(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】流体抵抗素子及び流体制御装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/48 20060101AFI20250120BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
G01F1/48
G05D7/06 Z
(21)【出願番号】P 2021555979
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2020039940
(87)【国際公開番号】W WO2021095492
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2019206878
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】安田 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】プライス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】馬 雷
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/071161(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/067156(WO,A1)
【文献】特開平07-083713(JP,A)
【文献】実開昭59-077027(JP,U)
【文献】国際公開第1997/011336(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00-9/02
G05D 7/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる内部流路と、
前記内部流路に嵌め込み固定される流体抵抗素子と、
前記内部流路における前記流体抵抗素子の上流側及び下流側に設けられた上流側圧力センサ及び下流側圧力センサと、を備える流体計測装置において、
前記流体抵抗素子は、
1又は複数の抵抗流路を有するセラミック製の流路形成部材と、
前記流路形成部材の外周面を覆
い、前記セラミックよりも硬度の低い金属製の被覆部材とを
有することを特徴とする
流体計測装置。
【請求項2】
流体が流れる内部流路と、
前記内部流路に嵌め込み固定される流体抵抗素子と、
前記内部流路における上流側及び下流側をつなぐセンサ流路と、
前記センサ流路に設けられた上流側電気抵抗素子及び下流側電気抵抗素子と、
を備える流体計測装置において、
前記流体抵抗素子は、
1又は複数の抵抗流路を有するセラミック製の流路形成部材と、
前記流路形成部材の外周面を覆い、前記セラミックよりも硬度の低い金属製の被覆部材とを有することを特徴とする流体計測装置。
【請求項3】
前記流路形成部材が、円柱状のものであり、
前記被覆部材が、嵌め合い公差をもって前記流路形成部材が嵌め込まれる円筒状のものである、
請求項1又は2記載の
流体計測装置。
【請求項4】
前記流路形成部材の外周面の全面が、前記被覆部材に覆われている、
請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の
流体計測装置。
【請求項5】
前記抵抗流路の径寸法に対する長さ寸法の比率であるアスペクト比が200以上である、
請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の
流体計測装置。
【請求項6】
前記内部流路に設けられた流量調整弁
をさらに備える
、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載の流体計測装置。
【請求項7】
前記内部流路を流れる流体の流量を算出する流量算出回路と、
前記流量算出回路により算出された測定流量が予め定めた目標流量になるように前記流量調整弁を制御する制御回路とを備える、
請求項6記載の
流体計測装置。
【請求項8】
抵抗値の互いに異なる複数の前記流体抵抗素子が直列又は並列に設けられている、
請求項1乃至7のうち何れか一項に記載の
流体計測装置。
【請求項9】
前記内部流路に第1圧力センサ、第2圧力センサ、及び第3圧力センサが設けられており、
第1の前記流体抵抗素子が、前記第1圧力センサ及び第2圧力センサの間に設けられており、
第2の前記流体抵抗素子が、前記第2圧力センサ及び第3圧力センサの間に設けられており、
前記第1の流体抵抗素子の抵抗値、前記第1圧力センサの検出値、及び前記第2圧力センサの検出値に基づいて算出される第1流量と、前記第2の流体抵抗素子の抵抗値、前記第2圧力センサの検出値、及び前記第3圧力センサの検出値に基づいて算出される第2流量とを比較して、不具合が生じているか否かを診断する診断回路をさらに備えることを特徴とする
請求項1を引用する請求項8記載の
流体計測装置。
【請求項10】
第1の前記流体抵抗素子が、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの間に設けられており、
第2の前記流体抵抗素子が、前記第1の流体抵抗素子に対して並列に設けられている、
請求項1を引用する請求項8記載の
流体計測装置。
【請求項11】
互いに等しい抵抗値を有する複数の前記流体抵抗素子が直列に設けられている、請求項5乃至7のうち何れか一項に記載の
流体計測装置。
【請求項12】
前記複数の流体抵抗素子が、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの間に設けられている、
請求項1を引用する請求項11記載の
流体計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体抵抗素子及びこの流体抵抗素子を備えた流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体抵抗素子とは、流体が流れる時の抵抗となる流路(以下、抵抗流路とも言う。)を有するものであり、例えばこの流体抵抗素子に流体を流した時の上流側及び下流側の圧力に基づいて、流体流量を測定することができる。
【0003】
ところで、例えば半導体製造に用いる材料ガスの流量制御装置において、そこに用いられる流体抵抗素子としては、流量制御の精度上、きわめて微細なものが必要となり、例えば数十μm程度の厚みの抵抗流路を要求されることもある。
【0004】
そのために、例えば特許文献1では、複数のスリットが放射状に形成された厚み数十μmを有する金属製のスリット板を、一対の被覆板で挟み込むことで、スリット部分が抵抗流路となるように構成している。
【0005】
このような流体抵抗素子であれば、抵抗流路を微細なものにすることはできるものの、スリット板を被覆板で挟み込む時に、厚さ数十μmのスリット板には僅かな撓みが生じてしまう。その結果、スリット板を被覆板で挟み込んで固定する時の力加減の僅かな誤差によって抵抗特性が変わってしまい、均一の抵抗特性を有する流体抵抗素子を安定して製作することが難しいという問題がある。
【0006】
これに対して、特許文献2に示すように、セラミック製の流体抵抗素子であれば、高い寸法精度で加工することができるので、均一の抵抗特性を有する流体抵抗素子を安定して製作することが可能となる。
【0007】
しかしながら、例えば低流量の流体を制御する場合など、直径数mm程度の非常に細い流路に同等の径寸法を有するセラミック製の流体抵抗素子を隙間なく嵌め込もうとすると、流体抵抗素子が折れたり傷ついたりしてしまい、流体制御装置に組み込むことが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-257004号公報
【文献】実開昭59-77027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであって、セラミックを用いて抵抗流路を形成することによるメリットを享受しつつ、その流体抵抗素子を流体が流れる流路に無理なく組み込むことのできるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係る流体抵抗素子は、1又は複数の抵抗流路を有するセラミック製の流路形成部材と、前記流路形成部材の外周面を覆う金属製の被覆部材とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
このように構成された流体抵抗素子であれば、流路形成部材がセラミック製であるので、高い寸法精度で加工することができ、均一の抵抗特性を有する流体抵抗素子を安定して製作することが可能となる。具体的には、例えば内部に抵抗流路を形成した長尺なセラミックを同じ長さに切断した1つ1つを流路形成部材とすることで、均一の抵抗特性を有する流体抵抗素子をいくつも製作することができる。しかも、流路形成部材がセラミック製であるので、抵抗流路を潰すことなく流体が流れる流路に組み込むことができ、さらに金属製のものに比べて、低熱膨張率、高耐食性、及び低価格といったメリットもある。なおかつ、抵抗流路の本数を変えることにより抵抗特性を変えることができるので、例えば超低流量測定にも用いることができる。加えて、抵抗流路を円管状に加工することができるので、流体の流れが理想的な流れとなり、種々のシミュレーションを簡素化できる。
このように、セラミックを用いて抵抗流路を形成することによる種々のメリットを享受しつつも、流路形成部材の外周面を金属製の被覆部材が覆っているので、流体抵抗素子を流体が流れる流路内に嵌め込む際に、金属製の被覆部材が、流路を形成する壁面と流路形成部材との間で緩衝となり、流体抵抗素子を損傷させることなく流路内に無理なく配置することができる。
【0012】
前記流路形成部材が、円柱状のものであり、前記被覆部材が、嵌め合い公差をもって前記流路形成部材が嵌め込まれる円筒状のものであることが好ましい。
このような構成であれば、流路形成部材と被覆部材とを嵌め合い公差で施工することが可能であり、流体抵抗素子に組み立てが容易である。
【0013】
流路形成部材の損傷をより確実に防ぐためには、前記流路形成部材の外周面の全面が、前記被覆部材に覆われていることが好ましい。
【0014】
低流量の測定を可能とするためには、前記抵抗流路の径寸法に対する長さ寸法の比率であるアスペクト比が200以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る流体制御装置は、流体が流れる内部流路に設けられた上述の流体抵抗素子と、前記内部流路における前記流体抵抗素子の上流側及び下流側に設けられた上流側圧力センサ及び下流側圧力センサと、前記内部流路に設けられた流量調整弁とを備えることを特徴とするものである。
さらに、本発明に係る別の流体制御装置は、流体が流れる内部流路に設けられた上述の流体抵抗素子と、前記内部流路における上流側及び下流側をつなぐセンサ流路と、前記センサ流路に設けられた上流側電気抵抗素子及び下流側電気抵抗素子と、前記内部流路に設けられた流量調整弁とを備えることを特徴とするものである。
このように構成された差圧式の流体制御装置や熱式の流体制御装置であれば、上述した流体抵抗素子を備えているので、本発明に係る流体抵抗素子と同様の作用効果を奏し得る。
【0016】
より具体的な構成としては、前記内部流路を流れる流体の流量を算出する流量算出回路と、前記流量算出回路により算出された測定流量が予め定めた目標流量になるように前記流量調整弁を制御する制御回路とを備える構成が挙げられる。
【0017】
流体抵抗素子の配置としては、抵抗値の互いに異なる複数の前記流体抵抗素子が直列又は並列に設けられている態様を挙げることができる。
【0018】
より具体的な構成としては、前記内部流路に第1圧力センサ、第2圧力センサ、及び第3圧力センサが設けられており、第1の前記流体抵抗素子が、前記第1圧力センサ及び第2圧力センサの間に設けられており、第1の前記流体抵抗素子が、前記第2圧力センサ及び第3圧力センサの間に設けられており、前記第1の流体抵抗素子の抵抗値、前記第1圧力センサの検出値、及び前記第2圧力センサの検出値に基づいて算出される第1流量と、前記第2の流体抵抗素子の抵抗値、前記第2圧力センサの検出値、及び前記第3圧力センサの検出値に基づいて算出される第2流量とを比較して、不具合が生じているか否かを診断する診断回路をさらに備える構成を挙げることができる。
このような構成であれば、診断回路により流体制御装置に不具合が生じているか否かを診断することができる。
【0019】
ところで、少流量の場合、立下がり時において、流体抵抗素子に対する流体の抜けが悪いことに起因して応答性の低減が招来される。
そこで、かかる課題を解決するためには、第1の前記流体抵抗素子が、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの間に設けられており、第2の前記流体抵抗素子が、前記第1の流体抵抗素子に対して並列に設けられていることが好ましい。
このような構成であれば、第2の流体抵抗素子を介して流体を強制的に流体の排気することができるので、流量を確保することができ、立下がり時に例えば30秒かかっていたものが3秒程度でできるようになる。
【0020】
また、流体抵抗素子の別の配置態様としては、互いに等しい抵抗値を有する複数の前記流体抵抗素子が直列に設けられている態様を挙げることができる。
【0021】
より具体的な構成としては、前記複数の流体抵抗素子が、前記上流側圧力センサ及び前記下流側圧力センサの間に設けられている構成を挙げることができる。
このような構成であれば、上流側圧力センサ及び下流側圧力センサの間を高抵抗にすることができ、低流量の測定が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した本発明によれば、流路形成部材がセラミック製であることによる種々のメリットを享受しつつ、流路に無理なく組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態における流体制御装置の流体回路図。
【
図2】同実施形態の流体制御装置の内部構造を示す断面図。
【
図3】同実施形態の流体抵抗素子の構成を示す模式図。
【
図4】その他の実施形態における流体制御装置の流体回路図。
【
図5】その他の実施形態における流体抵抗素子の配置を示す模式図。
【
図6】その他の実施形態における流体制御装置の流体回路図。
【符号の説明】
【0024】
100・・・流体制御装置
L ・・・内部流路
Pa ・・・上流側圧力センサ
Pb ・・・下流側圧力センサ
R ・・・流体抵抗素子
10a・・・内部流路
10 ・・・流路形成部材
20 ・・・被覆部材
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る流体抵抗素子の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
本実施形態の流体抵抗素子は、例えば半導体製造に用いる材料ガス等の質量流量を制御する流体制御装置の構成要素の1つである。
【0027】
具体的にこの流体制御装置100は、
図1に流体回路図を、
図2に内部構造を示すように、制御対象である流体を流す内部流路Lと、内部流路L上に設けられた流量調整弁Vと、この流量調整弁Vよりも下流側に設けられ、当該内部流路Lを流れる流体の流量を測定する流量測定機構Xと、この流量測定機構Xによる測定流量が予め定めた目標流量になるように流量調整弁Vを制御する制御回路C1(
図2には示していない)とを備えている。
【0028】
流量測定機構Xは、差圧式のものであり、内部流路Lの上流側に設けられた上流側圧力センサPaと、上流側圧力センサPaよりも下流側に設けられた下流側圧力センサPbと、内部流路Lにおける上流側圧力センサPa及び下流側圧力センサPbとの間に設けられ圧力差を生じさせる流体抵抗素子Rと、上流側圧力センサPa及び下流側圧力センサPbによる圧力計測値と流体抵抗素子Rの抵抗値とに基づいて、内部流路Lを流れる流体の流量を算出する流量算出回路C2(
図2には示していない)とを具備している。
【0029】
本実施形態では、流体抵抗素子Rが特徴的であるので、以下に詳述する。
【0030】
流体抵抗素子Rは、
図3に示すように、流体が流れる時の抵抗となるものであり、具体的には抵抗となる流路10a(以下、抵抗流路10aとも言う。)を有するセラミック製の流路形成部材10を備えている。
【0031】
この流路形成部材10は、例えば石英、アルミナ、ジルコニア、又は窒化ケイ素などのセラミックから成形されたものであり、具体的には円柱状をなし、軸方向に沿って一乃至数百本程度の抵抗流路10aが形成されている。ここでの流路形成部材10は、数mm程度(例えば1.5mm)の径寸法(外径)であり、数mm~数十mm程度(例えば7mm)の長さ寸法(軸方向に沿った寸法)であるが、これらの寸法は適宜変更して構わない。
【0032】
抵抗流路10aは、流路形成部材10を軸方向に貫通してなり、横断面円形状の直線状のものであって、例えば流路形成部材10の管軸上に形成されたものや、管軸周りに規則的に配置された複数のものなどを挙げることができる。ここでの抵抗流路10aは、1mm未満であって数十μm程度(例えば30μm)の径寸法(内径)であり、長さ寸法(軸方向に沿った寸法)は流路形成部材10と同じ数mm~数十mm程度(例えば7mm)であるが、これらの寸法は適宜変更して構わない。
【0033】
本実施形態では、抵抗流路10aの径寸法に対する長さ寸法の比率であるアスペクト比が200以上であり、より好ましくは300以上である。なお、本流体抵抗素子Rの抵抗値は、このアスペクト比や抵抗流路10aの本数に基づいて定まる。
【0034】
然して、本実施形態の流体抵抗素子Rは、
図3に示すように、流路形成部材10の外周面を覆う金属製の被覆部材20をさらに備えてなる。
【0035】
より詳細に説明すると、被覆部材20は、例えばステンレスやニッケル系合金などの少なくともセラミックよりも硬度の低い金属からなるものであり、ここでは被覆部材20の長さ寸法が(軸方向に沿った寸法)、流路形成部材10の長さ寸法(軸方向に沿った寸法)と略同一であり、これにより流路形成部材10の外周面の全面が被覆部材20により覆われている。
【0036】
本実施形態の被覆部材20は、金属製の柱状部材を例えばドリル等で穿孔する機械加工や、或いは引抜加工により円筒状に成形したものであり、上述した流路形成部材10の外径に対して所定の嵌め合い公差範囲の内径を有するものである。これにより、被覆部材20は、しまり嵌め、すきま嵌め、或いは中間嵌めなどにより流路形成部材10に外嵌されている。
【0037】
この被覆部材20は、上述した内部流路Lに流体抵抗素子Rを配置した状態において、この内部流路Lを形成する壁面と、流路形成部材10の外周面との間に介在し(
図2参照)、流体抵抗素子Rを内部流路Lに挿入する際の緩衝材として機能する。
【0038】
より具体的に説明すると、本実施形態の内部流路Lは、上述した流量調整弁V、上流側圧力センサPa及び下流側圧力センサPbが載置されるブロック体Bをドリル等により穿孔してなるものであり、流体抵抗素子Rは、内部流路Lにおいて上流側圧力センサPa及び下流側圧力センサPbを連通する部分に配置されている。そして、内部流路Lのこの部分に流体抵抗素子Rを挿入する際に、被覆部材20が変形することで、流路形成部材10に加わる衝撃(応力)が緩衝される。
【0039】
このように構成された本実施形態の流体抵抗素子Rによれば、流路形成部材10がセラミック製であるので、高い寸法精度で加工することができ、均一の抵抗特性を有する流体抵抗素子Rを安定して製作することが可能となる。具体的には、例えば内部に抵抗流路10aを形成した長尺な(例えば1m)セラミックを同じ長さ(例えば数mm程度)に切断した1つ1つを流路形成部材10とすることで、均一の抵抗特性を有する流体抵抗素子Rをいくつも製作することができる。一方で、切断する長さを変えれば、種々の抵抗特性を有する流体抵抗素子を簡単に製作することができるので、例えば種々のモデル設計に資する。しかも、流路形成部材10がセラミック製であるので、抵抗流路10aを潰すことなく内部流路Lに挿入することができ、さらに金属製のものに比べて、低熱膨張率、高耐食性、及び低価格といったメリットもある。なおかつ、抵抗流路10aの本数を変えることにより抵抗特性を変えることができるので、例えば超低流量測定にも用いることができる。加えて、抵抗流路10aを円管状に加工することができるので、流体の流れが理想的な流れとなり、種々のシミュレーションを簡素化できる。
【0040】
このように、セラミックを用いて抵抗流路10aを形成することによる種々のメリットを享受しつつも、流路形成部材10の外周面を金属製の被覆部材20が覆っているので、流体抵抗素子Rを内部流路Lに嵌め込む際に、金属製の被覆部材20が、内部流路Lを形成する壁面と流路形成部材10との間で緩衝となり、流体抵抗素子Rを損傷させることなく内部流路Lに無理なく配置することができる。
さらに、流体抵抗素子Rを内部流路Lに配置する際に、被覆部材20が内部流路Lの壁面と流路形成部材10の外周面との間で僅かにでも潰される(変形する)ので、流体抵抗素子Rを内部流路L内に固定することができる。
しかも、流体抵抗素子Rの製造中や持ち運び中などの取り扱い時には、流路形成部材10が被覆部材20で被覆されているので、流路形成部材10の汚染や損傷等のリスクを低減させることができる。
【0041】
また、流路形成部材10の外周面の全面が被覆部材20に覆われているので、流体抵抗素子Rを内部流路Lに挿入する際に生じ得る流路形成部材10の損傷をより確実に防ぐことができる。
【0042】
さらに、被覆部材20の内径が、流路形成部材10の外径に対して所定の嵌め合い公差の範囲であるので、流路形成部材10と被覆部材20とを嵌め合い公差で施工することが可能であり、流体抵抗素子Rに組み立てが容易である。
【0043】
そのうえ、抵抗流路10aの径寸法に対する長さ寸法の比率であるアスペクト比が200以上であるので、超低流量の測定が可能となる。
【0044】
加えて、流体抵抗素子が従来(背景技術で述べたもの)のように、スリット板を被覆板で挟み込んで形成したものであると、この流体抵抗素子の形状に合った配置スペースを、内部流路Lの途中に別途形成する必要があるという問題もあるが、本実施形態の流体抵抗素子Rであれば、内部流路Lに無理なく設けることができるので、そのような専用のスペースを別途形成することは不要である。
【0045】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0046】
例えば、流体制御装置100は、前記実施形態では単一の流体抵抗素子Rを備えるものであったが、
図4に示すように、複数の流体抵抗素子Rを備えていても良い。
【0047】
その一例としては、
図4(A)に示すように、複数の流体抵抗素子Rが直列に設けられている態様を挙げることができる。
具体的には、3つ或いはそれ以上の圧力センサ(以下では、第1乃至第3圧力センサP1~P3とする)が内部流路Lに設けられており、第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の間に第1の流体抵抗素子R(A)を設け、第2圧力センサP2及び第3圧力センサP3の間に第2の流体抵抗素子R(B)を設けてある。
かかる構成において、流体制御装置100としては、第1の流体抵抗素子R(A)の抵抗値、第1圧力センサP1の検出値、及び第2圧力センサP2の検出値に基づいて算出される第1流量と、第2の流体抵抗素子R(B)の抵抗値、第2圧力センサP2の検出値、及び第3圧力センサP3の検出値に基づいて算出される第2流量とを比較することにより、流体制御装置100に不具合が生じているか否かなどを診断する診断回路(不図示)を備えていることが好ましい。なお、診断回路の具体的な態様としては、第1流量及び第2流量の差分が所定の閾値を超えた場合に、不具合が生じていると診断する態様等を挙げることができる。
【0048】
また、
図4(B)に示すように、上流側圧力センサPa及び下流側圧力センサPbの間に複数の流体抵抗素子Rを直列に設けることにより、上流側圧力センサPa及び下流側圧力センサPbの間を高抵抗にすることができ、低流量の測定が可能となる。
【0049】
さらに別の例としては、
図4(C)に示すように、複数の流体抵抗素子Rが互いに並列に設けられている態様を挙げることができる。
具体的には、上流側圧力センサPa及び下流側圧力センサPbの間に第1の流体抵抗素子R(A)が設けられており、この第1の流体抵抗素子R(A)の上流又は下流から分岐する排出流路Zに第2の流体抵抗素子R(B)が設けられている。
このような構成であれば、排出流路から所定量の流体を排出することで、流体制御装置100に流入する流量を確保することができるので、少流量を制御する場合における応答速度の改善を図れる。詳述すると、少流量の場合、立下がり時において、流体抵抗素子Rに対する流体の抜けが悪いことに起因して応答性の低減が招来されるところ、
図4(C)のように、第1の流体抵抗素子R(A)と第2の流体抵抗素子R(B)とを並列に設けることで、第2の流体抵抗素子R(B)を介して流体を強制的に流体の排気することができる。これにより、流量を確保することができるので、立下がり時に例えば30秒かかっていたものが3秒程度でできるようになる。
【0050】
なお、上述したように流体制御装置100が複数の流体抵抗素子Rを備える場合、これらの流体抵抗素子Rは互いに異なる抵抗を有するものであっても良いし、互いに等しい抵抗を有するものであっても良い。
【0051】
また、流体抵抗素子Rは、前記実施形態では上流側圧力センサPa及び下流側圧力センサPbを連通する内部流路Lに設けられていたが、
図5に示すように、上流側圧力センサPaや下流側圧力センサPbに内蔵されていてもよい。具体的に流体抵抗素子Rは、圧力センサの構成要素たるダイヤフラムDに流体を導くための流路L1に設けられていても良い。
【0052】
さらに、前記実施形態では、筒状の被覆部材20に流路形成部材10を嵌合させていたが、例えば金属製の被覆部材20を流路形成部材10の外周面に巻き設けても良いし、蒸着等の表面処理によって金属製の被覆部材20を流路形成部材10の外周面に設けても良い。
【0053】
そのうえ、流路形成部材10は、前記実施形態では円柱状のものであったが、仮に流路の横断面が三角形、四角形、又は多角形であれば、これらの形状に対応させて流路形成部材10も横断面が三角形、四角形、又は多角形の柱状のものであっても良い。この場合、被覆部材20も流路の横断面形状に対応させて、横断面が三角形、四角形、又は多角形の筒状のものであっても良い。
【0054】
流体制御装置100としては、流量調整弁Vのないフローメータ(流量測定器)など、他の機器ユニットでも構わない。
【0055】
前記実施形態においては、流体抵抗素子Rとして圧力式の流体制御装置100を構成するものとしていたが、
図6に示すように、内部流路Lに熱式流量センサを設けた熱式の流体制御装置100を構成するものであっても良い。具体的にこの場合の流量測定機構Xは、内部流路Lに設けられた流体抵抗素子Rと、内部流路Lにおける上流側及び下流側をつなぐセンサ流路Lbと、センサ流路Lbに設けられた上流側電気抵抗素子T1及び下流側電気抵抗素子T2と、これらの電気抵抗素子T1、T2から出力される値に基づいて流体の流量を算出する流量算出回路C2とから構成してある。
【0056】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、セラミックを用いて抵抗流路を形成することによるメリットを享受しつつ、その流体抵抗素子を流体が流れる流路に無理なく組み込むことができる。