(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】半導体発光装置及び半導体発光素子の支持基板
(51)【国際特許分類】
H10H 20/857 20250101AFI20250120BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20250120BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L23/12 F
H01L23/12 Q
H01L23/14 S
(21)【出願番号】P 2020205024
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159628
【氏名又は名称】吉田 雅比呂
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】河野 圭真
(72)【発明者】
【氏名】市川 幸治
(72)【発明者】
【氏名】神原 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 直史
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-278315(JP,A)
【文献】特開2006-190951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0141286(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0145225(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0256735(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0026071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1の半導体層、発光層及び第
2導電型の第2の半導体層が積層され、前記第1の半導体層側の面に前記第1の半導体層に接続された少なくとも1つの第1素子電極及び前記第2の半導体層に接続された少なくとも1つの第2素子電極が設けられた半導体発光積層体と、
上層半導体層、下層半導体層、及び前記上層半導体層と前記下層半導体層との間に設けられた層間絶縁膜からなるSOI基板を有し、
前記SOI基板は、
前記上層半導体層上に絶縁膜を介して設けられ、前記
半導体発光積層体の前記少なくとも1つの第1素子電極に対応する少なくとも1つの第1配線電極と、前記上層半導体層上に前記上層半導体層に接続されて設けられ、前記半導体発光積層体の前記少なくとも1つの第2素子電極に対応する少なくとも1つの第2配線電極と、
前記下層半導体層上に設けられ、前記SOI基板を貫通する第1ビア電極によって前記少なくとも1つの第1配線電極に接続された第1実装電極と、
前記下層半導体層上に絶縁膜を介して設けられ、前記下層半導体層及び前記層間絶縁膜を貫通して前記上層半導体層に達する第2ビア電極によって前記上層半導体層に接続された第2実装電極と、を有し、
前記半導体発光積層体の前記少なくとも1つの第1素子電極及び前記少なくとも1つの第2素子電極は、それぞれ前記SOI基板の前記少なくとも1つの第1配線電極及び前記少なくとも1つの第2配線電極に接合されている、半導体発光装置。
【請求項2】
前記上層半導体層及び前記下層半導体層はn-Si層であり、前記下層半導体層は前記第1実装電極に接続され、前記下層半導体層表面に設けられ、前記第2実装電極に接続され、前記下層半導体層にpn接合を形成する不純物拡散領域を有する、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第1導電型及び前記第2導電型はそれぞれp型及びn型であり、前記少なくとも1つの第2素子電極は前記第1の半導体層の表面から前記第2の半導体層に達するビアから露出する前記第2の半導体層上に設けられている、請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記第1導電型及び前記第2導電型はそれぞれp型及びn型であり、前記少なくとも1つの第1素子電極は、透光性導電膜及び反射膜を有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記半導体発光積層体は複数の前記第2素子電極を有し、前記複数の前記第2素子電極は前記第1の半導体層側の面上において対称位置に配されている、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記第1素子電極は、前記少なくとも1つの第2配線電極の領域を除いて、前記第1の半導体層の全面に亘る全面電極として形成されている、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記上層半導体層上に設けられ、前記少なくとも1つの第2配線電極に接続された金属電極層を有する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記金属電極層は、前記上層半導体層の全面に亘って形成されている、請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
第1及び第2の導電型をそれぞれ有する第1及び第2の半導体層、及び前記第1及び第2の半導体層間に設けられた発光層を有し、一方の面側に前記第1の半導体層に接続された少なくとも1つの第1電極及び前記第2の半導体層に接続された少なくとも1つの第2電極が設けられた半導体発光素子を搭載するための支持基板であって、
上層半導体層、下層半導体層、及び前記上層半導体層と前記下層半導体層との間に設けられた層間絶縁膜からなるSOI基板を有し、
前記SOI基板は、
前記上層半導体層上に絶縁膜を介して設けられ、前記半導体発光素子の前記少なくとも1つの第1電極に対応する少なくとも1つの第1配線電極と、前記上層半導体層上に前記上層半導体層に接続されて設けられ、前記
半導体発光素子の前記少なくとも1つの第2電極に対応する少なくとも1つの第2配線電極と、
前記下層半導体層上に設けられ、前記SOI基板を貫通する第1ビア電極によって前記少なくとも1つの第1配線電極に接続された第1実装電極と、
前記下層半導体層上に絶縁膜を介して設けられ、前記下層半導体層及び前記層間絶縁膜を貫通して前記上層半導体層に達する第2ビア電極によって前記上層半導体層に接続された第2実装電極と、を有する支持基板。
【請求項10】
前記上層半導体層及び前記下層半導体層はn-Si層であり、前記下層半導体層は前記第1実装電極に接続され、前記下層半導体層表面に設けられ、前記第2実装電極に接続され、前記下層半導体層にpn接合を形成する不純物拡散領域を有する、請求項9に記載の支持基板。
【請求項11】
前記上層半導体層上に設けられ、前記少なくとも1つの第2配線電極に接続された金属電極層を有する、請求項9又は10に記載の支持基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置及び半導体発光素子の支持基板、特に発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子を有する半導体発光装置及び半導体発光素子の支持基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力化や配光制御のため、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子を複数デバイス内に配置して用いることが行われている。
【0003】
例えば、自動車用ヘッドライトにおいて、走行環境に合わせて配光を制御する配光可変型のヘッドランプ(ADB: Adaptive Driving Beam)が知られている。また、高出力の照明用LEDパッケージや、LEDを高密度に配置した情報通信機器用のLEDパッケージなどが知られている。
【0004】
しかし、発光効率が高く、均一な発光が得られる高出力半導体発光素子が一層求められている。また、発光素子の性能低下を防ぎつつ、保護素子等の付加機能を備え、素子破壊が生じ難い半導体発光装置が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、裏面に保護素子を形成した発光素子を樹脂製のキャリアに搭載した備えた半導体発光装置が開示されている。また、特許文献2には、保護素子を発光素子の実装基板に設けた半導体発光装置が開示されている。特許文献3には、保護素子を半導体基板内に設けた半導体発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6571805号公報
【文献】国際公開WO2013/187318号公報
【文献】米国特許US 2013/0020598 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、発光効率が高く、均一な発光が得られる高出力半導体発光装置を提供することを目的とする。また、発光効率が高く、均一な発光が得られるとともに、保護素子によって素子破壊が生じ難い半導体発光装置を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、発光効率が高く、均一な発光が得られるとともに、保護素子によって素子破壊が生じ難い高出力半導体発光素子に用いられる支持基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1実施形態による半導体発光装置は、
第1導電型の第1の半導体層、発光層及び第2の導電型の第2の半導体層が積層され、前記第1の半導体層側の面に前記第1の半導体層に接続された少なくとも1つの第1素子電極及び前記第2の半導体層に接続された少なくとも1つの第2素子電極が設けられた半導体発光積層体と、
上層半導体層、下層半導体層、及び前記上層半導体層と前記下層半導体層との間に設けられた層間絶縁膜からなるSOI基板を有し、
前記SOI基板は、
前記上層半導体層上に絶縁膜を介して設けられ、前記半導体発光素子の前記少なくとも1つの第1素子電極に対応する少なくとも1つの第1配線電極と、前記上層半導体層上に前記上層半導体層に接続されて設けられ、前記半導体発光積層体の前記少なくとも1つの第2素子電極に対応する少なくとも1つの第2配線電極と、
前記下層半導体層上に設けられ、前記SOI基板を貫通する第1ビア電極によって前記少なくとも1つの第1配線電極に接続された第1実装電極と、
前記下層半導体層上に絶縁膜を介して設けられ、前記下層半導体層及び前記層間絶縁膜を貫通して前記上層半導体層に達する第2ビア電極によって前記上層半導体層に接続された第2実装電極と、を有し、
前記半導体発光積層体の前記少なくとも1つの第1素子電極及び前記少なくとも1つの第2素子電極は、それぞれ前記SOI基板の前記少なくとも1つの第1配線電極及び前記少なくとも1つの第2配線電極に接合されている。
【0010】
本発明の他の実施形態による支持基板は、
第1及び第2の導電型をそれぞれ有する第1及び第2の半導体層、及び前記第1及び第2の半導体層間に設けられた発光層を有し、一方の面側に前記第1の半導体層に接続された少なくとも1つの第1電極及び前記第2の半導体層に接続された少なくとも1つの第2電極が設けられた半導体発光素子を搭載するための支持基板であって、
上層半導体層、下層半導体層、及び前記上層半導体層と前記下層半導体層との間に設けられた層間絶縁膜からなるSOI基板を有し、
前記SOI基板は、
前記上層半導体層上に絶縁膜を介して設けられ、前記半導体発光素子の前記少なくとも1つの第1電極に対応する少なくとも1つの第1配線電極と、前記上層半導体層上に前記上層半導体層に接続されて設けられ、前記半導体発光積層体の前記少なくとも1つの第2電極に対応する少なくとも1つの第2配線電極と、
前記下層半導体層上に設けられ、前記SOI基板を貫通する第1ビア電極によって前記少なくとも1つの第1配線電極に接続された第1実装電極と、
前記下層半導体層上に絶縁膜を介して設けられ、前記下層半導体層及び前記層間絶縁膜を貫通して前記上層半導体層に達する第2ビア電極によって前記上層半導体層に接続された第2実装電極と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の第1の実施形態による半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
【
図1B】半導体発光装置10の半導体発光素子部及び支持基板部を分離して示す断面図である。
【
図1C】保護素子17と半導体発光素子31の接続を示す回路図である。
【
図2A】支持基板11の上面、すなわち半導体発光素子31との接合側の面を模式的に示す平面図である。
【
図2B】支持基板11の裏面、すなわちPCB基板などの回路基板上に半導体発光装置10が実装される面を模式的に示す平面図である。
【
図3A】半導体発光素子31の上面を模式的に示す平面図である。
【
図3B】半導体発光素子31の裏面(支持基板11との接合面)を模式的に示す平面図である。
【
図4A】支持基板11の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図4B】支持基板11の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図4C】支持基板11の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図5A】本発明の第2の実施形態による半導体発光装置50の断面を模式的に示す断面図である。
【
図5B】第2の実施形態による半導体発光装置50の半導体発光素子31及び支持基板11を分離して示す断面図である。
【
図6】第2の実施形態における金属電極層55の形成方法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[第1の実施形態]
図1Aは、本発明の第1の実施形態による半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
図1Bは、
図1Aに対応し、半導体発光装置10の半導体発光素子部及び支持基板部を分離して示す断面図である。なお、
図1A及び
図1Bは、
図2A及び
図3Bに示すA-A線に沿った断面図である。
【0013】
半導体発光装置10は、支持基板11と支持基板11に接合された半導体発光素子31とを有する。より詳細には、支持基板11は、第1の基板半導体層13と、第2の基板半導体層15と、第1の基板半導体層13及び第2の基板半導体層15間に設けられた層間絶縁膜14からなる。
【0014】
また、支持基板11の裏面には、半導体発光素子31に電気的に接続され、半導体発光素子31を駆動するための第1実装電極24A及び第2実装電極24Bが設けられている。
【0015】
また、SOI基板12の第2の基板半導体層15には保護素子17が設けられている。保護素子17は半導体発光素子31に電気的に接続され、半導体発光素子31の保護回路として機能する。
【0016】
半導体発光素子である発光ダイオード(以下、LED素子ともいう。)31は、第2の半導体層としてのn型半導体層33と、第1の半導体層としてのp型半導体層35と、n型半導体層33及びp型半導体層35間に設けられた発光層34からなる半導体発光積層体(以下、LED半導体層と称する。)32を有している。
【0017】
本実施形態では、成長最表面層であるp型半導体層35(第1導電型の半導体層)を下面としてLED素子31を支持基板11に接合し、n型半導体層33(第2導電型の半導体層)を半導体発光装置10の表面層としている。半導体発光素子31からの発光はn型半導体層33から半導体発光装置10の外部に放射される(放射光LO)。
【0018】
なお、本実施形態においては、第1導電型がp型であり、第2導電型がn型である場合について説明するが、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型であってもよい。
【0019】
図1Bは、説明及び理解の容易さのため、支持基板11と半導体発光素子31とを分離して示す模式的な断面図である。以下に、
図1Bを参照して支持基板11及び半導体発光素子31について詳細に説明する。
(支持基板11)
支持基板11は、半導体層間に層間絶縁膜が挟まれた基板、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板12を有している。第1の基板半導体層13及び第2の基板半導体層15は、例えばP(リン)又はAs(ヒ素)がドープされたn型Si(シリコン)層であり、層間絶縁膜14はSiO
2膜である。以下において、第1の基板半導体層13及び第2の基板半導体層15を、それぞれ上層Si層13及び下層Si層15と称する。
【0020】
なお、支持基板11は、SOI(Silicon on Insulator)基板に限定されない。本明細書においては、Ge(ゲルマニウム)などの半導体層間に層間絶縁膜が挟まれた構造の基板をSOI(Semiconductor on Insulator)基板とも称して説明する。
【0021】
支持基板11の上面(LED素子31との接合側の面)には、第1配線電極22A及び第2配線電極22Bが備えられている(以下、特に区別しない場合には、配線電極22と総称する。)。
【0022】
本実施形態においては、第1配線電極22Aは、半導体発光素子31の第1素子電極(p-電極)に接続されるp-配線電極であり、第2配線電極22Bは、半導体発光素子31の第2素子電極(n-電極)に接続されるn-配線電極である。
【0023】
第1配線電極(p-配線電極)22A及び第2配線電極(n-配線電極)22Bは、絶縁膜(例えばSiO2膜)である保護膜28Aによって保護されている。第1配線電極22Aは、上層Si層13上の絶縁膜25を介して設けられ、上層Si層13とは電気的に絶縁されている。第2配線電極22Bは、上層Si層13上に設けられ、上層Si層13にオーミック接触している。
【0024】
また、支持基板11の裏面には、第1実装電極24A及び第2実装電極24B(以下、特に区別しない場合には、実装電極24と総称する。)が設けられている。第1実装電極24A及び第2実装電極24Bは、PCB基板などの回路基板上の配線に接続される。
【0025】
本実施形態においては、第1実装電極24Aはアノード電極であり、第2実装電極24Bはカソード電極である。アノード電極24A及びカソード電極24Bは、絶縁膜(例えばSiO2膜)である保護膜28Bによって保護されている。
【0026】
アノード電極24Aは、SOI基板12の裏面(下層Si層15の裏面)から上面(上層Si層13の表面)に達する金属ビア23を介して第1配線電極22Aに接続されている。また、第1配線電極22A、金属ビア23及びアノード電極24Aは、絶縁膜25によってSOI基板12とは絶縁されている。
【0027】
なお、金属ビア23は、第1配線電極22Aとアノード電極24Aの導通不良の防止、また、半導体発光素子31が発する熱の放熱性を向上する観点から複数設けられていることが望ましい。
【0028】
SOI基板12にはSOI基板12の裏面から上層Si層13の表面又はその内部に達するビア(ビアホール)26が設けられている。カソード電極24Bは、ビア26を介して上層Si層13に電気的に接続されている。
【0029】
より詳細には、ビア26の内壁上には絶縁膜27が設けられている。カソード電極24Bは、絶縁膜27上に形成されるとともに、下層Si層15の裏面から上層Si層13に達するビア電極部24Vを有している。また、カソード電極24Bは下層Si層15とは絶縁されている。
【0030】
カソード電極24Bのビア電極部24Vは、ビア26から露出する上層Si層13にオーミック接触によって接続されている。従って、カソード電極24Bは、上層Si層13を介して第2配線電極22Bに電気的に接続されている。
【0031】
なお、ビア電極部24Vを含むビア26は、第2配線電極22Bと上層Si層13Aの導通不良の防止、また半導体発光素子31が発する熱の放熱性を向上の観点から複数設けられていることが望ましい。
【0032】
さらに、SOI基板12の下層Si層15には保護素子17が設けられている。より詳細には、下層Si層15にはB(ボロン)又はAl(アルミニウム)等の不純物が拡散された不純物拡散領域17D(p-Si領域)が形成され、不純物拡散領域17Dと不純物拡散領域17Dに接する下層Si層15とのpn接合によりツェナーダイオード(ZD)である保護素子17(図中、破線部)が形成されている。
【0033】
保護素子17の一端である不純物拡散領域17D(p-Si領域)は、カソード電極24Bに接続されている。保護素子17の他端は下層Si層15に接続され、下層Si層15(n-Si層)を介してアノード電極24Aに電気的に接続されている。
【0034】
より具体的には、
図1Cに示すように、保護素子17の正極(アノード)及び負極(カソード)はそれぞれ半導体発光素子31のカソード電極24B及びアノード電極24Aに接続され、半導体発光素子31と並列接続であるように形成されている。
【0035】
第1配線電極22Aは、例えばNi(ニッケル)/Au(金)からなり、第2配線電極22Bは、例えば、Ti(チタン)又はNi/Auからなる。また、アノード電極24A及びカソード電極24Bは、例えばNi/Auからなる。これらの電極においては、Auが表面層である。
(半導体発光素子31)
第1の実施形態において、LED素子31は、LED半導体層(半導体発光積層体)32として、いわゆるシンフィルムLED(thin-film LED)が用いられている。より具体的には、LED半導体層32は、成長基板上にエピタキシャル成長したLED構造を有する半導体積層体(シンフィルムLED)を成長基板から取り外した構成を有している。
【0036】
なお、LED半導体層32は、シンフィルムLEDに限定されず、一方の面側にp-電極及びn-電極が設けられた半導体発光積層体を用いることができる。
【0037】
LED半導体層32は、n型半導体層(第2の半導体層)33、発光層34及びp型半導体層(第1の半導体層)35を有している。n型半導体層33及びp型半導体層35は、それぞれ少なくとも1つの半導体層からなり、障壁層、電流拡散層、コンタクト層など、特性向上等の設計に応じた種々の半導体層を有していてもよい。
【0038】
LED半導体層32は、例えばGaN系の半導体層からなる青色発光の発光半導体層であるが、これに限定されない。発光層34は、例えば単一量子井戸(SQW)又は多重量子井戸(MQW)構造を有している。
【0039】
LED半導体層32には、p-電極(第1素子電極)36A及びn-電極(第2素子電極)36Bが設けられている。p-電極36Aはp型半導体層35の表面上に形成され、p型半導体層35とオーミック接触により接続されている。
【0040】
LED半導体層32には、p型半導体層35の表面からn型半導体層33に達するビア36Vが形成され、n-電極36Bは、ビア36Vから露出するn型半導体層33に設けられ、オーミック接触により接続されている。
【0041】
LED半導体層32の側面、底面(支持基板11との接合側の面)及びビア36Vの内壁面上には、SiO2からなる素子保護膜38が設けられている。素子保護膜38により、LED半導体層32の側面が保護されるとともに、p-電極36A及びn-電極36B、ビア36Vの内壁面が保護されている。
【0042】
p-電極36Aは、透光性導電膜のITO(インジウムスズ酸化物)、Ni(ニッケル)、Pt(白金)及びAg(銀)反射膜がp型半導体層35上にこの順で形成されたITO/Ni/Pt/Ag層からなる。なお、p-電極36Aには、反射膜が設けられていることが好適であるが、反射膜は設けられていなくてもよい。
【0043】
n-電極36Bは、Ti(チタン)又はNi(ニッケル)及びAu(金)がn型半導体層33上にこの順で形成された(Ti又はNi)/Au層からなる。
【0044】
なお、p-電極36A及びn-電極36Bの材料及び構造は上記に限定されない。光反射による取り出し効率向上、オーミック特性、素子信頼性(寿命)などの特性を考慮して適宜選択し得る。
(支持基板11及び半導体発光素子31の接合)
支持基板11及び半導体発光素子31は、接合層41A及び接合層41Bによって接合され、
図1Aに示す半導体発光装置10が形成される。
【0045】
より詳細には、支持基板11の第1配線電極(p-配線電極)22Aは接合層41Aによって半導体発光素子31のp-電極36Aに接合される。支持基板11の第2配線電極22Bは接合層41Bによって半導体発光素子31のn-電極36Bに接合される。
(支持基板11及び半導体発光素子31の上面及び裏面)
図2Aは、支持基板11の上面、すなわち半導体発光素子31との接合側の面を模式的に示す平面図である。
図2Bは、支持基板11の裏面、すなわちPCB基板などの回路基板上に半導体発光装置10が実装される面を模式的に示す平面図である。
【0046】
図2Aに示すように、支持基板11上には円形状の複数の第2配線電極22B(n-配線電極)が配されている(本実施形態の場合、5つ)。複数の第2配線電極22Bは、絶縁膜である保護膜28Aによって第1配線電極(p-配線電極)22Aとは絶縁されている。
【0047】
なお、複数の第2配線電極22Bは電流拡散が良好であり、発光が均一となる個数、位置、大きさで形成されていればよい。
【0048】
また、複数の第2配線電極22B及び保護膜28Aの領域を除いて、SOI基板12の上層Si層13の表面全面に亘って第1配線電極22Aが配されている。
【0049】
図1B及び
図2Bに示すように、複数の第2配線電極22Bは、支持基板11の裏面のカソード電極24Bに接続されており、第1配線電極22Aはアノード電極24Aに接続されている。
【0050】
図3Aは、半導体発光素子31の上面、すなわち放射光LOが出射される面であり、n型半導体層33の表面を模式的に示す平面図である。また、
図3Bは、半導体発光素子31の裏面(支持基板11との接合面)を模式的に示す平面図である。
(支持基板11の電極変換機能)
支持基板11は、いわば電極変換機能を有している。具体的には、
図3Bに示すように、半導体発光素子31の裏面(支持基板11との接合面)には1つのp-電極36Aと、複数のn-電極36B(本実施形態の場合、5つ)が設けられている。
【0051】
なお、p-電極36A及びn-電極36Bは少なくとも1つ設けられていればよいが、n-電極36Bは複数設けられていることが好ましい。p-電極36A及びn-電極36Bは、電流拡散及び発光輝度に応じて、適宜その個数、大きさ及び配置を設計し得る。
【0052】
一方、
図2Aに示すように、支持基板11の上面(半導体発光素子31との接合面)には、半導体発光素子31のp-電極36A及びn-電極36Bに対応した個数、大きさ及び配置の第1配線電極22A及び第2配線電極22Bが設けられている。
【0053】
なお、n-電極36Bは、複数(n個、nは2以上の整数)設けられていることが好ましい。この場合、半導体発光素子31の底面に設けられた当該複数のn-電極36Bは、対称位置であるように配置されていることが好ましい。例えば、
図3Bに示すように、当該複数のn-電極36Bは、半導体発光素子31の中心点C又は中心線(例えば、対称線A-A)に対して対称位置に配置されていることが好ましい。
【0054】
また、本実施形態では、n-電極36Bが円形状を有する場合を例に説明したが、これに限らない。n-電極36Bは、半導体発光素子31の形状及び大きさ、n-電極36Bの数、大きさ及び配置等に応じた形状を有していれば良い。また、複数のn-電極36Bが同一形状を有していなくてもよい。
【0055】
また、
図3Bに示すように、半導体発光素子31のp-電極36Aは、n-電極36Bの形成領域(すなわち、n-電極36Bの領域及びn-電極36Bの縁部を保護する素子保護膜38の領域)を除いて、p型半導体層35上の全面に亘る電極、いわゆる全面電極として形成されていることが好ましい。
【0056】
そして、
図2Bに示すように、支持基板11の裏面(すなわち、回路基板上に半導体発光装置10が搭載される面)には、各1つのアノード電極24A及びカソード電極24Bが設けられ、それぞれ半導体発光素子31のp-電極36A及びn-電極36Bが接続されている。
【0057】
すなわち、電流拡散などの素子特性向上のために、半導体発光素子31に複数のp-電極36A及び/又はn-電極36Bが設けられていても、支持基板11のアノード電極24A及びカソード電極24Bを各1つに集約することができ、PCB基板などの回路基板の配線が容易となる。
[支持基板11の製造方法]
以下に、
図4A~
図4Cは支持基板11の製造方法を模式的に示す断面図である。
図4A~
図4Cを参照して支持基板11の製造方法について、詳細かつ具体的に説明する。支持基板11は、以下のステップ-1ないしステップ-12(ST-1~ST-12)によって製造された。
(ST-1)
P又はAsがドープされたn-Si層である上層Si層13、下層Si層15及びSiO
2膜からなる層間絶縁膜14を有するSOI基板12を準備した。
(ST-2)
下層Si層15の下面表面からB又はAl等の不純物を、イオンインプランテーション又は熱拡散などにより拡散し、p-不純物の拡散領域17D(p-Si領域)を形成した。これにより下層Si層15にツェナーダイオードである保護素子17(図中、破線部)が形成された。
(ST-3)
下層Si層15の下面から上層Si層13の表面に達するビア(貫通孔)23Vを形成した。
(ST-4)
TEOS(テトラエトキシシラン)を用いたプラズマCVDにより基板絶縁膜25であるSiO
2膜を形成した。上層Si層13の表面、下層Si層15の下面及びビア23Vの内壁面が絶縁膜25で被覆された。
(ST-5)
スパッタ、又は、無電界メッキ及び電界メッキにより、銅(Cu)層を上層Si層13の表面上及び下層Si層15の下面上に形成した。また、ビア23Vの内部をCuで充填した。
【0058】
これにより、Cu層である下地金属層21A(上層Si層13の表面)、下地金属層29(下層Si層15の下面)及び金属ビア23が形成された。
(ST-6)
下層Si層15の下面から上層Si層13に達するビア(貫通孔)26を形成した。より詳細には、D-RIE(Deep RIE)プロセス又はボッシュプロセスによって、内壁にSiO2膜(絶縁膜27)を形成しつつエッチングを行い、ビア26を形成した。
(ST-7)
ウエットエッチング又はドライエッチングにより、基板絶縁膜25及び下地金属層(Cu層)29をエッチングし、不純物拡散領域17D及び下層Si層15を露出させる孔部26Rを形成した。
(ST-8)
電子ビーム(EB)法又はスパッタにより、下層Si層15の下面にNi及びAuをこの順で蒸着し、Ni/Au層である裏面電極層24を形成した。
【0059】
これにより、保護素子(ツェナーダイオード)17の電極となる拡散領域17D及び下層Si層15のオーミック接触が形成された。また、上層Si層13とのオーミック接触電極であるカソード電極24Bのビア電極部24Vが形成された。
【0060】
なお、裏面電極層24を厚く形成してビア26をビア電極部24Vによって埋設することもできる。この場合、ビア電極部24Vによる放熱性を向上できる。
(ST-9)
上層Si層13上の下地金属層(Cu層)21A上にNi/Au層22Aを形成した。
(ST-10)
ウエットエッチング又はドライエッチングにより、上層Si層13上の下地金属層21A及びNi/Au層22A、及び、下層Si層15の下面上の下地金属層29及び裏面電極層24をエッチングした。
【0061】
これにより、第1配線電極22A、アノード電極24A及びカソード電極24Bの電極パターニングがなされた。
(ST-11)
電子ビーム(EB)法又はスパッタにより、ステップST-10により露出した上層Si層13上に、Ti(チタン)又はNi、Auをこの順で蒸着し、(Ti又はNi)/Au層である第2配線電極22Bを形成した。
(ST-12)
スパッタ又はTEOSを用いたプラズマCVDにより、基板保護膜28A及び28Bを形成した。
【0062】
以上のステップST-1乃至ST-12によって支持基板11が製造された。
【0063】
特に、第1の基板半導体層13と第2の基板半導体層15を隔てる層間絶縁膜14を、当該層間絶縁膜の膜面に対して垂直方向に貫通する金属ビア23及びビア電極部24Vにより、支持基板11の上下方向の伝熱性(放熱性)を向上させている。
【0064】
以上により製造された支持基板11を、上記したように、接合層41A及び接合層41Bによって半導体発光素子31に接合することによって半導体発光装置10が製造された。
【0065】
上記した第1の実施形態の半導体発光装置10によれば、発光効率が高く、均一な発光が得られる高出力半導体発光装置を提供することできる。また、均一な発光が得られるとともに、保護素子によって素子破壊が生じ難い高出力半導体発光装置を提供することできる。
【0066】
また、層間絶縁膜14を貫通する金属ビア23及びビア電極部24Vによる放熱性の向上により高出力半導体発光装置を提供することができる。
【0067】
また、半導体発光装置が実装される回路基板等の配線が容易となる高出力半導体発光装置を提供することできる。
[第2の実施形態]
図5Aは、本発明の第2の実施形態による半導体発光装置50の断面を模式的に示す断面図である。
図5Bは、
図5Aに対応し、半導体発光装置50の半導体発光素子部及び支持基板部を分離して示す断面図である。
【0068】
第2の実施形態による半導体発光装置50は、上記した第1の実施形態による半導体発光装置10とは、上層Si層13と絶縁膜25との間に金属電極層を設けた点にある。
【0069】
より詳細には、
図5A及び
図5Bに示すように、上層Si層13側に設けられた、上層Si層13と第1配線電極22Aとの間の絶縁膜を絶縁膜25Aとしたとき、上層Si層13と第1配線電極22Aとの間に、すなわち上層Si層13上に金属電極層55が設けられている。
【0070】
金属電極層55は、第2配線電極22B(n-配線電極)に電気的に接続されている。従って、上層Si層13(n-Si層)の抵抗率に起因して電流拡散が不十分な場合であっても、電流拡散を向上することができ、発光の面内均一性及び発光効率を向上することができる。
【0071】
なお、金属電極層55は、上層Si層13の全面に亘って形成されていることが好ましい。
【0072】
図6を参照して、金属電極層55の形成方法を模式的に示す断面図である。金属電極層55は、第1の実施形態において説明したステップST-2後に、下記のステップST-2Aとして追加して実行される。
【0073】
また、第1の実施形態におけるST-3,ST-4に代わってST-3’,ST-4’ が実行される。ステップST-5以降は、第1の実施形態において説明したステップST-5~ST-12が実行される。
(ST-2A)
ST-2において保護素子17が形成された後、スパッタ、電子ビーム法、抵抗加熱蒸着又はメッキ等により、Ti又はNi、Auをこの順で蒸着し、(Ti又はNi)/Au層である金属電極層55を形成した。
(ST-3’)
下層Si層15の下面から金属電極層55の表面に達するビア(貫通孔)23Vを形成した。
(ST-4’)
TEOS(テトラエトキシシラン)を用いたプラズマCVDにより基板絶縁膜25であるSiO2膜を形成した。上層Si層13の表面、金属電極層55の表面及びビア23Vの内壁面が絶縁膜25で被覆された。なお、ここでは金属電極層55上に形成された絶縁膜を絶縁膜25A(絶縁膜の一部)として示す。
【0074】
以上、説明したように、第2の実施形態の半導体発光装置50によれば、さらに発光効率が高く、均一な発光が得られる高出力半導体発光装置を提供することできる。また、金属電極層55は、半導体発光素子31が発生する熱をビア23及び26へ導く導熱層(ヒートスプレッダ)として働くので高出力半導体発光装置を提供することができる。また、極めて均一な発光が得られるとともに、保護素子によって素子破壊が生じ難い高出力半導体発光装置を提供することできる。
【0075】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の半導体発光装置によれば、発光効率が高く、均一な発光が得られる高出力半導体発光装置を提供することできる。また、均一な発光が得られるとともに、保護素子によって素子破壊が生じ難い高出力半導体発光装置を提供することできる。
【0076】
また、半導体発光装置が実装される回路基板等の配線が容易となる高出力半導体発光装置を提供することできる。
【0077】
さらに、発光効率が高く、均一な発光が得られるとともに、保護素子によって素子破壊が生じ難い高出力半導体発光素子に用いられる支持基板を提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
10,50:半導体発光装置
11:支持基板
12:SOI基板
13:第1の基板半導体層
14:層間絶縁膜
15:第2の基板半導体層
17:保護素子
17D:不純物拡散領域
22A:第1配線電極
22B:第2配線電極
23:金属ビア
24A:アノード電極
24B:カソード電極
25,25A:絶縁膜
26:ビア(貫通孔)
28A,28B,38A,38B:保護膜
31:半導体発光素子
32:半導体発光積層体
33:n型半導体層
34:発光層
35:p型半導体層
36A:p-電極
36B:n-電極
55:金属電極層