を誘発して、それが病理学的組織応答に対して生理学的組織修復を駆動して結果的に患者において線維症を引き起こすという機序を支持する。
【0178】
主要な炎症促進性セリンプロテアーゼであるトリプターゼもまた、PAR2を切断してこれを活性化することができる。局所または全身性の高レベルの肥満細胞由来トリプターゼの放出は、急性喘息、全身性肥満細胞症、およびアナフィラキシーを含む生命を脅かす結果を有し得(Caughey, Immunol Rev 2007, 217: 141-54)、特発性肺線維症の原因となり得る。特異的かつ有効なPAR2の薬理学的阻害剤は、したがって、有益な抗炎症効果を提供し、肥満細胞、好中球、単球および/またはマクロファージ、T細胞、ならびに他のPAR2を過剰発現して組織損傷の原因となるリンパ球の有害な活性を減少させる潜在能力を有する。
【0179】
リポペプチドのバージョンを含む新たなペプチドは、PAR2により調節されるシグナル伝達イベント、ならびにその上流または下流の効果をターゲティングするために有用である。例えば、本明細書におけるペプチド、リポペプチドおよび組成物は、増大した、または異常なPAR2の活性またはシグナル伝達に関連する、あるいは増大した、または異常なPAR2プロテアーゼ活性に関連する、疾患または状態を処置するために用いられる。本明細書におけるペプチドおよび組成物はまた、構成的なPAR2活性を処置するために用いることもができる。本明細書において提供されるのは、それを必要としている対象において、PAR2と関連する疾患または状態を処置する方法であって、本明細書において記載されるとおりのペプチドまたはリポペプチドの有効量を、対象に投与することを含む。本明細書において提供されるのは、それを必要としている対象において、PAR2と関連する疾患または状態を処置する方法であって、対象に、本明細書において記載されるとおりのペプチドの当該対象にとっての有効量を服用するように指示することを含む。また本明細書において提供されるのは、それを必要としている対象においてPAR2と関連する疾患または状態を処置することにおける使用のためのペプチドである。
【0180】
ある態様において、本明細書におけるペプチドおよびリポペプチドは、これらに限定されないが、以下を含む多様なPAR2障害のための処置の方法において有用である:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、特発性肺線維症(IPF)、アトピー性皮膚炎(AD、湿疹)、腎線維症、アルコール性脂肪性肝炎、臓器の線維症、腎線維症、骨髄線維症、肺動脈性高血圧症(PAH)、肺線維症、掻痒、膵炎、慢性腎疾患、腎炎、多発性硬化症、がん、白血病、メラノーマ、炎症性の障害および状態、敗血症、炎症関連CNS障害、気管支炎、喘息、糖尿病、糖尿病およびNASHの合併症、肥満、メタボリックシンドローム、線維性疾患、心臓線維症、肺線維症、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、硬変、関節炎、間接線維症、ケロイド、骨髄線維症、全身性線維症、強皮症、乾癬、蕁麻疹、膿痂疹、発疹、および酒さ。ある態様において、障害は、アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、特発性肺線維症(IPF)、アトピー性皮膚炎(AD、湿疹)、腎線維症、アルコール性脂肪性肝炎、臓器の線維症、腎線維症、骨髄線維症、肺動脈性高血圧症(PAH)、肺線維症、掻痒症(掻痒)、膵炎、慢性腎疾患、腎炎、多発性硬化症、がん、白血病、メラノーマ、炎症性の障害および状態、敗血症、炎症関連CNS障害、気管支炎、喘息、糖尿病、糖尿病およびNASHの合併症、肥満、メタボリックシンドローム、線維性疾患、心臓線維症、肺線維症、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、硬変、関節炎、間接線維症、ケロイド、骨髄線維症、全身性線維症、強皮症、乾癬、蕁麻疹、膿痂疹、発疹、または酒さである。ある態様において、PAR2障害は、NASHである。ある態様において、障害は、NASHである。ある態様において、障害は、糖尿病である。ある態様において、PAR2障害は、結腸、皮膚、メラノサイト、乳房、前立腺、中枢神経系、脳、免疫系、膵臓、頭部頸部、食道、腎臓、生殖系、卵巣、子宮内膜、および子宮頸部のがんからなる群より選択されるがんである。ある態様において、障害は、結腸、皮膚、メラノサイト、乳房、前立腺、中枢神経系、脳、免疫系、膵臓、頭部頸部、食道、腎臓、生殖系、卵巣、子宮内膜、および子宮頸部のがんからなる群から選択されるがんである。
【0181】
ある態様において、本明細書におけるペプチドおよびリポペプチドは、炎症を伴う状態のための処置の方法において有用である。ある態様において、本明細書におけるペプチドおよびリポペプチドは、膵炎、喘息、関節リウマチ、変形性関節症、がん、慢性疼痛、内臓疼痛、がん性疼痛、多発性硬化症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、肥満細胞疾患、肥満細胞症、痛風、敗血症、動脈再狭窄、アテローム性動脈硬化症、気道および胃腸管の炎症性疾患、掻痒、魚鱗癬(ichthyoses)、 掻痒症、炎症性皮膚疾患、乾癬およびアルツハイマー病のための処置の方法において有用である。
【0182】
ある態様において、本明細書におけるペプチドおよびリポペプチドは、ペプチドおよびリポペプチドで処置される対象において、ペプチドおよびリポペプチドで処置されないビヒクル対照群と比較して、糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを約0.5%~約1.0%低下させるための処置の方法において有用である。ある態様において、本明細書におけるペプチドおよびリポペプチドは、HbA1cレベルを、約0.4%~約1.0%、約0.5%~約1.0%、約0.6%~約1.0%、約0.8%~約1.0%、または約0.9%~約1.0%低下させるために有用である。ある態様において、本明細書におけるペプチドおよびリポペプチドは、HbA1cレベルを、約0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、または0.9%低下させるために有用である。ある態様において、本明細書におけるペプチドおよびリポペプチドは、ペプチドおよびリポペプチドで処置される対象において、ペプチドおよびリポペプチドで処置されないビヒクル対照群と比較して、インスリンレベルを約40%~約60%低下させるための処置の方法において有用である。ある態様において、本明細書におけるペプチドおよびリポペプチドは、インスリンレベルを、約40%~約60%、約45%~約60%、約45%~約50%、約50%~約60%、約50%~約55%、または約55%~約60%低下させるために有用である。ある態様において、本明細書におけるペプチドおよびリポペプチドは、インスリンレベルを、約40%、約45%、約50%、約55%、または約60%低下させるために有用である。ある態様において、対象は、哺乳動物である。ある態様において、対象は、ヒトである。ある態様において、対象は、非ヒト動物である。
【0183】
医薬組成物
本明細書において提供されるのは、本明細書において記載されるとおりのペプチドと、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む、医薬組成物である。医薬組成物は、治療的使用のための組成物を含む。かかる組成物は、1つ以上のさらなる治療活性剤を含んでもよい。アンタゴニストペプチドは、標準的な薬務に従って、医薬組成物中で、単独で、または薬学的に許容し得るキャリア、賦形剤または希釈剤と組み合わせて、ヒトを含む処置を必要とする哺乳動物に、投与することができる。化合物は、経口または非経口で投与することができ、これは、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸および局所の投与の経路を含む。句「活性成分」または「剤」は、一般に、本明細書において記載されるとおりのペプチドを指す。
【0184】
本明細書において提供される医薬組成物の記載は、主にヒトへの投与のための医薬組成物を対象としているが、当業者は、かかる組成物が、全ての種類の動物への投与のために一般に好適であることを理解するであろう。多様な動物への投与のための医薬組成物の改変は、よく理解されており、一般的な技術を有する獣医薬理学者は、必要な場合には単なる通常の実験により、かかる改変を設計および/または実施することができる。
【0185】
本明細書において記載される医薬組成物は、薬理学の分野において公知であるかまたは今後開発される任意の方法により調製することができる。一般的に、かかる調製方法は、活性成分を賦形剤および/または1つ以上の他の付属成分と関連させて、次いで、必要および/または望ましい場合には、生成物を所望される単回用量または複数用量単位中に成形および/または包装するステップを含む。
【0186】
本発明の医薬組成物は、バルクで、単回単位用量として、複数の単回単位用量として、調製、包装、および/または販売することができる。本明細書において用いられる場合、「単位用量」は、予め決定された量の活性成分を含む、医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投与量、および/またはかかる投与量の便利な分数量、例えばかかる投与量の半分または三分の一と等しい。
【0187】
本発明の医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容し得る賦形剤、および/または任意の付加成分の相対量は、処置される対象のアイデンティティー、サイズおよび/または障害に依存して、およびさらに組成物が投与されるべき経路に依存して、変化するであろう。例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含んでもよい。
【0188】
本明細書において用いられる場合、薬学的に許容し得る賦形剤は、所望される特定の投与形態に適する、任意のおよび全ての溶媒、懸濁媒、希釈剤または他の液体のビヒクル、分散または懸濁補助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体の結合剤、潤滑剤などを含む。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy、第21版、A. R. Gennaro,(Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2006)は、医薬組成物を処方することにおいて用いられる多様な賦形剤、およびそれらの調製のための公知の技術を開示する。任意の望ましくない生物学的効果をもたらすか、または他の方法で医薬組成物の任意の他の成分と有害な様式で相互作用するなど、任意の従来のキャリア媒体が、物質またはその誘導体と適合しない場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内であることを企図される。
【0189】
いくつかの態様において、薬学的に許容し得る賦形剤は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%純粋である。いくつかの態様において、賦形剤は、ヒトにおける使用について、および獣医学的使用について、承認されている。いくつかの態様において、賦形剤は、米国食品医薬品局により承認されている。いくつかの態様において、賦形剤は、医薬グレードである。いくつかの態様において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の基準に合致する。
【0190】
医薬組成物の製造において用いられる薬学的に許容し得る賦形剤は、これらに限定されないが、不活性な希釈剤、分散および/または造粒剤、界面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝化剤、潤滑剤および/または油脂を含む。かかる賦形剤は、本発明の処方物中に任意に含まれてもよい。カカオバターおよび坐剤用ワックスなどの賦形剤、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤は、処方者の判断に従って、組成物中に存在してもよい。
【0191】
活性成分を含む医薬組成物は、経口での使用のために好適な、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性の懸濁液、分散可能な粉末もしくは顆粒、エマルジョン、ハードもしくはソフトカプセル、またはシロップもしくはエリキシルとしての形態におけるものであってもよい。経口での使用を意図される組成物は、医薬組成物の製造のための当該分野において公知の任意の方法に従って調製することができ、かかる組成物は、薬剤としてエレガントかつ美味な調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存剤からなる群より選択される1つ以上の剤を含んでもよい。錠剤は、活性成分を、錠剤の製造のために好適な非毒性の薬学的に許容し得る賦形剤と混合して含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性な希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;造粒および崩壊剤、例えば、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドンまたはアラビアゴム、ならびに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであってよい。錠剤は、コーティングされていなくても、薬物の不快な味をマスクするため、または胃腸管における崩壊および吸収を遅延させて、それにより長期間にわたる持続した作用を提供するための公知の技術によりコーティングされていてもよい。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性の味覚マスク剤、またはエチルセルロース、酢酸酪酸セルロースなどの時間遅延材料を採用してもよい。
【0192】
経口での使用のための処方物は、活性成分が不活性な固体の希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されるハードゼラチンカプセルとして、あるいは活性成分が水溶性のキャリア、例えばポリエチレングリコールまたは油性の媒体、例えばピーナツ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油と混合されるソフトゼラチンカプセルとして提示してもよい。
【0193】
水性懸濁液は、活性材料を、水性懸濁液の製造のために好適な賦形剤と混合して含む。かかる賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアゴムであってよい;分散剤または湿潤化剤は、天然に存在するホスファチド、例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレン-オキセタノール、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノラウラート、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノラウラートであってよい。水性懸濁液はまた、1つ以上の保存剤、例えば、エチル、またはn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、および1つ以上の甘味剤、と例えばスクロース、サッカリンまたはアスパルテームを含んでもよい。
【0194】
油性懸濁液は、活性成分を、植物油、例えばピーナツ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油中で、または流動パラフィンなどの鉱油中で懸濁することにより処方することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えばミツロウ、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含んでもよい。美味な経口調製物を提供するために、上記のもののような甘味剤、および香味剤を添加してもよい。これらの組成物は、ブチルヒドロキシアニソールまたはアルファ-トコフェロールなどの抗酸化剤の添加により保存することができる。
【0195】
水の添加による水性懸濁液の調製のために好適な分散可能な粉末および顆粒は、活性成分を、分散剤または湿潤化剤、懸濁「剤」および1つ以上の保存剤と混合して提供する。好適な分散剤または湿潤化剤および懸濁剤は、既に上述したものにより例示される。さらなる賦形剤、例えば、甘味剤、香味剤および着色剤もまた存在してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存することができる。
【0196】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくはピーナツ油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物であってもよい。好適な乳化剤は、天然に存在するホスファチド、例えば、ダイズレシチン、および脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、例えば、ソルビタンモノラウラート、および前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートであってよい。エマルジョンはまた、甘味剤、香味剤、保存剤および抗酸化剤を含んでもよい。
【0197】
シロップおよびエリキシルは、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースを用いて処方することができる。かかる処方物はまた、粘滑剤、保存剤、香味剤および着色剤および抗酸化剤を含んでもよい。
【0198】
医薬組成物は、無菌の注射可能水溶液の形態であってもよい。採用してもよい許容し得るビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液がある。
【0199】
無菌の注射可能調製物はまた、活性成分が油相中に溶解している無菌の注射可能水中油型マイクロエマルジョンであってもよい。例えば、活性成分を、初めにダイズ油とレシチンとの混合物中に溶解してもよい。油性溶液を、次いで水とグリセロールとの混合物中に導入して、マイクロエマルジョンを形成するように処理してもよい。
【0200】
注射可能溶液またはマイクロエマルジョンは、局所ボーラス注射により患者の血流中に導入してもよい。あるいは、溶液またはマイクロエマルジョンを、本化合物の一定の循環濃度を維持するような様式において投与することが有利である場合もある。かかる一定の濃度を維持するために、持続的静脈内送達デバイスを利用してもよい。かかるデバイスの一例は、Deltec CADD-PLUS(商標)モデル5400 静脈内ポンプである。
【0201】
医薬組成物は、筋肉内および皮下投与のための無菌の注射可能な水性または油脂性(oleagenous)懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、公知の技術に従って、上述されるそれらの好適な分散剤または湿潤化剤および懸濁剤を用いて処方することができる。無菌の注射可能調製物はまた、非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能溶液または懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液としてのものであってもよい。加えて、無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒として従来採用されている。この目的のために、合成のモノ-またはジグリセリドを含む任意の無刺激性(bland)の不揮発性油を採用してもよい。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能物の調製において用途を見出される。
【0202】
本発明のための化合物は、鼻内形態において、好適な鼻内用ビヒクルおよび送達デバイスの局所使用を介して、または経皮経路を介して、当業者に周知の経皮貼付剤の形態を用いて投与することができる。経皮送達システムの形態において投与されるために、投与量の投与は、無論、投与レジメン全体にわたり、間欠的であるよりは寧ろ持続的である。本発明の化合物はまた、カカオバター、グリセリンゼラチン、水添植物油、多様な分子量のポリエチレングリコールの混合物、およびポリエチレングリコールの脂肪酸エステルなどの基剤を採用した坐剤として送達されてもよい。本発明の化合物はまた、小さい単層ベジクル、大きな単層ベジクルおよび複層ベジクルなどのリポソーム送達系の形態において投与することができる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの多様なリン脂質から形成することができる、本発明の化合物はまた、化合物分子がカップリングする個々のキャリアとしてのモノクローナル抗体の使用により送達されてもよい。本発明の化合物はまた、ターゲティング可能な薬物キャリアとしての可溶性ポリマーとカップリングしていてもよい。かかるポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシ-エチルアスパルトアミド-フェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド-ポリリジンを含み得る。さらに、本発明の化合物は、薬物の制御放出を達成することにおいて有用な生分解性ポリマーのクラス、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸とのコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリラート、および架橋された、または両親媒性のハイドロゲルのブロックコポリマーにカップリングしていてもよい。
本発明による組成物がヒト対象に投与される場合、処方する医師は、通常、個々の患者の年齢、体重および応答、ならびに患者の症状の重篤度に従って変化する投与量により、日毎の投与量を決定する。一態様において、好適な「剤」の量が、血栓症の処置を受けている哺乳動物に投与される。投与は、1日あたり体重1kgあたり約0.1mg~約60mg、または1日あたり体重1kgあたり0.5mg~約40mgの「剤」の量において行われる。本発明の組成物を含む別の治療的投与量は、約0.01mg~約1000mgの剤を含む。別の態様において、投与量は、約1mg~約5000mgの剤を含む。
【0203】
キット
別の側面において、キットは、組成物(例えば提供されるペプチドを含むもの、またはそれを生成するための組成物)の1つ以上を含む。「キット」は、本明細書において用いられる場合、典型的には、本発明の組成物の1つ以上、および/または本発明に関連する他の組成物、例えば本明細書において記載されるとおりのものを含む、パッケージまたは集合を定義する。キットは、単離または精製されたペプチド、リポペプチド、ポリヌクレオチド、定義するペプチドをコードするベクター、および/または提供されるペプチドを発現するかまたはこれを発現することができる細胞、およびこれらの組み合わせを含んでもよい。キットの組成物の各々は、液体の形態において(例えば溶液中で)、固体の形態(例えば乾燥粉末)において提供されても、または細胞の凍結懸濁液などの懸濁液であってもよい。ある場合において、組成物のいくつかは、例えば、好適な溶媒または他の種(これは、キットと共に提供されても提供されなくともよい)の添加により構成可能(constitutable)であるかまたは他に処理可能(例えば活性な形態に)であってもよい。本発明に関連する他の組成物または成分の例は、これらに限定されないが、例えば、特定の用途のために、例えば試料および/または対象に対して、組成物成分を使用する、投与する、改変する、組み立てる、貯蔵する、包装する、調製する、混合する、希釈する、および/または保存するための、溶媒、界面活性剤、希釈剤、塩、緩衝化剤、キレート剤、充填剤、抗酸化剤、結合剤、嵩高剤、保存剤、乾燥剤、抗菌剤、針、シリンジ、包装材料、試験管、ボトル、フラスコ、ビーカー、ディッシュ、フリット、フィルター、リング、クランプ、ラップ、パッチ、容器などを含む。
キットは、いくつかの場合において、本発明の組成物に関連して提供される、任意の形態における指示を、当業者がその指示が本発明の組成物に関連するべきことを理解するであろうような様式において、含んでもよい。例えば、指示は、組成物および/またはキットに関連する他の組成物の使用、改変、活性化、混合、希釈、保存、投与、組み立て、貯蔵、包装および/または保存のための指示を含んでもよい。いくつかの場合において、指示はまた、例えば材料および/または対象に対する、例えば特定の用途のための、組成物の送達および/または投与のための指示を含んでもよい。
【0204】

本明細書において記載される発明が、より完全に理解され得るために、以下の例を記載する。これらの例は、説明のみを目的とするものであり、本発明を任意の様式に限定するものとして解釈されるべきではないことが、理解されるべきである。
【0205】
表1において見出されるペプチドは、アシル鎖脂肪酸を用いて調製した。特に、N-パルミトイル化ペプチドを、C末端アミドを用いる標準的なfmoc固相合成法により、先に記載されるように合成した(Covic, et al. (2002) Pepducin-based intervention of thrombin-receptor signaling and systemic platelet activation. Nat. Med. 8:1161-1165を参照)。
【0206】
パルミチン酸を、50%N-メチルピロリドン/50%塩化メチレン中に溶解し、ペプチドの脱保護したN末端アミドに一晩カップリングさせた。樹脂から切断した後、パルミトイル化ペプチドを、>95%の純度まで、C18、C5またはC4逆相クロマトグラフィーにより精製した。
【0207】
表2は、生じた表1のパルミトイル化ペプチド(配列番号1~11、13~41および70)についてのアンタゴニスト活性を提供する。表2はまた、生じた表1のミリストイル化ペプチド(配列番号12)についてのアンタゴニスト活性を提供する。ペプチドのアンタゴニスト活性は、内因的にPAR2を発現するSW620ヒト結腸腺癌細胞によるカルシウム流アッセイを用いて測定した。3μMまたは10μMのパルミトイル化ペプチドによる1分間の前処置の後での、100μMのSLIGRL(配列番号73)のカルシウムシグナル。DMSOビヒクルの最終濃度は、0.2%であった。8μMのSLIGRL(配列番号73;既知のPAR2アゴニスト)に対する3μMおよび10μMのペプチドのアンタゴニスト活性は、最大カルシウム流により測定した。実験は、少なくとも各2~3回繰り返し、類似の結果を得た。
【表2】
【0208】
均等物および範囲
請求の範囲において、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、逆が示されない限り、または文脈から別段に明らかでない限り、1つ、または1つより多くを意味し得る。グループの1つ以上のメンバーの間に「or」を含む請求項または記載は、逆が示されない限り、または文脈から別段に明らかでない限り、グループメンバーのうちの1つ、1つより多く、または全てが、所与の生成物またはプロセス中に存在するか、それにおいて使用されるか、または他に関連する場合に、満たされたものとみなされる。本発明は、グループの正確に1つのメンバーが、生成物またはプロセス中に存在するか、それにおいて採用されるか、またはそれに他の方法で関連する態様を含む。本発明は、グループのメンバーのうちの1つより多く、または全てが、生成物またはプロセス中に存在するか、それにおいて採用されるか、またはそれに他の方法で関連する態様を含む。
【0209】
さらに、本発明は、列記される請求項のうちの1つ以上からの、1つ以上の限定、要素、条項、および説明用語が、別の請求項中に導入される、全てのバリエーション、組み合わせおよび並べ替えを包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基礎請求項に従属する任意の他の請求項中に見出される1つ以上の限定を含むように改変することができる。要素が、例えばマーカッシュ群形式において、リストとして提示される場合、要素の各々のサブグループもまた開示され、任意の要素をグループから取り除くことができる。一般的に、本発明、または本発明の側面が、特定の要素および/または特徴を含むものとして言及される場合、本発明のある態様または本発明の側面は、かかる要素および/または特徴からなるか、これらから本質的になることが、理解されるべきである。簡潔化のために、これらの態様は、本明細書において文言としては特には記載されていない。また、用語「含む(comprising)」および「含む(containing)」は、オープンであることを意図され、さらなる要素またはステップの包含を可能にすることに留意する。範囲が示される場合、エンドポイントが含められる。さらに、別段に示されない限り、または文脈および当業者の理解から別段に明らかでない限り、範囲として表される値は、本発明の異なる態様において記述される範囲内の任意の特定の値または部分範囲を、文脈が明らかに別段に示さない限り、当該範囲の下限の単位の10分の1まで想定し得る。
【0210】
本願は、多様な発行された特許、公開された特許出願、雑誌の記事、および他の刊行物を参照し、それらの全ては、本明細書において参照することにより援用される。援用された参考文献のいずれかと本明細書との間で矛盾が存在する場合、本明細書が支配すべきである。加えて、先行技術の範囲内に該当する本発明の任意のある態様は、請求項の1つ以上から明示的に除外され得る。かかる態様は、当業者に公知であるものと考えられるので、それらは、除外が本明細書において明示的に記載されていない場合であっても、除外され得る。本発明の任意のある態様は、先行技術の存在に関係するか否かに関わらず、任意の請求項から任意の理由のために除外することができる。
【0211】
当業者は、本明細書において記載される特定の態様に対する多くの均等物を認識するか、または慣用的な実験のみを用いてこれを確認することができる。本明細書において記載される本態様の範囲は、上の説明に限定することは意図されないが、寧ろ、添付の請求の範囲において記載される。当業者は、以下の請求の範囲において定義されるような本発明の精神または範囲から逸脱することなく、この記載に対する多様な変更および改変が行い得ることを認識するであろう。
【0212】
明細書において同定される任意の特許、特許出願、刊行物または他の開示材料は、本明細書においてその全体において参照することにより援用される。本明細書において参照することにより援用されると言われる任意の材料、またはその部分であるが、本明細書において記載される既存の定義、声明または他の開示材料と矛盾するものは、援用された材料と本開示の材料との間に矛盾が生じない程度までのみ、援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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