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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】蓄電装置及び絶縁ホルダ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/593 20210101AFI20250120BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20250120BHJP
   H01M 50/477 20210101ALI20250120BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20250120BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20250120BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20250120BHJP
【FI】
H01M50/593
H01M50/586
H01M50/477
H01M10/04 Z
H01G11/82
H01M10/058
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021558330
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042222
(87)【国際公開番号】W WO2021100596
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2019209363
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 仁史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光広
(72)【発明者】
【氏名】高林 洋志
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-098688(JP,A)
【文献】特開2014-199780(JP,A)
【文献】特開2019-121496(JP,A)
【文献】特開2011-198663(JP,A)
【文献】特開2007-157427(JP,A)
【文献】特開2015-228359(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002647(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/593
H01M 50/586
H01M 10/04
H01M 50/477
H01G 11/82
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの正極板と少なくとも一つの負極板とがセパレータを介して積層された電極体と、
絶縁材からなるシートが折られて形成され、前記電極体を収容した絶縁ホルダと、
開口を有し、前記電極体を前記絶縁ホルダ及び電解質とともに収容した外装ケースと、
前記開口を封口する封口板と
を備え、
前記外装ケースは、底板部、及び前記底板部から立設した複数の側壁を有し、前記底板部に対向して前記開口が形成されており、
前記絶縁ホルダは、複数の前記側壁にそれぞれ対向する複数の側面部と、前記底板部に対向する底面部とを有し、
記底面部は前記シートが折り畳まれて複数のシート片が重ねられた蛇腹折り構造を有しており、
それぞれの前記シート片は前記底板部に対向している、蓄電装置。
【請求項2】
前記蛇腹折り構造は、山数が2山以上8山以下である、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蛇腹折り構造を構成している前記シートの部分には複数の孔が形成されている、請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記蛇腹折り構造において折りによって向かい合う前記シートの2つの領域では、一方の前記領域に形成された前記孔は、他方の前記領域の前記孔が形成されていない部分に対向している、請求項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
絶縁材からなるシートが折られて形成され、底面部及び前記底面部から立設した複数の側面部を有し、前記底面部は前記シートが折り畳まれて複数のシート片が重ねられた蛇腹折り構造を有しており、前記シート片は前記側面部が前記底面部から立設する方向に重ねられている、絶縁ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置及び絶縁ホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両の駆動用電源として、二次電池やキャパシタなどの蓄電装置が用いられている。このような蓄電装置では、機械的強度の観点などから外装ケースとしてアルミニウムなどの金属ケースを用いることがあり、この場合、金属ケースと、金属ケースの中に収容された電極体とが接触すると、電極体内の正極及び負極が短絡する可能性がある。このような短絡を防ぐために、袋状に構成した絶縁ホルダの中に電極体を収容し、その電極体を絶縁ホルダとともに金属ケースへ収容させることにより、電極体と金属ケースとの間に絶縁ホルダを介在させることが考えられる。絶縁ホルダを介在させることにより、金属ケースと電極体とが接触することを防止でき、そのため短絡を防止できる。
【0003】
例えば特許文献1には、電極体を収容して、外装ケース内に収容する絶縁ホルダにおいて、外装ケースの隅部の曲面に絶縁ホルダの角部が当接する場合に、電極体内の応力が集中することを抑制できる絶縁ホルダが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、電極体と収納容器の内壁との間に位置し、電解液に含浸された状態で弾性を発揮して電極体に圧接する起伏が形成された圧接体とを備えた蓄電素子が開示されており、蓄電素子に衝撃や振動が加えられても電極体が揺動することなく安定して保持されると記載されている。
【0005】
特許文献3には、ケース内の底面と接触する接触部を具備するボトムリーテナーが形成され、ボトムリーテナーは電極組立体を支持する支持部を有していて、テンション状態を維持することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-29218号公報
【文献】特開2014-199782号公報
【文献】特開2015-204292号公報
【発明の概要】
【0007】
特許文献2,3では特許文献1とは異なり、電極体・電極組立体の側面もケースに対して絶縁を保持する絶縁ホルダが開示されていないが、電極体がケースに接触することによる短絡を確実に防ぐためには絶縁ホルダも備えられている方が好ましい。
【0008】
しかしながら、特許文献2,3の電池において絶縁ホルダを具備させると、絶縁ホルダと圧接体あるいはボトムリテーナという2つ部材が必要になり、コストが増大してしまうという問題がある。
【0009】
本開示の蓄電装置は、少なくとも一つの正極板と少なくとも一つの負極板とがセパレータを介して積層された電極体と、絶縁材からなるシートが折られて形成され、前記電極体を収容した絶縁ホルダと、開口を有し、前記電極体を前記絶縁ホルダ及び電解質とともに収容した外装ケースと、前記開口を封口する封口板とを備え、前記外装ケースは、底板部、及び前記底板部から立設した複数の側壁を有し、前記底板部に対向して前記開口が形成されており、前記絶縁ホルダは、複数の前記側壁にそれぞれ対向する複数の側面部と、前記底板部に対向する底面部とを有し、前記側面部及び前記底面部の少なくとも1つは、蛇腹折り構造を有する構成を備えている。ここで、蛇腹折りとは、山折り・谷折りを平行に且つ順に端から均等な幅で折る折り方である。
【0010】
前記底面部が前記蛇腹折り構造を有していてもよい。
【0011】
前記蛇腹折り構造は、山数が2山以上8山以下であってもよい。ここで蛇腹折り構造の山数とは、山折り及び谷折りの折りの数であって、蛇腹折りが他の平面部分と連続している場合は、その境界をなす折りは山数には含まれない。
【0012】
前記蛇腹折り構造を構成している前記シートの部分には複数の孔が形成されていてもよい。そして、前記蛇腹折り構造において折りによって向かい合う前記シートの2つの領域では、一方の前記領域に形成された前記孔は、他方の前記領域の前記孔が形成されていない部分に対向していることが好ましい。
【0013】
本開示の絶縁ホルダは、絶縁材からなるシートが折られて形成され、底面部及び前記底面部から立設した複数の側面部を有し、前記側面部及び前記底面部の少なくとも1つは、蛇腹折り構造を有する構成を備えている。
【0014】
本開示の蓄電装置は、絶縁ホルダの側面部及び底面部の少なくとも1つに蛇腹折り構造が備えられているので、電極体が外装ケースに接触してしまうことを確実に且つ低コストで防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係る二次電池の模式的な外観斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、実施形態に係る絶縁ホルダを展開した図である。
図4図4は、実施形態に係る絶縁ホルダの、狭幅側面部に平行な模式的な断面図である。
図5図5は、比較例の絶縁ホルダを展開した図である。
図6図6は、別の実施形態に係る絶縁ホルダを展開した図である。
図7図7は、他の実施形態に係る絶縁ホルダを展開した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、以下の実施形態では単体としての蓄電装置を説明するが、EV等の高出力及び大容量の蓄電設備が必要な機器等に関しては、単体の蓄電装置を複数直列ないし並列に接続して、いわゆる組電池として使用されることがある。
【0017】
(実施形態1)
実施形態1に係る二次電池(蓄電装置)としての角形二次電池20の構成を以下に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0018】
図1及び図2に示すように角形二次電池20は、開口を有する有底角筒状の外装ケース1と、外装ケース1の開口を封口する封口板2とからなる電池ケース100を備える。外装ケース1及び封口板2は、それぞれ金属製であることが好ましい。外装ケース1は、封口板2に対向する底板部1aと、底板部1aから立設した4つの側壁1b、1cからなっている。これらの側壁1b、1cは、互いに対向する2つの狭幅側壁1bと、互いに対向する2つの広幅側壁1cとからなり、2つの広幅側壁1cの側辺同士の間にそれぞれ狭幅側壁1bが位置している。外装ケース1内には、正極板と負極板を含む電極体3が電解質と共に収容されている。本実施形態では電解質は液状である。
【0019】
電極体3の封口板2側の端部には、複数の正極タブからなる正極タブ群40と、複数の負極タブからなる負極タブ群50が設けられている。正極タブ群40は第1正極集電体6a及び第2正極集電体6bを介して正極端子7に電気的に接続されている。負極タブ群50は第1負極集電体8a及び第2負極集電体8bを介して負極端子9に電気的に接続されている。
【0020】
第1正極集電体6a、第2正極集電体6b及び正極端子7は金属製であることが好ましく、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることがより好ましい。正極端子7と封口板2の間には樹脂製の外部側絶縁部材10が配置されている。第1正極集電体6a及び第2正極集電体6bと封口板2の間には樹脂製の内部側絶縁部材11が配置されている。
【0021】
第1負極集電体8a、第2負極集電体8b及び負極端子9は金属製であることが好ましく、銅又は銅合金製であることがより好ましい。また、負極端子9は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる部分と、銅又は銅合金からなる部分を有するようにすることが好ましい。この場合、銅又は銅合金からなる部分を第1負極集電体8aに接続し、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる部分を封口板2よりも外部側に突出するようにすることが好ましい。負極端子9と封口板2の間には樹脂製の外部側絶縁部材12が配置されている。第1負極集電体8a及び第2負極集電体8bと封口板2の間には樹脂製の内部側絶縁部材13が配置されている。
【0022】
電極体3と外装ケース1の間には樹脂製の樹脂シートからなる絶縁ホルダ14が配置されている。絶縁ホルダ14は、樹脂製の絶縁シートを箱状に折り曲げ成形したものである。この絶縁ホルダ14により、電極体3と外装ケース1との間が確実に電気的に絶縁状態として保持されている。なお、絶縁ホルダ14については後ほど詳しく説明をする。
【0023】
封口板2には電解質注液孔15が設けられており、電解質注液孔15は封止部材16で封止されている。封口板2には、電池ケース100内の圧力が所定値以上となったときに破断し電池ケース100内のガスを電池ケース100外に排出するガス排出弁17が設けられている。
【0024】
次に角形二次電池20の製造方法及び各構成の詳細を説明する。
【0025】
[正極板]
まず、正極板の製造方法を説明する。
【0026】
[正極活物質合材層スラリーの作製]
正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)、導電材としての炭素材料、及び分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)をリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物:PVdF:炭素材料の質量比が97.5:1:1.5となるように混練し、正極活物質合材層スラリーを作製する。
【0027】
[正極保護層スラリーの作製]
アルミナ粉末、導電材としての黒鉛、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を、アルミナ粉末:黒鉛:PVdFの質量比が83:3:14となるように混練し、保護層スラリーを作製する。
【0028】
[正極活物質合材層及び正極保護層の形成]
正極芯体としての厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、上述の方法で作製した正極活物質合材層スラリー及び正極保護層スラリーをダイコータにより塗布する。このとき、正極芯体の幅方向の中央に正極活物質合材層スラリーが塗布される。また、正極活物質合材層スラリーが塗布される領域の幅方向の両端に正極保護層スラリーが塗布されるようにする。
【0029】
正極活物質合材層スラリー及び正極保護層スラリーが塗布された正極芯体を乾燥させ、スラリー中のNMPを除去する。これにより正極活物質合材層及び保護層が形成される。その後、一対のプレスローラの間を通過させることにより、正極活物質合材層を圧縮して正極原板とする。この正極原板を所定のサイズにカットして正極板ができあがる。正極板は、正極芯体が矩形の一片から正極タブが突き出した形状をしており、正極芯体の矩形部分に正極活物質合材層が形成されている。
【0030】
[負極板]
次に、負極板の製造方法を説明する。
【0031】
[負極活物質合材層スラリーの作製]
負極活物質としての黒鉛、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、及び分散媒としての水を、黒鉛:SBR:CMCの質量比が98:1:1となるように混練し、負極活物質合材層スラリーを作製する。
【0032】
[負極活物質合材層の形成]
負極芯体としての厚さ8μmの銅箔の両面に、上述の方法で作製した負極活物質合材層スラリーをダイコータにより塗布する。
【0033】
負極活物質合材層スラリーが塗布された負極芯体を乾燥させ、スラリー中の水を除去する。これにより負極活物質合材層が形成される。その後、一対のプレスローラの間を通過させることにより、負極活物質合材層を圧縮して負極原板とする。この負極原板を所定のサイズにカットして負極板ができあがる。負極板は、負極芯体が矩形の一片から負極タブが突き出した形状をしており、負極芯体の矩形部分に負極活物質合材層が形成されている。
【0034】
[電極体の作製]
上述の方法で作製した正極板及び負極板を、セパレータを介して積層し、積層型の電極体3を製造する。電極体3の一つの端部には、複数の正極タブからなる正極タブ群40と、複数の負極タブからなる負極タブ群50が設けられる。
【0035】
[集電体とタブの接続]
電極体3の正極タブ群40を第2正極集電体6bに接続すると共に、電極体3の負極タブ群50を第2負極集電体8bに接続する。これらの接続は、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接等により行うことができる。
【0036】
[封口板への各部品取り付け]
封口板2の正極端子挿入孔2aの周囲の電池外面側に外部側絶縁部材10を配置する。封口板2の正極端子挿入孔2aの周囲の電池内面側に内部側絶縁部材11及び第1正極集電体6aを配置する。そして、正極端子7を電池外部側から、外部側絶縁部材10の貫通孔、封口板2の正極端子挿入孔2a、内部側絶縁部材11の貫通孔及び第1正極集電体6aの端子接続孔に挿入し、正極端子7の先端を第1正極集電体6a上にカシメる。これにより、正極端子7及び第1正極集電体6aが封口板2に固定される。なお、正極端子7においてカシメられた部分と第1正極集電体6aを溶接接続することが好ましい。
【0037】
封口板2の負極端子挿入孔2bの周囲の電池外面側に外部側絶縁部材12を配置する。封口板2の負極端子挿入孔2bの周囲の電池内面側に内部側絶縁部材13及び第1負極集電体8aを配置する。そして、負極端子9を電池外部側から、外部側絶縁部材12の貫通孔、封口板2の負極端子挿入孔2b、内部側絶縁部材13の貫通孔及び第1負極集電体8aの端子接続孔に挿入し、負極端子9の先端を第1負極集電体8a上にカシメる。これにより、負極端子9及び第1負極集電体8aが封口板2に固定される。なお、負極端子9においてカシメられた部分と第1負極集電体8aを溶接接続することが好ましい。
【0038】
内部側絶縁部材11において、封口板2に設けられた電解質注液孔15と対向する部分には、注液開口が設けられている。また、注液開口の縁部には筒状部が設けられている。
【0039】
[第1集電体と第2集電体の接続]
正極タブ群40が接続された第2正極集電体6bを、その一部が第1正極集電体6aと重なるようにして、内部側絶縁部材11上に配置する。そして、第2正極集電体6bに形成された薄肉部にレーザー照射することにより、第2正極集電体6bと第1正極集電体6aを溶接接続する。また、負極タブ群50が接続された第2負極集電体8bを、その一部が第1負極集電体8aと重なるようにして、内部側絶縁部材13上に配置する。そして、第2負極集電体8bに形成された薄肉部にレーザー照射することにより、第2負極集電体8bと第1負極集電体8aを溶接接続する。
【0040】
[二次電池の作製]
封口板2に取り付けた電極体3を、箱状に成形した絶縁シートからなる絶縁ホルダ14内に収容する。
【0041】
絶縁ホルダ14に収容された電極体3を外装ケース1に挿入する。そして、封口板2と外装ケース1を溶接し、外装ケース1の開口を封口板2により封口する。そして、封口板2に設けられた電解質注液孔15を通じて外装ケース1内に電解質を注液する。その後、電解質注液孔15をブラインドリベット等の封止部材により封止する。これにより角形二次電池20が完成する。
【0042】
<絶縁ホルダ>
本実施形態に係る絶縁ホルダ14を構成する樹脂シートを展開した状態(折りたたむ前の状態)を図3に示す。絶縁ホルダ14を構成する樹脂シートは、電解質に耐性のある樹脂、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなり、厚みは20~100μmが好ましい。なお、絶縁ホルダ14はポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなる不織布・織布であってもかまわない。
【0043】
本実施形態に係る絶縁ホルダ14は、外装ケース1の底板部1aに対向する底面部20が蛇腹折り構造を有している。蛇腹折り構造とはシートや薄板状の素材を、山折りと谷折りを平行に且つ順番に端から均等な幅で折る折り方によって形成されるジグザグの折りたたみ構造である。本実施形態の底面部20の蛇腹折り構造の山31の数は4である。すなわち山数とは、山折り及び谷折りの折りの数であって、蛇腹折りが他の平面部分(ここでは絶縁ホルダ14の広幅側面部21)と連続している場合は、その境界をなす折りは山数には含まれない。図4に示すように底面部20はジグザグになっていて、山数が4であるため5枚の重なりシート片32,32,・・が折り畳まれて重なった構造である。
【0044】
一方、比較例として図5に絶縁ホルダ19のすべての面が蛇腹折り構造ではない平らな1枚のシート部分により構成されている絶縁ホルダ19を示す。
【0045】
本実施形態では、図4に示すように5枚の重なりシート片32,32,・・が重なって底面部20を形成しているため、絶縁ホルダ14の底面部20は比較例の絶縁ホルダの19の底面部25に比べて5倍の厚みがあり、クッション性が良好になっている。本実施形態では、角形二次電池20が底板部1aを下にして使用されることが想定されており、電極体3の下面をクッション性の良好な底面部20が支えることになるため、振動等による電極体3の破損を防止できる。
【0046】
本実施形態の絶縁ホルダ14の蛇腹折り構造の形成方法は特に限定されないが、例えば以下のように蛇腹折り構造を形成することができる。
【0047】
まず図3に示すような所定の形状に樹脂シートをカットする。このときには、底面部20の複数の孔29,29,・・も形成しておく。次に金属等の堅い部材の角部分を樹脂シートに押しつけて、折り目をつける。それから折り目に、金属片端部や棒状物を押し当てて樹脂シートに折り癖をつける。そして樹脂シートを折りたたみ、圧を加えて蛇腹折り構造を形成する。それから、広幅側面部21,21及び狭幅側面部22,22,・・を折って、有底角筒状の絶縁ホルダ14とする。なお、狭幅側面部22,22,・・の底面部20側には、蛇腹折り構造により底面部20が比較例の絶縁ホルダ19に比べて厚みが大きくなるため、狭幅側面部22,22,・・の底面側の長さが不足するのでそれを補う、補足部23,23,・・が設けられている。
【0048】
また、5枚の重なりシート片32,32,・・のそれぞれには複数の孔29,29,・・が形成されている。この孔29,29,・・は電解質を通過させるためのもので、互いに直接向かい合っている2枚のシート片32,32(樹脂シートの2つの領域)においては、一方のシート片32に形成された孔29は、他方のシート片32の孔29が形成されていない部分(孔29以外の部分、つまりシートの素材が存している部分)に対向している。
【0049】
すなわち、互いに直接重なり合っている2つのシート片32,32においては、シート片32に対して垂直な方向において上下のシート片32,32の孔同士が連通しないように、シート片32の面内方向において上のシート片32の孔29と下のシート片32の孔29とは異なる位置に形成されている。このような構成であるため、孔29,29,・・による電極体3と外装ケース1との接触を防ぐことができるので短絡を防止できる。また、外装ケース1の底側に存している電解質が底面部20を通して行き来がしやすく、電解質の液回り性が良好になる。さらには、底面部20の蛇腹折り構造の部分に電解質を多く保持できる。
【0050】
本実施形態の絶縁ホルダ14は、比較例の絶縁ホルダ19に特許文献2の圧接体や特許文献3のボトムリテーナーを組み合わせたような効果を奏するが、1つの部材で2つの部材の効果を奏することができる。
【0051】
(実施形態2)
実施形態2に係る二次電池は、絶縁ホルダの構造だけが実施形態1に係る二次電池20と異なるので、異なる構造のみを以下に説明する。
【0052】
図6に、本実施形態に係る絶縁ホルダ24を構成する樹脂シートを展開した状態(折りたたむ前の状態)を示す。本実施形態では、蛇腹折り構造を底面部25ではなく、狭幅側面部41,43に設けている。そして1つの広幅側面部21を挟んで対向する2つの狭幅側面部41,43に蛇腹折り構造を設けている。両狭幅側面部41,43の蛇腹折り構造の山31の数は3であり、重なりシート片33,33,・・、35,35,・・はそれぞれ4枚である。実施形態1では蛇腹折り構造の両側に広幅側面部21,21が連続していたため、折りたたんだ際に広幅側面部21,21同士が対向するよう重なりシート片32,32,・・は奇数である必要があるが、本実施形態では蛇腹折り構造の一端側には何も連結していないため、重なりシート片33、35の数は奇数でも偶数でもかまわない。
【0053】
2つの狭幅側面部41,43に設けられた蛇腹折り構造のうち、一方の狭幅側面部43にのみ複数の孔29,29,・・が設けられている。この孔29を設ける位置は実施形態1と同様に、重なり合うシート片35,35同士で折りたたんだ際に孔29が重ならない位置としている。さらに、複数の孔29,29,・・が設けられた狭幅側面部43に、シートが存しない部分を挟んで対向する狭幅側面部26にも複数の孔29,29,・・が設けられている。本実施形態の二次電池は狭幅側面部43が対向する側壁部1bを下にして使用されることが想定されており、電極体3の側面をクッション性の良好な狭幅側面部43が支えることになるため、振動等による電極体3の破損を防止できる。また、下側に存する電解質が複数の孔29,29,・・を通過して外装ケース1と電極体3との間を行き来することができる。
【0054】
さらに、実施形態1に係る二次電池20では底面の反対側の上面側はで極体3が封口板3に固定されていたので、電極体3の上面側は振動に対して保護されているが、本実施形態における電極体3の側面側は両方とも蛇腹折り構造を有する狭幅側面部41,43に保護されており、上下方向(縦方向)の振動による電極体3の破損を防止できる。
【0055】
なお、本実施形態の二次電池を使用する際には、側壁部1bを下にせず、底板部1aを下にして設置してもかまわない。底板部1aを下にして本実施形態の二次電池を使用すると、横方向の振動が生じた場合に2つの狭幅側面部41,43に設けられた蛇腹折り構造がその振動に対して電極体3を保護して電極体3の破損を防止できる。
【0056】
さらに他方の狭幅側面部41にも複数の孔を設けることができる。例えば、本実施形態に係る二次電池を複数接続して組電池として用いる際に、正極端子と負極端子とを接続するために一方の狭幅側面部43が対向する側壁部1bと他方の狭幅側面部41が対向する側壁部1bとが交互に下側になるように複数の二次電池を設置する場合や、複数の二次電池が1つの単位(ブロック)として取り扱われ、ブロック毎に一方の狭幅側面部43が対向する側壁部1bと他方の狭幅側面部41が対向する側壁部1bとが交互に下側になるように複数の二次電池を設置する場合があり、このような組電池では両狭幅側面部41,43の両方に複数の孔29,29,・・・設けることが好ましい。
【0057】
本実施形態においては、絶縁ホルダ以外の二次電池の部材構成・形状は実施形態1と同じであるので、これらについては実施形態1を参照し、本実施形態においては記載を省略する。
【0058】
実施形態2の二次電池及び絶縁ホルダは、実施形態1の二次電池及び絶縁ホルダと同じ効果を奏する。
【0059】
(実施形態3)
実施形態3に係る二次電池は、絶縁ホルダの構造だけが実施形態1に係る二次電池20及び実施形態2に係る二次電池と異なるので、異なる構造のみを以下に説明する。
【0060】
図7に、本実施形態に係る絶縁ホルダ34を構成する樹脂シートを展開した状態(折りたたむ前の状態)を示す。本実施形態では、蛇腹折り構造を底面部25ではなく、1つの狭幅側面部45に設けている。狭幅側面部45の蛇腹折り構造の山31の数は4であり、重なりシート片44,44,・・は5枚である。
【0061】
本実施形態の二次電池も狭幅側面部45が対向する側壁部1bを下にして使用されることが想定されている。本実施形態においては、蛇腹折り構造を有する狭幅側面部45と、シートが存しない部分を挟んでそれに対向する狭幅側面部26に、それぞれ複数の孔29,29,・・が設けられている。これらの孔29,29,・・が実施形態2と同様に電解質の液回り性を良好に保つ。
【0062】
なお、絶縁ホルダ以外の二次電池の部材構成・形状は実施形態1と同じであるので、これらについては実施形態1を参照し、本実施形態においては記載を省略する。
【0063】
実施形態3の二次電池及び絶縁ホルダは、実施形態1の二次電池及び絶縁ホルダと同じ効果を奏する。実施形態2の二次電池及び絶縁ホルダに比べて、二次電池の上側の電極体3に関する保護がやや劣るが、下側の保護は同等である。
【0064】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0065】
電極体は複数の正極板と複数の負極板がセパレータを介して交互に積層された積層電極体に限定されず、正極板と負極板との間にセパレータを挟んで、これらを巻回した電極体であってもかまわない。巻回した電極体の場合、封口板が上側に位置する状態で、巻回軸が鉛直方向に伸びている電極体であってもよいし、巻回軸が水平方向に伸びている電極体であってもかまわない。また、一つの蓄電装置に電極体が複数存在していてもかまわない。また、蓄電装置としては二次電池に限定されず、キャパシタであってもかまわない。
【0066】
絶縁ホルダは、樹脂製の絶縁シートを袋状に折り曲げ成形してもよい。
【0067】
蛇腹折り構造の山の数は、2山以上8山が好ましく、クッション性や製造のしやすさを考慮すると4山以上6山以下がより好ましい。
【0068】
用いる電解質は、液状であってよいし、固体状であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 外装ケース
1a 底板部
1b、1c 側壁部
2 封口板
3 電極体
14 絶縁ホルダ
20 底面部
21、22 側面部
24 絶縁ホルダ
25 底面部
29 孔
31 山
34 絶縁ホルダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7