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特許7621922管継手、その管継手を用いた配管構造およびその配管構造の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】管継手、その管継手を用いた配管構造およびその配管構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/248 20060101AFI20250120BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20250120BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
F16L37/248
F16L41/02
E03C1/12 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021159457
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049616
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 琢夢
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007306(JP,A)
【文献】特開2019-132118(JP,A)
【文献】特開2016-130449(JP,A)
【文献】特開2005-240345(JP,A)
【文献】特開2011-111853(JP,A)
【文献】特開2020-041609(JP,A)
【文献】特開2020-034015(JP,A)
【文献】特開2020-029655(JP,A)
【文献】特開2020-094332(JP,A)
【文献】実開昭59-175786(JP,U)
【文献】特開2004-211318(JP,A)
【文献】特開2017-115386(JP,A)
【文献】特開2011-106157(JP,A)
【文献】特開2005-105708(JP,A)
【文献】特開2004-011093(JP,A)
【文献】実公平07-031028(JP,Y2)
【文献】特開2005-147361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/248
F16L 41/02
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手であって、
上側の配管を接続する上配管接続部と、
下側の配管を接続する下配管接続部と、
前記上配管接続部と前記下配管接続部との上下方向の間に設けられ、横枝管を接続する横枝管接続部と、
前記横枝管接続部と前記横枝管とを接続する横枝管接続部材と、を含み、
前記横枝管接続部材は、前記横枝管接続部にバヨネット構造によって着脱自在に接続され、
前記横枝管接続部材は、両端に口径が異なる開口部を備えた円管形状を備え、口径が大きい一方の開口部が前記横枝管接続部に接続されるとともに、前記一方の開口部の管軸と他方の開口部の管軸とが一致せず、
前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造によって接続したときに、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯可能、および、前記横枝管接続部の管軸を通る水平線上で左右に偏芯可能であることを特徴とする管継手。
【請求項2】
上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手であって、
上側の配管を接続する上配管接続部と、
下側の配管を接続する下配管接続部と、
前記上配管接続部と前記下配管接続部との上下方向の間に設けられ、横枝管を接続する横枝管接続部と、
前記横枝管接続部と前記横枝管とを接続する横枝管接続部材と、を含み、
前記横枝管接続部材は、前記横枝管接続部にバヨネット構造によって着脱自在に接続され、
前記横枝管接続部材は、両端に口径が異なる開口部を備えた円管形状を備え、口径が大きい一方の開口部が前記横枝管接続部に接続されるとともに、前記一方の開口部の管軸と他方の開口部の管軸とが一致せず、
前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造によって接続したときに、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯または前記横枝管接続部の管軸を通る水平線上で左右に偏芯させることが選択可能に構成されていて、前記他方の開口部の管軸を上下左右のいずれかの方向に偏芯させて、前記横枝管接続部の管軸に対して前記横枝管の管軸が上面視または側面視で一致していない場合に一致させることを特徴とする管継手。
【請求項3】
上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手であって、
上側の配管を接続する上配管接続部と、
下側の配管を接続する下配管接続部と、
前記上配管接続部と前記下配管接続部との上下方向の間に設けられ、横枝管を接続する横枝管接続部と、
前記横枝管接続部と前記横枝管とを接続する横枝管接続部材と、を含み、
前記横枝管接続部材は、前記横枝管接続部にバヨネット構造によって着脱自在に接続され、
前記横枝管接続部材は、両端に口径が異なる開口部を備えた円管形状を備え、口径が大きい一方の開口部が前記横枝管接続部に接続されるとともに、前記一方の開口部の管軸と他方の開口部の管軸とが一致せず、
前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造によって接続したときに、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯することを特徴とし、
前記バヨネット構造として、前記横枝管接続部の内周面に略L字形状の複数の係合溝が設けられ、前記横枝管接続部材の前記一方の開口部の外周面に前記係合溝に係合する複数の係合突起が設けられ、
前記横枝管接続部材を、前記横枝管接続部へ差し込んで、前記一方の開口部の管軸周りに回転させることにより、前記係合突起が前記係合溝の終端に到達して位置決めされるとともに前記横枝管接続部材が前記横枝管接続部に接続されて、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯し、
前記係合溝は、前記横枝管接続部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が少なくとも2組設けられ、前記点対称な位置に設けられた係合溝は同じ大きさであって、
前記係合突起は、前記横枝管接続部材における前記一方の開口部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が少なくとも2組設けられ、前記点対称な位置に設けられた係合突起は同じ大きさであって、
前記係合溝の大きさおよび前記係合突起の大きさが異なる組があり、
前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造によって接続したときに、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上側に偏芯または下側に偏芯のいずれかを選択することができることを特徴とする、管継手。
【請求項4】
前記係合溝は、少なくとも1組の前記係合溝の終端が前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上に位置し、
前記係合突起は、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が上側に偏芯した状態において、少なくとも1組の前記係合突起が前記一方の開口部の管軸を通る垂直線上に位置することを特徴とする、請求項3に記載の管継手。
【請求項5】
前記係合溝および前記係合突起は、管軸を点対称の対称中心として設けられた少なくとも2組のうちの1組は水平位置に設けられ、前記2組のうちの他の1組は垂直位置に設けられ、
前記係合溝の大きさは水平位置が垂直位置よりも大きく、かつ、前記係合突起の大きさは水平位置が垂直位置よりも大きく、
または、
前記係合溝の大きさは水平位置が垂直位置よりも小さく、かつ、前記係合突起の大きさは水平位置が垂直位置よりも小さいことを特徴とする、請求項4に記載の管継手。
【請求項6】
前記係合溝は、前記横枝管接続部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が垂直位置に設けられ、2個の前記係合溝は同じ大きさであって、
前記係合突起は、前記横枝管接続部材における前記一方の開口部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が垂直位置に設けられ、2個の前記係合突起は同じ大きさであることを特徴とする、請求項に記載の管継手。
【請求項7】
前記係合溝は、前記横枝管接続部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が水平位置に設けられ、2個の前記係合溝は同じ大きさであって、
前記係合突起は、前記横枝管接続部材における前記一方の開口部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が水平位置に設けられ、2個の前記係合突起は同じ大きさであることを特徴とする、請求項に記載の管継手。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれかに記載の管継手を用いた配管構造。
【請求項9】
請求項8に記載の配管構造の施工方法であって、
前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造によって接続する前に、前記横枝管接続部の管軸に対して前記横枝管の管軸が上面視または側面視で一致していない場合に一致させる必要があるか否かを判断するステップと、
前記一致させる必要があると判断された場合に、前記他方の開口部の管軸を上下左右のいずれの方向に偏芯させるのかを決定するステップと、
前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部に接続したときに、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯または前記横枝管接続部の管軸を通る水平線上で左右に偏芯するように、前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造により接続するステップと、を含むことを特徴とする、施工方法。
【請求項10】
上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手を用いた配管構造の施工方法であって、
前記管継手は、
上側の配管を接続する上配管接続部と、
下側の配管を接続する下配管接続部と、
前記上配管接続部と前記下配管接続部との上下方向の間に設けられ、横枝管を接続する横枝管接続部と、
前記横枝管接続部と前記横枝管とを接続する横枝管接続部材と、を含み、
前記横枝管接続部材は、前記横枝管接続部にバヨネット構造によって着脱自在に接続され、
前記横枝管接続部材は、両端に口径が異なる開口部を備えた円管形状を備え、口径が大きい一方の開口部が前記横枝管接続部に接続されるとともに、前記一方の開口部の管軸と他方の開口部の管軸とが一致せず、
前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造によって接続したときに、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯または前記横枝管接続部の管軸を通る水平線上で左右に偏芯することを特徴とし、
前記施工方法は、
前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造によって接続する前に、前記横枝管接続部の管軸に対して前記横枝管の管軸が上面視または側面視で一致していない場合に一致させる必要があるか否かを判断するステップと、
前記一致させる必要があると判断された場合に、前記他方の開口部の管軸を上下左右のいずれの方向に偏芯させるのかを決定するステップと、
前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部に接続したときに、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯または前記横枝管接続部の管軸を通る水平線上で左右に偏芯するように、前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造により接続するステップと、を含むことを特徴とする、施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物において主として排水配管に用いられる上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手に関し、特に、管継手において横枝管が接続される部分(横枝管接続部)の管軸(軸芯)と横枝管の管軸(軸芯)とが一致しない場合であっても容易に一致させることのできる管継手、その管継手を用いた配管構造およびその配管構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビルなどには、給水設備および排水設備が設けられる。これらのうちの排水設備は、建物の各階層を上下に貫く縦管(竪管)と、各階層内に設置される横枝管と、これらを接続する管継手(集合継手)とを備えた排水配管構造が代表的なものとして広く知られている。たとえば、壁排水タイプの洋式便器に接続される排水設備の場合、洋式便器の排水口(受口)に横枝管が接続されて、その横枝管は管継手の横枝管接続部に接続される。
【0003】
最近では、たとえば、室内のリフォーム等によって、便器が変更されて、管継手に接続される横枝管のサイズおよび/または形状の仕様変更が求められる場合がある。従来の管継手は、床スラブに埋設されて管継手の本体部分が固定されている。また、従来の管継手において、横枝管が接続される横枝管接続部は本体部分と一体で形成されているもの、横枝管接続部が本体部分に接着剤等によって着脱不可能な状態で接続されているもの、が多かった。このような従来の管継手では、横枝管接続部のサイズおよび/または形状の変更が難しいという問題点があった。すなわち、このような従来の管継手では、横枝管の仕様変更のために、床スラブに埋設されている管継手を一旦取り外して、横枝管接続部を変更した管継手を床スラブに再度埋設する等の大幅な工事が必要となるという問題点があった。
【0004】
特開2019-007306号公報(特許文献1)は、このような問題点を解決する継手を開示する。この特許文献1に開示された継手は、外周面に被係合部を有する本管と、前記被係合部に係合可能な係合部を有し、前記本管に着脱可能に構成された分岐管と、を備え、前記被係合部と前記係合部との係合状態において前記分岐管の軸線を中心とする周方向において前記被係合部と前記係合部との相対的な位置が決められていることを特徴とする。
【0005】
この継手によると、分岐管は本管に対して着脱可能に設けられ、かつ、周方向において所定の相対位置で本管に連結可能とされているので、横枝管のサイズおよび/または形状に合致した分岐管を付け替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-007306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、壁排水タイプの洋式便器の排水高さ(排水芯高さ)には、その高さ寸法が異なる仕様が存在する。壁排水タイプの洋式便器の場合、洋式便器の排水口に横枝管が接続されて、その横枝管は管継手に接続されるが、高さの仕様が異なる洋式便器にリフォームする時等(本発明がリフォーム時に限定されて適用されることを意味するものではなく新築時に適用されるものであっても構わない)の場合には、洋式便器の排水口に接続された横枝管を管継手に接続することができないという問題点、すなわち垂直線上での管軸の不一致に起因する問題点がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された管継手では、このような問題点を解決することができない。なお、上述した問題点は垂直線上での管軸の不一致に起因するが、水平線上での管軸の不一致に起因して、横枝管を管継手に接続することができない問題点も発生し得る。
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手であって、管継手において横枝管が接続される部分の管軸と横枝管の管軸とが一致しない場合であっても容易に一致させることのできる管継手、その管継手を用いた配管構造およびその配管構造の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る管継手、その管継手を用いた配管構造およびその配管構造の施工方法は、以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のある局面に係る管継手は、上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手であって、上側の配管を接続する上配管接続部と、下側の配管を接続する下配管接続部と、前記上配管接続部と前記下配管接続部との上下方向の間に設けられ、横枝管を接続する横枝管接続部と、前記横枝管接続部と前記横枝管とを接続する横枝管接続部材と、を含み、前記横枝管接続部材は、前記横枝管接続部にバヨネット構造によって着脱自在に接続され、前記横枝管接続部材は、両端に口径が異なる開口部を備えた円管形状を備え、口径が大きい一方の開口部が前記横枝管接続部に接続されるとともに、前記一方の開口部の管軸と他方の開口部の管軸とが一致せず、前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造によって接続したときに、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯または前記横枝管接続部の管軸を通る水平線上で左右に偏芯することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記バヨネット構造として、前記横枝管接続部の内周面に略L字形状の複数の係合溝が設けられ、前記横枝管接続部材の前記一方の開口部の外周面に前記係合溝に係合する複数の係合突起が設けられ、前記横枝管接続部材を、前記横枝管接続部へ差し込んで、前記一方の開口部の管軸周りに回転させることにより、前記係合突起が前記係合溝の終端に到達して位置決めされるとともに前記横枝管接続部材が前記横枝管接続部に接続されて、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯または前記横枝管接続部の管軸を通る水平線上で左右に偏芯するように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、前記係合溝は、前記横枝管接続部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が少なくとも2組設けられ、前記点対称な位置に設けられた係合溝は同じ大きさであって、前記係合突起は、前記横枝管接続部材における前記一方の開口部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が少なくとも2組設けられ、前記点対称な位置に設けられた係合突起は同じ大きさであって、前記係合溝の大きさおよび前記係合突起の大きさが異なる組があり、前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造によって接続したときに、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上側に偏芯または下側に偏芯のいずれかを選択することができるように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記係合溝は、少なくとも1組の前記係合溝の終端が前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上に位置し、前記係合突起は、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が上側に偏芯した状態において、少なくとも1組の前記係合突起が前記一方の開口部の管軸を通る垂直線上に位置するように構成することができる。
さらに好ましくは、前記係合溝および前記係合突起は、管軸を点対称の対称中心として設けられた少なくとも2組のうちの1組は水平位置に設けられ、前記2組のうちの他の1組は垂直位置に設けられ、前記係合溝の大きさは水平位置が垂直位置よりも大きく、かつ、前記係合突起の大きさは水平位置が垂直位置よりも大きく、または、前記係合溝の大きさは水平位置が垂直位置よりも小さく、かつ、前記係合突起の大きさは水平位置が垂直位置よりも小さいように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記係合溝は、前記横枝管接続部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が垂直位置に設けられ、前記2個の係合溝は同じ大きさであって、前記係合突起は、前記横枝管接続部材における前記一方の開口部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が垂直位置に設けられ、前記2個の係合突起は同じ大きさであるように構成すること
ができる。
さらに好ましくは、前記係合溝は、前記横枝管接続部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が水平位置に設けられ、前記2個の係合溝は同じ大きさであって、前記係合突起は、前記横枝管接続部材における前記一方の開口部の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が水平位置に設けられ、前記2個の係合突起は同じ大きさであるように構成することができる。
【0014】
また、本発明の別の局面に係る配管構造は、上述したいずれかの管継手を用いた配管構造である。
また、本発明のさらに別の局面に係る施工方法は、上述した配管構造の施工方法であって、前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造によって接続する前に、前記横枝管接続部の管軸に対して前記横枝管の管軸が上面視または側面視で一致していない場合に一致させる必要があるか否かを判断するステップと、前記一致させる必要があると判断された場合に、前記他方の開口部の管軸を上下左右のいずれの方向に偏芯させるのかを決定するステップと、前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部に接続したときに、前記横枝管接続部材における前記他方の開口部の管軸が、前記横枝管接続部の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯または前記横枝管接続部の管軸を通る水平線上で左右に偏芯するように、前記横枝管接続部材を前記横枝管接続部にバヨネット構造により接続するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手であって、管継手において横枝管が接続される部分の管軸と横枝管の管軸とが一致しない場合であっても容易に一致させることのできる管継手、その管継手を用いた配管構造およびその配管構造の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る管継手10により解決される問題点を説明するための図である。
図2図1に示す排水配管構造1002Uおよび排水配管構造1002Dの配管を示す五面図である。
図3図1に示す排水配管構造1004Uおよび排水配管構造1004Dの配管を示す五面図である。
図4図2および図3とは別の排水配管構造1005Uおよび排水配管構造1005Dの配管を示す五面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る管継手10が上側偏芯された上側偏芯管継手10Uの(A)斜視図であって、(B)分解斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る管継手10が下側偏芯された下側偏芯管継手10Dの(A)斜視図であって、(B)分解斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係る管継手10を構成する管継手本体100の二面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る管継手10を構成する横枝管接続部材140の二面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る管継手10において(A)上側偏芯させる手順を説明するための図であって、(B)下側偏芯させる手順を説明するための図である。
図10図9(A)の拡大斜視図および図9(A)におけるバヨネット構造の係合溝と係合突起(係合爪)とを示す図である。
図11図9(B)の拡大斜視図および図9(B)におけるバヨネット構造の係合溝と係合突起(係合爪)とを示す図である。
図12】本発明の実施の形態に係る管継手10において上下偏芯可能・左右偏芯不可能を説明するための図である。
図13】本発明の実施の形態(基本形)に係る管継手におけるバヨネット構造の係合溝と係合突起(係合爪)との関係を示す模式的な図である。
図14】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る管継手におけるバヨネット構造の係合溝と係合突起(係合爪)との関係を示す模式的な図である。
図15】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る管継手におけるバヨネット構造の係合溝と係合突起(係合爪)との関係を示す模式的な図である。
図16】本発明の実施の形態の第3の変形例に係る管継手におけるバヨネット構造の係合溝と係合突起(係合爪)との関係を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る管継手10、その管継手10を用いた配管構造およびその配管構造の施工方法について、図1図16を参照して詳しく説明する。以下の説明においては、先に管継手10について説明して、その後に施工方法について説明して、最後に本発明の実施の形態の変形例に係る管継手について説明する。なお、本実施の形態に係る施工方法により施工された(たとえば図1図4に示す)配管構造が本実施の形態に係る配管構造である。また、本実施の形態に係る管継手10が上側偏芯された状態を上側偏芯管継手10Uとして、下側偏芯された状態を下側偏芯管継手10Dとして、それぞれ記載する場合がある。また、垂直方向と上下方向、水平方向と左右方向とは、それぞれ同じ意味であるために、それぞれを区別しないで記載する場合がある。また、バヨネット構造自体の構造および作用に関する公知技術(たとえば特許文献1に記載されたバヨネット構造自体)については説明を記載していない場合があるとともに、バヨネット構造における係合溝を単に溝と記載する場合があったり、係合溝に係合する係合突起を係合爪または単に爪と記載する場合があったりする。
【0018】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る管継手10により解決される問題点を説明する。
図1は、壁排水タイプの洋式便器を接続する本実施の形態に係る管継手10を用いた排水配管構造の側面図である。図1における上側の2図が(図2にも示すように)床スラブに埋設された管継手と本実施の形態に係る管継手10との間に横枝管接続部を有する(管継手10とは別の)管継手1022をさらに備える排水配管構造1002Uおよび排水配管構造1002Dであって、図1における下側の2図が(図3にも示すように)排水配管構造1002Uおよび排水配管構造1002Dにおいて横枝管接続部を有する管継手1022を備えない排水配管構造1004Uおよび排水配管構造1004Dである。また、図1に示す排水配管構造1002Uおよび排水配管構造1002Dの配管を示す五面図を図2に、図1に示す排水配管構造1004Uおよび排水配管構造1004Dの配管を示す五面図を図3に、それぞれ示す。
【0019】
ここで、上述したように、壁排水タイプの洋式便器の排水高さ(排水芯高さ)には、その高さ寸法が異なる仕様が存在する。図1における左側の2図が洋式便器の受口(排水芯)が上側にある場合(洋式便器の壁排水高さH(1)=155mm仕様)であって、図1における右側の2図が洋式便器の受口(排水芯)が下側にある場合(洋式便器の壁排水高さH(2)=120mm仕様)である。
【0020】
本実施の形態に係る管継手10は、これら4つの場合において1種類の管継手10を用いて、(排水方向に向いて下方にわずかに傾斜する)横枝管1030を介して洋式便器と管継手10とを接続する。ここで、この管継手10は、限定されるものではないが、155mmと120mmとの差である(可変長として)35mm分だけ垂直方向(上下方向)に横枝管接続部の管軸の位置を変更することができる。なお、可変長35mmは(30mm等であっても構わず)一例に過ぎない。
【0021】
図1の左側の排水配管構造1002Uおよび排水配管構造1004Uは、洋式便器の受口(排水芯)が上側にある場合(H(1)=155mm)に対応して、管継手10の横枝管接続部が上側へ偏芯させた状態の上側偏芯管継手10Uを用いた構造を示しており、図1の右側の排水配管構造1002Dおよび排水配管構造1004Dは、洋式便器の受口(排水芯)が下側にある場合(H(2)=120mm)に対応して、管継手10の横枝管接続部が下側へ偏芯させた状態の下側偏芯管継手10Dを用いた構造を示している。
【0022】
なお、本発明に係る管継手は、このような垂直方向(上下方向)に管軸の位置を可変な
管継手に限定されるものではなく、水平方向(左右方向)に管軸の位置を可変な管継手であっても構わない。
図2に示すように、本実施の形態に係る管継手10は、床スラブに埋設される管継手1024と本実施の形態に係る管継手10との間に横枝管接続部を有する(管継手10とは別の)管継手1022を備える排水配管構造1002Uおよび排水配管構造1002Dに採用されても構わないし、図3に示すように、本実施の形態に係る管継手10は、排水配管構造1002Uおよび排水配管構造1002Dにおいて横枝管接続部を有する管継手1022を備えない排水配管構造1004Uおよび排水配管構造1004Dに採用されても構わない。
【0023】
なお、これらの図2図3においては、本実施の形態に係る管継手10に加えて、上側配管1010、下側配管1020、横枝管接続部を有する(管継手10とは別の)管継手1022、床スラブに埋設された管継手1024、管継手1024の下方に接続される配管1026を記載している。
さらに、図4に示すように、本発明に係る管継手は、上下偏芯可能な横枝管接続部とはさらに別の横枝管接続部を一体的に備えた管継手11であっても構わない。図4(A)は管継手11の横枝管接続部が上側へ偏芯させた状態の上側偏芯管継手11Uが採用された排水配管構造1005Uを、図4(B)は管継手11の横枝管接続部が下側へ偏芯させた状態の下側偏芯管継手11Dが採用された排水配管構造1005Dを、それぞれ示す。
【0024】
なお、この管継手11は、3箇所の横枝管接続部を備え上下偏芯可能な横枝管接続部は最上段の1箇所のみであるが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る管継手は、上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手であれば良く、接続される横枝管が図4に示すように複数本(図4では3本)であっても構わず、さらにその複数の横枝管を接続する横枝管接続部の少なくとも1つが上下偏芯可能であれば構わないために、図4に示す管継手11の3箇所の横枝管接続部の全てが上下偏芯可能であっても構わない。
以下においては、図3に示す排水配管構造に採用された管継手10について説明する。また、以下の説明においては、垂直方向に偏芯可能、かつ、水平方向に偏芯不可能な管継手10について主として説明するが、上述したように、および、後述するように、本発明は垂直方向に偏芯可能、かつ、水平方向に偏芯可能な管継手を含むものである。
【0025】
[管継手]
図5図8を参照して、本実施の形態に係る管継手10について説明する。
まず、本実施の形態に係る管継手10が上側偏芯された上側偏芯管継手10Uを示す図5および下側偏芯された下側偏芯管継手10Dを示す図6、ならびに、管継手10を構成する管継手本体100を示す図7および管継手10を構成する横枝管接続部材140を示す図8を参照して、管継手10の大略的な構造について説明する。
【0026】
この管継手10は、上述したように、上下2つの配管(上側配管1010および下側配管1020)と横枝管(図1に示すが図5および図6に示さない横枝管1030)との少なくとも3つの配管を接続する管継手である。この管継手10は、上側配管1010を接続する上配管接続部110と、下側配管1020を接続する下配管接続部120と、上配管接続部110と下配管接続部120との上下方向の間に設けられて横枝管1030を接続する横枝管接続部130と、横枝管接続部130と横枝管1030とを接続する横枝管接続部材140とを含む。上配管接続部110と下配管接続部120と横枝管接続部130とが(横枝管接続部材140とは別部材であって)一体的に形成された管継手本体100を構成する。また、止水パッキン150が横枝管接続部130と横枝管接続部材140との間に挟み込まれる。
【0027】
なお、上配管接続部110および下配管接続部120は、それぞれ上側配管1010および下側配管1020と接続されることができればよく、これらの上配管接続部110および下配管接続部120の構造は、本発明とは直接的には関係しないために、図において(たとえば斜視図と図7に示す平面図)上配管接続部110および下配管接続部120の構造(形状)が一致していない場合がある。
【0028】
この横枝管接続部材140は、横枝管接続部130にバヨネット構造によって着脱自在に接続される。この横枝管接続部材140は、図8に示すように、両端に口径が異なる開口部を備えた円管形状を備え、口径が大きい一方の大開口部144が横枝管接続部130に接続されるとともに、一方の大開口部144の管軸と他方の小開口部146の管軸とが図8(C)に示すように一致しない。そして、横枝管接続部材140を横枝管接続部130にバヨネット構造によって接続したときに、図5および図6に示すように、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸が、横枝管接続部130の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯または横枝管接続部の管軸を通る水平線上で左右に偏芯する。
【0029】
このバヨネット構造として、図7に示すように、横枝管接続部130の内周面に略L字形状の複数(ここでは4箇所)の係合溝132が設けられ、図8に示すように横枝管接続部材140における一方の大開口部144の外周面に係合溝132に係合する複数(ここでは4個)の係合突起142が設けられている。図5および図6に示すように、横枝管接続部材140を、横枝管接続部130へ差し込んで(係合突起142を係合溝132の始端132Sに差し込んで)、横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸周りに回転させることにより(後述する図10および図11に示す矢示R方向に回転させることにより)、係合突起142が図7に示す係合溝132の始端132Sから終端132Eに到達して位置決めされるとともに横枝管接続部材140が横枝管接続部130に接続されて、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸が、横枝管接続部130の管軸を通る垂直線上で上下に偏芯または横枝管接続部130の管軸を通る水平線上で左右に偏芯する。
【0030】
ここで、図示したバヨネット構造においては、個数も位置も一例ではあるが、上下左右方向の4箇所に係合溝132を設けるとともに、係合溝132に係合する係合突起142を上下左右方向の4箇所に設けて、上下方向の係合溝132Aおよび係合突起142Aに対して左右方向の係合溝132Bおよび係合突起142Bを大きくすることにより上下偏芯可能で左右偏芯不可能としているが、4箇所とも同じ大きさにすることにより、上下偏芯可能で左右偏芯可能とすることができる。
本実施の形態に係る管継手10が、このように上下偏芯可能で左右偏芯不可能とする場合についてさらに詳しく説明する。
【0031】
係合溝132は、横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が少なくとも2組設けられ(ここでは2組)、点対称な位置に設けられた係合溝132は同じ大きさである。詳しくは、図7に示すように、横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心として、左方向の係合溝132Bと右方向の係合溝132Bとが同じ大きさで1組として設けられ、同じく点対称に上方向の係合溝132Aと下方向の係合溝132Aとが同じ大きさで1組として設けられ、合計2組の係合溝132が設けられている。すなわち、係合溝132は、横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心として設けられた少なくとも2組(ここでは2組)のうちの1組は水平位置(左右方向)に設けられ、2組のうちの他の1組は垂直位置(上下方向)に設けられている。
【0032】
係合突起142は、横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が少なくとも2組設けられ(ここでは2組)、点対称な位置に設けられた係合突起142は同じ大きさである。詳しくは、図8に示すように、横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸を点対称の対称中心として、上方向の係合突起142Aと下方向の係合突起142Aとが同じ大きさで1組として設けられ、同じく点対称に左方向の係合突起142Bと右方向の係合突起142Bとが同じ大きさで1組として設けられている。すなわち、係合突起142は、横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸を点対称の対称中心として設けられた少なくとも2組(ここでは2組)のうちの1組は水平位置(左右方向)に設けられ、2組のうちの他の1組は垂直位置(上下方向)に設けられている。
【0033】
そして、係合溝132の大きさおよび係合突起142の大きさが異なる組がある。ここでは、左右方向の1組の係合溝132Bの大きさおよび係合突起142Bの大きさが、上下方向の1組の係合溝132Aの大きさおよび係合突起142Aの大きさよりも大きく、
上下方向の1組の係合溝132Aに左右方向の1組の係合突起142Bを係合させること(係合溝132の始端132Sに係合突起142を挿入すること)ができない。なお、ここでは、係合溝および係合突起が2個1組が点対称で配置されてそのような点対称で配置される組が2組存在して組が異なると大きさが異なるが、係合溝の大きさおよび係合突起の大きさが異なる組があるということは、このような点対称で配置される組が3組存在して、うち1組の大きさが他の2組(この2組は同じ大きさ)と異なる大きさであっても構わない。
【0034】
ここで、係合溝の大きさおよび係合突起の大きさが異なるという意味は、係合溝132の入口部132Sの円周方向長さおよび係合突起142の円周方向長さを意味するが、本発明においては、これらの部分を大きさに限定されるものではない。たとえば、係合溝132の入口部132S以外の管軸方向の溝幅および係合突起142の管軸方向の厚みであっても係合突起142を係合溝132へ嵌め込むことのできないために、このような管軸方向の大きさ(溝幅、突起厚み)であっても構わず、さらに他の部分の大きさを異ならせても構わない。
このため、横枝管接続部材140を横枝管接続部130にバヨネット構造によって接続したときに、横枝管接続部材140における他方の小開口部の管軸が、横枝管接続部130の管軸を通る垂直線上で上側に偏芯(図5に示す上側偏芯管継手10U)または下側に偏芯(図6に示す下側偏芯管継手10D)のいずれかを選択することができる。
【0035】
なお、ここでは、係合溝132の大きさは水平位置(左右方向)が垂直位置(上下方向)よりも大きく、かつ、係合突起142の大きさは水平位置(左右方向)が垂直位置(上下方向)よりも大きいとして説明したが、逆に、係合溝132の大きさは水平位置(左右方向)が垂直位置(上下方向)よりも小さく、かつ、係合突起142の大きさは水平位置(左右方向)が垂直位置(上下方向)よりも小さくても構わない。この場合、左右方向の1組の係合溝132に上下方向の1組の係合突起142を係合させること(係合溝132の始端132Sに係合突起142を挿入すること)ができないために、上下偏芯可能で左右偏芯不可能とすることができる。
以上のような構造を備えた本実施の形態に係る管継手10を用いた配管構造の施工方法について、図9図12を参照して、以下に詳しく説明する。
【0036】
[施工方法]
・判断ステップ
まず、横枝管接続部材140を横枝管接続部130にバヨネット構造によって接続する前に、横枝管接続部130の管軸に対して横枝管1030の管軸が上面視または側面視で一致していない場合に一致させる必要があるか否かを判断する。
ここで、上述したように、本発明に係る管継手は、上下偏芯可能で左右偏芯可能を除外するものではないが、図1に示すように上下偏芯させることを主たる目的としているために、この施工方法における次のステップ以降の説明においては左右偏芯は考慮しないものとする。なお、この判断ステップにおいて、横枝管接続部130の管軸に対して横枝管1030の管軸が上面視で一致していない場合に一致させる必要がある場合には、たとえば上述した上下左右4箇所の係合溝132および係合突起142が全て同じ大きさである上下偏芯可能で左右偏芯可能な管継手を用いて、左右のいずれの方向に偏芯させるのかを決定して、横枝管接続部材140を横枝管接続部130に接続したときに、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸が、横枝管接続部130の管軸を通る水平線上で左右のいずれかに偏芯するように、横枝管接続部材140を横枝管接続部130にバヨネット構造により接続すれば良い。
【0037】
・決定ステップ
次に、一致させる必要があると判断された場合に、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸を上下のいずれの方向に偏芯させるのかを決定する。たとえば、図1の左側の2図のように、洋式便器の受口(排水芯)が上側にある場合(洋式便器の壁排水高さH(1)=155mm仕様)には、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸を上方向に偏芯させるように、右側の2図のように洋式便器の受口(排水
芯)が下側にある場合(洋式便器の壁排水高さH(2)=120mm仕様)には、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸を下方向に偏芯させるように、それぞれ決定される。
【0038】
・接続ステップ
次に、横枝管接続部材140を横枝管接続部130に接続したときに、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸が、横枝管接続部130の管軸を通る垂直線上で上方向に偏芯または下方向に偏芯するように、止水パッキン150を封入して、横枝管接続部材140を横枝管接続部130にバヨネット構造により接続する。
このとき、垂直線上で上方向に偏芯させる場合には、図9(A)および図10に示すように施工する。
【0039】
(9A1)横枝管接続部材140における他方の小開口部146が略上側になるようにして、(9A2)横枝管接続部材140を、横枝管接続部130へ差し込んで(係合突起142を係合溝132の始端132Sに差し込んで)、(9A3)横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸周りに横枝管接続部材140を矢示R方向へ回転させることにより、係合突起142を図7に示す係合溝132の始端132Sから終端132Eに到達させる。このとき、位置決めされるとともに横枝管接続部材140が横枝管接続部130に接続されて、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸が、横枝管接続部130の管軸を通る垂直線上の上側に偏芯する。
また、このとき、垂直線上で下方向に偏芯させる場合には、図9(B)および図11に示すように施工する。
【0040】
(9B1)横枝管接続部材140における他方の小開口部146が略下側になるようにして、(9B2)横枝管接続部材140を、横枝管接続部130へ差し込んで(係合突起142を係合溝132の始端132Sに差し込んで)、(9B3)横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸周りに横枝管接続部材140を矢示R方向へ回転させることにより、係合突起142を図7に示す係合溝132の始端132Sから終端132Eに到達させる。このとき、位置決めされるとともに横枝管接続部材140が横枝管接続部130に接続されて、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸が、横枝管接続部130の管軸を通る垂直線上の下側に偏芯する。
【0041】
ここで、上述したように、横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸周りに横枝管接続部材140を矢示R方向(時計回り)へ回転させてバヨネット接合するとして説明したが、係合溝132および係合突起を垂直軸または水平軸に線対称な位置に変更すると、矢示R反対方向(反時計回り)へ回転させてもバヨネット接合することができる。すなわち、係合溝132および係合突起の位置を変更することにより、どちらの回転方向(矢示R方向(時計回り)、矢示R反対方向(反時計回り))でも、バヨネット接合可能である。
【0042】
このような施工方法において、本実施の形態に係る管継手10においては、図12(A)に示すように、係合溝132の大きさは水平位置(左右方向)の係合溝132Bが垂直位置(上下方向)の係合溝132Aよりも大きく、かつ、図12(B)に示すように、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸が上側に偏芯した状態において(対称性により下側に偏芯した状態であっても同じ)、係合突起142の大きさは水平位置(左右方向)の係合突起142Bが垂直位置(上下方向)の係合突起142Aよりも大きく設定されている。このため、図12(B)に示すように上下偏芯可能であるが、図12(C)に示すように、大きい係合突起142Bを小さい係合溝132Aの始端132Sに差し込むことができないために、左右偏芯不可能である。
【0043】
このように施工する場合において、本実施の形態に係る管継手10は、以下の構造を備えるために、施工作業が容易である。
管継手10を構成する管継手本体100の横枝管接続部130に設けられた係合溝132は、図10(C)および図11(C)の点線で示すように、少なくとも1組(ここでは1組)の係合溝132の終端132Eが横枝管接続部130の管軸を通る垂直線上に位置する。
【0044】
管継手10を構成する横枝管接続部材140に設けられた係合突起142は、図8(D)に示すように、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸が上側に偏芯した状態において(対称性により下側に偏芯した状態であっても同じ)、少なくとも1組(ここでは1組)の係合突起142が横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸を通る垂直線上に位置する。
このような構造であるために、バヨネット構造で接続したときに(係合突起142を図7に示す係合溝132の始端132Sから終端132Eに到達させたときに)横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸が最も上側または最も下側で位置決めされる。
【0045】
さらに、横枝管接続部130の内周面に複数(ここでは4箇所)設けられる略L字形状の係合溝のうちの上方の係合溝132Aの位置に対応させたL字矢示138Mが横枝管接続部130の外周面138に設けられている。このL字矢示138Mにおける、矢示先端ではない位置である始端位置138MSが係合溝132の始端132Sの位置に合致するとともに、矢示先端の位置である終端位置138MEが係合溝132の終端132Eの位置に合致する。さらに、横枝管接続部材140における一方の大開口部144の最大外周面148に、複数(ここでは4個)設けられる係合突起142の中のうちの横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸までの長さが最短の係合突起142Aの位置および最長の嵌合突起142Aの位置(図8(D)に示す最短および最長)に対応させた三角目印148Mが横枝管接続部材140の最大外周面148(の上下2箇所)に設けられている。
【0046】
このため、L字矢示138Mの始端位置138MSに三角目印148Mを合致させて、横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸周りに横枝管接続部材140をL字矢示138Mの終端位置138MEまで矢示R方向へ回転させて(三角目印148MがL字矢示138Mの終端位置138MEに合致するまで回転させて)、係合突起142を図7に示す係合溝132の始端132Sから終端132Eに到達させる。このとき、位置決めされるとともに横枝管接続部材140が横枝管接続部130に接続されて、横枝管接続部材140における他方の小開口部146の管軸が、横枝管接続部130の管軸を通る垂直線上で上側または下側に偏芯させることができる。このように、本実施の形態に係る管継手10は、施工性が好ましい。
【0047】
以上のようにして、本実施の形態に係る管継手、その管継手を用いた配管構造およびその配管構造の施工方法によると、上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手であって、管継手において横枝管が接続される部分の管軸と横枝管の管軸とが一致しない場合であっても容易に一致させることができる。
最後に、図13図16を参照して、本発明の実施の形態に関する第1の変形例、第2の変形例および第3の変形例について説明する。なお、3つの変形例の理解を容易にするために、図13は、上述した実施の形態に係る(上下偏芯可能で左右偏芯不可能な)管継手10における係合溝と係合爪(係合突起)との(基本形の)関係を示す図である。ここで、図13(A)は、係合溝(単に溝と記載する場合がある)の大きさが水平位置(左右方向:添字符号2、4)が垂直位置(上下方向:添字符号1、3)よりも大きく(溝1=溝3<溝2=溝4)、かつ、係合突起(単に爪と記載する場合がある)の大きさは水平位置(左右方向)が垂直位置(上下方向)よりも大きく(爪1=爪3<爪2=爪4)、図13(B)は図13(A)の逆で、係合溝の大きさが水平位置(左右方向)が垂直位置(上下方向)よりも小さく(溝1=溝3>溝2=溝4)、かつ、係合爪の大きさは水平位置(左右方向)が垂直位置(上下方向)よりも小さい(爪1=爪3>爪2=爪4)。なお、以下に示す3つの変形例は、この図13に示す基本形と同じく、上下偏芯可能、左右偏芯不可能である管継手である。
【0048】
[第1の変形例]
図14を参照して、第1の変形例に係る管継手の溝および爪の位置および個数について説明する。この第1の変形例においては、横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心とした2個1組の溝を2組および同じく横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心と
した2個1組の爪を2組を備え、溝および爪の大きさが異なる組がある(ここでは2組しかないので組が異なると溝および爪の大きさが異なる)点では、上述した実施の形態に係る管継手10における溝および爪と同じであるが、溝および爪の位置が上下左右に配置されていない点が異なる。この第1の変形例においても、図13(A)および図13(B)と同じく、図14(A)は、溝1=溝3<溝2=溝4、かつ、爪1=爪3<爪2=爪4であって、図14(B)は、図14(A)の逆で、溝1=溝3>溝2=溝4、かつ、爪1=爪3>爪2=爪4である。しかしながら、上述した実施の形態に係る管継手10のように上下左右の等間隔に溝および爪が設けられているわけではないために、溝および爪が全て同じ大きさでも、左右偏芯不可で上側偏芯および下側偏芯を選択的に施工できる特徴を実現することができる。
【0049】
[第2の変形例]
図15を参照して、第2の変形例に係る管継手の溝および爪の位置および個数について説明する。この第2の変形例においては、図13(A)に示す横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心とした2個1組の溝を2組および同じく横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心とした2個1組の爪を2組であって組が異なると溝および爪の大きさが異なる溝および爪(溝1=溝3<溝2=溝4、かつ、爪1=爪3<爪2=爪4)に加えて、さらに4個の溝(溝5、溝6、溝7、溝8)および4個の爪(爪5、爪6、爪7、爪8)を備える。
【0050】
ここで、留意すべきは、基本形である図13(A)に示す、溝1=溝3<溝2=溝4さえ満足すれば、溝5~溝8の大きさは爪5~爪8に合致していれば限定されるものではなく、たとえ、溝5~溝8および爪5~爪8を全て同じ大きさとしても、溝5~溝8および爪5~爪8の位置を横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心とした位置(管軸中心の点対称位置)でないと、(左右偏芯できないことは基本形で不可であることに加えて)上下偏芯することができない。すなわち、溝5~溝8および爪5~爪8については、これらの4つの大きさが同じであるとしても、位置は管軸中心の点対称位置に存在しなければならない。
【0051】
さらに、留意すべきは、基本形である図13(A)に示す、溝1=溝3<溝2=溝4を満足した上で、上述のように溝5~溝8および爪5~爪8を全て同じ大きさとしないのであれば、管軸中心で点対称位置の溝(溝5と溝7、溝6と溝8)および爪(爪5と爪7、爪6と爪8)は同じ大きさにしなければ、(左右偏芯できないことは基本形で不可であることに加えて)上下偏芯することができない。すなわち、溝5~溝8および爪5~爪8については、これらの4つの大きさが同じでないときには、管軸中心の点対称位置に存在する溝および爪は同じ大きさでなければならない。
【0052】
[第3の変形例]
図16を参照して、第2の変形例に係る管継手の溝および爪の位置および個数について説明する。
図16(A)に示すように、第3の変形例に係る管継手においては、係合溝は、横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が垂直位置に設けられ(溝1および溝2)、2個の係合溝は同じ大きさであって(溝1=溝2)、係合突起は、横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が垂直位置に設けられ(爪1および爪2)、2個の係合突起は同じ大きさである(爪1=爪2)。
【0053】
また、図16(B)に示すように、第3の変形例に係る管継手においては、係合溝は、横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が水平位置に設けられ(溝1および溝2)、2個の係合溝は同じ大きさであって(溝1=溝2)、係合突起は、横枝管接続部材140における一方の大開口部144の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が水平位置に設けられ(爪1および爪2)、2個の係合突起は同じ大きさである(爪1=爪2)。
図16(A)および図16(B)に示す第3の変形例に係る管継手であっても、左右偏芯不可で上側偏芯および下側偏芯を選択的に施工できる特徴を実現することができる。
【0054】
このように、上述した第1の変形例および第2の変形例に係る管継手においては、係合溝(溝)および係合突起(爪)は、横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心とした2個1組が少なくとも2組設けられ、点対称な位置に設けられた係合溝(溝)および係合突起(爪)は同じ大きさである(全て同じ大きさであることを含む)という条件を満足して、または、係合溝132の大きさおよび係合突起142の大きさが異なる組があるという条件をさらに満足して、上述した第3の変形例に係る管継手においては、係合溝(溝)および係合突起(爪)は、横枝管接続部130の管軸を点対称の対称中心とした2個1組設けられ、係合溝(溝)および係合突起(爪)は同じ大きさであるという条件を満足して、これらの第1の変形例~第3の変形例に係る管継手によっても、上述した実施の形態と同じ作用効果(左右偏芯不可で上側偏芯および下側偏芯を選択的に施工)を奏する。
【0055】
なお、上述した実施の形態に係る管継手および第1の変形例~第2の変形例に係る管継手においては、2個の係合溝(溝)と2個の係合突起(爪)とから構成される組は偶数組であったが本発明はこのような偶数に限定されるものではなく、上述した第3の変形例に係る管継手のように1組であっても構わず、さらに、3組(うち2組は同じ大きさで1組はこれらの2組と大きさが異なる)組等の奇数組であっても構わない。
【0056】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、建築物において主として排水配管に用いられる上下2つの配管と横枝管との少なくとも3つの配管を接続する管継手に好ましく、管継手において横枝管が接続される部分(横枝管接続部)の管軸(軸芯)と横枝管の管軸(軸芯)とが一致しない場合であっても容易に一致させることのできる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0058】
10 管継手
100 管継手本体
110 上配管接続部
120 下配管接続部
130 横枝管接続部
140 横枝管接続部材
150 止水パッキン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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図15
図16