(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】消臭剤
(51)【国際特許分類】
A61L 9/012 20060101AFI20250120BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20250120BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20250120BHJP
C01B 33/12 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
A61L9/012
B01J20/10 D
B01J20/28 Z
C01B33/12 A
(21)【出願番号】P 2021016650
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000193601
【氏名又は名称】水澤化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100217869
【氏名又は名称】吉田 邦久
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】永躰 将克
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-253866(JP,A)
【文献】特開平04-290546(JP,A)
【文献】特開2015-029645(JP,A)
【文献】特開平07-185324(JP,A)
【文献】特開2012-210560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
C01B 33/00-33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛もしくはアルミニウムを金属成分として含有する金属-シリカヒドロゲルの球状粒子から成り、元素換算で亜鉛またはアルミニウムをケイ素原子あたり1~20質量%の量で含有し
、水分含量が70~95質量%の範囲にあることを特徴とする消臭剤。
【請求項2】
前記金属-シリカヒドロゲルは、金属成分が亜鉛であり、下記式(1):
SiO
2・xZnO (1)
式中、xは、0.009~0.185の数を示す、
で表される元素組成を有する請求項1に記載の消臭剤。
【請求項3】
前記金属-シリカヒドロゲルは、金属成分がアルミニウムであり、下記式(2):
SiO
2・yAlO
3/2 (2)
式中、yは、0.007~0.147の数を示す、
で表される元素組成を有する請求項1に記載の消臭剤。
【請求項4】
前記球状粒子は、短径/長径の比で定義される真球度が0.7以上である請求項1~3の何れかに記載の消臭剤。
【請求項5】
前記長径が1~10mmの範囲にある請求項4に記載の消臭剤。
【請求項6】
150℃乾燥時のBET比表面積が350~800m
2/gの範囲にあることを特徴とする請求項1~
5の何れかに記載の消臭剤。
【請求項7】
硫化水素に対する消臭に使用される請求項1~
6の何れかに記載の消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪臭成分であるアンモニアや硫化水素に対して優れた消臭性能を示す無機系消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、悪臭成分に対して優れた消臭作用を示す消臭剤については、種々の提案がなされている。このような消臭剤として、吸水性樹脂を含むゲル状成形体に消臭成分を保持させた有機系の消臭剤が知られている。このような有機系の消臭剤は、ゲル状成形体に保持させる消臭成分の化学的作用によって消臭性を示すため、アンモニア等に対する消臭性ばかりか、硫化水素に対する消臭性など、種々の悪臭成分に対する消臭性を示す。例えば、特許文献1には、ゲル状成形体を形成する吸水性樹脂として、アクリルアミド-アクリル酸塩共重合体、ノニオン型ポリアルキレンオキサイド系吸水性樹脂、アルケン-無水マレイン酸共重合体、或いはポリアクリル酸塩架橋物などが使用された消臭剤が開示されている。
【0003】
しかしながら、有機系の消臭剤は、石油系資源を必要とするなど、環境上の問題があり、またコストの点でも問題がある。このため、環境に優しく、且つ比較的安価に製造できる無機系の消臭剤が求められている。
【0004】
無機系の消臭剤としては、シリカ粒子やケイ酸塩粒子などが広く知られており、例えば特許文献2及び3には、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケルから選ばれる少なくとも一種の金属の塩とケイ酸塩との無定形複合体からなる硫黄系ガス消臭剤が開示されている。
特許文献2及び3の消臭剤は、硫化水素やメルカプタンなどの硫黄系のガスに対して優れた消臭効果を示すものであるが、悪臭成分にはこれ以外にもアンモニアや各種アミン類、低級脂肪酸類がある。
【0005】
また、特許文献4に、酸化物として表した3成分組成比で、SiO2:5~80モル%、MOn/2:5~65モル%、Al2O3:0~60モル%(Mは、亜鉛、銅等から選ばれる少なくとも1種の金属を、nは金属の原子価を表す)に相当する組成のケイ酸金属塩または含アルミニウムケイ酸金属塩を有効成分とする消臭剤が開示されている。この特許文献4の消臭剤は、アンモニアやアミン類に加えて硫化水素やメルカプタン等の硫黄系のガスに対しても優れた消臭性を示すものであるが、やはり、アンモニアに対する消臭性がそれほど高くない。
【0006】
このように、無機系の消臭剤は、物理的に悪臭成分を吸着することにより消臭作用を示すものであり、従って、悪臭成分の分子の大きさなどの影響を受け、例えばアンモニアと硫化水素の何れに対しても消臭効果の高い無機系消臭剤はあまり知られていないし、その消臭効果も有機系のものと比較すると低い。
【0007】
さらに、特許文献5には、酸化物換算で、下記式:
SiO2・xZnO
式中、xは、0<x≦0.60である、
で表されるモル組成を有しており、ジ-n-ブチルアミン滴定法で測定した水酸基量が200~900meq/kgであると共に、X線小角散乱で測定した一次粒子径が7.0~20.0nmであることを特徴とする非晶質-シリカ亜鉛系アンモニア消臭剤が、本出願人により提案されている。
この消臭剤は、アンモニアに対して非常に高い消臭性を示すのであるが、硫化水素に対する消臭性は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-270100号公報
【文献】特開2005-87630号公報
【文献】特開2011-104274号公報
【文献】特開昭63-220874号公報
【文献】特許第6184794号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、アンモニア及び硫化水素の何れに対しても、有機系消臭剤よりも高い消臭性を示す無機系消臭剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、特許文献5で提案されている非晶質-シリカ亜鉛系アンモニア消臭剤についての研究をさらに推し進め、この消臭剤を形成する非晶質-シリカ亜鉛を形成する過程で、ゲル化を一気に進行させてヒドロゲルを形成するときには、水酸基量や一次粒子径によらず、アンモニアばかりか硫化水素に対する消臭性も向上しているという知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明によれば、亜鉛もしくはアルミニウムを金属成分として含有する金属‐シリカヒドロゲルの球状粒子から成り、元素換算で亜鉛またはアルミニウムをケイ素原子あたり1~20質量%の量で含有していることを特徴とする消臭剤が提供される。
【0012】
本発明の消臭剤においては、次の態様が好適に採用される。
(1)前記金属-シリカヒドロゲルは、金属成分が亜鉛であり、下記式(1):
SiO2・xZnO (1)
式中、xは、0.009~0.185の数を示す、
で表される元素組成を有すること。
(2)前記金属-シリカヒドロゲルは、金属成分がアルミニウムであり、下記式(2):
SiO2・yAlO3/2 (2)
式中、yは、0.007~0.147の数を示す、
で表される元素組成を有すること。
(3)前記球状粒子は、短径/長径の比で定義される真球度が0.7以上であること。
(4)前記長径が1~10mmの範囲にあること。
(5)水分含量が70~95質量%の範囲にあること。
(6)150℃乾燥時のBET比表面積が350~800m2/gの範囲にあること。
(7)硫化水素に対する消臭に使用されること。
【発明の効果】
【0013】
本発明の消臭剤(ヒドロゲル粒子)は、特に、硫化水素に対して著しく高い消臭能力を示し、後述する実験例に示されているように、有機系消臭剤と比較しても著しく高い消臭能力を示す。さらにアンモニアに対する消臭能力も高く、単位重量当たりの消臭能力は、やはり、有機系消臭剤よりも高い。
さらに、本発明のZnを金属成分として含有する消臭剤は、水分を含んでいることもあって、高い抗菌性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実験例1及び実験例2のX線回折パターンを示す図。
【
図2】実験例における各サンプルの物性と消臭試験の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<消臭剤>
本発明の無機系消臭剤は、金属成分としてZnまたはAlを含有する金属-シリカヒドロゲルの球状粒子からなっている。Zn或いはAlは、一部が酸化物(ZnO或いはAl2O3)の形で導入されている場合がある。
【0016】
かかる消臭剤は、前述した特許文献5に開示されている非晶質シリカ-亜鉛粒子と酷似しているが、大きな相違点は、特許文献5の粒子は、実質的に水を含まない非晶質粒子であるのに対し、本発明の粒子は、ヒドロゲルの形態を有しているという点である。即ち、本発明では、分散媒としての水を含んでおり、これが、特に硫化水素に対して大きな消臭性を示す一因であると本発明者等は考えている。即ち、硫化水素が、本発明のヒドロゲル粒子が有する水分に溶解して捕捉され、これが硫化水素に対して大きな消臭力を発揮する要因となっていると考えられるのである。
【0017】
従って、特許文献5の非晶質粒子は、大きな消臭力を発揮するために、一次粒子径や水酸基量などが一定の範囲にあることが必須であるが、本発明のヒドロゲル粒子では、水分が消臭性に大きな影響を与えるため、このような厳格な条件を必要としない。また、特許文献5の非晶質粒子は、金属成分がZnに限定されているが、本発明のヒドロゲル粒子は、亜鉛に限定されるものではなく、Alを金属成分として含んでいてもよい。これも、含有水分が消臭性に大きな影響を与えているためと考えられる。
【0018】
また、本発明は長径が1mm以上の球状ヒドロゲル粒子であるため、透明性の高い容器に収容することによって、容器内の球状ヒドロゲル粒子の集合物の上層部分から下層部分に至るまで個々の球状ヒドロゲル粒子の形状を視認でき、優れた意匠効果を得ることができる。
【0019】
消臭剤として使用される本発明のヒドロゲル粒子は、上述したように、シリカ成分以外に、Zn或いはAlを金属成分として含むものであるが、これら金属成分は、元素基準で、ケイ素原子あたり1~20質量%の量で含有している。これら金属成分の含有量が多すぎると、シリカに由来する粒子構造が崩れてしまい、細孔等による悪臭成分の消臭性が損なわれてしまう。また、金属成分の含有量が少なすぎると、これら金属成分の含有によるアンモニアや硫化水素に対する消臭性の向上効果が発現せず、シリカ単独使用と変わらなくなってしまう。
【0020】
本発明において、上記のヒドロゲル粒子の金属成分の好適な含有量は、Zn及びAlによって異なる。
例えば、Znを金属成分として含有するヒドロゲル粒子(以下、Zn型Siヒドロゲル粒子と呼ぶ)での好適な元素組成は、下記式(1):
SiO2・xZnO (1)
式中、xは、0.009~0.185の数を示す、
で表される。
また、Alを金属成分として含有するヒドロゲル粒子(以下、Al型Siヒドロゲル粒子と呼ぶ)での好適な元素組成は、下記式(2):
SiO2・yAlO3/2 (2)
式中、yは、0.007~0.147の数を示す、
で表される。
【0021】
本発明において、ヒドロゲル粒子の水分含有量は、一定の粒子強度が維持されている限り、特に制限されていないが、一般に強熱減量(110℃)が70質量%以上であればよい。
【0022】
さらに、特許文献5の消臭剤(シリカ亜鉛系粒子)は非晶質であり、そのXRDは、結晶ピークを有していない。一方、本発明の消臭剤(ヒドロゲル粒子)は、製造条件によっては、その他の金属成分(ZnO或いはAl2O3)に由来する結晶ピークを示すことがある。これら金属成分に由来する結晶ピークを示すときは、これらの金属成分がシリカと強固に結合しておらず、混合物に近い形で存在していることを意味するが、このような粒子であっても、ヒドロゲルを形成して水分を含んでいることから、硫化水素やアンモニアに対して高い消臭性を示すものと思われる。
【0023】
また、本発明の消臭剤(ヒドロゲル粒子)は、その製造法に由来して、球形状の粒子であり、例えば、短径/長径の比で定義される真球度が0.7以上、特に0.9以上の範囲にある。従って、表面積が大きく、消臭性を最も発揮する形状を有しており、また、所定の容器への充填にも優れている。
このような球形状のヒドロゲル粒子の大きさは製造条件によってある程度調節することができ、特に制限されるものではなく、また厳密に規定することはできないが、一般に、長径が1~10mmの範囲にあることが好ましい。過度に大きいと、粒子強度が低くなり、球状形状を維持することが困難となり、また過度に小さいと、取り扱いが困難となるからである。
【0024】
<消臭剤の製造>
このような本発明の消臭剤は、上述したZn型及びAl型のシリカヒドロゲル粒子からなるが、この粒子は、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸とを瞬時に混合してゾルを形成させ、形成されるゾルを大気中に放出させて球状のゲルを生成させる際に、ケイ酸アルカリ水溶液或いは鉱酸の何れか一方に、Zn源或いはAl源を混合しておくことにより製造される。
【0025】
ケイ酸アルカリとしては、下記式:
Na2O・mSiO2
式中、mは、1~4、特に2.5~3.5の数である、
で表されるケイ酸ソーダが好適である。mが上記範囲よりも小さいと、収率が低下したり粒子形状や粒子形態が不揃いになり易く、また部分中和に多量の酸が必要になり好ましくない。一方、mが上記範囲よりも大きくなると、ゾルの安定性が低下して吸着活性が低下したり、粒子形態が真球状から外れたものとなったり、粒径分布もシャープでなくなる等の不都合がある。
【0026】
用いるケイ酸アルカリ水溶液のケイ酸アルカリ濃度は、SiO2基準で100乃至225g/Lの濃度、特に130乃至150g/Lの濃度を有するものが好適である。
【0027】
鉱酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、りん酸が代表的であるが、通常、取り扱い性や、球状シリカヒドロゲルの性能、粒径及び形態の一様さの点で硫酸が最も好適である。また、酸濃度は、より迅速にゾルを形成し且つ一気にゲル化を行うという点で、比較的高濃度であることが好ましく、例えば8~16質量%の濃度で使用するのがよい。
【0028】
Zn源としては、硫酸亜鉛水溶液が使用される。また、Al源としては、いわゆる硫酸バンド(硫酸アルミニウム)が使用される。
このようなZn源及びAl源は、ケイ酸アルカリ水溶液に添加しておいてもよいし、鉱酸に添加しておいてもよいし、さらには、ケイ酸アルカリ水溶液及び鉱酸の何れに添加しておいてもよい。ただし、反応条件の調整が容易であることに加え、最も消臭能力の高いヒドロゲル粒子を得るという点では、鉱酸に添加するのが最適である。
さらに、上記のZn源及びAl源は、ケイ素原子当りのZn或いはAl原子の量が前述した範囲となる割合で使用される。
【0029】
上記のようなZn源或いはAl源が添加されているケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸との混合は、二流体ノズルを用いて一気に行われ、これにより瞬時にゾルが形成され、ノズル内での混合後、瞬時にノズルから吐出される。これにより、吐出されたゾルは、表面張力によって球状化し、同時にゲル化する。ノズルからの吐出方向は、通常上向きであり、放物線の頂点でゲル化することとなる。
【0030】
上記のような二流体ノズルでの混合に際して、鉱酸の供給比率は、混合時のpHが6~11となるように設定することが好ましい。
また、鉱酸にZn源或いはAl源が添加されている場合には、鉱酸の流量は、ケイ素原子に対するZn原子或いはAl原子の比率が前述した範囲となるように設定される。
【0031】
上記のようにしてゾルを瞬時に形成した後、二流体ノズルからゾルを放出することにより、球状化及びゲルの生成が行われ、ヒドロゲルの球状粒子が得られるわけであるが、二流体ノズルへの供給速度が速く、二流体ノズルからの液の吐出圧力が高いほど(液の吐出速度が速いほど)、粒子径は小さく、真球度が高くなり、この吐出圧力が低いほど、粒子径は大きく、真球度は小さくなる傾向がある。従って、この傾向を利用して製造条件を調整することにより、目的とするヒドロゲル粒子を得ることができる。
【0032】
上記のようにして形成されるヒドロゲル粒子は、そのまま回収することもできるが、稀アルカリ水溶液を張った受け貯槽に落下させて回収することもでき、この受け貯槽で、ヒドロゲルの熟成を行うことにより、性能及び形状の安定したシリカゲルを得ることができる。熟成処理は、40乃至15℃の温度で4乃至16時間程度が適当である。
【0033】
熟成処理を終えたヒドロゲル粒子は、そのままでもH2S及びNH3の消臭性能を持つが、ゲル中に残留するアルカリ分を除くために、酸処理による脱アルカリ処理に付してもよい。この脱アルカリ処理は、pH1乃至3.5の酸水溶液を使用して、40乃至15℃の温度で8乃至24時間程度の処理が適当である。
【0034】
上記の処理を終えたシリカゲル粒子は洗浄処理に付する。洗浄処理は、流水を使用して、pHが7.5±0.1の範囲にあり、且つ伝導度が50mSの範囲となるようにするのがよい。
【0035】
かくして得られたヒドロゲル粒子は、前述したように、硫化水素に対して優れた消臭性を示し、またアンモニアに対する消臭性も示し、何れも有機系消臭剤よりも優れた消臭性を示す。
従って、本発明は、特に悪臭の強いトイレなどに置かれる消臭剤として好適であり、また、粒子強度も高いことから、猫などのペット用トイレ砂としても好適に使用される。
【実施例】
【0036】
本発明を次の実験例で説明する。
なお、以下の実験で行った各種の測定は、次の方法により行った。
【0037】
(1)Zn/Si及びAl/Siの測定;
Al/Siは株式会社リガク製の蛍光X線分析装置ZSXprimusII(以降XRF)を用い、蛍光X線分析により定量した。Zn/SiはJIS M 8853:1998に準拠して測定した既知の試料を用いて、組成と蛍光X線ピーク強度を対応させた検量線を作成し、蛍光X線分析により定量した。
【0038】
(2)硫化水素及びアンモニア吸着量の測定;
硫化水素の測定は、1.8L保存ビンに表中記載量のサンプルを入れた後に、保存ビン内の濃度が100ppmになるよう注射器で硫化水素ガスを注入した。注入30分後、60分後、120分後に、(株)ガステック製検知管No.4LLを使用し、硫化水素の濃度を測定した。アンモニアの測定は、1.8L保存ビンに表中記載量のサンプルを入れた後に、初期濃度が200ppmになるようアンモニアガスを注入した。注入30分後、60分後、120分後に、(株)ガステック製検知管No.3Laを使用し、アンモニアの濃度を測定した。同時に各ガスのみを前記操作時と同量となるよう別々に入れた保存ビン(ブランク)を用意し、注入した直後の各ガス濃度を初期濃度とした。60分後、120分後の消臭率が変化していない場合、平衡と判断した。尚、硫化水素及びアンモニアの測定はそれぞれ別の保存ビンにて行った。消臭率は以下の計算式で求めた。
消臭率(%)=(A-B)×100/C
式中、Aは、ブランクの120分後の各ガス濃度であり、
Bは、試料の120分後の各ガス濃度であり、
Cは、ブランクの注入直後の各ガス濃度である。
【0039】
(3)真球度の測定
実験例及び比較例に記載の球状ヒドロゲルについて、目視にて最も長い直径を長径、最も短い直径を短径とし、ノギスを用いて測定した。また短径/長径の値を真球度とした。測定はn=5で行った。
【0040】
(4)比表面積の測定
マイクロメリティックス社製Tristar2による窒素吸着法にて測定した。比表面積はBET法を採用した。なお試料は150℃で前処理したものを測定した。
【0041】
(5)XRDの測定;
株式会社リガク製の試料粉末型X線回折装置UltimaIVを用いて、下記の条件でX線回折パターンを測定した。なお試料は150℃で前処理したものを使用した。(測定結果は
図1を参照)
ターゲット:Cu
フィルター:Ni
検出器:SC
電圧:40kV
電流:40mA
走査速度:3°/min
サンプリング幅:0.02°
スリット:DS 0.5°,RS 0.3mm,SS 0.5°
【0042】
(実験例1)
SiO2基準で0.176g/ml濃度の珪酸ソーダ溶液をA液とする。一方、16質量%濃度硫酸に亜鉛華(和光純薬製特級酸化亜鉛)をA液中のSiO2基準でSiO2:ZnO=92:8の質量比で溶解させた硫酸亜鉛溶液をB液とする。両液を放出口3mmΦ、長さ200mmの2流体ノズルを用いて、A液の平均流速が1.6リットル/minとB液0.64リットル/minで放出口を約80°斜め上方に向けて両者を瞬時に混合、大気中に放出させ、PP製受け槽の水中に降らせ、シリカのゾルーゲル反応によって、球状シリカゲルを調製し、次いで0.12m3/hr以下の流水下で約17hr水洗することで球状シリカヒドロゲルを得た。
【0043】
(実験例2)
SiO2基準で0.176g/ml濃度の珪酸ソーダ溶液に亜鉛華(和光純薬製特級酸化亜鉛)をA液中のSiO2基準でSiO2:ZnO=92:8の質量比で含む珪酸ソーダ溶液をA液とする。一方で16質量%濃度硫酸をB液とする。以降は実験例1と同様の操作を行って球状シリカヒドロゲルを得た。
【0044】
(実験例3)
SiO2基準で0.176g/ml濃度の珪酸ソーダ溶液をA液とする。一方で、12質量%濃度硫酸にAl2O3基準で0.103g/ml濃度の硫酸バンドをSiO2:Al2O3=93:7の質量比で混合した溶液をB液とする。以降は実験例1と同様に球状シリカゲルを調製し、次いで1.15質量%硫酸で17hrの酸処理、0.12m2/hr以下の流水下で約8hr水洗することで球状シリカヒドロゲルを得た。
【0045】
(比較例1)
市販の吸水性樹脂を含む有機系消臭剤A(小林製薬株式会社製、無香空間)を使用した。
【0046】
(比較例2)
市販の吸水性樹脂を含む有機系消臭剤B(ライオンケミカル株式会社製、アクアリフレ)を使用した。
【0047】
(比較例3)
市販の吸水性樹脂を含む有機系消臭剤C(エステー株式会社製、消臭力クリアビーズ)を使用した。
【0048】
(比較例4)
特許第6184794号、実施例1の非晶質-シリカ亜鉛系アンモニア消臭剤(乾燥粉末)を使用した。
【0049】
上記の各実験例について硫化水素及びアンモニア消臭能力を
図2に示す。