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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 G
G01T1/20 E
G01T1/20 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021050329
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148587
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】會田 博之
(72)【発明者】
【氏名】堀内 弘
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-157717(JP,A)
【文献】特開2015-004560(JP,A)
【文献】特開2008-215951(JP,A)
【文献】特開2015-045615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域及び前記検出領域の外側の非検出領域を有する光電変換基板と、
前記光電変換基板の上に設けられ、少なくとも前記検出領域に位置したシンチレータ層と、
前記非検出領域に位置し、前記シンチレータ層を囲み、前記光電変換基板に接着された枠状の封止部と、
前記シンチレータ層の上方に設けられ、前記検出領域及び前記非検出領域に位置し、前記封止部に接着され、前記光電変換基板及び前記封止部とともに前記シンチレータ層を覆ったカバーと、を備え、
前記光電変換基板、前記封止部、及び前記カバーで囲まれ、かつ、前記シンチレータ層が位置している空間は、大気圧より減圧された空間であり、
前記カバーは、
前記検出領域に位置した貫通孔を有する金属層と、
前記金属層に積層され前記貫通孔を気密に閉塞した樹脂フィルムと、を有し、
前記空間が大気圧より減圧された第1状態にて、前記カバーは、前記シンチレータ層に密着し、
前記空間の内部の気圧が前記第1状態より上昇した第2状態にて、前記カバーは、前記シンチレータ層から離れる、
射線検出器。
【請求項2】
前記金属層は、前記貫通孔を含み前記検出領域に位置した複数の貫通孔を有している、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記光電変換基板は、前記検出領域にマトリクス状に設けられた複数の光電変換部をさらに有し、
各々の前記光電変換部は、スイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続された光電変換素子と、を有し、
平面視において、前記貫通孔における最大の直線長さを第1長さ、隣合う一対の前記光電変換素子間の距離を第2長さ、とすると、
前記第1長さは、前記第2長さ未満である、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記貫通孔は、平面視において、前記検出領域の重心より前記非検出領域に近接している、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項5】
検出領域及び前記検出領域の外側の非検出領域を有する光電変換基板と、
前記光電変換基板の上に設けられ、少なくとも前記検出領域に位置したシンチレータ層と、
前記非検出領域に位置し、前記シンチレータ層を囲み、前記光電変換基板に接着された枠状の封止部と、
前記シンチレータ層の上方に設けられ、前記検出領域及び前記非検出領域に位置し、前記封止部に接着され、前記光電変換基板及び前記封止部とともに前記シンチレータ層を覆ったカバーと、を備え、
前記光電変換基板、前記封止部、及び前記カバーで囲まれ、かつ、前記シンチレータ層が位置している空間は、大気圧より減圧された空間であり、
前記カバーは、前記検出領域に位置した凹部を有する金属層を有する、
放射線検出器。
【請求項6】
前記金属層は、前記凹部を含み前記検出領域に位置した複数の凹部を有している、
請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記カバーは、前記金属層に積層された樹脂フィルムをさらに有する、
請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記光電変換基板は、前記検出領域にマトリクス状に設けられた複数の光電変換部をさらに有し、
各々の前記光電変換部は、スイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続された光電変換素子と、を有し、
平面視において、前記凹部における最大の直線長さを第1長さ、隣合う一対の前記光電変換素子間の距離を第2長さ、とすると、
前記第1長さは、前記第2長さ未満である、
請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記凹部は、平面視において、前記検出領域の重心より前記非検出領域に近接している、
請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記金属層は、100μm未満の厚みを有する金属箔である、
請求項1又は5に記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記樹脂フィルムは、前記検出領域及び前記非検出領域に位置し、
前記樹脂フィルムの輪郭は、平面視にて、前記金属層の輪郭と一致している、
請求項1又は7に記載の放射線検出器。
【請求項12】
前記金属層は、前記シンチレータ層と前記樹脂フィルムとの間に位置している、
請求項1又は7に記載の放射線検出器。
【請求項13】
前記カバーは、前記金属層に積層され前記シンチレータ層と前記金属層との間に位置した他の樹脂フィルムをさらに有する、
請求項12に記載の放射線検出器。
【請求項14】
前記樹脂フィルムは、前記シンチレータ層と前記金属層との間に位置している、
請求項1又は7に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
X線フィルムに置き換わるX線画像診断機器としてのX線画像検出器の普及が拡大している。X線フィルムに対してX線画像検出器はX線撮影から画像確認までの時間が非常に短く、画像のダイナミックレンジが広く、フィルム現像に必要な薬液を必要としないという利点を有している。
【0003】
X線画像検出器は、光電変換基板、シンチレータ層等を備えている。光電変換基板は、マトリクス状に敷き詰められた複数の光電変換部等を有している。現在実用化されているX線画像検出器の多くは、人体等を透過したX線画像をシンチレータ層にて可視光に変換し、変換された可視光像は光電変換部によって電気信号に変換され、変換された電気信号を元に作成した画像情報を外部に出力している。
【0004】
X線を光に変換するシンチレータ層には多くの種類が存在するが、現在の多くのX線画像検出器ではシンチレータ層に酸化物蛍光体(Gd2O2S:Tb等)及び塩化物(CsI:Tl等)の2種類のうちどちらかを用いている。
【0005】
特に塩化物のタリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:TL)を用いる場合、真空蒸着法により、複数の柱状結晶を光電変換基板上に敷き詰め垂直に成長させてシンチレータ層を形成することが可能である。シンチレータ層の内部にて発生した可視光は柱状結晶の内部に閉じ込められるため、光の散乱が押さえられ、解像度の高い画像を得ることができる。
【0006】
また、シンチレータ層の表面に、白色顔料と樹脂の混合物を主成分とする反射膜を形成することで、シンチレータ層の内部にて発生し光電変換基板の反対側に逃げる可視光をシンチレータ層側に反射させることができる。光電変換基板の光電変換部に到達する可視光の量が増加することで、高感度なX線画像検出器を得ることができる。
【0007】
CsIで形成されたシンチレータ層を用いることで解像度の高いX線画像が得られるが、上記シンチレータ層においては吸湿性が高いという特徴が有り、上記シンチレータ層が大気に接していると大気中の水分を吸収してしまう。
【0008】
CsI:Tlで形成されたシンチレータ層が水分を吸収すると、上記シンチレータ層において、X線を光に変換する効率が低下したり、水分の吸収により柱状結晶が崩れ光の閉じ込め効果が低下したりし、解像度の低下及び出力されるX線画像の画質低下を招くことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-179510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本実施形態は、放射線を検出する性能の劣化を検知することのできる放射線検出器を提供する。又は、製品コストの高騰を抑制することのできる放射線検出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係る放射線検出器は、
検出領域及び前記検出領域の外側の非検出領域を有する光電変換基板と、前記光電変換基板の上に設けられ、少なくとも前記検出領域に位置したシンチレータ層と、前記非検出領域に位置し、前記シンチレータ層を囲み、前記光電変換基板に接着された枠状の封止部と、前記シンチレータ層の上方に設けられ、前記検出領域及び前記非検出領域に位置し、前記封止部に接着され、前記光電変換基板及び前記封止部とともに前記シンチレータ層を覆ったカバーと、を備え、前記光電変換基板、前記封止部、及び前記カバーで囲まれ、かつ、前記シンチレータ層が位置している空間は、大気圧より減圧された空間であり、前記カバーは、前記検出領域に位置した貫通孔を有する金属層と、前記金属層に積層され前記貫通孔を気密に閉塞した樹脂フィルムと、を有し、前記空間が大気圧より減圧された第1状態にて、前記カバーは、前記シンチレータ層に密着し、前記空間の内部の気圧が前記第1状態より上昇した第2状態にて、前記カバーは、前記シンチレータ層から離れる。
【0012】
また、一実施形態に係る放射線検出器は、
検出領域及び前記検出領域の外側の非検出領域を有する光電変換基板と、前記光電変換基板の上に設けられ、少なくとも前記検出領域に位置したシンチレータ層と、前記非検出領域に位置し、前記シンチレータ層を囲み、前記光電変換基板に接着された枠状の封止部と、前記シンチレータ層の上方に設けられ、前記検出領域及び前記非検出領域に位置し、前記封止部に接着され、前記光電変換基板及び前記封止部とともに前記シンチレータ層を覆ったカバーと、を備え、前記光電変換基板、前記封止部、及び前記カバーで囲まれ、かつ、前記シンチレータ層が位置している空間は、大気圧より減圧された空間であり、前記カバーは、前記検出領域及び前記非検出領域に位置した凹部を有する金属層を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
図2図2は、上記X線検出器の支持基板、X線検出パネル、回路基板、複数のFPC、及び画像伝送部を示す斜視図である。
図3図3は、上記X線検出パネルの一部を示す断面図である。
図4図4は、上記X線検出パネルを示す平面図である。
図5図5は、上記X線検出パネルの一部を線V-Vに沿って示す断面図である。
図6図6は、上記X線検出パネルの一部を示す断面図であり、正常な状態のX線検出パネルを示す図である。
図7図7は、上記X線検出パネルの一部を示す断面図であり、問題が発生した状態のX線検出パネルを示す図である。
図8図8は、上記実施形態の変形例1に係るX線検出パネルの一部を示す断面図である。
図9図9は、上記実施形態の変形例2に係るX線検出パネルの一部を示す断面図である。
図10図10は、上記実施形態の変形例4に係るX線検出パネルの一部を示す断面図であり、シンチレータ層及びカバーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0015】
始めに、本発明の実施形態の基本構想について説明する。
シンチレータ層に関する吸湿性の問題を解決するために、シンチレータ層を覆うように金属箔からなる防湿カバーをかぶせ、紫外線硬化型接着剤、熱可塑性樹脂等で形成される封止部を用いて防湿カバーと光電変換基板の表面とをシンチレータ層の周辺部分にて接着することが考えられる。これにより、外部の大気中に含まれる水分からシンチレータ層を保護し、X線画像検出器によって生成する画質の劣化を抑制することができる。
【0016】
また、防湿カバー、光電変換基板、及び封止部にて密閉された空間内部を減圧することで、製造時に混入する僅かな水分も除去することが可能となり、水分によるシンチレータ層の劣化を抑制することができ、X線画像検出器によって生成する画質の劣化を抑制することが可能となる。
【0017】
上記のように、水分によって劣化しやすいシンチレータ層を金属箔からなる防湿カバーにて覆い、シンチレータ層の周辺にて防湿カバーと光電変換基板とを接着することで、外部からの水分を遮断している。
【0018】
しかしながら、製造上のトラブルにより、防湿カバーと光電変換基板との接着時に微細なリークパスが封止部に発生し、外部の大気が徐々に減圧された空間の内部に侵入する恐れがある。侵入した大気に含まれる水分によってシンチレータ層が劣化すると、製品の性能が低下し、想定された製品寿命よりも前に製品の使用に支障が出る可能性がある。
【0019】
また、製造上のトラブルにより、防湿カバーと光電変換基板との接着時に封止部の硬化が不十分となる可能性がある。防湿カバーと光電変換基板との接着強度の低下を招くため、製品の使用期間に受ける振動や熱応力等により、光電変換基板から防湿カバーとの剥離が発生する可能性がある。その場合も、外部の大気が徐々に減圧された空間の内部に侵入し、侵入した大気に含まれる水分によってシンチレータ層が劣化し、製品の性能が低下することで、想定された製品寿命よりも前に製品の使用に支障が出る可能性がある。
【0020】
上記製造上のトラブルは現在の技術水準において完全に防ぐことは困難である。そのため減圧空間の内部への外気の侵入を検知することができれば、シンチレータ層の劣化の有無を使用者が判断することができる。製品の使用に支障が出る前に製品の修理や交換を使用者に促すことが可能になるため、製品の使用者は余裕を持って製品の交換や修理を行うことが可能となり、製品の修理や交換によるトラブルを最小限にすることが可能となる。
【0021】
一般的な手段及び手法として、減圧空間の内部への外気の侵入を検知するには、減圧空間の内部に気圧センサーを組み込み、気圧センサーにて減圧空間の内部への気体の侵入による内部圧力の上昇を検知することが考えられる。
【0022】
上記手段及び手法の場合、光電変換基板上に形成された薄いシンチレータ層を覆うように防湿カバーが形成されているため、厚みのある気圧センサーを減圧空間の内部に組み込むことは困難である。また、X線画像への影響を避けるため外部からのX線が入射する領域にてシンチレータ層の上に気圧センサーを組み込むことも困難である。
【0023】
上記理由により、製造上のトラブルによって発生した減圧空間の内部への外気の侵入を検知することが困難となっている。これにより、外気の侵入による性能低下を起こす前に製品の修理や交換を促すことができず、製品の性能低下による支障が引き起こされるまで使用者が気づくことができず、製品の使用に支障が出てから交換や修理を行う事によるトラブルが大きな問題となってしまう。
また製品に気圧センサーを組み込むことで製品コストが高騰し、安価な製品を実現することが困難になってしまう。
【0024】
かかる問題を解決すべく、本発明の実施形態においては、減圧空間の内部への外気の侵入の検知を可能にし、製品の使用時におけるトラブルを最小化することを製品コストを抑えて実現するものである。本発明の実施形態において、放射線を検出する性能の劣化を検知することのできる放射線検出器を得ることができるものである。又は、製品コストの高騰を抑制することのできる放射線検出器を得ることができるものである。次に、上記問題を解決するための手段及び手法について説明する。
【0025】
(一実施形態)
まず、一実施形態に係るX線検出器について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、X線画像検出器であり、X線検出パネルを利用するX線平面検出器である。
【0026】
図1に示すように、X線検出器1は、X線検出モジュール10、支持基板12、回路基板11、スペーサ9a,9b,9c,9d、筐体51、入射窓52等を備えている。
X線検出モジュール10は、X線検出パネルPNL、FPC(フレキシブルプリント基板)2e1等を備えている。X線検出パネルPNLは、支持基板12と入射窓52との間に位置している。X線検出パネルPNLは、入射窓52と対向したカバー7を備えている。
【0027】
入射窓52は、筐体51の開口に取付けられている。入射窓52はX線を透過させる。そのため、X線は入射窓52を透過してX線検出パネルPNLに入射される。入射窓52は、板状に形成され、筐体51内部を保護する機能を有している。入射窓52は、X線吸収率の低い材料で薄く形成することが望ましい。これにより、入射窓52で生じる、X線の散乱と、X線量の減衰とを低減することができる。そして、薄くて軽いX線検出器1を実現することができる。
X線検出モジュール10、支持基板12、回路基板11等は、筐体51及び入射窓52で囲まれた空間の内部に収容されている。
【0028】
X線検出パネルPNLは、薄い部材を積層して構成されているため、軽く機械的強度の低いものである。このため、X線検出パネルPNLは、粘着シートを介して支持基板12の平坦な一面に固定されている。支持基板12は、例えばアルミニウム合金で板状に形成され、X線検出パネルPNLを安定して保持するために必要な強度を有している。これにより、X線検出器1に外部から振動や衝撃が加わった際におけるX線検出パネルPNLの破損を抑制することができる。
【0029】
支持基板12の他面には、スペーサ9a,9bを介して回路基板11が固定されている。スペーサ9a,9bを使用することで、主に金属から構成される支持基板12から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。
筐体51の内面には、スペーサ9c,9dを介して回路基板11が固定されている。スペーサ9c,9dを使用することで、主に金属から構成される筐体51から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。筐体51は、回路基板11及びスペーサ9a,9b,9c,9dを介して支持基板12等を支持している。
【0030】
回路基板11にはFPC2e1に対応するコネクタが実装され、FPC2e1はコネクタを介して回路基板11に電気的に接続されている。FPC2e1とX線検出パネルPNLとの接続には、ACF(異方性導電フィルム)を利用した熱圧着法が用いられる。この方法により、X線検出パネルPNLの複数の微細なパッドと、FPC2e1の複数の微細なパッドとの電気的接続が確保され、FPC2e1がX線検出パネルPNLに物理的に固定される。なお、X線検出パネルPNLのパッドに関しては後述する。
【0031】
上記のように、回路基板11は、上記コネクタ、FPC2e1等を介してX線検出パネルPNLに電気的に接続されている。回路基板11は、X線検出パネルPNLを電気的に駆動し、かつ、X線検出パネルPNLからの出力信号を電気的に処理するものである。
【0032】
図2は、X線検出器1の支持基板12、X線検出パネルPNL、回路基板11、複数のFPC2e1,2e2、及び画像伝送部4を示す斜視図である。なお、図2には、X線検出器1の全ての部材を示していない。
図2に示すように、X線検出パネルPNLは、光電変換基板2、シンチレータ層5等を備えている。入射X線3はシンチレータ層5の内部にて吸収され、シンチレータ層5は入射X線3の強度に比例した光強度(輝度レベル)の蛍光に変換される。
【0033】
光電変換基板2は、基板2a、複数の光電変換部2b、複数の制御ライン(又はゲートライン)2c1、複数のデータライン(又はシグナルライン)2c2等を有している。なお、光電変換部2b、制御ライン2c1、及びデータライン2c2の数、配置等は図2の例に限定されるものではない。
【0034】
複数の制御ライン2c1は、行方向に延在し、列方向に所定の間隔をあけて並べられている。複数のデータライン2c2は、列方向に延在し、複数の制御ライン2c1と交差し、行方向に所定の間隔をあけて並べられている。
【0035】
光電変換部2bは、基板2aの一方の面側に複数設けられている。光電変換部2bは、制御ライン2c1とデータライン2c2とにより区画された四角形状の領域に設けられている。1つの光電変換部2bは、X線画像の1つの画素に対応する。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べられている。上記のことから、光電変換基板2は、アレイ基板である。
【0036】
各々の光電変換部2bは、光電変換素子2b1と、スイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)2b2と、を有している。TFT2b2は、対応する一の制御ライン2c1と、対応する一のデータライン2c2とに接続されている。光電変換素子2b1はTFT2b2に電気的に接続されている。シンチレータ層5の内部にて変換された蛍光は、隣接して設置されている光電変換基板2の表面に到達し、光電変換素子2b1に入射する。
【0037】
制御ライン2c1は、FPC2e1を介して回路基板11に電気的に接続されている。回路基板11は、FPC2e1を介して複数の制御ライン2c1に制御信号S1を与える。データライン2c2は、FPC2e2を介して回路基板11に電気的に接続されている。光電変換素子2b1は、蛍光を電荷情報に変換する。光電変換素子2b1によって変換された画像データ信号S2(光電変換部2bに蓄積された電荷)は、TFT2b2、データライン2c2、及びFPC2e2を介して回路基板11に伝送される。
【0038】
X線検出器1は、画像伝送部4を備えている。画像伝送部4は、配線4aを介して回路基板11に接続されている。なお、画像伝送部4は、回路基板11に組込まれてもよい。画像伝送部4は、図示しない複数のアナログ-デジタル変換器によりデジタル信号に変換された画像データの信号に基づいて、X線画像を生成する。生成されたX線画像のデータは、画像伝送部4から外部の機器に向けて出力される。
【0039】
図3は、X線検出パネルPNLの一部を示す断面図である。
図3に示すように、光電変換基板2は、基板2a、複数の光電変換部2b、絶縁層21,22,23,24,25を有している。複数の光電変換部2bは、検出領域DAに位置している。各々の光電変換部2bは、光電変換素子2b1と、TFT2b2と、を備えている。
【0040】
TFT2b2は、ゲート電極GE、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEを有している。光電変換素子2b1は、フォトダイオードで構成されている。なお、光電変換素子2b1は、光を電荷に変換するように構成されていればよい。
【0041】
基板2aは、板状の形状を有し、絶縁材料で形成されている。上記絶縁材料としては、無アルカリガラスなどのガラスを挙げることができる。基板2aの平面形状は、例えば四角形である。基板2aの厚みは、例えば0.7mmである。絶縁層21は、基板2aの上に設けられている。
【0042】
絶縁層21の上に、ゲート電極GEが形成されている。ゲート電極GEは、上記制御ライン2c1に電気的に接続されている。絶縁層22は、絶縁層21及びゲート電極GEの上に設けられている。半導体層SCは、絶縁層22の上に設けられ、ゲート電極GEに対向している。半導体層SCは、非晶質半導体としての非晶質シリコン、多結晶半導体としての多結晶シリコン等の半導体材料で形成されている。
【0043】
絶縁層22及び半導体層SCの上に、ソース電極SE及びドレイン電極DEが設けられている。ゲート電極GE、ソース電極SE、ドレイン電極DE、上記制御ライン2c1、及び上記データライン2c2は、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成されている。
【0044】
ソース電極SEは、半導体層SCのソース領域に電気的に接続されている。また、ソース電極SEは、上記データライン2c2に電気的に接続されている。ドレイン電極DEは、半導体層SCのドレイン領域に電気的に接続されている。
【0045】
絶縁層23は、絶縁層22、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEの上に設けられている。光電変換素子2b1は、ドレイン電極DEに電気的に接続されている。絶縁層24は、絶縁層23及び光電変換素子2b1の上に設けられている。バイアス線BLは、絶縁層24の上に設けられ、絶縁層24に形成されたコンタクトホールを通り光電変換素子2b1に接続されている。絶縁層25は、絶縁層24及びバイアス線BLの上に設けられている。
【0046】
絶縁層21,22,23,24,25は、無機絶縁材料、有機絶縁材料等の絶縁材料で形成されている。無機絶縁材料としては、酸化物絶縁材料、窒化物絶縁材料、及び酸窒化物絶縁材料を挙げることができる。有機絶縁材料としては樹脂を挙げることができる。
【0047】
シンチレータ層5は、光電変換基板2(複数の光電変換部2b)の上に設けられている。シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置し、複数の光電変換部2bの上方を覆っている。シンチレータ層5は、入射されるX線を光(蛍光)に変換するように構成されている。
【0048】
なお、光電変換素子2b1は、シンチレータ層5から入射される光を電荷に変換する。変換された電荷は光電変換素子2b1に蓄積される。TFT2b2は、光電変換素子2b1への蓄電及び光電変換素子2b1からの放電を切替えることができる。なお、光電変換素子2b1の自己容量が不十分である場合、光電変換基板2はコンデンサ(蓄積キャパシタ)をさらに有し、光電変換素子2b1で変換された電荷をコンデンサに蓄積してもよい。
【0049】
シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)で形成されている。真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ層5が得られる。シンチレータ層5の厚みは、例えば、600μmである。シンチレータ層5の最表面において、シンチレータ層5の柱状結晶の太さは、8乃至12μmである。
【0050】
シンチレータ層5を形成する材料は、CsI:Tlに限定されるものではない。シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化ナトリウム(NaI:Tl)、ナトリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Na)、ユーロピウム賦活臭化セシウム(CsBr:Eu)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、酸硫化ガドリニウム(GdS)等で形成されてもよい。
【0051】
なお、真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を形成する際には、開口を有するマスクが用いられる。この場合、光電変換基板2上の開口に対峙する領域にシンチレータ層5が形成される。また、蒸着によるシンチレータ材は、マスクの表面にも堆積する。そして、シンチレータ材は、マスクの開口の近傍にも堆積し、開口の内部に徐々に張り出すように結晶が成長する。マスクから開口の内部に結晶が張り出すと、開口の近傍において、光電変換基板2へのシンチレータ材の蒸着が抑制される。そのため、図2に示したように、シンチレータ層5の周縁近傍は、外側になるに従い厚みが漸減している。
【0052】
又は、シンチレータ層5は、マトリクス状に並べられ、光電変換部2bに一対一で設けられ、それぞれ四角柱状の形状を有する複数のシンチレータ部を有してもよい。そのようなシンチレータ層5を形成する際、酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子をバインダ材と混合したシンチレータ材を、光電変換基板2上に塗布し、シンチレータ材を焼成して硬化させる。その後、ダイサによりダイシングするなどし、シンチレータ材に格子状の溝部を形成する。上記の場合、複数のシンチレータ部の間の空間は、大気圧より減圧された空間に設定されている。
【0053】
フィルム状のカバー7は、シンチレータ層5の上方に設けられ、シンチレータ層5を覆っている。カバー7は、シンチレータ層5の露出部分を完全に覆っている。カバー7はシンチレータ層5等と接触している。
【0054】
ここで、隣合う一対の光電変換素子2b1間の距離を第2長さL2とする。第2長さL2は、平面視において、一の光電変換素子2b1の重心から隣の光電変換素子2b1の重心までの直線的な長さである。
【0055】
図4は、X線検出パネルPNLを示す平面図である。図4において、シンチレータ層5には右上がりの斜線を付し、封止部8には右下がりの斜線を付している。図5は、X線検出パネルPNLの一部を線V-Vに沿って示す断面図である。
【0056】
図4及び図5に示すように、光電変換基板2は、検出領域DAと、検出領域DAの外側の非検出領域と、を有している。検出領域DAは、四角形の領域である。光電変換基板2の非検出領域は、検出領域DAの周囲に位置する枠状の第1非検出領域NDA1と、第1非検出領域NDA1の外側の第2非検出領域NDA2と、を有している。本実施形態において、第2非検出領域NDA2は枠状の形状を有している。
【0057】
シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置している。シンチレータ層5は、側面5a及び上面5bを有している。側面5aは、第1非検出領域NDA1に位置している。側面5aは、順テーパ面である。シンチレータ層5の上面5bは、カバー7と対向している。
【0058】
光電変換基板2は、さらに複数のパッド2d1及び複数のパッド2d2を有している。パッド2d1及びパッド2d2は、第2非検出領域NDA2に位置している。本実施形態において、複数のパッド2d1は基板2aの左辺に沿って並べられ、複数のパッド2d2は基板2aの下辺に沿って並べられている。例えば、パッド2d1,2d2は、絶縁層23の上に設けられ、絶縁層24及び絶縁層25で覆われていない。
なお、図4には複数のパッドを模式的に示しており、複数のパッドの個数、形状、サイズ、位置、及びピッチは、図4に示す例に限定されるものではない。
【0059】
1つの制御ライン2c1は、検出領域DA、第1非検出領域NDA1、及び第2非検出領域NDA2を延在し、複数のパッド2d1のうちの1つと電気的に接続されている。1つのデータライン2c2は、検出領域DA、第1非検出領域NDA1、及び第2非検出領域NDA2を延在し、複数のパッド2d2のうちの1つと電気的に接続されている。
1つのパッド2d1にはFPC2e1に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続され、1つのパッド2d2にはFPC2e2に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている(図2)。
【0060】
X線検出パネルPNLは、封止部8をさらに備えている。封止部8は、第1非検出領域NDA1に位置し、シンチレータ層5を囲んでいる。封止部8は、枠状の形状を有し、シンチレータ層5の周囲を連続的に延在している。封止部8は、光電変換基板2(例えば、上記絶縁層25)に接着されている。
【0061】
カバー7は、検出領域DA及び第1非検出領域NDA1に位置している。カバー7は、図4に示す平面図において、シンチレータ層5を完全に覆っている。図5に示すように、シンチレータ層5のうち光電変換基板2及び封止部8で覆われていない部分は、カバー7で完全に覆われている。言い換えると、カバー7は、光電変換基板2及び封止部8とともにシンチレータ層5を覆っている。
【0062】
カバー7は、封止部8に直に接着されている。カバー7は、封止部8の少なくとも一部を覆っている。例えば、大気圧よりも減圧された環境においてカバー7と封止部8とを接合すれば、カバー7をシンチレータ層5の上面5b等に接触させることができる。光電変換基板2、封止部8、及びカバー7で囲まれ、かつ、シンチレータ層5が位置している空間は、大気圧より減圧された空間である。
【0063】
また、一般的に、シンチレータ層5には、その体積の10乃至40%程度の空隙が存在する。そのため、空隙にガスが含まれていると、X線検出器1を航空機などで輸送した場合や、X線検出器1を高地で使用した場合にガスが膨張してカバー7が破損する恐れがある。大気圧よりも減圧された環境においてカバー7と封止部8とを接合すれば、X線検出器1が航空機などで輸送された場合であってもカバー7の破損を抑制することができる。上記のことからも、光電変換基板2、封止部8及びカバー7により画された空間の圧力は、大気圧よりも低くした方が好ましい。
【0064】
封止部8は、熱可塑性樹脂を含む材料で形成されている。封止部8は、熱可塑性樹脂を主成分として含む材料で形成されている。封止部8は、100%熱可塑性樹脂で形成されてもよい。又は、封止部8は、熱可塑性樹脂に添加物が混在した材料で形成されてもよい。封止部8が熱可塑性樹脂を主成分として含んでいれば、封止部8は、加熱により、光電変換基板2とカバー7とを接合することができる。
【0065】
熱可塑性樹脂は、ナイロン、PET(Polyethyleneterephthalate)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、アクリル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等を利用することができる。この場合、ポリエチレンの水蒸気透過率は0.068g・mm/day・mであり、ポリプロピレンの水蒸気透過率は0.04g・mm/day・mである。これらの水蒸気透過率は低い。そのため、封止部8が、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも何れかを主成分として含んでいれば、封止部8の内部を透過してシンチレータ層5に到達する水分を大幅に少なくすることができる。
なお、封止部8は、紫外線硬化型樹脂を主成分とする材料で形成されてもよい。
【0066】
カバー7は、金属層31及び樹脂フィルム32を有している。金属層31は、検出領域DA及び第1非検出領域NDA1に位置している。金属層31は、大気中に含まれる水分により、シンチレータ層5の特性が劣化するのを抑制するために設けられている。金属層31は、アルミニウムを含む金属で形成されている。なお、金属層31は、銅を含む金属、マグネシウムを含む金属、タングステンを含む金属、ステンレス、コバール等で形成されてもよい。金属層31を含むカバー7は、防湿カバーとして機能し、水分の透過を、防止したり、大幅に抑制したりすることができる。
【0067】
また、金属層31は、光反射層として機能してもよい。金属層31の光反射機能は、光(蛍光)の利用効率を高めて感度特性の向上を図ることができる。すなわち、金属層31は、シンチレータ層5において生じた光のうち、光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう光を反射させて、光電変換部2bに向かうようにする。
【0068】
樹脂フィルム32は、金属層31に積層されている。樹脂フィルム32は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、テフロン(登録商標)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、弾性ゴム等の材料で形成することができる。金属層31は、例えば、前述した金属を含むものとすることができる。金属層31は、スパッタリング法、ラミネート法等を用いて形成することができる。
【0069】
次いで、X線検出パネルPNLのカバー7等について説明する。図6は、X線検出パネルPNLの一部を示す断面図であり、正常な状態のX線検出パネルPNLを示す図である。
図4及び図6に示すように、金属層31は、厚みTを有している。金属層31は、100μm未満の厚みTを有する金属箔である方が望ましい。シンチレータ層5の周囲の空間を減圧空間とすることにより、カバー7は外部の大気圧によりシンチレータ層5側に押され、カバー7をシンチレータ層5に良好に密着させることができる。
【0070】
金属層31は、シンチレータ層5と樹脂フィルム32との間に位置している。樹脂フィルム32により金属層31を覆うことができるので、外力などにより金属層31が受け得る損傷を抑制することができる。また、金属層31が樹脂フィルム32よりもシンチレータ層5側に設けられていれば、樹脂フィルム32を介した透湿によるシンチレータ層5の特性の劣化を抑制することができる。
【0071】
金属層31は、貫通孔hを有している。貫通孔hは、検出領域DAのうち相対的に放射線透過率の高い高透過領域TAとなっている。本実施形態において、貫通孔h(高透過領域TA)の形状は、平面視にて円形(真円)である。但し、貫通孔h(高透過領域TA)の形状は、楕円形等の真円以外の円形、四角形等の多角形、その他の形状であってもよい。
【0072】
樹脂フィルム32は、金属層31の貫通孔hを気密に閉塞している。貫通孔hは、樹脂フィルム32で完全に塞がれているため、貫通孔hを介した外部から減圧空間への気体の浸入を防止することができ、水分の浸入を抑制することができる。シンチレータ層5が位置している空間は、減圧空間に保たれている。
【0073】
図6において、ある角度を有する入射X線3aが検出領域DAのうち貫通孔h以外の領域に外部から入射した場合、入射X線3aは金属製のカバー7を透過し、シンチレータ層5に到達する。シンチレータ層5に到達した入射X線3aはシンチレータ層5の内部にて蛍光6aに変換され、蛍光6aは柱状構造を有するシンチレータ層5の柱状構造に沿って伝搬し光電変換素子2b1に到達する。光電変換素子2b1に到達した蛍光6aは光電変換素子2b1にて電気信号に変換され、画像信号として外部に出力されることとなる。
【0074】
一方、入射X線3bは、金属層31の貫通孔h(高透過領域TA)を透過し、シンチレータ層5にて蛍光6bに変換され、光電変換素子2b1αにて電気信号に変換され、電気信号として外部に出力される。
【0075】
入射X線3aと入射X線3bとを比較すると、入射時に、入射X線3a,3bは同じ強度を有している。しかしながら、入射X線3aは、カバー7(金属層31)を透過する際に金属層31にて減衰を受けるのに対し、入射X線3bは貫通孔hを透過するため金属層31による減衰を受けることが無い。
【0076】
このため減衰を受けた入射X線3aによって発生する蛍光6aに対して、減衰を受けない入射X線3bによって発生する蛍光6bは光強度に関して相対的に高くなる。蛍光6bが入力された光電変換部2b(光電変換素子2b1αを有する光電変換部2b)から出力される信号は、蛍光6aが入力された光電変換部2bから出力される信号よりも高くなる。
【0077】
検出領域DAにおいて、金属層31に貫通孔hがある事で、入射X線3a,3bの強度が同じであっても、画像出力値が異なることになり、そのままの出力値を画像信号として表示すると画像品質の低下を招いてしまう。しかしながら、正常な状態のX線検出パネルPNLでは、貫通孔hを透過した入射X線3bにて発生した蛍光が入射する光電変換素子2b1αは変化しない。
【0078】
そのため、予め金属層31によるX線の減衰を計測し、その係数を光電変換素子2b1αを有する光電変換部2bから出力される信号値に乗算する。入射X線の強度が均一である場合、光電変換素子2b1αを有する光電変換部2bを含む複数の光電変換部2bから出力される画像信号の値は均一になるため、画像品質の劣化を防止することが可能である。
【0079】
本実施形態において、金属層31だけではなく樹脂フィルム32も、検出領域DA及び第1非検出領域NDA1に位置している。平面視において、樹脂フィルム32は、金属層31と同一の形状及び同一の面積を有し、金属層31に完全に重なっている。樹脂フィルム32の輪郭は、平面視にて、金属層31の輪郭と一致している。
【0080】
金属層31に貫通孔h以外の孔が検出領域DAや第1非検出領域NDA1に不所望に形成されていても、樹脂フィルム32は金属層31の全ての孔を閉塞することができ、シンチレータ層5が位置している空間を減圧空間に保持することができる。
【0081】
図3及び図4に示すように、平面視において、高透過領域TA(貫通孔h)における最大の直線長さを第1長さL1とする。本実施形態において、第1長さL1は、高透過領域TA(貫通孔h)の直径である。第1長さL1は、第2長さL2未満である方が望ましい。
【0082】
第1長さL1が第2長さL2を超えると、貫通孔hを通る入射X線3bの範囲が大きくなり、入射X線3bに基づいて蛍光6bが発生する領域が広がり、その蛍光6bを受ける光電変換部2bが複数にまたがることとなる。貫通孔hの中心位置が不明瞭になってしまい、X線検出パネルPNLが正常な場合に貫通孔hを通った入射X線3bの画像位置と、封止部8にリークパスが発生した場合に貫通孔hを通った入射X線3bの画像位置との差が不明瞭になってしまう。上記のことから、貫通孔hの第1長さL1は、第2長さL2より小さいことが望ましい。
【0083】
図4に示すように、高透過領域TA(貫通孔h)は、平面視において、検出領域DAの重心CEより非検出領域NDA(第1非検出領域NDA1)に近接している。言い換えると、第3長さL3は第4長さL4未満である。ここで、第3長さL3は、貫通孔hから第1非検出領域NDA1までの最短距離であり、第4長さL4は貫通孔hから重心CEまでの最短距離である。L4<L3である場合と比較し、点光源から発せられるX線の入射角度が大きくなるため、封止部8にリークパスが発生した場合に、貫通孔hを透過した入射X線3bがシンチレータ層5にて発生する蛍光6bの位置のずれ幅を相対的に大きくすることができる。そのため、リークパスの発生の検知が、一層、容易となる。
X線検出器1は、上記のように構成されている。
【0084】
次に、製造上のトラブルにより、製品であるX線検出パネルPNLに問題が発生した場合について説明する。図7は、X線検出パネルPNLの一部を示す断面図であり、問題が発生した状態のX線検出パネルPNLを示す図である。
【0085】
図7に示すように、製造上のトラブルにより封止部8に異常が存在しており、X線検出器1の使用時に封止部8の内部にリークパス8pが発生した場合を示している。リークパス8pが発生したことにより、光電変換基板2、封止部8、及びカバー7で囲まれ、減圧されていた空間の内部に、リークパス8pを通して外気が浸入する。侵入した外気により、光電変換基板2、封止部8、及びカバー7で囲まれた空間の内部の気圧が上昇し、大気圧によりカバー7が受けるシンチレータ層5側への圧力が減少する。そして、シンチレータ層5に対するカバー7の密着状態が解除され、カバー7がシンチレータ層5から図7にて示す上方向に離れることで、カバー7とシンチレータ層5との間に空隙Gが発生することとなる。
【0086】
X線検出パネルPNLが上述した状態のままであると、リークパス8pを通じて外気に含まれる水分が徐々にシンチレータ層5の近傍に侵入し、シンチレータ層5の劣化を引き起こすこととなる。X線検出器1でX線を検出する性能が劣化するため、X線検出器1自体がX線を検出する性能の劣化を検知できた方が望ましい。
【0087】
図7に示した状態のX線検出パネルPNLにおいて、ある角度を有する入射X線3bが貫通孔hを通ってシンチレータ層5に到達する場合、図6と異なり、入射X線3bに基づいた蛍光6bは、光電変換素子2b1αにではなく別の光電変換素子2b1βに入射されることとなる。何故なら、シンチレータ層5とカバー7との間に空隙Gが存在し、ある角度を有した入射X線3bは空間Gの間を通ることでシンチレータ層5に到達する位置がずれ、入射X線3bによって発生する蛍光6bと光電変換素子2b1αの相対的な位置がずれたためである。
【0088】
X線検出パネルPNLが正常な場合、金属層31による減衰を受けた入射X線3aに基づいた蛍光6aが光電変換素子2b1βに入射するが、図7において、金属層31による減衰を受けていない入射X線3bに基づいた蛍光6bが光電変換素子2b1βに入射することとなる。光電変換素子2b1βに入射する蛍光6bの強度は、正常時の蛍光6aの強度よりも高くなる。
【0089】
貫通孔hを通る入射X線3bに基づいた蛍光6bが光電変換素子2b1βに入射することで得られる画像信号は、正常時の画像信号から上昇することとなる。そこで、光電変換素子2b1βを有する光電変換部2bから出力される画像信号の値の上昇を検出することで、X線検出パネルPNLに空隙Gが発生したことを検出することができ、空隙Gの原因となるリークパス8pの存在を検出することができる。なお、上記検出のため、光電変換素子2b1αを有する光電変換部2bから出力される画像信号の値の下降を検出することで行うことも可能である。
【0090】
上記のように構成された一実施形態に係るX線検出器1によれば、X線検出器1は、光電変換基板2と、シンチレータ層5と、封止部8と、カバー7と、を備えている。光電変換基板2、封止部8、及びカバー7で囲まれ、かつ、シンチレータ層5が位置している空間は、大気圧より減圧された空間である。カバー7は、貫通孔hを有する金属層31と、金属層31に積層され貫通孔hを気密に閉塞した樹脂フィルム32と、を有している。
【0091】
リークパス8pの存在は、シンチレータ層5の性能を徐々に劣化させることとなる。しかしながら、複数の光電変換部2bと貫通孔hとを利用することで、光電変換基板2に対する貫通孔hの相対的な位置ずれを検出することができる。そして、封止部8にリークパス8pの発生を簡単に検出することが可能となる。そのため、リークパス8pによるシンチレータ層5の劣化が進行する前に、リークパス8pの検出を行うことで、X線検出器1の使用に支障が出る前にX線検出器1の異常を検出することが可能となる。そして、使用者がX線検出器1の修理、交換等の対策を取る時間的余裕を確保することが可能となり、X線検出器1の使用者の不便を最小限にすることが可能となる。
【0092】
上記のことから、X線を検出する性能の劣化を検知することのできるX線検出器1を得ることができる。また、減圧空間の内部に気圧センサーを別途設けること無しに、リークパス8pの存在を検出することができる。そのため、製品コストの高騰を抑制することのできるX線検出器1を得ることができる。
【0093】
(変形例1)
次に、上記実施形態の変形例1について説明する。X線検出器1は、本変形例1で説明する構成以外、上記実施形態と同様に構成されている。図8は、上記実施形態の変形例1に係るX線検出パネルPNLの一部を示す断面図である。
図8に示すように、樹脂フィルム32は、シンチレータ層5と金属層31との間に位置してもよい。
上記のように構成された変形例1に係るX線検出器1においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
(変形例2)
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。X線検出器1は、本変形例2で説明する構成以外、上記実施形態と同様に構成されている。図9は、上記実施形態の変形例2に係るX線検出パネルPNLの一部を示す断面図である。
図9に示すように、カバー7は、他の樹脂フィルム33をさらに有してもよい。樹脂フィルム33は、金属層31に積層され、シンチレータ層5と金属層31との間に位置している。樹脂フィルム33も、金属層31の貫通孔hを気密に閉塞している。
【0095】
本変形例2において、樹脂フィルム33は、検出領域DA及び第1非検出領域NDA1に位置している。平面視において、樹脂フィルム33は、金属層31と同一の形状及び同一の面積を有し、金属層31に完全に重なっている。樹脂フィルム33の輪郭は、平面視にて、金属層31の輪郭と一致している。
上記のように構成された変形例2に係るX線検出器1においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
(変形例3)
次に、上記実施形態の変形例3について説明する。上述した金属層31は、複数の貫通孔hを有してもよい。金属層31は検出領域DAに位置した複数の貫通孔hを有しており、複数の貫通孔hはそれぞれ高透過領域TAに一対一で対応している。
【0097】
上記のように構成された変形例3に係るX線検出器1においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。また、光電変換基板2に対する貫通孔hの相対的な位置ずれを、一層、検出することができる。
【0098】
(変形例4)
次に、上記実施形態の変形例4について説明する。図10は、上記実施形態の変形例4に係るX線検出パネルPNLの一部を示す断面図であり、シンチレータ層5及びカバー7を示す図である。
【0099】
図10に示すように、金属層31は、貫通孔hの替わりに、高透過領域TAに対応した凹部rを有しもよい。凹部rは、金属層31を貫通していない。金属層31のうち高透過領域TAの厚みTrは、金属層31のうち高透過領域TA以外の領域の厚みT未満である。
【0100】
凹部rは樹脂フィルム32とは反対側に開口しているが、樹脂フィルム32側に開口してもよい。本変形例4においても、高透過領域TAと、高透過領域TA以外の検出領域DAとで、金属層31は、X線の吸収量を異ならせることができる。これにより、光電変換基板2に対する凹部rの相対的な位置ずれを、検出することができる。
上記のように構成された変形例4に係るX線検出器1においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0101】
金属層31に孔が空いていない場合、金属層31のみでカバー7の気密性を確保することが可能である。そのため、図10の変形例4と異なり、カバー7は、樹脂フィルム32無しに構成されてもよい。
【0102】
また、金属層31は、複数の凹部rを有してもよい。検出領域DAは、複数の高透過領域TAを有している。カバー7は、複数の凹部rは、複数の高透過領域TAに一対一で対応している。その場合、光電変換基板2に対する凹部rの相対的な位置ずれを、一層、検出することができる。
【0103】
本発明の上記実施形態を説明したが、上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0104】
例えば、上記実施形態及び上記複数の変形例で説明した技術は、上記X線検出器1への適用に限定されるものではなく、他のX線検出器、各種の放射線検出器に適用することができる。放射線検出器は、X線検出パネルPNLの替わりに、放射線を検出する放射線検出パネルを備えていればよい
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]検出領域及び前記検出領域の外側の非検出領域を有する光電変換基板と、
前記光電変換基板の上に設けられ、少なくとも前記検出領域に位置したシンチレータ層と、
前記非検出領域に位置し、前記シンチレータ層を囲み、前記光電変換基板に接着された枠状の封止部と、
前記シンチレータ層の上方に設けられ、前記検出領域及び前記非検出領域に位置し、前記封止部に接着され、前記光電変換基板及び前記封止部とともに前記シンチレータ層を覆ったカバーと、を備え、
前記光電変換基板、前記封止部、及び前記カバーで囲まれ、かつ、前記シンチレータ層が位置している空間は、大気圧より減圧された空間であり、
前記カバーは、
前記検出領域に位置した貫通孔を有する金属層と、
前記金属層に積層され前記貫通孔を気密に閉塞した樹脂フィルムと、を有する、
放射線検出器。
[2]前記金属層は、前記貫通孔を含み前記検出領域に位置した複数の貫通孔を有している、
[1]に記載の放射線検出器。
[3]前記光電変換基板は、前記検出領域にマトリクス状に設けられた複数の光電変換部をさらに有し、
各々の前記光電変換部は、スイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続された光電変換素子と、を有し、
平面視において、前記貫通孔における最大の直線長さを第1長さ、隣合う一対の前記光電変換素子間の距離を第2長さ、とすると、
前記第1長さは、前記第2長さ未満である、
[1]に記載の放射線検出器。
[4]前記貫通孔は、平面視において、前記検出領域の重心より前記非検出領域に近接している、
[1]に記載の放射線検出器。
[5]検出領域及び前記検出領域の外側の非検出領域を有する光電変換基板と、
前記光電変換基板の上に設けられ、少なくとも前記検出領域に位置したシンチレータ層と、
前記非検出領域に位置し、前記シンチレータ層を囲み、前記光電変換基板に接着された枠状の封止部と、
前記シンチレータ層の上方に設けられ、前記検出領域及び前記非検出領域に位置し、前記封止部に接着され、前記光電変換基板及び前記封止部とともに前記シンチレータ層を覆ったカバーと、を備え、
前記光電変換基板、前記封止部、及び前記カバーで囲まれ、かつ、前記シンチレータ層が位置している空間は、大気圧より減圧された空間であり、
前記カバーは、前記検出領域に位置した凹部を有する金属層を有する、
放射線検出器。
[6]前記金属層は、前記凹部を含み前記検出領域に位置した複数の凹部を有している、
[5]に記載の放射線検出器。
[7]前記カバーは、前記金属層に積層された樹脂フィルムをさらに有する、
[5]に記載の放射線検出器。
[8]前記光電変換基板は、前記検出領域にマトリクス状に設けられた複数の光電変換部をさらに有し、
各々の前記光電変換部は、スイッチング素子と、前記スイッチング素子に電気的に接続された光電変換素子と、を有し、
平面視において、前記凹部における最大の直線長さを第1長さ、隣合う一対の前記光電変換素子間の距離を第2長さ、とすると、
前記第1長さは、前記第2長さ未満である、
[5]に記載の放射線検出器。
[9]前記凹部は、平面視において、前記検出領域の重心より前記非検出領域に近接している、
[5]に記載の放射線検出器。
[10]前記金属層は、100μm未満の厚みを有する金属箔である、
[1]又は[5]に記載の放射線検出器。
[11]前記樹脂フィルムは、前記検出領域及び前記非検出領域に位置し、
前記樹脂フィルムの輪郭は、平面視にて、前記金属層の輪郭と一致している、
[1]又は[7]に記載の放射線検出器。
[12]前記金属層は、前記シンチレータ層と前記樹脂フィルムとの間に位置している、
[1]又は[7]に記載の放射線検出器。
[13]前記カバーは、前記金属層に積層され前記シンチレータ層と前記金属層との間に位置した他の樹脂フィルムをさらに有する、
[12]に記載の放射線検出器。
[14]前記樹脂フィルムは、前記シンチレータ層と前記金属層との間に位置している、
[1]又は[7]に記載の放射線検出器。
【符号の説明】
【0105】
1…X線検出器、PNL…X線検出パネル、2…光電変換基板、2a…基板、
2b…光電変換部、2b1…光電変換素子、2b2…TFT、5…シンチレータ層、
8…封止部、8p…リークパス、7…カバー、31…金属層、h…貫通孔、r…凹部
TA…高透過領域、32…樹脂フィルム、33…樹脂フィルム、11…回路基板、
12…支持基板、DA…検出領域、NDA,NDA1,NDA2…非検出領域、
3,3a,3b…入射X線、6,6a,6b…蛍光、G…空隙、CE…重心、T…厚み、
L1,L2…長さ。
図1
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図10