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特許7621976皮膚特性検出システム、皮膚特性検出方法、皮膚年齢推定用シート若しくはカード、柔軟感推定用シート若しくはカード、効果検証方法、皮膚年齢比較方法及び柔軟感比較方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】皮膚特性検出システム、皮膚特性検出方法、皮膚年齢推定用シート若しくはカード、柔軟感推定用シート若しくはカード、効果検証方法、皮膚年齢比較方法及び柔軟感比較方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
A61B5/00 M
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021567721
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048974
(87)【国際公開番号】W WO2021132656
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/051284
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】風間 泰規
(72)【発明者】
【氏名】北村 尚美
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直輝
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正吾
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-240374(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194468(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054354(US,A1)
【文献】国際公開第01/052724(WO,A1)
【文献】特開2013-013628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の特性を表す特性値を検出する皮膚特性検出システムであって、
接触子の皮膚への押し込み量を制御する押し込み量制御装置と、
皮膚から接触子に加わる反力を測定する反力測定装置と、
前記測定された反力に基づいて前記特性値を検出する検出装置と、を備え、
前記押し込み量制御装置は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させること、前記接触子によって皮膚を押し込んだ後に押し込み量を一定に維持すること及び前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で減少させることのうち少なくともいずれか一つを実行し、
前記特性値は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記押し込み量に対する前記反力の非線形性を表すパラメータ、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記反力の非線形性を考慮した皮膚の剛性を表すパラメータ、前記押し込み量を一定に維持したときの前記反力の変化を表すパラメータ、及び前記押し込み量を一定に維持したときに開放されなかったエネルギの割合を表すパラメータのうちの少なくともいずれか一つの値を含む、皮膚特性検出システム。
【請求項2】
前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記押し込み量に対する前記反力の非線形性を表すパラメータの値は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記反力の推移を下記式(1)によって近似したときのaであり、
σ=k0・da …(1)
前記式(1)においてσは反力、dは押し込み量、k0は定数である、請求項1に記載の皮膚特性検出システム。
【請求項3】
前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記押し込み量に対する前記反力の非線形性を表すパラメータの値は、前記押し込み量の増大を開始してから前記押し込み量が所定量に到達するまでの間に測定された反力の積分値と、前記押し込み量の増大を開始してから前記押し込み量が所定量に到達したときの反力まで前記押し込み量及び反力が一定速度で増大したと仮定したときに前記押し込み量の増大を開始してから前記押し込み量が所定量に到達するまでの間の反力の積分値との比率である、請求項1又は2に記載の皮膚特性検出システム。
【請求項4】
前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記反力の非線形性を考慮した皮膚の剛性を表すパラメータの値は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記反力の推移を下記式(2)によって近似したときのk0であり、
σ=k0・da …(2)
前記式(2)においてσは反力、dは押し込み量、aは定数である、請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膚特性検出システム。
【請求項5】
前記押し込み量を一定に維持したときに開放されなかったエネルギの割合を表すパラメータの値は、前記押し込み量の増大を開始してから前記押し込み量が所定量に到達するまでの間に測定された反力の積分値と、前記押し込み量を前記所定量から前記押し込み量の増大を開始したときの押し込み量まで減少させている間に測定された反力の積分値との比率である、請求項1~のいずれか1項に記載の皮膚特性検出システム。
【請求項6】
前記特性値は、前記押し込み量の増大を開始してから所定時間が経過するまでの間に測定された反力の積分値を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の皮膚特性検出システム。
【請求項7】
前記押し込み量制御装置は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させ、次いで一定に維持し、その後、一定の速度で減少させるように構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の皮膚特性検出システム。
【請求項8】
前記押し込み量制御装置は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させ、その後、前記押し込み量を一定に維持することなく、一定の速度で減少させるように構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の皮膚特性検出システム。
【請求項9】
皮膚の特性を表す特性値を検出する皮膚特性検出システムであって、
接触子の皮膚への押し込み量を制御する押し込み量制御装置と、
皮膚から接触子に加わる反力を測定する反力測定装置と、
前記測定された反力に基づいて前記特性値を検出する検出装置と、を備え、
前記押し込み量制御装置は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させ、次いで一定に維持するように押し込み量を制御し、
前記特性値は、接触子による押し込み量を一定に維持したときの反力の変化を表すパラメータの値を定数nで除算した値であり、
前記定数nは、前記接触子の押し込み量が一定に維持されたときの反力σの変位を下記式で表すことによって算出され、
σ=m・exp(-nt)+C …(3)
式(3)においてtは時間、mは定数である、皮膚特性検出システム。
【請求項10】
前記押し込み量を一定に維持したときの前記反力の変化を表すパラメータの値は、前記皮膚の粘弾性特性を3要素固体モデルで近似したときに、ダッシュポットと直列に連結された線形バネのバネ定数に相当する、請求項1~のいずれか1項に記載の皮膚特性検出システム。
【請求項11】
前記押し込み量を一定に維持したときの前記反力の変化を表すパラメータの値は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定速度で増大させたときに反力が弾性的に変化したと近似したときの弾性係数から、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定速度で減少させたときに反力が弾性的に変化したと近似したときの弾性係数を減算した値である、請求項1~10のいずれか1項に記載の皮膚特性検出システム。
【請求項12】
皮膚の特性を表す特性値を検出する皮膚特性検出システムであって、
接触子の皮膚への押し込み量を制御する押し込み量制御装置と、
皮膚から接触子に加わる反力を測定する反力測定装置と、
前記測定された反力に基づいて前記特性値を検出する検出装置と、を備え、
前記押し込み量制御装置は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させるように押し込み量を制御し、
前記特性値は、前記反力の最大値である、皮膚特性検出システム。
【請求項13】
皮膚の特性を表す特性値を検出する皮膚特性検出方法であって、
接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたとき、前記接触子によって皮膚を押し込んだ後に押し込み量を一定に維持したとき、及び前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で減少させたときのうちの少なくともいずれか一つのときに皮膚から前記接触子に加わる反力を測定することと、
前記測定された反力に基づいて前記特性値を検出することと、を含み、
前記特性値は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記押し込み量に対する前記反力の非線形性を表すパラメータ、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記反力の非線形性を考慮した皮膚の剛性を表すパラメータ、前記押し込み量を一定に維持したときの前記反力の変化を表すパラメータ及び前記押し込み量を一定に維持したときに開放されなかったエネルギの割合を表すパラメータのうちの少なくともいずれか一つの値を含む、皮膚特性検出方法。
【請求項14】
皮膚の特性を表す特性値を検出する皮膚特性検出方法であって、
接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたとき、次いで一定に維持したときに皮膚から前記接触子に加わる反力を測定することと、
前記測定された反力に基づいて前記特性値を検出することと、を含み、
前記特性値は、接触子による押し込み量を一定に維持したときの反力の変化を表すパラメータの値を定数nで除算した値であり、
前記定数nは、前記接触子の押し込み量が一定に維持されたときの反力σの変位を下記式で表すことによって算出され、
σ=m・exp(-nt)+C …(4)
式(4)においてtは時間、mは定数である、皮膚特性検出方法。
【請求項15】
皮膚の特性を表す特性値を検出する皮膚特性検出方法であって、
接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときに皮膚から前記接触子に加わる反力を測定することと、
前記測定された反力に基づいて前記特性値を検出することと、を含み、
前記特性値は、前記反力の最大値である、皮膚特性検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮膚特性検出システム、皮膚特性検出方法、皮膚年齢推定用シート若しくはカード、柔軟感推定用シート若しくはカード、効果検証方法、皮膚年齢比較方法及び柔軟感比較方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚(肌)を触ったときに感じる柔軟感(例えば、皮膚を押し込んだときに皮膚に押し返されたと感じる力の大きさ、皮膚を押し込んだときに皮膚が詰まっていると感じる度合い、等)を定量的に捉えるべく、様々なシステムが提案されている。斯かるシステムとして、例えば、プローブにより皮膚に陰圧を加えて皮膚表面を一定期間吸引し、その後、陰圧を除去し、その過程での皮膚表面における変位を測定するシステムが知られている。このシステムでは、陰圧を印加、除去する過程での皮膚表面における変化に関するパラメータを、皮膚の柔軟感を示す指標として検出している。
【0003】
他には、斯かるシステムとして、接触子で皮膚を押し込んだときに接触子に加わる圧力をロードセルにより測定するシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。このシステムでは、接触子に加わる圧力の最大値を、皮膚の柔軟感を示す指標として検出している。
【0004】
一方で、柔軟感を知覚する際に機能する機械受容器は未だに特定されていない。このため、機械受容器を特定すべく、物理的な外的刺激と内的な感覚との対応関係を測定する様々な心理物理実験が行われている。この結果、例えば、対象物に触れたときの剛性の弁別閾(丁度可知差異)には機械的仕事(変位に対して積分された力)及び最終的な抵抗力が関係していることが報告されている(例えば、非特許文献1)。また、対象物を押し込む際の反力の増加率が剛性知覚の代替になり得ることが報告されている(例えば、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-130580号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Hong Z. Tan、他3名、「Manual discrimination of compliance using active pinch grasp: The roles of force and work cues」、Perception & Psychophysics、Psychonomic Society、1995年6月、Volume 57、Issue 4、p.495-510
【文献】Dale A. Lawrence、他3名、「Rate-hardness: a New performance metric for haptic interfaces」、IEEE Transactions on Robotics and Automation、IEEE、2000年8月、Volume 16、Issue 4、p.357-371
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で用いられている指標では、皮膚を触ったときに感じる実際の柔軟感を必ずしも精度良く評価することができていなかった。換言すると、上述したような指標は、実際の柔軟感との間に必ずしも十分な相関を得られていなかった。これは、非特許文献1や非特許文献2による報告を考慮すれば、柔軟感は、圧力の最大値といった単純なパラメータのみで決定できるものではないことによるものだと考えられる。このため、皮膚の柔軟感を表す新たな指標が必要とされている。
【0008】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、皮膚の柔軟感を表す新たな指標となるパラメータの値を検出することができる皮膚特性検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0010】
[1]皮膚の特性を表す特性値を検出する皮膚特性検出システムであって、接触子の皮膚への押し込み量を制御する押し込み量制御装置と、皮膚から接触子に加わる反力を測定する反力測定装置と、前記測定された反力に基づいて前記特性値を検出する検出部と、を備え、前記押し込み量制御装置は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させること、前記接触子によって皮膚を押し込んだ後に押し込み量を一定に維持すること及び前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で減少させることのうち少なくともいずれか一つを実行し、前記特性値は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記押し込み量に対する前記反力の非線形性を表すパラメータ、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記反力の非線形性を考慮した皮膚の剛性を表すパラメータ、前記押し込み量を一定に維持したときの前記反力の変化を表すパラメータ、及び前記押し込み量を一定に維持したときに開放されなかったエネルギの割合を表すパラメータのうちの少なくともいずれか一つの値を含む、皮膚特性検出システム。
[2]前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記押し込み量に対する前記反力の非線形性を表すパラメータの値は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記反力の推移を下記式(1)によって近似したときのaであり、
σ=k0・da …(1)
前記式(1)においてσは反力、dは押し込み量、k0は定数である、上記[1]に記載の皮膚特性検出システム。
[3]前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記押し込み量に対する前記反力の非線形性を表すパラメータの値は、前記押し込み量の増大を開始してから前記押し込み量が所定量に到達するまでの間に測定された反力の積分値と、前記押し込み量の増大を開始してから前記押し込み量が所定量に到達したときの反力まで前記押し込み量及び反力が一定速度で増大したと仮定したときに前記押し込み量の増大を開始してから前記押し込み量が所定量に到達するまでの間の反力の積分値との比率である、上記[1]又は[2]に記載の皮膚特性検出システム。
[4]前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記反力の非線形性を考慮した皮膚の剛性を表すパラメータの値は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記反力の推移を下記式(2)によって近似したときのk0であり、
σ=k0・da …(2)
前記式(2)においてσは反力、dは押し込み量、aは定数である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の皮膚特性検出システム。
[5]前記押し込み量を一定に維持したときの前記反力の変化を表すパラメータの値は、前記皮膚の粘弾性特性を3要素固体モデルで近似したときに、ダッシュポットと直列に連結された線形バネのバネ定数に相当する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の皮膚特性検出システム。
[6]前記押し込み量を一定に維持したときの前記反力の変化を表すパラメータの値は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定速度で増大させたときに反力が弾性的に変化したと近似したときの弾性係数から、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定速度で減少させたときに反力が弾性的に変化したと近似したときの弾性係数を減算した値である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の皮膚特性検出システム。
[7]前記押し込み量を一定に維持したときに開放されなかったエネルギの割合を表すパラメータの値は、前記押し込み量の増大を開始してから前記押し込み量が所定量に到達するまでの間に測定された反力の積分値と、前記押し込み量を前記所定量から前記押し込み量の増大を開始したときの押し込み量まで減少させている間に測定された反力の積分値との比率である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の皮膚特性検出システム。
[8]前記特性値は、前記押し込み量の増大を開始してから所定時間が経過するまでの間に測定された反力の積分値を含む、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の皮膚特性検出システム。
[9]前記押し込み量制御装置は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させ、次いで一定に維持し、その後、一定の速度で減少させるように構成される、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の皮膚特性検出システム。
[10]前記押し込み量制御装置は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させ、その後、前記押し込み量を一定に維持することなく、一定の速度で減少させるように構成される、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の皮膚特性検出システム。
[11]前記検出部によって検出された前記特性値と前記特性値と年齢との予め求められた相関関係とに基づいて、前記特性値が検出された皮膚の皮膚年齢を推定する皮膚年齢推定部を更に備える、[1]~[10]のいずれか1つに記載の皮膚特性検出システム。
[12]前記皮膚年齢推定部によって推定された皮膚年齢を表示機器に表示させる表示部をさらに備える、[11]に記載の皮膚特性検出システム。
[13]前記検出部によって検出された前記特性値と前記特性値と皮膚の柔軟感との予め求められた相関関係とに基づいて、前記特性値が検出された皮膚の柔軟感を推定する柔軟感推定部を更に備える、[1]~[12]のいずれか1つに記載の皮膚特性検出システム。
[14]前記柔軟感推定部によって推定された柔軟感に関する指標値又は指標を表示機器に表示させる表示部をさらに備える、請求項12に記載の皮膚特性検出システム。
[15]皮膚の特性を表す特性値を検出する皮膚特性検出方法であって、接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたとき、前記接触子によって皮膚を押し込んだ後に押し込み量を一定に維持したとき、及び前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で減少させたときのうちの少なくともいずれか一つのときに皮膚から前記接触子に加わる反力を測定することと、前記測定された反力に基づいて前記特性値を検出することと、を含み、前記特性値は、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記押し込み量に対する前記反力の非線形性を表すパラメータ、前記接触子の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの前記反力の非線形性を考慮した皮膚の剛性を表すパラメータ、前記押し込み量を一定に維持したときの前記反力の変化を表すパラメータ及び前記押し込み量を一定に維持したときに開放されなかったエネルギの割合を表すパラメータのうちの少なくともいずれか一つの値を含む、皮膚特性検出方法。
[16]前記特性値と年齢との予め求められた相関関係と、前記検出された特性値とに基づいて、前記特性値の検出された皮膚の皮膚年齢を求めることを更に含む、[15]に記載の皮膚特性検出方法。
[17]前記特性値と皮膚の柔軟感との予め求められた相関関係と、前記検出された特性値とに基づいて、前記特性値の検出された皮膚の柔軟感を求めることを更に含む、[15]又は[16]に記載の皮膚特性検出方法。
[18]上記[15]に記載の皮膚特性検出方法によって検出される前記特性値と年齢との関係を表すグラフ又は表が表示されている皮膚年齢推定用シート又はカード。
[19]皮膚に対して処置を行ったときの処置の効果を検証する効果検証方法であって、
前記皮膚に対する処置を行う前に上記[16]に記載の皮膚特性検出方法によって前記処置が行われる皮膚の皮膚年齢を求めることと、
前記皮膚に対する処置を行った後に上記[16]に記載の皮膚特性検出方法によって前記処置が行われた皮膚の皮膚年齢を求めることと、
前記処置の前後に求められた皮膚年齢を比較することと、を含む、効果検証方法。
[20]他人同士の皮膚の皮膚年齢を比較する皮膚年齢比較方法であって、
[16]に記載の皮膚特性検出方法によって第1の人の皮膚年齢及び第2の人の皮膚年齢をそれぞれ求めることと、
前記求められた第1の人の皮膚年齢と第2の人の皮膚年齢とを比較することと、を含む皮膚年齢比較方法。
[21][15]に記載の皮膚特性検出方法によって検出される前記特性値と皮膚の柔軟感に関する指標値又は指標との関係を表すグラフ又は表が表示されている柔軟感推定用シート又はカード。
[22]皮膚に対して処置を行ったときの処置の効果を検証する効果検証方法であって、
前記皮膚に対する処置を行う前に[17]に記載の皮膚特性検出方法によって前記処置が行われる皮膚の柔軟感を求めることと、
前記皮膚に対する処置を行った後に[17]に記載の皮膚特性検出方法によって前記処置が行われた後の皮膚の柔軟感を求めることと、
前記処置の前後に求められた柔軟感を比較することと、を含む、効果検証方法。
[23]他人同士の皮膚の柔軟感を比較する柔軟感比較方法であって、
[17]に記載の皮膚特性検出方法によって第1の人の皮膚の柔軟感及び第2の人の皮膚の柔軟感をそれぞれ求めることと、
前記求められた第1の人の皮膚の柔軟感と前記求められた第2の人の皮膚の柔軟感とを比較することと、を含む、柔軟感比較方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、皮膚の柔軟感を表す新たな指標となるパラメータの値を検出することができる皮膚特性検出システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一つの実施形態に係る皮膚特性検出システムを概略的に示す図である。
図2図2は、センサによって反力を検出する際の皮膚特性検出システムを概略的に示す図である。
図3図3は、センサによって反力を検出する際の検出態様を概略的に示す図である。
図4図4は、センサの接触子を移動させたときの接触子の変位及び皮膚の反力の時間推移を示す図である。
図5図5は、皮膚の反力を測定するときの各段階におけるセンサ及び皮膚の様子を示す図である。
図6図6は、3要素固体モデルを示す図である。
図7図7は、センサの接触子を移動させたときの接触子の変位の時間推移を示す、図4(B)と同様な図である。
図8図8は、センサの接触子を移動させたときの接触子の変位の時間推移を示す、図4(B)と同様な図である。
図9図9は、センサの接触子を移動させたときの接触子の変位の時間推移を示す、図4(B)と同様な図である。
図10図10は、接触子を移動させている期間中の接触子の移動距離と反力との関係を示す図である。
図11図11は、被験者の年代毎のパラメータk2の平均値を示す図である。
図12図12は、被験者の年代毎のパラメータaの平均値を示す図である。
図13図13は、被験者の年代毎のパラメータRCの平均値を示す図である。
図14図14は、被験者の年代毎のパラメータk1の平均値を示す図である。
図15図15は、パラメータk0と、熟練した評価者によって評価された皮膚の柔軟感との関係の一例を示す散布図である。
図16図16は、被験者の年齢とパラメータk2との関係の一例を示す散布図である。
図17図17は、被験者の年齢とパラメータk2との関係の一例を示す散布図である。
図18図18は、第四実施形態に係る皮膚処置の効果を検証する手順を示すフローチャートである。
図19図19は、図16に示した回帰直線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0014】
第一実施形態
<皮膚特性検出システムの構成>
図1は、第一実施形態に係る皮膚特性検出システム1を概略的に示す図である。皮膚特性検出システム1は、人の皮膚や、人の皮膚に模して作成された人肌モデル等の特性、特に柔軟感を表す特性値を検出する(以下では、人の皮膚の特性値を検出する場合を例にとって説明する)。ここで、柔軟感は、皮膚(肌)を触ったときに感じる肌の感触、特に皮膚の柔軟性(皮膚を押し込んだときに押し返す力、皮膚を押し込んだときに皮膚が詰まっていると感じる度合い、ハリ、柔らかさ、等)に関する特性を意味する。
【0015】
図1に示したように、皮膚特性検出システム1は、センサ10と、センサ10に電気的に接続された処理装置20とを備える。センサ10は、人の皮膚を押し込んだときの反力の大きさを検出するのに用いられる。処理装置20は、センサ10の測定結果に基づいて、皮膚の特性(特に、柔軟感)を表す特性値を検出するのに用いられる。
【0016】
センサ10は、ハウジング11、接触子12、ロードセル13、アクチュエータ14、基板15及びカバー16を備える。
【0017】
本実施形態では、ハウジング11は、ポリスチレン等の樹脂により、円筒状に形成される。ハウジング11は、ロードセル13、アクチュエータ14及び基板15を収容する。また、ハウジング11は開口部を有し、この開口部を通るように接触子12が配置される。接触子12は、その軸線方向において、ハウジング11に対して摺動することができるように配置される。したがって、接触子12はその先端部がハウジング11から外部へ向かって及びハウジング11内に向かって移動することができる。なお、ロードセル13等を収容することができれば、ハウジング11は如何なる外形を有していてもよい。
【0018】
接触子12は、基本的に円筒状に形成されると共に、先端部が半球状に形成される。特に、本実施形態では、接触子12の直径は2~20mm、5~15mm、又は7~12mmである。特に、接触子12は、人の指先程度の大きさとなるように、10mm程度であるのが好ましい。また、接触子12の軸線方向の長さは、例えば、25mmである。接触子12は、ポリスチレン等の樹脂により形成される。接触子12の先端部は、ハウジング11の外へ突出している。
【0019】
ロードセル13は、皮膚から接触子12に加わる反力を測定する反力測定装置の一例である。ロードセル13は、例えば、歪みゲージであり、接触子12が皮膚に押圧されたときに皮膚から接触子12に加わる反力を測定する。ロードセル13は、ハウジング11内に収容され、また、接触子12及びアクチュエータ14に連結されてこれらの間に位置する。
【0020】
アクチュエータ14は、接触子12の皮膚への押し込み量を制御する押し込み量制御装置の一部を構成する。アクチュエータ14は、モータ等によって構成され、接触子12を任意の速度でその軸線方向に駆動する。
【0021】
基板15は、ロードセル13及びアクチュエータ14に電気的に接続される。また、基板15の配線の一部はハウジング11の外部に延びており、この配線は後述する処理装置20に接続される。したがって、ロードセル13からの出力信号は基板15を介して処理装置20に送信される。また、処理装置20からのアクチュエータ14の駆動信号は基板15を介してアクチュエータ14に送信される。
【0022】
円筒状のカバー16は、接触子12を囲うようにハウジング11に固定される。カバー16は、その軸線方向の長さが接触子12の軸線方向の長さよりも短くなるように形成される。したがって、接触子12は、カバー16の先端を超えて伸びることができる。カバー16は、主にセンサ10のセッティングや運送中等にセンサ10の接触子12を横方向の外力から守るのに用いられる。
【0023】
なお、センサ10は、アクチュエータ14を駆動するための電力を供給するバッテリを備えてもよい。また、ハウジング11には接触子12の周りにおいてLEDライト等の照明が設けられてもよい。これにより、接触子12と皮膚との接触を目視によって確認しやすくなる。
【0024】
処理装置20は、測定された反力に基づいて皮膚の特性を表す特性値を検出する検出部及び表示機器に結果を表示させる表示部として機能する。また、処理装置20は、接触子12の皮膚への押し込み量を制御する押し込み量制御装置の一部を構成する。CPU21等のプロセッサ、通信インターフェース22及びメモリ23を備える。これらCPU21、通信インターフェース22及びメモリ23は双方向バスによって互いに接続されている。
【0025】
CPU21は、各種の演算処理を行う。CPU21は、例えば、アクチュエータ14の制御信号を出力する。ロードセル13によって測定された反力の推移に基づいて、皮膚の特性を表す特性値に関する各種パラメータの値を算出する。また、CPU21は、通信インターフェース22を介して、アクチュエータ14を駆動する駆動信号を送信する。したがって、CPU21は、接触子12の皮膚への押し込み量を制御する。
【0026】
通信インターフェース22は、処理装置20をセンサ10に接続するためのインターフェース回路を有する。したがって、通信インターフェース22は、センサ10に接続されて、ロードセル13からの出力信号を受信し、アクチュエータ14へ駆動信号を送信する。また、通信インターフェース22は、処理装置20を外部のサーバと通信するための通信回路を有していてもよい。
【0027】
メモリ23は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ23は、ロードセル13から受信した出力信号を記憶する。加えて、メモリ23は、CPU21によって各種処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶する。
【0028】
処理装置20は、処理装置20を操作するユーザの操作性を高めるために、キーボードやマウス等の入力装置を備えてもよい。また、処理装置20は、処理結果を表示するためのディスプレイを備えてもよい。
【0029】
なお、本実施形態では、センサ10と処理装置20とは別体として設けられているが、センサ10と処理装置20とは一体的に形成されてもよい。この場合、例えば、処理装置20がセンサ10に組み込まれる。
【0030】
図2は、センサ10によって反力を測定するときの皮膚特性検出システム1を概略的に示す図である。図2に示したように、皮膚特性検出システム1は、センサ固定具30及び対象固定具40を備える。センサ固定具30は、センサ10を固定するのに用いられ、対象固定具40は、反力の測定対象の皮膚(すなわち、特性値の検出対象となる皮膚。図示した例では、対象者の頬の皮膚)を固定するのに用いられる。
【0031】
図2に示したように、センサ固定具30は、鉛直に延びるように配置される第1シャフト31と、第1シャフト31に固定される第2シャフト32と、第1シャフト31と第2シャフト32との相対位置を調整する調整具33とを備える。したがって、第2シャフト32の先端は任意の3次元的な位置に配置されることができる。また、第2シャフト32の先端にはセンサ10が取り付けられる。
【0032】
対象固定具40は、測定中に対象の皮膚が動かないように固定する。図2に示した例では、対象者の頭Hが動かないように頭を支えている。本実施形態では、対象固定具40は、鉛直に伸びるように配置されるシャフト41と、シャフト41に固定される固定プレート42とを備える。固定プレート42は、対象者の頭が所定の角度で乗るように構成され、対象者の頭を動かないように固定する。
【0033】
ここで、アクチュエータ14により接触子12を測定対象の皮膚に押し込む方向又は皮膚から離れる方向に駆動しているときに、センサ10が測定対象の皮膚に対して動いてしまうと、この動きに伴ってロードセル13によって測定される反力が変化してしまう。このため、正確な反力の推移を測定することができなくなる。したがって、接触子12を駆動しているときには、センサ10と測定対象の皮膚とは互いに動かず、距離が一定である必要がある。本実施形態では、測定対象の皮膚及びセンサ10がそれぞれ対象固定具40及びセンサ固定具30によって固定されるため、ロードセル13によって測定される反力が外的要因によって変化してしまうことが抑制される。
【0034】
なお、図2は、センサ10を用いて反力を測定する態様の一例を示している。したがって、測定対象の皮膚とセンサ10とが互いに動かずにその間の距離が一定に保たれれば、どのような固定具が用いられてもよい。また、対象固定具40は、センサ固定具30に対しても固定されてもよい。これによって、対象固定具40によって固定された対象者の頭(すなわち、対象の皮膚)に対して、センサ固定具30によって固定されたセンサ10が固定される。このため、センサ10と測定対象の皮膚との距離をより確実に一定に維持することができる。
【0035】
また、センサ10から皮膚に加わる力はそれほど大きくないため、測定中にセンサ10に押されて頬等が動いてしまう可能性は低く、よって測定対象の皮膚は必ずしも固定具によって固定されていなくてもよい。したがって、例えば、図3に示したように、センサ固定具30を用いずに、測定対象者又は測定を補助する補助者の手によってセンサ10を保持するようにしてもよい。
【0036】
この場合、センサ10は、センサ10によって測定を行うときには、接触子12以外のセンサ10の一部が皮膚に接触するように構成されてもよい。これにより、測定中に皮膚とセンサとの距離が変化することが抑制される。具体的には、例えば、センサ10は、測定を行うときに、カバー16の先端が皮膚に接触されるように構成される。この場合、カバー16は、皮膚に対するセンサ10の相対位置を固定する固定部材として機能する。
【0037】
<センサの動作>
次に、図4及び図5を参照して、センサ10によって皮膚Sの反力を測定するときのセンサ10の動作について説明する。図4は、センサ10の接触子12を移動させたときの接触子12の変位(接触子12の皮膚への押し込み量)及び皮膚Sの反力の時間推移を示す図である。図5は、皮膚Sの反力を測定するときの各段階におけるセンサ10及び皮膚Sの様子を示す図である。
【0038】
まず、図5(A)に示したように、接触子12が収縮した状態で、接触子12の先端部が測定対象の皮膚Sに近接するように、センサ10が設置される。具体的には、センサ固定具30の調整具33を調整することによってセンサ10の設置が行われる。このとき、接触子12は皮膚Sからの反力を受けていないため、図4(B)に時刻t0で示したように、ロードセル13によって測定される反力はゼロである。
【0039】
その後、アクチュエータ14により接触子12がセンサ10の外部へ向かう方向、すなわち皮膚Sを押し込む方向(図5(A)に矢印で示した方向)に駆動される。図4(A)に示したように、アクチュエータ14は、接触子12を一定の速度で移動させる。したがって、接触子12の皮膚Sへの押し込み量は一定の速度で増大する。このとき、皮膚Sから接触子12への反力は、図4(B)に示したように、接触子12の皮膚Sへの押し込み量の増大に伴って徐々に増大する。
【0040】
接触子12の皮膚Sへの押し込み量が予め定められた一定の量(例えば、1~10mm、2~8mm又は2~6mm)になると、接触子12の移動が停止される(時刻t1)。したがって、接触子12は、図5(B)に示したように、皮膚Sへ押し込まれた状態で維持される。このとき、皮膚Sから接触子12への反力は、図4(B)に示したように、皮膚Sにおける応力緩和により、徐々に減少する。接触子12を停止させた状態で維持する時間は、応力緩和による反力の低下がほぼ収束するのにかかる時間であり、例えば、0.5~6秒、0.5~4秒、又は1~2秒である。
【0041】
その後、アクチュエータ14により接触子12がセンサ10内へ向かう方向、すなわち皮膚Sから離れる方向(図5(C)に矢印で示した方向)に駆動される。したがって、接触子12の皮膚への押し込みが戻される。図4(A)に示したように、アクチュエータ14は、接触子12を一定の速度で移動させる。特に、このときの移動速度は、時刻t1以前の押し込みの際の速度と同一の速度である。したがって、接触子12の皮膚Sへの押し込み量は一定の速度で減少する。このとき、皮膚Sから接触子12への反力は、図4(B)に示したように、接触子12の皮膚Sへの押し込み量の減少に伴って徐々に減少する。そして、時刻t3において、接触子12の皮膚Sへの押し込み量がゼロになり、このときロードセルによって測定される反力もゼロに戻る。
【0042】
センサ10の接触子12をこのように移動させる間に、ロードセル13によって図4(B)に示したような反力の推移が測定される。測定されたデータは、処理装置20に送信され、処理装置20のメモリ23に記憶される。本実施形態では、このようにして測定された反力のデータに基づいて処理装置20において皮膚の様々な特性を表す特性値が検出される。また、このようにして検出された特性値は、ディスプレイなどの表示機器に表示される。
【0043】
なお、本実施形態では、アクチュエータ14は、接触子12の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させ、次いで一定に維持し、その後、一定の速度で減少させている。しかしながら、アクチュエータ14は、これとは異なる態様で駆動されてもよい。例えば、アクチュエータ14は、接触子12の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させ、その後、押し込み量を一定に維持することなく、一定の速度で減少させてもよい。
【0044】
<皮膚の特性を表すパラメータ>
次に、図6図8を参照して、このようにして測定された反力のデータに基づいて算出することができる皮膚の様々な特性に関する特性値について説明する。
【0045】
≪3要素固体モデルでの近似に関するパラメータ≫
本実施形態では、皮膚の特性を表すパラメータとして、皮膚の粘弾性特性を3要素固体モデル(標準線形固体モデル)で近似したときにこのモデルを表す各パラメータの値が検出される。
【0046】
3要素固体モデルを図6に示す。図6に示したように、3要素固体モデルでは、バネ定数k2を有する第2線形バネと粘性係数Cを有するダッシュポットが直列に並ぶ。加えて、これら直列に並んだ第2線形バネ及びダッシュポットと、バネ定数k1を有する第1線形バネが並列に並ぶ。このような3要素固体モデルでは、応力緩和における時間と応力の関係が下記式(3)で表わされる。
σ=m・exp(-nt)+C 1 …(3)
式(3)において、σは反力、tは時間を表しており、m、nは定数である。このように皮膚の粘弾性特性を3要素固体モデルで近似すると、図4(B)に示した反力の推移から、このモデルを表す各パラメータ(すなわち、測定対象の特徴を表す各パラメータ)の値を同定することができる。
【0047】
図7は、センサ10の接触子12を移動させたときの接触子の変位の時間推移を示す、図4(B)と同様な図である。接触子12の皮膚への押し込みを開始してから押し込みを停止するまでの間、接触子12への反力は、粘性の影響を受けにくく、よって主に二つの線形バネの影響を受けると考えられる。そこで、本実施形態では、接触子12への皮膚への押し込みを停止した時刻t1における反力(すなわち、反力の最大値。図7における「k1+k2」)と接触子12の変位量との関係から、二つの線形バネのバネ定数k1、k2を加算した値(k1+k2)が近似的に算出される。二つの線形バネのバネ定数k1、k2を加算した値(k1+k2)は、接触子12の皮膚への押し込み量を一定速度で増大させたときに反力が弾性的に変化したと近似したときの弾性係数を表している。
【0048】
また、接触子12を移動させずに維持している時刻t1から時刻t2の間に、ダッシュポットと直列に連結された第2線形バネに加わっていた応力が緩和される。したがって、接触子12の皮膚への押し込みを戻し始めてから終了するまでの間、接触子12への反力は、第2線形バネの影響を受けにくく、よって第1線形バネの影響のみを受けると考えられる。そこで、本実施形態では、接触子12の皮膚へ押し込みを戻す直前の時刻t2における反力(図7における「k1」)と接触子12の皮膚への押し込み量との関係から、第1線形バネのバネ定数k1が近似的に算出される。第1線形バネのバネ定数k1は、接触子12の皮膚への押し込み量を一定速度で減少させたときに反力が弾性的に変化したと近似したときの弾性係数を表している。
【0049】
また、本実施形態では、上述したように求められたバネ定数の合計値(k1+k2)から第1線形バネのバネ定数k1を減算することにより、第2線形バネのバネ定数k2が算出される。すなわち、本実施形態ではこのようにして皮膚の粘弾性特性を3要素固体モデルで近似したときに、ダッシュポットと直列に連結された線形バネのバネ定数k2が算出される。この線形バネのバネ定数k2は、接触子12による押し込み量を一定に維持したときの反力の変化を表すパラメータの値の一例である。
【0050】
さらに、時刻t1から時刻t2までの間には、接触子12の変位量が一定に維持されることから、上述したように応力緩和が生じる。したがって、時刻t1から時刻t2までの反力の推移は、上記式(3)で近似することができる。そこで、本実施形態では、時刻t1から時刻t2までの間の反力のデータから、例えば最小二乗法等の一般的な近似手法により、定数m、nが同定される。このようにして算出された定数nの逆数は、時定数τを表している(τ=1/n)。また、上述した第2線形バネのバネ定数k2を定数nで除算した値は、粘性係数Cを表している(C=k2/n)。
【0051】
以上より、本実施形態では、図4(B)に示したような反力のデータから、皮膚の粘弾性特性を3要素固体モデルで近似したときの第1バネのバネ定数k1、第2バネのバネ定数k2、両バネ定数の合計値k1+k2、応力緩和における時定数τ、粘性係数Cが算出される。
【0052】
≪押し込み時の反力の推移に関するパラメータ≫
また、本実施形態では、皮膚の特性を表すパラメータとして、接触子12の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させている間の反力の推移(図8において破線で囲まれた領域における推移)に関するパラメータが用いられる。
【0053】
押し込み中の反力の推移は、下記式(4)によって近似することができる。
σ=k0・da …(4)
式(4)において、k0は皮膚の剛性に関連するパラメータ、dは接触子12の皮膚への押し込み量である。また、式(4)において、aは、接触子12により皮膚を押し込んでいる間の反力の波形が湾曲している度合いを表している。皮膚に粘性が無ければ押し込み中の反力の波形は直線的になることから、aは皮膚の粘性に応じて変化するパラメータであると考えられる。また、aは、接触子12の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの押し込み量に対する反力の非線形性を表すパラメータの一例である。なお、パラメータaが反力の非線形性を表していることを考慮すると、k0は接触子12の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの反力の非線形性を考慮した皮膚の剛性を表すパラメータであるといえる。
【0054】
そこで、本実施形態では、時刻t0から時刻t1までの間の反力のデータから、例えば、最小二乗法等の一般的な近似手法により、定数k0、aが同定される。
【0055】
≪積分値に関するパラメータ≫
さらに、本実施形態では、皮膚の特性を表すパラメータとして、接触子12を皮膚へ押し込んでいる間及び押し込みを戻している間の反力の積分値に関するパラメータが用いられる。
【0056】
図9は、センサ10の接触子12を移動させたときの接触子12の変位の時間推移を示す、図4(B)と同様な図である。加えて、図10は、接触子12を移動させている期間中の接触子12の移動距離と反力との関係を示す図である。特に、図10(A)は、接触子12を皮膚へ押し込んでいるとき(図9の期間M)の接触子12の移動距離と反力との関係を示しており、図10(B)は、接触子12の皮膚への押し込みを戻しているとき(図9の期間N)の接触子12の移動距離と反力との関係を示す図である。
【0057】
図10(A)におけるWCは、接触子12を皮膚へ押し込んでいる間の反力を接触子12の移動距離で積分した積分値である。WCは、接触子12を皮膚へ押し込んでいる間に皮膚に蓄えられるエネルギを表している。本実施形態では、図10(A)に示したように、移動距離が0の状態にて押し込みが開始されてから移動距離がd1の状態にて押し込みが完了するまでに測定された反力を積分することによってWCが算出される。また、図10(B)におけるRWCは、接触子12の皮膚への押し込みを戻している間の反力を接触子12の移動距離で積分した積分値である。RWCは、接触子12の皮膚への押し込みを戻しているときに皮膚から開放されるエネルギを表している。本実施形態では、図10(B)に示したように、RWCは、移動距離が0の状態にて押し込みを戻すことが開始されてから移動距離がd1の状態にて戻すことが完了するまでに測定された反力を積分することによって算出される。
【0058】
また、上述したようにして算出されたRWCをWCで除算したRC(=RWC/WC)は、図9の時刻t1から時刻t2の間に応力緩和によって開放されなかったエネルギの割合を表している。本実施形態では、上述したようにして算出されたRWCをWCで除算することによってRCが算出される。なお、RCは、WCをRWCで除算することによって算出されてもよい(=WC/RWC)。したがって、RCは、押し込み量の増大を開始してから押し込み量が所定量に到達するまでの間に測定された反力の積分値と、押し込み量を所定量から押し込み量の増大を開始したときの押し込み量まで減少させている間に測定された反力の積分値との比率であるといえる。
【0059】
加えて、接触子12の皮膚への押し込みを停止するまで反力が移動距離に比例して上昇したと仮定した場合に、接触子12を皮膚へ押し込んでいる間に皮膚に蓄えられるエネルギは、図10に破線で示した三角形の面積Xとして表される。そして、上述したようにして算出されたWCをこの三角形の面積Xで除算したLC(=WC/X)は、接触子12の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させたときの押し込み量に対する反力の非線形性を表している。LCの値は、接触子12により皮膚を押し込んでいる間の反力の波形が線形であれば1になり、この間の反力の波形が湾曲する程度が大きくなるほど1から離れた値になる。本実施形態では、接触子12への皮膚への押し込みを停止した時刻t1における反力(反力の最大値)に、押し込み時間(時刻t0から時刻t1までの時間)を乗算して算出された値を2で割ることによってXが算出され、算出されたXで上記WCを除算することによってLCが算出される。
【0060】
なお、上記実施形態では、LCは、接触子12の皮膚への押し込みを停止するまでの反力に基づいて算出される。しかしながら、LCは、接触子12への皮膚の押し込みを開始してから、接触子12の皮膚への押し込みを停止する前の任意の時点までの反力に基づいて算出されてもよい。また、LCは、面積XをWCで除算することによって算出されてもよい(=X/WC)。したがって、LCは、押し込み量の増大を開始してから押し込み量が所定量に到達するまでの間に測定された反力の積分値と、押し込み量の増大を開始してから押し込み量が所定量に到達したときの反力まで押し込み量及び反力が一定速度で増大したと仮定したときに押し込み量の増大を開始してから押し込み量が所定量に到達するまでの間の反力の積分値との比率であるといえる。
【0061】
≪算出されるパラメータ≫
上述したように、本実施形態では、アクチュエータ14は、接触子12の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させ、次いで一定に維持し、その後、一定の速度で減少させている。この場合、皮膚の特性に関する特性値として、上述した全てのパラメータの値を算出することが可能である。
【0062】
しかしながら、アクチュエータ14がこれとは異なる態様で駆動された場合には、必ずしも全てのパラメータの値を算出することはできない。例えば、上述したように、アクチュエータ14は、接触子12の皮膚への押し込み量を一定の速度で増大させ、その後、押し込み量を一定に維持することなく、一定の速度で減少させてもよい。この場合、接触子12の皮膚への押し込み量を一定に維持することによって算出され得るパラメータの値、例えば、k2、τ、Cの値は算出されない。しかしながら、この場合でも、接触子12の皮膚への押し込み量を一定に維持することとは無関係に算出される他のパラメータの値を算出することができる。
【0063】
<検証及び効果>
このようにして算出された各パラメータの値と柔軟感との間の相関性に関する検証を行った。検証にあたっては、まず、熟練した評価者により、被験者の皮膚の柔軟感として、皮膚が押し返したと感じる力の大きさと皮膚が詰まっていると感じる度合いを5段階で官能評価した。具体的には、評価者が指を対象の皮膚に任意の力で垂直に押し込んだときの触感で判定した。また、各被験者について、上述した皮膚特性検出システム1によって試験を行い、上述した各パラメータの値を算出した。
【0064】
その後、このようにして算出された判定評価値と皮膚特性検出システムによって算出された各パラメータの値との間のスピアマンの順位相関係数を算出した。算出された相関係数を下記の表に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
上記の表から、パラメータk2、k0、a、WC、RC、LCについては、熟練した評価者による柔軟感に関する官能評価結果と高い相関性があることがわかった。加えて、パラメータk1+k2及びCについても、熟練した評価者による柔軟感に関する官能評価結果と比較的高い相関性があることがわかった。したがって、これらパラメータは、皮膚の柔軟感を表す新たな指標として用いることができる。すなわち、上述した皮膚特性検出システム1によれば、皮膚の柔軟感を表す新たな指標となるパラメータの値を検出することができるといえる。これらパラメータk2、k0、a、WC、RC、LC、k1+k2、Cは、接触子12の皮膚Sへの押し込み量を増大させ、一定に維持し、減少させる一連の過程において生じる物理現象を細分化し、細分化された物理現象に対応するように算出されるものである。したがって、本実施形態によれば、細分化された物理現象に対応するようにパラメータを算出することにより、柔軟感をより適切に表すパラメータを用いることができるようになるといえる。
【0067】
また、異なる年代の被験者について、上述した皮膚特性検出システムによって試験を行い、被験者の年代と皮膚特性検出システムによる試験結果との相関性について評価した。
【0068】
図11は、被験者の年代毎のパラメータk2の平均値を示す図である。図中のI字状の表示は、標準誤差を示している(以下、図12図14においても同じ)。図11からわかるように、21~24歳ではパラメータk2の値が小さい(すなわち、接触子12による押し込み量を一定に維持したときの反力の変化が小さい)のに対して、39~44歳、61~68歳へと年代が上がるにつれてk2の値が大きくなる。したがって、パラメータk2は、年代による皮膚の柔軟感の違いを表しているといえる。
【0069】
図12は、被験者の年代毎のパラメータaの平均値を示す図である。図12からわかるように、21~24歳ではパラメータaの値が小さい(すなわち、接触子12により皮膚を押し込んでいる間の反力の波形が湾曲している度合いが小さい)のに対して、39~44歳及び61~68歳ではaの値が大きい。したがって、パラメータaは年代による皮膚の柔軟感の違いを表しているといえる。
【0070】
図13は、被験者の年代毎のパラメータRCの平均値を示す図である。図13からわかるように、21~24歳ではRCの値が大きい(すなわち、応力緩和によって開放されなかったエネルギの割合が小さい)のに対して、39~44歳、61~68歳と年代が上がるにつれてRCの値が小さくなる。したがって、パラメータRCも年代による皮膚の柔軟感の違いを表しているといえる。
【0071】
図14は、被験者の年代毎のパラメータk1の平均値を示す図である。図14からわかるように、k1の値には年齢に応じた一定の傾向が見られない。したがって、パラメータk1は必ずしも年代による皮膚の柔軟感の違いを表しているとはいえない。
【0072】
このように、パラメータk2、k0、a、WC、RC及びLC以外のパラメータについては、必ずしも皮膚の柔軟感と相関性が高いとは言えない。しかしながら、これらのパラメータも皮膚の特性を表すパラメータとして用いることができる。このように上述した皮膚特性検出システムによれば、1度の簡単な試験によって、皮膚の特性に関する多数のパラメータの値を検出することができ、よって皮膚の評価を簡単に行うことができる。
【0073】
第二実施形態
次に、図15を参照して、第二実施形態に係る皮膚特性検出システム及び皮膚特性検出方法について説明する。以下では、第一実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0074】
ところで、上述したように、パラメータk2、k0、a、WC、RC、LCについては、熟練した評価者による柔軟感に関する官能評価結果と高い相関性がある。また、パラメータk1+k2及びCについても、熟練した評価者による柔軟感に関する官能評価結果と比較的高い相関性がある。そこで、本実施形態では、皮膚特性検出システム1によって検出された各種パラメータの値に基づいて、被験者の皮膚の柔軟感が推定される。皮膚の柔軟感は、柔軟感の他、硬さ、ハリ感、弾力、ふっくら感、押し返す力、詰まっている度合い、しなやかさ、などの柔軟感に関する指標値によって表される。また、柔軟感に関する指標値は、段階的な数値又は連続的な数値として表される(例えば、ハリ感を1~5の整数で段階的に表してもよいし、1~5の実数で連続的に表してもよい)。
【0075】
計測対象者の皮膚の柔軟感を推定するに当たって、まず、パラメータk2、k0、a、WC、RC、LC、k1+k2及びCそれぞれの値と皮膚の柔軟感との相関関係が予め求められる。
【0076】
相関関係を求める際には、まず、多数の被験者について、熟練した評価者により被験者の皮膚の柔軟感を多段階に官能評価する。被験者の皮膚の柔軟感として、上述したように皮膚が押し返したと感じる力の大きさ、皮膚が詰まっていると感じる度合い、又はこれらの平均値が用いられてもよい。或いは、被験者の皮膚の柔軟感として、これら以外のパラメータが用いられてもよい。加えて、各被験者について、上述した皮膚特性検出システム1によって試験を行い、各パラメータの値が検出される。このようにして求められた皮膚の柔軟感に関する官能評価結果と各パラメータの値とに基づいて、皮膚の柔軟感と各パラメータの値との関係が求められる。
【0077】
図15は、パラメータk0と、熟練した評価者によって評価された皮膚の柔軟感(図15の例では、皮膚が押し返す力)との関係の一例を示す散布図である。図15の各プロットは各被験者における関係を表している。本実施形態では、図15に示したような多数の被験者のデータから、例えば最小二乗法等の公知の近似手法により、回帰直線(又は回帰曲線)が求められる。特に、図15に示した例では線形回帰により回帰直線100が算出されており、この回帰直線100はパラメータk0と皮膚の柔軟感との相関関係を表している。図15では、パラメータk0を例にとって説明したが、同様な手法によって他のパラメータk2、a、WC、RC、LC、k1+k2及びCについても、各パラメータの値と皮膚の柔軟感との相関関係を求めることができる。
【0078】
測定対象の皮膚の柔軟感を推定するときには、皮膚特性検出システム1によって、測定対象の皮膚について、各種パラメータk2、k0、a、WC、RC、LC、k1+k2及びCの値が検出される。そして、検出された各パラメータの値と、このパラメータの値と皮膚の柔軟感との予め求められた相関関係とに基づいて、測定対象の皮膚の柔軟感が推定される。例えば、パラメータk0を例にとると、皮膚特性検出システム1によって検出されたパラメータk0の値と図15の回帰直線100とに基づいて柔軟感が推定される。
【0079】
測定対象の皮膚の柔軟感の推定は、例えば、測定対象者によって行われる。具体的には、例えば、各パラメータk2、k0、a、WC、RC、LC、k1+k2又はCと柔軟感に関する指標値又は指標との相関関係を表すグラフ又は表を表示するシート又はカードが予め作成される。斯かるシート又はカードに描かれるグラフとしては、例えば、図15のグラフ(プロットが無いもの)などが考えられる。測定対象者はこのシート又はカードを用いて皮膚の柔軟感を推定する。なお、測定対象の皮膚の柔軟感の推定は、皮膚特性検出システム1によって皮膚特性の検出を行った検出者など、測定対象者以外の人によって行われてもよい。また、シート又はカードは、紙又はプラスチックで形成されてもよい。
【0080】
次に、第二実施形態に係る皮膚特性検出システム及び皮膚特性検出方法の変形例について説明する。上記第二実施形態では、測定対象者等が、相関関係を表すグラフ又は表が表示されたシート又はカードを用いて、皮膚特性検出システム1によって検出されたパラメータの値に基づいて、柔軟感を推定している。しかしながら、皮膚特性検出システム1が、検出されたパラメータの値に基づいて柔軟感を推定してもよい。
【0081】
この場合、皮膚特性検出システム1の処理装置20は、皮膚特性検出システム1によって検出されたパラメータk2、k0、a、WC、RC、LC、k1+k2又はCと、このパラメータと皮膚の柔軟感との予め求められた相関関係とに基づいて皮膚の柔軟感を推定する柔軟感推定部としても機能する。具体的には、処理装置20では、各パラメータの値と皮膚の柔軟感との相関関係を表す計算式又はテーブル(例えば、図15の回帰直線100を表す計算式やテーブル)が予めメモリ23に格納されている。そして、処理装置20は、皮膚特性検出システム1によって検出されたパラメータk2、k0、a、WC、RC、LC、k1+k2又はCに基づいて、格納された計算式又はテーブルを用いて、測定対象の皮膚の柔軟感を推定する。このようにして推定された皮膚の柔軟感は、例えば、処理装置20のディスプレイなどの表示機器に表示される。このとき、柔軟感は、柔軟感、硬さ又はハリ感などを示す数値(柔軟感に関する指標値)として表示されてもよいし、例えば、「赤ちゃん肌」、「マシュマロ肌」といった、柔軟感に応じて異なる表現(柔軟感に関する指標)として表示されてもよい。
【0082】
なお、皮膚の特性を表す特性値(すなわち、上記各種パラメータの値)を検出する検出部及び柔軟感推定部は、処理装置20以外に設けられてもよい。例えば、検出部及び柔軟感推定部は、処理装置20と通信インターフェース22を介して通信する外部のサーバに設けられてもよい。この場合、サーバは、皮膚特性検出システム1の一部を構成する。具体的には、例えば、処理装置20は、センサ10を用いて測定された皮膚の反力の実データ、又は実データを用いて処理装置20によって算出された上述した各種パラメータの値をサーバに送信し、サーバにおいて実データ又は各種パラメータの値から皮膚の柔軟感を推定する。そして、サーバから推定された皮膚の柔軟感が処理装置20に送信され、処理装置20のディスプレイなどの表示機器に推定された皮膚の柔軟感が表示される。
【0083】
また、上記第二実施形態では、皮膚特性検出システム1によって検出された一つのパラメータk2、k0、a、WC、RC、LC、k1+k2又はCの値に基づいて、皮膚の柔軟感が推定されている。しかしながら、パラメータk2、k0、a、WC、RC、LC、k1+k2又はCのうちの複数のパラメータの値に基づいて、皮膚の柔軟感が推定されてもよい。この場合、例えば、複数のパラメータそれぞれに基づいて皮膚の柔軟感を表す値が推定されると共に、推定された複数の柔軟感を表す値を平均することによって最終的な柔軟感が推定される。または、被験者のデータから、複数のパラメータの値と皮膚の柔軟感との関係を重回帰分析などの統計的手法によってモデル化し、このようにして求められたモデルを用いて複数のパラメータの値から皮膚の柔軟感が推定されてもよい。或いは、二つまたは三つのパラメータそれぞれを軸にして、総合評価値として結果をプロットしてもよい。具体的には、例えば、X軸を柔軟感の一つである硬さを表す指標としてk1+k2とし、Y軸を柔軟感の一つであるハリ感を表す指標としてk2として結果をプロットしたものを、柔軟バランスを表す最終的な評価として示すことなどが挙げられる。
【0084】
第三実施形態
次に、図16及び図17を参照して、第三実施形態に係る皮膚特性検出システム及び皮膚特性検出方法について説明する。以下では、第一実施形態及び第二実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0085】
ところで、皮膚特性検出システム1によって検出された各パラメータk1+k2、k1、k2、τ、C、k0、a、WC、RC又はLCの値は、皮膚の柔軟感のみならず、被験者の年齢との間にも相関がある。これに関連して、上記各パラメータの値と年齢との相関性について検証を行った。検証に当たっては、様々な年齢の被験者について、上述した皮膚特性検出システム1によって試験を行い、上述した各パラメータの値を算出した。その後、被験者の年齢と皮膚特性検出システムによって算出された各パラメータの値との間のピアソンの積率相関係数を算出した。算出された相関係数を下記の表に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
上記の表から、パラメータk1+k2、k1、k2、C、k0、a、WC、RC及びLCは、被験者の年齢と高い相関性があることがわかった。そこで、本実施形態では、皮膚特性検出システム1によって検出されたこれらパラメータの値に基づいて皮膚年齢(肌年齢)が推定される。
【0088】
皮膚年齢を推定するに当たって、まず、パラメータk1+k2、k1、k2、C、k0、a、WC、RC及びLCそれぞれの値と被験者の年齢との相関関係が求められる。
【0089】
具体的には、まず、様々な年齢の多数の被験者のそれぞれについて、上述した皮膚特性検出システム1によって試験を行い、各パラメータの値が検出される。そして、各被験者の年齢とその被験者について検出された各パラメータの値とに基づいて、被験者の年齢と各パラメータの値との関係が求められる。
【0090】
図16及び図17は、被験者の年齢とパラメータk2との関係の一例を示す散布図である。図16及び図17の各プロットは各被験者における年齢とパラメータk2との関係を表している。本実施形態では、図16に示したような多数の被験者のデータから、例えば最小二乗法等の公知の近似手法により、回帰直線(又は回帰曲線)が求められる。特に、図16に示した例では、線形回帰により回帰直線101が算出されており、この回帰直線101はパラメータk2と被験者の年齢との相関関係を表している。一方、図17に示した例では、指数関数回帰により回帰曲線102が算出されており、この回帰曲線102もパラメータk2と被験者の年齢との相関関係を表している。図16及び図17では、パラメータk2を例にとって説明したが、同様な手法によって他のパラメータk1+k2、k1、C、k0、a、WC、RC及びLCについても、各パラメータの値と皮膚の柔軟感との相関関係を求めることができる。
【0091】
測定対象の皮膚の皮膚年齢を推定するときには、皮膚特性検出システム1によって測定対象の皮膚について各種パラメータk1+k2、k1、k2、C、k0、a、WC、RC及びLCの値が検出される。そして、検出された各パラメータの値と、このパラメータの値と年齢との予め求められた相関関係とに基づいて、測定対象の皮膚の皮膚年齢が推定される。例えば、パラメータk2を例にとると、皮膚特性検出システム1によって検出されたパラメータk2の値と図16の回帰直線101又は図17の回帰曲線102とに基づいて皮膚年齢が推定される。
【0092】
測定対象の皮膚の皮膚年齢の推定は、例えば、測定対象者やその他の人によって行われる。この場合には、上記第二実施形態と同様に、各パラメータk1+k2、k1、k2、C、k0、a、WC、RC及びLCの値と年齢との相関関係を表すグラフ又は表を有するシートが用いられる。
【0093】
なお、第三実施形態に関しても、第二実施形態の変形例と同様に、皮膚特性検出システムが、検出されたパラメータの値に基づいて、皮膚年齢を推定してもよい。この場合、皮膚特性検出システム1の処理装置20は、皮膚特性検出システム1によって検出されたパラメータk1+k2、k1、k2、C、k0、a、WC、RC及びLCと、このパラメータと年齢との予め求められた相関関係とに基づいて皮膚年齢を推定する皮膚年齢推定部として機能する。具体的には、処理装置20では、各パラメータの値と皮膚年齢との相関関係を表す計算式又はテーブル(例えば、図16の回帰直線101又は図17の回帰曲線102を表す計算式やテーブル)が予めメモリ23に格納されている。そして、処理装置20は、皮膚特性検出システム1によって検出されたパラメータk1+k2、k1、k2、C、k0、a、WC、RC及びLCに基づいて、格納された計算式又はテーブルを用いて、測定対象の皮膚年齢を推定する。このようにして推定された皮膚年齢は、例えば、処理装置20のディスプレイなどの表示機器に表示される。なお、第二実施形態の変形例と同様に、皮膚年齢推定部も、処理装置20以外、例えば外部のサーバなどに設けられてもよい。
【0094】
また、第三実施形態に関しても、第二実施形態の変形例と同様に、パラメータk1+k2、k1、k2、C、k0、a、WC、RC及びLCのうちの複数のパラメータの値に基づいて、皮膚年齢が推定されてもよい。
【0095】
第四実施形態
次に、図18及び図19を参照して、第三実施形態に係る皮膚特性検出システムを利用した、皮膚処置の効果検証方法について説明する。本実施形態に係る皮膚処置の効果検証方法は、皮膚に対する処置を行ったときに、その処置の効果を検証するのに用いられる。皮膚に対する処置は、皮膚の皮膚年齢や柔軟感に影響を与える処置を含み、例えば、化粧品や顔パックなどを皮膚に使用すること、マッサージローラやスチーマなどの美容機器を使用すること、エステティシャンによる美容施術、美容食品の摂取、美容エクササイズなどを含む。さらに、上記の美容行為を一定期間実施する前と後の測定値を比較することで、連用の効果検証を行ってもよい。
【0096】
図18は、本実施形態に係る皮膚処置の効果を検証する手順を示すフローチャートである。皮膚処置の効果を検証するにあたっては、まず、センサ10を用いて対象となる皮膚の反力が測定されると共に、第三実施形態に係る皮膚特性検出システム1を用いて対象となる皮膚の皮膚年齢が推定される(ステップS11)。対象となる皮膚の皮膚年齢が推定されると、対象となる皮膚に対する処置が行われる(ステップS12)。
【0097】
対象となる皮膚に対する処置が終わると、ステップS11と同様に、対象となる皮膚の皮膚年齢が再度推定される(ステップS13)。そして、対象となる皮膚に対する処置が行われる前に推定された皮膚年齢と、皮膚に対する処置が行われた後に推定された皮膚年齢とが比較され、比較結果に基づいて皮膚に対する処置の効果が検証される(ステップS14)。この場合、処置によって皮膚年齢が大きく下がるほど、処置の効果が高いと判断される。
【0098】
図19は、図16に示した回帰直線101を示すグラフである。特に、図19は、xを皮膚年齢、yをパラメータk2の値としたときに、下記式(1)によって表される回帰直線101を表している。
y=0.1137×x+1.138 …(1)
【0099】
回帰直線101がこのように表されている場合に、皮膚に対する処置としてマッサージローラを使用する場合の効果の検証について考える。このような状況において、マッサージローラの使用前にパラメータk2の値が7.901と検出された場合、ステップS11において式(1)より使用前の皮膚年齢は59.48歳と推定される。次いで、マッサージローラの使用後にパラメータk2の値が6.844と検出された場合、ステップS13において式(1)より使用後の皮膚年齢は50.18歳として推定される。この場合、ステップS14の検証により、マッサージローラを使用したことにより、皮膚年齢が9.3歳分若返るという効果が得られたと判断される。
【0100】
このように、本実施形態によれば、皮膚の処置を行ったときに、皮膚の処置の効果を定量的に表すことができ、その結果、ユーザが皮膚の処置の効果を把握し易くなる。
【0101】
なお、上記第四実施形態では、対象となる皮膚の皮膚年齢を求め、求められた皮膚年齢に基づいて、皮膚に対する処置の効果の検証が行われている。しかしながら、対象となる皮膚の柔軟感を求め、求められた皮膚の柔軟感に基づいて、皮膚に対する処置の効果の検証が行われてもよい。
【0102】
この場合には、センサ10を用いて対象となる皮膚の反力が測定されると共に、第二実施形態に係る皮膚特性検出システム1を用いて対象となる皮膚の柔軟感が推定され、その後、対象となる皮膚に対する処置が行われる。対象となる皮膚に対する処置が終わると、対象となる皮膚の柔軟感が再度推定され、その後、対象となる皮膚に対する処置が行われる前に推定された柔軟感と、皮膚に対する処置が行われた後に推定された柔軟感とが比較され、比較結果に基づいて皮膚に対する処置の効果が検証される。この場合、処置によって皮膚の柔軟感が大きく変化するほど、処置の効果が高いと判断される。
【0103】
第五実施形態
次に、第三実施形態に係る皮膚特性検出システムを利用した、皮膚年齢比較方法について説明する。本実施形態に係る皮膚年齢比較方法は、他人同士の皮膚の皮膚年齢を比較するのに用いられる。
【0104】
皮膚年齢の比較を行うにあたっては、比較対象となる各人の同じ部位の皮膚の反力がセンサ10を用いて測定されると共に、第三実施形態に係る皮膚特性検出システム1を用いてそれぞれの人の皮膚の皮膚年齢が推定される。各人の皮膚のセンサ10による測定は同じタイミングで同じ場所にて行われてもよいし、別々のタイミングで異なる場所にて行われてもよい。そして、このようにして推定された各人の皮膚年齢が比較される。これにより、測定が行われた人は、比較対象となる他人との皮膚年齢の比較結果を知ることができる。
【0105】
また、皮膚年齢の代わりに皮膚の柔軟感を比較するようにしてもよい。この場合には、センサ10を用いて比較対象となる各人の同じ部位の皮膚の半量がセンサ10を用いて測定されると共に第二実施形態に係る皮膚特性検出システム1を用いて対象となる皮膚の柔軟感が推定され、その後、推定された各人の皮膚の柔軟感が比較される。
【0106】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0107】
1 皮膚特性検出システム
10 センサ
12 接触子
13 ロードセル
14 アクチュエータ
20 処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19