(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】遺伝子操作のための方法及び製品
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20250120BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20250120BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250120BHJP
C12N 15/48 20060101ALI20250120BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20250120BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20250120BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250120BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20250120BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20250120BHJP
C07K 14/005 20060101ALN20250120BHJP
C07K 14/15 20060101ALN20250120BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20250120BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N7/01 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/48
C12N15/55
C12N15/33
C12N5/10
C12M1/00 A
C07K19/00
C07K14/005
C07K14/15
C12N9/16 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021212300
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2018520155の分割
【原出願日】2016-10-20
【審査請求日】2021-12-27
(32)【優先日】2015-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】514077888
【氏名又は名称】エコール ノルマル シュペリウール ドゥ リヨン
(73)【特許権者】
【識別番号】523165352
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ クラウド ベルナール リヨン 1
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】オールマン,テオフィル
(72)【発明者】
【氏名】マンジョ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】リッチ,エミリアーノ
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/131833(WO,A1)
【文献】特許第7059179(JP,B2)
【文献】特表2015-505299(JP,A)
【文献】特表2015-523856(JP,A)
【文献】国際公開第2014/200659(WO,A1)
【文献】CAI, Y., et al.,"Targeted genome editing by lentiviral protein transduction of zinc-finger and TAL-effector nuclease.",eLife,2014年,Vol. 3,e01911(pp.1-19),DOI:10.7554/elife.01911
【文献】KIM, S., et al.,"Highly efficient RNA-guided genome editing in human cells via delivery of purified Cas9 ribonucleoproteins.",Genome Res.,2014年,vol.24, no.6,p.1012-1019, Supplemental Information
【文献】HORII, T., et al.,"Efficient generation of knockin mice by CRISPR/Cas system.",Exp. Anim.,2015年,vol.64, supplement,p.S31(O-7)
【文献】KABADI, A.M., et al.,"Multiplex CRISPR/Cas9-based genome engineering from a single lentiviral vector.",Nucleic Acids Research,2014年,Vol. 42, No. 19,e147,doi: 10.1093/nar/gku749,Published online 13 August 2014
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
C12N 1/00- 7/08
C07K 1/00-19/00
C12N 9/00- 9/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の
遊離Casタンパク質を含む、レトロウイルス由来粒子であって、前記1つ以上の
遊離Casタンパク質は、前記粒子の内部に含まれており、前記1つ以上の遊離Casタンパク質は、1つ以上のCasタンパク質とレトロウイルスgagタンパク質又
はそのタンパク質断片との間に位置するタンパク質分解切断部位を含む切断可能な融合タンパク質の切断の結果であり、前記1つ以上の遊離Casタンパク質は、1つ以上のCRISPR-C
asシステムガイドRNAと複合している、前記レトロウイルス由来粒子。
【請求項2】
前記遊離Casタンパク質が、Cas9又はその変異体である、請求項1に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項3】
レンチウイルス由来粒子である、請求項2に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項4】
前記Casタンパク質が、Cas9である、請求項1に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項5】
前記Casタンパク質が、Cpf1である、請求項1
に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項6】
CRISPR-Cas
システムガイドRNAが、以下:
(a)標的核酸の第1の標的配列とハイブリダイズする第1のCRISPR-CasシステムガイドRNA、及び、
(b)
前記標的核酸の第2の標的配列とハイブリダイズする第2のCRISPR-CasシステムガイドRNA
を含む、請求項1
に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項7】
レンチウイルス由来粒子である、請求項1に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項8】
モロニーマウス白血病ウイルス由来ベクター粒子、ウシ免疫不全ウイルス由来粒子、サル免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ネコ免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ヒト免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ウマ感染貧血ウイルス由来ベクター粒子、ヤギ関節炎脳炎ウイルス由来ベクター粒子、ヒヒ内因性ウイルス由来ベクター粒子からなる群から選択される、請求項1に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項9】
前記レトロウイルス由来粒子が、ヒヒ内因性ウイルス由来ベクター粒子である、請求項1に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項10】
前記レトロウイルス由来粒子が、モロニー
マウス白血病ウイルス由来ベクター粒子である、請求項1
に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項11】
前記レトロウイルス由来粒子が、ヒト免疫不全ウイルス由来ベクター粒子である、請求項1
に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項12】
前記レトロウイルスgagタンパク質が、モロニーマウス白血病ウイルスに由来する、請求項1に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項13】
前記レトロウイルスgagタンパク質が、ヒト免疫不全ウイルスに由来する
、請求項1
に記載のレトロウイルス由
来粒子。
【請求項14】
請求項1
に記載のレトロウイルス由来粒子であって、前記レトロウイルス由来粒子が、任意のコード
する核酸を含まないか又は実質的に含まない、レトロウイルス由来粒子。
【請求項15】
前記切断可能な融合タンパク質が、核酸によってコードされる、請求項1
に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項16】
前記核酸が、mRNAである、請求項15
に記載のレトロウイルス由来粒子。
【請求項17】
真核細胞において標的核酸を
改変させるための組成物であって、前記組成物は、請求項1~16のいずれか
1項に定義される少なくとも1つのレトロウイルス由
来粒子を含む、前記組成物。
【請求項18】
1つ又は複数のトランスダクションヘルパー化合物をさらに含む、請求項17に記載の組成物
。
【請求項19】
a)少なくとも1つの真核細胞を、請求項1~16のいずれか1項に定義される1つ又は複数のレトロウイルス由来粒子と接触させる
工程であって、前記接触させる
工程は、
前記レトロウイルス由来粒子が
前記少なくとも1つの真核細胞に感染することを可能にする条件下で実行され
る、
工程、
および
b)
改変された標的核酸を有する真核細胞を収集す
る工程
を含む、少なくとも1つの真核細胞において、少なくとも1つの標的配列を含む標的核酸を改変させるためのin vitro又はex vivo方法。
【請求項20】
a)少なくとも1つの真核細胞を、請求項1~16のいずれか1項に定義される1つ又は複数のレトロウイルス由来粒子と接触させる
工程であって、前記接触させる
工程は、
前記レトロウイルス由来粒子が
前記少なくとも1つの真核細胞に感染することを可能にする条件下で実行され
る、
工程、
および
b)
改変された標的核酸を有する真核細胞を収集する
工程
を含む、少なくとも1つの真核細胞において、少なくとも1つの標的配列を含む標的核酸を
改変させるためのin vitro又はex vivo方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)及びその成分に関するウイルス由来ベクター系を使用した方法による遺伝子ターゲティングの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ターゲティング可能なヌクレアーゼを使用したゲノム編集は、細菌から植物及び動物(ヒトを含む)に及ぶ生物の正確なゲノム改変のための新たな技術である。その魅力は、他の種類の方法ではターゲットゲノム改変が不可能であったほぼ全ての生物に対してそれを使用し得ることである。
【0003】
ヒト細胞内において外因性タンパク質を発現させるためのプロトコールの改善は、研究目的及び医学的目的の大きな関心対象である。ウイルスベクターのトランスフェクション方法及び性能の不断の進化にもかかわらず、特に、その環境の改変に対して非常に感受性な一次細胞であって、トランスフェクション剤/ベクターに応答して変化し得る一次細胞では、これらのアプローチの効率は劇的に変動し得る。また、組込型/非組込型コードDNAの移入を介した遺伝情報の送達は、望ましくないストレスシグナルの誘導又は細胞ゲノム内への外因性遺伝子の予想外の挿入のような有害効果の原因となり得、特に幹細胞の治療用途の場合にはこれは深刻である。
【0004】
ターゲットゲノム改変に関する最近のアプローチ(ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN))により、研究者は、二本鎖切断を導入して修復経路を活性化することによって、永続的な突然変異を生成することが可能になった。ゲノムにおける所望の位置においてDNA二本鎖切断を発生させる設計ヌクレアーゼ(例えば、ZFN及びTALEN)の能力により、ローカス特異的ゲノム操作の治療応用は楽観視されていた。しかしながら、これらのアプローチは、技術者にとって費用及び時間のかかるものであり、特に大規模なハイスループット研究ではその広範な使用が制限される。
【0005】
より最近では、完全に別個の特異的な系(すなわち、Streptococcus pyogenes由来の細菌CRISPR関連タンパク質-9ヌクレアーゼ(Cas9))に基づく新たなツールが大きな関心を集めている。
【0006】
部位特異的なDNA認識及び切断を達成するために、Cas9は、crRNA及び別個のトランス活性化crRNA(tracrRNA又はtrRNA)(これは、crRNAに部分的に相補的である)の両方と複合体形成しなければならない(11)tracrRNAは、複数のpre-crRNAをコードする一次転写産物からのcrRNA成熟に必要である。
【0007】
ターゲットDNAの切断中、HNH及びRuvC様ヌクレアーゼドメインは両DNA鎖をカットし、関連crRNA転写産物内の20ヌクレオチドのガイド配列(これは、ターゲットDNAと塩基対形成する)によって規定される部位において二本鎖切断(DSB)を発生させる。HNHドメインは、ガイドRNAに相補的なターゲットDNA鎖を切断するが、RuvCドメインは非相補鎖を切断する。Cas9の二本鎖エンドヌクレアーゼ活性はまた、プロトスペーサー関連モチーフ(PAM)として公知の短い保存配列(2~5nt)がcrRNA相補配列の3’の直後にあることを必要とする。
【0008】
わずか3つの必須成分(Cas9とそれに加えてcrRNA及びtrRNA)を有するII型CRISPRヌクレアーゼの簡潔性により、この系は、ゲノム編集の適合に適している。この可能性は、2012年にDoudna and Charpentier laboratories (Jinek et al., 2012, Science, Vol.337: 816-821)によって実現された。以前に記載されているII型CRISPR系に基づいて、trRNA及びcrRNAを単一の合成単一ガイドRNA(sgRNA)に合わせることによって、簡潔な二成分系が開発された。sgRNAプログラム化Cas9は、ターゲット遺伝子変化をガイドする際に、別個のtrRNA及びcrRNAでプログラム化されたCas9として有効であることが示された。
【0009】
主に、ゲノム編集プロトコールでは、Cas9ヌクレアーゼの3つの異なる変異体が採用されている。第1は野生型Cas9であり、二本鎖DNAを部位特異的に切断して、二本鎖切断(DSB)修復機構の活性化をもたらし得る。DSBは、細胞非相同末端結合(NHEJ)経路によって修復されて(Overballe-Petersen et al., 2013, Proc Natl Acad Sci USA, Vol. 110: 19860-19865)、ターゲットローカスを破壊する挿入及び/又は欠失(インデル)が生じ得る。あるいは、ターゲットローカスとの相同性を有するドナーテンプレートが供給される場合、DSBは、正確な置換突然変異を可能にする相同性特異的修復(HDR)経路によって修復され得る(Overballe-Petersen et al., 2013, Proc Natl Acad Sci USA, Vol. 110: 19860-19865; Gong et al., 2005, Nat. Struct Mol Biol, Vol. 12: 304-312)。
【0010】
Cong及び同僚ら(Cong et al., 2013, Science, Vol. 339: 819-823)は、ニッカーゼ活性のみを有する突然変異型(Cas9D10Aとして公知である)を開発することによって、Cas9系をより高い精度にさらに発展させた。これは、Cas9D10Aが1本のDNA鎖のみを切断し、NHEJを活性化しないことを意味する。代わりに、相同な修復テンプレートが提供される場合、DNA修復は、高忠実度のHDR経路のみを介して行われ、インデル突然変異が減少する(Cong et al., 2013, Science, Vol. 339: 819-823; Jinek et al., 2012, Science, Vol.337: 816-821; Qi et al., 2013 Cell, Vol. 152: 1173-1183)。隣接DNAニックを生成するように設計されたペアCas9複合体によってローカスがターゲティングされる場合、Cas9D10Aは、ターゲット特異性の点でさらに魅力的である。
【0011】
第3の変異体は、ヌクレアーゼ欠損Cas9である(Qi et al., 2013 Cell, Vol. 152: 1173-1183)。HNHドメインにおける突然変異H840A及びRuvCドメインにおけるD10Aは切断活性を不活性化するが、DNA結合を防止しない。したがって、この変異体は、切断せずにゲノムの任意の領域を配列特異的にターゲティングするために使用され得る。代わりに、様々なエフェクタードメインと融合することによって、dCas9は、遺伝子サイレンシング又は活性化ツールのいずれかとして使用され得る。さらに、それは、ガイドRNA又はCas9タンパク質をフルオロフォア又は蛍光タンパク質にカップリングすることによって、視覚化ツールとして使用され得る。
【0012】
2012年におけるその初期実証(9)後、CRISPR/Cas9系は、科学界で広く採用されている。それは、ヒト(Mali et al., 2013, Science, Vol. 339: 823-826)、細菌(Fabre et al., 2014, PLoS Negl. Trop. Dis., Vol. 8:e2671.)、ゼブラフィッシュ(Hwang et al., 2013, PLoS One, Vol. 8:e68708.)、C. elegans (Hai et al., 2014 Cell Res. doi: 10.1038/cr.2014.11.)、細菌(Fabre et al., 2014, PLoS Negl. Trop. Dis., Vol. 8:e2671.)、植物(Mali et al., 2013, Science, Vol. 339: 823-826)、Xenopus tropicalis (Guo et al., 2014, Development, Vol. 141: 707-714.)、酵母(DiCarlo et al., 2013, Nucleic Acids Res., Vol. 41: 4336-4343.)、Drosophila (Gratz et al., 2014 Genetics, doi:10.1534/genetics.113.160713)、サル(Niu et al., 2014, Cell, Vol. 156: 836-843.)、ウサギ(Yang et al., 2014, J. Mol. Cell Biol., Vol. 6: 97-99.)、ブタ(Hai et al., 2014, Cell Res. doi: 10.1038/cr.2014.11.)、ラット(Ma et al., 2014, Cell Res., Vol. 24: 122-125.)及びマウス(Mashiko et al., 2014, Dev. Growth Differ. Vol. 56: 122-129.)を含む多くの細胞株及び生物において重要な遺伝子をターゲティングするために成功裏に使用されている。現在、いくつかのグループがこの方法を利用して、単一gRNAを介して単一点突然変異(欠失又は挿入)を特定のターゲット遺伝子に導入している。代わりにgRNA特異的Cas9ヌクレアーゼのペアを使用して、逆位又は転座などの大きい欠失又はゲノム再編成を誘導することも可能である。最近の刺激的な発展は、CRISPR/Cas9系のdCas9バージョンを使用して、特定のゲノムローカスの転写レギュレーション、エピジェネティック改変及び顕微鏡での視覚化のためにタンパク質ドメインをターゲティングすることである。
【0013】
ターゲット特異性を変化させるために、CRISPR/Cas9系は、crRNAの再設計のみを必要とする。これは、タンパク質-DNAインターフェースの再設計が必要な他のゲノム編集ツール(ジンクフィンガー及びTALENを含む)とは対照的である。さらに、CRISPR/Cas9は、ゲノムスクリーニングのための大きいgRNAライブラリーを生成することによって、遺伝子機能の迅速かつゲノムワイドな調査を可能にする。
【0014】
したがって、CRISPR/Cas9技術は目的の任意の遺伝子に容易に適合され得、遺伝子を変化させる比類なき可能性を提供し得る(ノックアウト、ノックイン、正確な突然変異の導入)。科学界におけるその普及は驚くほど速く、それを使用した最近の盛んな科学コミュニケーションをトリガーしている。
【0015】
一般に、CRISPRの送達は、DNAトランスフェクションによって、又はCas9をコードするウイルスベクターの使用を介して実施され、これらの方法は両方とも便利であるが特定の細胞型に限定され、かなり干渉的である。さらに、Cas9媒介性切断は迅速に起こり(Jinek et al., 2013, eLife, Vol. 2, e00471)、長期では毒性にさえなり得るので、Cas9発現を長期間維持することはおそらく毒性であり、贔屓目に見ても不要である。他のアプローチは、リコンビナントCas9及び合成RNAを利用して、プロテオトランスフェクションによって、又は物理的マイクロインジェクションによってRNPcを移入することに成功しているが、これらCRISPR系は依然として、脆弱な一次細胞のターゲティングに限定される。
【0016】
当技術分野では、CRISPR/Cas技術を使用することによる遺伝子編集のための改善されたツール及び方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、ゲノム核酸において変化を発生させるための製品及び方法に関する;これらの変化は、ノックイン及びノックアウトゲノム変化を含む核酸挿入及び核酸欠失の導入による突然変異を包含する。
【0018】
より正確には、本発明は、CRISPR-Cas複合体によって引き起こされる、特にCRISPR-Cas9複合体によって引き起こされる核酸変化事象を発生させることを目的とする製品及びそれの使用方法に関する。
【0019】
本発明は、1つ以上のCasタンパク質、特にCas9タンパク質を含むウイルス由来粒子に関する。
【0020】
いくつかの実施態様では、前記ウイルス由来粒子は、1つ以上のCRISPR-Cas系ガイドRNAをさらに含むか、又はそれとさらに複合している。
【0021】
いくつかの実施態様では、前記ウイルス由来粒子は、ターゲティング核酸をさらに含むか、又はそれとさらに複合している。
【0022】
いくつかの実施態様では、前記ウイルス由来粒子は、レトロウイルス由来粒子、例えばレンチウイルス由来ベクター粒子である。
【0023】
本発明はさらに、真核細胞におけるターゲット核酸を変化させるための組成物であって、1つ以上のCasタンパク質、特にCas9タンパク質を含むウイルス由来粒子を含む組成物に関する。
【0024】
いくつかの実施態様では、前記組成物は、1つ以上のCRISPR-Cas系ガイドRNAをさらに含むか、又はあるいはそれとさらに複合している。
【0025】
いくつかの実施態様では、前記組成物は、ターゲティング核酸をさらに含む。
【0026】
本発明はまた、上記で定義されるウイルス由来粒子又は組成物を調製するための必要な物質を含むキットに関する。
【0027】
それはまた、本明細書で定義されるウイルス由来粒子を産生する遺伝子改変細胞、特に安定細胞株の形態の細胞に関する。
【0028】
本発明はさらに、(i)ウイルス由来粒子を生成するために自己集合するウイルスタンパク質を含む融合タンパク質であって、前記ウイルスタンパク質が(ii)Casタンパク質に融合されている融合タンパク質に関する。いくつかの実施態様では、前記融合タンパク質は、前記ウイルスタンパク質と前記Casタンパク質との間に位置する切断可能部位、特にGagタンパク質とCas9タンパク質との間に位置する切断可能部位を含む。
【0029】
それはまた、前記融合タンパク質をコードする核酸及びベクターに関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】Cas9-VLPアセンブリの分子基盤及びレシピエント細胞へのCRISPR成分の移入。(A)HEK293T細胞からのCas9-VLPアセンブリの概略図。6つの工程が示されている。(1)ガイドRNAをコードする構築物と併せて、GAG-CAS9、GAG ProPol及びウイルスエンベロープタンパク質をHEK293T細胞にトランスフェクションする。GAG及びウイルスエンベロープは、ウイルス由来粒子(本明細書では「ウイルス様粒子」又は「VLP」とも称され得る)の集合が起こる膜に局在する傾向がある(2)。GAGの濃度が増加するにつれて、機械的力は粒子の形成を誘導し(3)、これが、CRISPR機構の全ての参加要素が組み込まれた後に産生細胞から出芽するであろう(4)。これらの粒子は濃縮可能であり、4℃で15日間超安定である。成熟プロセスにより、ウイルスプロテアーゼは、粒子内のGAGプラットフォームからほとんどのCas9タンパク質を放出した可能性がある(5)。ターゲット細胞に曝露されると、VLPは、エンベロープ/レセプター相互作用(したがって、これは、粒子及び検討ターゲット細胞をシュードタイピングするために使用されるエンベロープに依存する)を介して、細胞膜と結合及び融合することができるであろう。細胞膜との融合の後、VLPは、Cas9/gRNAリボヌクレオ複合体(おそらくは非プロテアーゼGAGに会合した遊離gRNA又はCas9)を含み得るそれらのカーゴをレシピエント細胞内に輸送する(まだ不明確)。それにもかかわらず、完全に活性なCRISPR RNPcは、(おそらくはターゲット細胞内におけるCas9及び遊離gRNAの再会合により)レシピエント細胞の核に送達され、gRNAによって指定されるまさにその位置においてゲノムDNAの切断を媒介する(6)。(B)GAG-Cas9コード構築物の分子設計。hCMVp(ヒトサイトメガロウイルス初期プロモーター)は、イントロン(rBG)及びポリアデニル化(rBGpA)シグナル(これらは両方とも、ウサギβグロビン遺伝子配列に由来する)を組み込んだmRNAの発現を駆動する。この構築物は、MLV-GAGポリタンパク質とStreptococcus pyogenes由来のコドン最適化Cas9配列との融合物からなる。両部分は、MLVプロテアーゼ切断部位(ps)及びCas9配列に融合されたflagタグ配列によって分離されている。
【
図1B】Cas9-VLPアセンブリの分子基盤及びレシピエント細胞へのCRISPR成分の移入。(A)HEK293T細胞からのCas9-VLPアセンブリの概略図。6つの工程が示されている。(1)ガイドRNAをコードする構築物と併せて、GAG-CAS9、GAG ProPol及びウイルスエンベロープタンパク質をHEK293T細胞にトランスフェクションする。GAG及びウイルスエンベロープは、ウイルス由来粒子(本明細書では「ウイルス様粒子」又は「VLP」とも称され得る)の集合が起こる膜に局在する傾向がある(2)。GAGの濃度が増加するにつれて、機械的力は粒子の形成を誘導し(3)、これが、CRISPR機構の全ての参加要素が組み込まれた後に産生細胞から出芽するであろう(4)。これらの粒子は濃縮可能であり、4℃で15日間超安定である。成熟プロセスにより、ウイルスプロテアーゼは、粒子内のGAGプラットフォームからほとんどのCas9タンパク質を放出した可能性がある(5)。ターゲット細胞に曝露されると、VLPは、エンベロープ/レセプター相互作用(したがって、これは、粒子及び検討ターゲット細胞をシュードタイピングするために使用されるエンベロープに依存する)を介して、細胞膜と結合及び融合することができるであろう。細胞膜との融合の後、VLPは、Cas9/gRNAリボヌクレオ複合体(おそらくは非プロテアーゼGAGに会合した遊離gRNA又はCas9)を含み得るそれらのカーゴをレシピエント細胞内に輸送する(まだ不明確)。それにもかかわらず、完全に活性なCRISPR RNPcは、(おそらくはターゲット細胞内におけるCas9及び遊離gRNAの再会合により)レシピエント細胞の核に送達され、gRNAによって指定されるまさにその位置においてゲノムDNAの切断を媒介する(6)。(B)GAG-Cas9コード構築物の分子設計。hCMVp(ヒトサイトメガロウイルス初期プロモーター)は、イントロン(rBG)及びポリアデニル化(rBGpA)シグナル(これらは両方とも、ウサギβグロビン遺伝子配列に由来する)を組み込んだmRNAの発現を駆動する。この構築物は、MLV-GAGポリタンパク質とStreptococcus pyogenes由来のコドン最適化Cas9配列との融合物からなる。両部分は、MLVプロテアーゼ切断部位(ps)及びCas9配列に融合されたflagタグ配列によって分離されている。
【
図2A】YFP-CRISPR-VLPによる遺伝子切断の分子検証 (A)YFP遺伝子上のgRNA認識部位の局在、使用したプライマー及びsurveyorアッセイの原理。低い感染多重度(MOI)で、YFPコードベクターをL929マウス細胞にレンチトトランスダクションした。次に、72時間後、示されている2つの異なる位置でYFP遺伝子をターゲティングするgRNAをロードしたVLPで細胞を処理した。YFPの切断を確認するために、Cas9-VLPで処理した細胞を溶解し、ゲノムDNAを抽出し、S1ヌクレアーゼベースのsurveyorアッセイによって分析した。試験は、2つの近縁ssDNA分子がハイブリダイゼーションする場合に形成されるヘテロ二重鎖を検出する:したがって、S1ヌクレアーゼ消化は、Cas9によってDNAが切断された証拠である。(B)gRNA2、1又はそれらの両方の組み合わせをロードしたVLPによって処理したL929細胞のsurveyorアッセイ。各rRNA条件についてヘテロ二重鎖の形成を検出し、そのサイズがYFP配列上のgRNAの位置に依存する短縮型YFPを明らかにする。
【
図2B】YFP-CRISPR-VLPによる遺伝子切断の分子検証 (A)YFP遺伝子上のgRNA認識部位の局在、使用したプライマー及びsurveyorアッセイの原理。低い感染多重度(MOI)で、YFPコードベクターをL929マウス細胞にレンチトトランスダクションした。次に、72時間後、示されている2つの異なる位置でYFP遺伝子をターゲティングするgRNAをロードしたVLPで細胞を処理した。YFPの切断を確認するために、Cas9-VLPで処理した細胞を溶解し、ゲノムDNAを抽出し、S1ヌクレアーゼベースのsurveyorアッセイによって分析した。試験は、2つの近縁ssDNA分子がハイブリダイゼーションする場合に形成されるヘテロ二重鎖を検出する:したがって、S1ヌクレアーゼ消化は、Cas9によってDNAが切断された証拠である。(B)gRNA2、1又はそれらの両方の組み合わせをロードしたVLPによって処理したL929細胞のsurveyorアッセイ。各rRNA条件についてヘテロ二重鎖の形成を検出し、そのサイズがYFP配列上のgRNAの位置に依存する短縮型YFPを明らかにする。
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図3A】Cas9-VLPによるL929マウス細胞におけるYFPのCRISPR媒介性破壊。(A)ガイドRNAを作って、開始コドンATGの下流のYFPをターゲティングした。切断後、細胞は、NHEJ(小さい欠失及びインデル(いくつかの細胞におけるYFPフレームを変化させ得る傷)を作り得る機構)によってこのギャップを修復することができた。したがって、天然修復機構によって、修復YFPの3つの異なるバージョンが生成され得るが、それらの1つのみがインフレームYFPを修復し、YFP表現型を維持する。したがって、切断は、ターゲット細胞においてYFPの検出可能だが不完全な減少を誘導するはずである。(B)Cas9と、YFPをターゲティングするガイドRNAとをロードしたVLPを生産し、YFP-L929細胞(マウス線維芽細胞株#)の培地に直接導入し、レンチベクタートランスダクションによってYFPをゲノムに安定に組み込んだ。無エンベロープVLPも生産し、ネガティブコントロールとして使用した。処理の72時間後、フローサイトメトリー(FACS)によって細胞を分析し、全体的な平均蛍光強度(MFI)をモニタリングして、YFP L929ターゲット細胞に対するYFP破壊Cas9-VLPの強い影響を明らかにした。エンベロープVLPによって処理した細胞では、未処理YFP細胞又は無エンベロープVLPによる処理と比較して、MFIの7倍の減少が測定された*。ここでは、本発明者らは、さらなる濃縮/精製プロセスを用いずに、特定のガイドRNAをロードしたCas9-VLPをCRISPR送達剤として使用し得ることを示している。
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図3B】Cas9-VLPによるL929マウス細胞におけるYFPのCRISPR媒介性破壊。(A)ガイドRNAを作って、開始コドンATGの下流のYFPをターゲティングした。切断後、細胞は、NHEJ(小さい欠失及びインデル(いくつかの細胞におけるYFPフレームを変化させ得る傷)を作り得る機構)によってこのギャップを修復することができた。したがって、天然修復機構によって、修復YFPの3つの異なるバージョンが生成され得るが、それらの1つのみがインフレームYFPを修復し、YFP表現型を維持する。したがって、切断は、ターゲット細胞においてYFPの検出可能だが不完全な減少を誘導するはずである。(B)Cas9と、YFPをターゲティングするガイドRNAとをロードしたVLPを生産し、YFP-L929細胞(マウス線維芽細胞株#)の培地に直接導入し、レンチベクタートランスダクションによってYFPをゲノムに安定に組み込んだ。無エンベロープVLPも生産し、ネガティブコントロールとして使用した。処理の72時間後、フローサイトメトリー(FACS)によって細胞を分析し、全体的な平均蛍光強度(MFI)をモニタリングして、YFP L929ターゲット細胞に対するYFP破壊Cas9-VLPの強い影響を明らかにした。エンベロープVLPによって処理した細胞では、未処理YFP細胞又は無エンベロープVLPによる処理と比較して、MFIの7倍の減少が測定された*。ここでは、本発明者らは、さらなる濃縮/精製プロセスを用いずに、特定のガイドRNAをロードしたCas9-VLPをCRISPR送達剤として使用し得ることを示している。
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図4A】従来のCas9送達方法及びCas9 VLPを使用したMyd88ローカスの欠失 (A)Myd88ゲノムDNA及びMyd88切断アッセイに使用した様々なツールの位置の概略図。紫色及び緑色で表されているように、ヒトMyd88遺伝子に対して2つの異なるCRISPR配列を設計した。灰色の枠は、2つのPCRプライマーがハイブリダイゼーションする領域に対応する。それらは、420ntのアンプリコンサイズを生成するgMyd88の増幅に最適化されている。ターゲット細胞においてCRISPR系が活性である場合、いくつかの細胞では160ntの欠失が起こり、NHEJによって修復され得、260ntサイズの短縮型遺伝子が生じる。(B)wt-HEKにおける、又はMyd88 CRISPR及びCas9コードプラスミドの両方をトランスフェクションした後におけるgMyd88のPCR増幅。ゲノムDNAの抽出後、Myd88プライマーセットを使用してPCRアッセイを実施した。CRISPR成分で処理した集団では、2つのターゲット位置における遺伝子の切断後に、非切断型Myd88(又は単一CRISPRによって切断されたバージョン)及び二重カットバージョンに対応する2つのアンプリコンが生成される。Myd88欠失は全ての処理細胞に影響を及ぼさないが、これは、トランスフェクションCRISPR成分系によって媒介される切断が完全ではないことを示していると認められ得る。(C)本発明者らはまた、Cas9をロードしたVLPによって、両Myd88ガイドRNAを送達しようと試みた。このために、
図1に示されている手順にしたがってVLPを生産し、使用したプラスミドの比及びエンベロープ(R1~R4)の性質に応じて、異なる実験手順を検討した。それらを収集及び濃縮した後、VLPをHEK又はHela細胞の培地に導入し、次に、PCRによってMyd88切断の効率を評価した。(D)Myd88プライマーセットと、VLPによって処理した細胞から抽出したゲノムDNAとを使用したMyd88増幅。HEK細胞におけるMyd88の切断では、全ての調製物が等しく効率的であったが(左のパネル)、Hela細胞ではいくつかの差異を認めることができ、使用したエンベロープ/比の重要性を反映している。特定のプロトコールが両細胞型に最適と思われる(R1)。
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図4B】従来のCas9送達方法及びCas9 VLPを使用したMyd88ローカスの欠失 (A)Myd88ゲノムDNA及びMyd88切断アッセイに使用した様々なツールの位置の概略図。紫色及び緑色で表されているように、ヒトMyd88遺伝子に対して2つの異なるCRISPR配列を設計した。灰色の枠は、2つのPCRプライマーがハイブリダイゼーションする領域に対応する。それらは、420ntのアンプリコンサイズを生成するgMyd88の増幅に最適化されている。ターゲット細胞においてCRISPR系が活性である場合、いくつかの細胞では160ntの欠失が起こり、NHEJによって修復され得、260ntサイズの短縮型遺伝子が生じる。(B)wt-HEKにおける、又はMyd88 CRISPR及びCas9コードプラスミドの両方をトランスフェクションした後におけるgMyd88のPCR増幅。ゲノムDNAの抽出後、Myd88プライマーセットを使用してPCRアッセイを実施した。CRISPR成分で処理した集団では、2つのターゲット位置における遺伝子の切断後に、非切断型Myd88(又は単一CRISPRによって切断されたバージョン)及び二重カットバージョンに対応する2つのアンプリコンが生成される。Myd88欠失は全ての処理細胞に影響を及ぼさないが、これは、トランスフェクションCRISPR成分系によって媒介される切断が完全ではないことを示していると認められ得る。(C)本発明者らはまた、Cas9をロードしたVLPによって、両Myd88ガイドRNAを送達しようと試みた。このために、
図1に示されている手順にしたがってVLPを生産し、使用したプラスミドの比及びエンベロープ(R1~R4)の性質に応じて、異なる実験手順を検討した。それらを収集及び濃縮した後、VLPをHEK又はHela細胞の培地に導入し、次に、PCRによってMyd88切断の効率を評価した。(D)Myd88プライマーセットと、VLPによって処理した細胞から抽出したゲノムDNAとを使用したMyd88増幅。HEK細胞におけるMyd88の切断では、全ての調製物が等しく効率的であったが(左のパネル)、Hela細胞ではいくつかの差異を認めることができ、使用したエンベロープ/比の重要性を反映している。特定のプロトコールが両細胞型に最適と思われる(R1)。
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図4C】従来のCas9送達方法及びCas9 VLPを使用したMyd88ローカスの欠失 (A)Myd88ゲノムDNA及びMyd88切断アッセイに使用した様々なツールの位置の概略図。紫色及び緑色で表されているように、ヒトMyd88遺伝子に対して2つの異なるCRISPR配列を設計した。灰色の枠は、2つのPCRプライマーがハイブリダイゼーションする領域に対応する。それらは、420ntのアンプリコンサイズを生成するgMyd88の増幅に最適化されている。ターゲット細胞においてCRISPR系が活性である場合、いくつかの細胞では160ntの欠失が起こり、NHEJによって修復され得、260ntサイズの短縮型遺伝子が生じる。(B)wt-HEKにおける、又はMyd88 CRISPR及びCas9コードプラスミドの両方をトランスフェクションした後におけるgMyd88のPCR増幅。ゲノムDNAの抽出後、Myd88プライマーセットを使用してPCRアッセイを実施した。CRISPR成分で処理した集団では、2つのターゲット位置における遺伝子の切断後に、非切断型Myd88(又は単一CRISPRによって切断されたバージョン)及び二重カットバージョンに対応する2つのアンプリコンが生成される。Myd88欠失は全ての処理細胞に影響を及ぼさないが、これは、トランスフェクションCRISPR成分系によって媒介される切断が完全ではないことを示していると認められ得る。(C)本発明者らはまた、Cas9をロードしたVLPによって、両Myd88ガイドRNAを送達しようと試みた。このために、
図1に示されている手順にしたがってVLPを生産し、使用したプラスミドの比及びエンベロープ(R1~R4)の性質に応じて、異なる実験手順を検討した。それらを収集及び濃縮した後、VLPをHEK又はHela細胞の培地に導入し、次に、PCRによってMyd88切断の効率を評価した。(D)Myd88プライマーセットと、VLPによって処理した細胞から抽出したゲノムDNAとを使用したMyd88増幅。HEK細胞におけるMyd88の切断では、全ての調製物が等しく効率的であったが(左のパネル)、Hela細胞ではいくつかの差異を認めることができ、使用したエンベロープ/比の重要性を反映している。特定のプロトコールが両細胞型に最適と思われる(R1)。
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図4D】従来のCas9送達方法及びCas9 VLPを使用したMyd88ローカスの欠失 (A)Myd88ゲノムDNA及びMyd88切断アッセイに使用した様々なツールの位置の概略図。紫色及び緑色で表されているように、ヒトMyd88遺伝子に対して2つの異なるCRISPR配列を設計した。灰色の枠は、2つのPCRプライマーがハイブリダイゼーションする領域に対応する。それらは、420ntのアンプリコンサイズを生成するgMyd88の増幅に最適化されている。ターゲット細胞においてCRISPR系が活性である場合、いくつかの細胞では160ntの欠失が起こり、NHEJによって修復され得、260ntサイズの短縮型遺伝子が生じる。(B)wt-HEKにおける、又はMyd88 CRISPR及びCas9コードプラスミドの両方をトランスフェクションした後におけるgMyd88のPCR増幅。ゲノムDNAの抽出後、Myd88プライマーセットを使用してPCRアッセイを実施した。CRISPR成分で処理した集団では、2つのターゲット位置における遺伝子の切断後に、非切断型Myd88(又は単一CRISPRによって切断されたバージョン)及び二重カットバージョンに対応する2つのアンプリコンが生成される。Myd88欠失は全ての処理細胞に影響を及ぼさないが、これは、トランスフェクションCRISPR成分系によって媒介される切断が完全ではないことを示していると認められ得る。(C)本発明者らはまた、Cas9をロードしたVLPによって、両Myd88ガイドRNAを送達しようと試みた。このために、
図1に示されている手順にしたがってVLPを生産し、使用したプラスミドの比及びエンベロープ(R1~R4)の性質に応じて、異なる実験手順を検討した。それらを収集及び濃縮した後、VLPをHEK又はHela細胞の培地に導入し、次に、PCRによってMyd88切断の効率を評価した。(D)Myd88プライマーセットと、VLPによって処理した細胞から抽出したゲノムDNAとを使用したMyd88増幅。HEK細胞におけるMyd88の切断では、全ての調製物が等しく効率的であったが(左のパネル)、Hela細胞ではいくつかの差異を認めることができ、使用したエンベロープ/比の重要性を反映している。特定のプロトコールが両細胞型に最適と思われる(R1)。
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図5】Cas9-VLPによって誘導されるMyd88遺伝子の用量依存的切断 Myd88遺伝子をターゲティングする2つのgRNAをロードしたCas9-VLPを生産し、濃縮し、4℃で15日間保存した。次に、漸増量のVLPを、12wプレート(細胞 150000個/w)にプレーティングしたHEK293Tターゲット細胞の培地に追加した。VLP処理の20時間後、細胞を溶解し、ゲノムDNAを精製して、Myd88ローカスの遺伝子切断を分析した。Myd88(260nt)の欠失を示すシグナルは、培地に導入したVLPの量と共に増加する。これは、Cas9-VLPが、それらの導入後24時間以内はターゲット細胞において活性であることを示している。VLP調製物は、4℃で少なくとも15日間安定であり得ると認められた。
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図6】Cas9-VLPによるHEKターゲット中のMyd88遺伝子の切断は、ポリブレンによって増強される。Myd88遺伝子をターゲティングする2つのgRNAをロードした準最適用量のCas9-VLPを、ヘキサジメトリンブロミド(ポリブレン)(粒子とターゲット細胞との接触を促すポリカチオン)を補充した又は補充していない完全培地中で成長させたHEKターゲット細胞 3×10e6個の培地に導入した。VLP処理の48時間後、細胞を溶解し、ゲノムDNAを精製して、Myd88ローカスの遺伝子切断を分析した。不飽和量のVLPを使用したこの条件では、Myd-88切断は、標準培地中で培養した細胞では検出不可能であるが、ポリブレンの追加によって強く増強される。
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図7A】ヒト単球由来マクロファージにおける、Cas9-VLPによって誘導されるMyd88遺伝子の切断 遺伝子型 (A)Myd88遺伝子をターゲティングする2つのgRNAをロードしたCas9-VLPを濃縮し、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)による6日間の分化後に、ヒト単球由来マクロファージの培地に導入した(48wプレート中、細胞 100000個/ウェル)。VLPで処理した48時間後、細胞を溶解し、ゲノムDNAを精製して、Myd88ローカスの遺伝子切断を分析した。この条件下では、Myd88遺伝子は、VLPによる処理後に、従来のPCRによってwt配列が検出すらできないような高い効率で切断されるが、これは、一次非分裂細胞におけるMyd88-VLPによって媒介される切断がほぼ完全であることを示唆している。 表現型 (B)Lombardo et al*によれば、ヒトマクロファージは、LPSのようなTLR-4アゴニストによって刺激されない限り、GMCSFなしで培養するとアポトーシスによって大量に死亡する。このアポトーシス耐性は、LPS及びMyd88依存性である。VLP処理細胞がそれらのMyd88機能を喪失したかをチェックするために、本発明者らは、(RPMI培地中で)GMCSFなしでそれらを培養し、LPSでそれらを72時間刺激した。この処理の下では、WTマクロファージはGMCSF枯渇に対して耐性であったが(条件2と条件3との比較)、Myd88切断Cas9-VLPで処理したマクロファージは大量に死亡した(条件4)。これは、VLP処理が機能レベルでMyd88を不活性化したことを強く示唆している。
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図7B】ヒト単球由来マクロファージにおける、Cas9-VLPによって誘導されるMyd88遺伝子の切断 遺伝子型 (A)Myd88遺伝子をターゲティングする2つのgRNAをロードしたCas9-VLPを濃縮し、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)による6日間の分化後に、ヒト単球由来マクロファージの培地に導入した(48wプレート中、細胞 100000個/ウェル)。VLPで処理した48時間後、細胞を溶解し、ゲノムDNAを精製して、Myd88ローカスの遺伝子切断を分析した。この条件下では、Myd88遺伝子は、VLPによる処理後に、従来のPCRによってwt配列が検出すらできないような高い効率で切断されるが、これは、一次非分裂細胞におけるMyd88-VLPによって媒介される切断がほぼ完全であることを示唆している。 表現型 (B)Lombardo et al*によれば、ヒトマクロファージは、LPSのようなTLR-4アゴニストによって刺激されない限り、GMCSFなしで培養するとアポトーシスによって大量に死亡する。このアポトーシス耐性は、LPS及びMyd88依存性である。VLP処理細胞がそれらのMyd88機能を喪失したかをチェックするために、本発明者らは、(RPMI培地中で)GMCSFなしでそれらを培養し、LPSでそれらを72時間刺激した。この処理の下では、WTマクロファージはGMCSF枯渇に対して耐性であったが(条件2と条件3との比較)、Myd88切断Cas9-VLPで処理したマクロファージは大量に死亡した(条件4)。これは、VLP処理が機能レベルでMyd88を不活性化したことを強く示唆している。
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図8】新たに精製した一次ヒトリンパ球における、Cas9-VLPによって誘導されるMyd88遺伝子の切断。ヒト精製リンパ球(Ficoll/percoll)を48wプレートに細胞 40×10e6個/mlで200μlプレーティングした。次に、Myd88をターゲティングするCas9-VLPの新鮮調製物で細胞を処理し、ポリブレン(4μg/ml)を補充したトランスダクション培地中で、古い方を4℃で20日間維持した。2時間後、新鮮培地 500μlをトランスダクション培地に追加し、培養液中で細胞を40時間維持してからそれらを溶解し、ゲノムDNAを抽出した。次に、PCRによってMyd88の切断を調査したところ、wt又は切断型のMyd88が明らかになった。両VLP条件では、Myd88遺伝子が切断された。いかなる明らかな毒性も伴わずに、VLPの単回処理によって、48時間以内に静止リンパ球 100万個を遺伝子改変した。
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図9】マウス骨髄由来マクロファージにおける、Cas9-VLPによって誘導されるMyd88遺伝子の切断 MCSF含有培地中で8日間インキュベーションしたマウス大腿骨から流し出した骨髄細胞からマクロファージを分化させた。次に、ポリブレン(4μg/ml)を補充した培地中、mMyd88をターゲティングするCas9-VLPの新鮮調製物で細胞を処理した。注目すべきことに、マウス遺伝子を特異的にターゲティングする2つの新たなgRNAを本実験のために設計した。溶解及びゲノムDNA抽出の48時間前に、細胞を培養した。次に、PCRによってMyd88の切断を調査したところ、hMyd88アッセイの設計に基づいて、wt又は切断型のマウスMyd88遺伝子が明らかになった。VLP処理細胞では、非常に効率的な切断がPCRによって検出されたが、完全mMyd88又は部分切断mMyd88に対応するバンド(1つのgRNAのみ)は薄く見える。
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図10A】「オールインワン」Cas9-VLPによって媒介される、内因性DDX3ゲノムローカスにおけるflagタグ配列のターゲット挿入。(A)ヒトDDX3ゲノムローカス及び実験において使用した様々なツールの概略図。紫色の矢印は、DDX3 CRISPRによって切断されるローカスを表し、灰色の領域は、DDX3のイントロン領域を表す。FLAG IN repプライマー(ssODN)は、Flagタグ配列に隣接する40ntの相同修復アーム(これは、DDX3ローカスに相同である)を示す一本鎖DNAとして表されている。PCRアッセイにおいて使用したプライマーが表されている。(B)Cas9タンパク質、gRNA及び修復プライマーを送達する「オールインワン」VLPの原理。DDX3をターゲティングするVLPを生産し、遠心分離し、4℃で保存した。次いで、VLPと漸増量のssODNとを組み合わせ、古典的成長培地中で培養したHEKターゲット細胞に追加した。次に、タンパク質抽出物及びゲノムDNAの調製のために、72時間後にターゲット細胞を溶解した。(C)「オールインワン」DDX3 VLPで処理した細胞のウエスタンブロット分析。flag抗体によって明らかになったDDX3予想分子量(86KDa)に対応するウエスタンブロットシグナルは、最高濃度のssODNで検出され得る。これは、Flag配列がVLP処理細胞のDDX3ローカスに成功裏に挿入されたことを示している。これは、VLP処理細胞から抽出したゲノムDNAに対するPCRによってさらに確認された。フォワードプライマーはFlag配列にハイブリダイゼーションし、リバースプライマーはDDX3のイントロンにハイブリダイゼーションするので、Flag配列がDDX3遺伝子に挿入された場合にのみ、使用したプライマー(Aに示されている)はDNAセグメントを増幅するはずである。下のパネルに示されているように、高濃度のプライマーでは遺伝子改変は明らかであり、用量と共に減少するが、0,01nmol/mlの低濃度では依然としてDNAレベルで検出可能である(レーン4)。(D)ヒト単球由来樹状細胞(Mo由来DC)におけるDDX3の内因性ローカスの上流へのFlag配列の導入。VLP及びssODN(最終5nmol/μl)を複合体形成させ、この混合物を使用して、ポリブレン(4μg/ml)を含有するトランスダクション培地中でMo由来DCを処理した。ゲノムDNA分析は、VLPの単回処理によって、flag配列が、ヒト一次DCにおけるDDX3の内因性ローカスに成功裏に付加されたことを示している。
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図10B】「オールインワン」Cas9-VLPによって媒介される、内因性DDX3ゲノムローカスにおけるflagタグ配列のターゲット挿入。(A)ヒトDDX3ゲノムローカス及び実験において使用した様々なツールの概略図。紫色の矢印は、DDX3 CRISPRによって切断されるローカスを表し、灰色の領域は、DDX3のイントロン領域を表す。FLAG IN repプライマー(ssODN)は、Flagタグ配列に隣接する40ntの相同修復アーム(これは、DDX3ローカスに相同である)を示す一本鎖DNAとして表されている。PCRアッセイにおいて使用したプライマーが表されている。(B)Cas9タンパク質、gRNA及び修復プライマーを送達する「オールインワン」VLPの原理。DDX3をターゲティングするVLPを生産し、遠心分離し、4℃で保存した。次いで、VLPと漸増量のssODNとを組み合わせ、古典的成長培地中で培養したHEKターゲット細胞に追加した。次に、タンパク質抽出物及びゲノムDNAの調製のために、72時間後にターゲット細胞を溶解した。(C)「オールインワン」DDX3 VLPで処理した細胞のウエスタンブロット分析。flag抗体によって明らかになったDDX3予想分子量(86KDa)に対応するウエスタンブロットシグナルは、最高濃度のssODNで検出され得る。これは、Flag配列がVLP処理細胞のDDX3ローカスに成功裏に挿入されたことを示している。これは、VLP処理細胞から抽出したゲノムDNAに対するPCRによってさらに確認された。フォワードプライマーはFlag配列にハイブリダイゼーションし、リバースプライマーはDDX3のイントロンにハイブリダイゼーションするので、Flag配列がDDX3遺伝子に挿入された場合にのみ、使用したプライマー(Aに示されている)はDNAセグメントを増幅するはずである。下のパネルに示されているように、高濃度のプライマーでは遺伝子改変は明らかであり、用量と共に減少するが、0,01nmol/mlの低濃度では依然としてDNAレベルで検出可能である(レーン4)。(D)ヒト単球由来樹状細胞(Mo由来DC)におけるDDX3の内因性ローカスの上流へのFlag配列の導入。VLP及びssODN(最終5nmol/μl)を複合体形成させ、この混合物を使用して、ポリブレン(4μg/ml)を含有するトランスダクション培地中でMo由来DCを処理した。ゲノムDNA分析は、VLPの単回処理によって、flag配列が、ヒト一次DCにおけるDDX3の内因性ローカスに成功裏に付加されたことを示している。
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図10C】「オールインワン」Cas9-VLPによって媒介される、内因性DDX3ゲノムローカスにおけるflagタグ配列のターゲット挿入。(A)ヒトDDX3ゲノムローカス及び実験において使用した様々なツールの概略図。紫色の矢印は、DDX3 CRISPRによって切断されるローカスを表し、灰色の領域は、DDX3のイントロン領域を表す。FLAG IN repプライマー(ssODN)は、Flagタグ配列に隣接する40ntの相同修復アーム(これは、DDX3ローカスに相同である)を示す一本鎖DNAとして表されている。PCRアッセイにおいて使用したプライマーが表されている。(B)Cas9タンパク質、gRNA及び修復プライマーを送達する「オールインワン」VLPの原理。DDX3をターゲティングするVLPを生産し、遠心分離し、4℃で保存した。次いで、VLPと漸増量のssODNとを組み合わせ、古典的成長培地中で培養したHEKターゲット細胞に追加した。次に、タンパク質抽出物及びゲノムDNAの調製のために、72時間後にターゲット細胞を溶解した。(C)「オールインワン」DDX3 VLPで処理した細胞のウエスタンブロット分析。flag抗体によって明らかになったDDX3予想分子量(86KDa)に対応するウエスタンブロットシグナルは、最高濃度のssODNで検出され得る。これは、Flag配列がVLP処理細胞のDDX3ローカスに成功裏に挿入されたことを示している。これは、VLP処理細胞から抽出したゲノムDNAに対するPCRによってさらに確認された。フォワードプライマーはFlag配列にハイブリダイゼーションし、リバースプライマーはDDX3のイントロンにハイブリダイゼーションするので、Flag配列がDDX3遺伝子に挿入された場合にのみ、使用したプライマー(Aに示されている)はDNAセグメントを増幅するはずである。下のパネルに示されているように、高濃度のプライマーでは遺伝子改変は明らかであり、用量と共に減少するが、0,01nmol/mlの低濃度では依然としてDNAレベルで検出可能である(レーン4)。(D)ヒト単球由来樹状細胞(Mo由来DC)におけるDDX3の内因性ローカスの上流へのFlag配列の導入。VLP及びssODN(最終5nmol/μl)を複合体形成させ、この混合物を使用して、ポリブレン(4μg/ml)を含有するトランスダクション培地中でMo由来DCを処理した。ゲノムDNA分析は、VLPの単回処理によって、flag配列が、ヒト一次DCにおけるDDX3の内因性ローカスに成功裏に付加されたことを示している。
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図10D】「オールインワン」Cas9-VLPによって媒介される、内因性DDX3ゲノムローカスにおけるflagタグ配列のターゲット挿入。(A)ヒトDDX3ゲノムローカス及び実験において使用した様々なツールの概略図。紫色の矢印は、DDX3 CRISPRによって切断されるローカスを表し、灰色の領域は、DDX3のイントロン領域を表す。FLAG IN repプライマー(ssODN)は、Flagタグ配列に隣接する40ntの相同修復アーム(これは、DDX3ローカスに相同である)を示す一本鎖DNAとして表されている。PCRアッセイにおいて使用したプライマーが表されている。(B)Cas9タンパク質、gRNA及び修復プライマーを送達する「オールインワン」VLPの原理。DDX3をターゲティングするVLPを生産し、遠心分離し、4℃で保存した。次いで、VLPと漸増量のssODNとを組み合わせ、古典的成長培地中で培養したHEKターゲット細胞に追加した。次に、タンパク質抽出物及びゲノムDNAの調製のために、72時間後にターゲット細胞を溶解した。(C)「オールインワン」DDX3 VLPで処理した細胞のウエスタンブロット分析。flag抗体によって明らかになったDDX3予想分子量(86KDa)に対応するウエスタンブロットシグナルは、最高濃度のssODNで検出され得る。これは、Flag配列がVLP処理細胞のDDX3ローカスに成功裏に挿入されたことを示している。これは、VLP処理細胞から抽出したゲノムDNAに対するPCRによってさらに確認された。フォワードプライマーはFlag配列にハイブリダイゼーションし、リバースプライマーはDDX3のイントロンにハイブリダイゼーションするので、Flag配列がDDX3遺伝子に挿入された場合にのみ、使用したプライマー(Aに示されている)はDNAセグメントを増幅するはずである。下のパネルに示されているように、高濃度のプライマーでは遺伝子改変は明らかであり、用量と共に減少するが、0,01nmol/mlの低濃度では依然としてDNAレベルで検出可能である(レーン4)。(D)ヒト単球由来樹状細胞(Mo由来DC)におけるDDX3の内因性ローカスの上流へのFlag配列の導入。VLP及びssODN(最終5nmol/μl)を複合体形成させ、この混合物を使用して、ポリブレン(4μg/ml)を含有するトランスダクション培地中でMo由来DCを処理した。ゲノムDNA分析は、VLPの単回処理によって、flag配列が、ヒト一次DCにおけるDDX3の内因性ローカスに成功裏に付加されたことを示している。
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図11】ナノブレードを使用する一連の可能性及び「ヘルパー」VLPとの会合 本発明者らは、Cas9、gRNAを組み込んだ「オールインワン」VLPであって、場合により修復ssDNAと組み合わせた「オールインワン」VLPを作製することができ、完全なパッケージをレシピエント細胞に送達することができることを示した。(a)に示されているこの薬剤は、それ自体が非常に多用途である。VLPはいくつかのgRNAを組み込むことができ、産生後に異なる修復プライマーと確実に複合体形成し得るので、低コストで専用ツールを作り出すために、多くの可能性が科学者/企業に提供される。(Abe et al. J Virol 1998)で言及されているように、異なる性質のVLPは、産生後に細胞外で複合体形成し得、互いに相補的であり得、例えば、他方が細胞に侵入するのを一方が支援する。VLPのこの特性を考慮して、本発明者らは、それぞれが特定のカーゴ専用のものである粒子を混合することによって、CRISPR系の参加要素を輸送するための活性剤を調製する他の方法を想像し得る。(b)では、gRNA-Cas9-VLPと、修復プライマーと単に複合体形成した粒子とを混合し得る系が提案されている:この場合、両種類の粒子の混合物が最終活性剤であろう。さらに進むと、gRNAを特定の種類の粒子にパッケージングし、産生後に非ロードCas9-VLPと組み合わせて、全ての成分を送達することができる粒子混合物を作り出すこともできる。この系は、(c)に示されている。いくつかのgRNAをVLPに組み込む理論上の可能性を考慮すると、異なるウイルスエンベロープを選択して各種類のVLPをシュードタイピングするために、及びそれらを異なる種類のssDNAと会合させるために、本発明者らは、より複雑な薬剤さえも想像し得る。(d).異なる種類の粒子におけるCRISPR成分のこの隔離は、最終薬剤の全体的な効率に確実に影響を与え得るが、それは、ナノブレードを生産する企業に、ナノブレードサービスを改善してそれを低コストにする広範な可能性を提供し得る。(c)の系が十分に効率的である場合には、十分に滴定された大量の一般的なCas9-VLPのバッチを調製して、各用途のために特別にカスタマイズされたgRNA粒子と会合させれば十分である。gRNA-VLPの迅速かつ低コストな調製のみを必要とする非常に正確な分子サービスが提供されるので、この系は、工業的な観点から非常に有益であると思われる。
【
図12A】不連続スクロース勾配で分離したCAS9ウイルス由来粒子のウエスタンブロット分析及び特性評価。
図12Aは、ウエスタンブロットゲル電気泳動を示す。レーン(左から右に):(i)抗Flag抗体と共にインキュベーション;(ii)抗VSV-G抗体と共にインキュベーション;(iii)抗CAS9抗体と共にインキュベーション;(iv)抗GAGmlv抗体と共にインキュベーション。
図12Bは、不連続スクロース勾配によるCAS9ウイルス由来粒子の分離を実施した後に収集した画分1~24のドットブロットを示す。カラム(左から右に):画分n°1~n°24。
図12Bのレーン(上から下に):(i)抗VSV-G抗体と共にインキュベーション;(ii)抗CAS9抗体と共にインキュベーション、(iii)抗GAGmlv抗体と共にインキュベーション。
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図12B】不連続スクロース勾配で分離したCAS9ウイルス由来粒子のウエスタンブロット分析及び特性評価。
図12Aは、ウエスタンブロットゲル電気泳動を示す。レーン(左から右に):(i)抗Flag抗体と共にインキュベーション;(ii)抗VSV-G抗体と共にインキュベーション;(iii)抗CAS9抗体と共にインキュベーション;(iv)抗GAGmlv抗体と共にインキュベーション。
図12Bは、不連続スクロース勾配によるCAS9ウイルス由来粒子の分離を実施した後に収集した画分1~24のドットブロットを示す。カラム(左から右に):画分n°1~n°24。
図12Bのレーン(上から下に):(i)抗VSV-G抗体と共にインキュベーション;(ii)抗CAS9抗体と共にインキュベーション、(iii)抗GAGmlv抗体と共にインキュベーション。
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図13】Gag/Cas9融合は、ガイドRNAをウイルス様粒子(VLP)内に能動的にロードする。産生細胞から抽出した全RNA(レーン2~4)又は対応する精製VLP(レーン5~7)を使用した、ガイドRNAの保存領域に対するノーザンブロット。
【
図14A】
図14A:MLVベースのVLP又はHIV-1ベースのVLPの生産のために設計したコードカセットの概略図。初期hCMVプロモーター、ウサギBグロビンイントロン及びウサギpAシグナルを備える真核生物発現ベクターを両カセットに組み込んだ。Cas9遺伝子からGAGカセットを分離する多様なタンパク質分解部位の探索及び試験によって、両系を最適化した。他の箇所に記載されているようにMLVベースのVLPを生産し、GAG POL Tat Revタンパク質をコードするHIV-1ヘルパー構築物をMLV GAG POLプラスミドに代えてトランスフェクションした以外は同様に、HIV-1ベースのVLPを生産した。HIV-1 VLPの生産は、MLVベースのVLPと同じ手順に従う。
図14B:GFP遺伝子をターゲティングするガイドRNAを組み込むように操作した濃縮VLPを使用して、GFPを発現するHEK293T細胞 30000個をトランスダクションした。同じロードgRNA(ターゲット配列:CGAGGAGCTGTTCACCGGGG-配列番号:38)を用いて、HIV-1及びMLVベースの粒子を生産した。その前日に、レシピエント細胞を96wプレートにプレーティングした。ポリブレン(4μg/ml)をトランスダクション培地に補充した。3つの漸増用量の各VLPバッチによる処理の72時間後、蛍光光度計(励起488、発光535)によって、蛍光強度を測定した。VLP処理細胞では、コントロール未処理細胞と比較して、蛍光の減少が明らかであったが(C)、これは、レシピエント細胞内におけるGFP遺伝子の切断を示している。結果は、HIV-1ベースのVLPが、CRISPR/CAS9系をこれらのレシピエント細胞に送達する際に効率的であり、MLVベースのVLPよりもわずかに低効率のレベルである(1,5~2倍低効率)ことを示している。
図14C:IL7で刺激した一次ヒトT細胞におけるWASP遺伝子の切断。この実験では、IL-7で刺激した新鮮精製T細胞の処理前に、ヒトWASP遺伝子をターゲティングする2つのガイドRNAをHIV-1又はMLVベースのVLP内に組み込んだ。24wプレート中、ポリブレン(4μg/ml)及びIL-7を補充したRPMI培地 400μlに細胞 500000個をプレーティングした。濃縮HIV-1又はMLV VLP(1μM CAS9で投与したVLP 10μl)を培養培地に追加した。次に、処理の24時間後、レシピエント細胞において、CRISPR-CAS9によるWASP欠失をPCRによって測定した。ゲノムWASP遺伝子の増幅に使用したプライマーは、フォワード:5’-ATTGCGGAAGTTCCTCTTCTTACCCTG(配列番号:36) リバース:5’-TTCCTGGGAAGGGTGGATTATGACGGG(配列番号:37)であった。PCR条件は、95℃で5分間、続いて(95℃で30秒間-57℃で30秒間-72℃で30秒間)を25サイクル、続いて72℃で5分間である。次に、アンプリコンをゲル上にロードして、VLPレシピエントT細胞におけるWASPの状態(wt又は切断)を明らかにした。ImageJソフトウェアを使用して実施したゲル分析は、MLVベースのVLP(32%)及びHIV-1ベースのVLP(6%)の二重カット効率の定量を可能にした。
【
図14B】
図14A:MLVベースのVLP又はHIV-1ベースのVLPの生産のために設計したコードカセットの概略図。初期hCMVプロモーター、ウサギBグロビンイントロン及びウサギpAシグナルを備える真核生物発現ベクターを両カセットに組み込んだ。Cas9遺伝子からGAGカセットを分離する多様なタンパク質分解部位の探索及び試験によって、両系を最適化した。他の箇所に記載されているようにMLVベースのVLPを生産し、GAG POL Tat Revタンパク質をコードするHIV-1ヘルパー構築物をMLV GAG POLプラスミドに代えてトランスフェクションした以外は同様に、HIV-1ベースのVLPを生産した。HIV-1 VLPの生産は、MLVベースのVLPと同じ手順に従う。
図14B:GFP遺伝子をターゲティングするガイドRNAを組み込むように操作した濃縮VLPを使用して、GFPを発現するHEK293T細胞 30000個をトランスダクションした。同じロードgRNA(ターゲット配列:CGAGGAGCTGTTCACCGGGG-配列番号:38)を用いて、HIV-1及びMLVベースの粒子を生産した。その前日に、レシピエント細胞を96wプレートにプレーティングした。ポリブレン(4μg/ml)をトランスダクション培地に補充した。3つの漸増用量の各VLPバッチによる処理の72時間後、蛍光光度計(励起488、発光535)によって、蛍光強度を測定した。VLP処理細胞では、コントロール未処理細胞と比較して、蛍光の減少が明らかであったが(C)、これは、レシピエント細胞内におけるGFP遺伝子の切断を示している。結果は、HIV-1ベースのVLPが、CRISPR/CAS9系をこれらのレシピエント細胞に送達する際に効率的であり、MLVベースのVLPよりもわずかに低効率のレベルである(1,5~2倍低効率)ことを示している。
図14C:IL7で刺激した一次ヒトT細胞におけるWASP遺伝子の切断。この実験では、IL-7で刺激した新鮮精製T細胞の処理前に、ヒトWASP遺伝子をターゲティングする2つのガイドRNAをHIV-1又はMLVベースのVLP内に組み込んだ。24wプレート中、ポリブレン(4μg/ml)及びIL-7を補充したRPMI培地 400μlに細胞 500000個をプレーティングした。濃縮HIV-1又はMLV VLP(1μM CAS9で投与したVLP 10μl)を培養培地に追加した。次に、処理の24時間後、レシピエント細胞において、CRISPR-CAS9によるWASP欠失をPCRによって測定した。ゲノムWASP遺伝子の増幅に使用したプライマーは、フォワード:5’-ATTGCGGAAGTTCCTCTTCTTACCCTG(配列番号:36) リバース:5’-TTCCTGGGAAGGGTGGATTATGACGGG(配列番号:37)であった。PCR条件は、95℃で5分間、続いて(95℃で30秒間-57℃で30秒間-72℃で30秒間)を25サイクル、続いて72℃で5分間である。次に、アンプリコンをゲル上にロードして、VLPレシピエントT細胞におけるWASPの状態(wt又は切断)を明らかにした。ImageJソフトウェアを使用して実施したゲル分析は、MLVベースのVLP(32%)及びHIV-1ベースのVLP(6%)の二重カット効率の定量を可能にした。
【
図14C】
図14A:MLVベースのVLP又はHIV-1ベースのVLPの生産のために設計したコードカセットの概略図。初期hCMVプロモーター、ウサギBグロビンイントロン及びウサギpAシグナルを備える真核生物発現ベクターを両カセットに組み込んだ。Cas9遺伝子からGAGカセットを分離する多様なタンパク質分解部位の探索及び試験によって、両系を最適化した。他の箇所に記載されているようにMLVベースのVLPを生産し、GAG POL Tat Revタンパク質をコードするHIV-1ヘルパー構築物をMLV GAG POLプラスミドに代えてトランスフェクションした以外は同様に、HIV-1ベースのVLPを生産した。HIV-1 VLPの生産は、MLVベースのVLPと同じ手順に従う。
図14B:GFP遺伝子をターゲティングするガイドRNAを組み込むように操作した濃縮VLPを使用して、GFPを発現するHEK293T細胞 30000個をトランスダクションした。同じロードgRNA(ターゲット配列:CGAGGAGCTGTTCACCGGGG-配列番号:38)を用いて、HIV-1及びMLVベースの粒子を生産した。その前日に、レシピエント細胞を96wプレートにプレーティングした。ポリブレン(4μg/ml)をトランスダクション培地に補充した。3つの漸増用量の各VLPバッチによる処理の72時間後、蛍光光度計(励起488、発光535)によって、蛍光強度を測定した。VLP処理細胞では、コントロール未処理細胞と比較して、蛍光の減少が明らかであったが(C)、これは、レシピエント細胞内におけるGFP遺伝子の切断を示している。結果は、HIV-1ベースのVLPが、CRISPR/CAS9系をこれらのレシピエント細胞に送達する際に効率的であり、MLVベースのVLPよりもわずかに低効率のレベルである(1,5~2倍低効率)ことを示している。
図14C:IL7で刺激した一次ヒトT細胞におけるWASP遺伝子の切断。この実験では、IL-7で刺激した新鮮精製T細胞の処理前に、ヒトWASP遺伝子をターゲティングする2つのガイドRNAをHIV-1又はMLVベースのVLP内に組み込んだ。24wプレート中、ポリブレン(4μg/ml)及びIL-7を補充したRPMI培地 400μlに細胞 500000個をプレーティングした。濃縮HIV-1又はMLV VLP(1μM CAS9で投与したVLP 10μl)を培養培地に追加した。次に、処理の24時間後、レシピエント細胞において、CRISPR-CAS9によるWASP欠失をPCRによって測定した。ゲノムWASP遺伝子の増幅に使用したプライマーは、フォワード:5’-ATTGCGGAAGTTCCTCTTCTTACCCTG(配列番号:36) リバース:5’-TTCCTGGGAAGGGTGGATTATGACGGG(配列番号:37)であった。PCR条件は、95℃で5分間、続いて(95℃で30秒間-57℃で30秒間-72℃で30秒間)を25サイクル、続いて72℃で5分間である。次に、アンプリコンをゲル上にロードして、VLPレシピエントT細胞におけるWASPの状態(wt又は切断)を明らかにした。ImageJソフトウェアを使用して実施したゲル分析は、MLVベースのVLP(32%)及びHIV-1ベースのVLP(6%)の二重カット効率の定量を可能にした。
【
図15A】Cas9含有ウイルス由来粒子によるThy1-GFPマウス胚へのCRISPR送達
図15Aは、Thy1-GFPマウス胚の透明帯へのCAS含有ウイルス由来粒子の注射を示す。
図15Bは、CAS9含有ウイルス由来粒子を注射したマウス胚に由来する成体マウス(F0)におけるThy1-GFPアレルの切断の結果を示す
図15Cは、
図15Bに示されているF0マウスに由来するF1マウスにおけるThy1-GFPアレルの変化を示す。
図15D、E、F及びG:クロマトグラムから計算した場合の、それぞれマウス#78、#79、#21及び#22におけるGFP変化率(結果は、未処理Thy-GFPコントロールマウスとの比較である)。横軸:F1マウスにおけるGFP変化率。*選択したThy1-GFP系統は数コピーのGFP/アレル(6~10)を有するという事実により、%は完全ではない。結果は、1アレル当たり1つの構成的GFPコピーを有するマウス系統において再現されるはずである(準備中)
【
図15B-15C】Cas9含有ウイルス由来粒子によるThy1-GFPマウス胚へのCRISPR送達
図15Aは、Thy1-GFPマウス胚の透明帯へのCAS含有ウイルス由来粒子の注射を示す。
図15Bは、CAS9含有ウイルス由来粒子を注射したマウス胚に由来する成体マウス(F0)におけるThy1-GFPアレルの切断の結果を示す
図15Cは、
図15Bに示されているF0マウスに由来するF1マウスにおけるThy1-GFPアレルの変化を示す。
図15D、E、F及びG:クロマトグラムから計算した場合の、それぞれマウス#78、#79、#21及び#22におけるGFP変化率(結果は、未処理Thy-GFPコントロールマウスとの比較である)。横軸:F1マウスにおけるGFP変化率。*選択したThy1-GFP系統は数コピーのGFP/アレル(6~10)を有するという事実により、%は完全ではない。結果は、1アレル当たり1つの構成的GFPコピーを有するマウス系統において再現されるはずである(準備中)
【
図15D】Cas9含有ウイルス由来粒子によるThy1-GFPマウス胚へのCRISPR送達
図15Aは、Thy1-GFPマウス胚の透明帯へのCAS含有ウイルス由来粒子の注射を示す。
図15Bは、CAS9含有ウイルス由来粒子を注射したマウス胚に由来する成体マウス(F0)におけるThy1-GFPアレルの切断の結果を示す
図15Cは、
図15Bに示されているF0マウスに由来するF1マウスにおけるThy1-GFPアレルの変化を示す。
図15D、E、F及びG:クロマトグラムから計算した場合の、それぞれマウス#78、#79、#21及び#22におけるGFP変化率(結果は、未処理Thy-GFPコントロールマウスとの比較である)。横軸:F1マウスにおけるGFP変化率。*選択したThy1-GFP系統は数コピーのGFP/アレル(6~10)を有するという事実により、%は完全ではない。結果は、1アレル当たり1つの構成的GFPコピーを有するマウス系統において再現されるはずである(準備中)
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図15E】Cas9含有ウイルス由来粒子によるThy1-GFPマウス胚へのCRISPR送達
図15Aは、Thy1-GFPマウス胚の透明帯へのCAS含有ウイルス由来粒子の注射を示す。
図15Bは、CAS9含有ウイルス由来粒子を注射したマウス胚に由来する成体マウス(F0)におけるThy1-GFPアレルの切断の結果を示す
図15Cは、
図15Bに示されているF0マウスに由来するF1マウスにおけるThy1-GFPアレルの変化を示す。
図15D、E、F及びG:クロマトグラムから計算した場合の、それぞれマウス#78、#79、#21及び#22におけるGFP変化率(結果は、未処理Thy-GFPコントロールマウスとの比較である)。横軸:F1マウスにおけるGFP変化率。*選択したThy1-GFP系統は数コピーのGFP/アレル(6~10)を有するという事実により、%は完全ではない。結果は、1アレル当たり1つの構成的GFPコピーを有するマウス系統において再現されるはずである(準備中)
【
図15F】Cas9含有ウイルス由来粒子によるThy1-GFPマウス胚へのCRISPR送達
図15Aは、Thy1-GFPマウス胚の透明帯へのCAS含有ウイルス由来粒子の注射を示す。
図15Bは、CAS9含有ウイルス由来粒子を注射したマウス胚に由来する成体マウス(F0)におけるThy1-GFPアレルの切断の結果を示す
図15Cは、
図15Bに示されているF0マウスに由来するF1マウスにおけるThy1-GFPアレルの変化を示す。
図15D、E、F及びG:クロマトグラムから計算した場合の、それぞれマウス#78、#79、#21及び#22におけるGFP変化率(結果は、未処理Thy-GFPコントロールマウスとの比較である)。横軸:F1マウスにおけるGFP変化率。*選択したThy1-GFP系統は数コピーのGFP/アレル(6~10)を有するという事実により、%は完全ではない。結果は、1アレル当たり1つの構成的GFPコピーを有するマウス系統において再現されるはずである(準備中)
【
図15G】Cas9含有ウイルス由来粒子によるThy1-GFPマウス胚へのCRISPR送達
図15Aは、Thy1-GFPマウス胚の透明帯へのCAS含有ウイルス由来粒子の注射を示す。
図15Bは、CAS9含有ウイルス由来粒子を注射したマウス胚に由来する成体マウス(F0)におけるThy1-GFPアレルの切断の結果を示す
図15Cは、
図15Bに示されているF0マウスに由来するF1マウスにおけるThy1-GFPアレルの変化を示す。
図15D、E、F及びG:クロマトグラムから計算した場合の、それぞれマウス#78、#79、#21及び#22におけるGFP変化率(結果は、未処理Thy-GFPコントロールマウスとの比較である)。横軸:F1マウスにおけるGFP変化率。*選択したThy1-GFP系統は数コピーのGFP/アレル(6~10)を有するという事実により、%は完全ではない。結果は、1アレル当たり1つの構成的GFPコピーを有するマウス系統において再現されるはずである(準備中)
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明は、真核生物、好ましくは哺乳動物、特にヒト生物のゲノムにおいてターゲット変化を発生させるために、ウイルス由来粒子を使用してCRISPR/Casタンパク質をターゲット細胞に送達することに関する。
【0032】
驚くべきことに、本発明者らは、Casタンパク質がパッケージングされたウイルスベクター粒子の使用を介して、前記Casタンパク質をターゲット細胞に送達することによって、部位特異的ゲノム変化、例えば部位特異的ゲノム欠失又は部位特異的ゲノム挿入の発生を成功裏に実施し得ることを示した。
【0033】
本発明者らは、多用途ウイルス由来粒子(本明細書では「ウイルス様粒子」又は「VLP」とも称される)を使用することによって、CRISPR活性機構をヒト細胞及び他の哺乳動物細胞(一次細胞型を含む)内に移入する強力な方法を考案した。
【0034】
本発明者らは、これらのVLPが、ターゲット細胞へのCRISPR-RNPc(「CRISPR-リボヌクレオタンパク質複合体」とも称される)の用量依存的な一過性送達を確実にし、所望のターゲット遺伝子のロバストかつ迅速な切断を誘導することを示した。実施例で例証されているように、読み取り情報としてMyd-88遺伝子を用いた場合、本発明者らは、ヒト細胞において6時間以内に後者の遺伝子の完全な切断を観察したので、本明細書に記載されるウイルス由来粒子系の高い効率に寄与し得る顕著な迅速性によって、前記系は、ほとんどの既知のCRISPR送達系の場合のように、Casタンパク質をコードするポリヌクレオチドの核酸移入を実施することに代えて、Casタンパク質、最も好ましくはCas9タンパク質及びCRISPRガイドRNA(本明細書では「gRNA」とも称される)を直接送達することを含む。本明細書の実施例に記載されているように、CRISPRガイドRNAは、CAS含有VLPに効率的にカプセル化される。実施例にも記載されているように、CRISPRガイドRNAのカプセル化は、VLP中のCASタンパク質の存在に非常に影響される。
【0035】
本発明者らはまた、様々なウイルス由来粒子、特に、その中に含まれるGAGタンパク質が様々なウイルスに由来し得るウイルス由来粒子から、CAS含有VLPを調製し得ることを示した。注目すべきことに、MLV由来GAGタンパク質を含むCAS含有ウイルス由来粒子と、HIV1由来GAGタンパク質を含むCAS含有ウイルス由来粒子とが実施例に記載されている。両種類のCAS含有ウイルス由来粒子がターゲット遺伝子を効率的に操作し、例えばターゲット遺伝子を効率的に切断することが本明細書で示されている。
【0036】
さらに、本発明者らは、GAG含有ウイルス由来粒子が、in vivoで所望のターゲット配列を効率的に変化させることを示した。例示的には、GAG含有ウイルス由来粒子を使用して、生存胚において所望のゲノム変化を誘導し得る(例えば、ゲノム中の所望の位置において切断を誘導し得る)ことが実施例に示されている。生存胚において実施したゲノム変化が、得られた成体哺乳動物中に存在し、次いで、次世代に受け継がれることも本明細書で示されている。
【0037】
主要な遺伝子発現プロセス(例えば、転写及び翻訳)は、CRISPR戦略の主要なターゲットであり得るいくつかの一次細胞サブセットではあまり活性ではなく、したがって、DNAトランスフェクション及び従来のレンチウイルスベクターのような従来の送達方法の効率を減少させ得ることを考慮すると、本発明者らの知見は特に重要である。
【0038】
これに関して、本発明者らが考案したCas9-ウイルス由来粒子技術は、ゲノム編集のための、特に、トランスフェクション/トランスダクション手順に不適であり、活性化前に低い代謝を示すリンパ球のような非活性化非分裂一次細胞におけるゲノム編集のための最適なツールであると思われる。
【0039】
さらに、本発明者の結果によれば、CRISPR RNPcの効果は、レシピエントターゲット細胞では一過性であり、本明細書に記載されるウイルス由来粒子とターゲット細胞との接触を介して、RNPcの導入後多くとも数時間にわたってその生物学的活性を発揮すると予想される。
【0040】
ターゲット細胞へのCRIPSR成分の送達が一過性であること、及びこの技術がプラスミドDNAをターゲット細胞に導入しないという事実から、潜在的な毒性が減少し、オフターゲット切断のリスクも減少すると予想される。
【0041】
さらに、この技術がプラスミドDNAをターゲット細胞に導入しないという事実は、外因性DNAがターゲットゲノムに組み込まれる可能性を回避することを可能にする。
【0042】
例示的には、実施例に示されているように、本明細書に記載されるウイルス由来粒子による脆弱なヒト幹CD34+細胞又はヒトリンパ球の処理は検出可能な細胞毒性を誘導せず、前記ウイルス由来粒子を大量に注入した後であっても細胞死をもたらさなかった。
【0043】
注目すべきことに、本発明者らは、マウス白血病ウイルスの構造的GAGタンパク質との融合により、Cas9タンパク質がMLV由来VLP又はHIV-1由来VLPにパッケージングされるように、キメラCas9タンパク質を操作した。
【0044】
したがって、この概念は、HIV-1由来のGAGポリタンパク質又はラウス肉腫ウイルス(RSV)由来のGAGポリタンパク質のような他のウイルス構造タンパク質に容易に拡大された。
【0045】
本明細書に記載されるように生産されたウイルス由来粒子は、CRISPR-RNPcを所望のターゲット細胞に効率的に移入することが示されている。本明細書に記載されるウイルス由来粒子の技術の利用は、前記ウイルス由来粒子をシュードタイピングするために選択され得る多くのウイルスエンベロープを提供するので、特定の特性(指向性、補体抵抗性、ロバスト性)を調製物に付与する。
【0046】
発現カセットへのCasタンパク質及び1つ以上のCRISPR gRNAのコード配列の挿入、特に、発現カセットへのCas9及び特別設計gRNAのコード配列の挿入はまた、外来配列の組み込みに許容的なリコンビナントウイルス(例えば、麻疹株又は特定のインフルエンザ株)の骨格において実施され得る。これは、検討ウイルスに許容的な特定の細胞/組織/器官における活性CRISPR RNPcの広範な拡散を可能にする。
【0047】
Cas9 Streptococcus pyogenesエンドヌクレアーゼの利用の他に、本明細書に記載される技術は、他の生物由来のCasタンパク質(あるいは、これは構造的ウイルスタンパク質に融合され得る)に容易に拡大される。本明細書に記載されるウイルス由来粒子によって成長中のCas9誘導体コホートを送達して、1本のDNA鎖のみの切断、転写の活性化及び正確なゲノムローカスの標識などの多種多様なゲノム変化を達成し得る。O’Connell et al. (2014, Nature, Vol. 516: 263-266)(これは、トランスに提供される小さいDNA配列(PAMmer)を伴う技術である)に記載されているように、本明細書に記載される技術はまた、細胞内mRNAをターゲティングしてそれらの切断を誘導するために、CasベースのCRISPR戦略、特にCas9ベースのCRISPR戦略を可能にする。本明細書に記載されるウイルス由来粒子技術は、実施例に記載されているflaging-DDX3戦略のモデルにおいて、粒子とssDNA PAMmerとの単純な組み合わせによって、このRNAターゲティングアプローチに適合され得る(本明細書の
図10も参照のこと)。
【0048】
本明細書に記載されるウイルス由来粒子をそれらの産生後にssDNA又はdsDNAと組み合わせる可能性は、様々な核酸操作目的のための工業的開発及び迅速かつ低コストなカスタマイズの点で広範な可能性を提供する。また、別の技術的文脈でAbe et al. (1998, J Virol, Vol. 72: 6356-6361)に記載されているように、エンベロープ又はタンパク質/核酸カーゴが異なるウイルス由来ナノ粒子は、混合物として組み合わせた場合にはトランス相補性であり得ることに留意すべきである。
【0049】
本発明のウイルス由来粒子を組み合わせて、CRISPR効果をターゲット細胞に移す複数の方法は、本明細書の他の箇所に記載されている。これらの様々な実施態様のいくつかは、本明細書の
図11に示されている。予備データは、これらのウイルス由来粒子及びベシクルを調製し、別の技術的文脈でMangeot et al. (2011, Mol Ther J Am Soc Gene Ther, Vol. 19: 1956-1666)に教示されているように使用する場合、Casタンパク質、特にCas9タンパク質を含むウイルス由来粒子と、1つ以上のCRISPR gRNAを組み込んだベシクルとを組み合わせることができ、Cas含有ウイルス由来粒子とgRNA含有ベシクルとの得られた混合物によって処理した細胞では、CRISPR作用が効率的であることを示している。CRISPR成分を異なる種類の粒子に隔離する機会は、工業的観点から非常に興味深いものであり得、所望の核酸変化を発生するための多用途な技術的解決策を提供する。
【0050】
本明細書に記載されるCas含有ウイルス由来粒子、特にCas9含有ウイルス由来粒子は、gRNAの非存在下で大量に容易に生産され得、慎重に投与される品質コントロールされたVLPバッチを得ることができる。その後、特定のgRNA又は特定の修復テンプレート又はその両方によって系を相補するために、これらのCas9-VLPは、注文に応じてgRNA含有ベシクル及び/又はターゲット核酸含有ベシクルと組み合わされ得る。
【0051】
本明細で詳細に例証されているように、本明細書に記載されるCas含有ウイルス由来粒子技術は、CRISPRコミュニティに新たな可能性を提供し、特に、困難な細胞型をターゲティングする利用可能なツールボックスをアップグレードし、in/ex vivo遺伝子治療のためのCRISPRベースの革新的な治療アプローチを探求する。
【0052】
したがって、本発明者らは、(i)ウイルス構造タンパク質と(ii)Casタンパク質との切断可能な融合タンパク質を発現するパッケージング細胞を考案することによって、前記Casタンパク質をウイルス由来粒子に成功裏にパッケージングした。したがって、本発明は、1つ以上のCasタンパク質を含むウイルス由来粒子に関する。
【0053】
本明細書で使用されるウイルス由来粒子は、会合して粒子コア(その後、これは膜で包まれる)を形成するウイルス構造タンパク質の集合により形成される粒子を意味する(このウイルス由来粒子は、目的の核酸又はタンパク質をコードするいかなる核酸も含有しない)。したがって、発現核酸をトランスダクション細胞に送達するために設計された当技術分野で公知のウイルス由来粒子の大部分とは対照的に、本明細書に記載されるウイルス由来粒子は、タンパク質及び場合により非コード核酸(すなわち、少なくともCasタンパク質)をトランスダクション細胞に送達するために設計される。本明細書に詳細に記載されているように、本発明のウイルス由来粒子はまた、1つ以上の非コード核酸(この非コード核酸は、CRISPR-Cas系ガイドRNA及びターゲティング核酸を包含する)を含有し得る。明確性のために、本明細書に記載されるウイルス由来粒子は、それらを生産するために使用される細胞に由来する微量のコード核酸、例えば、前記産生細胞に由来する微量のmRNA又はプラスミドDNAを含有し得ることが起こり得る。いくつかの場面ではウイルス由来粒子内に存在し得る少量のコード核酸は、一般に、受動的にカプセル化される。しかしながら、本明細書全体を通して詳細に記載されているように、本明細書に記載されるウイルス由来粒子は、目的の任意のコード核酸の輸送に特化したものでは全くないが、対照的に、これらのウイルス由来粒子は、タンパク質(主に、Casエンドヌクレアーゼ活性を有する1つ以上のタンパク質)及びいくつかの実施態様ではさらに目的の非コード核酸(すなわち(i)1つ以上のCRISPRガイドRNA及び/又は1つ以上のターゲティング核酸)の輸送のみに特化したものであることを明確に理解すべきである。
【0054】
本明細書の実施例に示されているように、(i)ウイルス構造タンパク質と(ii)前記Casタンパク質との前記切断可能な融合タンパク質は、パッケージング細胞によって産生されるウイルス由来粒子に成功裏に組み込まれ、得られたウイルス由来粒子は、ターゲット細胞ゲノムを変化させるために、部位特異的ゲノムDNA切断及びいくつかの実施態様ではさらに相同組換えによる核酸挿入を介してCasタンパク質をターゲット細胞に成功裏に送達する。本明細書の実施例に示されているように、前記融合タンパク質はウイルス由来粒子の形成に寄与し、そこで、それはウイルス構造タンパク質と会合する。
【0055】
特に、本発明者らは、1つ以上のCRIPSR-Cas系ガイドRNAと組み合わせてこれらのウイルス由来粒子を使用することによって、特に、前記粒子内に前記1つ以上のCRIPSR-Cas系ガイドRNAをさらに含有するウイルス由来粒子を使用することによって、ゲノム変化の成功が達成されることを示した。
【0056】
実施例に示されているように、本明細書に記載されるウイルス由来粒子は、in vitro及びin vivoの両方で様々な遺伝子を破壊又は欠失して、前記様々な遺伝子がノックアウトされた生物を作製するために成功裏に使用された。
【0057】
また、実施例に示されているように、本明細書に記載されるウイルス由来粒子は、目的の核酸をターゲット細胞のゲノムにターゲット挿入して、ノックイン生物を作製するために成功裏に使用された。
【0058】
本明細書で実験的に例証されているように、本発明者らは、Cas9タンパク質とマウス白血病ウイルスのGAGタンパク質とを融合させ、この構築物を使用して、Cas9活性をレシピエント細胞に送達する機能的Cas9ロードウイルス由来粒子を生産した。
【0059】
本明細書でさらに実験的に例証されているように、本発明者らは、Cas9タンパク質とHIV-1のGAGタンパク質とを融合させ、この構築物を使用して、Cas9活性をレシピエント細胞に送達する機能的Cas9ロードウイルス由来粒子を生産した。
【0060】
また、ガイドRNAをウイルス由来粒子に成功裏に組み込んで、完全に活性なCRISPR-RNPcをウイルス様粒子内に作り出すこともでき、これがレシピエント細胞に伝播され得ることが本明細書の実施例に示されている。本発明者らの実験結果は、これらのCas含有ウイルス由来粒子の高い効率を例証している。これらのウイルス由来粒子は、明らかな毒性を伴わずに、CRISPRを異なる細胞型(初代細胞を含む)に完全に送達することができる。ヒト(hMyd88)遺伝子を切断する前記ウイルス由来粒子によって単純処理したヒトナイーブリンパ球では、ゲノムターゲット核酸の切断効率は著しく100%に近い。
【0061】
本発明は、1つ以上のCasタンパク質を含むウイルス由来粒子に関する。本明細書に記載されるウイルス由来粒子の様々な実施態様は、
図11に示されている。
【0062】
ウイルス由来粒子
本明細書で使用されるウイルス由来粒子は、1つ以上のウイルス由来タンパク質によって形成されるウイルス様粒子からなり、このウイルス由来粒子は、目的の核酸若しくはタンパク質をコードするいかなる核酸も実質的に欠くか、又はあるいは、目的の核酸若しくはタンパク質をコードするいかなる核酸も欠く。注目すべきことに、本発明のウイルス由来粒子は、目的のウイルス核酸若しくはウイルスタンパク質をコードするいかなる核酸も実質的に欠くか、又はあるいは、目的のウイルス核酸若しくはウイルスタンパク質をコードするいかなる核酸も欠く。本発明のウイルス由来粒子は、複製不能である。
【0063】
ウイルス由来粒子
限定されないが、アデノ随伴ウイルス(「AAV」);アデノウイルス;ヘルペスウイルス;レンチウイルス及びレトロウイルスを含む遺伝子治療に適切な任意のウイルスが使用され得る。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)は、AAV1、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9又はrh10を含む群において選択され得、このAAVは、ヒト被験体における使用に特に適切である。
【0064】
目的のコード核酸を一般に含有するウイルスベクター粒子を生産するための当技術分野で公知の一般的な方法もまた、目的のコード核酸を含有しない本発明のウイルス由来粒子を生産するために使用され得る。
【0065】
従来のウイルスベクター粒子は、当技術分野で周知のレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスベクター粒子を包含する。使用され得る様々なウイルスベクター粒子の総説について、当業者は、Kushnir et al. (2012, Vaccine, Vol. 31: 58-83), Zeltons (2013, Mol Biotechnol, Vol. 53: 92-107)、Ludwig et al. (2007, Curr Opin Biotechnol, Vol. 18(n°6): 537-55)及びNaskalaska et al. (2015, Vol. 64 (n°1): 3-13)を特に参照し得る。さらに、当業者は、タンパク質を細胞に送達するためにウイルス由来粒子を使用する様々な方法への言及をMaetzigらの論文(2012, Current Gene therapy, Vol. 12: 389-409)及びKaczmarczykらの論文(2011, Proc Natl Acad Sci USA, Vol. 108 (n° 41): 16998-17003)に見出す。
【0066】
一般に、本発明にしたがって使用されるウイルス由来粒子(このウイルス由来粒子は、「ウイルス様粒子」又は「VLP」とも称され得る)は、1つ以上のウイルス由来構造タンパク質及び/又は1つ以上の(one more)ウイルス由来エンベロープタンパク質によって形成される。
【0067】
本発明にしたがって使用されるウイルス由来粒子は、それが侵入した宿主細胞において複製不能である。
【0068】
好ましい実施態様では、ウイルス由来粒子は、1つ以上のレトロウイルス由来構造タンパク質及び場合により1つ以上のウイルス由来エンベロープタンパク質によって形成される。
【0069】
好ましい実施態様では、ウイルス由来構造タンパク質は、レトロウイルスgagタンパク質又はそのペプチドフラグメントである。当技術分野で公知のように、Gag及びGag/pol前駆体は、ポリタンパク質(これは、レトロウイルスプロテアーゼ(PR)によって媒介されるタンパク質分解切断を必要とする)として全長ゲノムRNAから発現されて、機能的コンフォメーションを獲得する。さらに、Gag(これは、レトロウイルス間で構造的に保存されている)は、少なくとも3つのタンパク質ユニット(マトリックスタンパク質(MA)、カプシドタンパク質(CA)及びヌクレオカプシドタンパク質(NC)から構成されるのに対して、Polは、レトロウイルスプロテアーゼ(PR)、レトロトランスクリプターゼ(RT)及びインテグラーゼ(IN)からなる。
【0070】
いくつかの実施態様では、ウイルス由来粒子は、レトロウイルスGagタンパク質を含むが、Polタンパク質を含まない。
【0071】
当技術分野で公知のように、レンチウイルスベクターを含むレトロウイルスベクターの宿主範囲は、シュードタイピングとして公知のプロセスによってエクスパンション又は変化され得る。シュードタイプレンチウイルスベクターは、他のエンベロープウイルス由来の糖タンパク質を有するウイルスベクター粒子からなる。このようなシュードタイプウイルスベクター粒子は、糖タンパク質が由来するウイルスの指向性を有する。
【0072】
いくつかの実施態様では、ウイルス由来粒子は、特定の真核細胞に対する指向性を前記ウイルス由来粒子に付与する1つ以上のウイルス構造タンパク質又はウイルスエンベロープタンパク質を含むシュードタイプウイルス由来粒子である。本明細書に記載されるシュードタイプウイルス由来粒子は、シュードタイピングに使用されるウイルスタンパク質として、VSV-Gタンパク質、麻疹ウイルスHAタンパク質、麻疹ウイルスFタンパク質、インフルエンザウイルスHAタンパク質、モロニーウイルスMLV-Aタンパク質、モロニーウイルスMLV-Eタンパク質、ヒヒ内因性レトロウイルス(BAEV)エンベロープタンパク質、エボラウイルス糖タンパク質及び泡沫状ウイルスエンベロープタンパク質、又はこれらのウイルスエンベロープタンパク質の2つ以上の組み合わせを含む群において選択されるウイルスエンベロープタンパク質を含み得る。
【0073】
ウイルスベクター粒子のシュードタイピングに関する周知の例は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)によるウイルスベクター粒子のシュードタイピングからなる。ウイルスベクター粒子のシュードタイピングについて、当業者は、Yee et al. (1994, ProcNatl Acad Sci, USA, Vol. 91: 9564-9568) Cronin et al. (2005, Curr Gene Ther, Vol. 5(n°4): 387-398)を特に参照し得る。
【0074】
目的のタンパク質をターゲット細胞に送達するためのウイルス由来粒子、より正確にはVSV-Gシュードタイプウイルス由来粒子の生産について、当業者は、Mangeot et al. (2011, Molecular Therapy, Vol. 19 (n°9): 1656-1666)を参照し得る。
【0075】
いくつかの好ましい実施態様では、本発明のウイルス由来粒子をシュードタイピングするために使用されるVSV-Gタンパク質は、配列番号:28の配列を含む核酸によってコードされ得る配列番号:23のアミノ酸配列を有する。
【0076】
いくつかの好ましい実施態様では、本発明のウイルス由来粒子をシュードタイピングするために使用されるBAEV-G(BAEV)タンパク質は、配列番号:27の配列を含む核酸によってコードされ得る配列番号:25のアミノ酸配列を有する。
【0077】
したがって、いくつかの実施態様では、ウイルス由来粒子は、ウイルスエンベロープタンパク質をさらに含み、(i)前記ウイルスエンベロープタンパク質は、ウイルス構造タンパク質と同じウイルスに由来し(例えば、ウイルスGagタンパク質と同じウイルスに由来し)、又は(ii)前記ウイルスエンベロープタンパク質は、ウイルス構造タンパク質が由来するウイルスとは異なるウイルスに由来する(例えば、ウイルスGagタンパク質が由来するウイルスとは異なるウイルスに由来する)。
【0078】
当業者によって容易に理解されるように、本発明にしたがって使用されるウイルス由来粒子は、モロニーマウス白血病ウイルス由来ベクター粒子、ウシ免疫不全ウイルス由来粒子、サル免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ネコ免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ヒト免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ウマ感染貧血ウイルス由来ベクター粒子、ヤギ関節炎脳炎ウイルス由来ベクター粒子、ヒヒ内因性ウイルス由来ベクター粒子、狂犬病ウイルス由来ベクター粒子、インフルエンザウイルス由来ベクター粒子、ノロウイルス由来ベクター粒子、呼吸器合胞体ウイルス由来ベクター粒子、A型肝炎ウイルス由来ベクター粒子、B型肝炎ウイルス由来ベクター粒子、E型肝炎ウイルス由来ベクター粒子、ニューカッスル病ウイルス由来ベクター粒子、ノーウォークウイルス由来ベクター粒子、パルボウイルス由来ベクター粒子、パピローマウイルス由来ベクター粒子、酵母レトロトランスポゾン由来ベクター粒子、麻疹ウイルス由来ベクター粒子及びバクテリオファージ由来ベクター粒子を含む群において選択され得る。
【0079】
特に、本発明にしたがって使用されるウイルス由来粒子は、レトロウイルス由来粒子である。このようなレトロウイルスは、モロニーマウス白血病ウイルス由来ベクター粒子、ウシ免疫不全ウイルス由来粒子、サル免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ネコ免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ヒト免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ウマ感染貧血ウイルス由来ベクター粒子及びヤギ関節炎脳炎ウイルス由来ベクター粒子の中から選択され得る。
【0080】
別の実施態様では、本発明にしたがって使用されるウイルス由来粒子は、レンチウイルス由来粒子である。レンチウイルスはレトロウイルス科に属し、非分裂細胞に感染することができるというユニークな能力を有する。
【0081】
このようなレンチウイルスは、ウシ免疫不全ウイルス由来粒子、サル免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ネコ免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ヒト免疫不全ウイルス由来ベクター粒子、ウマ感染貧血ウイルス由来ベクター粒子及びヤギ関節炎脳炎ウイルス由来ベクター粒子の中から選択され得る。
【0082】
モロニーマウス白血病ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Sharma et al. (1997, Proc Natl Acad Sci USA, Vol. 94: 10803+-10808)、Guibingua et al. (2002, Molecular Therapy, Vol. 5(n°5): 538-546)に開示されている方法を特に参照し得る。モロニーマウス白血病ウイルス由来(MLV由来)ベクター粒子は、MLV-A由来ベクター粒子及びMLV-E由来ベクター粒子を含む群において選択され得る。
【0083】
ウシ免疫不全ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Rasmussen et al. (1990, Virology, Vol. 178(n°2): 435-451)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0084】
VSV-GシュードタイプSIVウイルス由来粒子を含むサル免疫不全ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Mangeot et al. (2000, Journal of Virology, Vol. 71(n°18): 8307-8315)、Negre et al. (2000, Gene Therapy, Vol. 7: 1613-1623) Mangeot et al. (2004, Nucleic Acids Research, Vol. 32 (n° 12), e102)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0085】
ネコ免疫不全ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Saenz et al. (2012, Cold Spring Harb Protoc, (1): 71-76; 2012, Cold Spring Harb Protoc, (1): 124-125; 2012, Cold Spring Harb Protoc, (1): 118-123)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0086】
ヒト免疫不全ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Jalaguier et al. (2011, PlosOne, Vol. 6(n°11), e28314)、Cervera et al. (J Biotechnol, Vol. 166(n°4): 152-165)、Tang et al. (2012, Journal of Virology, Vol. 86(n°14): 7662-7676)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0087】
ウマ感染貧血ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Olsen (1998, Gene Ther, Vol. 5(n°11): 1481-1487)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0088】
ヤギ関節炎脳炎ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Mselli-Lakhal ety al. (2006, J Virol Methods, Vol. 136(n°1-2): 177-184)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0089】
ヒヒ内因性ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Girard-Gagnepain et al. (2014, Blood, Vol. 124(n°8): 1221-1231)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0090】
狂犬病ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Kang et al. (2015, Viruses, Vol. 7: 1134-1152, doi:10.3390/v7031134)、Fontana et al. (2014, Vaccine, Vol. 32(n°24): 2799-27804)又はWO2012/0618で公開されたPCT出願に開示されている方法を特に参照し得る。
【0091】
インフルエンザウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Quan et al. (2012, Virology, Vol. 430: 127-135)及びLatham et al. (2001, Journal of Virology, Vol. 75(n°13),: 6154-6155)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0092】
ノロウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Tome-Amat et al., (2014, Microbial Cell Factories, Vol. 13: 134-142)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0093】
呼吸器合胞体ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Walpita et al. (2015, PlosOne, DOI:10.1371/journal.pone.0130755)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0094】
B型肝炎ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Hong et al. (2013, Vol. 87(n°12): 6615-6624)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0095】
E型肝炎ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Li et al. (1997, Journal of Virology, Vol. 71(n°10): 7207-7213)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0096】
ニューカッスル病ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Murawski et al. (2010, Journal of Virology, Vol. 84(n°2): 1110-1123)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0097】
ノーウォークウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Herbst-Kralovetz et al. (2010, Expert Rev Vaccines, Vol. 9(n°3): 299-307)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0098】
パルボウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Ogasawara et al. (2006, In Vivo, Vol. 20: 319-324)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0099】
パピローマウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Ogasawara et al. (2006, In Vivo, Vol. 20: 319-324)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0100】
酵母レトロトランスポゾン由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Peifang et al. (1994, Clin Exp Immunol, Vol. 97(n°3): 361-366)又は米国特許第6,060,064号に開示されている方法を参照し得る。
【0101】
麻疹ウイルス由来ベクター粒子の調製について、当業者は、Brandler et al. (2008, Vol. 31(n°2-3): 271-291)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0102】
バクテリオファージ由来ベクター粒子、特にQ-βウイルス様粒子の調製について、当業者は、Brown et al. (2009, Biochemistry, Vol. 48(n°47): 11155-11157)に開示されている方法を特に参照し得る。
【0103】
本明細書で使用されるウイルス由来粒子は、Gagタンパク質を含み、最も好ましくは、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、モロニー白血病ウイルス(MLV)及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1及びHIV-2)を含む群において選択されるウイルス、特に1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)に由来するGagタンパク質を含む。
【0104】
いくつかの実施態様では、ウイルス由来粒子はまた、1つ以上のウイルスエンベロープタンパク質を含み得る。当技術分野で公知のように、1つ以上のウイルスエンベロープタンパク質の存在は、ターゲティングされる細胞に対するより特異的な指向性を前記ウイルス由来粒子に付与し得る。1つ以上のウイルスエンベロープタンパク質は、レトロウイルス由来エンベロープタンパク質、非レトロウイルスウイルス由来エンベロープタンパク質、及びこれらのウイルスエンベロープタンパク質と他のペプチド又はタンパク質とのキメラを含む群において選択され得る。目的の非レンチウイルスエンベロープ糖タンパク質の例は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)株WE54エンベロープ糖タンパク質である。これらのエンベロープ糖タンパク質は、レトロウイルス由来ベクターでトランスダクションされ得る細胞の範囲を増加させる。
【0105】
いくつかの好ましい実施態様では、ウイルス由来粒子は、ラウス肉腫ウイルス(RSV)及びモロニー白血病ウイルス(MLV)を含む群において選択されるウイルスに由来するGagタンパク質を含む。
【0106】
いくつかの好ましい実施態様では、本明細書で使用されるウイルス由来粒子は、シュードタイピングウイルスエンベロープタンパク質、最も好ましくはVSV-Gタンパク質をさらに含む。
【0107】
Casタンパク質
ウイルス由来粒子は、Casタンパク質を含む。前記Casタンパク質は、I型Casタンパク質、II型Casタンパク質及びIII型Casタンパク質を含む群において選択され得る。
【0108】
I型、II型又はIII型Casタンパク質の使用について、当業者は、Chylinski et al. (2014, Nucleic Acids Research, Vol. 42(n°10): 6091-6105)、Sinkunas et al. (2011, The EMBO Journal, Vol. 30(n°7): 1335-1342)、Aliyari et al. (2009, Immunological Reviews, Vol. 227(n°1): 176-188)、Cass et al. (Biosci Rep, doi:10.1042/BSR20150043)、Makarova et al. (2011, Biology Direct, Vol. 6: 38)、Gasiunas et al. (2012, Proc NatlAcad Sci USA, Vol. 109(n°39): E2579-E2586)、Heler et al. (2015, Nature, Vol. 519(n°7542): 199-202)、Esvelt et al. (2013, Nat Methods, Vol. 10(n°11): doi :10.138/nmeth.2681)又はChylinski et al. (2013, Biology, Vol. 10(n°5): 726-737)を参照し得る。
【0109】
いくつかの実施態様では、CASタンパク質は、Zeische et al. (2015, Cell, http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.09.038, in Press)に開示されているCpf1という名称のII型Casタンパク質からなり得る。
【0110】
好ましくは、ウイルス由来タンパク質は、II型Casタンパク質を含む。II型Casタンパク質は、最も好ましくはCas9タンパク質である。
【0111】
最も好ましくは、本明細書に記載されるウイルス由来粒子内に含まれるCasタンパク質は、Cas9タンパク質又はその相同体若しくは誘導体である。Cas9タンパク質は、Streptococcus thermophilusに由来するCas9タンパク質及びStreptococcus pyogenesに由来するCas9タンパク質、又はその相同体若しくはその誘導体を含む群において選択され得る。Streptococcus thermophilusに由来するCas9タンパク質は、Gasiunas et al. (2012, Proc NatlAcad Sci USA, Vol. 109(n°39): E2579-E2586)に特に記載されている。Streptococcus pyogenesに由来するCas9タンパク質は、Heler et al. (2015, Nature, Vol. 519(n°7542): 199-202)及びSanjana et al. (2014, Nat Methods, Vol. 11(n°18): 783-784)に特に記載されている。
【0112】
本発明にしたがって使用され得るCas9タンパク質は、天然に存在するCas9タンパク質、例えばCong et al. (2013, Science, Vol. 339: 819-823)に記載されているCas9タンパク質の相同体、変異体又は誘導体であるタンパク質を包含する。
【0113】
Cas9タンパク質及びCas9タンパク質をコードするベクターは、Sigma-Aldrich Companyから市販されている。本明細書に記載されるウイルス由来粒子において使用され得るCas9タンパク質及びその変異体はまた、WO2013/163628、WO2014/093595、WO2015/089247及びWO2015/089486で公開されたPCT出願に記載されている。
【0114】
いくつかの実施態様では、Cas9タンパク質は、それらの形成中にウイルス由来粒子に組み込まれるように産生される。例示的には、Cas9は、ウイルス由来粒子産生細胞に含まれる発現ベクターに挿入された核酸配列によってコードされ得る。好ましい実施態様では、Cas9コード核酸は、産生細胞におけるその過剰発現を可能にする調節配列のコントロール下に配置される。いくつかの実施態様では、Cas9タンパク質は、配列番号:32の核酸配列によってコードされる配列番号:31のタンパク質からなる。
【0115】
本明細書に記載されるウイルス由来粒子のいくつかの実施態様では、Casタンパク質は、(i)ウイルス構造タンパク質と(ii)前記Casタンパク質との融合タンパク質として、前記ウイルス由来粒子内で産生及び統合される。これらの実施態様のいくつかでは、Casタンパク質は、GAG-Cas9融合タンパク質として、前記ウイルス由来粒子内で産生及び統合される。本発明者らによって確認されたように、このような融合タンパク質は、得られるウイルス由来粒子内に成功裏に統合され、Cas部分は完全に活性である(すなわち、Cas部分は、そのエンドヌクレアーゼ活性を有する)。これらの実施態様によれば、埋伏されたCasタンパク質は、ウイルス由来粒子の侵入後にターゲット細胞内に放出される。
【0116】
他の実施態様では、ウイルス由来粒子に含まれるCasタンパク質は、最初に、(i)ウイルス構造タンパク質と(ii)Casタンパク質との切断可能な融合タンパク質として産生される。このような切断可能な融合タンパク質の例示は、本明細書の実施例に記載されている切断可能なGAG-Cas9タンパク質である。これらの他の実施態様によれば、前記切断可能な融合タンパク質は、産生細胞によるその産生時点で、得られるウイルス由来粒子内に統合される。次いで、前記融合タンパク質の一部又は全部が最終ウイルス由来粒子中で切断されて、(i)前記切断可能な融合タンパク質が切断されていないウイルス由来粒子の一部と、(ii)前記切断可能な融合タンパク質の少なくとも一部が切断されて、Casタンパク質部分がウイルス由来粒子内に放出されたウイルス由来粒子の一部と、(iii)前記切断可能な融合タンパク質の全部又はほぼ全部が切断されて、Casタンパク質部分の全部又はほぼ全部がウイルス由来粒子内に放出されたウイルス由来粒子の一部とを含むウイルス由来粒子の集団がもたらされ得る。いくつかの好ましい実施態様では、切断可能なGAG-Cas9タンパク質は、配列番号:26の配列によってコードされ得る配列番号:22のアミノ酸配列を有するGAG-Cas9タンパク質である。他の実施態様では、それは、配列番号:34の核酸配列によってコードされる切断可能なGAG-Cas9タンパク質として使用され得る(本明細書では「KLAP229」と称され得る)。
【0117】
したがって、本発明にしたがって使用され得るウイルス由来粒子では、Casタンパク質、典型的にはCas9タンパク質は、(i)切断不可能な融合タンパク質、典型的には切断不可能なGag-Cas9融合タンパク質として、(ii)切断可能な融合タンパク質、典型的には切断可能なGag-Cas9融合タンパク質として、(iii)Casタンパク質、典型的には前記融合タンパク質のタンパク質分解切断から生じるCas9タンパク質として、又は(iv)融合タンパク質及びCasタンパク質の両方として存在し得る。本明細書で使用されるウイルス由来粒子は、(i)ウイルス構造タンパク質と(ii)Casタンパク質とのタンパク質、典型的には切断可能なGag-Cas9融合タンパク質を特に発現するパッケージング細胞において産生され、これは、(i)ウイルス構造タンパク質と(ii)Casタンパク質との切断可能な融合タンパク質、典型的には切断可能なGag-Cas9融合タンパク質を包含することを理解すべきである。本明細書の実施例に示されているように、切断可能な融合タンパク質は、ウイルス由来粒子にそのまま組み込まれ、次いで、ウイルス由来粒子中で少なくとも部分的に切断されて、ウイルス由来粒子中で機能的なCasタンパク質が放出される。しかしながら、Casタンパク質は、最初に、前記切断可能な融合タンパク質の形態でウイルス由来粒子に組み込まれるので、Casタンパク質が切断可能な融合タンパク質の形態で部分的に存在し、切断可能な融合タンパク質の切断から生じる遊離Casタンパク質として部分的に存在する多くの中間状態が存在する。
【0118】
好ましい実施態様では、融合タンパク質は、ウイルス構造タンパク質部分とCasタンパク質部分との間に、典型的にはGagタンパク質部分とCas9タンパク質部分との間に位置するタンパク質分解切断部位を含む。プロテアーゼ部位とも称され得るタンパク質分解部位は、当業者に周知である。切断可能な融合タンパク質に含まれ得るプロテアーゼ部位は、トリプシン(EC3.4.21.4)、キモトリプシン(EC3.4.21.1)、エンドプロテイナーゼGlu C(EC3.4.21.19)、エンドプロテイナーゼLys-C(EC3.4.21.50)、ペプシン(EC3.4.23.1)、エラスターゼ(EC3.4.21.36)及びカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.1)を含む群において選択されるプロテアーゼによって切断可能な部位であり得る。
【0119】
いくつかの実施態様では、プロテアーゼ切断部位は、配列番号:30を含む配列によってコードされ得るアミノ酸配列SSLYPALTP(配列番号:29)を含む群において選択される。
【0120】
Gagと目的のタンパク質とのプロテアーゼ切断可能な融合タンパク質、及びこのような融合タンパク質を発現させるためのベクターは、当業者が参照し得るVoelkel et al. (2010, Proc Natl Acad Sci USA, Vol. 107(n°17): 7805-7810)に特に記載されている。
【0121】
本明細書の実施例に記載されているように、いくつかの実施態様のウイルス由来粒子は、Gag-Pro-Polウイルスタンパク質を発現するパッケージング細胞において形成される。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、本発明者らは、これらの実施態様では、Proタンパク質(すなわち、ウイルスプロテアーゼ)がウイルス由来粒子中に放出され、融合タンパク質、典型的にはGag Cas融合タンパク質、特にGag-Cas9融合タンパク質を切断して、遊離Casタンパク質、特に遊離Cas9タンパク質が生成されると考える。いくつかの好ましい実施態様では、Gag-Pro-Polタンパク質は、配列番号:24のアミノ酸配列を有する。
【0122】
しかしながら、本明細書の実施例でも例証されているように、ウイルス由来粒子がいかなるウイルスプロテアーゼも欠く実施態様では、例えば、ウイルス構造タンパク質(例えば、Gag)及び場合により1つ以上のウイルスエンベロープタンパク質(例えば、VSV-G及び/又はBAEV-G)を発現するパッケージング細胞中でウイルス由来粒子が形成される場合、機能的Casタンパク質、典型的には機能的Cas9タンパク質は、ターゲット細胞中に放出される。
【0123】
ガイドRNA
ターゲット核酸において部位特異的変化を発生させるために、本明細書に記載されるウイルス由来粒子を使用する場合、1つ以上のCRISPR-CasガイドRNAが必要とされる。
【0124】
「ガイドRNA」又は「gRNA」とも称され得るCRISPR-CasガイドRNAの数は、探索されるターゲット核酸に対する変化の種類に応じて変動し得る。ターゲット核酸において単一のDNA切断事象を発生させるために、単一ガイドRNAが、ウイルス由来粒子と組み合わせて使用され得る。ターゲット核酸において2つ以上の切断事象を発生させるために、又はあるいは複数のターゲット核酸において切断事象を発生させるために、2つ以上のガイドRNAが、ウイルス由来粒子と組み合わせて使用され得る。
【0125】
Casタンパク質と組み合わせるとターゲット核酸の切断を発生させるガイドRNAを設計するための方法は、当業者に周知である。当技術分野で周知のように、ガイドRNAは、ターゲット核酸と十分な相補性を有するポリヌクレオチドであって、前記ターゲット核酸とハイブリダイゼーションして、前記ターゲット核酸に対するCRISPR複合体の配列特異的結合を誘導するポリヌクレオチドである。
【0126】
ガイドRNAを設計するために、様々なツールが当業者に容易に利用可能であり、Company GenScript (United States)によってGenCRISPR(商標)gRNA constructsという名称で販売されているツールが挙げられる。GenCRISPR(商標)gRNA constructs collectionは、ヒトゲノム中の各遺伝子 約20,000個を特異的にターゲティングする約6つのガイドRNAを含む。ガイドRNAはまた、Ran et al. (2013, Cell, Vol. 154: 1380-1389)、Mail et al. (2013, Science, Vol. 339: 823-826)、Wang et al. (2013, Cell, Vol. 153: 910-918)、Jao et al. (2013, Proc Natl Acad Sic USA, Vol. 110: 13904-13909)、Cong et al. (2013, Science, Vol. 339: 819-823)、Shalem et al. (2014, Science, Vol. 343: 84-87)、Maeder et al. (2013, Nat Methods; Vol. 10: 977-979)、Qi et al. (2013, Cell, Vol. 152: 1173-1183)、Farboud et al. (2015, Genetics, doi 10.1534/genetics.115.175166)又はMa et al. (2013, BioMed research International, Vol. 2013, Article ID 270805, doi.org/10.1155/2013/270805)の教示にしたがって設計され得る。
【0127】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載されるウイルス由来粒子は、1つ以上のCRISPR-CasガイドRNAをさらに含む。各ガイドRNAは、ターゲット核酸に含まれる特定のターゲット配列とハイブリダイゼーションする。
【0128】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載されるウイルス由来粒子は、単一ガイドRNAを含む。ウイルス由来粒子のこのような実施態様は、ターゲット核酸の所望の位置において単一切断を発生させることを可能にする。
【0129】
いくつかの他の実施態様では、本明細書に記載されるウイルス由来粒子は、2つの異なるガイドRNAを含み、各ガイドRNAは、同じターゲット核酸に含まれる特定のターゲット配列とハイブリダイゼーションして、2つの異なる各ガイドRNAによって認識される部位において2つの切断事象を発生させる。このような実施態様は、ターゲット核酸内の2つの切断部位によってフレーミングされたポリヌクレオチドの欠失を導入することを可能にする。目的のテンプレート核酸がさらに追加される場合、このような実施態様は、核酸ターゲット中の目的の所望の外因性核酸をこれら2つの切断部位間に挿入することを可能にする。
【0130】
いくつかの好ましい実施態様では、1つ以上のガイドRNAが、ウイルス由来粒子内に含まれる。典型的には、ウイルス由来粒子は、(i)必要なウイルス構造タンパク質(例えば、Gag)、(ii)1つ以上のウイルスエンベロープタンパク質(例えば、VSV-G及び/又はBAEV-G)、(iii)Cas融合タンパク質(例えば、Gag-Cas9融合タンパク質)及び(iv)1つ以上のCRISPR-CasガイドRNAを発現するパッケージング細胞によって産生される。これらの実施態様によれば、1つ以上のガイドRNAがウイルス由来粒子内に組み込まれるが、これらはパッケージング細胞によって産生される。ウイルス由来粒子がCasタンパク質、特にCas9タンパク質及び1つ以上のガイドRNAを含むこれらの実施態様では、前記ウイルス由来粒子は、Casタンパク質とガイドRNAとの複合体であるCRISPR-Casリボヌクレオタンパク質複合体を含む。
【0131】
これらの実施態様のいくつかによれば、前記ウイルス由来粒子は、Casタンパク質とガイドRNAとの1種類以上の複合体を含み、各CRISPR-Cas複合体は、単一ガイドRNAと複合体形成した単一Casタンパク質を含む。ターゲット核酸の複数の切断が要求されるこれらの実施態様のいくつかでは、前記ウイルス由来粒子は、同じ数のCRISPR-Cas複合体種を含み、各種類のCRIPSR-Cas複合体は、対応するガイドRNAがハイブリダイゼーションするターゲット核酸の所望の位置においてDNA切断を発生させるために特異的である。
【0132】
さらに好ましい実施態様では、1つ以上のガイドRNAは、最初に、前記1つ以上のガイドRNAを発現する特定のパッケージング細胞であって、他のウイルス粒子又は他のウイルスベシクル(又は他のウイルス様粒子又はVLP)の産生に必要なウイルスタンパク質も発現する特定のパッケージング細胞によって産生される。次いで、ガイドRNA含有ウイルス粒子は、Casタンパク質を含むウイルス由来粒子と接触して、Casタンパク質と、前記他のウイルス粒子に最初に含まれていた1つ以上のガイドRNAとの両方を含む最終ウイルス由来粒子が相補によって生成される。相補によるこれらのウイルス由来粒子の取得について、当業者は、Abe et al. (1998, Journal of Virology, Vol. 72(n°8): 6356-6361)を特に参照し得る。例示的には、本明細書に記載されるCasタンパク質を含むGagベースのウイルス由来粒子は、1つ以上のCRSIPS-CasガイドRNAを含むVSV-Gベースのウイルス粒子と接触して、前記Casタンパク質と、前記1つ以上のCRISPR-CasガイドRNAとを含む最終ウイルス由来粒子であって、GagベースのVSV-GシュードタイプVLPからなる最終ウイルス由来粒子が得られ得る。
【0133】
いくつかの他の実施態様では、前記1つ以上のガイドRNAの全部の一部(part of all)はウイルス由来粒子内に含まれないが、代わりに、これらのウイルス由来粒子と複合体形成する。これらの他の実施態様によれば、ウイルス由来粒子と複合体形成したガイドRNAもまた、これらのガイドRNAが複合体形成したウイルス由来粒子と共にターゲット細胞に侵入する。
【0134】
ターゲティング核酸
本明細書に記載されるウイルス由来粒子を使用することによってターゲット核酸を変化させる目的のために、特に、相同組換えによるターゲット核酸の変化が要求される場合、これらのウイルス様粒子と組み合わせてターゲティング核酸をさらに使用する。
【0135】
相同組換えによってそれらの配列を変化させる目的で核酸をターゲティングするための方法は、当業者に周知である。典型的には、相同修復ドナー核酸は、(i)ターゲットゲノム配列の第1のローカスに相同な第1の配列、及び(ii)ゲノム配列の第2のローカスに相同な第2の配列を含む。一般に、相同組換えによってターゲット核酸を変化させる目的のために、前記第1の配列(i)及び前記第2の配列(ii)は、CRISPR-Cas/ガイドRNA複合体によって作り出される切断部位の両側に位置する。
【0136】
CRISPR-Cas系を使用することによって相同組換えを介してターゲット核酸の変化を実施するための方法は、当技術分野で周知である。当業者は、Jinek et al. (2013, eLife, Vol.2: e00471, doi: 10.754/eLife.00471)及びLin et al. (2014, eLife, Vol. 3: e04766, DOI:10.7554/eLife.04766)を特に参照し得る。
【0137】
典型的には、相同組換えテンプレート核酸(これは、本明細書ではテンプレート核酸とも称され得る)は、それぞれその5’末端及び3’末端において、ターゲット核酸にハイブリダイゼーションする配列に隣接する可変長の外因性配列を含む。ゲノムに挿入される外因性配列が50nt長未満である場合、相同組換えアームとも称される隣接ハイブリダイゼーション配列は、20~50ヌクレオチド長の範囲であるべきである。挿入すべき外因性配列が100nt超である場合、相同組換えアームは、かなり長いもの(約800bp)であるべきである。
【0138】
ターゲティング核酸又はテンプレート核酸は、任意の適切な長さ、例えば約10、15、20、25、50、75、100、150、200、500、1000ヌクレオチド長又はそれ以上を有し得る。最適にアライメントされた場合、ターゲティング核酸は、ターゲット配列の1個以上のヌクレオチド、例えば約1個超、5個、10個、15個、20個又はそれ以上のヌクレオチドと重複し得る。
【0139】
当業者の一般的な知識に基づいて、相同組換えの目的でターゲティング核酸を設計するための事実上唯一の要件は、ターゲット核酸の核酸配列に関する予備知識である。
【0140】
いくつかの実施態様では、ターゲティング核酸は、本明細書に記載されるウイルス由来粒子内に含まれる。これらの実施態様によれば、Casタンパク質と、1つ以上のガイドRNAと、1つ以上のターゲティング核酸とを含むウイルス由来粒子は、好ましくは、前記Casタンパク質と、必要なウイルスタンパク質と、必要なガイドRNAと、必要なターゲティング核酸とを発現するパッケージング細胞によって産生される。
【0141】
いくつかの他の実施態様では、ターゲティング核酸は、ウイルス由来粒子内に含まれないが、ウイルス由来粒子と複合体形成する。
【0142】
核酸発現ベクター
本明細書の他の箇所で既に述べられているように、本明細書に記載されるウイルス由来粒子は、必要なタンパク質(すなわち、少なくとも融合ウイルス構造タンパク質/Casタンパク質及びウイルス粒子(これは、ウイルス様粒子又はVLPとも称され得る)を形成するために必要な1つ以上のタンパク質)を発現する細胞(本明細書では、パッケージング細胞とも呼ばれる)中で産生される。好ましい実施態様では、パッケージング細胞はまた、1つ以上のCRISPR-CasガイドRNA及び必要に応じてさらにターゲティング核酸(テンプレート核酸とも称される)を発現する。
【0143】
本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、所望のコード配列と、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切な核酸配列とを含有するリコンビナントDNA分子を指す。真核細胞における発現に必要な核酸配列は、一般に、プロモーターと、エンハンサーと、終結シグナル及びポリアデニル化シグナルとを含む。いくつかの実施態様では、「発現ベクター」は、ウイルスエンベロープタンパク質のシュードタイピングを可能にするために使用される。
【0144】
一般に、必要なタンパク質又は核酸を発現させるためのベクターは、パッケージング細胞として使用される所望の宿主細胞内で核酸配列を発現させるために適切なベクターである。好ましくは、パッケージング細胞は、哺乳動物細胞である。特に、必要なタンパク質又は核酸を発現させるためのベクターは、それらの発現が要求されるパッケージング細胞において機能的な調節エレメントのコントロール下に配置されたオープンリーディングフレームを含む。特に、これらのベクターは、発現させるべき各タンパク質又は核酸について、適切なプロモーター配列のコントロール下に配置されたオープンリーディングフレーム及びポリアデニル化配列を含む。
【0145】
パッケージング細胞株は、粒子集合に必要なウイルスタンパク質を提供する(Markowitz et al., 1988, J. Virol., Vol. 62 :1120)。
【0146】
当技術分野で周知のように、核酸ベクターは、様々な技術(例えば、リン酸カルシウム共沈、リポフェクション、エレクトロポレーション)のいずれかによってパッケージング細胞に導入される。パッケージング細胞によって産生されるウイルスタンパク質は、ウイルス由来粒子へのウイルスタンパク質及びCasタンパク質の挿入を媒介し、次いで、これらが培養上清に放出される。
【0147】
使用される核酸ベクターは、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)に由来し得る。本明細書に記載されるウイルス由来粒子を生産するために適切なレトロウイルスベクターは、(1)パッケージングベクター及びエンベロープベクターを宿主細胞にトランスフェクションして、パッケージングベクターRNAを本質的に含まないウイルス由来粒子を産生するパッケージング細胞株を形成すること、並びに(2)Casタンパク質及び場合によりさらにCRISPRガイドRNAをウイルス由来粒子にパッケージングし、最終的にはターゲティング核酸をウイルス由来粒子にパッケージングすることを可能にする。
【0148】
本発明にしたがって使用するためのベクター及びパッケージング細胞は、本明細書の実施例で例証されている。
【0149】
例示的には、ウイルス構造タンパク質/Casタンパク質、例えばGag-Cas9タンパク質を発現させるためのベクターは、Voelkel et al. (2010, Proc Natl Acad Sci USA, Vol. 107: 7805-7810)に教示されているように当業者によって調製され得る。
【0150】
例示的には、ウイルス構造タンパク質、例えばGagタンパク質又はGag-Pro-Pol融合タンパク質及び場合によりさらにウイルスエンベロープタンパク質、例えばVSV-Gタンパク質又はBAEV-Gタンパク質を発現させるためのベクターは、Negre et al. (2000, Gene Ther, Vol. 7: 1613-1623)及びYee et al. (1994, Methids Cell Biol, Vol. 43 PtA: 99-112)の教示にしたがって当業者によって調製され得る。
【0151】
例示的には、CRISPRガイドRNAを発現させるためのベクターは、Kieusseian et al. (2006, Blood, Vol. 107: 492-500)に教示されているように調製され得る。
【0152】
パッケージング細胞
宿主細胞は、目的のベクターが導入されてそれが複製され得る細胞であり、発現ベクターの場合には、1つ以上のベクターに基づく遺伝子が発現され得る細胞である。
【0153】
当技術分野で公知の任意の適切な許容細胞又はパッケージング細胞は、本明細書に記載されるウイルス由来粒子の生産において用いられ得る。哺乳動物細胞又は昆虫細胞が好ましい。本発明の実施においてウイルス由来粒子の生産に有用な細胞の例としては、例えば、ヒト細胞株、例えばVERO、WI38、MRC5、A549、HEK293、HEK293T、B-50又は任意の他のHeLa細胞、HepG2、Saos-2、HuH7及びHT1080細胞株が挙げられる。
【0154】
パッケージング細胞として使用するための例示的な細胞株は、昆虫細胞株である。AAVの複製を可能にする任意の昆虫細胞であって、培養で維持され得る任意の昆虫細胞が、本発明にしたがって使用され得る。例としては、Spodoptera frugiperda、例えばSf9又はSf21細胞株、Drosophila種細胞株又は蚊細胞株、例えばAedes albopictus由来細胞株が挙げられる。好ましい昆虫細胞株は、Spodoptera frugiperda Sf9細胞株である。異種ポリペプチドの発現のための昆虫細胞の使用、核酸をこのような細胞に導入する方法、及び培養でこのような細胞を維持する方法に関する教示について、以下の参考文献が本明細書に組み込まれる:Methods in Molecular Biology, ed. Richard, Humana Press, NJ (1995 ); O’Reilly et al., Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual, Oxford Univ. Press (1994 ); Samulski et al., J. Vir. 63:3822-8 (1989 ); Kajigaya et al., Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 88: 4646-50 (1991 ); Ruffing et al., J. Vir. 66:6922-30 (1992 ); Kimbauer et al., Vir. 219:37-44 (1996 ); Zhao et al., Vir. 272:382-93 (2000 );及びSamulski et al., U.S. Pat. No. 6,204,059。
【0155】
既に組み込まれた前述の機能のいずれか1つ以上を有する細胞、例えば、染色体外に組み込まれた若しくは細胞の染色体DNAに統合された1つ以上のベクター機能を有する細胞株、染色体外に組み込まれた若しくは細胞の染色体DNAに統合された1つ以上のパッケージング機能を有する細胞株、又は染色体外に組み込まれた若しくは細胞の染色体DNAに統合されたヘルパー機能を有する細胞株が供給され得る。パッケージング細胞株は、1つ以上の核酸ベクターによってトランスフェクションされた適切な宿主細胞であって、達成可能な条件下で、Casタンパク質及びいくつかの実施態様ではさらに1つ以上のCRIPSRガイドRNA及び最終的にはさらにターゲティング核酸を含むウイルス由来粒子を産生する適切な宿主細胞である。
【0156】
本明細書で使用される「パッケージング細胞株」という用語は、典型的には、ウイルス構造タンパク質(例えば、gag、pol及びenv)を発現するが、パッケージングシグナルを含有しない細胞株に関して使用される。例えば、細胞株は、そのゲノム内の1つの染色体部位において、機能的psi+配列を欠く5’-LTR-gag-pol-3’-LTRフラグメント(Δ-psiと呼ばれる)を有し、別の染色体部位において5’-LTR-env-3’-LTRフラグメント(これもΔ-psiである)を有するように遺伝子操作されている。
【0157】
以下のものを包含するいくつかの細胞型が使用され得る:
a)臨床用途において、リコンビナントレトロウイルスを産生するパッケージング細胞として現在広く使用されているNIH-3T3マウス細胞(Takahara et al., Journal of Virology, (June 1992), 66 (6) 3725-32)。
b)NIH-3T3 TK細胞を含むTK-細胞株は既に記載されている(F. Wagner et al., EMBO Journal (1985), Vol. 4 (n°3): 663-666);これらの細胞は、HATなどの選択培地で培養すると死滅し得る。キナーゼチミジン機能(例えば、HSV1-TKウイルス由来のもの)についてそれらが相補されると、それらは選択培地中で成長し得る;したがって、このような株は、選択遺伝子としてHSV1-TK遺伝子を使用する可能性を提供する。HSV1のチミジンキナーゼ又はその機能誘導体の1つをコードする遺伝子はまた、ガンシクロビル又はアシクロビルを細胞にとって細胞毒性の薬物にトランスフォーメーションするプロドラッグとしての導入遺伝子として広く使用されているので、それは、例えばガン性細胞の選択的細胞破壊に適用され得る(例えば、国際公開公報第95/22617号を参照のこと)。
【0158】
例示的には、パッケージング細胞は、本明細書の実施例に示されているように、周知のHEK293T細胞株であり得る。
【0159】
本発明はまた、本明細書に記載されるウイルス粒子を生産するための細胞株であって、
-前記ウイルス由来粒子を形成するために必要なタンパク質をコードする1つ以上の核酸、及び
-ウイルス構造タンパク質-Cas融合タンパク質をコードする発現カセットを含む核酸
を含む細胞株に関する。
【0160】
いくつかの実施態様では、前記ウイルス由来粒子を形成するために必要なタンパク質をコードする核酸は、Gagタンパク質などのウイルス構造タンパク質をコードする核酸を包含する。
【0161】
いくつかの実施態様では、前記細胞株はまた、ウイルスエンベロープタンパク質、例えばVSV-Gタンパク質及びBAEV-Gタンパク質を含む群において選択されるウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含む。
【0162】
いくつかの実施態様では、前記細胞株は、1つ以上のCRISPRガイドRNAをコードする核酸をさらに含む。
【0163】
いくつかの実施態様では、前記細胞株は、1つ以上のターゲティング核酸をコードする核酸をさらに含む。
【0164】
組成物及びキット
本発明は、本明細書に記載される治療(in vivo又はin vivo)において使用するために適切なウイルス由来粒子組成物及びキットを提供する。
【0165】
いくつかの実施態様では、前記組成物は、Casタンパク質、特にCas9タンパク質を含むウイルス由来粒子を含み、ガイドRNA及びターゲティング核酸を欠く。これらの実施態様では、gRNA又はターゲティング核酸は、前記ウイルス由来粒子内にある核酸として、又は前記ウイルス由来粒子と複合体形成した核酸として、ウイルス由来粒子に存在しない。
【0166】
本発明は、真核細胞におけるターゲット核酸を変化させるための組成物であって、少なくとも1つの本明細書に記載されるウイルス由来粒子を含む組成物に関する。
【0167】
いくつかの実施態様では、前記組成物は、1つ以上のCRISPR-Cas系ガイドRNAをさらに含む。
【0168】
これらの実施態様のいくつかでは、前記1つ以上のCRISPR-Cas系ガイドRNAは、ウイルス由来粒子に含まれる。
【0169】
いくつかの他の実施態様では、前記1つ以上のCRISPR-Cas系ガイドRNAは、前記ウイルス由来粒子と複合している。
【0170】
組成物のいくつかの実施態様では、前記組成物は、(ii)gRNA及び/又はターゲティング核酸を含むベシクルと組み合わせて(i)Cas含有ウイルス由来粒子を含む。これらの実施態様のいくつかによれば、組成物中に存在する各gRNAは、特定の種類のベシクルに含まれる。これらの実施態様のいくつかの他のものによれば、全てのgRNAを含む1つを超えるgRNAは、特定の種類のベシクルに含まれる。これらの実施態様のいくつかでは、ターゲティング核酸は、特定の種類のベシクルに含まれる。これらの実施態様のいくつかの他のものでは、1つを超えるターゲティング核酸が組成物中に存在する場合、全てのターゲット核酸は全て、特定の種類のベシクルに含まれる。またさらなる実施態様では、組成物中に存在する全gRNA及びターゲティング核酸は全て、同じベシクルに含まれる。
【0171】
本明細書で使用される「特定の種類」のベシクルは、ベシクルそれ自体の構造的特徴にかかわらず、gRNA及び/又はターゲティング核酸のその特定の内容物に関して一義的に定義される。
【0172】
最も好ましくは、前記ベシクルは、ウイルスタンパク質から構成される。いくつかの実施態様では、前記ベシクルは、本明細書に記載されるCasタンパク質を含有するウイルス由来粒子と同じウイルスタンパク質の構造的特徴を有する。いくつかの他の実施態様では、前記ベシクルは、例えば、VSV-G又はBAEV-Gなどのウイルスエンベロープタンパク質から主に又は完全に構成される。
【0173】
本発明の組成物中に存在する場合、CAS含有ウイルス由来粒子並びにgRNA及び/又はターゲティング核酸含有ベシクルはトランスに相補して、ターゲット細胞において所望の核酸変化を効率的に発生させる。別の技術的文脈におけるこのようなトランス相補性は、Mangeot et al. (2011, Ther J am Soc Gene Ther, Vol. 19: 1656-1666)に教示されている。
【0174】
本明細書に記載される組成物は、それを必要とする哺乳動物(これは、それを必要とする非ヒト哺乳動物及びヒト個体を含む)における遺伝子治療の方法を実施する目的で使用される医薬組成物を包含する。
【0175】
本発明の組成物は、獣医用途のための動物(例えば、家畜、例えばウシ、ブタなど)及び他の非ヒト哺乳動物被験体への、並びにヒト被験体への送達のために製剤化され得る。ウイルス由来粒子は、遺伝子移入及び遺伝子治療用途において使用するための生理学的に許容し得る担体を用いて製剤化され得る。
【0176】
いくつかの実施態様では、前記組成物は、1つ以上のトランスダクションヘルパー化合物をさらに含む。Zuris et al. (2015, Nat Biotechnol, Vol. 33(n°1): 73-80)に特に記載されているように、トランスダクションヘルパー化合物は、好ましくは、カチオン性ポリマーを含む群において選択される。トランスダクションヘルパー化合物は、ポリブレン(これは、臭化ヘキサジメトリンとも称され得る)、硫酸プロタミン、12-ミリスタート13-アセタート(ホルボールミリスチン酸アセタート又はPMAとも称され得る)(Johnston et al., 2014, Gene Ther, Vol. 21(12): 1008-1020に記載されている)、vectofusin (Fenard et al., 2013, Molecular Therapy Nucleic Acids, Vol. 2: e90に記載されている)、ポロキサマーP338(Anastasov et al., 2016, Lentiviral vectors and exosomes as gene and protein delivery tools, in Methods in Molecular Biology, Vol. 1448: 49-61に記載されている)、RetroNectin(登録商標)試薬(Clontech Laboratories Inc.によって市販されている)、Viral Plus(登録商標)トランスダクションエンハンサー(Applied Biological Materials Inc.によって市販されている)、TransPlus(登録商標)ウイルストランスダクションエンハンサー(Clinisciencesによって市販されている)、Lentiboost(登録商標)(Sirion Biotechによって市販されている)又はExpressMag(登録商標)トランスダクションシステム(Sigma-Aldrichによって市販されている)を含む群において選択され得る。本明細書の実施例に示されているように、前記カチオントランスダクションヘルパー化合物は、ポリブレンからなり得る。
【0177】
ウイルス由来粒子は、1つ以上の生理学的に許容し得る担体又は賦形剤を使用して従来の方法で製剤化され得る。ウイルス由来粒子は、注射による、例えばボーラス注射又は持続注入による非経口投与のために製剤化され得る。注射のための製剤は、さらなる保存剤と共に単位剤形で、例えばアンプルで又は複数回投与容器で提示され得る。ウイルス由来粒子組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクルの懸濁液、溶液又はエマルジョンなどの形態をとり得、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有し得る。ウイルス由来粒子組成物の液体調製物は、薬学的に許容し得る添加剤、例えば懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は硬化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分画植物油);及び保存剤(例えば、メチル又はプロピル-p-ヒドロキシベンゾアート又はソルビン酸)を用いて従来の手段によって調製され得る。調製物はまた、緩衝塩を含有し得る。あるいは、組成物は、使用前に適切なビヒクル、例えばパイロジェンフリー滅菌水で構成するための粉末形態であり得る。
【0178】
ターゲット細胞に、ターゲット組織若しくは器官に、又はターゲット生物、特にターゲット哺乳動物(これは、ターゲット非ヒト哺乳動物及びヒト個体を包含する)に含まれるターゲット核酸において所望のゲノム変化を発生させるために、本発明のウイルス由来粒子組成物は、治療有効用量で被験体に投与され得る。治療有効用量は、ターゲット核酸における所望のゲノム変化事象の発生によって引き起こされる症候の改善をもたらすために十分な医薬組成物の量を指す。
【0179】
一実施態様では、本発明のウイルス由来粒子組成物の量は、約0.1~5マイクログラム(μg)/キログラム(kg)の範囲内の用量単位で投与される。この目的のために、体重 70kgの平均的な被験体を処置するために処置するために、本発明のウイルス由来粒子組成物は、約7mg~約350mgの範囲内の用量で製剤化され得る。投与され得る本発明のウイルス由来粒子組成物の量は、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg又は5.0mg/kgを含む群において選択され得る。特に体重 70kgの平均的な被験体を処置するために、組成物の単位投与量中のウイルス由来粒子の用量は、7mg、8mg、9mg、10mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg又は750mgを含む群において選択され得る。これらの用量は、1回又は反復、例えば毎日、隔日、毎週、隔週又は毎月投与され得る。いくつかの実施態様では、ウイルス由来粒子組成物は、1回用量で、又は2回用量で、又は3回用量で、又は4回用量で、又は5回用量で、又は6回用量若しくはそれ以上で被験体に投与され得る。投与量間の間隔は、その必要性があるという開業医の決定に基づいて決定され得る。
【0180】
ウイルス由来粒子組成物は、所望により、有効成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得るパック又はディスペンサーデバイスで提示され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属又はプラスチックホイルを含み得る。パック又はディスペンサーデバイスは、投与説明書を伴い得る。
【0181】
ウイルス由来粒子組成物は、液体又は固体(例えば、凍結乾燥)形態であり得る。
【0182】
キット
本発明はさらに、本明細書に記載されるウイルス由来粒子を調製するためのキットに関する。
【0183】
本発明は、真核細胞におけるターゲット核酸を変化させるためのウイルス由来粒子を調製するためのキットであって、
-GAG-Cas融合タンパク質をコードする発現カセットを含む核酸、及び
-ウイルス様集合タンパク質をコードする1つ以上の発現カセットを含む核酸
を含むキットに関する。
【0184】
いくつかの実施態様では、前記キットは、シュードタイピングウイルスエンベロープタンパク質をコードする発現カセットを含む核酸をさらに含む。
【0185】
前記キットのいくつかの実施態様では、ウイルス由来集合タンパク質は、ウイルス由来Gagタンパク質である。
【0186】
いくつかの実施態様では、前記Gagタンパク質は、GAG-PRO-POLポリタンパク質をコードする発現カセット、及びGAGタンパク質をコードする発現カセットを含む群において選択される発現カセットによってコードされる。
【0187】
いくつかの実施態様では、前記キットは、CRISPR-Cas系ガイドRNAをコードする1つ以上の核酸をさらに含む。
【0188】
前記キットの特定の実施態様では、前記核酸は、前記真核細胞へのそのトランスフェクションの結果として真核細胞において局在する。これらの実施態様のいくつかでは、前記核酸は、前記真核細胞(これらの細胞は、本明細書ではパッケージング細胞とも称され得る)において核酸ベクターの形態である。これらの実施態様のいくつかの他のものでは、これらの核酸の一部又は全部は、これらの真核細胞(これらの細胞は、本明細書ではパッケージング細胞とも称され得る)のゲノムに統合される。
【0189】
したがって、本発明のキットのいくつかの実施態様では、前記真核細胞は、パッケージング細胞株からなる。
【0190】
本発明のキットは、場合により、それに含まれる個々の各組成物又はエレメントのための異なる容器(例えば、バイアル、アンプル、試験管、フラスコ又はボトル)を含み得る。キットは、個々の成分の製剤化のためのさらなる試薬、例えばバッファー、希釈剤などを含有し得る。各成分は、一般に、その各容器に分注されるものとして、又は濃縮形態で提供されるものとして適切であろう。
【0191】
本明細書に記載される方法にしたがってキットを使用するための説明書が含まれ得る。説明資料は、卵母細胞の品質を評価するためのキットにおいて本発明の方法の有用性を伝えるために使用され得る刊行物、記録、ダイアグラム又は任意の他の表現媒体を含み得る。添付文書は、任意の物理的媒体、例えば紙、厚紙、フィルムに収容されたテキストを含み得るか、又は電子媒体、例えばディスケット、チップ、メモリスティック若しくは他の電子記憶形式に収容され得る。本発明のキットの説明資料は、例えば、キットの他の内容物を含有する容器に添付され得るか、又はキットを含有する容器と一緒に発送され得る。あるいは、受取人が説明資料及びキットの内容物を協調的に使用することを意図して、説明資料は、容器とは別個に発送され得る。
【0192】
ターゲット核酸を変化させるための方法
ウイルス由来粒子及びそれらを含む組成物は、遺伝子治療のために使用され得る。
【0193】
本発明のさらなる態様は、本発明のウイルス由来粒子で、又はそれらを含む組成物で被験体を処置する方法である。
【0194】
ヒト被験体又はそれを必要とする動物へのウイルス由来粒子の投与は、ウイルスベクターを投与するための当技術分野で公知の任意の手段によるものであり得る。
【0195】
例示的な投与様式としては、直腸、経粘膜、局所、経皮、吸入、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内及び関節内)投与など、及び直接組織又は器官注射あるいはくも膜下、直接筋肉内、脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内又は眼内注射が挙げられる。注射剤は、液体溶液若しくは懸濁液、注射前の液体の溶液若しくは懸濁液に適切な固体形態として、又はエマルジョンとして、従来の形態で調製され得る。あるいは、例えばデポー又は徐放性製剤で、ウイルスを全身的ではなく局所的に投与し得る。
【0196】
本発明はまた、真核細胞における少なくともターゲット配列を含むターゲット核酸を変化させるための方法であって、
a)前記真核細胞と、本明細書に記載されるウイルス由来粒子、又は本明細書に記載される組成物とを接触させる工程、及び
b)変化したターゲット核酸を有する前記真核細胞を収集する工程
を含む方法に関する。
【0197】
いくつかの実施態様では、ウイルス由来粒子又はそれらを含む組成物は、in vivoで被験体に直接投与される。いくつかの他の実施態様では、被験体の細胞を提供し、次いで、ウイルス由来粒子又はそれらを含む組成物をin vitroで前記細胞にトランスダクションする。さらなる方法工程では、トランスダクションした被験体の細胞を被験体の体に投与して戻す。
【0198】
いくつかの実施態様では、前記方法は、in vitro又はex vivoで実施される。
【0199】
本発明はまた、遺伝子治療に適した任意の疾患又は障害を予防又は治療するために使用するための、本明細書に記載される組成物に関する。
【0200】
本発明は、遺伝子治療に適した任意の疾患又は障害を予防又は治療するための方法を提供する。一実施態様では、「処置」又は「処置する」は、疾患若しくは障害又はそれらの少なくとも1つの識別可能な症候の改善を指す。別の実施態様では、「処置」又は「処置する」は、被験体によって必ずしも識別可能ではない疾患又は障害に関連する少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。さらに別の実施態様では、「処置」又は「処置する」は、疾患又は障害の進行を物理的に阻害すること、例えば識別可能な症候の安定化、例えば物理的パラメータの安定化を生理学的に阻害すること、又はその両方を指す。ガン、免疫障害及び獣医学的症状を含む他の症状も処置され得る。
【0201】
本発明の方法によって処置され得る疾患及び障害の種類としては、限定されないが、加齢性黄斑変性症;糖尿病性網膜症;例えば、HIV汎発性インフルエンザ、カテゴリー1及び2の生物兵器作用物質、又は任意の新興ウイルス感染症;自己免疫疾患;ガン;多発性骨髄腫;糖尿病;全身性エリテマトーデス(SLE);C型肝炎;多発性硬化症;アルツハイマー病;パーキンソン病;筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病;癲癇;慢性閉塞性肺疾患(COPD);関節炎症、関節炎;心筋梗塞(MI);鬱血性心不全(CHF);血友病A;又は血友病Bが挙げられる。
【0202】
本発明の方法によって治療又は予防され得る感染性疾患は、限定されないが、ウイルス、細菌、真菌、原虫、蠕虫及び寄生虫を含む感染因子によって引き起こされる。本発明は、細胞内病原体によって引き起こされる感染性疾患の治療又は予防に限定されない。多くの医学的に関連する微生物が文献に広範に記載されており、例えば、C. G. A Thomas, Medical Microbiology, Bailliere Tindall, Great Britain 1983(これらの全内容は、参照により本明細書に組み入れられる)を参照のこと。
【0203】
本発明の方法によって治療又は予防され得るガンの種類としては、限定されないが、ヒト肉腫及びガン腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸ガン、膵臓ガン、乳ガン、卵巣ガン、前立腺ガン、扁平上皮ガン、基底細胞ガン、腺ガン、汗腺ガン、皮脂腺ガン、乳頭ガン、乳頭腺ガン、嚢胞腺ガン、髄様ガン、気管支原性ガン腫、腎細胞ガン、肝ガン、胆管ガン、絨毛ガン、セミノーマ、胎児性ガン、ウィルムス腫瘍、子宮頸ガン、精巣腫瘍、肺ガン、小細胞肺ガン、膀胱ガン、上皮ガン、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫;白血病、例えば急性リンパ球性白血病及び急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ球性白血病);及び真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症並びに重鎖疾患が挙げられる。
【0204】
本発明をさらに例証するが、以下の実施例に決して限定されない。
【実施例】
【0205】
A.材料及び方法
A.1.構築物
(Voelkel et al., 2010)に記載されているように、GAG-Cas9コードプラスミドを設計した。テンプレートとしてlentiCRISPRプラスミド(Addgeneプラスミド4953)を使用して、Streptococcus pyogenes由来のflag-Cas9のコドン最適化配列をPCR増幅した。この最後の構築物は、F. Zhang laboratory (Shalem et al., 2014, Science, Vol. 343: 84-87)からの寄贈であった。次に、flag-Cas9をマウス白血病ウイルスGAG配列(MA-CA-NC)の下流に挿入した。ポリタンパク質を生成するように、フレームをハーモナイゼーションした。ウイルス成熟プロセス中にGAGからflag-Cas9を放出するMLV-プロテアーゼ切断部位によって、両部分を分離した。イントロン及びポリAシグナル(これらは両方とも、ウサギβ-グロビンmRNAに由来する)を備えるhCMVプロモーターのコントロール下で、このキメラタンパク質を発現させた。MLVのGagProPolポリタンパク質をコードする発現プラスミド(Negre et al., 2000, Gene Ther, Vol. 7: 1613-1623)及びVSVGコードプラスミド(Yee et al., 1994, Methods Cell Biol, Vol. 43 PtA: 99-112)は、他の箇所に記載されているものであった。
【0206】
<<CRIZI>>と称されるgRNAコードプラスミドは、lentiCRISPRプラスミド由来のU6カセットが挿入された以前に記載されているレンチウイルス構築物(Kieusseian et al., 2006, Blood, Vol. 107: 492-500)に由来する。著者らによって記載されている手順にしたがって、U6プロモーターの上流のBsmBI部位間において、CRIZIへのCRISPR gRNA配列のクローニングを実施した。Crispseekソフトウェア(潜在的なオフターゲット>3ミスマッチ)(Zhu et al., 2014, PloS One, Vol. 9: e108424)を使用して、本研究で使用したgRNAの配列を設計した。各gRNAについて、プライマー配列を示す:
【表1】
【表2】
【表3】
【0207】
A.2.VLPの生産
Cas9-VLPは、特定の遺伝子をターゲティングするいくつかのgRNAの1つを組み込んだVLPの調製物として言及される。VLPの調製は、いくつかのプラスミドのコトランスフェクションを必要とする。製造業者の説明書にしたがってJetPei (Polyplus)を使用してLenti-X(商標)293T (Clontech)のトランスフェクションによって、VLPを生産した。JetPrimeトランスフェクション剤(Polyplus)又はリン酸カルシウム法(CalPhos mammalian kit, Clontech)も同様に使用し得る。
【0208】
JetPeiトランスフェクションレシピで混合したプラスミドの古典的な比は、GAG-Cas9(20%)、GagProPol(20%)、VSV-G又は他のエンベロープ(20%)及びgRNAをコードする構築物(40%)である。
【0209】
Cas9Myd88VLPのために、2つの異なるgRNAをレシピに導入して、新生VLPへの両RNA種の同時パッケージングを達成した。トランスフェクションの24時間前に細胞 3×10e6個/10cmプレートでプレーティングしたHEK293T細胞に、以下のものを含有する混合物をトランスフェクションした:
-R1:GAG-Cas9 4μg、GagProPol 4μg、VSVG 2μg、BaEVエンベロープ(Girard-Gagnepain et al., 2014) 2μg、Myd88-gRNA1コードプラスミド 2μg、Myd88-gRNA2コードプラスミド 2μg。
-R2:GAG-Cas9 6μg、GagProPol 6μg、VSVG 4μg、Myd88-gRNA1コードプラスミド 4μg、Myd88-gRNA2コードプラスミド 4μg。
-R3:GAG-Cas9 4μg、GagProPol 8μg、VSVG 2μg、BaEVエンベロープ 2μg、Myd88-gRNA1コードプラスミド 2μg、Myd88-gRNA2コードプラスミド 2μg。
-R4:GAG-Cas9 4~6μg、VSVG 2μg、BaEVエンベロープ 2μg、Myd88-gRNA1コードプラスミド 5μg、Myd88-gRNA2コードプラスミド 5μg。
【0210】
トランスフェクションの40時間後、VLP含有上清を収集し、短時間の遠心分離(2000g、3分間)によって清澄化した。清澄化したCas9-YFPVLPを直接使用して、L929細胞をトランスダクションした。SW41ローターによって35000rpmで1時間超遠心分離することによってCas9-h-h/mMyd88VLP及びCas9-DDX3VLPをペレット化し、穏やかに撹拌して氷冷PBSに一晩再懸濁した。上清 10mlを濃縮して、濃縮VLPの冷PBS溶液 100μlを生産した(濃縮倍率:100倍)。濃縮VLPバッチを-80℃で保存し、解凍後に4℃で少なくとも2週間安定であることが示された。遠心分離/トランスダクションの前に、0.45μmサイズの細孔フィルタを用いて、VLP含有上清のろ過を実施することができる。
【0211】
A.3.Cas9-VLPを使用したプロテオトランスダクション手順
6ウェルプレート中、清澄化VLP含有上清 400μlを培地 400μlに追加することによって、Cas9-YFPVLPをL929-YFP細胞 3×10e5個にトランスダクションした。2時間後、DMEM 10%FCS 2mlを培地に補充した。
【0212】
48ウェルプレート中、100×VLP 5~20μlを培地 300μlに追加することによって、一次細胞のトランスダクションを通常通りに実施した。2時間後、新鮮培養培地 0.5mlをこのトランスダクション培地に補充した。トランスダクション培地中で4μg/mlの最終濃度で使用した場合、ポリブレンの追加は、プロテオトランスダクションの可能性を持たせることが示された。
【0213】
A.4.PCRベースの遺伝子型決定アッセイ
製造業者の説明書にしたがってNucleospin Tissue Kit (Machery Nagel)を使用して、VLPによって処理した細胞のゲノムDNA抽出を達成した。VLP処理の24~48時間後にDNA調製を実施したが、さらなる実験は、HEK293Tレシピエント細胞では、VLP曝露の6時間後直ぐに切断が完了していたことを示している。
【0214】
GOTAQポリメラーゼ(Promega)を使用して、Myd88のPCR増幅を50μlで実施した。以下のようなPCR反応のためのテンプレートとして、細胞ゲノムDNA 100ngを使用した:94℃で5分間、(94℃で30秒間、68℃で30秒間)を3サイクル、(94℃で30秒間、64℃で30秒間、72℃で30秒間)を3サイクル、(94℃で30秒間、57℃で30秒間、72℃で30秒間)を27サイクル、72℃で5分間、12℃。エチジウムブロマイド染色2,5%アガロースゲルで、PCRアンプリコン分析した。
【0215】
A.5.遺伝子型決定分析に使用したプライマー(5’-NNN-3’):
【表4】
【表5】
【0216】
A.6.Cas9-DDX3VLPとssDNAとの組み合わせ
8μg/mlのポリブレンを含有するPBS 10μl中で、濃縮Cas9-DDX3VLP 15μlを混合した。次に、Flag-DDX3プライマーの各希釈物 5μlをこの混合物に補充したところ、最良の結果は、より高濃度(100pmol/μlのプライマー 5μl)で得られた。この「オールインワン」複合体を4℃で15分間インキュベーションし、12ウェルプレート中で培養したHEK293T(前日にプレーティングした細胞 200000個)の培地(400μl+ポリブレン 4μg/ml)に30μlを追加した。2時間後、DMEM 10%FCS 1mlをトランスダクション培地に補充した。VLP処理の40時間後、DDX3遺伝子の上流のflag配列の遺伝子挿入の増幅及び分析のために細胞を分割し、72時間後にWB分析を実施した。
【0217】
A.7.Flag-DDX3プライマーの配列(HPLC精製):
【表6】
【0218】
実施例1:Cas9-YFPVLPによるYFP遺伝子の切断
ウイルス構造の分子操作は、目的のタンパク質を組み込み得るウイルス/VLPの作製を可能にする。多数の例の中でも、感染の容易なモニタリングを可能にする蛍光遺伝子を組み込んだHIV-1クローン(Dale et al., 2011, Methods San Diego Calif, Vol. 53: 20-26)、動物におけるワクチン接種目的に有用なウイルスエピトープを有するVLP(Garrone et al., 2011, Sci Transl Med, Vol. 3: 94ra71)、又はタンパク質性機能的カーゴをレシピエント細胞に送達するために使用されるVLP(Voelkel et al., 2010, Proc Natl Acad Sci USA, Vol. 107: 7805-7810)、(Mangeot et al., 2011, Mol Ther J Am Soc Gene Ther, Vol. 19: 1656-1666)の設計が挙げられ得る。効率的なCas9-VLPの生産を達成するために、以前に記載されているように(Voelkel et al., 2010、前掲)、Cas9をマウス白血病ウイルス(MLV)の構造GAGタンパク質に融合した。基本的には、HEK293T細胞においてウイルスプロテアーゼ(Pro)及びエンベロープと共にこのキメラタンパク質を発現させると、Cas9部分がウイルスコアに組み込まれたVLPが産生されると予想され、Cas9は、ウイルスプロテアーゼによってGAGプラットフォームから切断される。
【0219】
gRNAに対するCas9の親和性を考慮して、本発明者らはさらに、VLP産生細胞におけるgRNAの発現が、CRISPR機構の全ての成分を運搬することができる粒子内へのそれらの組み込みを可能にするために十分であり得ると仮定した。これらの仮説をチェックするために、本発明者らは、YFP遺伝子をターゲティングするようにgRNA発現プラスミドを設計し、HEK293T細胞から産生されたCas9-VLPにgRNAを組み込むことを試みた。このアプローチ及び使用した構築物を要約した概要は、
図1に示されている。次に、安定型のYFPを発現するマウスL929細胞の培地にVLP含有上清を導入し、次に、surveyorアッセイによって蛍光遺伝子の切断を調査した。
図2に示されている結果は、Cas9-VLPがCRISPR機構を送達し、組み込まれたgRNAによって規定される予想位置においてYFP遺伝子の切断を可能にしたことを示している。この遺伝子の破壊は、YFPリーディングフレームの予想される破裂に起因する、処理集団における蛍光の劇的かつ不可逆的な消失に関連していた(
図3)。これらの所見により、CRISPR成分の強力な送達剤としてのCas9-VLPの使用が立証された。
【0220】
実施例2:HEK293T及びHelaレシピエント細胞におけるMyd88遺伝子の破壊
hMyd88遺伝子の欠失を媒介するために、本発明者らはさらに、いくつかのgRNAを組み込むVLPの能力を調べた。Myd88は、核因子の転写を活性化するほとんどのTLRのシグナルを伝達する重要なアダプタータンパク質であり、特定の条件下でマクロファージの生存に特に関与する(Lombardo et al., 2007, J Immunol Baltim Md 1950, Vol. 178: 3731-3739)。ヒトMyd88遺伝子における2つの異なる切断を媒介して内因性遺伝子の欠失をもたらすように、2つのgRNAを設計した(
図4A~B)。(材料及び方法に記載されている)異なる組み合わせのプラスミドのトランスフェクションによって、Cas9-Myd88VLPを生産した。次に、放出された粒子を濃縮し、Hela及びHEK293Tを含む異なるレシピエント細胞におけるMyd88遺伝子を変化させるために使用した。
図4C及びDに示されている結果は、Myd88 gRNAをロードした全てのCas9-VLP型が、HEK293T細胞におけるMyd88遺伝子の予想部分を欠失させるのに効率的であったことを示している。しかしながら、Hela細胞はより消極的であり、特定のVLP種によってあまり改変されなかった。特に、本発明者らは、プロテアーゼ(R4)を欠くVLPがHela細胞では非効率的であったが、HEK293Tターゲット細胞では依然として完全に活性であったことに注目した。これらのデータは、VLPレシピが、ターゲット細胞型について最適化されるべきであることを示唆している。さらなる実験は、Cas9-Myd88VLPの効果が用量依存的であり(
図5)、ポリブレンの追加によって増強される(
図6)ことを示している。
【0221】
実施例3:ヒト及びマウス起源の一次細胞におけるMyd88遺伝子のVLP媒介性破壊。
より困難な問題は、従来のトランスフェクション方法にほとんど許容的ではない一次細胞であって、ウイルスベクターによってトランスダクションすることが困難な一次細胞にCRISPR成分を送達することである。したがって、生物から新たに単離した異なる細胞型(ヒト単球由来のヒトマクロファージを含む)において、Cas9-Myd88VLPの有効性をモニタリングした。処理細胞の遺伝子型分析は、培養マクロファージへのCas9-Myd88VLPの単回投与による明白かつ非常に効率的なMyd88遺伝子の切断を明らかにしている(
図7A)。遺伝子の切断を確認する遺伝子型PCRベースのアッセイの他に、Myd88破壊は、
図7Bに示されている強い表現型の原因であり、Myd88機能の不活性化を裏付けている。ヒト非活性化リンパ球(典型的には、これはほとんどの既存の遺伝子改変技術に適さない)において、CRISPRを一次細胞に送達するVLPの驚くべき効率をさらに検証した(
図8)。本発明者らの観察結果を一般化するために、本発明者らは、マウスMyd88遺伝子をターゲティングするいくつかの別のgRNAを設計し、マウス細胞専用のVLPバッチを調製した。
図9に示されているように、この新たなVLPバッチを使用して、CRISPR RNPcをマウス起源のマクロファージに高い効率で送達した。全体として、これらの結果は、Cas9-VLPが、機能的CRISPR機構を一次細胞に導入するための効率的な薬剤であることを立証している。
【0222】
実施例4:Cas9-VLPは修復テンプレートの移入を媒介し得る:「オールインワン」VLP複合体の作製。
以前の研究は、MLV由来VLP及び他のVSV-G誘導粒子がヒト細胞へのプラスミドの送達を媒介し、ウイルス由来トランスフェクション剤として機能する能力に関するものであった(Okimoto et al., 2001, Mol Ther J Am Soc Gene Ther, Vol. 4: 232-238)。粒子をdsDNA分子と組み合わせることができるので、本発明者らは、MLV由来Cas9-VLPがssDNAとの組み合わせをサポートし、細胞へのそれらの送達を媒介し得ると推測した。本発明者らはこの知識を利用して、Cas9-VLPと、ssDNAから構成される修復プライマーとを組み合わせようと試みた。このアプローチにより、本発明者らは、VLPを使用して内因性遺伝子を切断し、提供された修復テンプレートを使用して相同組換え様機構(HR)によって細胞内でそれを修復することを提案する。モデルとしてDDX3ヒト遺伝子を使用し、内因性DDX3遺伝子のATGコドンの上流にFLAG配列を挿入するように設計した修復プライマーを使用して、これを調査した。
図10は、トランスフェクション細胞及び一次細胞の両方において本発明者らが直接調査したこの「オールインワン」VLP戦略の原理を示している。Flag修復プライマーと組み合わせたCas9-DDX3VLPはDDX3遺伝子を成功裏に切断し(示さず)、DDX3の5’配列の正しい予測部位へのflag配列の遺伝子ターゲット挿入を可能にした。PCRベースの遺伝子型決定アッセイと、ウエスタンブロットによるflag付DDX3タンパク質の検出とによって、これをチェックした(
図10C)。Cas9-DDX3VLPの単回処理に曝露した一次ヒト樹状細胞における遺伝子レベルにおいても、この結果を検証した。
【0223】
実施例5:CAS9ウイルス由来粒子の特性評価。
材料及び方法のセクションに開示されているようにCAS9 VLPを生産し、20%スクロースクッションの1回目の超遠心分離によって濃縮した。次に、得られたペレットをPBSに再懸濁し、2つのスクロースクッション(チューブの底の50%スクロースクッション、及びサンプルから50%クッションを分離する20%スクロースクッション)で再遠心分離した。2時間の遠心分離後、50%と20%とを分離する界面を採取し、再遠心分離して高純度のCAS9-VLPを得、これをPBSに再懸濁した。VLP 10μgをLaemlliバッファーに溶解し、ウエスタンブロット分析の前に95℃で5分間加熱した。
【0224】
ウエスタンブロット分析は、
図12Aに表されている(1レーン当たり10μg)。使用した抗体は、GAGmlv(ABCAM R187)、VSVG(ABCAM P5D4)、CAS9(7A9-3A3 clone Cell SIgnaling)、Cas9に付加したFlag配列(Sigma)に対するものであった。ウイルスプロテアーゼによってプロセシングされた切断産物に対応する異なる形態のmlv GAGが示されている。粒子調製物において、VSVGは、予想サイズで明確に検出されている。CAS9抗体は、GAG-CAS9融合物(予想225KDA)に対応する200KDa超のより大きい産物を明らかにしており、このタンパク質はFlag抗体によっても検出される(左のパネル)。CAS9及びFLAG抗体は両方とも、プロテアーゼプロセシング後にGAGから放出された遊離CAS9タンパク質又は切断CAS9産物に対応し得るより小さいCAS9産物(160~200KDaの範囲)を明らかにしている。
【0225】
図12Bで例証されているように、全高純度VLP 30μgを、総体積 12mlで不連続スクロース勾配(PBS中10%~60%スクロース)にロードした。16時間の遠心分離(25000rpm、SW41)後、チューブの先端から画分 500μlを収集し、1~24と命名した。次に、各画分 2μlをニトロセルロース膜上にスポットし、ミルクの追加(TBST5%低脂肪乳)によって直ぐにブロッキングした。次に、上記と同様の抗体を使用して、各画分についてVSVG CAS9及びGAG MLVを検出した。結果は、CAS9 VLPが1,14~1,21の密度で沈降し、ピークが1,17にあることを示している。
【0226】
実施例6:CAS9ウイルス由来粒子へのガイドRNAのロード
実施例6は、CAS9ウイルス由来粒子がガイドRNAを効率的に組み込むことを示す。
【0227】
産生細胞(レーン2~4)又は対応する精製VLP(レーン5~7)から抽出した全RNAを使用した、ガイドRNAの保存領域に対するノーザンブロット。レーン1.VLPを産生しない細胞の全RNAに対応するコントロールサンプル。レーン2.Gag/Cas9融合物と、ウイルスエンベロープと、ガイドRNAとを発現する細胞由来の全RNA。レーン3.Gag/Cas9融合物と、ウイルスエンベロープと、より長いステム構造を有する改変ガイドRNAとを発現する細胞由来の全RNA。レーン4.Gagの非存在下で、野生型Cas9と、ガイドRNAとを発現する細胞由来の全RNA。レーン5、6及び7.細胞残屑を排除して0.8μmフィルタでろ過した後、対応する産生細胞の上清から抽出した全RNA(レーン5は、レーン2の細胞の上清に対応する、など)。レーン7は、Gag/Cas9融合物が発現されない場合、ガイドRNAが粒子内に効率的に組み込まれないことを示している。興味深いことに、より長いステム構造を有する改変ガイドRNA(レーン3及び6)は、野生型ガイドRNA(レーン2及び5)よりも効率的にVLPに組み込まれないようである。
【0228】
実施例7:MLVベースのウイルス由来粒子とHIVベースのウイルス由来粒子との比較
図14Aは、MLVベースのVLP又はHIV-1ベースのVLPの生産のために設計したコードカセットの概略図を示す。初期hCMVプロモーター、ウサギBグロビンイントロン及びウサギpAシグナルを備える真核生物発現ベクターを両カセットに組み込んだ。Cas9遺伝子からGAGカセットを分離する多様なタンパク質分解部位の探索及び試験によって、両系を最適化した。材料及び方法のセクションに記載されているようにMLVベースのVLPを生産し、GAG POL Tat Revタンパク質をコードするHIV-1ヘルパー構築物(配列番号:33の構築物)をMLV GAG POLプラスミドに代えてトランスフェクションした以外は同様に、HIV-1ベースのVLPを生産した。HIV-1 VLPの生産は、MLVベースのVLPと同じ手順に従う。
【0229】
図14Bは、GFP遺伝子をターゲティングするガイドRNAを組み込むように操作した濃縮VLPを使用して、GFPを発現するHEK293T細胞 30000個をトランスダクションした試験を示す。同じロードgRNA(ターゲット配列:CGAGGAGCTGTTCACCGGGG-配列番号:35)を用いて、HIV-1及びMLVベースの粒子を生産した。その前日に、レシピエント細胞を96wプレートにプレーティングした。ポリブレン(4μg/ml)をトランスダクション培地に補充した。3つの漸増用量の各VLPバッチによる処理の72時間後、蛍光光度計(励起488、発光535)によって、蛍光強度を測定した。VLP処理細胞では、コントロール未処理細胞と比較して、蛍光の減少が明らかであったが(C)、これは、レシピエント細胞内におけるGFP遺伝子の切断を示している。結果は、HIV-1ベースのVLPが、CRISPR/CAS9系をこれらのレシピエント細胞に送達する際に効率的であり、MLVベースのVLPよりもわずかに低効率のレベルである(1,5~2倍低効率)ことを示している。
【0230】
図14Cは、IL7で刺激した一次ヒトT細胞におけるWASP遺伝子の切断を示す。この実験では、IL-7で刺激した新鮮精製T細胞の処理前に、ヒトWASP遺伝子をターゲティングする2つのガイドRNAをHIV-1又はMLVベースのVLP内に組み込んだ。次に、処理の24時間後、レシピエント細胞において、CRISPR-CAS9によるWASP欠失をPCRによって測定した。ImageJソフトウェアを使用して実施したゲル分析は、MLVベースのVLP(32%)及びHIV-1ベースのVLP(6%)の二重カット効率の定量を可能にした。
【0231】
実施例8:Cas9含有ウイルス由来粒子によるThy1-GFPマウス胚へのCRISPR送達。
GFP遺伝子をターゲティングするガイドRNAを組み込んだCas9 VLPを生産し、マウス胚(1細胞期)の透明帯に注射する前に、高度に精製した。ヘテロ接合性胚は全て、運動ニューロンにおけるGFP発現に関与するThy1-GFPアレルを有していた。この研究の目的は、胚内でGFPを切断するVLPの能力を評価し、雌性マウスへのVLP処理胚の再移植後にそれらのThy1-GFPカセットが変化した動物を作製することである。Aに示されているように、細胞膜をパーフォリン処理せずに実施した2回の注射のために、数ナノリットルの調製物(6,5μM Cas9)を使用した。この注射プロトコールによって、いかなる胚も死亡しなかった。再移植後、本発明者らは、合計20匹の動物(F0)を得た。新生児の指からゲノムDNAを抽出し、T7エンドヌクレアーゼアッセイによって分析して、GFPカセットの切断を明らかにした。Bに示されているように、このアッセイでは20匹のうちの6匹の動物が陽性であり(矢印)、第1の注射実験では9匹のうちの4匹が陽性であった(左のパネル):第2の注射では、動物5、7、8、12並びに動物40及び45(弱)。次に、動物7、8及び12をwt-C57B6動物と交配させて、子孫への切断GFPアレルの遺伝を評価した。予想通り、F1子孫のおよそ半分は、(3匹の創始体全てについて)Thy1-GFPアレルがヘテロ接合性であると認められた。次に、Cに示されているT7-エンドヌクレアーゼアッセイによって、ヘテロ接合性F1マウスにおけるThy1-GFPアレルの状態を測定した*。マウス7及びマウス12の全てのF1ヘテロ接合性子孫並びにマウス8の子孫の33%において、GFPが変化していることが示された。次に、動物#78、#79、#21及び#22のアレルに対して、Thy1-GFPアレルの配列決定を実施し、クロマトグラムを、Thy1-GFP非処理動物について得られた配列と比較した。この目的のためにTIDEソフトウェアを使用し、各動物のインデルの性質及び配列変化の%を表すヒストグラムを得た**。D、E、F及びGに示されている結果は、F1マウスにおけるGFP変化の%を示している***。要するに、これらのデータは、Cas9-VLPが動物遺伝子導入を支援することができ、哺乳動物胚へのCRISPR送達剤であって、遺伝物質の移入及び卵細胞への損傷を伴わずに遺伝子を変化させるCRISPR送達剤としてCas9-VLPを使用することができることを示している。
【0232】
T7-エンドヌクレアーゼアッセイのプロトコール:
Nucleospin Tissue Kit (Macherey Nagel)を使用して、マウスの指からマウスゲノムDNAを抽出した。次に、PCR反応液 50μlにおいて、DNAテンプレート 3μlを使用した(PCR条件は、プライマー:
フォワード:5’-TCTGAGTGGCAAAGGACCTTAGG(Thy1プライマー-配列番号:39)
リバース:5’-GAAGTCGTGCTGCTTCATGTGGTCGG(GFPプライマー-配列番号:40)
を使用して、95℃で5分間、続いて(95℃で30秒間-64℃で30秒間-72℃で30秒間)を3サイクル及び(95℃で30秒間-57℃で30秒間-72℃で30秒間)を25サイクル、続いて72℃で5分間である。
【0233】
次に、40μl反応チューブ中で、製造業者による説明通りに、Thy1-GFPアンプリコンをT7エンドヌクレアーゼアッセイに供した。(https://www.neb.com/protocols/2014/08/11/determining-genome-targeting-efficiency-using-t7-endonuclease-i)。最後に、消化液を2,5%-アガロースゲルにロードした。
【0234】
**TIDEソフトウェアは、無料のオンラインツールである:https://tide.nki.nl/。クロマトグラムシーケンス(abiファイル)をソフトウェアにアップロードし、デフォルト設定を改変せずにTIDEランを実施した。TIDEヒストグラムが示されている
【0235】
***選択したThy1-GFP系統は数コピーのGFP/アレル(6~10)を有するという事実により、%は完全ではない。結果は、1アレル当たり1つの構成的GFPコピーを有するマウス系統において再現されるはずである(準備中)
【0236】
他の配列
GAG-Cas9アミノ酸配列(配列番号:22):
【表7】
VSV-Gアミノ酸配列(配列番号:23):
【表8】
GAG PRO POLアミノ酸配列(配列番号:24):
【表9】
BAEV-Gアミノ酸配列(配列番号:25)
【表10】
GAGmlv-CAS9配列(配列番号:26):
【表11】
Girard-Gagnepain A et al. 2014. Blood. 2014 Aug 21;124(8):1221-31. doi: 10.1182/blood-2014-02-558163. Epub 2014 Jun 20)に言及されているBAEV-GヒヒエンベロープRLESS変異体BAEVRless:(本文及び図面ではBRLとも記述される)配列番号:27
【表12】
VSV-G配列(配列番号:28):
【表13】
切断部位:
アミノ酸:SSLYPALTP(配列番号:29)
核酸:agttccctgtatccagccctcacacct(配列番号:30)
Cas9アミノ酸配列(配列番号:31)
【表14】
Cas9核酸配列(配列番号:32)
【表15】
(HIV-1 Gag-Pol-Tat-Revをコードする)HIV-1カプシド形成構築物「p8.91」(配列番号:33)
【表16】
HIV-1 GAG-CAS9をコードする核酸「KLAP229」(配列番号:34)
【表17】
【表18】
【配列表】