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<図1>
  • 特許-グロメットユニット及び止水構造 図1
  • 特許-グロメットユニット及び止水構造 図2
  • 特許-グロメットユニット及び止水構造 図3
  • 特許-グロメットユニット及び止水構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】グロメットユニット及び止水構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20250120BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20250120BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
B60R16/02 622
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021155995
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023047072
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古谷 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 知彦
(72)【発明者】
【氏名】徳山 優介
(72)【発明者】
【氏名】村田 拓弥
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-31255(JP,A)
【文献】特開2020-198699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象に設けられている開口を覆うように取り付けられ、前記開口を通る第1電線と第2電線とが挿通されるグロメットユニットであって、
可撓性を有し前記第1電線が挿通される第1グロメットと、
可撓性を有し前記第2電線が挿通される第2グロメットと、
前記第1グロメット及び前記第2グロメットより高い剛性を有する第1ブラケットと、
前記第1グロメット及び前記第2グロメットより高い剛性を有する第2ブラケットと、
を備え、
前記第1ブラケットは、前記開口を覆うように前記取付対象に取り付けられるものであり、前記第1グロメットが挿通される第1貫通孔と、前記第2グロメットが挿通される第2貫通孔と、を有し、
前記第2ブラケットは、前記第2貫通孔を覆うように前記第1ブラケットに取り付けられるものであり、前記第2貫通孔と重なる位置に設けられ前記第2グロメットが挿通される第3貫通孔を有している、
グロメットユニット。
【請求項2】
前記第1電線の挿通方向から見て、前記第2ブラケットは、前記第1貫通孔とは重なっていない、
請求項1に記載のグロメットユニット。
【請求項3】
前記開口の周囲において前記取付対象と前記第1ブラケットとに挟まれる第1シール部と、
前記第2貫通孔の周囲において前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとに挟まれる第2シール部と、
を有している、
請求項1または請求項2に記載のグロメットユニット。
【請求項4】
前記第1ブラケットは、前記第2シール部が押し当てられる平面部を有している、
請求項3に記載のグロメットユニット。
【請求項5】
前記第1シール部は、前記第1グロメットに一体に設けられている、
請求項3または請求項4に記載のグロメットユニット。
【請求項6】
前記第1グロメットは、筒状に延び前記第1貫通孔に挿通される第1筒部と、前記第1筒部から外周側に延びる第1鍔部と、を有し、
前記第1鍔部は、前記第1シール部を有している、
請求項5に記載のグロメットユニット。
【請求項7】
前記第1鍔部は、前記第2貫通孔及び前記第3貫通孔と重なる位置に設けられるグロメット側貫通孔を有している、
請求項6に記載のグロメットユニット。
【請求項8】
前記第2シール部は、前記第2グロメットに一体に設けられている、
請求項3から請求項7のいずれか1項に記載のグロメットユニット。
【請求項9】
前記第2グロメットは、筒状に延び前記第3貫通孔に挿通される第2筒部と、前記第2筒部から外周側に延びる第2鍔部と、を有し、
前記第2鍔部は、前記第2シール部を有している、
請求項8に記載のグロメットユニット。
【請求項10】
第1電線と第2電線の両方が挿通される1つの開口を有する取付対象と、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のグロメットユニットと、
を備える止水構造であって、
前記グロメットユニットは、前記1つの開口を覆うように前記取付対象に取り付けられている、
止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グロメットユニット及び止水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両のボディパネルに設けられた開口を覆うグロメットユニットが記載されている。特許文献1において、ボディパネルの開口には複数の電線が通される。グロメットユニットは、ゴムなどの可撓性を有する材料にて構成されるグロメット本体と、グロメット本体をボディパネルに固定するブラケットとを備える。グロメット本体は、ボディパネルとブラケットとに挟まれることで、複数の電線が通るボディパネルの開口をシールする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-173139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなグロメットユニット及び複数の電線を含むワイヤハーネスの組付手順としては、まず、複数の電線をグロメットユニットに通した後、各電線の端部に対し端子を装着するなどの必要な処理を行う。その後、各電線をボディパネルの開口に通すとともに、グロメットユニットをボディパネルの開口に組み付ける。したがって、先に組み付けた電線及びグロメットユニットを一旦取り外した後、後付けする電線をグロメットユニットに通すといった、現実的ではない複雑な手順を取る必要が生じてしまう。
【0005】
また、組付け工程が異なる電線を通したい場合、複数の穴を設ける必要があるのでスペースの確保や固定箇所の追加が必要になると言った問題が生じてしまう。
本開示の目的は、組み付けの簡素化を可能としたグロメットユニット及び止水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のグロメットユニットは、取付対象に設けられている開口を覆うように取り付けられ、前記開口を通る第1電線と第2電線とが挿通されるグロメットユニットであって、可撓性を有し前記第1電線が挿通される第1グロメットと、可撓性を有し前記第2電線が挿通される第2グロメットと、前記第1グロメット及び前記第2グロメットより高い剛性を有する第1ブラケットと、前記第1グロメット及び前記第2グロメットより高い剛性を有する第2ブラケットと、を備え、前記第1ブラケットは、前記開口を覆うように前記取付対象に取り付けられるものであり、前記第1グロメットが挿通される第1貫通孔と、前記第2グロメットが挿通される第2貫通孔と、を有し、前記第2ブラケットは、前記第2貫通孔を覆うように前記第1ブラケットに取り付けられるものであり、前記第2貫通孔と重なる位置に設けられ前記第2グロメットが挿通される第3貫通孔を有している。
【0007】
また、本開示の止水構造は、第1電線と第2電線の両方が挿通される1つの開口を有する取付対象と、上記のグロメットユニットと、を備える止水構造であって、前記グロメットユニットは、前記1つの開口を覆うように前記取付対象に取り付けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示のグロメットユニット及び止水構造によれば、組み付けの簡素化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態のグロメットユニットの斜視図である。
図2図2は、同形態のグロメットユニットの分解斜視図である。
図3図3は、同形態のグロメットの平面図である。
図4図4は、図3における4-4線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のグロメットユニットは、
[1]取付対象に設けられている開口を覆うように取り付けられ、前記開口を通る第1電線と第2電線とが挿通されるグロメットユニットであって、可撓性を有し前記第1電線が挿通される第1グロメットと、可撓性を有し前記第2電線が挿通される第2グロメットと、前記第1グロメット及び前記第2グロメットより高い剛性を有する第1ブラケットと、前記第1グロメット及び前記第2グロメットより高い剛性を有する第2ブラケットと、を備え、前記第1ブラケットは、前記開口を覆うように前記取付対象に取り付けられるものであり、前記第1グロメットが挿通される第1貫通孔と、前記第2グロメットが挿通される第2貫通孔と、を有し、前記第2ブラケットは、前記第2貫通孔を覆うように前記第1ブラケットに取り付けられるものであり、前記第2貫通孔と重なる位置に設けられ前記第2グロメットが挿通される第3貫通孔を有している。
【0011】
この構成によれば、第1電線、第1グロメット及び第1ブラケットをASSY化したものを先に取付対象に取り付けた後、第2電線、第2グロメット及び第2ブラケットをASSY化したものを、第1ブラケットの第2貫通孔に対して後付けすることが可能となる。したがって、複数の電線が通されるグロメットユニットにおいて、組み付けの簡素化が可能となる。
【0012】
[2]前記第1電線の挿通方向から見て、前記第2ブラケットは、前記第1貫通孔とは重なっていない。
この構成によれば、第2ブラケットが、第2貫通孔を通る第1グロメット及び第1電線に干渉しないように構成することが可能となる。
【0013】
[3]上記のグロメットユニットは、前記開口の周囲において前記取付対象と前記第1ブラケットとに挟まれる第1シール部と、前記第2貫通孔の周囲において前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとに挟まれる第2シール部と、を有している。
【0014】
この構成によれば、取付対象と第1ブラケットとに挟まれた第1シール部によって、取付対象の開口をシールすることが可能となる。また、第1ブラケットと第2ブラケットとに挟まれた第2シール部によって、第2貫通孔をシールすることが可能となる。
【0015】
[4]前記第1ブラケットは、前記第2シール部が押し当てられる平面部を有している。
この構成によれば、第1ブラケットの平面部と第2ブラケットとで第2シール部の全周を好適に挟むことが可能となる。その結果、第2シール部の止水性をより向上させることが可能となる。
【0016】
[5]前記第1シール部は、前記第1グロメットに一体に設けられている。
この構成によれば、第1シール部が第1グロメットと一体をなすため、部品点数の増加を抑制することが可能となる。
【0017】
[6]前記第1グロメットは、筒状に延び前記第1貫通孔に挿通される第1筒部と、前記第1筒部から外周側に延びる第1鍔部と、を有し、前記第1鍔部は、前記第1シール部を有している。この構成によれば、取付対象と第1ブラケットとに挟まれる第1シール部を第1筒部に一体に有する第1グロメットの構成とすることができる。
【0018】
[7]前記第1鍔部は、前記第2貫通孔及び前記第3貫通孔と重なる位置に設けられるグロメット側貫通孔を有している。
この構成によれば、第1シール部を含む第1鍔部を有する第1グロメットの構成において、第2電線、第2グロメット及び第2ブラケットをASSY化したものを、第1ブラケットの第2貫通孔に対して後付けすることが可能となる。
【0019】
[8]前記第2シール部は、前記第2グロメットに一体に設けられている。
この構成によれば、第2シール部が第2グロメットと一体をなすため、部品点数の増加を抑制することが可能となる。
【0020】
[9]前記第2グロメットは、筒状に延び前記第3貫通孔に挿通される第2筒部と、前記第2筒部から外周側に延びる第2鍔部と、を有し、前記第2鍔部は、前記第2シール部を有している。この構成によれば、第1ブラケットと第2ブラケットとに挟まれる第2シール部を第2筒部に一体に有する第2グロメットの構成とすることができる。
【0021】
[10]本開示の止水構造は、第1電線と第2電線の両方が挿通される1つの開口を有する取付対象と、上記のグロメットユニットと、を備える止水構造であって、前記グロメットユニットは、前記1つの開口を覆うように前記取付対象に取り付けられている。
【0022】
この構成によれば、グロメットユニットによって取付対象の開口をシールする止水構造において、上記のグロメットユニットと同様の効果を得ることが可能となる。また、この止水構造では、グロメットユニットが取り付けられ第1電線及び第2電線が挿通される取付対象の開口を1つとする。このため、取付対象において、本止水構造が占めるスペースを小さく抑えることが可能となる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のグロメットユニットの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。なお、本明細書の説明で使用される「筒状」は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように周方向の一部に切り欠きなどを有するものも含む。また、「筒状」の形状には、円形、楕円形、及び、尖ったまたは丸い角を有する多角形が含まれる。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネス10は、第1電線11と、第2電線12と、グロメットユニット13とを備えている。グロメットユニット13は、取付対象としての車両のボディパネル14に取り付けられる。グロメットユニット13は、ボディパネル14に設けられている開口15を覆うように組み付けられる。グロメットユニット13は、ボディパネル14とで本実施形態の止水構造Sを構成する。第1電線11及び第2電線12は、グロメットユニット13及び開口15に挿通されてボディパネル14の一側面側から他側面側に配策される。なお、ボディパネル14において、グロメットユニット13にて覆われる開口15の数は例えば1つである。
【0025】
本実施形態では、第1電線11は複数設けられている。複数の第1電線11には、例えば高圧バッテリと接続される高圧ケーブルが含まれる。また、本実施形態では、第2電線12は1つのみ設けられている。第2電線12は、例えば、車輪駆動用のモータなどに接続されるモータケーブルである。
【0026】
(グロメットユニット13)
図1及び図2に示すように、グロメットユニット13は、第1グロメット20と、第1ブラケット30と、第2グロメット40と、第2ブラケット50と、を備えている。ボディパネル14から離れる方向に向かって、第1グロメット20、第1ブラケット30、第2グロメット40、第2ブラケット50の順に重なって設けられている。
【0027】
第1グロメット20は、可撓性を有する材料にて構成されている。第1グロメット20を構成する材料としては、例えば、ゴムやエラストマなどを用いることができる。
第2グロメット40は、可撓性を有する材料にて構成されている。第2グロメット40を構成する材料としては、例えば、ゴムやエラストマなどを用いることができる。第2グロメット40を構成する材料は、第1グロメット20を構成する材料と同一材料であっても、別材料であってもよい。
【0028】
第1ブラケット30及び第2ブラケット50の各々は、第1グロメット20及び第2グロメット40よりも高い剛性を有する材料にて構成されている。第1ブラケット30及び第2ブラケット50の各々は、例えば、金属材料にて構成された板状の部材である。第1ブラケット30及び第2ブラケット50の各々は、金属板からプレス加工によって成形される。
【0029】
図3及び図4に示すように、第1グロメット20は、例えば、筒状に延びる第1筒部21と、第1筒部21から外周側に延びる第1鍔部22と、を一体に有している。
第1筒部21は、第1筒部21の内側の中空部分を閉塞する閉塞部23と、閉塞部23から筒状に延びる電線挿通部24と、を有している。電線挿通部24には、第1電線11が密着状態で通される。これにより、第1電線11と第1筒部21との間の止水性が確保されるようになっている。なお、第1電線11が複数設けられる場合、電線挿通部24も第1電線11に対応して複数設けられる。そして、複数の電線挿通部24の各々に第1電線11が通される。
【0030】
第1鍔部22は、ボディパネル14の開口15のサイズよりも大きな形状をなすとともに、開口15を覆う。第1鍔部22は、開口15の周縁に沿った環状をなす第1シール部25を有している。第1シール部25は、開口15の周囲においてボディパネル14の側面と第1ブラケット30とに挟まれる。すなわち、第1シール部25は、開口15の周囲においてボディパネル14と第1ブラケット30との間において圧縮状態で介在される。これにより、第1シール部25によって開口15がシールされる。
【0031】
第1ブラケット30は、ボディパネル14との間で第1鍔部22を挟みつつ開口15を覆う。第1ブラケット30は、ボディパネル14に対してボルト固定される。第1ブラケット30は、複数のボルト挿通孔30aを有している。複数のボルト挿通孔30aの各々には、ボディパネル14から延びる図示しない固定用ボルトが挿通される。
【0032】
図2及び図4に示すように、第1ブラケット30は、第1グロメット20が挿通される第1貫通孔31と、第2グロメット40が挿通される第2貫通孔32と、を有している。
第1貫通孔31の周縁は、例えば、バーリング加工などによって第1鍔部22とは反対側に屈曲されている。第1貫通孔31には、第1グロメット20における第1筒部21が挿通される。第1筒部21の外周面には、第1貫通孔31の周縁が嵌合される第1嵌合溝26が設けられている。第1貫通孔31の周縁が第1嵌合溝26に嵌合されることで、第1グロメット20が第1貫通孔31に対して固定される。第1貫通孔31及び第1筒部21には、第1電線11が挿通される。
【0033】
第1グロメット20において、第1シール部25は、第1シール部25の一側面及びその反対側の側面の各々から突出する第1リップ部27を有している。一方の第1リップ部27は、開口15の周囲においてボディパネル14の側面に接する。他方の第1リップ部27は、第1ブラケット30の側面に接する。各第1リップ部27は、ボディパネル14と第1ブラケット30とに挟まれて圧縮されることによって、ボディパネル14と第1ブラケット30との間を効果的にシールする。
【0034】
また、第1グロメット20の第1鍔部22は、グロメット側貫通孔28を有している。グロメット側貫通孔28は、第2電線12の挿通方向において、第2貫通孔32と重なる位置に設けられている。
【0035】
第2グロメット40は、第1ブラケット30と第2ブラケット50との間に設けられている。第2グロメット40は、例えば、筒状に延びる第2筒部41と、第2筒部41から外周側に延びる第2鍔部42と、を一体に有している。第2筒部41には、第2電線12が密着状態で通される。これにより、第2電線12と第2筒部41との間の止水性が確保されるようになっている。第2筒部41及び第2電線12は、第1グロメット20のグロメット側貫通孔28、第1ブラケット30の第2貫通孔32、及び、後述する第2ブラケット50の第3貫通孔52に挿通されている。
【0036】
第2鍔部42は、第1ブラケット30の第2貫通孔32のサイズよりも大きな形状をなすとともに、第2貫通孔32を覆う。第2鍔部42は、第2貫通孔32の周縁に沿った環状をなす第2シール部43を有している。第2シール部43は、第2貫通孔32の周囲において第1ブラケット30と第2ブラケット50とに挟まれる。すなわち、第2シール部43は、第2貫通孔32の周囲において第1ブラケット30と第2ブラケット50との間において圧縮状態で介在される。これにより、第2シール部43によって第2貫通孔32がシールされる。
【0037】
また、第1ブラケット30は、図4に示すように、第2シール部43が押し当てられる平面部33を有している。平面部33は、例えば、第2貫通孔32の貫通方向に対して垂直な平面状をなす。また、第2貫通孔32の貫通方向における第2シール部43の投影の一部が、第1シール部25に重なっている。これにより、ボディパネル14の面方向においてグロメットユニット13の小型化が可能となる。
【0038】
第2ブラケット50は、第1ブラケット30との間で第2鍔部42を挟みつつ第2貫通孔32を覆う。第2ブラケット50は、第1ブラケット30に対してボルト固定される。図2に示すように、第2ブラケット50は、複数のボルト挿通孔51を有している。複数のボルト挿通孔51の各々には、第1ブラケット30から延びる固定用ボルト34が挿通される。また、第1電線11の挿通方向から見て、第2ブラケット50は、第1貫通孔31とは重なっていない。
【0039】
図2及び図4に示すように、第2ブラケット50は、第2電線12の挿通方向において、第1ブラケット30の第2貫通孔32及び第1グロメット20のグロメット側貫通孔28と重なる位置に設けられる第3貫通孔52を有している。第3貫通孔52には、第2電線12及び第2グロメット40の第2筒部41が挿通される。
【0040】
第3貫通孔52の周縁は、例えば、バーリング加工などによって第1ブラケット30とは反対側に屈曲されている。第2グロメット40の第2鍔部42は、第3貫通孔52の周縁が嵌合される第2嵌合溝44と、第2嵌合溝44と第2筒部41の外周面とを繋ぐ連結部45と、を有している。第3貫通孔52の周縁が第2嵌合溝44に嵌合されることで、第2グロメット40が第3貫通孔52に対して固定される。また、連結部45は、第2グロメット40における他の部位よりも薄肉とされることで可撓性が高い部位となっている。これにより、第2電線12に対する第2筒部41の追従性を向上させることが可能である。
【0041】
第2グロメット40において、第2シール部43は、第2シール部43の一側面及びその反対側の側面の各々から突出する第2リップ部46を有している。一方の第2リップ部46は、第2貫通孔32の周囲において第1ブラケット30の側面に接する。他方の第2リップ部46は、第2ブラケット50の側面に接する。各第2リップ部46は、第1ブラケット30と第2ブラケット50とに挟まれて圧縮されることによって、第1ブラケット30と第2ブラケット50との間を効果的にシールする。
【0042】
次に、ワイヤハーネス10の組み付け手順の一例について説明する。
まず、第1電線11、第1グロメット20及び第1ブラケット30を含む第1のASSY部品を構成する。ここでは、第1電線11を第1グロメット20の電線挿通部24に通した後、第1電線11の端部に対し図示しない端子を装着するなどの必要な処理を行う。また、第1貫通孔31を介して第1電線11に通した第1ブラケット30の第1貫通孔31に対して、第1グロメット20の第1筒部21を嵌合させる。これにより、第1電線11、第1グロメット20及び第1ブラケット30を含む第1のASSY部品が完成する。
【0043】
その後、当該第1のASSY部品における第1電線11を開口15に通すとともに、第1ブラケット30を、開口15を覆うようにボディパネル14に固定する。これにより、ボディパネル14と第1ブラケット30との間に第1シール部25が圧縮状態で介在される。
【0044】
次に、第2電線12、第2グロメット40及び第2ブラケット50を含む第2のASSY部品を構成する。ここでは、第2電線12を第2グロメット40の第2筒部41に通した後、第2電線12の端部に対し図示しない端子を装着するなどの必要な処理を行う。また、第3貫通孔52を介して第2電線12に通した第2ブラケット50の第3貫通孔52に対して、第2グロメット40の第2嵌合溝44を嵌合させる。これにより、第2電線12、第2グロメット40及び第2ブラケット50を含む第2のASSY部品が完成する。
【0045】
その後、当該第2のASSY部品における第2電線12を、上記第1のASSY部品における第2貫通孔32及びグロメット側貫通孔28に通すとともに、第2ブラケット50を、第2貫通孔32を覆うように第1ブラケット30に固定する。これにより、第1ブラケット30と第2ブラケット50との間に第2シール部43が圧縮状態で介在される。上記構成によれば、組付工程が互いに異なる第1電線11及び第2電線12の両方が挿通される1つの開口15に対して、グロメットユニット13にて止水性を確保できるようになっている。
【0046】
本実施形態の効果について説明する。
(1)第1ブラケット30は、開口15を覆うようにボディパネル14に取り付けられる。第1ブラケット30は、第1グロメット20が挿通される第1貫通孔31と、第2グロメット40が挿通される第2貫通孔32と、を有している。第2ブラケット50は、第2貫通孔32を覆うように第1ブラケット30に取り付けられる。そして、第2ブラケット50は、第2貫通孔32と重なる位置に設けられ第2グロメット40が挿通される第3貫通孔52を有している。
【0047】
この構成によれば、第2電線12、第2グロメット40及び第2ブラケット50をASSY化したものを、ボディパネル14に先に組み付いた状態の第1ブラケット30の第2貫通孔32に対して後付けすることが可能となる。したがって、第1電線11及び第2電線12が通されるグロメットユニット13において、組み付けの簡素化が可能となる。
【0048】
(2)第1電線11の挿通方向から見て、第2ブラケット50は、第1貫通孔31とは重なっていない。この構成によれば、第2ブラケット50が、第2貫通孔32を通る第1グロメット20及び第1電線11に干渉しないように構成することが可能となる。
【0049】
(3)グロメットユニット13は、開口15の周囲においてボディパネル14と第1ブラケット30とに挟まれる第1シール部25と、第2貫通孔32の周囲において第1ブラケット30と第2ブラケット50とに挟まれる第2シール部43と、を有している。
【0050】
この構成によれば、ボディパネル14と第1ブラケット30とに挟まれた第1シール部25によって、ボディパネル14の開口15をシールすることが可能となる。また、第1ブラケット30と第2ブラケット50とに挟まれた第2シール部43によって、第2貫通孔32をシールすることが可能となる。
【0051】
(4)第1ブラケット30は、第2シール部43が押し当てられる平面部33を有している。
この構成によれば、第1ブラケット30の平面部33と第2ブラケット50とで第2シール部43の全周を好適に挟むことが可能となる。その結果、第2シール部43の止水性をより向上させることが可能となる。
【0052】
(5)第1シール部25は、第1グロメット20に一体に設けられている。
この構成によれば、第1シール部25が第1グロメット20と一体をなすため、部品点数の増加を抑制することが可能となる。
【0053】
(6)第1グロメット20は、筒状に延び第1貫通孔31に挿通される第1筒部21と、第1筒部21から外周側に延びる第1鍔部22と、を有している。そして、第1鍔部22は、第1シール部25を有している。この構成によれば、ボディパネル14と第1ブラケット30とに挟まれる第1シール部25を第1筒部21に一体に有する第1グロメット20の構成とすることができる。
【0054】
(7)第1鍔部22は、第2貫通孔32及び第3貫通孔52と重なる位置に設けられるグロメット側貫通孔28を有している。
この構成によれば、第1シール部25を含む第1鍔部22を有する第1グロメット20の構成において、第2電線12、第2グロメット40及び第2ブラケット50のASSY部品を、第1ブラケット30の第2貫通孔32に対して後付けすることが可能となる。
【0055】
(8)第2シール部43は、第2グロメット40に一体に設けられている。
この構成によれば、第2シール部43が第2グロメット40と一体をなすため、部品点数の増加を抑制することが可能となる。
【0056】
(9)第2グロメット40は、筒状に延び第3貫通孔52に挿通される第2筒部41と、第2筒部41から外周側に延びる第2鍔部42と、を有している。そして、第2鍔部42は、第2シール部43を有している。この構成によれば、第1ブラケット30と第2ブラケット50とに挟まれる第2シール部43を第2筒部41に一体に有する第2グロメット40の構成とすることができる。
【0057】
(10)第1ブラケット30は、ボディパネル14に対してボルト固定される。また、第2ブラケット50は、第1ブラケット30に対してボルト固定される。
この構成によれば、第1ブラケット30をより確実にボディパネル14に固定することが可能となる。また、第2ブラケット50をより確実に第1ブラケット30に固定することが可能となる。
【0058】
(11)止水構造Sは、第1電線11と第2電線12の両方が挿通される1つの開口15を有するボディパネル14と、グロメットユニット13と、を備える。そして、グロメットユニット13は、1つの開口15を覆うようにボディパネル14に取り付けられている。
【0059】
この構成によれば、グロメットユニット13が取り付けられ第1電線11及び第2電線12が挿通されるボディパネル14の開口15を1つとしている。このため、ボディパネル14において、本止水構造Sが占めるスペースを小さく抑えることが可能となる。
【0060】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態のグロメットユニット13では、第1シール部25が第1グロメット20に一体に設けられたが、これに特に限定されるものではない。例えば、第1シール部25を第1グロメット20とは別体とし、第1ブラケット30におけるボディパネル14と対向する側面に設けてもよい。
【0061】
・上記実施形態のグロメットユニット13では、第2シール部43が第2グロメット40に一体に設けられたが、これに特に限定されるものではない。例えば、第2シール部43を第2グロメット40とは別体とし、第2ブラケット50における第1ブラケット30と対向する側面に設けてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、第1電線11及び第2電線12の両方が挿通される1つの開口15がボディパネル14に設けられ、グロメットユニット13は、その1つの開口15を覆うものであるが、これに特に限定されるものではない。例えば、ボディパネル14において、第1電線11が挿通される第1の開口と、第2電線12が挿通される第2の開口とをそれぞれ個別に設け、それら第1の開口及び第2の開口をグロメットユニット13で塞ぐ構成としてもよい。この構成によれば、ボディパネル14の開口面積を小さく抑えることが可能となり、その結果、ボディパネル14の剛性の向上に寄与できる。
【0063】
・第1電線11及び第2電線12の各々の数は上記実施形態に限定されるものではなく、車両の構成などに応じて適宜変更可能である。
・第1グロメット20、第1ブラケット30、第2グロメット40及び第2ブラケット50の各々について、形状などの構成は上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態における作用ならびに効果を奏する範囲内で適宜変更可能である。
【0064】
・上記実施形態では、ボディパネル14の開口15に組み付けられるグロメットユニット13に適用したが、それ以外のグロメットユニットに適用することも可能である。
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
10 ワイヤハーネス
11 第1電線
12 第2電線
13 グロメットユニット
14 ボディパネル(取付対象)
15 開口
20 第1グロメット
21 第1筒部
22 第1鍔部
23 閉塞部
24 電線挿通部
25 第1シール部
26 第1嵌合溝
27 第1リップ部
28 グロメット側貫通孔
30 第1ブラケット
30a ボルト挿通孔
31 第1貫通孔
32 第2貫通孔
33 平面部
34 固定用ボルト
40 第2グロメット
41 第2筒部
42 第2鍔部
43 第2シール部
44 第2嵌合溝
45 連結部
46 第2リップ部
50 第2ブラケット
51 ボルト挿通孔
52 第3貫通孔
S 止水構造
図1
図2
図3
図4