(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】高所作業車の作動制御装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
B66F9/24 S
(21)【出願番号】P 2020167524
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 拓也
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099278(JP,A)
【文献】特開平03-297799(JP,A)
【文献】特開昭59-118700(JP,A)
【文献】特開平11-268899(JP,A)
【文献】特開平01-150696(JP,A)
【文献】米国特許第04833615(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-2152456(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体上に旋回、起伏及び伸縮作動自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端に設けられた作業台と、
前記ブームの作動を操作する操作装置と、
前記操作装置からの操作信号に基づいて前記ブームの旋回、起伏および伸縮作動を制御する作動制御装置と、
前記作業台の許容作業範囲を指定する指定装置と、
前記指定装置によって指定された許容作業範囲を表示する表示装置と、
外部からの操作に応じて前記表示装置に表示された許容作業範囲を変更し、前記指定装置によって指定された許容作業範囲を変更後の許容作業範囲に更新する更新装置と、
前記作業台が、前
記許容作業範囲を超えないように前記作動制御装置による前記ブームの作動を規制する作動規制装置と
を備えることを特徴とする高所作業車の作動制御装置。
【請求項2】
前記指定装置は、地上から前記作業台までの高さ、及び、前記ブームの旋回中心軸から前記作業台までの旋回半径となる水平距離によって前記許容作業範囲を指定することが可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の作動制御装置。
【請求項3】
前記許容作業範囲を設定する許容作業範囲設定スイッチと、
前記作業台の現在位置における、地上から前記作業台までの高さ、及び、前記ブームの旋回中心軸から前記作業台までの旋回半径となる水平距離を検出する作業台位置検出装置と、を有し、
前記指定装置は、前記許容作業範囲設定スイッチが操作されたときに前記作業台位置検出装置が検出した、地上から前記作業台までの高さ、及び、前記ブームの旋回中心軸から前記作業台までの旋回半径となる水平距離によって前記許容作業範囲を指定することが可能である
ことを特徴とする請求項2に記載の高所作業車の作動制御装置。
【請求項4】
前記ブームの作動規制の解除を指示する規制解除スイッチを備え、
前記規制解除スイッチにより解除指示がある間においては前記作動規制装置による前記ブームの作動規制を解除し、前記規制解除スイッチにより解除指示がないときには前記作動規制装置による前記ブームの作動規制を行わせる
ことを特徴とする請求項1~3のうちいずれかに記載の高所作業車の作動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車が備えるブームの作動を制御する高所作業車の作動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電設作業や建設作業等の高所作業を行う際に用いられる高所作業車は、一般に、走行自在な車体上に旋回動自在な旋回台と、この旋回台に対して起伏動、伸縮動などが自在なブームと、ブームの先端部に首振り自在に取り付けられ、作業者が搭乗する作業台とを備えている。また、作業者が旋回台やブームなどの動きを操作するための操作装置と、旋回台やブームなどの作動制御を行う作業制御装置を設け、操作装置から出力される各種操作信号に応じて、作業制御装置が旋回台やブームなどを作動させるための各種アクチュエータを作動制御することによって、旋回台の旋回作動、ブームの起伏作動及び伸縮作動、作業台の首振り作動などを制御する。
【0003】
上述した高所作業車の中には、ブームの先端部又は作業台の位置を検出して、予め定めた許容作業範囲と比較し、ブームの先端部又は作業台の位置がその許容作業範囲を超えるようなブームの作動を規制する安全装置を備えたものがある。例えば、特許文献1に記載された高所作業車は、操作レバーの操作量に応じた操作信号に従ってブームや旋回体を作動させるコントローラに、ブームの旋回姿勢ごとの許容作業範囲データを記憶した記憶部を設け、ブームの先端部の現在位置と、ブームの旋回姿勢に応じた許容作業範囲データとを比較して、ブームの先端部が許容作業範囲の限界に達していると判断したときは、許容作業範囲を超える操作信号を無視するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、地上から上方の作業対象物までの高さは、電設作業や建設作業等の作業現場に応じて異なることが多いため、前述した許容作業範囲も作業現場ごとに異なってくる場合が多い。しかしながら、従来の許容作業範囲は、車両の転倒防止のために予め設定されたものであるため、実際の作業現場における許容作業範囲には適さない場合が起こり得た。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、実際の作業現場において適正な許容作業範囲を設定することができる高所作業車の作動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る高所作業車の作動制御装置は、車体(例えば、実施形態における車体3)と、前記車体上に旋回、起伏及び伸縮作動自在に設けられたブーム(例えば、実施形態におけるブーム5)と、前記ブームの先端に設けられた作業台(例えば、実施形態における作業台8)と、前記ブームの作動を操作する操作装置(例えば、実施形態における上部操作装置9)と、前記操作装置からの操作信号に基づいて前記ブームの旋回、起伏および伸縮作動を制御する作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントロールユニット30)と、前記作業台の許容作業範囲を指定する指定装置(例えば、実施形態における規制範囲設定画面、規制位置設定スイッチ91)と、前記指定装置によって指定された許容作業範囲を表示する表示装置と、外部からの操作に応じて前記表示装置に表示された許容作業範囲を変更し、前記指定装置によって指定された許容作業範囲を変更後の許容作業範囲に更新する更新装置と、前記作業台が、前記許容作業範囲を超えないように前記作動制御装置による前記ブームの作動を規制する作動規制装置(例えば、実施形態におけるコントロールユニット30及び作業範囲メモリ31)とを備える。
【0008】
上述の高所作業車の作動制御装置において、前記指定装置は、地上から前記作業台までの高さ(例えば、実施形態における高さH)、及び、前記ブームの旋回中心軸から前記作業台までの旋回半径となる水平距離(例えば、実施形態における作業半径R)によって前記許容作業範囲を指定することが可能であることが好ましい。
【0009】
上述の高所作業車の作動制御装置において、前記許容作業範囲を設定する許容作業範囲設定スイッチ(例えば、実施形態における規制位置設定スイッチ91)と、前記作業台の現在位置における、地上から前記作業台までの高さ、及び、前記ブームの旋回中心軸から前記作業台までの旋回半径となる水平距離を検出する作業台位置検出装置(例えば、実施形態における起伏角度検出器、伸長量検出器及びコントロールユニット30)と、を有し、前記指定装置は、前記許容作業範囲設定スイッチが操作されたときに前記作業台位置検出装置が検出した、地上から前記作業台までの高さ、及び、前記ブームの旋回中心軸から前記作業台までの旋回半径となる水平距離によって前記許容作業範囲を指定することが可能であることが好ましい。
【0010】
上述の高所作業車の作動制御装置において、前記ブームの作動規制の解除を指示する規制解除スイッチ(例えば、実施形態における規制解除スイッチ92)を備え、前記規制解除スイッチにより解除指示がある間においては前記作動規制装置による前記ブームの作動規制を解除し、前記規制解除スイッチにより解除指示がないときには前記作動規制装置による前記ブームの作動規制を行わせることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る高所作業車の作動制御装置によれば、指定装置によって作業台の許容作業範囲が指定されると、作動規制装置によって、操作装置からの操作信号に基づく作動制御装置によるブームの作動が、指定された許容作業範囲を超えないように規制される。これにより、実際の作業現場の状況に応じて、その作業現場に適した許容作業範囲を作業者が指定することができる。
【0012】
上述の高所作業車の作動制御装置において、前記指定装置は、地上から前記作業台までの高さ、及び、前記ブームの旋回中心軸から前記作業台までの旋回半径となる水平距離によって前記許容作業範囲を指定可能であることが好ましい。これにより、高さや水平距離によって許容作業範囲を指定することができるので、例えば作業者が実際に作業現場を目視して判断した許容作業範囲をブームの起伏角度や伸縮量に置き換える必要が無く、許容作業範囲の指定が容易になる。
【0013】
上述の高所作業車の作動制御装置において、前記許容作業範囲を設定する許容作業範囲設定スイッチと、前記作業台の現在位置における、地上から前記作業台までの高さ、及び、前記ブームの旋回中心軸から前記作業台までの旋回半径となる水平距離を検出する作業台位置検出装置と、を有し、前記指定装置は、前記許容作業範囲設定スイッチが操作されたときに前記作業台位置検出装置が検出した、地上から前記作業台までの高さ、及び、前記ブームの旋回中心軸から前記作業台までの旋回半径となる水平距離によって前記許容作業範囲を指定可能とすることが好ましい。これにより、安全に作業を行うことができる限界の位置まで作業台を移動させ、その位置を許容作業範囲に指定することができるため、より確実に許容作業範囲に指定することができる。
【0014】
上述の高所作業車の作動制御装置において、前記ブームの作動規制の解除を指示する規
制解除スイッチを備え、前記規制解除スイッチにより解除指示がある間においては前記作動規制装置による前記ブームの作動規制を解除し、前記規制解除スイッチにより解除指示がないときには前記作動規制装置による前記ブームの作動規制を行わせることが好ましい。これにより、例えば、指定した許容作業範囲では目的とする位置に作業台が届かない場合などに、目的の位置まで作業台を寄せることができるため、作業現場の状況に応じて柔軟な作業台の移動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る高所作業車の作動制御装置を備える高所作業車の外観を示す上面図及び側面図である。
【
図2】同高所作業車の作業台に設けられた上部操作装置の外観を示す図である。
【
図3】同高所作業車が備える下部操作装置のタッチパネルに表示される規制範囲設定画面を示す図である。
【
図4】本発明に係る高所作業車の作動制御装置の一実施形態に関する機能ブロック図である。
【
図5】同作動制御装置による許容作業範囲の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る作動制御装置を備えた高所作業車の全体構成について
図1を参照して説明する。ここで、
図1(a)は高所作業車の上面図を示しており、
図1(b)は高所作業車の左側面図を示している。高所作業車1は、運転キャビン2を有し走行自在に構成された車体3の車体上に、旋回モータ41の作動により車体3に対して水平旋回自在に構成された旋回台4が配設されており、この旋回台4の上部には、起伏シリンダ42の伸縮作動により車体3に対して垂直面内に起伏動自在にブーム5が枢着されている。
【0017】
ブーム5は旋回台4の上端部に枢着された基端ブーム5aと、基端ブーム5a内に摺動自在に順次テレスコープ状に嵌挿された中間ブーム5b及び先端ブーム5cとからなり、ブーム5の内部に配設された伸縮シリンダ43を伸縮作動させることにより伸縮動自在に取り付けられている。先端ブーム5cの先端部には図示しないレベリングシリンダの作動によりブーム5の起伏角度によらず常時垂直を維持する垂直ポスト6が配設され、さらに、この垂直ポスト6に配設された首振りモータ44の作動により垂直ポスト6廻りに水平旋回(首振りという)自在に作業台(バケットとも称する)8が取り付けられている。車体3の前後左右には、ブーム5を起伏、伸長等させたときに車体3に作用して車両を転倒させようとする転倒モーメントに抗して車体3を安定支持するため、ジャッキの張り出し操作に基づいて張り出され車体3を持ち上げ支持するジャッキ14,14,…が配設されている。
【0018】
作業台8には、ブーム5の作動操作を行うための上部操作装置9が配設されている。上部操作装置9には旋回台4を含むブーム5の作動操作を行う操作レバーが配設されており、作業台8に搭乗する作業者は上部操作装置9における操作レバーを操作することにより旋回台4を旋回作動させ、ブーム5を起伏作動、伸縮作動させ、また作業台8を首振り作動等させることができるように構成されている。上部操作装置9には、
図2(a)に示すように、作業台8の許容作業範囲を設定するための規制位置設定スイッチ91と、必要に応じて許容作業範囲を超えた作業台8の移動を可能とする規制解除スイッチ92とが設けられている。さらに、規制解除スイッチ92により、許容作業範囲を超えて作業台8を移動している間、警報音を出力するためのスピーカ93aが設けられている。規制位置設定スイッチ91及び規制解除スイッチ92は、押しボタン式のスイッチであり、ボタンがスイッチ内に設けられたバネの力に抗して所定の位置まで押し込まれている間はオンになり、押し込んだボタンを離すとバネの力によってボタンが元の位置に戻ってオフになる。な
お、規制解除スイッチ92については、押しボタン式のスイッチの代わりに、操作を止めると自動的に中立位置に戻るトグルスイッチを用いてもよい。
【0019】
規制位置設定スイッチ91は、
図2(b)に示すように規制高さ設定スイッチ91a及び規制作業半径設定スイッチ91bによって構成されている。規制高さ設定スイッチ91aは、作業台8が移動可能な地上高(具体的には、地面から作業台8の下面までの距離)の限界位置(「規制高さ」とも称する)を設定するためのスイッチであり、作業者などによって規制高さ設定スイッチ91aがオン操作されると、そのときの作業台8の地上高が、規制高さとして設定される。また、規制作業半径設定スイッチ91bは、作業台8が移動可能な作業半径(具体的には、旋回台4の旋回中心軸から作業台8までの水平距離)の限界位置(「規制作業半径」とも称する)を設定するためのスイッチであり、作業者などによって規制作業半径設定スイッチ91bがオン操作されると、そのときの作業台8の位置(より正確には、旋回台4の旋回中心軸からの水平距離)が規制作業半径として設定される。許容作業範囲の設定は、規制高さ及び規制作業半径のいずれか一方のみを設定することが可能であり、また、規制高さ及び規制作業半径の双方を設定することも可能である。
【0020】
規制解除スイッチ92は、作業者によってオン操作がされている間は、上部操作装置9に設けられた操作レバーの操作に応じて、設定された許容作業範囲を超える作業台8の移動が可能となる。ここで、規制解除スイッチ92のオン操作をしながら許容作業範囲を超え、かつ、許容作業範囲から離れる方向へ作業台8を移動させている間は、スピーカ93から警報音が出力される。許容作業範囲を超えて作業台8を移動させているときに規制解除スイッチ92をオフにすると、作業台8の移動が停止するが警報音は継続して出力される。また、規制解除スイッチ92をオフにしたままの状態で操作レバーを操作した場合、作業台8を許容作業範囲から離れる方向には移動させることはできないが、許容作業範囲へ近づく方向には作業台8を移動させることができる。
【0021】
図1に戻り、車体3の後端部には、下部操作装置10が設けられている。下部操作装置10は、上部操作装置9と同様に、旋回台4を含むブーム5の作動操作を行う操作レバーが配設されており、この操作レバーを操作することによって、地上からも旋回台4の旋回作動、ブーム5の起伏作動及び伸縮作動、作業台8の首振り作動等の制御が可能となる。また、下部操作装置10にはタッチパネル101が設けられており、
図3に示すような規制範囲設定画面が表示可能に構成されている。この図に示す規制範囲設定画面では、規制高さ表示領域hと、規制作業半径表示領域rとが設けられている。他の画面から
図3に示す規制範囲設定画面に切り替わると、規制高さ表示領域hには現在設定されている規制高さの値(単位はメートル)が表示され、規制作業半径表示領域rには現在設定されている規制作業半径の値(単位はメートル)が表示される。なお、タッチパネルの代わりに、モニタと、表示画面の切り替えや規制高さ表示領域h及び規制作業半径表示領域rに表示されている数値の増減などを可能にするスイッチとを別々に設けてもよい。
【0022】
規制高さ表示領域h及び規制作業半径表示領域rの各左側には、各表示領域に表示されている値を変更するためのマーク「▲」及び「▼」が表示されている。例えば、規制高さ表示領域hの左側に表示されている「▲」のマークをタップしたときは、タップするごとに規制高さ表示領域hに表示されている値が1m単位で増加していく。また、「▼」のマークをタップすると、タップするごとに規制高さ表示領域hに表示されている値が1m単位で減少する。同様にして、規制作業半径表示領域rに表示されている数値も「▲」及び「▼」マークをタップすることで変更することができる。そして、規制範囲設定画面から他の画面に切り替わると、そのときに各表示領域に表示されていた値が、設定された規制高さ及び規制作業半径として記憶される。また、規制高さ表示領域h又は規制作業半径表示領域rが所定値(例えば「0」)に設定された場合は、その表示領域に対応する規定値
が設定されなかったものとして扱うように構成されている。
【0023】
次に、
図4を参照して本実施形態の作動制御装置の概要構成について説明する。この図に示すコントロールユニット30は、上部操作装置9又は下部操作装置10に設けられた操作レバーの操作量に基づいて、前述した旋回モータ41、起伏シリンダ42、伸縮シリンダ43及び首振りモータ44などの各種アクチュエータの作動を制御する。これにより、作業者は、上部操作装置9又は下部操作装置10に設けられた操作レバーを操作することで、作業台8を作業対象となる場所まで移動させることができる。本実施形態では、上述した各種アクチュエータは油圧で作動しており、油圧ユニット40内に、上述した各種アクチュエータに対応して電磁比例制御弁を配設し、コントロールユニット30によって各種油圧アクチュエータに対応する電磁比例制御弁のバルブ開度を制御することで、各油圧アクチュエータ41~44の作動を制御している。
【0024】
コントロールユニット30には、ブーム5や旋回台4に取り付けられたブーム位置検出装置20からブーム姿勢の検出値も入力されている。ブーム位置検出装置20は、車体3に対する旋回台4の旋回角度位置を検出する旋回角度検出器21、ブーム5の起伏角度を検出する起伏角度検出器22、ブーム5の伸長量を検出する伸長量検出器23などを有して構成されており、これらの各検出器から検出データが出力され、コントロールユニット30へ入力される。
【0025】
コントロールユニット30は、作業者によって設定された規制高さ及び規制作業半径を記憶する作業範囲メモリ31を有している。作業範囲メモリ31に記憶される規制高さ及び規制作業半径は、
図2(b)に示した規制高さ設定スイッチ91a及び規制作業半径設定スイッチ91bによって、又は、
図3に示した規制範囲設定画面によって設定されたものであり、これらの方法によって最後に設定された規制高さ及び規制作業半径の値(最新の規制高さ及び規制作業半径の設定値)が記憶される。本実施形態においては、規制高さ及び規制作業半径を、長さを示す数値で記憶している。したがって、作業者が規制高さ設定スイッチ91a又は規制作業半径設定スイッチ91bを操作することで規制高さ及び規制作業半径を設定した場合、コントロールユニット30は、その時点における起伏角度検出器22及び伸長量検出器23からの検出データ(ブーム5の起伏角度及びブーム5の伸長量に相当する)などに基づいて、作業台8の地上高又は旋回台4の旋回中心軸からの水平距離を算出し、作業範囲メモリ31に記憶する。
【0026】
コントロールユニット30は、ブーム位置検出装置20の各検出器21~23から入力される旋回台4の旋回角度、ブーム5の起伏角度、ブーム5の伸長量などに基づいて作業台8の地上高(地面から作業台8の下面までの距離)及び作業半径(旋回台4の旋回中心軸から作業台8までの水平距離)を算出し、算出した作業台8の地上高及び作業半径と、作業範囲メモリ31内に記憶されている規制高さ及び規制作業半径とを比較する。そして、算出された作業台8の地上高又は作業半径が、作業範囲メモリ31内に記憶されている規制高さ又は規制作業半径に到達したと判断した場合は、作業台8が規制高さ又は規制作業半径を超える方向への移動を規制する。例えば、作業台8が規制高さに到達した場合、コントロールユニット30は、その作業台8の位置から、ブーム5の起伏角度が大きくなるような起伏シリンダ42の作動、又は、ブーム5の伸長量が長くなるような伸縮シリンダ43の作動を規制する。
【0027】
次に、作業者によって規制高さ及び規制作業半径が設定された場合において、本実施形態の作動制御装置によって作業台8の移動が可能となる許容作業範囲について、
図5に示す模式図を参照して説明する。この図に示す高所作業車1は、ブーム5の最大伸長量がL
MAX、最小伸長量がL
MINであり、ブーム5の最大仰角がθ
MAX、最大俯角がθ
MINとなっている。また、旋回台4の旋回中心軸Cに対する最大作業半径はR
MAXになっている。ここ
で、旋回中心軸Cは地面に対して垂直になっているものとする。また、最大仰角とは、ブーム5が水平になっている状態から最大限に起立した状態までの角度をいう。また、最大俯角とは、ブーム5が水平になっている状態から最大限に伏せた状態までの角度をいう。また、最大作業半径R
MAXは、ブーム5の起伏角度が水平になっているときの最大伸長量
L
MAXと等しい長さとなる。
【0028】
図5に示す模式図においては、作業可能な地上高の上限がH
LIMとなる作業現場におい
て、作業台8の規制高さがH、規制作業半径がRに設定された場合の許容作業範囲を右下がりのハッチングで示している。以下では、右下がりのハッチングで示す許容作業範囲を第1の許容作業範囲と称する。また、作業台8の規制高さがHに設定され、規制作業半径が設定されなかった場合の許容作業範囲(より正確には、上述した第1の許容作業範囲からさらに拡張される作業範囲)を右上がりのハッチングで示している。以下では、第1の許容作業範囲と右上がりのハッチングで示す許容作業範囲とを合わせた許容作業範囲を第2の許容作業範囲と称する。
【0029】
図5に示すように、作業台8が地上高H、作業半径Rに位置しているときに、作業台8に搭乗している作業者が、規制高さ設定スイッチ91a及び規制作業半径設定スイッチ91b(
図2参照)の双方をオン操作すると、作業台8の許容作業範囲は、第1の許容作業範囲となる。なお、下部操作装置10のタッチパネル101に表示された規制範囲設定画面(
図3参照)において、規制高さをH、規制作業半径をRに設定した場合も、作業台8の許容作業範囲が第1の許容作業範囲となる。
【0030】
第1の許容作業範囲が設定されている状態で、作業台8が
図5の実線で示す位置にあるときに、作業者がブーム5の仰角又は伸長量を増加させるように操作レバーを操作したとする。この場合、作業台8の地上高が第1の許容作業範囲を超えることになるので、コントロールユニット30は、起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43を作動させず、作業台8を
図5の実線で示す位置から移動させないように制御する。また、作業者がブーム5の仰角のみを減少させるように操作レバーを操作した場合は、作業台8の作業半径が第1の許容作業範囲を超えることになるので、コントロールユニット30は、起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43を作動させず、作業台8を
図5の実線で示す位置から移動させないように制御する。
【0031】
なお、作業者が、作業台8を
図5の実線で示す位置からブーム5の仰角を増加させるように操作レバーを操作した場合、コントロールユニット30は、ブーム5の仰角が増加するように起伏シリンダ42を作動させつつ、ブーム5の伸長量が減少するように伸縮シリンダ43を作動させて、
図5において破線の矢印で示すように、規制高さHを維持した状態で、作業台8が旋回中心軸Cの方向へ水平移動するように制御してもよい。また、作業者が、作業台8を
図5の実線で示す位置からブーム5の仰角を減少させるように操作レバーを操作した場合、コントロールユニット30は、ブーム5の仰角が減少するように起伏シリンダ42を作動させつつ、ブーム5の伸長量が減少するように伸縮シリンダ43を作動させて、
図5において一点鎖線の矢印で示すように、作業半径Rを維持した状態で、作業台8が下方へ垂直移動するように制御してもよい。
【0032】
作業者が
図2(a)に示した規制解除スイッチ92をオン操作しながら操作レバーを操作した場合は、作業台8が第1の許容作業範囲を超えて移動することが可能となる。例えば、作業台8が
図5の実線で示す位置にあるときに、作業者が制解除スイッチ92をオン操作しながら、ブーム5の仰角又は伸長量を増加させるように操作レバーを操作した場合、コントロールユニット30は、その操作に応じてブーム5の仰角又は伸長量が増加するように、起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43を作動させる。また、作業台8が第1の許容作業範囲を超えて移動している間、コントロールユニット30は、警報装置93に警
報音を発生させて、その警報音がスピーカ93aから出力されるように制御する。なお、コントロールユニット30は、操作レバーの操作量が同一である場合、第1の許容作業範囲を超えて移動しているときの作業台8の移動速度が、第1の許容作業範囲内を移動するときの移動速度よりも遅くなるように、起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43の作動を制御してもよい。
【0033】
作業台8が第1の許容作業範囲を超えて移動しているときに、作業者が規制解除スイッチ92をオフにした場合、コントロールユニット30は、操作レバーが操作されている状態であっても、起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43の作動を停止して、作業台8の移動を停止させる。ただし、警報音は継続して発生するように警報装置93を制御する。また、作業者が作業台8を第1の許容作業範囲内に戻す方向に操作レバーを操作(例えば、ブーム5の仰角を減少させる操作や、ブーム5の伸長量を減少させる操作など)した場合は、規制解除スイッチ92がオフになっている状態でも、コントロールユニット30は、操作レバーの操作に応じて起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43を作動させるように構成してもよい。また、実際に作業台8が第1の許容作業範囲内に戻るまで、コントロールユニット30は、継続して警報音を発生し続けるように警報装置93を制御してもよい。
【0034】
次に、
図5において、作業台8が地上高H、作業半径Rに位置しているときに、作業台8に搭乗している作業者が、規制高さ設定スイッチ91aのみをオン操作した場合は、作業台8の許容作業範囲は、第2の許容作業範囲となる。なお、下部操作装置10のタッチパネル101に表示された規制範囲設定画面(
図3参照)において、規制高さをHに設定し、規制作業半径を所定値(例えば「0」)に設定した場合も、作業台8の許容作業範囲が第2の許容作業範囲となる。
【0035】
そして、作業台8が
図5の実線で示す位置から、作業者がブーム5の仰角又は伸長量を増加させるように操作レバーを操作したとする。この場合、作業台8の地上高が第2の許容作業範囲を超えることになるので、コントロールユニット30は、起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43を作動させず、作業台8を
図5の実線で示す位置から移動させないように制御する。これに対して、作業者がブーム5の仰角を減少させるように操作レバーを操作した場合、作業台8は第2の許容作業範囲内を移動することになるので、コントロールユニット30は、操作レバーの操作量に応じてブーム5の仰角が減少するように起伏シリンダ42を作動させる。また、このとき作業台8が第2の許容作業範囲を超えない範囲でブーム5の伸長量を増加させることも可能となる。
【0036】
なお、第2の許容作業範囲を超えて作業台8を移動させるとき、及び、第2の許容作業範囲外から作業台8を第2の許容作業範囲内に戻すときの各種アクチュエータの制御については、第1の許容作業範囲の場合と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0037】
上述した実施形態では、下部操作装置10に設けたタッチパネル101に規制範囲設定画面(
図3参照)を表示し、当該画面において規制高さ及び規制作業半径を数値によって設定可能としていたが、上部操作装置9にもタッチパネルを設けて、上述した規制範囲設定画面と同様の画面を表示し、作業台8に搭乗した作業者が、規制高さ及び規制作業半径を数値によって設定できるように構成してもよい。また、上述した実施形態においては、許容作業範囲を超えて作業台8を移動させる場合、規制解除スイッチ92をオン操作し続ける必要があった(すなわち、規制解除スイッチ92がオン操作されている間だけ規制解除状態になっていた)が、規制解除スイッチ92を一度オン操作すれば規制解除状態となり、規制解除スイッチ92がオフになった後も許容作業範囲を超える作業台8の移動を自由に行えるようにしてもよい。
【0038】
以上では、作業台が、設定した許容作業範囲に達したときに、許容作業範囲を越えない
ようにブームの作動を規制していたが、作業台が許容作業範囲を越えたときに、ブームの作動速度をそれまでの作動速度より遅くなるように減速させるようにしてもよい。また、以上では高所作業車の一例として、タイヤ車輪を有して走行移動自在な高所作業車を例に説明したが、本発明はこのような車両に限定されるものではなく、例えば、鉄輪を有して軌道上を走行自在な高所作業車や、クローラ装置を有して走行動自在に構成された高所作業車においても同様に構成し同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 高所作業車
2 運転キャビン
3 車体
4 旋回台
5 ブーム
6 垂直ポスト
8 作業台
9 上部操作装置
10 下部操作装置
20 ブーム位置検出装置
30 コントロールユニット
31 作業範囲メモリ
40 油圧ユニット
91a 規制高さ設定スイッチ
91b 規制作業半径設定スイッチ
92 規制解除スイッチ
93 警報装置
101 タッチパネル