(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】検査システムの点検方法、検査システム、およびコンピュータプログラム。
(51)【国際特許分類】
G01N 21/93 20060101AFI20250120BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20250120BHJP
【FI】
G01N21/93
G06T7/00 300E
(21)【出願番号】P 2020036996
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2022-08-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 英次郎
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-257905(JP,A)
【文献】特開2013-231607(JP,A)
【文献】特開2005-098777(JP,A)
【文献】特開2018-205123(JP,A)
【文献】特開2007-033284(JP,A)
【文献】特開2002-090306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01M 11/00
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01N 1/00 - G01N 1/44
G01N 21/01
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 3/60
G06T 5/00 - G06T 5/50
G06T 7/00 - G06T 7/90
G06T 9/00 - G06T 9/40
G06V 10/00 - G06V 10/98
G06V 20/00 - G06V 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
H04N 5/222- H04N 5/257
H04N 7/18
H04N 17/00 - H04N 17/06
H04N 23/00
H04N 23/40 - H04N 23/76
H04N 23/90 - H04N 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を撮像し、撮像された画像と前記対象物のサンプル画像とに基づいて前記対象物の良否を判定する検査システムを点検するため
に前記検査システムのメンテナンス時に実行される点検方法であって
、
良品および不良品である、前記対象物の前記サンプル画像を前記対象物が配置される位置に配置された表示装置にそれぞれ表示すること、
表示された良品の前記サンプル画像と不良品の前記サンプル画像とをカメラで撮像すること、
前記カメラに良品の前記サンプル画像を撮像させた画像と良品の前記サンプル画像とを比較すること、および、前記カメラに不良品の前記サンプル画像を撮像させた画像と不良品の前記サンプル画像とを比較することで前記サンプル画像が示す前記対象物の良否をそれぞれ判定すること、
前記対象物の良否をそれぞれ判定した結果に基づいて、前記検査システムが正常か否かを判定すること、
を備え、
前記対象物は、ディスク装置用サスペンションである、
点検方法。
【請求項2】
前記サンプル画像は、前記対象物の実際の大きさで表示される、
請求項1に記載の点検方法。
【請求項3】
前記サンプル画像が示す前記対象物の良否を判定した後、当該判定の結果を出力すること、をさらに含む、
請求項1に記載の点検方法。
【請求項4】
対象物を撮像し、撮像された画像と前記対象物のサンプル画像とに基づいて前記対象物の良否を判定する検査システムであって、
画像を表示する表示装置と、
前記対象物を撮像するカメラを含む撮像装置と、
前記表示装置と、前記撮像装置とを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記表示装置に良品および不良品である、前記対象物の前記サンプル画像を前記対象物が配置される位置に配置された前記表示装置にそれぞれ表示させ、前記表示装置に表示された良品の前記サンプル画像と不良品の前記サンプル画像とを前記カメラに撮像させ、前記カメラに良品の前記サンプル画像を撮像させた画像と良品の前記サンプル画像とを比較すること、および、前記カメラに不良品の前記サンプル画像を撮像させた画像と不良品の前記サンプル画像とを比較することで前記サンプル画像が示す前記対象物の良否をそれぞれ判定し、前記対象物の良否をそれぞれ判定した結果に基づいて、前記検査システムが正常か否かを判定
し、
前記制御装置によって前記検査システムが正常か否かを判定することは、前記検査システムのメンテナンス時に実行され、
前記対象物は、ディスク装置用サスペンションである、
検査システム。
【請求項5】
前記表示装置は、前記サンプル画像を前記対象物の実際の大きさで表示する、
請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
前記サンプル画像が示す前記対象物の良否の判定の結果を出力する出力装置をさらに備える、
請求項4に記載の検査システム。
【請求項7】
対象物を撮像し、撮像された画像と前記対象物のサンプル画像とに基づいて前記対象物の良否を判定する検査システムを点検するためのコンピュータプログラムであって
、
前記検査システムの点検は、前記検査システムのメンテナンス時に実行され、
前記対象物は、ディスク装置用サスペンションであり、
画像を表示する表示装置と、前記対象物を撮像するカメラを含む撮像装置の各々に接続されたコンピュータを、
前記表示装置に良品および不良品である、前記対象物の前記サンプル画像を前記対象物が配置される位置に配置された前記表示装置にそれぞれ表示させる表示制御手段、
前記表示装置に表示された良品の前記サンプル画像と不良品の前記サンプル画像とを前記カメラに撮像させる撮像制御手段、および、
前記カメラに良品の前記サンプル画像を撮像させた画像と良品の前記サンプル画像とを比較すること、および、前記カメラに不良品の前記サンプル画像を撮像させた画像と不良品の前記サンプル画像とを比較することで前記サンプル画像が示す前記対象物の良否をそれぞれ判定し、前記対象物の良否をそれぞれ判定した結果に基づいて、前記検査システムが正常か否かを判定する判定制御手段、
として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記表示装置に前記サンプル画像を前記対象物の実際の大きさで表示させる、
請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを、
前記サンプル画像が示す前記対象物の良否の判定の結果を出力する出力制御手段、
としてさらに機能させるための、請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査に使用される検査システムの点検方法、検査システム、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の検査工程では、カメラ等の撮像手段を使用して製品を撮像し、撮像された画像データに基づいて製品の良否判定のための画像検査が行われている。画像検査においては、例えば、予め準備しておいた良品の画像データと検査対象の製品を撮像し得られた画像データとを比較して良否判定が行われる。この際、検査対象の製品を撮像し得られた画像データを良品の画像データと比較するだけでなく、不良品の画像データとも比較する場合もある。
【0003】
画像検査による良否判定では、外観形状のみならず、色彩や濃淡を基準とした判定も行われる。これらの判定には画像処理のための各種アルゴリズムが使用される。また、画像検査のための検査システムには、カメラ等の画像センサー等が使用されるため、必要に応じて寸法や色彩等の較正(キャリブレーション)が行われる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像検査のための検査システムが正常かどうかの点検方法として、例えば良品や不良品のマスターサンプルを使用して検査システムを点検する方法がある。この場合、マスターサンプルを撮像することで画像検査が正常かどうかが点検される。しかし、酸化具合の良否判定に使用するマスターサンプルの場合、当該マスターサンプルの保管状況が良くても酸化の進行に伴い変色が発生する可能性があり、マスターサンプルとして長期の使用には耐えられない。
【0006】
また色マスターや寸法マスターといった市販の汎用マスターを使用する事で、検査システムのカメラのキャリブレーションを行うことは可能である。しかし、市販の汎用マスターを使用するキャリブレーションは検査システムの対象物ではなく代替品を用いた点検であり、実際の検査システムによる製品の良否判定が正常かどうかを点検することはできない。
【0007】
その他の点検方法としては、良品や不良品のマスターサンプルの代わりに、良品や不良品の画像を使用して検査システムの良否判定が正常かどうかを点検する方法もある。しかし、良品や不良品の画像を使用する場合には、カメラでの撮像を含めた検査システムが正常かどうかを点検することはできない。そのため、良品や不良品のマスターサンプルを使用せずに、カメラを含めた検査システムが正常かどうかを確認するための点検方法の確立が求められていた。
【0008】
このように、画像検査に使用される検査システムの従来の点検方法には種々の改善の余地がある。そこで、本発明は、画像検査に使用される検査システムを精度良く点検することが可能な点検方法、検査システム、およびコンピュータプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る点検方法は、対象物を撮像し、撮像された画像に基づいて前記対象物の良否を判定する検査システムを点検するための方法であって、前記対象物のサンプル画像を表示すること、表示された前記サンプル画像をカメラで撮像すること、前記カメラで撮像された画像に基づいて前記サンプル画像が示す前記対象物の良否を判定すること、を備える。
【0010】
前記サンプル画像は、前記対象物の実際の大きさで表示されてもよい。前記サンプル画像が示す前記対象物の良否を判定することは、前記カメラで撮像された画像と前記サンプル画像とを比較すること、を含んでもよい。点検方法は、前記サンプル画像が示す前記対象物の良否を判定した後、当該判定の結果を出力することをさらに含んでもよい。
【0011】
一実施形態に係る検査システムは、対象物を撮像し、撮像された画像に基づいて前記対象物の良否を判定するシステムであって、画像を表示する表示装置と、前記対象物を撮像するカメラを含む撮像装置と、前記表示装置と、前記撮像装置とを制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記表示装置に前記対象物のサンプル画像を表示させ、前記表示装置に表示された前記サンプル画像を前記カメラに撮像させ、前記カメラで撮像された画像に基づいて前記サンプル画像が示す前記対象物の良否を判定する。
【0012】
前記表示装置は、前記サンプル画像を前記対象物の実際の大きさで表示してもよい。前記制御装置は、前記カメラで撮像された画像と、前記サンプル画像とを比較することで前記サンプル画像が示す前記対象物の良否を判定してもよい。前記検査システムは、前記サンプル画像が示す前記対象物の良否の判定の結果を出力する出力装置をさらに備えてもよい。
【0013】
一実施形態に係るコンピュータプログラムは、画像を表示する表示装置と、対象物を撮像するカメラを含む撮像装置の各々に接続されたコンピュータを、前記表示装置に前記対象物のサンプル画像を表示させる表示制御手段、前記表示装置に表示された前記サンプル画像を前記カメラに撮像させる撮像制御手段、および、前記カメラで撮像された画像に基づいて前記サンプル画像が示す前記対象物の良否を判定する判定制御手段、として機能させる。
【0014】
前記表示制御手段は、前記表示装置に前記サンプル画像を前記対象物の実際の大きさで表示させてもよい。前記判定制御手段は、前記カメラで撮像された画像と、前記サンプル画像とを比較することで前記サンプル画像が示す前記対象物の良否を判定してもよい。前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータを、前記サンプル画像が示す前記対象物の良否の判定の結果を出力する出力制御手段としてさらに機能させてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像検査に使用される検査システムを精度良く点検することが可能な点検方法、検査システム、およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、ディスク装置の一例を示す概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、ディスク装置の一部を示す概略的な断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る検査システムの概略的な構成を示す図である。
【
図4】
図4は、カメラで撮像された対象物の画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る検査システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る検査システムの概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
本実施形態に係る検査システムとして、ディスク装置用サスペンションの先端部の検査に適用し得る検査システムを例示する。当該検査システムは、サスペンションの先端部の検査のみならず、他の製品の画像検査のための検査システムにも適用することが可能である。各図においては、検査システムを構成する各部材の相対的な大きさや位置を模式的に示すことがある。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、ディスク装置1の一例を示す概略的な斜視図である。
図1に示すように、ディスク装置(HDD)1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転する複数のディスク4と、ピボット軸5を中心に旋回可能なキャリッジ6と、キャリッジ6を駆動するためのポジショニング用モータ(ボイスコイルモータ)7とを備えている。ケース2は、図示しない蓋によって密閉される。
【0019】
図2は、ディスク装置1の一部を示す概略的な断面図である。キャリッジ6には、アーム8が設けられている。アーム8の先端部にサスペンション10が取付けられている。サスペンション10の先端部11に、磁気ヘッドを構成するスライダ12が搭載されている。ディスク4が高速で回転すると、ディスク4とスライダ12との間に空気が流入することによって、エアベアリングが形成される。
【0020】
ボイスコイルモータ7によってキャリッジ6が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、スライダ12がディスク4の所望トラックまで移動する。また、磁気記録の高密度化に伴い、圧電素子を使用したアクチュエータがサスペンション10に搭載されることがある。アクチュエータは、例えば、フレキシャの先端に形成されたタング部に搭載される。
【0021】
図3は、第1実施形態に係る検査システム100の概略的な構成を示す図である。検査システム100は、例えば、サスペンション10の先端部11の画像検査に使用される。本実施形態に係る検査システム100は、サスペンション10の先端部11だけでなく、他の製品の画像検査にも使用できる。
【0022】
検査システム100は、表示装置20と、撮像装置30と、制御装置40と、出力装置50と、を備えている。表示装置20、撮像装置30、および出力装置50は、制御装置40とそれぞれ通信可能に接続されている。制御装置40は、表示装置20、撮像装置30、および出力装置50をそれぞれ制御可能に構成されている。
【0023】
表示装置20は、画像を表示するためのモニター21を備えている。モニター21には、対象物のサンプル画像が表示される。サンプル画像とは、例えば、予め準備しておいた対象物の良品や不良品の画像である。良品のサンプル画像は、例えば、後述するカメラ31で良品の対象物を撮像した画像である。また、不良品のサンプル画像は、例えば、後述するカメラ31で不良品の対象物を撮像した画像である。良品や不良品のサンプル画像は、後述するカメラ31とは別のカメラで撮像した画像であってもよい。モニター21には、1枚のサンプル画像が表示されてもよいし、2枚以上のサンプル画像が同時に表示されてもよい。また、サンプル画像は、対象物の実際の大きさでモニター21に表示される。対象物の画像検査を行う場合には、モニター21が設置される位置に対象物が配置される。
【0024】
撮像装置30は、カメラ31と、光源32と、を備えている。カメラ31が対象物を撮像することで、画像検査用の画像が取得される。また、検査システム100の点検時においては、カメラ31はモニター21に表示されたサンプル画像を撮像する。カメラ31は、対象物を撮像可能な状態で設置される。光源32は、対象物に対してカメラ31での撮像用に照明を照射可能な状態で設置される。カメラ31は、例えば、CMOSカメラやCCDカメラなどである。光源32は、例えばLED照明などである。
【0025】
制御装置40は、表示制御モジュール41と、撮像制御モジュール42と、判定制御モジュール43と、出力制御モジュール44と、記憶部45と、を含んでいる。表示制御モジュール41は、表示装置20を制御し、記憶部45に記憶されている対象物のサンプル画像をモニター21に表示させる。
【0026】
撮像制御モジュール42は、対象物の画像検査においては、撮像装置30を制御し、対象物をカメラ31に撮像させる。撮像制御モジュール42は、検査システム100の点検時においては、撮像装置30を制御し、モニター21に表示されるサンプル画像をカメラ31に撮像させる。
【0027】
判定制御モジュール43は、カメラ31で撮像された画像に基づいて当該画像が示す対象物の良否を判定する。判定制御モジュール43は、前記良否判定結果に基づいて検査システム100が正常かどうかをさらに判定してもよい。出力制御モジュール44は、出力装置50を制御し、判定制御モジュール43による判定結果を出力装置50より出力する。
【0028】
記憶部45には、各種データが記憶される。記憶部45は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリ等である。記憶されるデータは、カメラ31により撮像された画像、モニター21に表示される対象物の良品および不良品のサンプル画像、各制御モジュールにおける制御を実現するための各種プログラム、検査システム100や対象物、カメラ31の仕様など各種処理に必要な設定条件である各種データである。
【0029】
出力装置50は、判定制御モジュール43による判定結果を出力する。出力装置50としては、例えば、判定結果を表示するモニター、判定結果を音声出力するスピーカー、判定結果に応じて発光する発光器、あるいはネットワークを介して判定結果を他の装置に送信する通信ユニットなどを用いることができる。出力装置50は、これらモニター、スピーカー、発光器および通信ユニットのうちの2つ以上を有してもよい。
【0030】
検査システム100は、
図3に示した構成要素以外の他の要素を含むものとして定義されてもよい。また検査システム100は、独立したシステムとして構成されてもよいし、他のシステムの一部として組み込まれてもよい。
【0031】
図4は、カメラ31で撮像された対象物の画像の一例を示す図である。図示した例においては、サスペンション10の先端部11が表示されている。検査システム100の対象物は、サスペンション10の先端部11には限られない。
【0032】
カメラ31で撮像された画像が示す対象物には一対のアクチュエータが搭載されており、これらアクチュエータがそれぞれ接着剤で固定されている。
図4(a)は、良品である対象物の画像である。
図4(b)は、不良品である対象物の画像である。
図4(a)の画像が示す先端部11は、一対のアクチュエータ13R,13Lを有している。一対のアクチュエータ13R,13Lは、それぞれ両端部が接着剤ADを介して先端部11に接続されている。アクチュエータ13は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電体からなる圧電素子と、圧電素子の表面に設けられた電極と、を備えている。接着剤ADは、例えば銀ペースト等の導電性ペーストである。
【0033】
図4(b)の画像が示す先端部11は、一対のアクチュエータ14R,14Lを有している。一対のアクチュエータ14R,14Lは、
図4(a)と同様に、それぞれ両端部が接着剤ADを介して先端部11に接続されている。しかし、一対のアクチュエータ14のうちアクチュエータ14Lは外面にマークMを有している。マークMは、当該アクチュエータが不合格品である旨を表示するためのものである。つまり、
図4(b)の画像が示す先端部11には、合格品であるアクチュエータ14Rと、不合格品であるアクチュエータ14Lとが搭載されている。
【0034】
なお、不良品である対象物は、
図4(b)に例示したようにマークMを有するものに限られない。その他にも、先端部11に含まれる各要素の外形、色彩、および濃淡などが予め定められた基準を満たさない種々の対象物が不良品となり得る。
【0035】
検査システム100で行われる対象物の画像検査は、例えばカメラ31で撮像された対象物の画像と、対象物の良品または不良品のサンプル画像とを比較することで行われる。対象物の良品または不良品のサンプル画像は、予め準備しておき、制御装置40の記憶部45に記憶させておいてもよい。検査システム100は、例えば外形、色彩、および濃淡等の各項目についてカメラ31で撮像された画像と対象物の良品サンプル画像とを比較し、検査基準から外れた個所が検出された場合には対象物が不良品であると判断する。
【0036】
図示した例におけるサスペンション10の先端部11に関し、検査システム100は、例えばアクチュエータやその周囲の要素の外形を比較することで、アクチュエータが先端部11に正しく搭載されているかを検出することができる。また、検査システム100は、例えばアクチュエータの濃淡や色彩を比較することで、アクチュエータがクラック、欠け(チッピング)、あるいは上述のマークMを有しているかを検出することができる。画像検査において検出される項目は上記に限られない。
【0037】
また、先端部11のアクチュエータの検査だけでなく、接着剤ADが正常に塗布されているかを検査することも可能である。検査システム100は、接着剤ADの有無、塗布される位置、および範囲等をカメラ31で撮像された画像から濃淡等を基準に検出し、これらをサンプル画像と比較することで、接着剤ADが正常に塗布されているかを検査することができる。
【0038】
図5は、第1実施形態に係る検査システム100の動作の一例を示すフローチャートである。当該フローチャートに示す動作は、検査システム100の動作のうち、検査システム100を点検するための点検方法に適用される。検査システム100を点検するための点検方法は、検査システム100における対象物への画像検査前に実行されることもあれば、検査システム100のメンテナンス時に実行されることもある。当該点検方法による検査システム100の点検は、日常的に実行されるものである。
【0039】
当該フローチャートが示す動作は、制御装置40によって実行される。制御装置40は、プロセッサやメモリ等で構成されたコンピュータを含む。例えば、制御装置40が備えるプロセッサが記憶部45に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって、上述の表示制御モジュール41、撮像制御モジュール42、判定制御モジュール43、および出力制御モジュール44が実現される。コンピュータプログラムの実行は、複数のプロセッサを用いて実現されてもよい。各モジュール41乃至44の少なくとも一つは、制御装置40とは独立した個別の装置であってもよい。
【0040】
まず、検査システム100を点検するための動作を開始する前に、作業者は
図3に示したように対象物が配置される位置に表示装置20を設置する。また、制御装置40によって自動で表示装置20を配置してもよい。この際、検査システム100の表示装置20以外の他の装置等を変更する必要はない。
【0041】
そして、検査システム100を点検するための動作が開始すると、表示制御モジュール41は、記憶部45に記憶されている良品のサンプル画像を表示装置20のモニター21に表示する(ステップS101)。モニター21に表示されるサンプル画像は、対象物の実際の大きさで表示される。
【0042】
撮像制御モジュール42は、モニター21にサンプル画像が表示されると、撮像装置30のカメラ31にモニター21を撮像させる(ステップS102)。撮像された画像は、記憶部45に記憶される。記憶部45に記憶された画像には、必要に応じてノイズ除去や画像の明るさの補正等の画像処理が施されてもよい。判定制御モジュール43は、撮像された画像が示す対象物の良否判定を行う(ステップS103)。
【0043】
良否判定は、上述した検査システム100の画像検査と同様に行われる。つまり、ステップS103の良否判定は、カメラ31で撮像された画像と対象物の良品のサンプル画像とを比較することで行われる。この良品のサンプル画像と、モニター21に表示されるサンプル画像とは、同じ画像である。
【0044】
例えば外形、色彩、および濃淡等の項目についてカメラ31で撮像された画像と対象物の良品サンプル画像とを比較し、検査基準から外れた個所が検出された場合には、対象物が不良品と判断される。カメラ31等を含めた検査システム100が正常であれば、良品のサンプル画像を撮像した画像に対して、検査システム100は、当該画像が示す対象物は良品であると判定する。
【0045】
良品のサンプル画像を使用した判定が行われた後、不良品のサンプル画像を使用した判定が行われる。表示制御モジュール41は、記憶部45に記憶されている不良品のサンプル画像を表示装置20のモニター21に表示する(ステップS104)。モニター21に表示されるサンプル画像は、対象物の実際の大きさで表示される。
【0046】
撮像制御モジュール42は、モニター21にサンプル画像が表示されると、撮像装置30のカメラ31にモニター21を撮像させる(ステップS105)。撮像された画像は、記憶部45に記憶される。記憶部45に記憶された画像には、必要に応じてノイズ除去や画像の明るさの補正等の画像処理が施されてもよい。判定制御モジュール43は、撮像された画像が示す対象物の良否判定を行う(ステップS106)。
【0047】
良否判定は、ステップS103と同様、カメラ31で撮像された画像と対象物の不良品のサンプル画像とを比較することで行われる。この不良品のサンプル画像と、モニター21に表示されるサンプル画像とは、同じ画像である。ステップS103とは、比較する画像が不良品のサンプル画像である点が異なる。カメラ31等を含めた検査システム100が正常であれば、不良品のサンプル画像を撮像した画像に対して、検査システム100は、当該画像が示す対象物は不良品であると判定する。
【0048】
ステップS106による判定の後、判定制御モジュール43は検査システム100が正常かどうかを判定する(ステップS107)。判定制御モジュール43は、ステップS103において検査システム100が良品のサンプル画像を良品と判定を行い、ステップS106において不良品のサンプル画像を不良品と判定を行った場合、検査システム100は正常であると判定する。しかし、検査システム100が良品のサンプル画像を不良品とする判定や、不良品のサンプル画像を良品とする判定の少なくともどちらか一方の良否判定が行われた場合には、判定制御モジュール43は、検査システム100が正常ではないと判定する。
【0049】
そして、出力制御モジュール44は、判定結果を出力装置50より出力する(ステップS108)。判定結果としてステップS107の判定結果のみならず、ステップS103やステップS106の判定結果が出力されてもよい。
【0050】
図5に示したフローチャートでは、良品と不良品のサンプル画像を順番に撮像し良否判定を行っているが、どちらか一方のサンプル画像のみを使用して検査システム100の点検を行ってもよい。また、不良品のサンプル画像を使用した良否判定を行った後に、良品のサンプル画像を使用した良否判定を行ってもよい。
【0051】
さらに制御装置40は、検査システム100が正常でないとの判定結果から異常のある機器等を特定してもよい。特定された異常のある機器等についての情報を出力装置50より出力してもよい。作業者が当該出力装置50より出力された情報に基づいて、必要な処置が可能となる。
【0052】
また、制御装置40は、検査システム100が正常でないとの判定結果から異常のある機器等に対してキャリブレーション等の必要な処置を行ってもよい。例えば、カメラ31のモニター21に対する焦点距離がずれている場合、モニター21とカメラ31との位置調整が行われる。そして、キャリブレーション等の必要な処置が行われた後、再度ステップS101からの動作を行い、検査システム100が正常かどうかの判定を行ってもよい。
【0053】
以上説明したように、モニター21に表示されたサンプル画像を使用して画像検査を行うことで、検査システム100が正常かどうかを判定することができる。特に本実施形態は良品や不良品のマスターサンプルを使用しないため、マスターサンプルの経時変化に対する懸念がなくなる。そして、実際の検査システム100で行われる画像検査と同様の手順で点検を行うことで、カメラ31を含めた検査システム100の点検が可能となる。
【0054】
良品や不良品のマスターサンプルを使用せずにモニター21に表示された画像がカメラ31で撮像されるので、良品や不良品のマスターサンプルの準備やマスターサンプルの保管が不要となる。また、検査システム100が複数ある場合であっても検査システム100ごとにマスターサンプルを準備する必要がないため、同時に複数の検査システム100の点検をすることが可能である。同時に点検することが可能であれば、日常点検における検査システム100の点検の工数を削減することが可能となる。
【0055】
対象物が配置される位置にモニター21が設置され、モニター21に表示されるサンプル画像は対象物の実際の大きさであるので、検査システム100を構成する機器や配置等を変更する必要がなく検査システム100を点検することが可能である。
【0056】
図4に例示した接着剤ADのような導電性ペーストを含むマスターサンプルは、当該ペーストの酸化により長期の使用には耐えられない場合がある。このように経時的な変化が生じる部分を含む対象物が検査対象となる場合において、マスターサンプルを要しない本実施形態の点検方法は特に有効である。
【0057】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
図6は、第2実施形態に係る検査システム200の概略的な構成を示す図である。本実施形態において、モニター22は第1実施形態におけるモニター21よりも大きく、表示装置20と撮像装置30の間に縮小レンズ60が配置されている。この点が第1実施形態と異なる。
【0058】
例えば、モニター22に表示されるサンプル画像がカメラ31の撮像範囲より大きい場合であっても、表示装置20と撮像装置30との間に縮小レンズ60を挿入しサンプル画像を対象物の実際の大きさまで縮小することで、カメラ31での撮像が可能となる。モニター22に表示されるサンプル画像を縮小レンズ60で縮小することにより、解像度の高い画像をカメラ31で撮像することが可能となる。解像度の高い画像を得ることができれば、制御装置40でより高精度な判定を行うことが可能となる。
【0059】
以上説明した実施形態は、発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明はその他の様々な形態で実施することが可能である。当該実施形態にて開示した構成やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…ディスク装置、2…ケース、3…スピンドル、4…ディスク、5…ピボット軸、6…キャリッジ、7…ボイスコイルモータ、8…アーム、10…サスペンション、11…サスペンションの先端部、12…スライダ、13…アクチュエータ、20…表示装置、21,22…モニター、30…撮像装置、31…カメラ、32…光源、40…制御装置、41…表示制御モジュール、42…撮像制御モジュール、43…判定制御モジュール、44…出力制御モジュール、45…記憶部、50…出力装置、60…縮小レンズ、100,200…検査システム、AD…接着剤、M…マーク