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  • 特許-成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20250120BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20250120BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20250120BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20250120BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
C08L51/04
B65D65/02 E
C08L23/06 ZAB
C08L25/06
C08L53/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021084157
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177723
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】西島 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】外室 乃樹
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-193274(JP,A)
【文献】特開2020-196873(JP,A)
【文献】特開2000-204210(JP,A)
【文献】特開2018-127614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂と、バイオマス由来のオレフィン系樹脂と、相溶化剤とを含む樹脂組成物よりなる未延伸樹脂シートが、熱成形によって成形されてなる成形体であって、
前記樹脂組成物は、温度200℃、周波数0.1~100rad/sにおける貯蔵弾性率(G’)が5×102~2×105Paの範囲にあり、かつ、温度200℃、周波数0.1~100rad/sにおける損失正接(tanδ)が0.35~3.0の範囲にあり、
前記スチレン系樹脂は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)または汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)のいずれか一方であり、
前記スチレン系樹脂は、温度200℃、荷重5kgfの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が1.0g/10min以上2.0g/10min以下であり、
前記相溶化剤は、スチレンとジエンとのブロック共重合体および/またはその水素添加物であり、
前記バイオマス由来のオレフィン系樹脂は、密度が0.942~0.970g/cm3の高密度ポリエチレンを含み、
容器に篏合される篏合蓋として用いられることを特徴とする成形体
【請求項2】
前記容器が飲料用のものであることを特徴とする請求項1の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂とバイオマス由来のオレフィン系樹脂とを含む樹脂組成物よりなる未延伸樹脂シート使用した成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ファーストフード店等においては、店内で若しくは店外に客が持ち運ぶときの利便性を考慮して、注文された飲み物を、ディスポーザブルタイプの容器例えば紙製の容器に注いだ後、その容器の開口に篏合蓋を装着して提供することが行われている。この篏合蓋は、一般に、樹脂シートを熱成形することにより製造されている。かかる樹脂シートを構成する合成樹脂材料としては、要求される物性、成形性、コスト等の観点から、耐衝撃性ポリスチレン樹脂などのスチレン系樹脂が広く利用されている。
【0003】
而して、近年、合成樹脂材料においては、循環型社会の構築による環境負荷の低減化の要請により、化石燃料由来の合成樹脂材料からバイオマス由来の合成樹脂材料に転換することが望まれている。このような事情から、スチレン系樹脂よりなる樹脂シートにおいても、バイオマス由来の合成樹脂材料を使用することが検討されており、例えば特許文献1には、スチレン系樹脂と、バイオマス由来のポリエチレンと、相溶化剤とを含有する樹脂組成物からなる樹脂シートが提案されている。しかしながら、この樹脂シートは二軸延伸シートであり、また、常温若しくは冷凍環境下で使用するものであるため、ホットドリンク等の飲料用の篏合蓋を得るための樹脂シートとして適したものではない。
【0004】
また、従来のスチレン系樹脂よりなる樹脂シートにおいては、製造すべき成形体が複雑な構造を有する場合には、シート同士が溶着して発生するシワ(ブリッジ)などの成形不良が生じやすいため、賦形性が十分なものではなく、また、成形後に不要な部分をカットする後処理加工において、成形体にひび割れが発生しやすい、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-196873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、環境負荷の低減化を図ることができ、飲料用の篏合蓋を構成する材料として好適なスチレン系樹脂組成物よりなる未延伸樹脂シート使用した成形体を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の目的に加えて、成形性および後処理加工性などの加工性が良好な未延伸樹脂シート使用した成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成形体は、スチレン系樹脂と、バイオマス由来のオレフィン系樹脂と、相溶化剤とを含む樹脂組成物よりなる未延伸樹脂シートが、熱成形によって成形されてなる成形体であって、
前記樹脂組成物は、温度200℃、周波数0.1~100rad/sにおける貯蔵弾性率(G’)が5×102~2×105Paの範囲にあり、かつ、温度200℃、周波数0.1~100rad/sにおける損失正接(tanδ)が0.35~3.0の範囲にあり、
前記スチレン系樹脂は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)または汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)のいずれか一方であり、
前記スチレン系樹脂は、温度200℃、荷重5kgfの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が1.0g/10min以上2.0g/10min以下であり、
前記相溶化剤は、スチレンとジエンとのブロック共重合体および/またはその水素添加物であり、
前記バイオマス由来のオレフィン系樹脂は、密度が0.942~0.970g/cm3の高密度ポリエチレンを含み、
容器に篏合される篏合蓋として用いられることを特徴とする。
【0010】
本発明の成形体においては前記容器が飲料用のものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の未延伸樹脂シートによれば、スチレン系樹脂と、バイオマス由来のオレフィン系樹脂と、相溶化剤とを含む樹脂組成物よりなるため、環境負荷の低減化を図ることができる。
また、樹脂組成物が、特定の条件で測定された貯蔵弾性率(G’)および損失正接(tanδ)がそれぞれ特定の範囲にあることにより、成形性および後処理加工性などの加工性が良好な未延伸樹脂シートが得られる。
このような本発明の未延伸樹脂シートは、飲料用の篏合蓋を成形するための材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例で製造した篏合蓋の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[樹脂シート]
本発明の未延伸樹脂シートは、スチレン系樹脂と、バイオマス由来のオレフィン系樹脂(以下、「バイオオレフィン系樹脂」ともいう。)と、相溶化剤とを含む樹脂組成物よりなるものである。
【0014】
未延伸樹脂シートを構成する樹脂組成物におけるスチレン系樹脂としては、スチレン系モノマーの重合体、スチレン系モノマーとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、これらの重合体または共重合体とゴムとの混合物などを用いることができる。これらの中では、スチレン系モノマーの重合体とゴムとの混合物である耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン系モノマーの重合体である汎用ポリスチレン(GPPS)またはこれらの混合物が好ましく、特に、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)と汎用ポリスチレン(GPPS)との混合物が好ましい。
【0015】
スチレン系モノマーの具体例としては、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4 - メチルスチレン、4-エチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン等のアルキル置換スチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-4-メチルスチレン等のα-アルキル置換スチレン、2-クロロスチレン、4-クロロスチレン等のハロゲン化スチレン等を挙げることができる。これらスチレン系モノマーは、単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)に用いられるゴムの具体例としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン- イソプレン共重合体などが挙げられる。これらは、単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
スチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体を用いる場合において、他のモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミドのようなN-置換マレイミド等のマレイン酸またはその誘導体などが挙げられる。これらは、単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
スチレン系樹脂は、温度200℃、荷重5kgfの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が1.0g/10min以上5.0g/10min以下のものであることが、成形性の観点から好ましい。
また、スチレン系樹脂は、例えば嵌合蓋を製造する場合において、得られる嵌合蓋の嵌合性の観点から、曲げ弾性率が1900MPa以上のものであることが好ましい。
【0019】
未延伸樹脂シートを構成する樹脂組成物におけるスチレン系樹脂の割合は、44.5~94.5質量%であることが好ましく、より好ましくは50~90質量%、更に好ましくは51~85質量%である。スチレン系樹脂の割合が過小である場合には、当該未延伸樹脂シートは剛性が低いものとなり、例えば篏合蓋を製造する場合において、得られる篏合蓋の篏合性が悪化することがある。一方、スチレン系樹脂の割合が過大である場合には、成形性が悪化しやすく、また、環境負荷低減の効果が十分に得られないことがある。
【0020】
未延伸樹脂シートを構成する樹脂組成物におけるバイオオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンと他のオレフィン系モノマーとの共重合体、またはこれらの混合物を用いることができるが、密度が0.942~0.970g/cm3の高密度ポリエチレンを含むものを用いることが好ましい。
バイオオレフィン系樹脂における高密度ポリエチレンの割合は、バイオオレフィン系樹脂100質量%において例えば50質量%以上である。高密度ポリエチレンの割合が過小である場合には、当該未延伸樹脂シートは剛性が低いものとなり、例えば篏合蓋を製造する場合において、得られる篏合蓋の篏合性が悪化することがある。
また、バイオオレフィン系樹脂は、モノマーの全部がバイオマス由来のものであってもよいが、一部が化石燃料由来のものであってもよい。
【0021】
また、バイオオレフィン系樹脂は、温度190℃、荷重2.16kgfの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が0.1g/10min以上3.0g/10min以下のものであることが、成形性の観点から好ましい。また、バイオオレフィン系樹脂は、例えば嵌合蓋を製造する場合において、得られる嵌合蓋の嵌合性の観点から、曲げ弾性率が800MPa以上のものであることが好ましく、また、耐熱性の観点から融点が100℃以上のものであることが好ましい。
【0022】
未延伸樹脂シートを構成する樹脂組成物におけるバイオオレフィン系樹脂の割合は、5.0~55質量%であることが好ましく、より好ましくは10~50質量%、更に好ましくは15~49質量%である。バイオオレフィン系樹脂の割合が過小である場合には、良好な成形性が得られないことがある。一方、バイオオレフィン系樹脂の割合が過大である場合には、例えば篏合蓋を製造する場合において、得られる篏合蓋の篏合性が悪化することがある。
【0023】
また、バイオオレフィン系樹脂は、樹脂組成物のバイオマス度が5%以上となる割合で、樹脂組成物に含有されていることが好ましい。樹脂組成物のバイオマス度が5%未満である場合には、環境負荷の低減化を十分に図ることが困難となることがある。
【0024】
未延伸樹脂シートを構成する樹脂組成物における相溶化剤としては、スチレン系樹脂およびオレフィン系樹脂の両方に相溶し得る高分子物質を用いることができる。このような高分子物質としては、スチレンとジエンとのブロック共重合体、この共重合体の水素添加物、またはそれらの混合物などの熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。このような熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン‐エチレン‐プロピレン‐スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン‐ブタジエン‐ブチレン‐スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。これらの中では、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレンブロック共重合体(SEBS)が好ましい。
【0025】
相溶化剤を構成する熱可塑性エラストマーは、温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が0.1g/10min以上5.0g/10min以下のものであることが、成形性の観点から好ましい。
【0026】
未延伸樹脂シートを構成する樹脂組成物における相溶化剤の割合は、0.5~10質量%であることが好ましく、より好ましくは1~10質量%、更に好ましくは2~8質量%である。相溶化剤の割合が過小である場合には、当該未延伸樹脂シートは耐衝撃性が低いものとなり、得られる成形体に割れが生じやすくなる。一方、相溶化剤の割合が過大である場合には、当該未延伸樹脂シートは剛性が低いものとなり、例えば篏合蓋を製造する場合において、得られる篏合蓋の篏合性が悪化することがある。
【0027】
未延伸樹脂シートを構成する樹脂組成物には、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、種々の添加剤が含有されていてもよい。このような添加剤としては、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定化剤、抗菌剤、滑剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、充填剤、難燃剤、分散剤、顔料、染料、カーボンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、補強材、流動性改良剤、増粘剤などが挙げられる。
【0028】
未延伸樹脂シートを構成する樹脂組成物は、温度200℃、周波数0.1~100rad/sの全範囲において、貯蔵弾性率(G’)が5×102~2×105Paの範囲にあることが好ましく、より好ましくは8×102~1.5×105Paである。貯蔵弾性率(G’)が過小である場合には、成形時に未延伸樹脂シートがドローダウンしやすくなり、得られる成形体にブリッジが発生するおそれがある。一方、貯蔵弾性率(G’)が過大である場合には、成形時における金型への賦形性が悪化し、必要な形状の成形体を得ることが困難となることがある。
【0029】
また、未延伸樹脂シートを構成する樹脂組成物は、温度200℃、周波数0.1~100rad/sの全範囲において、損失正接(tanδ)が0.35~3.0の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.4~2.5である。損失正接(tanδ)が過小である場合には、成形時における金型への賦形性が悪化し、必要な形状の成形体を得ることが困難となることがある。一方、損失正接(tanδ)が過大である場合には、成形時に未延伸樹脂シートがドローダウンしやすくなり、得られる成形体にブリッジが発生するおそれがある。
【0030】
本発明の未延伸樹脂シートの厚みは、100~600μmであることが好ましく、より好ましくは200~500μmである。
【0031】
本発明の未延伸樹脂シートを製造する方法としては、特に限定されることはなく、従来利用されている樹脂シートの製造方法をそのまま適用することができる。本発明の未延伸樹脂シートを製造する方法の一例を示すと、先ず、シートを構成する各成分、具体的には、スチレン系樹脂と、オレフィン系樹脂と、相溶化剤と、必要に応じて用いられるその他の成分とを、ブレンダーやタンブラーによって混合することにより、樹脂材料を調製する。次いで、得られた樹脂材料を押出機によって溶融混練した後、Tダイを使用して連続的にシート状に押出し、冷却ロールによって冷却することにより、未延伸樹脂シートが得られる。
以上において、押出機のシリンダーの温度は180~260℃、Tダイの温度は180~260℃、冷却ロールの温度は10~50℃である。
【0032】
[成形体]
本発明の成形体は、上記の未延伸樹脂シートを熱成形によって成形されてなるものである。熱成形の具体的な方法としては、熱板接触加熱成形法、真空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法などの従来公知の方法を利用することができる。熱成形の際の成形温度は、未延伸樹脂シートを構成する材料の軟化点等を考慮して適切に設定されるが、例えばヒーターの設定温度は300~450℃、シートの表面温度は130~210℃である。
【0033】
本発明の未延伸樹脂シートによれば、スチレン系樹脂と、バイオマス由来のオレフィン系樹脂と、相溶化剤とを含む樹脂組成物よりなるため、環境負荷の低減化を図ることができる。
また、樹脂組成物が貯蔵弾性率(G’)および損失正接(tanδ)が特定の範囲にあることにより、成形性および後処理加工性などの加工性が良好な未延伸樹脂シートが得られる。
このような本発明の未延伸樹脂シートは、飲料用の篏合蓋を構成する材料として好適である。
【実施例
【0034】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、下記の実施例および比較例において、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂および相溶化剤としては、以下に示すものを使用した。
【0035】
スチレン系樹脂(A):
PSジャパン社製の耐衝撃性ポリスチレン「PSJ-ポリスチレン475D」
メルトフローレート(MFR)=2.0g/10min
曲げ弾性率=2250MPa
オレフィン系樹脂(B-1)
Braskem社製のバイオマス由来の高密度ポリエチレン「グリーンポリエチレンSGF4950」
密度=0.956g/cm3
メルトフローレート(MFR)=0.34g/10min
曲げ弾性率=1060MPa
オレフィン系樹脂(B-2)
日本ポリエチレン社製の化石燃料由来の直鎖型低密度ポリエチレン「ノバテックLL UF943」
密度=0.938g/cm3
メルトフローレート(MFR)=2.1g/10min
曲げ弾性率=450MPa
相溶化剤(C):
旭化成社製の水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)「タフテックH1043」
メルトフローレート(MFR)=2.0g/10min
【0036】
以上において、MFRは、スチレン系樹脂については温度200℃、荷重5kgfの条件で、相溶化剤については温度230℃、荷重2.16kgfの条件で、オレフィン系樹脂については温度190℃、荷重2.16kgfの条件で、それぞれ測定された値である。
【0037】
〈実施例1〉
スチレン系樹脂(A)72質量%、オレフィン系樹脂(B-1)22質量%および相溶化剤6質量%を混合することにより、樹脂材料を調製した。
得られた樹脂材料を、φ65mmの単軸押出機に供給し、単軸押出機に連結したTダイ成形装置から押し出し、シート状に押し出された溶融樹脂を、冷却ロールによって冷却することにより、厚みが0.45mmの未延伸樹脂シートを製造した。以上において、単軸押出機のシリンダーの温度は250℃、Tダイヘッドの温度は230℃、冷却ロールの温度は30℃である。
【0038】
得られた未延伸樹脂シートについて、貯蔵弾性率(G’)、損失正接(tanδ)およびバイオマス度を以下のようにして測定した。結果を下記表1に示す。
[貯蔵弾性率(G’)および損失正接(tanδ)]
測定装置:動的粘弾性測定装置「Discovery HR-2」(TAインスツルメント社)
ジオメトリー:パラレルプレート φ25mm
測定条件:
温度=200℃
周波数=0.1~100rad/s
ひずみ=1%
ギャップ=700μm
【0039】
[バイオマス度]
バイオマス度とは、化石燃料由来の原料とバイオマス由来の原料との混合比率を表す指標であり、放射性炭素(14C)の濃度を測定することにより求められる。バイオマス度はASTM 6866のB法に従った方法で測定した。試料を燃焼させ、二酸化炭素を発生させ、真空ラインで二酸化炭素を精製した。精製した二酸化炭素を、鉄を触媒として水素で還元し、グラファイトを生成させた。グラファイトを、タンデム加速器をベースとした14C‐AMS専用装置(NEC社製)に装着し、14Cの係数、13C濃度(13C/12C)、14C濃度(14C/12C)の測定を行った。測定では、米国国立標準局(NIST)から提供されたシュウ酸を標準試料とした。
【0040】
得られた未延伸樹脂シートを、ヒーター温度が350℃に設定された真空成形機により、未延伸樹脂シートの温度が200℃となる条件で真空成形した。ここで、未延伸樹脂シートの温度は、日油技研工業社製のサーモラベル(登録商標)を用いて測定した。得られた成形体について、外周縁に沿ってに生じた不要部分をトムソン刃によってカットすることにより、飲用蓋を製造した。
得られた飲用蓋を図1に示す。この飲用蓋1においては、平面形状が円形であり、周縁に沿って篏合溝部2が形成され、また、上面には上方に突出するリフト部3が形成されている。飲用蓋1の外径は82mmで、リフト部3の高さが20mmである。
【0041】
〈実施例2〉
スチレン系樹脂(A)72質量%をスチレン系樹脂(A)62質量%に変更すると共に、オレフィン系樹脂(B-1)22質量%をオレフィン系樹脂(B-1)32質量%に変更して樹脂材料を調製したこと以外は、実施例1と同様にして未延伸樹脂シートおよび飲用蓋を製造し、未延伸樹脂シートの貯蔵弾性率(G’)、損失正接(tanδ)およびバイオマス度を測定した。結果を下記表1に示す。
【0042】
〈実施例3〉
スチレン系樹脂(A)72質量%をスチレン系樹脂(A)52質量%に変更すると共に、オレフィン系樹脂(B-1)22質量%をオレフィン系樹脂(B-1)42質量%に変更して樹脂材料を調製したこと以外は、実施例1と同様にして未延伸樹脂シートおよび飲用蓋を製造し、未延伸樹脂シートの貯蔵弾性率(G’)、損失正接(tanδ)およびバイオマス度を測定した。結果を下記表1に示す。
【0043】
〈比較例1〉
樹脂材料として、スチレン系樹脂(A)100質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして未延伸樹脂シートおよび飲用蓋を製造し、未延伸樹脂シートの貯蔵弾性率(G’)および損失正接(tanδ)を測定した。結果を下記表1に示す。
【0044】
〈比較例2〉
スチレン系樹脂(A)68質量%およびオレフィン系樹脂(B-1)32質量%を混合することにより、樹脂材料を調製したこと以外は、実施例1と同様にして未延伸樹脂シートおよび飲用蓋を製造し、未延伸樹脂シートの貯蔵弾性率(G’)、損失正接(tanδ)およびバイオマス度を測定した。結果を下記表1に示す。
【0045】
〈比較例3〉
スチレン系樹脂(A)72質量%をスチレン系樹脂(A)62質量%に変更すると共に、オレフィン系樹脂(B-1)22質量%をオレフィン系樹脂(B-2)32質量%に変更して樹脂材料を調製したこと以外は、実施例1と同様にして未延伸樹脂シートおよび飲用蓋を製造し、未延伸樹脂シートの貯蔵弾性率(G’)および損失正接(tanδ)を測定した。結果を下記表1に示す。
【0046】
[加工性の評価]
成形性:
実施例1~3および比較例1~3で得られた飲用蓋を観察し、篏合溝部およびリフト部に成形不良が認められないものを〇、リフト部にブリッジが生じたものを△、篏合溝部にブリッジが生じたものを×として評価した。結果を表1に示す。
後加工性:
実施例1~3および比較例1~3で得られた飲用蓋を観察し、篏合溝部にひび割れの発生が認められないものを〇、篏合溝部にひび割れが発生したものを×として評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1の結果から明らかなように、実施例1~3に係る未延伸樹脂シートは、成形性および後処理加工性などの加工性が良好なものであること確認された。
【符号の説明】
【0049】
1 飲用蓋
2 篏合溝部
3 リフト部

図1