IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-モータ 図1
  • 特許-モータ 図2
  • 特許-モータ 図3
  • 特許-モータ 図4
  • 特許-モータ 図5
  • 特許-モータ 図6
  • 特許-モータ 図7
  • 特許-モータ 図8
  • 特許-モータ 図9
  • 特許-モータ 図10
  • 特許-モータ 図11
  • 特許-モータ 図12
  • 特許-モータ 図13
  • 特許-モータ 図14
  • 特許-モータ 図15
  • 特許-モータ 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
H02K1/18 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021059461
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022155983
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 智彰
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-129483(JP,A)
【文献】国際公開第2013/179476(WO,A1)
【文献】特開平9-215238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、ロータと、ステータとを備え、
前記ステータは、ステータコアと、絶縁部材と、前記絶縁部材に巻き回される第1コイル及び第2コイルとを有し、
前記絶縁部材は、軸方向に突出する突出部を有し、
前記突出部は、径方向に延在する第1突出部と、周方向に延在する第2突出部とを備え、
前記第1コイルは、前記第1突出部の周方向一方側の部分と、前記第2突出部の外径側の部分とに巻き回され、
前記第2コイルは、前記第1突出部の周方向他方側の部分に巻き回される、
モータ。
【請求項2】
前記絶縁部材は、径方向に延在する平面部を有し、
前記第1突出部は、前記平面部よりも軸方向に突出する、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記平面部は、周方向において、前記第2突出部が延在する方向とは反対側にのみ形成される、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1コイルと前記第2コイルとの一部が、軸方向において重なる位置に配置される、
請求項1乃至3のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項5】
前記絶縁部材は、径方向に延在する第3突出部をさらに有し、
前記第2突出部は、前記第1突出部の径方向外径側の端部と、前記第3突出部の径方向外径側の端部との間に形成され、
前記第1突出部の周方向他方側の端面と、前記第3突出部の周方向一方側の端面とが、周方向において対向する、
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項6】
前記第2突出部は、径方向に突出する鍔部をさらに備え、
前記鍔部は、前記第1突出部及び前記第3突出部の軸方向における端部よりも、軸方向において外側に突出し、前記第1突出部及び前記第3突出部の径方向における端部よりも、径方向において外側に突出する、
請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記鍔部は、軸方向において、前記第1コイルの軸方向における端部と、前記第2コイルの軸方向における端部との間に位置し、
前記第2突出部は、径方向において、前記第1コイルの径方向における端部と、前記第2コイルの径方向における端部との間に位置する、請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記ステータコアは、複数の第1磁極部を有し、
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、少なくとも一つ以上の前記第1磁極部をまたいで巻き回される、
請求項1乃至7のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項9】
前記ステータコアにおいて、周方向に隣接する前記複数の第1磁極部の間に形成される空隙部に配置される複数の第2磁極部をさらに有し、
前記第2磁極部のうち少なくともいずれかは、軸方向において対向する一対の前記第2突出部の間に形成される第1の前記空隙部に配置され、相互に隣接する2つの第2コイルと周方向において対向し、
前記第2磁極部のうち少なくともいずれかは、第1の前記空隙部とは異なる第2の前記空隙部に配置され、相互に隣接する2つの第1コイルと周方向において対向する、請求項8に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の回転電機において、複数のティース(磁極部)にワイヤを巻き付けてコイルを形成する分布巻き技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-246342号公報
【文献】特開2017-169419号公報
【文献】特開2003-333809号公報
【文献】特開2007-274808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分布巻きのコイルにおいて、例えばノズルを用いて磁極部にコイルを巻き回す場合、巻線同士が相互に干渉することがあり、占積率向上の妨げとなる場合がある。
【0005】
一つの側面では、分布巻きのコイルの占積率を向上できるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、モータは、シャフトと、ロータと、ステータとを備える。前記ステータは、ステータコアと、絶縁部材と、前記絶縁部材に巻き回される第1コイル及び第2コイルとを有する。前記絶縁部材は、軸方向に突出する突出部を有する。前記突出部は、径方向に延在する第1突出部と、周方向に延在する第2突出部とを有する。前記第1コイルは、前記第1突出部の周方向一方側と、前記第2突出部の外径側とに巻き回される。前記第2コイルは、前記第1突出部の周方向他方側に巻き回される。
【0007】
一つの態様によれば、分布巻きのコイルの占積率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態におけるモータの一例を示す上面図である。
図2図2は、実施形態におけるステータの一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態におけるステータコアへの第2磁極部の取り付けの一例を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態におけるステータコアとインシュレータとの一例を示す分解斜視図である。
図5図5は、実施形態におけるステータコアの一例を示す上面図である。
図6図6は、実施形態におけるインシュレータの一例を示す拡大斜視図である。
図7図7は、実施形態における第1コイルの巻き回しの一例を示す斜視図である。
図8図8は、実施形態における第1コイルの巻き回しの別の一例を示す斜視図である。
図9図9は、実施形態における第1コイルの形状の一例を示す模式図である。
図10図10は、実施形態におけるステータコアへの第2コイルの取り付けの一例を示す斜視図である。
図11図11は、実施形態におけるステータコアに取り付けられた第2コイルの一例を示す斜視図である。
図12図12は、実施形態における第2コイルの形状の一例を示す模式図である。
図13図13は、実施形態における第2コイルが取り付けられたステータコアの一例を示す斜視図である。
図14図14は、実施形態における第2磁極部の一例を示す斜視図である。
図15図15は、実施形態におけるインシュレータとコイルとの位置関係を示す拡大断面図である。
図16図16は、実施形態におけるインシュレータとコイルとの位置関係の一例を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示するモータの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。各図面において、説明を分かりやすくするために、後に説明するシャフト99が延在する方向を軸方向とし、ロータ90が回転する方向を周方向とする座標系を図示する場合がある。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態におけるモータの一例を示す上面図である。図2は、実施形態におけるステータの一例を示す斜視図である。図1に示すモータ1は、例えば、図2に示すステータ2と、ロータ90と、シャフト99とを含む。なお、各実施形態で説明するモータ1は、インナーロータ型のブラシレスモータである。モータ1は、例えば、複数のマグネット91を構成部品として持つロータ90が配置されており、さらにこのロータ90には回転軸(シャフト)99が結合している。また、モータ1は、例えば、図示しないフレームに収容される。
【0011】
図1及び図2に示すように、実施形態におけるステータ2は、ステータコア10と、複数の第2磁極部20と、一対のインシュレータ30及び60と、複数の第1コイル41乃至46と、複数の第2コイル51乃至56とを備える。なお、以下において、複数の第1コイル41乃至46を区別せずに表現する場合に、第1コイル40と表記する場合がある。同様に、以下において、複数の第2コイル51乃至56を区別せずに表現する場合に、第2コイル50と表記する場合がある。なお、インシュレータ30及び60は、絶縁部材の一例である。また、図1においては、軸方向における反対側(負方向側)に位置するインシュレータ30は視認されない。
【0012】
実施形態において、ステータコア10は、一対の連結部11及び12と、12個の第1ヨーク部13と、12個の第1磁極部16とを備える。第1磁極部16は、図2に示すように、第1ヨーク部13から、径方向内側に突出する。
【0013】
実施形態において、第1コイル40及び第2コイル50は、例えば、丸線の銅線がノズル巻線により巻き回されることにより形成される。第1コイル40及び第2コイル50は、インシュレータ30及び60が装着されたステータコア10に巻き回される。また、実施形態において、第1コイル40及び第2コイル50は、複数の第1磁極部16にまたがって巻き回される、分布巻きのコイルである。
【0014】
また、実施形態において、第1コイル40及び第2コイル50は、第2磁極部20には巻き回されない。実施形態における第2磁極部20は、例えば、ステータコア10に、第1コイル40及び第2コイル50が巻き回されてから装着される。なお、以下において、複数の第2磁極部20を区別して表現する場合に、それぞれ第2磁極部20a乃至20lと表記する場合がある。
【0015】
図3は、実施形態におけるステータコアへの第2磁極部の取り付けの一例を示す斜視図である。実施形態において、第2磁極部20は、隣接する2つの第1ヨーク部13の間に形成される空隙部Gに、径方向における外側から装着される。例えば、図3に示すように、第2磁極部20aは、第1ヨーク部13aと第1ヨーク部13bとの間に形成される空隙部Gabに装着される。
【0016】
このように、第1コイル40及び第2コイル50が巻き回されてから第2磁極部20を装着する場合、第1コイル40及び第2コイル50をステータコア10に巻き回す際に、第2磁極部20が妨げとならない。これにより、分布巻きのコイルの巻き回し時の作業性が向上する。
【0017】
実施形態においては、まず、ステータコア10に、一対のインシュレータ30及び60が装着される。図4は、実施形態におけるステータコアとインシュレータとの一例を示す分解斜視図である。実施形態において、連結部11及び12は、例えばステンレス鋼や電磁鋼板などの磁性体により形成される、環状の部材である。図4に示すように、連結部11及び12は、略同一の形状を有する。なお、第1ヨーク部13を連結して保持することができれば、連結部の材質は問わない。
【0018】
第1ヨーク部13は、例えば電磁鋼板を軸方向に積層することによって形成される部材である。図4に示すように、複数の第1ヨーク部13は、周方向において隣接して配置される。以下において、複数の第1ヨーク部13を区別して表現する場合に、それぞれ第1ヨーク部13a乃至13lと表記する場合がある。
【0019】
第1ヨーク部13の軸方向負方向側の端部は、連結部11に連結される。同様に、第1ヨーク部13の軸方向正方向側の端部は、連結部12に連結される。例えば、第1ヨーク部13aの端部11aは連結部11に連結され、端部12aは連結部12に連結される。すなわち、12個の第1ヨーク部13は、一対の連結部11及び12により、周方向に並んで配置される。
【0020】
複数の第1磁極部16は、第1ヨーク部13と一体に形成され、第1ヨーク部13の内周面側から、径方向における内側に向かって延在する突出部である。以下において、複数の第1磁極部16を区別して表現する場合に、それぞれ第1磁極部16a乃至16lと表記する場合がある。
【0021】
図5は、実施形態におけるステータコアの一例を示す上面図である。図4及び図5に示すように、実施形態における第1磁極部16は、例えば、先端側(径方向における内側)に、周方向に突出する2つの端部を備える。
【0022】
図4及び図5に示すように、周方向に隣接する2つの第1ヨーク部13の間には、空隙部Gが形成される。例えば、第1ヨーク部13aと、第1ヨーク部13bとの間には、図3で説明した空隙部Gabが形成され、第1ヨーク部13lと第1ヨーク部13aとの間には、空隙部Glaが形成される。
【0023】
また、図4に示すように、各第1ヨーク部13の外周面には、周方向の両端側に、径方向における一部分が周方向に凹んだ凹部14及び15が形成される。図4に示すように、凹部15aの周方向における端面と、凹部14bの周方向における端面とは、空隙部Gabを挟んで相互に対向する。
【0024】
また、図5に示すように、第1磁極部16の周方向における端面17と、隣接する第1磁極部16の周方向における反対側の端面18とは、空隙部Gを挟んで相互に対向する。例えば、第1磁極部16aの端面17aと、第1磁極部16bの端面18bとは、空隙部Gabを挟んで相互に対向する。
【0025】
実施形態において、インシュレータ30は、ステータコア10に、軸方向における負方向側から装着される。同様に、インシュレータ60は、ステータコア10に、軸方向における正方向側から装着される。インシュレータ30及び60は、例えば、樹脂等により形成される。
【0026】
図6は、実施形態におけるインシュレータの一例を示す拡大斜視図である。図4及び図6に示すように、実施形態におけるインシュレータ30は、第1凹部31a乃至31lと、第2凹部32a乃至32lと、第2突出部33ab乃至33klと、第3突出部34b乃至34lと、第1突出部35a乃至35kと、鍔部36ab乃至36klと、平面部37a乃至37lと、内周端部38a乃至38lと、連結部39とを備える。第2突出部33ab乃至33kl、第3突出部34b乃至34l及び第1突出部35a乃至35kは、突出部の一例である。また、平面部37a乃至37lは、平面部の一例である。
【0027】
連結部39は環状の部材であり、ステータコア10の連結部11を周方向負方向側から覆う。12個の第1凹部31a乃至31lは、ステータコア10の12個の第1磁極部16a乃至16lの軸方向負方向側の端部を、それぞれ軸方向負方向側から覆う。12個の第2凹部32a乃至32lは、ステータコア10に挿通される12個の第2磁極部20a乃至20lと、それぞれ周方向負方向側において接する。後に説明するように、第1磁極部16a乃至16lの軸方向における中央部付近は、それぞれ第1凹部31a乃至31lに覆われていない。また、後に説明する第2磁極部20a乃至20lの周方向における端面21及び22も、それぞれ第2凹部32a乃至32lに覆われていない。
【0028】
第1突出部35a乃至35k及び第3突出部34b乃至34lは、連結部39の内周側から、内周側及び軸方向負方向側に向けて突出する。図6に示すように、例えば、第1突出部35aは、周方向において、隣接する一方の第3突出部34lと対向する端面35alと、隣接する他方の第3突出部34bと対向する端面35abとを備える。同様に、例えば、第3突出部34bは、隣接する一方の第1突出部35aと対向する端面34baと、隣接する他方の第1突出部35cと対向する端面34bcとを備える。
【0029】
第2突出部33ab乃至33klは、それぞれ、第1突出部35a乃至35kの外周側端面と、第3突出部34b乃至34lの外周側端面とを連結する位置に形成される。第2突出部33ab乃至33klは、例えば、連結部39の内周側に沿って、周方向に延在するように形成される。例えば、第2突出部33abは、第1突出部35aと、第3突出部34bとの間に形成される。
【0030】
鍔部36ab乃至36klは、それぞれ、第2突出部33ab乃至33klの軸方向負方向側の端部から、径方向外周側に向けて延在する。鍔部36ab乃至36klの外周側の端部は、例えば、連結部39の外周側の端部よりも径方向において内周側に位置する。
【0031】
平面部37a乃至37lは、連結部39の内周側から、径方向内周側に向けて配置される。平面部37a乃至37lの軸方向負方向側の表面は、例えば、連結部39と略面一になるように形成される。実施形態において、平面部37a乃至37lは、周方向において、第2突出部33ab乃至33klが延在する方向とは反対側に位置する。例えば、平面部37aは、径方向において、第2突出部33kl及び33abのどちらとも対向しない。
【0032】
内周端部38a乃至38lは、第1突出部35a乃至35kのいずれか、又は第3突出部34b乃至34lのいずれかから、それぞれ径方向内側に突出し、周方向両側に延在する。例えば、内周端部38aは、第1突出部35aから突出し、内周端部38bは、第3突出部34bから突出する。内周端部38a乃至38lは、それぞれ、第2コイル51乃至56と、ロータ90との間に位置する。
【0033】
また、実施形態において、インシュレータ60も、第1凹部61a乃至61lと、第2凹部62a乃至62lと、第2突出部63ab乃至63klと、第3突出部64a乃至64kと、第1突出部65b乃至65lと、鍔部66ab乃至66klと、平面部67a乃至67lと、内周端部68a乃至68lと、連結部69とを備える。
【0034】
例えば、第1凹部61aは、図4の矢印に示すように、ステータコア10の第1磁極部16aを覆う。また、第2凹部62aは、図4の矢印に示すように、ステータコア10の空隙部Gabに挿通される第2磁極部20aに接する。なお、インシュレータ30の第1突出部35aは、インシュレータ60の第3突出部34aと軸方向において対向し、インシュレータ30の第3突出部34bは、インシュレータ60の第1突出部65bと軸方向において対向する。その他、図4に示すように、実施形態においては、インシュレータ60は、インシュレータ30と略同一の形状を有するため、詳細な説明は省略する。この場合において、実施形態におけるインシュレータ30及び60が装着されたステータコア10は、軸方向において略対称の形状を有する。
【0035】
インシュレータ30及び60が装着されたステータコア10には、図7乃至図13に示すように、第1コイル40及び第2コイル50が巻き回される。図7及び図8は、実施形態における第1コイルの巻き回しの一例を示す斜視図である。例えば、第1コイル41を形成する導線は、図7の矢印C1に示すように、インシュレータ30の第2突出部33abに沿って、周方向において時計回り方向に巻き回される。
【0036】
次に、導線は、矢印C2に示すように、平面部37bに沿って、径方向内側へと巻き回された後に、矢印C3に示すように、ステータコア10の第1磁極部16bに沿って、軸方向正方向側へと巻き回される。その後、導線は、図8の矢印C4に示すように、インシュレータ60の平面部67bに沿って、径方向外側へと巻き回された後に、矢印C5に示すように、第2突出部63abにそって、周方向において時計回り方向に巻き回される。
【0037】
次に、導線は、矢印C6に示すように、平面部67aに沿って、径方向内側へと巻き回された後に、矢印C7に示すように、第1磁極部16aに沿って、軸方向負方向側に巻き回される。そして、導線は、矢印C8に示すように、インシュレータ30の平面部37aに沿って、径方向外側へと巻き回され、その後矢印C1に戻って繰り返し巻き回される。これにより、図8に示す第1コイル41が形成される。
【0038】
このように巻き回された第1コイル40は、例えば、図9に示すような形状を有する。図9は、実施形態における第1コイルの形状の一例を示す模式図である。図9に示すように、第1コイル40は、周方向に延在する部分C1及びC5と、径方向に延在する部分C2、C4、C6及びC8と、軸方向に延在する部分C3及びC7とを備え、上面視において略コの字形状を有する。すなわち、第1コイル41は、軸方向において対向し、かつ互いに反対方向に巻き回される部分C1及びC5を備える。
【0039】
第1コイル41乃至46が巻き回されたステータコア10には、第2コイル50がさらに巻き回される。図10は、実施形態におけるステータコアへの第2コイルの取り付けの一例を示す斜視図である。例えば、第2コイル51を形成する導線は、図10の矢印CAに示すように、インシュレータ30の第3突出部34bから第1突出部35cに向かって、周方向において時計回り方向に巻き回される。その際、図10に示すように、矢印CAに示す導線は、第1コイル41及び42と立体交差する。
【0040】
次に、導線は、矢印CBに示すように、ステータコア10の第1磁極部16cに沿って、軸方向正方向側へと巻き回される。その後、導線は、図10の矢印CCに示すように、インシュレータ60の第3突出部64cから第1突出部65bに向かって、周方向において時計回り方向に巻き回される。そして、導線は、矢印CAに戻って繰り返し巻き回される。図11に示す第2コイル51が形成される。図11は、実施形態におけるステータコアに取り付けられた第2コイルの一例を示す斜視図である。
【0041】
このように巻き回された第1コイル40は、例えば、図12に示すような形状を有する。図12は、実施形態における第2コイルの形状の一例を示す模式図である。図12に示すように、第2コイル50は、周方向に延在する部分CA及びCCと、軸方向に延在する部分CB及びCDとを備える。すなわち、第2コイル51も、軸方向において対向し、かつ互いに反対方向に巻き回される部分CA及びCCを備える。
【0042】
このようにして第1コイル41乃至46及び第2コイル51乃至56が巻き回されたステータコア10の一例を、図13に示す。図13は、実施形態における第2コイルが取り付けられたステータコアの一例を示す斜視図である。図8乃至図10及び図13に示すように、第1コイル41乃至46は、少なくとも周方向に延在する部分C1及びC5において、第2コイル51乃至56よりも、径方向において外側に位置する。
【0043】
そして、図13に示す第1コイル40及び第2コイル50が巻き回されたステータコア10に、図14に示す第2磁極部20がさらに複数装着されることにより、図2に示すステータ2が形成される。図14は、実施形態における第2磁極部の一例を示す斜視図である。実施形態において、第2磁極部20は、例えば電磁鋼板を軸方向に積層することで形成される部材である。第2磁極部20は、内周面側から、径方向における内側に向かって延在する突出部26を備える。図14に示すように、実施形態における第2磁極部20の突出部26は、例えば、先端側(径方向における内側)に、周方向に突出する端部を備えない形状を有する。突出部26は、周方向における2つの端面21及び22を備える。
【0044】
また、実施形態において、第2磁極部20は、軸方向における両端部の一部のみがインシュレータ30及び60に覆われる。例えば、図14に示すように、第2磁極部20の軸方向の端面における、斜線で示した部分のみが、インシュレータに覆われる。この場合において、第2磁極部20は、図14に示すように、端面を覆う絶縁フィルム29をさらに備えてもよい。絶縁フィルムは、例えば絶縁性を有する熱収縮フィルムである。この場合において、突出部26の両端面21及び22には、図14に示すように、くぼみが設けられていてもよい。
【0045】
実施形態において、第2磁極部20は、例えば、2つの隣接する第1磁極部16の間に形成される空隙部Gに、突出部26が、径方向における外側から圧入されることにより配置される。例えば、図3に示す第2磁極部20aは、第1磁極部16aと、第1磁極部16aと周方向において隣接する第1磁極部16bとの空隙部Gabに配置される。
【0046】
以上説明したように、実施形態におけるモータ1は、シャフト99と、ロータ90と、ステータコア10と、絶縁部材30,60と、絶縁部材30,60に巻き回される第1コイル40及び第2コイル50とを有する。絶縁部材30,60は、軸方向に突出する突出部を有する。突出部33,34,35は、径方向に延在する第1突出部35と、周方向に延在する第2突出部33とを備える。第1コイル41は、第1突出部35aの周方向一方側の部分である周方向一方側の端面35alと、第2突出部33abの外径側の部分とに巻き回される。第2コイル56は、第1突出部35aの周方向他方側の部分である周方向他方側の端面35abに巻き回される。また、ステータコア10が複数の第1磁極部16a乃至16lを有し、第1コイル40及び第2コイル50が、少なくとも一つ以上の第1磁極部16a乃至16lをまたいで巻き回されてもよい。かかる構成によれば、分布巻きのコイルの占積率を向上できる。
【0047】
また、第1コイル40と第2コイル50とは、少なくとも一部が、軸方向において重なる位置に配置される。例えば、図2の枠F1に示す部分には、第2コイル56が配置される。一方、軸方向における位置が異なる断面図を示す図15においては、径方向及び周方向における位置が図2の枠F1に対応する位置にある枠F2に、第1コイル41が配置される。図15は、実施形態におけるインシュレータとコイルとの位置関係を示す拡大断面図である。図15は、図2のA-A線で切断した断面を示す。なお、図15においては、図2のA-A線に示す断面には存在しない第2磁極部20a、20b及び20lを便宜的に破線にて示している。
【0048】
実施形態においては、第1コイル40と、第2コイル50とが、立体交差して配置される。これにより、上で説明したように、第1コイル41と第2コイル56とが、図2及び図15を用いて説明したように、軸方向において重なる位置に配置される。なお、第2コイル51と56とは、図15に示すように、周方向において、第2磁極部20aを挟んで、相互に対向する。
【0049】
また、実施形態において、絶縁部材30は、径方向に延在する平面部37を有し、第1コイル40は、平面部37に沿って巻き回される。言い換えると、第1コイル40は、平面部37上に配置される。また、第1突出部35は、平面部37よりも軸方向に突出する。例えば、図6に示すように、インシュレータ30の第1突出部35aは、平面部37aよりも軸方向負方向側に延在する。かかる構成により、第1突出部35aの周方向一方側及び第2突出部33abの外径側に巻き回される第1コイル41と、第1突出部35aの周方向他方側に巻き回される第2コイル56とが立体交差する。
【0050】
また、絶縁部材30は、径方向に延在する第3突出部34をさらに有し、第2突出部33は、第1突出部35の径方向外径側の端部と、第3突出部の径方向外径側の端部との間に形成される。その際、第1突出部35aの周方向他方側の端面35abと、第3突出部34bの周方向一方側の端面34baとが、周方向において対向する。この場合において、平面部(37a、37b)は、周方向において、前記第2突出部(33ab)が延在する方向とは反対側である35al側及び34bc側にのみ形成されてもよい。例えば、平面部37aは、図6に示すように、径方向において第2突出部33abと対向する位置A1には形成されない。かかる構成によれば、周方向において対向する第1突出部35aと第3突出部34bとの間に形成される第2コイル51及び第2コイル56を巻き回す際に、平面部37が妨げとならない。
【0051】
また、第2突出部33は、径方向に突出する鍔部36をさらに備えてもよい。この場合において、鍔部36は、第1突出部35及び第3突出部34の軸方向における端部よりも、軸方向において外側に突出し、第1突出部35及び第3突出部34の径方向における端部よりも、径方向において外側に突出する。この場合において、鍔部36は、軸方向において、第1コイル40の軸方向における端部と、第2コイル50の軸方向における端部との間に位置する。さらに、第2突出部33は、径方向において、第1コイル40の径方向における端部と、第2コイル50の径方向における端部との間に位置してもよい。
【0052】
図16は、実施形態におけるインシュレータとコイルとの位置関係の一例を示す拡大斜視図である。かかる構成において、鍔部36abは、軸方向において、第1コイル41の軸方向における端部C1と、第2コイル56,51の軸方向における端部CAとの間に位置する。また、第2突出部33abは、径方向において、第1コイル41の径方向における端部C1と、前記第2コイル50の径方向における端部CAとの間に位置する。
【0053】
この場合において、図16に示すように、鍔部36abは、軸方向において、第1コイル41の軸方向における端部C1と、第2コイル56の軸方向における端部CAとの間に位置する。この場合において、第1コイル41と、第2コイル56との間には、鍔部36abの厚みT1に対応する間隙T2が形成される。これにより、第2コイル56を巻き回す際に、軸方向において、第1コイル41と干渉することが、鍔部36abにより阻止される。
【0054】
また、図16に示すように、インシュレータ30の第2突出部33abは、径方向において、第1コイル41の径方向における端部C1と、第2コイル56の径方向における端部CBとの間に位置する。これにより、第2コイル51及び56を巻き回す際に、径方向において、第1コイル41と干渉することが、第2突出部33abにより阻止される。
【0055】
以上説明したように、実施形態においては、突出部を備えるインシュレータにより、軸方向、径方向及び周方向のいずれにおいても、第1コイルと第2コイルとの干渉が阻止される。かかる構成によれば、分布巻きコイルの占積率を向上させることができる。
【0056】
さらに、モータ1は、ステータコア10において周方向に隣接する複数の第1磁極部16の間に形成される空隙部Gに配置される複数の第2磁極部20をさらに有してもよい。この場合において、第2磁極部20のうち、第2磁極部20aは、軸方向において対向する一対の第2突出部33ab及び63abの間に形成される第1の空隙部Gabに配置され、相互に隣接する2つの第2コイル56及び第2コイル51と周方向において対向する。また、第2磁極部20のうち、第2磁極部20bは、第1の空隙部Gabとは異なる第2の空隙部Gbcに配置され、相互に隣接する2つの第1コイル41及び第1コイル42と周方向において対向する。
【0057】
例えば、図3に示す、第1の空隙部Gabに配置される第2磁極部20aは、図15で破線にて示すように、相互に隣接する2つの第2コイル56及び51と、周方向において対向する。より具体的には、第2磁極部20aの突出部26の一端面21は、第2コイル51と対向し、他端面22は、第2コイル56と対向する。
【0058】
同様に、図3に示す、第2の空隙部Gbcに配置される第2磁極部20bの突出部26の一端面22は、図15で破線にて示すように、第2コイル51と対向し、第2磁極部20lの突出部26の一端面21は、第2コイル56と対向する。かかる構成においては、第1コイル40及び第2コイル50を巻き回す際に、第2磁極部20が妨げにならない。
【0059】
以上、各実施形態における構成について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、第2磁極部20には、図14に示すような絶縁フィルム29の代わりに、絶縁塗装等により絶縁が施されてもよい。この場合、第2磁極部20の突出部26の端面21及び22には、図14に示すようなくぼみが形成されていなくてもよい。
【0060】
また、実施形態及び変形例においては、各コイルが、相互に隣接する2つの第1磁極部にまたがって巻き回される構成について説明したが、実施の形態はこれに限られない。例えば、コイルは相互に隣接しない2つの第1磁極部16にまたがって巻き回されてもよく、また個別の第1磁極部16にそれぞれ巻き回されてもよい。このように、コイル配置の作業性や、ステータの重心バランス等の観点から、コイルが巻き回される第1磁極部16の位置を調整してもよい。この場合においても、第2磁極部20がコイル装着の後に装着されるので、コイル装着時の作業性を向上できる。
【0061】
また、例えば、第2磁極部20は、圧入以外の方法により、空隙部Gに配置されてもよい。また、ステータコア10の連結部11及び12は、いずれか一方だけでもよく、また軸方向における両端部以外の場所に設けられてもよい。
【0062】
また、各実施形態におけるモータは、例えばインナーロータ型のブラシレスモータであるが、これに限られず、アウターロータ型のモータにおいて、実施形態におけるステータコア10及び第2磁極部20を採用してもよい。また、ステータコア10及び第2磁極部20は、例えば発電機等、モータ以外の回転電機に採用されてもよい。
【0063】
以上、本発明を実施形態及び各変形例に基づき説明したが、本発明は実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0064】
1 モータ、 2 ステータ、 10 ステータコア、 11,12 連結部、 13(13a~13l) 第1ヨーク部、 16(16a~16l) 第1磁極部(ティース)、 20(20a~20l) 第2磁極部(ティース)、 30,60 インシュレータ、 33(33ab~33kl),63(63ab~63kl) 第2突出部、 34(34b~34l),64(64a~64k) 第3突出部、 35(35a~35k),65(65b~65l) 第1突出部、 40(41~46) 第1コイル、 50(51~56) 第2コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16