(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】曳航される海洋物体を制御する制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A01K 75/00 20060101AFI20250120BHJP
B63B 21/66 20060101ALI20250120BHJP
B63B 35/16 20060101ALI20250120BHJP
A01K 73/02 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
A01K75/00 Z
B63B21/66
B63B35/16
A01K73/02
(21)【出願番号】P 2022511236
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(86)【国際出願番号】 NO2020050212
(87)【国際公開番号】W WO2021040530
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-09
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】519342507
【氏名又は名称】カルム ウィンチ エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒスタッド,マグネ
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05058307(US,A)
【文献】特開昭51-074880(JP,A)
【文献】実開昭60-038570(JP,U)
【文献】特開2019-015543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 69/00-73/053
A01K 73/12-77/00
B63B 21/66
B63B 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域内又は水域上の曳航される物体(1、6、20、30、50)のための制御システムであって、
前記制御システムにおいては、1つ以上の曳航部材(3)が、前記物体(1)と曳航船(2)との間に延在し、
前記制御システムは、
前記1つ以上の曳航部材(3)のうちのそれぞれ1つに移動可能に接続され、少なくともそのそれぞれの曳航部材に沿った距離を制御可能に移動可能な1つ以上のバラスト部材(4)と、
前記曳航部材(3)上の前記バラスト部材を制御する制御デバイス(5)と、
を
備える、制御システム。
【請求項2】
少なくとも1つのバラスト部材(4)及び/又は前記曳航される物体は、海底(B)までの距離を決定するための
距離測定デバイスを備える、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御デバイス(5)は、前記曳航船(2)上のウィンチ手段に接続された制御ケーブルを有する、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記1つ以上のバラスト部材(4)に接続され、前記1つ以上のバラスト部材(4)か
ら海底に向かってある距離(e)を延在する重り
物体(24)を更に備える、請求項1~3の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記曳航される物体は、トロール板(6)を伴うトロール網(1)である、請求項1~4の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記曳航される物体は
、細長い物体である、請求項1~4の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記細長い物体は、地震ケーブル(30)、又は、石油産業で使用されるケーブル、パイプライン、ホース、アンビリカ
ルである、請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記曳航される物体は、前記曳航される物体が中立浮力を有する浮力要素(22)を備える、請求項1~4の何れか一項又は請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記曳航される物体は、水面(S)上を曳航される船舶(20)である、請求項1~4の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項10】
前記曳航される物体及び/又は前記バラスト部材の少なくとも1つは
、海底(B)
までの距離を決定するように構成された
距離測定デバイスを備え、
前記
距離測定デバイスは
、送信器/受信器(70)と通信するように構成され、
前記送信器/受信器(70)は、制御ユニット(71)と通信するように構成され、
前記制御ユニット(71)は、少なくとも1つのバラスト部材(4)
の位置を制御するためのデバイス(72)と通信するように構成される、請求項1~9の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項11】
制御ユニット(71)は、プログラム可能制御ユニット(PLC)を備える、請求項10に記載の制御システム。
【請求項12】
水域内又は水域上の曳航される物体(1)を制御する方法であって
、
曳航部材(3)のうちのそれぞれ1つに移動可能に接続された1つ以上のバラスト部材(4)を、前記曳航部材(3)のカテナリ(c)を制御するために、少なくともそのそれぞれの曳航部材に沿った距離を制御可能に移動させることを
含み、
前記曳航部材(3)は、前記曳航される物体(1)と曳航船(2)との間に延在する、方法。
【請求項13】
個々のバラスト部材(4)は、前記曳航される物体のジオメトリを訂正
又は保存
するために個別に操作され、
前記曳航される物体は、トロール網である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上のバラスト部材(4)の前記移動は
、海底(B)
までの距離を決定するために構成される
距離測定デバイスによって提供される情報に基づいて制御される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記距離は、事前に決定される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び11のプリアンブルによって示されるような、1つ以上の曳航される海洋物体を制御する際に用いることのできるシステム及び方法に関する。海洋物体は、潜水物体(例えば、トロール網又は地震ストリーマケーブル)、又は、水面に浮かぶ物体(例えば、はしけ、浮桟橋、又は船)であり得る。
【背景技術】
【0002】
トロール網は一般に、様々なタイプの海洋生物を捕獲するため、及び、海底又は海底近くの他の物体を収集するためにも使用される。一般に、また
図2を参照すると、1つのタイプのトロール網は、水が通過できるネット又はメッシュ構造を有する柔軟な材料の漏斗型バッグ1を備える。トロール網口(前端)は開いており、より狭い最後尾は閉じている。メッシュサイズは所期の漁獲量に従って決められる。トロール網は、通常、1つ以上の船舶2(トロール船)によって水を介して曳航され、好適なバラスト要素によって所望の深さに維持される。一つの構成である底引き網漁において、トロール網は海底に沿って、又は海底近くで曳航される。別の構成である中層トロール(遠洋トロールとも呼ばれる)において、トロール網は、海底より上の自由水を介して曳航される。中層トロールは、様々なタイプの動物性プランクトン(オキアミなど)、カタクチイワシなどの遠海魚、小エビ、マグロ、及びサバを捕獲するが、底引き網漁は、底生魚と、タラ、オヒョウ、及びメバルなどの半遠海魚との両方、並びに海底の他の物体をターゲットとする。
【0003】
トロールバッグ(ネット)の垂直の広がりは、通常、トロール網口(前端)の上部領域内の1つ以上の浮力要素10、及び、トロール網口底部又はその近くにある1つ以上のバラスト要素(重り)7によって提供される。トロールバッグの水平の広がりは、通常、トロール網口の両側に1つずつ、2つのトロール網扉6によって提供される。トロール網扉は様々なサイズ及び形状であり、海底との接触を維持する(底引き網漁の場合)ように、又は、所望の水深での上昇を保持するように、設計される。トロール網扉は本来、流体力を提供し水平の広がりを維持するための形状及び/又は傾斜(迎え角)を有する翼として作用する。曳航船は、機能を保持するために、トロール網扉したがってトロール網自体について特定の速さを維持しなければならない。したがって通常、トロール網が曳航されその完全性を維持しその所期の目的を満たすことが可能な最低速さが存在する。この最低トロール速さは、曳航船の旋回半径にも影響を与え、旋回が急過ぎるとトロールを「失速」させ、崩壊させる可能性がある。
【0004】
トロールの間、トロール網を海面又は船舶まで巻き上げることによって、又は、トロールバッグの後端に接続されたホースを介して捕獲物を海面までポンプで汲み上げることによって、捕獲物を回収することができる。一例が、国際出願第WO2018/174723号に記載されており、参照として本明細書に組み込まれる。後者の方法は、例えば動物性プランクトンを回収するために使用される。
【0005】
別の例は、ノルウェー出願第NO20181676号に見られ、トロール船と、好適なワイヤ、チェーン、又はロープなどの、いくつかの別々に制御可能なトロール接続によってトロール船に結合されたトロールバッグアセンブリと、トロールバッグアセンブリの側部先端に(又はその近くに)少なくとも間接的に接続された少なくとも2つの外側トロール網扉と、を備えるトロール配置を記載している。トロールは当技術分野で周知であるため、本明細書でより詳細に説明する必要はない。
【0006】
従来技術は、少なくとも1本の測量ケーブルを有する測量装置を記載する、国際出願第WO2014/122494A1号も含み、各測量ケーブルは、母船に取り付けられた近位端、少なくとも1つの水面下曳航船に接続された遠位端、及び、近位端と遠位端との間の測量ケーブルに接続された少なくとも1つの測量デバイスを有する。測量ケーブルは、測量の間、母船の縦軸に垂直な方向に延在する。測量ケーブルは、例えばしっかり張った氷又は浮氷塊などの、例えば氷冠の下で、母船から横向きの距離に延在する。
【0007】
図1及び
図2は、2つのトロール網扉6を有し、水域Wにおいてトロール船後方の距離l
1及び水面Sより下で、トロール船2によって曳航されるトロール網1を示す。トロール網扉6は実際には同様であるが、トロール網口を反対方向にたわませるように配置される。本明細書では、トロール網及びトロール網扉は、集合的にトロール網と呼ばれる1つのユニットとみなすことができる。トロール船は、水に対して速さvで移動し、2本のトロールワイヤ3によって(トロール網扉を介して)トロール網に接続される。当業者であれば、より多くの又は少ない数のトロールワイヤが使用できることを理解されよう。例えば、トロールバッグの後端から船へと延在するホースにサポートを提供するために、第3の中間トロールワイヤを追加することができる。
【0008】
トロール船2、トロール網1、及びトロールワイヤ3a、bは共に、トロールワイヤが事実上、カテナリを形成するためにその能力によってばねとして作用する、動的システムを形成する。トロールワイヤは、そうでなければトロール船とトロール網との間の相対的な動きに起因して形成されることになる、たるみを取る。
図2において、カテナリはcと示され、トロール船とトロール網(ここでは、トロール網扉)との間の仮想直線Lに対するトロール網のたわみである。
【0009】
トロールの間、及び特に中層(遠洋)トロールの間、深さの大小の差はあっても、水域においてトロール網を上昇させることが必要であるか又は望ましい場合がある。従来技術の方法では、これは、展開されたトロールワイヤの長さ、及びトロール船とトロール網との間の距離を減少させる、トロールワイヤのリール巻き上げによって行われる。この状態により、非常に短いカテナリを形成すること、極端な場合にはまったくカテナリがないことが可能であり、事実上システム内のすべての弾力性(及びしたがって、制動)は大幅に低減される。これが、トロール船、トロール網、及びワイヤへの著しい動的負荷につながり、トロール動作を終了させる可能性がある。リール巻き上げ動作は、トロールワイヤがトロール船のプロペラやかじに絡みつく危険も含む。更に距離が短くなると、特に旋回中、トロール船とトロール網との広がりが制御しにくくなる。最終的に、特にオキアミ又は他のタイプの動物性プランクトンのトロールの場合、トロール船とトロール網との間の距離の減少は、トロールバッグの後端とトロール船との間の前述のホースの再配置を必要とさせる。
【0010】
底引き網漁に関連付けられた問題は、トロール網扉及び時にはトロール網の一部が海底に沿って引きずられ、海底の海洋フローラ及びファウナにかなりのダメージを生じさせることである。
【0011】
従来技術は、可変深さで曳航されるように適合された、トロールネットを曳航するための可変浮力浮遊構造を開示する、英国出願第GB811853A号(1959年公開)を含む。浮遊構造は、圧搾空気で満たされる少なくとも1つのタンクと、海水の給水又は排水の際に介し得るポートを有する少なくとも1つのチャンバと、チャンバ内の海水量の変動に対して圧縮空気の流入及び流出を制御するための、及びしたがって、浮遊物の浮力を調節するための手段と、浮遊物によって搬送され空気の流入及び流出手段を供給する圧縮空気コンテナと、を備える。空気コンテナは、閉位置に向かって弾性的に装着された空気搬送弁及び空気放出弁を備え、2つの弁は、一方の側でチャンバ内の圧力を受け、他方の側で所望の潜水深さに従って変動するように適合された圧力の空気を受ける、隔壁によって移動可能な部材からなる手段を動かすことによって、交互の開閉のために接続される。チャンバ内の海水の量は、浮遊物が平衡状態にあり、海水を吹き出すこと、又はポートを介して海水を流入可能にすることによって、浮遊物が新しい所望の深さまで上昇又は沈下されるように、調整される。流入できた海水を吹き出すことによって、又はその逆に、平衡状態は新しい深さで再度復元される。
【0012】
別のトロールタイプはビームトロールであり、水中で概して水平に配置されるビームによって、トロールバッグの水平の広がりが提供される。ビームトロールは、トロール網扉は利用しないが、前述の問題のうちのいくつかがこのトロールタイプにも適用される。
【発明の概要】
【0013】
したがって、従来技術に関連付けられた欠点のない、水域内を曳航される物体の垂直位置が制御可能なシステムが求められている。
【0014】
本発明は、独立請求項で記載及び特徴付けられる一方で、従属請求項は本発明の他の特徴を記載する。
【0015】
したがって、水域内又は水域上の曳航される物体のための制御システムが提供され、1つ以上の曳航部材が物体と曳航船との間に延在し、1つ以上の曳航部材のうちのそれぞれ1つに移動可能に接続され、少なくともそのそれぞれの曳航部材に沿った距離を制御可能に移動可能な、1つ以上のバラスト部材によって特徴付けられる。
【0016】
少なくとも1つのバラスト部材及び/又は曳航される物体は、海底までの距離を決定するための感知及び検出手段を備え得る。一実施形態において、制御システムは、曳航部材上のバラスト部材の位置を制御する際に用いることのできる、制御デバイスを備える。重り部材がバラスト部材に接続可能であり、バラスト部材から海底に向かってある距離を延在する。
【0017】
曳航される物体は、トロール板、ケーブル又はライザーなどの細長い物体などを伴う、トロール網であり得、曳航される物体が中立浮力を有し得る浮力要素を備え得る。曳航される物体は、水面上を曳航される船舶であり得る。
【0018】
曳航される物体及び/又は少なくとも1つのバラスト部材は、一実施形態において、手段と海底との間の距離を決定するように構成された感知及び検出手段を備え、感知及び検出手段は遠位ロケーションにおける送信器/受信器と通信するように構成され、送信器/受信器は制御ユニットと通信するように構成され、制御ユニットは少なくとも1つのバラスト部材の位置を制御するためのデバイスと通信するように構成される。制御ユニットは、プログラム可能制御ユニットを備え得る。
【0019】
曳航される物体と曳航船との間に延在する、曳航部材のうちのそれぞれ1つに移動可能に接続され、曳航部材のカテナリを制御するために、1つ以上のバラスト部材を、少なくともそのそれぞれの曳航部材に沿った距離を制御可能に移動させることによって特徴付けられる、水域内又は水域上の曳航される物体を制御する方法も提供される。個々のバラスト部材は、曳航される物体のジオメトリを訂正、保存、又はその他の方法で変化させるために個別に操作され得、曳航される物体はトロール網である。一実施形態において、1つ以上のバラスト部材の動きは、手段と海底との間の距離を決定するために構成される、感知及び検出手段によって提供される情報に基づいて制御される。距離は事前に決定され、制御ユニットに入力され得る。
【0020】
本発明のこれら及び他の特徴は、添付の概略図を参照しながら、非限定的例として与えられる、一実施形態の下記の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術に従い、原則として、水域において曳航船(トロール船)の後方をある距離で曳航される、曳航される物体(トロール網)を示す、斜視図におけるスケッチである。
【
図2】従来技術に従い、原則として、水域においてトロール船の後方をある距離で曳航されるトロール網を示し、トロールワイヤが水中でどのようにカテナリを形成するかも示す、側面図におけるスケッチである。
【
図3】原則として、水域においてトロール船の後方をある距離で曳航されるトロール網を示し、トロールワイヤカテナリがバラスト部材を用いてどのように制御され得るかを示す、側面図におけるスケッチである。
【
図4】
図3に対応する斜視図におけるスケッチである。
【
図8】曳航される物体が地震ストリーマケーブルである、本発明の実施形態を示す概略側面図である。
【
図9】曳航される物体が地震ストリーマケーブルである、本発明の実施形態を示す概略側面図である。
【
図10】曳航される物体が海底に沿って引きずられるか又は移動される物体である、本発明の一実施形態を示す概略側面図である。
【
図11】位置合わせ不良のトロール網を示す概略上面図である。
【
図12】旋回するトロール船及びトロール網を示す概略上面図である。
【
図13】曳航される水上船、及び、本発明が曳航部材カテナリを制御するためにどのように使用されるかを示す、概略側面図である。
【
図14】曳航される水上船、及び、本発明が曳航部材カテナリを制御するためにどのように使用されるかを示す、概略側面図である。
【
図15】本発明の一実施形態を示す概略側面図である。
【
図16】特に、距離測定機器及び構成を示す、本発明の一実施形態を示す概略側面図である。
【
図17】曳航される物体がどのように制御され得るかを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
下記の説明は、「水平」、「縦」、「横」、「前後」、「上下」、「上側」、「下側」、「内側」、「外側」、「前方」、「後方」、などの用語を使用する場合がある。これらの用語は一般に、図に示されるような見方及び向きを示し、本発明の通常の使用に関連付けられる。用語は読み手の利便性のためのみに使用され、限定するものであってはならない。
【0023】
次に、本発明の第1の実施形態を、
図3から
図5を参照しながら説明する。2つのトロール網扉6を有するトロール網1は、トロール船2によって、水域Wにおいて、トロール船後方のある距離で、水面Sの下方で、曳航される。図示された実施形態において、2つのトロール網扉6は実質的に同様であるが、トロール網口を反対方向にたわませるように配置される。参照番号の後ろの表記a、b、cなどは、下記では必要に応じて品目を区別するために使用される。
【0024】
トロール網自体は概して、上記で
図2を参照しながら説明しており、当分野では更に周知である。本明細書では、トロール網及びトロール網扉は、集合的にトロール網又は曳航される物体と呼ばれる1つのユニットとみなすことができる。トロール船は、水に対して速さvで移動し、ここでは各トロール網扉について1本ずつ2本のトロールワイヤ3の形である曳航デバイス3によって、(ここではトロール網扉を介して)トロール網に接続される。当業者であれば、より多くの又は少ない数の曳航デバイスが使用できることを理解されよう。例えば、トロールバッグの後端から船へと延在するホースにサポートを提供するために、第3の中間トロールワイヤを追加することができる。本発明は、曳航デバイスの数、トロール網扉、トロール網タイプ、又はトロール網の数によって限定されるものではない。
【0025】
前述のように、トロール船2、トロール網1、トロール網扉6、及びトロールワイヤ3は共に、トロールワイヤが事実上、カテナリを形成するためのそれらの能力、及びワイヤと水との間の摩擦によって、ばねとして作用する動的システムを形成する。トロールワイヤ(例えばビームトロール網の場合、1本のワイヤ、又はより多くのワイヤ)は、そうでなければトロール船と曳航される物体(ここでは、トロール網)との間の相対的な動きに起因して形成されることになる、たるみを取る。しかしながら、このカテナリを制御及び増大させるために、発明された制御システムは、各曳航部材(ここでは、トロールワイヤ)3上に移動可能に配置されたバラスト部材4を備える。
図5の両矢印Mは、こうした動きを示す。バラスト部材4は、クランプ重り、又は、所期の目的に適した負の浮力を有する任意の他の固形物であり得る。バラスト部材は、流体力学的抗力を最小にするために、流体力学的に有利な形状を有し得る。バラスト部材は、その重みを制御するための手段も備え得る。バラスト部材は、ホイール、ローラ(図示せず)などを有するハウジングを用いて、曳航部材に接続され得る。参照番号5は、トロールワイヤ3上のバラスト部材4の位置を調整する際に用いることができる制御ケーブルを示す。ケーブル5は、船舶(トロール船)2上のウィンチ手段(
図3から
図5には図示せず)に接続され得る。制御ケーブル5を引くことで、水中のバラスト部材4を上昇させ、したがってカテナリは減少し、制御ケーブルを繰り出すことで、バラスト部材4を(その負の浮力によって)水中により深く沈めさせ、したがってカテナリは増加する。
【0026】
したがって、
図5に示されるようにバラスト部材4を下げることで、従来技術構成(
図2)におけるカテナリに比べてカテナリcは著しく増加し、
図3から
図5において3’と示されるバラスト部材4とトロール網との間に延在する曳航部材3の一部は、実質的に水平である。したがって、実際的にトロール網(トロール網扉及びトロール網)には上方への引っ張りはなく、トロール網深さはバラスト部材4の操作によって制御され得る。
【0027】
発明された制御システムは、トロール網の完全性を損なうことなく、トロール速さを大幅に低下させることができる。トロール速さの低下は、オキアミ及び他の動物性プランクトンのトロール漁の際にも好ましい。
【0028】
発明された制御システムは、ビームトロールにも適用可能であり、トロール網口(前端)の上部領域における浮力要素10及びトロール網扉6は、例えば(限定されないが)直径1メートル及び長さ30メートルの(すなわち、一般に水平であり、トロールバッグ口に対して直角な)浮力ビーム(図示せず)に置き換えられることを理解されたい。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態を、
図6及び
図16を参照しながら説明する。特に記載されていない限り、
図3から
図5を参照しながら説明した特徴及び態様は、この第2の実施形態にも適用されるものであり、実施形態は組み合わせることができる。ここで、トロール網1には浮力要素22が提供され、トロール網扉6は浮力チャンバ21を備える。浮力要素22及び浮力チャンバ21は調整可能であり、トロール網及びトロール網扉が中立浮力を有するように制御され得る。浮力は、わずかに正となるようにも調整可能であり、それによって、バラスト部材4が表面に向かって持ち上げられるとき、トロール網は水面へと浮上され得る。これは、トロールワイヤのリール巻き上げなしで行うことができる。
【0030】
バラスト部材4又はバラスト部材をトロールワイヤ3に接続するハウジングには、海底Bまでの距離を決定するための信号11を発信及び受信する距離測定デバイス73が備え付けられる。距離測定デバイス(例えば、あるいは音響測探機又は音波探知機)は当分野で周知であるため、更に説明する必要はない。信号11は、船舶2上の制御システム(
図6及び
図16には図示せず)と通信可能であり、バラスト部材4の位置(すなわち、深さ)は、感知された海底までの距離に基づいて制御可能である。トロール網及びトロール網扉は中立的に浮揚性であるため、水域内でバランスが保たれ、海底までの距離hはバラスト部材4の操作によって制御され得る。したがって、曳航される物体と海底との間の接触力は最小化又は除去可能である。
【0031】
次に
図16及び
図17を参照すると、前述のバラスト部材4上の距離測定デバイス73に加えて、又は代替として、距離測定デバイス80、80’がトロール網1及び/又はトロール網扉6に取り付けられ得、曳航される物体(トロール網及び/又はトロール網扉)と海底Bとの間の距離を決定するための信号11を発信及び受信するように構成され得る。距離情報(
図6において矢印12によって示される)を含む信号を、船舶2上の制御システム71に通信することができる。制御システムは、バラスト部材制御ケーブル5の動作を制御するように構成され、それによって、曳航される物体と海底との間の距離が制御及び調整され得る。これは
図17のブロック図によって概略的に示され、参照番号73はバラスト部材4上の距離測定デバイスを示し、参照番号80、80’はトロール網扉及びトロール網上の距離測定デバイスを示す。トロール網及びトロール板は1つの物体としてみなされ得ること、及び、前述のように、端部は任意の他の曳航される物体(例えば、ビームトロール網)に置き換え可能であることを理解されたい。
【0032】
曳航される物体と海底との間の決定された距離は、信号11を介して、船舶2上の送信器/受信器(例えば、当分野で既知のトランシーバ又は任意の他の送信器/受信器デバイス)70に通信される。トランシーバ70は距離情報を制御ユニット71に通信し、制御ユニット71はこの情報を使用して、トロールワイヤウィンチ61、及び/又は、バラスト部材4の位置を制御するウィンチ又は他のデバイス72に制御信号を送信する。したがって、トロールワイヤ3及び/又は制御ケーブル5は、距離測定デバイス80、80’からの入力に基づいて動作可能である。制御ユニット71は船舶のエンジン及び/又はかじ制御75にも接続され得、これにより、曳航される物体から感知されたデータに基づいて、船舶の速さ及び/又は方向が制御され得る。
【0033】
制御ユニット71はプログラム可能制御ユニット(PLC)を備えることができ、これによってオペレータは、(曳航される物体と海底との間の)所望の距離をPLCに入力し得、したがってPLCは、信号11によって提供される情報に基づいて、この事前に決定された所望の距離が自動的に維持されるように、バラスト部材及び/又は曳航される物体を制御するデバイス72を制御することになる。
【0034】
曳航される物体は、船舶上の距離測定機器(音響測探機、音波探知機など)74によって提供される感知された深さ測定値に基づいても制御され得る。
【0035】
再度
図16を参照すると、船舶と曳航される物体との間の距離l
1はかなりの距離、例えばおよそ1000メートルであり得る。バラスト部材4と曳航される物体との間の距離l
bも相当な距離、例えばおよそ300~500メートルであり得る。したがって、1つの動作モードにおいて、船舶上の距離測定機器74によって感知される海底までの距離を使用して、バラスト部材、及び/又は曳航される物体のワイヤ、及び/又は船舶エンジンを操作することにより、曳航される物体の深さを制御することができる。制御ユニット71は、比例-積分-微分コントローラ(PID)又は同様のデバイスも備えることができ、それにより、距離測定機器ユニット80、80’、73、74のうちのいずれか1つからの入力データを使用して、曳航される物体を所望に応じて制御することができる。他のセンサ(図示せず)(例えば、温度、流れ、速度)が制御ユニットに供給され得ること、また曳航される物体を制御するためのパラメータとして使用され得ることに留意されたい。
【0036】
図17において識別されるデバイス間の通信は、当分野で既知のハードワイヤード又はワイヤレスの任意の手段の通りであり得る。
【0037】
図16及び
図17に示されるセットアップは、バランスが保たれたトロール網又は他の物体に対する制御システムとして使用され得る。デバイス74は、船(船舶)の一部として、典型的には、船舶の底部及び位置、魚又はオキアミ、あるいは海中の物体を調べることが可能な、音響測探機、音波探知機、又は他の種類の計器として、組み込まれた計器を備える。デバイス73は、曳航される物体(例えば、トロール網)を操作するために使用される、バラスト部材に組み込まれた計器を備える。これが、バラスト部材又は主トロール網ウィンチを動作させるための応答に対するフィードバックを与える。デバイス80及び/又は80’は、バラスト部材の位置又はトロール網ウィンチの動作に基づいて、曳航される物体がどのように反応するかに関するフィードバックを与える、計器を備える。
【0038】
制御ユニット71は、センサ80、80’、73、74からの入力を受信し、これらのセンサからのデータを用いて作業する、コンピュータプログラムを備える。このプログラムは、非常に制御された様式でトロール網を動作させることを可能にする。これは、海底のかなり近くにあること、及び、任意の曳航状態の間、一定の距離を維持することを可能にする。これは、海底とのいずれの物理的接触も、及びしたがって海底へのいずれのダメージも減少させる。トロールネットへのダメージも回避することができる。
【0039】
このシステムは、トロール網が動作すべき特定の深さ領域、例えば400メートルから800メートルの間の深さが画定される、「ハンティング」モードに設定され得る。このウィンドウの内部で、ウィンチコンピュータ制御システムは、捕獲可能性(魚、オキアミなど)を最適化するような様式でトロール網を位置決めするために、真の音波探知機又は音響測探機を決定することも可能なはずである。システムは手動でも動作可能である。
【0040】
制御システムは、水深又は海底までの距離に関する任意の所与のパラメータに従うことが可能であり、独自の決定をアクティブに行い、トロール網を位置決めすることができる。制御システムは、センサ及びデバイスのいずれか及びすべてからのフィードバックを有し、トロール網ウィンチと、トロール網のバランスを取るためのバラスト部材用のウィンチと、の両方を、アクティブに動作させる。
【0041】
次に、本発明の第3の実施形態を、
図7及び
図15を参照しながら説明する。特に記載されていない限り、
図3から
図6を参照しながら上記で説明した特徴及び態様は、この第3の実施形態にも適用されるものであり、実施形態は組み合わせることができる。ここで、バラスト部材4又はバラスト部材をトロールワイヤ3に接続するハウジングには、接続部材23(例えば、鎖、締め綱、ロープ、又は同様の機能を備える物体)に取り付けられたクランプ重り物体24(又は、他の固体塊)が備え付けられる。クランプ重り物体24には、海底に対する摩擦を最小化するためのホイール又はローラが備え付けられ得る。接続部材23の長さeの寸法は、水中でバランスが保たれる曳航される物体が、海底Bより上に最低距離hを維持するように決めることができる。物体24はスキッドとして成形され得、
図15に示されるように、同じくトロール網扉及びトロール網の下の接続部材に関して配置可能である。トロール網は、セクション(図示せず)及び物体24も備え得、接続部材23はこうした各セクションの下に配置され得る。
【0042】
次に、本発明の第4の実施形態を、
図8及び
図9を参照しながら説明する。特に記載されていない限り、
図3から
図7を参照しながら上記で説明した特徴及び態様は、この第4の実施形態にも適用されるものであり、実施形態は組み合わせることができる。ここで、前述のトロール網及びトロール網扉は、浮力要素22を有する地震ストリーマケーブル30によって置き換えられている。
図8は、1つのストリーマのみを示すが、いくつかのストリーマ30が対応する数の曳航デバイス(ワイヤ)3によって曳航され得、そのカテナリは、前述のように個別のバラスト部材4の操作によって制御可能であることを理解されたい。前述のトロール網扉と同様のそらせ板(図示せず)を使用して、当分野で周知の地震ストリーマケーブルの広がりを形成することもできる。
図8は、好ましい流体力学特性を示すように成形されたバラスト部材4’の変形形態も示す。この変形形態は、本発明の他の実施形態でも使用され得る。したがって、発明された制御システムは、水面Sよりもはるかに下方の所望の(及び一定の)深さで広がるストリーマの曳航を容易にする。このようにして、風、波、及び他の表面条件にさらされることが緩和されるか、あるいは回避される。本発明は、地震ストリーマケーブルに限定されるものではなく、他の曳航される物体にも適用可能である。こうした曳航される物体の例は、石油産業で使用される、ケーブル、パイプライン、ホース、アンビリカル、ライズなどである。
【0043】
次に、本発明の第5の実施形態を、
図10を参照しながら説明する。特に記載されていない限り、
図3から
図9を参照しながら上記で説明した特徴及び態様は、この第5の実施形態にも適用されるものであり、実施形態は組み合わせることができる。ここで曳航される物体は、海底に沿って引きずられる物体50である。この引きずられる物体50は、例えば海底から物体を収集するために使用される、すき、スクレーパ、又はコレクタコンテナであってよい。こうした引きずられる物体に関する1つの可能な使用は、鉱物の採掘である。長さeを調整すること、及び/又は曳航デバイス(ワイヤ、ロープなど)3上のバラスト部材4を操作することによって、バラスト部材4と曳航される(引きずられる)物体との間に延在する曳航デバイスの部分3’’の傾斜角度αが変更可能であり、それによって、曳航される物体50によって海底に及ぼされる下方への力を増加又は減少させる。
図10は、曳航される物体50を1つだけ示しているが、前述のように、いくつかの物体50はいくつかの曳航デバイス(ワイヤ)3によって曳航され得ることを理解されたい。
【0044】
図11及び
図12は、トロール網又は同様の曳航される物体を制御するために、発明された制御システムがどのように使用され得るかの2つの例を示す。
図11において、トロール網の入口は位置合わせ不良である。この位置合わせ不良は、矢印によって示されるように、1つのバラスト部材4aをトロール網に向かって移動させること、及び/又は、他方のバラスト部材4bを曳航船2に向かって移動させることによって補正され得る。したがって、一般にトロール網ジオメトリは、バラスト部材4の操作によって制御され得る。同じ原理が地震ストリーマケーブルの広がりに適用されることを理解されたい。
【0045】
図12は、旋回中、トロール網又は同様の曳航される物体を制御するために、発明された制御システムがどのように使用され得るかを示す。曳航船2が、直線コース(点線)から逸脱し、旋回に入るとき、(旋回に関して)内側のバラスト部材4aは水中で降下し(船舶から遠くへ移動され)、外側のバラスト部材4bは上昇する(船舶に向かって移動される)。バラスト部材は、旋回の前及び間にトロール網をトリミングするために使用され得、したがって、崩壊又は位置合わせ不良になるのを防止する。この制御システムを用いると、従来技術のシステムに比べて、船舶速さは低下され得、旋回はより鋭くなり得る。同じ方法が地震ストリーマケーブルの広がりにも適用されることを理解されたい。
【0046】
発明された制御システムは、上記では潜水して曳航される物体の制御に関連して説明されるが、はしけ、浮桟橋、船、及び他の浮船などの、水面を浮遊する曳航される物体を制御するためにも適用可能である。こうした適用範囲の例が
図13及び
図14に示され、曳航される表面物体20は、曳航船2によって曳航デバイス3を介して曳航されている。複数の曳航デバイスが使用可能であることを理解されたい。曳航デバイス3はスチールワイヤ、鎖、合繊ロープなどであってよい。調整可能な(移動可能な)バラスト部材4は、曳航デバイスカテナリを制御するために使用される。バラスト部材4は、好ましい流体力学的制動特性を有する形状を有し得る。(
図14に示されるような)深いカテナリは、キャビテーションを防ぐことを理解されよう。