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特許7621756無線タグ読取装置及びその制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】無線タグ読取装置及びその制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20250120BHJP
   G01S 1/08 20060101ALI20250120BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
G06K7/10 240
G06K7/10 268
G01S1/08
B65G61/00 432
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020142636
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038246
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇貴
【審査官】高橋 克
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-058055(JP,A)
【文献】特開2009-129072(JP,A)
【文献】特開2009-110088(JP,A)
【文献】特開平05-233988(JP,A)
【文献】特開2001-359147(JP,A)
【文献】特開2009-265993(JP,A)
【文献】特開2009-007157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
G01S 1/08
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグが往来する通路に沿って配置された複数の無線タグ通信用のアンテナと、
単位時間毎に、前記複数のアンテナでそれぞれ、前記単位時間内に前記無線タグのデータを読み取った読取回数をアンテナ別に取得する回数取得手段と、
前記単位時間毎に、前記複数のアンテナでそれぞれ、前記単位時間内に前記無線タグのデータを読み取ったときの受信信号強度をアンテナ別に取得する強度取得手段と、
前記単位時間毎に取得した複数の前記単位時間内の前記アンテナ別の前記読取回数と前記受信信号強度とに基づき、前記無線タグが前記複数のアンテナのうちいずれのアンテナの近傍に位置するかを示すログデータを前記単位時間毎に作成し、作成した複数の前記ログデータを時間順に分析することにより、前記通路を往来する前記無線タグの移動方向を特定する方向特定手段と、
を具備する無線タグ読取装置。
【請求項2】
前記方向特定手段は、前記単位時間において、前記読取回数が所定回数以上のアンテナが1つしかない場合には当該アンテナの近傍前記無線タグが位置しており、前記読取回数が所定回数以上のアンテナが複数ある場合には各々のアンテナの前記受信信号強度を比較して最も高いアンテナの近傍前記無線タグが位置しているとみなして、前記ログデータを作成する、請求項1記載の無線タグ読取装置。
【請求項3】
前記単位時間において、前記読取回数が所定回数以上のアンテナが複数ある場合に比較される各々のアンテナの前記受信信号強度は、前記単位時間内に前記無線タグのデータを読み取ったときの平均値である、請求項2記載の無線タグ読取装置。
【請求項4】
前記方向特定手段により特定される前記無線タグの移動方向から、前記通路を移動した前記無線タグの存在領域を特定する領域特定手段、
をさらに具備する請求項1記載の無線タグ読取装置。
【請求項5】
前記領域特定手段は、少なくとも1つのアンテナで読み取れていた無線タグのデータが読み取れなくなったとき、前記方向特定手段により最後に特定された当該無線タグの移動方向から前記存在領域を特定する、請求項4記載の無線タグ読取装置。
【請求項6】
無線タグが往来する通路に沿って複数の無線タグ通信用のアンテナを配置した無線タグ読取装置のコンピュータを、
単位時間毎に、前記複数のアンテナでそれぞれ、前記単位時間内に前記無線タグのデータを読み取った読取回数をアンテナ別に取得する回数取得手段、
前記単位時間毎に、前記複数のアンテナでそれぞれ、前記単位時間内に前記無線タグのデータを読み取ったときの受信信号強度をアンテナ別に取得する強度取得手段、及び、
前記単位時間毎に取得した複数の前記単位時間内の前記アンテナ別の前記読取回数と前記受信信号強度とに基づき、前記無線タグが前記複数のアンテナうちいずれのアンテナの近傍に位置するかを示すログデータを前記単位時間毎に作成し、作成した複数の前記ログデータを時間順に分析することにより、前記通路を往来する前記無線タグの移動方向を特定する方向特定手段、
として機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線タグ読取装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグが往来する通路に沿って複数の無線タグ通信用のアンテナを配置し、各アンテナで無線タグと通信した時刻、又は無線タグのデータを読み取った回数から、無線タグの移動方向を特定する技術はすでに知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-265993号公報
【文献】特開2009-007157号公報
【文献】特開2010-082454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、通路を往来する無線タグの移動方向を精度よく特定できる無線タグ読取装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、無線タグ読取装置は、複数の無線タグ通信用のアンテナと、回数取得手段と、強度取得手段と、方向特定手段とを備える。各アンテナは、無線タグが往来する通路に沿って配置される。回数取得手段は、単位時間毎に、複数のアンテナでそれぞれ、単位時間内に無線タグのデータを読み取った読取回数をアンテナ別に取得する。強度取得手段は、単位時間毎に、複数のアンテナでそれぞれ、単位時間内に無線タグのデータを読み取ったときの受信信号強度をアンテナ別に取得する。方向特定手段は、単位時間毎に取得したアンテナ別の読取回数と受信信号強度とに基づき、無線タグが複数のアンテナのうちいずれのアンテナの近傍に位置するかを示すログデータを単位時間毎に作成し、作成した複数のログデータを時間順に分析することにより、通路を往来する無線タグの移動方向を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係る無線タグ読取装置を説明するための模式図。
図2】タグデータベースに保存されるタグレコードの主要なデータ構造を示す模式図。
図3】移動監視装置の要部回路構成を示すブロック図。
図4】移動監視装置のメインメモリに形成されるワークバッファの構成図。
図5】移動監視装置の補助記憶デバイスに形成される変換テーブル、ログファイル及び確定ファイルの構成図。
図6】プロセッサが制御プログラムに従って実行する主要な情報処理の要部手順を示す流れ図。
図7図6におけるログ作成処理の具体的手順を示す流れ図。
図8図7における判定処理の具体的手順を示す流れ図。
図9図6における領域特定処理の具体的手順を示す流れ図。
図10】移動監視装置の表示デバイスに表示される画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、一実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、一実施形態に係る無線タグ読取装置1を説明するための模式図である。無線タグ読取装置1は、第1の領域100と第2の領域200とを連結する通路300を往来する無線タグ2の移動方向を特定する機能を有する。また無線タグ読取装置1は、無線タグ2の移動方向に係る情報から、無線タグ2の存在領域、つまりは無線タグ2が第1の領域100に存在するのか第2の領域200に存在するのかを特定する機能を有する。
【0008】
一実施形態において、無線タグ2は、商品3に付されている。商品3は、単品であってもよいし、複数品を収容したケースであってもよい。第1の領域100にある商品3は、通路300を図1の矢印Daに示される方向に移動して、第2の領域200に移る場合がある。第2の領域200にある商品3は、通路300を図1の矢印Dbに示される方向に移動して、第1の領域100に移る場合がある。
【0009】
例えば、第1の領域100は店舗の倉庫であり、第2の領域200は同店舗の売場である。この種の店舗では、品出しの際、倉庫に保管されていた商品3は、通路300を通って売場へと移送される。期限切れ等によって売場で回収された商品3は、通路を通って倉庫へと移送される。無線タグ読取装置1は、商品3に付された無線タグ2と通信を行うことにより、無線タグ2が通路300をどちらの方向に移動したのか、つまりは、商品3が倉庫から売場へと移送されたのか、あるいは売場から倉庫へと移送されたのかという情報を、商品3を単位として取得することができる。
【0010】
かかる機能を有する無線タグ読取装置1は、2つのリーダ・ライタ(R/W)10,20と、各リーダ・ライタ10,20にそれぞれ接続された2つのアンテナ11,21と、移動監視装置30と、を含む。
【0011】
各アンテナ11,21は、無線タグ読取用のアンテナである。例えば、円偏波又は直線偏波の平面アンテナがアンテナ11,21として用いられる。各アンテナ11,21は、通路300に沿って配置される。図1では、一方のアンテナ11が第1の領域100側に配置されており、他方のアンテナ21が第2の領域200側に配置されている。そして、一方のアンテナ11の天面から見た無線タグ読取可能領域110と、他方のアンテナ21の天面から見た無線タグ読取可能領域210とが、通路300の全幅をカバーするように、アンテナ11,21の向き、床面からの高さ、電波出力レベル、Q値等が設定されている。
【0012】
リーダ・ライタ10,20は、対応するアンテナ11,21を介して無線通信を行った無線タグ2のメモリに記憶されたデータを読み取る。無線タグ2のメモリには、少なくともタグIDが記憶されている。タグIDは、各無線タグ2に対して一意に設定されたタグ識別情報であり、RFID(Radio Frequency Identification)等とも称される。
【0013】
リーダ・ライタ10,20は、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を測定するためのRSSI測定部12,22を備える。RSSI測定部12,22は、対応するアンテナ11,21で受信した電波信号の電界強度を測定する。すなわちRSSI測定部12,22は、アンテナ11,21から放射された読取り電波を受信した無線タグ2から送信される電波信号を同じアンテナ11,21で受信したときの電界強度をRSSIとして測定する。リーダ・ライタ10,20は、無線タグ2からタグIDを読み取る毎に、その読取時点のRSSIをタグIDとともに移動監視装置30に出力する。
【0014】
移動監視装置30は、リーダ・ライタ10,20で読み取られた無線タグ2のタグIDとRSSIとに基づき、通路300を行き来する無線タグ2の移動を監視するためのコンピュータ装置である。移動監視装置30は、商品管理装置40を接続する。
【0015】
商品管理装置40は、無線タグ2が付された商品の存在領域を管理するためのコンピュータ装置である。商品管理装置40は、タグデータベース(DB)41を有する。タグデータベース41は、タグレコード410(図2を参照)の集合体である。
【0016】
図2に示すように、タグレコード410は、タグID、商品コード、商品名、領域名、日時等の項目を含む。商品コード及び商品名は、タグIDを識別情報として記憶する無線タグ2が付された商品3固有のコード及び名称である。領域名は、商品3が存在する領域を示す名称である。例えば第1の領域100を倉庫、第2の領域200を店舗とした場合、倉庫に存在する商品3のタグレコード410は、領域名が「倉庫」となる。店舗に存在する商品3のタグレコード410は、領域名が「店舗」となる。日時は、商品3が領域名の領域に移動した日時である。領域名と日時は、移動監視装置30で監視される無線タグ2の移動情報に応じて、適宜更新される。
【0017】
図3は、移動監視装置30の要部回路構成を示すブロック図である。移動監視装置30は、プロセッサ31、メインメモリ32、補助記憶デバイス33、時計34、通信インターフェース(I/F)35、表示デバイス36、入力デバイス37及び2つのデバイスインターフェース38,39を備える。移動監視装置30は、プロセッサ31と、メインメモリ32、補助記憶デバイス33、時計34、通信インターフェース35、表示デバイス36、入力デバイス37及び2つのデバイスインターフェース38,39とを、システムバス310で接続している。システムバス310は、アドレスバス、データバス等を含む。移動監視装置30は、プロセッサ31とメインメモリ32、補助記憶デバイス33、時計34及び通信インターフェース35とを、システムバス310で接続することによって、コンピュータを構成している。
【0018】
プロセッサ31は、上記コンピュータの中枢部分に相当する。プロセッサ31は、オペレーティングシステム又はアプリケーションプログラムに従って、移動監視装置30としての各種の機能を実現するべく各部を制御する。プロセッサ31は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0019】
メインメモリ32は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。メインメモリ32は、不揮発性のメモリ領域及び揮発性のメモリ領域を含む。メインメモリ32は、不揮発性のメモリ領域ではオペレーティングシステム又はアプリケーションプログラムを記憶する。メインメモリ32は、プロセッサ31が各部を制御するための処理を実行する上で必要なデータを揮発性のメモリ領域で記憶する。またメインメモリ32は、揮発性のメモリ領域を、プロセッサ31によってデータが適宜書き換えられるワークエリアとして使用する。不揮発性のメモリ領域は、例えばROM(Read Only Memory)である。揮発性のメモリ領域は、例えばRAM(Random Access Memory)である。
【0020】
補助記憶デバイス33は、上記コンピュータの補助記憶部分に相当する。補助記憶デバイス33としては、例えばEEPROM(Electric Erasable Programmable Read-Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の周知の記憶デバイスを単独で、あるいは複数組み合わせて用いられる。補助記憶デバイス33は、プロセッサ31が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサ31での処理によって生成されたデータ等を保存する。補助記憶デバイス33は、アプリケーションプログラムを記憶する場合もある。
【0021】
メインメモリ32又は補助記憶デバイス33が記憶するアプリケーションプログラムは、後述する制御プログラムを含む。制御プログラムをメインメモリ32又は補助記憶デバイス33にインストールする方法は特に限定されるものではない。リムーバブルな記録媒体に制御プログラムを記録して、あるいはネットワークを介した通信により制御プログラムを配信して、メインメモリ32又は補助記憶デバイス33にインストールすることができる。記録媒体は、CD-ROM、メモリカード等のようにプログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能であれば、その形態は問わない。
【0022】
時計34は、移動監視装置30の時刻情報源として機能する。プロセッサ31は、時計34によって計時される時刻情報を基に、現在の日付及び時刻を取得する。
【0023】
通信インターフェース35は、商品管理装置40を接続する。移動監視装置30は、通信インターフェース35を介して商品管理装置40との間でデータ通信を行う。
【0024】
表示デバイス36は、無線タグ2の移動監視に係る画像を表示するためのデバイスである。表示デバイス36は、例えば液晶ディスプレイである。入力デバイス37は、無線タグ2の移動監視に係るデータを入力するためのデバイスである。入力デバイス37は、例えばキーボード、マウス等である。タッチパネル機能を有したモニタ装置を入力デバイス37及び表示デバイス36の兼用装置として、移動監視装置30が備えてもよい。
【0025】
2つのデバイスインターフェース38,39は、それぞれリーダ・ライタ10,20を接続する。移動監視装置30は、デバイスインターフェース38を介してリーダ・ライタ10と通信を行う。移動監視装置30は、デバイスインターフェース38を介してリーダ・ライタ10で読み取られた無線タグ2のタグIDとRSSIとを取得する。また移動監視装置30は、デバイスインターフェース39を介してリーダ・ライタ20と通信を行う。移動監視装置30は、デバイスインターフェース39を介してリーダ・ライタ20で読み取られた無線タグ2のタグIDとRSSIとを取得する。
【0026】
かかる構成の移動監視装置30は、図4に示すように、メインメモリ32の揮発性領域において、一対のワークバッファ321,322を形成している。そして移動監視装置30は、一方のワークバッファ321に対しては、ワークバッファ番号(WBNo.)として“1”を設定し、他方のワークバッファ322に対しては、ワークバッファ番号として“2”を設定している。なお、ワークバッファ321,322の数2つに限定されない。移動監視装置30は、3つ以上のワークバッファを備え、各々に“1”からの連続番号をワークバッファ番号として設定してもよい。
【0027】
ワークバッファ321,322は、いずれもタグID、アンテナID、読取回数及びRSSI計の項目からなるデータレコードを一時的に記憶するための領域である。ワークバッファ321,322は、いずれも複数のデータレコードを記憶可能である。
【0028】
アンテナIDは、アンテナ11,21をそれぞれ識別するためにアンテナ毎に設定されたコードである。アンテナ11のアンテナIDは、リーダ・ライタ10のメモリに設定されている。リーダ・ライタ10は、アンテナ11を介して読み取った無線タグ2のタグIDに、アンテナ11のアンテナIDを付して移動監視装置30へと出力する。アンテナ21のアンテナIDは、リーダ・ライタ20のメモリに設定されている。リーダ・ライタ20は、アンテナ21を介して読み取った無線タグ2のタグIDに、アンテナ21のアンテナIDを付して移動監視装置30へと出力する。
【0029】
読取回数は、単位時間内にアンテナIDのアンテナ11,21でタグIDを読み取った回数である。RSSI計は、その読取回数だけタグIDを読み取ったときのRSSIの合計である。
【0030】
移動監視装置30は、図5に示すように、補助記憶デバイス33の一部の領域を、変換テーブル331、ログファイル332、及び、確定ファイル333としている。
変換テーブル331は、アンテナ11,21の各アンテナIDとそれぞれ関連付けて領域名を設定したデータテーブルである。前述したように、通路300に対し、アンテナ11は、第1の領域100側に配置されており、アンテナ21は、第2の領域200側に配置されている。そして本実施形態では、第1の領域100は倉庫であり、第2の領域は売場である。したがって、変換テーブル331は、アンテナ11のアンテナID(ANTa)と関連付けて領域名「倉庫」を設定し、アンテナ21のアンテナID(ANTb)と関連付けて領域名「売場」を設定したものである。
【0031】
ログファイル332は、時間、タグID、アンテナID及びステータスの各項目からなるデータレコードを記述するための領域である。確定ファイル333は、日時、タグID及び領域名の各項目からなるデータレコードを記述するための領域である。ログファイル332及び確定ファイル333に記述されるデータレコードの詳細については、後述の動作説明の中で明らかにする。
【0032】
図6乃至図9は、プロセッサ31が制御プログラムに従って実行する主要な情報処理の要部手順を示す流れ図である。以下、各図を用いて、プロセッサ31の主要な動作について説明する。なお、以下に説明する動作の手順は一例である。同様な作用効果を得ることができるのであれば、その手順は適宜変更することができる。
【0033】
制御プログラムが起動すると、プロセッサ31は先ず、ACT1として第1カウンタTを“0”にリセットする。またプロセッサ31は、ACT2として第2カウンタNを“0”にリセットする。第1カウンタT及び第2カウンタNは、例えばメインメモリ32の揮発性領域に形成されている。
【0034】
プロセッサ31は、ACT3として第2カウンタNを“1”だけカウントアップする。そしてプロセッサ31は、ACT4として第2カウンタNがワークバッファ番号の最大値“2”を超えたか否かを確認する。第2カウンタNがワークバッファ番号の最大値“2”を超えていない場合、プロセッサ31は、ACT4においてNOと判定し、ACT5へと進む。第2カウンタNがワークバッファ番号の最大値“2”を超えている場合には、プロセッサ31は、ACT4においてYESと判定し、ACT2へと戻る。そしてプロセッサ31は、第2カウンタNを一旦“0”にリセットし、再び“1”だけカウントアップして、ACT4へと進む。したがって、この場合、第2カウンタNは“1”なので、プロセッサ31は、ACT5へと進む。このように、プロセッサ31は、第2カウンタNが“1”または“2”の場合、つまりはワークバッファ番号として存在する数値の場合、ACT5へと進む。
【0035】
プロセッサ31は、ACT5としてタイマをスタートさせる。タイマは、例えばタイムアウト時間として2秒が設定され、タイムアウトする毎にリスタートするソフトタイマである。
【0036】
プロセッサ31は、ACT6としてタイマがタイムアウトしたか否かを監視する。タイマがタイムアウトしていない場合、プロセッサ31は、ACT7としてリーダ・ライタ10,20で無線タグが読み取られたか否かを確認する。無線タグが読み取られていない場合、プロセッサ31は、ACT7においてNOと判定し、ACT6へと戻る。ここにプロセッサ31は、ACT6及びACT7において、タイマがタイムアウトするか、タグIDが読み取られるのを待ち受ける。
【0037】
この待ち受け状態において、デバイスインターフェース38,39を介してリーダ・ライタ10,20で読み取られた無線タグの読取りデータを受信すると、プロセッサ31は、ACT7においてYESと判定し、ACT8へと進む。
【0038】
前述したように、リーダ・ライタ10,20から移動監視装置30へと出力される無線タグの読取りデータには、タグIDとアンテナIDとRSSIとが含まれる。プロセッサ31は、ACT8として読取りデータからタグIDとアンテナIDとを取得する。またプロセッサ31は、ACT9として同読取りデータからRSSIを取得する。
【0039】
プロセッサ31は、ACT10として、第2カウンタNの値をワークバッファ番号とするワークバッファ321,322を検索する。以下では、第2カウンタNの値が“1”、つまりはワークバッファ321を検索する場合について例示する。なお、第2カウンタNの値が“2”、つまりはワークバッファ322を検索する場合には、以下の説明で検索対象のワークバッファ321をワークバッファ322と置換すればよい。
【0040】
プロセッサ31は、読取データから取得したタグIDとアンテナIDとを検索用のキーとして検索対象のワークバッファ321を検索する。そしてプロセッサ31は、その検索用のキーとしたタグIDとアンテナIDとを含むデータレコードが、検索対象のワークバッファ321に存在するか否かを確認する。以下では、検索用のキーとしたタグIDとアンテナIDとを含むデータレコードを対象データレコードと称する。
【0041】
対象データレコードが存在しない場合、プロセッサ31は、ACT11においてNOと判定し、ACT12へと進む。プロセッサ31は、ACT12として検索対象のワークバッファ321に、検索用のキーとしたタグIDとアンテナIDとを含むデータレコード、つまりは対象データレコードを追加する。その後、プロセッサ31は、ACT13へと進む。検索対象のワークバッファ321に対象データレコードが存在する場合には、プロセッサ31は、ACT11においてYESと判定し、ACT12の処理をスキップして、ACT13へと進む。
【0042】
プロセッサ31は、ACT13として対象データレコードの読取回数Rを“1”だけ増加する。またプロセッサ31は、ACT14として対象データレコードのRSSI計Qに、読取データから取得したRSSIを加算する。以上の処理を終えると、プロセッサ31は、ACT6へと戻る。
【0043】
このようにプロセッサ31は、タイマがタイムアウトするまでの単位時間内において、リーダ・ライタ10,20で無線タグ2のデータが読み取られる毎に、ACT8乃至ACT14の処理を繰り返し実行する。そして、タイムがタイムアウトすると、プロセッサ31は、ACT6においてYESと判定し、ACT15へと進む。
【0044】
プロセッサ31は、ACT15として第1カウンタTを“1”だけカウントアップする。そしてプロセッサ31は、ACT16としてログ作成処理を実行する。またプロセッサ31は、ACT17として領域特定処理を実行する。ログ作成処理及び領域特定処理については後述する。
【0045】
プロセッサ31は、ログ作成処理及び領域特定処理を終えると、ACT3へと戻る。すなわちプロセッサ31は、第2カウンタNを“1”だけカウントアップする。したがって、第2カウンタNが“1”であった場合には、プロセッサ31は、第2カウンタNを“2”とする。第2カウンタNが“2”であった場合には、プロセッサ31は、第2カウンタNを“1”とする。そしてプロセッサ31は、ACT5以降の処理を前述したのと同様に実行する。したがって、前回の処理で検索対象のワークバッファがワークバッファ321であった場合には、今回の処理ではワークバッファ322が検索対象とする。
【0046】
このように、検索対象となったワークバッファ321,322には、タイマがタイムアウトする単位時間内に読み取られた無線タグ2のタグIDと、そのタグIDを読み取ったリーダ・ライタ10,20のアンテナIDと、同タグIDの読取回数と、同タグIDを読み取ったときのRSSIの合算値(RSSI計)と、が記憶される。
【0047】
図7は、ログ作成処理の要部手順を示す流れ図である。ログ作成処理に入ると、プロセッサ31は、ACT21として第2カウンタNの値をワークバッファ番号とするワークバッファ321,322を選択する。すなわちプロセッサ31は、第2カウンタNが“1”であった場合には、ワークバッファ321を選択する。プロセッサ31は、第2カウンタNが“2”であった場合には、ワークバッファ322を選択する。以下では、ワークバッファ321を選択する場合について例示する。ワークバッファ322を選択する場合には、以下の説明で選択対象のワークバッファ321をワークバッファ322と置換すればよい。
【0048】
プロセッサ31は、ACT22として選択対象のワークバッファ321にデータレコードが記憶されているか否かを確認する。選択対象のワークバッファ321にデータレコードが記憶されていない場合、プロセッサ31は、ACT22においてNOと判定する。プロセッサ31は、ログ作成処理を抜ける。
【0049】
選択対象のワークバッファ321に少なくとも1つのデータレコードが記憶されている場合には、プロセッサ31は、ACT22においてYESと判定し、ACT23へと進む。プロセッサ31は、ACT23として選択対象のワークバッファ321からログ作成処理が未処理のデータレコードを取得する。以下では、取得した未処理のデータレコードを未処理レコードXと称する。プロセッサ31は、ACT24として未処理レコードXのタグIDを含む他の未処理のデータレコードが選択対象のワークバッファ321に記憶されているか否かを確認する。
【0050】
最新の単位時間内において、通路300を移動中の無線タグ2のデータをいずれか一方のリーダ・ライタ10,20でしか読み取れなかった場合、ワークバッファ321には、当該無線タグ2のタグIDを含むデータレコードが1つしか存在しない。この場合、プロセッサ31は、ACT24においてNOと判定し、ACT25へと進む。プロセッサ31は、ACT25としてそのデータレコードの読取回数Rが閾値S以上であるか否かを確認する。
【0051】
例えばリーダ・ライタ10,20は、電波の反乱射等に起因して、無線タグ読取可能領域110,210外に位置する無線タグ2のデータを読み取ってしまう場合がある。しかし、このような誤読は単発的なものであるので、単位時間内に所定回数読み取られるようなことはない。そこで、この所定回数を閾値Sとする。プロセッサ31は、読取回数Rが閾値S未満の場合、誤読によって生じたデータコードであるとして破棄する。すなわちプロセッサ31は、ACT25においてNOと判定し、ACT26及びACT27の処理をスキップしてACT30へと進む。
【0052】
読取回数Rが閾値S以上である場合には、プロセッサ31は、ACT25においてYESと判定し、ACT26へと進む。プロセッサ31は、ACT26としてログデータを作成し、ログファイル332に保存する。ログデータの時間は、第1カウンタTの値である。タグID及びアンテナIDは、未処理レコードXのデータである。プロセッサ31は、ACT27としてそのログデータのステータスを“1”とする。その後、プロセッサ31は、ACT30へと進む。
【0053】
一方、最新の単位時間内において、通路300を移動中の無線タグ2のデータを双方のリーダ・ライタ10,20が読み取った場合、ワークバッファ321には、当該無線タグ2のタグIDを含むデータレコードが2つ存在する。この場合、プロセッサ31は、ACT24においてYESと判定し、ACT28へと進む。プロセッサ31は、ACT28として選択対象のワークバッファ321から未処理レコードXのタグIDを含む別のデータレコードを取得する。以下では、取得した別のデータレコードを未処理レコードYと称する。プロセッサ31は、ACT29として未処理レコードX及び未処理レコードYを用いて判定処理を実行する。
【0054】
図8は、判定処理の要部手順を示す流れ図である。判定処理に入ると、プロセッサ31は、ACT41として未処理レコードXの読取回数Rxが閾値S以上であるか否かを確認する。読取回数Rxが閾値S未満の場合、プロセッサ31は、ACT41においてNOと判定し、ACT42へと進む。プロセッサ31は、ACT42として未処理レコードYの読取回数Ryが閾値S以上であるか否かを確認する。読取回数Ryも閾値S未満の場合、プロセッサ31は、ACT42においてNOと判定し、判定処理を抜ける。これに対し、読取回数Ryが閾値S以上の場合には、プロセッサ31は、ACT42においてYESと判定し、ACT49へと進む。ACT49以降の処理については後述する。
【0055】
読取回数Rxが閾値S以上の場合には、プロセッサ31は、ACT41においてYESと判定し、ACT43へと進む。プロセッサ31は、ACT43として未処理レコードYの読取回数Ryが閾値S以上であるか否かを確認する。読取回数Ryが閾値S未満の場合、プロセッサ31は、ACT43においてNOと判定し、ACT44乃至ACT47の処理をスキップして、ACT48へと進む。
【0056】
読取回数Ryも閾値S以上の場合には、プロセッサ31は、ACT43においてYESと判定し、ACT44へと進む。プロセッサ31は、ACT44として処理フラグFを“1”にセットする。処理フラグFは、例えばメインメモリ32の揮発性領域に記憶された1ビットデータである。
【0057】
プロセッサ31は、ACT45として未処理レコードXのRSSI計Qを同未処理レコードXの読取回数Rxで除算する。すなわちプロセッサ31は、一方のリーダ・ライタ、例えばリーダ・ライタ10で単位時間内に無線タグ2のタグIDを読み取ったときのRSSIの平均値Axを算出する。
【0058】
プロセッサ31は、ACT46として未処理レコードYのRSSI計Qを同未処理レコードYの読取回数Ryで除算する。すなわちプロセッサ31は、他方のリーダ・ライタ、例えばリーダ・ライタ20で、単位時間内に同じ無線タグ2のタグIDを読み取ったときのRSSIの平均値Ayを算出する。
【0059】
プロセッサ31は、ACT47として平均値Axと平均値Ayとを比較する。その結果、平均値Axの方が平均値Ayよりも大きい場合、プロセッサ31は、ACT47においてYESと判定し、ACT48へと進む。平均値Ayが平均値Ax以上である場合には、プロセッサ31は、ACT47においてNOと判定し、ACT49へと進む。
【0060】
このように、未処理レコードXの読取回数Rxが閾値S以上であり、未処理レコードYの読取回数Ryが閾値S未満の場合には、プロセッサ31は、ACT48へと進む。未処理レコードYの読取回数Ryが閾値S以上であり、未処理レコードXの読取回数Rxが閾値S未満の場合には、プロセッサ31は、ACT49へと進む。未処理レコードX及び未処理レコードYの読取回数Rx,Ryがいずれも閾値S以上の場合には、プロセッサ31は、未処理レコードXから算出したRSSIの平均値Axと未処理レコードYから算出したRSSIの平均値Ayとを比較する。そして、平均値Axの方が平均値Ayよりも大きい場合には、プロセッサ31は、ACT48へと進む。平均値Ayが平均値Ax以上である場合には、プロセッサ31は、ACT49へと進む。
【0061】
ACT48においては、プロセッサ31は、未処理レコードXを選択する。ACT49においては、プロセッサ31は、未処理レコードYを選択する。そして、ACT48又はACT49の処理を終えると、プロセッサ31は、ACT50へと進む。
【0062】
プロセッサ31は、ACT50としてその選択した未処理レコードX又は未処理レコードYを用いてログデータを作成し、ログファイル332に保存する。ログデータの時間は、第1カウンタTの値である。タグID及びアンテナIDは、未処理レコードX又は未処理レコードYのデータである。
【0063】
プロセッサ31は、ACT51として処理フラグFを調べる。ここで、処理フラグFが“1”にセットされていない場合、プロセッサ31は、ACT51においてNOと判定し、ACT52へと進む。プロセッサ31は、ACT52として、ACT50の処理でログファイル332に保存したログデータのステータスを“1”とする。その後、プロセッサ31は、判定処理を抜ける。
【0064】
処理フラグFが“1”にセットされていた場合には、プロセッサ31は、ACT51においてYESと判定し、ACT53へと進む。プロセッサ31は、ACT53として、ACT50の処理でログファイル332に保存したログデータのステータスを“2”とする。またプロセッサ31は、ACT53として処理フラグFを“0”にリセットする。その後プロセッサ31は、判定処理を抜ける。
【0065】
このようにログ作成処理においては、選択対象のワークバッファ321に記憶されているデータレコードのうち、読取回数Rが閾値SA以上のデータレコードを基にログデータが作成されて、ログファイル332に保存される。このとき、リーダ・ライタ10での読取回数Rが閾値S以上のタグIDを、リーダ・ライタ20では閾値S以上読み取っていない場合、ログデータのアンテナIDは、アンテナ11に対するものとなる。逆に、リーダ・ライタ20での読取回数Rが閾値S以上のタグIDを、リーダ・ライタ10では閾値S以上読み取っていない場合には、ログデータのアンテナIDは、アンテナ21に対するものとなる。また、ログデータのステータスは、いずれも“1”となる。
【0066】
一方、双方のリーダ・ライタ10,20で同一のタグIDを閾値S以上読み取った場合には、RSSIの平均値Ax,Ayが比較される。そして、平均値Ax,Ayが大きい方のリーダ・ライタ10,20のアンテナ11,21に対するアンテナIDがログデータに含まれる。また、ログデータのステータスは、“2”となる。
【0067】
かくして、ログファイル332には、単位時間毎に実行されるログ作成処理によって作成されたログデータが、時間順に保存される。そして、このログデータは、時間Tのときに、タグIDで識別される無線タグ2が、アンテナIDで識別されるアンテナ11,21の無線タグ読取可能領域110,120に位置することを意味する。
【0068】
したがって、このログデータを時間順に分析することによって、無線タグ2の通路300における移動方向が検出される。すなわち無線タグ2が、アンテナ11の無線タグ読取可能領域110からアンテナ21の無線タグ読取可能領域210へと移動したのか、つまりは、図1の矢印Daに示される方向に移動したのか、アンテナ21の無線タグ読取可能領域210からアンテナ11の無線タグ読取可能領域110へと移動したのか、つまりは、図1の矢印Dbに示される方向に移動したのかを検出できる。
【0069】
図9は、領域特定処理の要部手順を示す流れ図である。領域特定処理に入ると、プロセッサ31は、ACT61としてログファイル332を検索する。そしてプロセッサ31は、ACT62として第1カウンタTの値よりも“1”だけ小さい時間(T-1)のログデータが保存されているか否を確認する。以下では、時間(T-1)のログデータを第1対象ログデータと称する。プロセッサ31は、ログファイル332に第1対象ログデータが保存されていない場合、ACT62においてNOと判定する。プロセッサ31は、領域判定処理を抜ける。
【0070】
ログファイル332に第1対象ログデータが保存されている場合には、プロセッサ31は、ACT62においてYESと判定し、ACT63へと進む。プロセッサ31は、ACT63として第1対象ログデータからタグIDを取得する。そしてプロセッサ31は、ACT64としてこのタグIDを検索用のキーとしてログファイル332を検索する。そしてプロセッサ31は、ACT64として第1カウンタTの値を時間とするログデータが保存されているか否を確認する。以下では、時間Tのログデータを第2対象ログデータと称する。プロセッサ31は、ログファイル332に第2対象ログデータが保存されている場合、ACT65においてYESと判定する。プロセッサ31は、ACT66乃至ACT69の処理をスキップして、ACT70へと進む。
【0071】
ログファイル332に第2対象ログデータが保存されていない場合には、プロセッサ31は、ACT65においてNOと判定する。プロセッサ31は、ACT66乃至ACT69の処理を実行して、ACT70へと進む。
【0072】
すなわちプロセッサ31は、ACT66として時計34で計時されている日時データを取得する。またプロセッサ31は、ACT67として第1対象ログデータからアンテナIDを取得する。そしてプロセッサ31は、ACT68として変換テーブル331を参照して、そのアンテナIDを領域名に変換する。しかる後、プロセッサ31は、ACT69として確定ファイル333に確定データを保存する。確定データの日時は、ACT66の処理で取得した日時データである。タグIDは、第1対象ログデータのタグIDである。領域名は、ACT68の処理でアンテナIDから変換した領域名である。
【0073】
プロセッサ31は、ACT70としてログファイル332の検索を終了したか否かを確認する。ログファイル332の検索を終了していない場合、すなわち、他の第1対象ログデータがログファイル332に保存されている場合には。プロセッサ31は、ACT70においてNOと判定し、ACT63へと戻る。そしてプロセッサ31は、ACT63以降の処理を前述したのと同様に実行する。
【0074】
こうして、ログファイル332に保存されている第1対象ログデータについて、ACT63以降の処理を実行し終えると、プロセッサ31は、ACT70においてYESと判定する。プロセッサ31は、領域特定処理を抜ける。
【0075】
このように領域特定処理においては、第1対象ログデータに対する第2対象ログデータがログファイル332に保存されているか否かが判定される。第1対象ログデータは、第1カウンタTの値よりも“1”だけ小さい時間(T-1)のログデータである。第2対象ログデータは、第1カウンタTの値を時間とするログデータのうち、第1対象ログデータと同じタグIDを含むログデータである。第2対象ログデータは、第1対象ログデータとアンテナID及びステータスの少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0076】
第1対象ログデータに対する第2対象ログデータがログファイル332に保存されている場合、ACT66乃至ACT69の処理は実行されない。第1対象ログデータに対する第2対象ログデータがログファイル332に保存されていない場合に限り、ACT66乃至ACT69の処理は実行される。すなわち、直前の単位時間内では、少なくとも一方のリーダ・ライタ10,20で閾値S以上読み取られていた無線タグ2のタグIDを、その直後の単位時間内では読み取れなくなった場合、第1対象ログデータを用いて確定データが作成され、確定ファイル333に保存される。
【0077】
直前の単位時間内では読み取れていたタグIDをその直後の単位時間内では読み取れなくなったということは、当該タグIDの無線タグ2が、通路300を移動して、第1の領域100又は第2の領域200に移送されたと考えられる。
【0078】
かくして、確定ファイル333には、通路300を移動して第1の領域100又は第2の領域200に移送された無線タグ2のタグIDと、移送先を示す領域名と、その移送日時とを含む確定データが保存される。
【0079】
したがって、この確定データを分析することによって、無線タグ2が付された商品3が通路300を移動して第1の領域100から第2の領域100へと移送されたのか、あるいは第2の領域200から第1の領域100へと移送されたのかを管理できる。
【0080】
因みに、本実施形態では、確定ファイル333に保存された確定データは、一定時間毎、例えば1分間隔で移動監視装置30から商品管理装置40へと出力される。商品管理装置40においては、その確定データを基にタグレコード410の領域名と日時とが更新される。したがって、タグデータベース41に保存されているタグレコード410を分析することによって、現時点における商品3の存在領域を正確に特定することができる。
【0081】
ここに、移動監視装置30は、プロセッサ31が図6のACT13の処理を実行することにより、回数取得手段を構成する。すなわち移動監視装置30は、単位時間毎に、複数のアンテナ11,21でそれぞれ無線タグ2のデータを読み取った読取回数Rをアンテナ別に取得する。
【0082】
移動監視装置30は、プロセッサ31が図6のACT14の処理を実行することにより、強度取得手段を構成する。すなわち移動監視装置30は、単位時間毎に、複数のアンテナ11,21でそれぞれ無線タグ2のデータを読み取ったときのRSSIをアンテナ別に取得する。
【0083】
移動監視装置30は、プロセッサ31が図7のACT23~29の処理を実行することにより、方向特定手段を構成する。すなわち移動監視装置30は、単位時間毎に取得したアンテナ別の読取回数とRSSIとに基づいて、通路300を往来する無線タグ2の移動方向を特定する。
【0084】
具体的には、移動監視装置30は、単位時間において、読取回数が所定回数以上のアンテナが1つしかない場合には、当該アンテナの近傍を無線タグ2が通過しているとみなして、無線タグ2の移動方向を特定する。また、読取回数が所定回数以上のアンテナが複数ある場合には、各々のアンテナのRSSIを比較して最も高いアンテナの近傍を無線タグ2が通過しているとみなして、無線タグ2の移動方向を特定する。
【0085】
ここで、単位時間において、読取回数が所定回数以上のアンテナが複数ある場合に比較される各々のアンテナのRSSIは、単位時間内に無線タグ2のデータを読み取ったときの平均値である。
【0086】
また移動監視装置30は、プロセッサ31が図9のACT61~70の処理を実行することにより、領域特定手段を構成する。すなわち移動監視装置30は、方向特定手段により特定される無線タグ2の移動方向から、通路300を移動した無線タグ2の存在領域を特定する。
【0087】
具体的には、移動監視装置30は、少なくとも1つのアンテナで読み取れていた無線タグ2のデータが読み取れなくなったとき、方向特定手段により最後に特定された当該無線タグ2の移動方向から存在領域を特定する。
【0088】
このように構成された移動監視装置30を含み、無線タグ2が往来する通路300に沿って2つの無線タグ通信用のアンテナ11,21を配置した無線タグ読取装置1によれば、通路300を往来する無線タグ2の移動方向を精度よく特定することができる。特に、移動監視装置30においては、単位時間毎に取得したアンテナ別の読取回数だけでなく、そのときの受信信号強度を加味して無線タグ2の移動方向を特定している。したがって、複数のアンテナで無線タグと通信した時刻、又は無線タグのデータを読み取った回数から、無線タグの移動方向を特定する従来技術と比較して、高精度に無線タグ2の移動方向を特定することができる。
【0089】
以上、無線タグ読取装置の一実施形態について説明したが、かかる実施形態はこれに限定されるものではない。
【0090】
図10は、表示デバイス36に表示される画像50の一例である。画像50は、ログファイル332に保存されるログデータと、確定ファイル333に保存される確定データとによって作成される。
【0091】
画像50は、表示領域51~58を含む。表示領域51は、ログデータ又は確定データのタグIDを表示するための領域である。表示領域52は、ログデータの状態を表示するための領域である。表示領域53は、確定データの状態を表示するための領域である。
【0092】
ログデータとして存在し、確定データとしては存在しないタグIDに関しては、最新時間のログデータが選択される。そして、このログデータのタグIDが表示領域51に表示される。また、このログデータのアンテナIDがアンテナ11のものであり、ステータスが“1”の場合には、表示領域52の向かって左側のエリアANTaに丸印が表示され、ステータスが“2”の場合には、同エリアANTaに二重丸印が表示される。同じく、ログデータのアンテナIDがアンテナ11のものであり、ステータスが“1”の場合には、表示領域52の向かって右側のエリアANTbに丸印が表示され、ステータスが“2”の場合には、同エリアANTbに二重丸印が表示される。
【0093】
確定データとして存在するタグIDに関しては、最新日時のログデータ、つまりは確定データが作成される直前の単位時間に対するログデータが選択される。そして、このログデータのタグIDが表示領域51に表示される。また、このログデータのアンテナIDがアンテナ11のものであり、ステータスが“1”の場合には、表示領域53の向かって左側のエリアAREAaに丸印が表示され、ステータスが“2”の場合には、同エリアAREAaに二重丸印が表示される。同じく、ログデータのアンテナIDがアンテナ11のものであり、ステータスが“1”の場合には、表示領域53の向かって右側のエリアAREAbに丸印が表示され、ステータスが“2”の場合には、同エリアAREAbに二重丸印が表示される。
【0094】
表示領域54には、表示領域51に表示されているタグIDの数が表示される。表示領域55には、表示領域52に表示されているマークの数がエリアANTa,ANTb別に表示される。表示領域56には、表示領域53に表示されているマークの数がエリアAREAa,AREAb別に表示される。表示領域57には、第1カウンタTの値が表示される。表示領域58には、単位時間が表示される。
【0095】
このような画像50を表示デバイス36に表示させることによって、以下の情報をリアルタイムに取得できる。
タグID「1111111111」は、アンテナ11とアンテナ21の双方で閾値S以上読み取られており、RSSIの平均値はアンテナ11の方が高い。したがって、タグID「1111111111」の無線タグ2は、アンテナ11の近傍に位置している。
【0096】
タグID「2222222222」は、アンテナ11で閾値S以上読み取られており、アンテナ21では、閾値S以上読み取られていない。したがって、タグID「2222222222」の無線タグ2は、アンテナ11の近傍に位置している。
【0097】
タグID「3333333333」は、アンテナ11で閾値S以上読み取られた後、読み取られなくなった。したがって、タグID「3333333333」の無線タグ2は、第1の領域100に存在する。
【0098】
タグID「4444444444」は、アンテナ11とアンテナ21の双方で閾値S以上読み取られており、RSSIの平均値はアンテナ21の方が高い。したがって、タグID「4444444444」の無線タグ2は、アンテナ21の近傍に位置している。
【0099】
タグID「5555555555」は、アンテナ11とアンテナ21の双方で閾値S以上読み取られた後、閾値S以上読み取られていない。そして、アンテナ11とアンテナ21の双方で読み取られた際には、アンテナ21の方がRSSIの平均値が高い。したがって、タグID「3333333333」の無線タグ2は、第2の領域200に存在する。
【0100】
前記実施形態では、図8のACT47において、平均値Axが平均値Ayよりも高い場合に未処理レコードXを選択し、平均値Ayが平均値Ax以上の場合に未処理レコードYを選択した。他の実施形態としては、平均値Axが平均値Ay以上の場合に未処理レコードXを選択し、平均値Ayが平均値Axよりも高い場合に未処理レコードYを選択してもよい。あるいは、平均値Axが平均値Ayよりも高い場合に未処理レコードXを選択し、平均値Ayが平均値Axよりも高い場合に未処理レコードYを選択して、平均値Axと平均値Ayとが等しい場合には、どちらも選択しないということでもよい。
【0101】
前記実施形態では、通路300に沿って配置されるアンテナ11,21の数を2つとした。アンテナの数は2つに限定されない。3つ以上のアンテナが通路300に沿って配置されてもよい。また、通路300の両側に複数のアンテナを配置してもよい。要は、通路300の長さ、形状などに応じて適切に複数のアンテナを配置すればよい。
【0102】
前記実施形態では、移動監視装置30と商品管理装置40を個別のコンピュータ装置とした。移動監視装置30と商品管理装置40とは、1つのコンピュータ装置で構成することも可能である。
【0103】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、発明の範囲に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]無線タグが往来する通路に沿って配置された複数の無線タグ通信用のアンテナと、単位時間毎に、前記複数のアンテナでそれぞれ前記無線タグのデータを読み取った読取回数をアンテナ別に取得する回数取得手段と、前記単位時間毎に、前記複数のアンテナでそれぞれ前記無線タグのデータを読み取ったときの受信信号強度をアンテナ別に取得する強度取得手段と、前記単位時間毎に取得した前記アンテナ別の前記読取回数と前記受信信号強度とに基づいて、前記通路を往来する前記無線タグの移動方向を特定する方向特定手段と、を具備する無線タグ読取装置。
[2]前記方向特定手段は、前記単位時間において、前記読取回数が所定回数以上のアンテナが1つしかない場合には当該アンテナの近傍を前記無線タグが通過しており、前記読取回数が所定回数以上のアンテナが複数ある場合には各々のアンテナの前記受信信号強度を比較して最も高いアンテナの近傍を前記無線タグが通過しているとみなして、前記無線タグの移動方向を特定する、付記[1]記載の無線タグ読取装置。
[3]前記単位時間において、前記読取回数が所定回数以上のアンテナが複数ある場合に比較される各々のアンテナの前記受信信号強度は、前記単位時間内に前記無線タグのデータを読み取ったときの平均値である、付記[2]記載の無線タグ読取装置。
[4]前記方向特定手段により特定される前記無線タグの移動方向から、前記通路を移動した前記無線タグの存在領域を特定する領域特定手段、をさらに具備する付記[1]記載の無線タグ読取装置。
[5]前記領域特定手段は、少なくとも1つのアンテナで読み取れていた無線タグのデータが読み取れなくなったとき、前記方向特定手段により最後に特定された当該無線タグの移動方向から前記存在領域を特定する、付記[4]記載の無線タグ読取装置。
[6]無線タグが往来する通路に沿って複数の無線タグ通信用のアンテナを配置した無線タグ読取装置のコンピュータを、単位時間毎に、前記複数のアンテナでそれぞれ前記無線タグのデータを読み取った読取回数をアンテナ別に取得する回数取得手段、前記単位時間毎に、前記複数のアンテナでそれぞれ前記無線タグのデータを読み取ったときの受信信号強度をアンテナ別に取得する強度取得手段、及び、前記単位時間毎に取得した前記アンテナ別の前記読取回数と前記受信信号強度とに基づいて、前記通路を往来する前記無線タグの移動方向を特定する方向特定手段、として機能させるための制御プログラム。
【符号の説明】
【0104】
1…無線タグ読取装置、2…無線タグ、3…商品、10,20…リーダ・ライタ、11,21…アンテナ、12,22…RSSI測定部、30…移動監視装置、31…プロセッサ、32…メインメモリ、33…補助記憶デバイス、34…時計、35…通信インターフェース、36…表示デバイス、37…入力デバイス、38,39…デバイスインターフェース、40…商品管理装置、41…タグデータベース、100…第1の領域、200…第2の領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10