(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】車両のペダルをコントロールする方法および装置
(51)【国際特許分類】
F02D 11/10 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
F02D11/10 K
(21)【出願番号】P 2021573773
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 AT2020060237
(87)【国際公開番号】W WO2020247996
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-04-27
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521542948
【氏名又は名称】エーブイエル リスト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャニー-ルイジ、ヨハンネス
(72)【発明者】
【氏名】ギゲル、ハンス ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー、ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】レンメラー、デイヴィッド
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-233339(JP,A)
【文献】特開2004-142690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0267227(US,A1)
【文献】米国特許第05430645(US,A)
【文献】特開平05-157666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00-11/10
F02D 43/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両をコントロールするための運転者モデルを作動させる方法において、
前記運転者モデルは、車両で調整されるべきペダル位置を判定する車両モジュール(203)を含み、
前記車両モジュール(203)によって、車両の駆動部により印加することができる全出力に対する割合として所要出力が判定され、
所要出力は、要求される速度および/または要求される加速度(311)で車両を所定の道路経路に沿って動かすのに必要とされる出力に相当し、
許容されるペダル位置の値(313)が所要出力に割り当てられ、
許容されるペダル位置の前記値(313)が車両のコントロールのために前記運転者モデルに伝送され、
前記運転者モデルはコントロールモジュール(300)を含み、これによってアクセルペダルを調整するための調整値が判定され、
許容されるペダル位置の値(313)を基礎として判定される上側の限界値によって前記調整値がダイナミックに制限される方法。
【請求項2】
前記コントロールモジュール(300)によってペダルの調整値についての上側の限界値が判定され、それは、車両の駆動部により提供されるべき出力要求が上昇したケースについては、出力要求の上側の限界値が相応に引き上げられることによってであり、および、現在の出力要求が、現在の出力要求にすぐ先行する出力要求の、加重係数で重みづけされた値に相当する重みづけされた指標値よりも低いケースについては、重みづけされた値が上側の限界値として選択されることによってであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上側の限界値を判定するために前記コントロールモジュール(300)に伝送される伝送値は、係数と乗算された許容されるペダル位置の値に相当することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
加重係数は1よりも小さい値に相当することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コントロールモジュール(300)はPID制御器(307)によって調整値を調整することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記調整値が下側の限界値によって制限され、
下側の限界値は許容されるペダル位置の値(313)を基礎として判定され、または下側の限界値は固定的に設定されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記運転者モデルは目標加速度決定モジュールを含み、これによって車両により印加されるべき加速出力が判定され、それは、少なくとも1つの将来の時点について要求される速度と、現在の時点について要求される速度との間の速度差が判定され、判定された速度差を参照して、速度差の補正のために印加されるべき加速出力が判定されることによってであり、前記目標加速度決定モジュールは判定された印加されるべき加速出力を、要求される加速出力として前記運転者モデルに伝送することを特徴とする、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
所定の道路経路は車両の少なくとも1つのセンサによって検出される道路経路であり、
および/またはそのつど走行されるべき通過区間についてのデジタルマップによって判定される道路経路であることを特徴とする、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
車両をコントロールするための運転者モデルを作動させるためのコントロール装置(200)において、
前記コントロール装置(200)は、運転者モデルを作動させるためにコンフィグレーションされた運転者モジュール(201)を含み、
前記運転者モジュールは、車両で調整されるべきペダル位置を判定するためにコンフィグレーションされた車両モジュール(203)を含み、
前記運転者モジュールは、車両の駆動部により印加することができる全出力に対する割合として所要出力を判定するためにコンフィグレーションされた所要量判定モジュール(205)を含み、所要出力は、要求される速度および/または要求される加速度で車両を所定の区間経路に沿って動かすために必要とされる出力に相当し、前記運転者モジュールは、許容されるペダル位置の値(313)を所要出力に割り当てるためにコンフィグレーションされた割当モジュール(207)を含み、
前記運転者モジュールは、許容されるペダル位置の値(313)を車両のコントロールのために前記運転者モデルへ伝送するためにコンフィグレーションされた伝送モジュール(209)を含み、
前記運転者モジュールは、アクセルペダルを調整するための調整値を判定するためにコンフィグレーションされたコントロールモジュール(300)を含み、
前記コントロールモジュール(300)は、上側の限界値によって調整値をダイナミックに制限するために、および、許容されるペダル位置の値(313)を基礎として上側の限界値を判定するために、コンフィグレーションされるコントロール装置。
【請求項10】
前記運転者モデルは、車両により印加されるべき加速出力を判定するためにコンフィグレーションされた目標加速度決定モジュールを含み、それは、少なくとも1つの将来の時点について要求される速度と、現在の時点について要求される速度との間の速度差が判定され、判定された速度差を参照して、速度差の補正のために印加されるべき加速出力が判定されることによってであり、前記運転者モジュール(201)は、判定された印加されるべき加速出力を、要求される加速出力として前記運転者モデルに伝送するためにコンフィグレーションされることを特徴とする、請求項9に記載のコントロール装置。
【請求項11】
車両のテスト走行を実施するための、請求項9又は10に記載のコントロール装置(200)の利用法。
【請求項12】
コンピュータで実行されたときに請求項1~8の少なくとも1つの方法に基づくすべてのステップを実行するようにコンピュータをコンフィグレーションするプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両をコントロールするための運転者モデルを作動させる方法、コントロール装置、車両のテスト走行を実施するためのコントロール装置の利用法、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、現在の車両速度と所定の車両速度との間の差異のみに依存して、たとえば車両のアクセルペダルを調整するためにPI制御によってペダル値を判定する、たとえば車両をコントロールするためのアルゴリズムなどの運転者モデルが知られている。
【0003】
上に説明したように作動する運転者モデルは、強い加速プロセスおよびそれに応じて不必要に高い燃料消費ないし有害物質排出を伴う、車両の飛躍的な調整プロセスに、しばしばつながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上に説明した問題を少なくとも部分的に斟酌することにある。特に本発明の課題は、車両を燃料効率的に少ない有害物質で作動させる運転者モデルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題は特許請求の範囲によって解決される。特に上述した課題は、それぞれの独立請求項の対象物によって解決される。本発明のその他の利点は、従属請求項、発明の詳細な説明、および図面から明らかとなる。このとき、提案されている方法との関連で記述されている構成要件や詳細は、当然ながら本発明によるコントロール装置との関連でも該当し、およびその逆も成り立つので、個々の発明態様についての開示に関しては常に相互の参照がなされ、ないしは参照をすることができる。
【0006】
本発明の第1の態様では、車両をコントロールするための運転者モデルを作動させる方法が提案される。このとき運転者モデルは、車両で調整されるべきペダル位置を判定する車両モジュールを含む。さらに車両モジュールによって、車両の駆動部によって印加することができる全出力に対する割合としての所要出力が判定され、所要出力は、要求される速度および/または要求される加速度で所定の道路経路に沿って車両を動かすために必要とされる出力に相当する。さらに、提案される方法は、許容されるペダル位置の値が所要出力に割り当てられ、許容されるペダル位置の値が、特にアクセルペダル位置の値が、車両をコントロールするために運転者モデルに伝送されることを意図する。
【0007】
運転者モデルとは、本件開示の文脈においては、車両をコントロールするために利用されるアルゴリズムであると理解される。特に運転者モデルは、走行機能をコントロールするために、たとえば車両のそれぞれのペダルを位置調節するために、利用することができる。
【0008】
提案される方法は、特に、運転者モデルによる車両の作動時にたとえばシフトプロセスで典型的に起こる不必要な加速度飛躍を回避するために、車両により提供されるべき出力を制限するための役目を果たす。そのために、提案される方法は、所定の道路経路について決定される所要出力の判定を意図する。このとき所定の道路経路は、特に、車両の少なくとも1つのセンサによって検出される道路経路であってよく、および/または走行されるべきそれぞれの通行区間についてデジタルマップによって判定される道路経路であってよい。たとえば所定の道路経路は、所定のテストプロトコルに基づいて調整されるべき車両速度が設定される道路の区域であってよい。
【0009】
本発明に基づいて意図される所要出力は、車両により潜在的に印加可能な総出力に対する割合として、たとえば“%”の単位で判定もしくは指定される。
【0010】
本発明に基づいて意図される所要出力は、所定の区間経路について設定される加速度を実現するために、および区間経路について設定される車両速度を実現するために、それぞれの車両の駆動部に要求されるものである。そのために、本発明に基づいて意図される運転者モデルは、車両が所要出力を提供するように車両を調整する。そのためにたとえば計算ユニットにより、割当表ないし割当関数を利用したうえで、そのつど判定された所要出力に、許容されるペダル位置の値が割り当てられて、許容されるペダル位置の値が、本発明に基づいて意図される運転者モデルへと伝送される。
【0011】
運転者モデルが、許容されるペダル位置の値を車両モデルから伝達されるとただちに、もしくは許容されるペダル位置の値を車両モジュールによって判定するとただちに、運転者モデルは、コントロールされるべき車両のそれぞれのペダルを、許容されるペダル位置の値に準じて調整することができる。そのために、たとえば許容されるペダル位置の値をペダルコントロールユニットに伝送することができ、それにより、ペダルコントロールユニットがそれぞれのペダルを、特に車両のアクセルペダルを、最大でも、許容されるペダル位置の値に対応する位置まで、または実質的に対応する位置まで動かす。ペダルの位置が、許容されるペダル位置の値に実質的に対応するのは、許容されるペダル位置の値にたとえば5%の、好ましくは2%の、特に好ましくは0.5%の所定の許容値を加算または減算したものに対応する位置にペダルがある場合である。
【0012】
本発明に基づいて意図される許容されるペダル位置の値は特に限界値としての役目を果たし、これを上回って、またはこれを下回って、運転者モデルにより調整されるべきペダル位置が変更されるべきでなく、もしくは変更されてはならない。
【0013】
それに応じて、本発明に基づいて意図される許容されるペダル位置の値は、運転者モデルにより車両のコントロールのために適用されるそれぞれの制御に、たとえばPI制御器に重ね合わされるコントロールインスタンスとして作用し、それにより、許容されるペダル位置の値を上回る、または下回るペダル位置につながる調整値を運転者モデルが設定したケースについては、許容されるペダル位置の値によって調整値が自動的に置き換えられ、もしくは、許容されるペダル位置の値に合わせて調整値が自動的に適合化される。
【0014】
換言すると、提案される方法によって車両がその出力に関して、それぞれの道路経路ないし区間区域について要求される車両速度と加速度に依存して制限もしくは抑制される。
【0015】
提案される方法を適用したうえで、1つの実施形態ではペダルコントロールユニットを制御するためのPID制御器を省略し、その代わりに、許容されるペダル位置について本発明に基づいて判定される値によって、相応の車両ないし相応のペダルコントロールユニットを直接コントロールすることができる。その代替として、許容されるペダル位置について本発明に基づいて判定される多数の値を平滑化するために、PID制御器が利用されることが意図されていてよい。
【0016】
運転者モデルがコントロールモジュールを含むことが意図されていてよく、該コントロールモジュールによってそれぞれのペダルを調整するための調整値が判定され、調整値は、許容されるペダル位置の値を基礎として判定される上側の限界値によって、特にダイナミックに制限される。
【0017】
本発明に基づいて意図される許容されるペダル位置の値を車両のコントロールに利用するために、許容されるペダル位置の値を、ペダルを調整するためのコントロールプロセスの基礎となる限界値へと移行させるコントロールモジュールに、許容されるペダル位置の値を伝送することができる。
【0018】
コントロールモジュールは、たとえば車両のペダルの調整値を判定するために構成されるPI制御器もしくはPID制御器であってよい。
【0019】
本発明に基づいて意図される所要出力は、許容されるブレーキペダル位置の値に基づいて車両のブレーキペダルが調整されることによって提供されることが意図されていてよい。
【0020】
さらに、それぞれのペダルの調整値についての上側の限界値がコントロールモジュールによって判定されることが意図されていてよく、それは、車両の駆動部により提供されるべき出力要求が上昇したケースについては、出力要求の上側の限界値が相応に引き上げられることによってであり、および、現在の出力要求が、現在の出力要求にすぐ先行する出力要求の、加重係数で重みづけされた値に相当する重みづけされた指標値よりも低いケースについては、重みづけされた値が上側の限界値として選択されることによってである。
【0021】
車両の駆動部により提供されるべき現在の出力要求に依存して適合化される上側の限界値により、ダイナミックな、すなわち連続的に適合化される、車両の出力放出の制限を行うことができ、それにより加速プロセスのときでも、車両が燃料非効率的に、またはいっそう高い有害物質排出もしくは準最適な有害物質排出をもって作動する動作状態が回避される。
【0022】
さらに、加重係数は1よりも小さい値に相当することが意図されていてよい。
【0023】
特に、加重係数は“0.999”の値に相当することができる。
【0024】
上側の限界値を判定するためにコントロールモジュールに伝送される伝送値は、係数と、たとえば係数“1.5”と乗算された、許容されるペダル位置の値に相当することが意図されていてよい。
【0025】
コントロールモジュールによる上側の限界値の判定のための伝送値としての、許容されるペダル位置の係数化された値により、許容範囲を有する上側の限界値を形成することができ、それにより、相応の係数により設定される許容幅の内部で、許容されるペダル位置の値そのものによって意図されるよりも高い出力を放出する動作状態で車両を作動させることもできる。
【0026】
さらに、調整値が下側の限界値によって区切られることが意図されていてよく、下側の限界値は許容されるペダル位置の値を基礎として判定され、または下側の限界値は固定的に設定される。
【0027】
下側の限界値により、車両が所定の出力要求のもとで作動する最小出力を設定することができる。そのために下側の限界値を、許容されるペダル位置の値を基礎として判定することができ、それにより上側の限界値と下側の限界値とによって、許容されるペダル位置の値に依存して変化する許容幅がもたらされる。
【0028】
さらに、運転者モデルが目標加速度決定モジュールを含むことが意図されていてよく、これによって車両により印加されるべき加速出力が判定され、それは、少なくとも1つの将来の時点について要求される速度と、現在の時点について要求される速度との間の速度差が判定され、判定された速度差を参照して、速度差の補正のために必要な加速出力が判定されることによる。このときさらに、目標加速度決定モジュールは判定された加速出力を、要求される加速出力として運転者モデルに伝送することが意図される。
【0029】
少なくとも1つの将来の時点について要求される速度と、現在の時点について要求される速度との間の速度差によって予測周期を形成することができ、この予測周期について、必要な加速出力が速度差を参照して計算される。既知の時間ないし設定された時間の予測周期のもとで、既知の時点で、すなわち予測周期の終了時に、車両挙動が不変であった場合に予期される速度差を、この速度差を予測周期内で克服するのに必要とされる加速出力へと換算することができる。このとき予測周期はたとえば0.001秒から5秒の間、特に0.001秒から2秒の間の時間をとることができる。
【0030】
さらに、将来的に要求される多数の速度についての多数の速度差を参照して、必要な加速出力が判定されることが意図されていてよい。たとえば予測周期内の毎秒ごとに、速度差とこれに対応する加速出力が判定されることが意図されていてよい。このとき、たとえば100ミリ秒または1000ミリ秒の時間の所定の作業サイクルで、将来の要求される速度が判定されることが意図されていてよい。それに応じて各々の作業サイクルについて、相応の加速出力を判定することができる。
【0031】
判定された加速出力を参照して、判定された加速出力で車両を加速させるために車両で調整されるべき所要出力を判定することができ、それにより、車両が相応に予測周期内に所定の速度に達し、もしくは速度差が最小化される。そのためにそれぞれの加速出力に、たとえば割当表または割当関数によって所要出力を割り当てることができ、もしくは、許容されるペダル位置の相応の値を割り当てることができる。
【0032】
第2の態様では、本発明は、車両をコントロールするための運転者モデルを作動させるためのコントロール装置に関する。コントロール装置は、運転者モデルを作動させるためにコンフィグレーションされた運転者モジュールを含む。運転者モジュールは、車両で調整されるべきペダル位置を判定するためにコンフィグレーションされた車両モジュールを含む。運転者モジュールは、車両の駆動部により印加することができる全出力に対する割合として所要出力を判定するためにコンフィグレーションされた所要量判定モジュールを含み、所要出力は、要求される速度および/または要求される加速度で車両を所定の区間経路に沿って動かすために必要とされる出力に相当する。さらに運転者モジュールは、許容されるペダル位置の値を所要出力に割り当てるためにコンフィグレーションされた割当モジュールと、許容されるペダル位置の値を車両のコントロールのために運転者モデルへ伝送するためにコンフィグレーションされた伝送モジュールとを含む。
【0033】
これに伴って本発明による方法は、本発明による装置との関連で詳細に説明したのと同じ利点をもたらす。
【0034】
運転者モジュールは、それぞれのペダルを調整するための調整値を判定するためにコンフィグレーションされたコントロールモジュールを含むことが意図されていてよく、コントロールモジュールは、上側の限界値によって調整値をダイナミックに制限し、許容されるペダル位置の値を基礎として上側の限界値を判定するためにコンフィグレーションされる。
【0035】
さらに運転者モジュールは、車両により印加されるべき加速出力を判定するためにコンフィグレーションされた目標加速度決定モジュールを含むことが意図されていてよく、それは、少なくとも1つの将来の時点について要求される速度と、現在の時点について要求される速度との間の速度差が判定され、判定された速度差を参照して、速度差の補正のために印加されるべき加速出力が判定されることによってであり、運転者モジュールは、判定された印加されるべき加速出力を要求される加速出力として運転者モデルに伝送するためにコンフィグレーションされる。
【0036】
目標加速度決定モジュールは、要求される目標加速出力をたとえば式(1)を適用して判定することができる。
【数1】
【0037】
ここで、
【数2】
は要求される目標加速出力に相当し、
【数3】
は要求される目標速度に相当し、
【数4】
は現在の速度に相当し、“t”は時間[秒]に相当する。
【0038】
第3の態様では、本発明は、車両のテスト走行を実施するための、提案されるコントロール装置の利用法に関する。
【0039】
たとえば実際の運転時の車両エミッションを検出するためのテスト走行などのテスト走行を実施するために、提案されるコントロール装置が、そのつど判定されるペダル位置を利用したうえで、もしくはそのつど判定される速度値および/または加速度値を利用したうえで、テストされるべき車両を制御することができる。
【0040】
第4の態様では、本発明は、コンピュータで実行されたときに、提案される方法の少なくとも1つの可能な実施形態に基づくすべてのステップを実行するためにコンフィグレーションされたプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品に関する。
【0041】
本発明によるコンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読の命令コードとして、たとえばJAVA(登録商標)やC++などのあらゆる適当なプログラミング言語でインプリメントされていてよい。コンピュータプログラム製品は、データディスク、リムーバブルハードディスク、揮発性メモリもしくは不揮発性メモリ、またはビルトインメモリ/プロセッサなどのコンピュータ可読の記憶媒体に格納されていてよい。命令コードは、コンピュータまたは制御デバイスなどの他のプログラム可能なデバイスをプログラミングして、所望の機能を実行することができる。さらにコンピュータプログラム製品は、たとえばインターネットなどのネットワークで提供することができ、もしくは提供されていてよく、そこから必要に応じて利用者によってダウンロードすることができる。コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムすなわちソフトウェアによってだけでなく、1つまたは複数の専用の電子回路によっても、すなわちハードウェアでも、あるいは任意のハイブリッド形態でも、すなわちソフトウェアコンポーネントとハードウェアコンポーネントによっても、具体化することができ、もしくは具体化されていてよい。
【0042】
本発明を改良するさらなる方策は、図面に模式的に示されている本発明のさまざまな実施例に関する以下の説明から明らかとなる。特許請求の範囲、発明の詳細な説明、または図面から明らかとなる一切の構成要件および/または利点は、設計上の具体的事項や空間的な配置も含めて、それ自体として単独でもさまざまに異なる組合せでも、発明の要部となり得る。
【0043】
図面はそれぞれ模式的に次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明による方法の1つの考えられる実施形態の進行を示すフローチャートである。
【
図2】本発明によるコントロール装置の1つの考えられる実施形態を示す図である。
【
図3】コントロールモジュールの1つの考えられる実施形態を視覚化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1には、提案される方法の考えられる実施形態の進行100が模式的に示されている。
【0046】
第1の判定ステップ101で、コンピュータで実行される運転者モデルの運転者モジュールによって、車両で調整されるべきペダル位置が、ここでは例示としてアクセルペダル位置が、判定される。
【0047】
車両で調整されるべきアクセルペダル位置を判定するために、運転者モジュールによって第2の判定ステップ103で、車両の駆動部により印加することができる全出力に対する割合としての所要出力が判定される。このとき所要出力は、要求される速度で、すなわち所定の道路経路について設定される速度で、および要求される加速度で、車両を所定の道路経路に沿って動かすのに必要とされる出力に相当する。このとき要求される加速出力を、たとえば要求される速度を参照して判定することができ、それは、たとえば現在の車両の速度と、既知の時点で要求される速度との間の速度差が決定されることによる。このとき要求される加速度は、現在の速度を起点として、既知の時点で要求される速度を既知の時点で達成するのに必要とされる加速度に相当する。
【0048】
割当ステップ105で、判定された所要出力に、許容されるアクセルペダル位置の値が割り当てられる。このとき許容されるアクセルペダル位置の値は、判定された所要出力を考慮したうえで、車両の燃料消費および/または有害物質排出が最小化されるように選択される。
【0049】
伝送ステップ107で、許容されるアクセルペダル位置の値が運転者モデルへ車両のコントロールのために伝送される。それに応じて、運転者モデルがたとえばペダルコントロールデバイスをコントロールして、車両のペダルが、最大で、許容されるアクセルペダル位置の値まで動くようにする。そのために運転者モデルは、たとえばコントロールコマンドにより設定される特性曲線に従ってペダルを動かすようにペダルコントロールデバイスをコンフィグレーションする、または、許容されるアクセルペダル位置の値に基づいてペダルの動きを制限する相応の限界値をペダルコントロールデバイスに設定する、相応のコントロールコマンドを出す。
【0050】
運転者モジュールは、式(2)および(3)を適用して相対的な所要出力を判定するための車両モデルを利用する。
【数5】
【数6】
【0051】
このとき次のことが成り立つ:
【数7】
は、1秒あたりのメートル単位での現在の目標速度であり、
【数8】
ここで
【数9】
【数10】
および
【数11】
は所要出力に相当し、P
demは要求される出力に相当し、P
maxはそれぞれの車両の最大出力に相当し、V
demは要求される速度に相当する。パラメータm,A
0,B
0およびC
0は関数の変数であり、最終加速度gは平方で9.81m/s
2に相当し、傾斜角は
【数12】
によって決まる。
【0052】
図2にはコントロール装置200が示されている。コントロール装置200は、運転者モデルを作動させるためにコンフィグレーションされた運転者モジュール201を含んでいる。
【0053】
運転者モジュール201は、車両で調整されるべきアクセルペダル位置を判定するためにコンフィグレーションされた車両モジュール203を含んでいる。
【0054】
さらに運転者モジュール201は、車両の駆動部により印加することができる全出力に対する割合として所要出力を判定するためにコンフィグレーションされた所要量判定モジュール205を含んでおり、所要出力は、要求される速度および/または加速度で所定の区間経路に沿って車両を動かすのに必要とされる出力に相当する。
【0055】
さらに運転者モジュール201は、許容されるアクセルペダル位置の値を所要出力に割り当てるためにコンフィグレーションされた割当モジュール207を含んでいる。
【0056】
さらに運転者モジュール201は、許容されるペダル位置の値を車両のコントロールのために運転者モデルへ伝送するためにコンフィグレーションされた伝送モジュール209を含んでいる。
【0057】
たとえば無線インターフェースまたは有線インターフェースとして構成されていてよいインターフェース211により、コントロール装置200は、車両ないしアクチュエータと、たとえばペダル調整器と、車両のコントロールのために通信接続されている。
【0058】
図3には、コントロールモジュール300が示されている。コントロールモジュール300は、許容されるアクセルペダル位置の上側の限界値と下側の限界値をアダプティブに、すなわちダイナミックに決定するための決定ユニット301を含んでいる。
【0059】
決定ユニット301は入力信号として、ペダルパイロット制御ユニットからアクセルペダル位置303の現在の値と所定の最小値関数305とを受信し、これらを参照して下側の限界値が直接的に決定される。
【0060】
所定の最小値関数305は、たとえばアクセルペダルの最小位置を決定するための関数または割当表であってよい。
【0061】
さらに決定ユニット301は、そのつどの道路経路ないし区間区域について必要となる所要出力を参照して、許容されるアクセルペダル位置の上側の限界値を決定する。
【0062】
さらにコントロールモジュール300は、現在の車両加速度309と、そのつどの道路経路ないし区間区域について要求される加速度311とを参照して、車両のアクセルペダルを調整するための値313を決定するPID制御器307を含んでいる。
【0063】
決定ユニット301は、PID制御器により判定されたアクセルペダルの調整のための値313を、下側および上側の限界値と照合する。PID制御器307により判定された値が上側の限界値よりも大きい場合、または下側の限界値よりも小さい場合、たとえばPID制御器307によって判定された値が上側または下側の限界値で置き換えられることによって、上側の限界値を上回る、または下側の限界値を下回る、アクセルペダルの相応の動きが阻まれる。
【0064】
その代替として、決定モジュールによってPID制御器307が置き換えられ、またはPID制御器307が決定モジュールに後置されて、決定モジュールにより判定された値を平滑化し、ないしは決定モジュールにより判定された値における変動を補正することが意図されていてよい。
【0065】
上側の限界値と下側の限界値は、道路経路および現在の車両速度および/または車両の現在の速度に依存して連続的に更新される。
【0066】
このときアクセルペダルを調整するための値は、たとえば次式(4)、(5)によって判定することができる:
【数13】
【0067】
式(4)は次式:
【数14】
について成り立ち、それ以外の場合には式(5)が成り立つ。
【数15】
【0068】
ここでは次のことが成り立つ:
【数16】
は、アクセルペダルを調整するための値に相当し、
【数17】
は、入力値に相当し、たとえば現在の時点にすぐ先行する調整ステップで判定された、特に1.5の係数によって係数化されたアクセルペダルを調整するための値に相当し、“t”は単位[秒]での時間に相当し、0.999は加重値に相当する。
【0069】
本発明は、図示している実施形態に加えてさらなる構成原理を可能にする。このことは、各図面を援用して説明した実施例に本発明が限定されるとみなされるべきでないことを意味する。
【符号の説明】
【0070】
100 進行
101 第1の判定ステップ
103 第2の判定ステップ
105 割当ステップ
107 伝送ステップ
200 コントロール装置
201 運転者モジュール
203 車両モジュール
205 所要量判定モジュール
207 割当モジュール
209 伝送モジュール
211 インターフェース
300 コントロールモジュール
301 決定ユニット
303 アクセルペダル位置の値
305 最小値関数
307 PID制御器
309 現在の車両加速度の値
311 要求される加速度
313 アクセルペダルを調整するための値