(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】油中水型乳化固形化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/89 20060101AFI20250120BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20250120BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20250120BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20250120BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
A61K8/89
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/37
A61Q1/12
(21)【出願番号】P 2020207661
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】小河 頌子
(72)【発明者】
【氏名】大澤 友
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-132621(JP,A)
【文献】特開2012-206985(JP,A)
【文献】特開2012-207001(JP,A)
【文献】特開2010-265230(JP,A)
【文献】特開2008-303164(JP,A)
【文献】特開2010-006726(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非環状揮発性シリコーン、
(B)質量平均分子量が300~5000の水添ポリイソブテン、
(C)モノイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、オレイン酸グリセリルからなる群から選択される1種または2種以上である脂肪酸グリセリルエステル、
(D)水性成分、
(E)油性成分、および
(F)粉末成分
を含む油中水型乳化固形化粧料
であって、
前記油中水乳化固形化粧料の総質量に対する、前記(B)成分の含有率が0.1~10質量%であり、
前記(E)成分が、融点65℃以上のワックスまたは油溶性皮膜剤を含む、油中水型乳化固形化粧料。
【請求項2】
前記非環状揮発性シリコーンが、ジメチルポリシロキサン構造を有するものである、請求項1に記載の油中水型乳化固形化粧料。
【請求項3】
前記油中水乳化固形化粧料の総質量に対する、内水相比が20質量%以上である、請求項
1または2に記載の油中水型乳化固形化粧料。
【請求項4】
前記油中水乳化固形化粧料の総質量に対する、前記(A)揮発性シリコーンの含有率が5~25質量%である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の油中水型乳化固形化粧料。
【請求項5】
前記油中水乳化固形化粧料の総質量に対する、前記(C)脂肪酸グリセリルエステルの含有率が0.5~5質量である、請求項
1~4のいずれか1項に記載の油中水型乳化固形化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化固形化粧料に関するものである。より詳しくは、高い隠ぺい効果と補正効果がありながらのびが軽く、自然な仕上がりとなる油中水型乳化固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、補正効果や隠ぺい効果の高い化粧料として、ファンデーションやコンシーラーなどが知られている。昨今、より個性的なメーキャップが求められており、このような化粧料に対しても、より補正効果や隠ぺい効果の高い化粧料のニーズが高まっている。
【0003】
このような化粧料としては、油中水乳化固形化粧料が知られており、その配合について検討が重ねられている。油中水型乳化固形化粧料においては、内水相成分の量を全水相成分と全油相成分の和で除して得られる比率(内水相比)を高めるとさっぱりした良好な使用感を与えることができ、逆に内水相比が低いとのびは軽いが油っぽい感触となる傾向がある。そして、界面活性剤として脂肪酸グリセリルエステル等を用いることにより、内水相比が高くても安定な油中水型乳化固形化粧料が得られることも見出されている。
【0004】
例えば特許文献1では、脂肪酸グリセリルエステル、水性成分、油性成分、および粉末成分を含有し、前記油性成分が固形油分と油溶性皮膜剤とを含み、粉末成分が酸化チタンとパール顔料とを含む油中水型乳化固形化粧料が開示されている。この化粧料は補正効果や隠ぺい効果に優れたものであるが、使用時の滑らかさやフィット感の観点で、さらなる改良が望ましいことがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際出願公開第2018/199160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の技術状況に鑑みてなされたものであり、内水相比が一定以上の油中水型乳化固形化粧料であって、使用感が改善され、特になめらかさとフィット感が両立されたメーキャップ化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による油中水型乳化固形化粧料は、
(A)非環状揮発性シリコーン、
(B)質量平均分子量が300~5000の水添ポリイソブテン、
(C)モノイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、およびオレイン酸グリセリルからなる群から選択される1種または2種以上である脂肪酸グリセリルエステル、
(D)水性成分、
(E)油性成分、および
(F)粉末成分
を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明による油中水型乳化固形化粧料は、フィット感が高いために厚く塗布することが可能であり、その結果高い隠ぺい効果を発揮するとともに、仕上がりが自然であり、なおかつ肌に塗布する際ののびが良くフィット感も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0010】
本発明による油中水型乳化固形化粧料(以下、単に「固形化粧料」ともいう)は、
(A)非環状揮発性シリコーン、
(B)水添ポリイソブテン、
(C)脂肪酸グリセリルエステル、
(D)水性成分、
(E)油性成分、および
(F)粉末成分
を含有する。以下、これらの各成分について説明する。
【0011】
(A)非環状揮発性シリコーン
本発明による固形化粧料は、非環状揮発性シリコーンを含有する。シリコーンは、主骨格がシロキサン結合で構成された有機ケイ素化合物である。そして、本発明においては、環状構造を有していない、非環状シリコーンが用いられる。ここで非環状シリコーンとは、直鎖構造または分岐鎖構造を含むシリコーンであり、直鎖構造のみを有するシリコーンが好ましい。特に、繰り返し単位がジメチルシロキサンに由来する、ジメチルポリシロキサン(ポリジメチルシロキンサン)が好ましい。
【0012】
また、本発明に用いることができるシリコーンは揮発性である。具体的には、105℃で3時間静置したときの揮発分が5質量%を超えることが好ましく、40質量%を超えることが好ましい。なお、揮発性が過度に高いと、取り扱い性や安全性が低下する可能性があるので、沸点が100℃以上であること好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0013】
また、シリコーンは、一般的に重合度が異なるポリマーの混合物であるが、その平均重合度が低いほど揮発性が低くなり、同時に動粘度や比重も低くなる傾向にある。
【0014】
このような非環状揮発性シリコーンは、KF-96シリーズ(製品名、信越化学工業株式会社製)など各種のものがされている。本発明においてはこれらから目的に応じて選択して用いることができる。
【0015】
本発明による固形化粧料における(A)非環状揮発性シリコーンの配合量は、化粧料全量に対して、通常は5~25質量%、好ましくは8~20質量%、より好ましくは10~15質量%の範囲内である。配合量が5質量%未満であるとなめらかな感触が損なわれる場合があり、25質量%を超えて配合すると化粧料の使用性が損なわれる場合がある。
【0016】
なお、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、環状揮発性シリコーンを組み合わせることもできる。一般的に、非環状揮発性シリコーンと環状揮発性シリコーンの総質量を基準として、非環状揮発性シリコーンの配合割合は80質量%以上であり、90質量%以上であることが好ましく、100質量%である、すなわち環状揮発性シリコーンを含まないことが特に好ましい。
【0017】
(B)水添ポリイソブテン
本発明による固形化粧料は、水添ポリイソブテンを含有する。水添ポリイソブテンとは、イソブテンとn-ブテンとを共重合させ、さらに水素添加して得られる揮発性炭化水素であり、流動イソパラフィンと呼ばれることもある。本発明において水添イソブテンは、質量平均分子量が300~5000であるものが用いられ、500~3000のものが好ましい。水添ポリイソブテンを用いることで、使用時の二次付着を抑制することができ、使用時のカバー力やフィット感を改善することができる。
【0018】
水添ポリイソブテンは、パールリーム18、パールリーム24、パールリーム46(いずれも日油株式会社製)、精製ポリブテンHV-100F(S)(SB)(株式会社日本ナチュラルプロダクツ製)など、各種のものが市販されている。本発明においてはこれらから目的に応じて選択して用いることができる。
【0019】
本発明による固形化粧料における(B)水添ポリイソブテンの配合量は、化粧料全量に対して、通常は0.1~10質量%、好ましくは0.5~7質量%の範囲内である。配合量が0.1質量%未満であるとフィット感が損なわれる場合があり、10質量%を超えて配合すると肌になじみにくくなる場合がある。
【0020】
(C)脂肪酸グリセリルエステル
本発明による固形化粧料は、脂肪酸グリセリルエステルを含有する。この脂肪酸グリセリルエステルは、モノイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、オレイン酸グリセリルからなる群から選択される1種または2種以上である。いずれか1種でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、オレイン酸グリセリルには、モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、およびトリオレイン酸グリセリルが包含されるが、モノオレイン酸グリセリルが好ましい。また、オレイン酸グリセリルは、モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、およびトリオレイン酸グリセリルから選ばれる1種2種以上の混合物であってもよいが、モノオレイン酸グリセリルを含むものであることが好ましい。そして、そのような混合物におけるモノオレイン酸グリセリルの含有率は、オレイン酸グリセリルの混合物の総量を基準として40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが特に好ましい。
【0021】
これらの脂肪酸グリセリルエステルは、従来から化粧料に使用されているものから選択して用いることができる。具体的には、モノイソステアリン酸グリセリルとしてはNIKKOL MGIS(製品名、日光ケミカル株式会社製)等、ジイソステアリン酸ジグリセリルとしては、例えば、WOGLE-18DV(製品名、松本交商株式会社製)、エマレックスDISG-2(製品名、日本エマルジョン株式会社)等、オレイン酸グリセリルとしてはNIKKOL MGO(製品名、日光ケミカル株式会社製)等などが挙げられる。
【0022】
本発明による固形化粧料における(C)脂肪酸グリセリルエステルの配合量は、化粧料全量に対して、通常は0.5~5質量%、好ましくは1.0~3.0質量%の範囲内である。配合量が0.5質量%未満であるとフィット感が損なわれる場合があり、10質量%を超えて配合すると後残りのさっぱりさ等の使用性に劣る場合がある。
【0023】
(D)水性成分、
本発明による固形化粧料に配合される水性成分は、水、及び化粧料等に通常配合可能な水性成分を含む。例えば、保湿剤、水溶性高分子、水溶性薬剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
保湿剤としては、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D-マンニット等が挙げられる。
【0025】
水溶性高分子としては、アラビアゴム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、デンプン、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、デキストラン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン等の動物系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系高分子、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOLなど)等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系高分子、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト等の無機系水溶性高分子等が挙げられる。
【0026】
水溶性薬剤としては、ビタミンA、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸2-グルコシド、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl-α-トコフェロール2-Lアスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類、アラントイン、アズレン等の抗炎症剤、アルブチン等の美白剤、酸化亜鉛、タンニン酸等の収斂剤、イオウ、塩化リゾチーム、塩酸ピリドキシン、γ-オリザノール等が挙げられる。
【0027】
金属イオン封鎖剤としては、エデト酸ナトリウム塩、メタリン酸ナトリウム、リン酸等が挙げられる。
【0028】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0029】
分散剤としては、油性成分や粉末成分などを化粧料中に安定に分散させるための界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤としてはカチオン性、アニオン性、非イオン性、両性などの界面活性剤から目的に応じて任意に選択することができる。
【0030】
本発明による固形化粧料における(D)水性成分の配合量は、化粧料全量に対して、通常は20~70質量%、好ましくは30~60質量%、より好ましくは30~50質量%の範囲内である。配合量が20質量%未満であるとさっぱりした良好な感触が損なわれる場合があり、70質量%を超えて配合すると安定に乳化できない場合がある。
【0031】
(E)油性成分
本発明における(E)油性成分は、(E1)固形油分または(E2)油溶性皮膜剤を含有する。
【0032】
(E1)固形油分としては、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化ヒマシ油などの固体油脂、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス(直鎖炭化水素)、マイクロクリスタリンワックス(分岐飽和炭化水素)、セレシンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素類、ミツロウ、ラノリン、カルナバワックス、キャンデリラロウ、コメヌカロウ(ライスワックス)、ゲイロウ、ホホバ油、ヌカロウ、カポックロウ、ベイベリーロウ、セラックロウ、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、還元ラノリン、硬質ラノリン、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベへニン酸等の高級脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等が例示できる。
【0033】
上記の固形油分の中でも、融点が65℃以上あるいは70℃以上のワックスが好ましく、それらの中でも融点が95℃以下あるいは90℃以下のワックスが好ましい。そのようなワックスとしては、例えば、コメヌカロウ及びポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0034】
(E2)油溶性皮膜剤は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。具体例としては、トリメチルシロキシケイ酸、ジメチルアミノメタクリレート4級化塩、ビニルピロリドン・メタクリル酸-N,N-ジメチル-エチルアンチニオエチル塩共重合体、シリコーン/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリルアルキル)コポリマー、デキストリン、(ビニルピロリドン/VA)コポリマー、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エチル、(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸プロピルトリメチコン)コポリマー、ポリ酢酸ビニル、(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルカルバミド酸プルラン、ポリエーテルグラフトアクリルシリコーン、フルオロ変性シリコーンレジン等が挙げられる。中でもトリメチルシロキシケイ酸、(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルカルバミド酸プルランが好ましい。
【0035】
本発明による固形化粧料においては、(E)油性成分のうち、(E2)油溶性皮膜剤を含有することが好ましい。また、本発明による固形化粧料における(E)油性成分は、前記(E1)固形油分または(E2)油溶性皮膜剤に加えて、化粧料等に通常配合可能な油性成分を任意に含んでいてもよい。任意に配合しうる油性成分としては、例えば、液状油分、(油溶性)紫外線吸収剤、油性増粘剤、油性薬剤、香料等が例示されるが、これらに限定されない。
【0036】
液状油分には、シリコーン油、炭化水素油が含まれ、本発明による固形化粧料には、シリコーン油を含むのが好ましい。シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン等の鎖状シリコーン油、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油(シクロメチコン)が挙げられる。
【0037】
炭化水素油は、極性油及び非極性油を含み、極性油としては、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イロプロピル、イソパルミチン酸オクチル、オレイン酸イソデシル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル等のエステル油が挙げられる。非極性油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン等が挙げられる。
【0038】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラミル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル)、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、2-(2‘-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-tert-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0039】
本発明による固形化粧料における(E)油性成分の配合量は、化粧料全量に対して、通常は10~50質量%、好ましくは15~40質量%、より好ましくは15~30質量%の範囲内である。油性成分に含まれる(E1)固形油分の配合量は、化粧料全量に対して、通常は0.1~10質量%、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは1~3質量%の範囲内であり、(E2)油溶性皮膜剤の配合量は、化粧料全量に対して、通常は0.1~20質量%、好ましくは1~15質量%、より好ましくは5~10質量%の範囲内である。
【0040】
(F)粉末成分
本発明による固形化粧料における(F)粉末成分は、一般的に化粧料に用いられる粉末成分から任意に選択して用いることができる。このような粉末成分としては、無機粉末(例えば、酸化チタン、タルク、カオリン、セリサイト、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪藻土、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、窒化ホウ素、セラミクスパウダー、酸化鉄、セリサイト等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、チタン酸鉄等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等)等が挙げられる。また、酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆雲母、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の、パール顔料を用いることもできる。
これらのうち、好ましい粉末成分として酸化チタンが挙げられる。本発明による化粧料には、例えば、一次粒子径が0.01~0.5μmである酸化チタンを用いることができこのような酸化チタンは、粒子径に応じて微粒子酸化チタンと顔料級酸化チタンとに大別することができるが、目的に応じて任意の粒子径のものを用いることができるが、顔料級の酸化チタンは隠ぺい力が高いので好ましい。具体的には、平均一次粒子径が0.05~0.5μmである酸化チタンが好ましく、100~400nmの酸化チタン(以下、これを「顔料級酸化チタン」ともいう)がより好ましい。
【0041】
本明細書における平均一次粒子径とは、酸化チタン等の粉末に関して一般的に用いられる方法で測定される一次粒子の径を意味するものであり、具体的には透過電子顕微鏡写真、レーザー散乱・回折法等から測定された粒子の長軸と短軸の相加平均として求められる値を意味する。顔料級酸化チタンの形状は、球状、楕円形状、破砕状等であり特に限定されるものでない。
【0042】
本発明で用いる顔料級酸化チタンは、表面疎水化処理を施したものが好ましい。表面処理の方法としては、メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;その他、レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等が挙げられる。
【0043】
本発明による固形化粧料における粉末成分、例えば顔料級酸化チタンの配合量は、化粧料全量に対して、通常は10~40質量%、好ましくは12~30質量%、より好ましくは15~25質量%の範囲内である。配合量が10質量%未満であると十分な隠ぺい効果が得られない場合があり、40質量%を超えて配合すると仕上がりが白く不自然になる場合がある。
本発明による固形化粧料にはパール顔料は、例えば、酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の、化粧料に通常配合可能なものから選択しうる。中でも、薄片状雲母からなる基材の表面に酸化チタン層を被覆したパール顔料が好ましい。
【0044】
本発明による固形化粧料は、上記の成分(A)~(F)を含む油中水型乳化固形化粧料であり、内水相成分の量を全水相成分と全油相成分の和で除して得られる比率(内水相比)が好ましくは、20%以上、より好ましくは25%以上の固形化粧料である。
【0045】
本明細書における「固形化粧料」とは、化粧料を使用する通常の温度範囲(0℃~40 ℃)において流動性がない固形状の化粧料を意味する。例えば、レオメーター等の公知の測定装置を使用して測定した下記式に示される硬度γが30以上である基剤であるのが好ましい。
γ=(G*L)/(l*a) (dyn/cm2)
(式中、
G:測定応力(gr)*980dyn、
L:サンプルの厚み(mm)、
l:圧縮距離(mm)、
a:針の断面積(cm2)、である)
(測定条件)
負荷重:200g、
針の径:5.6φ、
針入速度:2cm/min、
針入距離:1mm、
測定温度:37℃
【0046】
本発明による固形化粧料は、化粧料分野で汎用されている製造方法に従って製造できる。例えば、油相成分を適宜加熱して混合し、別途調製した水相成分を攪拌しながら乳化させることにより製造できる。
【0047】
本発明による油中水型乳化固形化粧料は、皮膚や眉毛、まつ毛、口唇等に適用されるメーキャップ化粧料に広く応用することが可能であり、例えば、ファンデーション、化粧下地、アイシャドー、アイライナー、マスカラ等として、中でもファンデーション又は化粧下地として用いるのに特に適している。
【0048】
また本発明による化粧料は、それを収容する容器形態が限定されるものではない。例えば、従来の固形化粧料と同様に容器に充填して固化させる形態に加えて、製造工程において流動体化された状態の本発明による化粧料を含浸体に含浸させ、気密性を備えたコンパクト容器内に収容することも可能である。含浸体としては、樹脂、パルプ、綿等の単一又は混合素材からなる不織布、樹脂加工した繊維体、スポンジなどの発泡体、連続気孔を備えた多孔質体などが挙げられる。また含浸体の素材としては、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NR(天然ゴム)、ウレタン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、EVA(エチレン酢酸ビニル)、PVA(ポリビニルアルコール)、シリコーンゴム、エラストマーなどが例示されるが、これらの素材に限られるものではない。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。
【0050】
実施例1~6.比較例1~5
下記の表1に示された成分を配合して、油中水型乳化固形化粧料を調製した。各例の化粧料の「なめらかさ」、「フィット感」、「カバー力」、および「二次付着防止効果」を、以下の方法で評価した。
【0051】
各例の化粧料について専門パネル10名によって実使用試験を実施した。具体的には、各例のファンデーションを各パネルの顔に塗布し、下記の基準に従って評価した。
【0052】
<評価基準>
A:優れていると評価したのが10名中9名以上
B:優れていると評価したのが10名中7~8名
C:優れていると評価したのが10名中5~6名
D:優れていると評価したのが10名中5名未満
【0053】
【0054】
【表1-2】
表中
*1: KF-96A-2cs(商品名、信越化学工業株式会社製)
*2: シリコーン G-20-DMS(商品名、信越化学工業株式会社製)
【0055】
表1に示したように、本発明に係る化粧料では「なめらかさ」、「フィット感」、「カバー力」、および「二次付着防止効果」の全ての評価項目において満足できる結果が得られた。特に、シリコーンとして環状構造を有するデカメチルシクロペンタシロキサンを用いた比較例1の化粧料に対して、本発明による化粧料は全ての項目で優れていた。また、一般的にフィット感をもたらすと考えられる高重合シリコーンやワックス類などを用いた比較例4または5の化粧料に対して、水添ポリイソブテンを含む本発明による化粧料は優れたフィット感を実現していることがわかった。
【0056】
以下に、本発明によるの別の化粧料の処方例を示す。この処方の化粧料も、本発明による優れた特性を有するものであった。
【0057】
処方例:化粧下地
テトラデカメチルヘキサシロキサン 10質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 1.0質量%
トリメチルシロキシケイ酸 7.5質量%
水添ポリイソブテン 1質量%
モノイソステアリン酸グリセリル 1.5質量%
ジイソステアリン酸ジグリセリル 1.2質量%
ジステアリルジモニウムクロリド 0.2質量%
パルミチン酸 0.15質量%
ポリエチレンワックス 1.2質量%
マイクロクリスタリンワックス 0.2質量%
パラフィンワックス 1質量%
黄酸化鉄被覆雲母チタン 3.5質量%
疎水化処理酸化亜鉛 4質量%
疎水化処理微粒子酸化チタン 4質量%
疎水化処理赤酸化鉄 0.05質量%
金属石鹸処理タルク 5質量%
疎水化処理セリサイト 20質量%
精製水 30.3質量%
食塩 1質量%
グリセリン 1質量%
ジプロピレングリコール 6質量%クロルフェネシン 0.2質量%