IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-導電性ゴム引布 図1
  • 特許-導電性ゴム引布 図2
  • 特許-導電性ゴム引布 図3
  • 特許-導電性ゴム引布 図4
  • 特許-導電性ゴム引布 図5
  • 特許-導電性ゴム引布 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】導電性ゴム引布
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/27 20210101AFI20250120BHJP
   B32B 25/10 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
A61B5/27
B32B25/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022555387
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2021035753
(87)【国際公開番号】W WO2022075129
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2020169663
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】林 泰成
(72)【発明者】
【氏名】久保 真之
(72)【発明者】
【氏名】林 隆浩
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-094287(JP,A)
【文献】実用新案登録第2563308(JP,Y2)
【文献】特開2018-184687(JP,A)
【文献】特表2014-510596(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110421933(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/27
B32B 1/00 - 43/00
D06N 1/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空隙を内部に有する多孔質構造を有する導電性の基布で形成され、第1の導電性基布層面を有する導電性基布層と、
前記第1の導電性基布層面に導電性ゴムを積層して形成される導電性ゴム層と、
を有し、
前記基布は、ニット生地、メッシュ生地、織物生地、及び不織布生地のいずれか一つの生地素材であり、
前記生地素材の素材表面に導電性材料がコーティングされ、又は、前記生地素材に前記導電性材料が練り込まれ、
前記基布は、ポリエステル繊維をベースとして形成され、
前記導電性基布層及び前記導電性ゴム層を含む厚さが0.1mm~10mmであり、
前記導電性基布層と前記導電性ゴム層は、前記基布に前記導電性ゴムをカレンダー成形によって貼り合わせ、一体的に形成されることにより、前記空隙に、前記導電性ゴムの一部が混在する、
導電性ゴム引布からなる生体用電極
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性ゴム引布に関する。更に詳しくは、微弱な生体信号を安定して検出可能な生体用電極として利用可能な導電性ゴム引布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場において、心電図計、脳波計、或いは筋電図計等の医療機器が使用されている。このような医療機器は、人体から発する電位変動を生体信号として捉え、表示することにより、健康状態等を把握することが可能である。また、近年、アクティブトラッカー(活動量計)等のウェアラブル情報機器が、健康に気を遣う人々に広く普及している。ウェアラブル情報機器は、腕や手首等に装着し、体温や心拍数、或いは血圧等を経時的に測定したり、歩行距離や歩数等の活動量を計測したり、睡眠時間や睡眠の深さや質などを計測したりするなど、種々の日常的な生体情報を収集可能である。
【0003】
また、運転者による操作や動作に伴う生体信号を検出し、自動車に搭載されたカーナビゲーションシステムや各種車載機器の操作及び制御を行う技術の開発も広く進められている。これにより、事故を未然に防止したり、運転者に対して危険を予め報知するなど、生体信号を安全運転等に反映できる。
【0004】
このように、ウェアラブル情報機器や車載機器等の各種電子機器のために、人体により発せられる生体信号を精度良く検出するためのセンサ等の検出・計測技術の開発が多く行われている。特に、微弱な生体信号の変化を高精度で検出するために、人体に直接貼付される生体用電極の性能向上が期待されている。
【0005】
生体用電極は、例えば、皮膚等の人体の体表面の一部に貼付される。生体用電極は、体表面或いは人体内部を流れる生体信号の電流量等の変化を捉える。このとき、微弱な生体信号を検出するために、例えば、導電性ゴムが多く用いられる。
【0006】
しかし、導電性ゴム自体は、機械的強度が低い等の欠点を有する。そこで、生体用電極として使用した際に加わる衝撃や、生体用電極の製作時(例えば、縫製時等)において、過剰な外力が加わることで、導電性ゴムが容易に裂けたり、破れたりする等の不具合を生じることがある。そのため、導電性ゴムを生体用電極として使用する場合、生体用電極の耐久性の向上が求められる。
【0007】
例えば、導電性ゴムと、布帛(布)とをカレンダー成形等の周知の成形加工技術を用いて一体的に貼り合わせ、導電性ゴム及び布帛を積層させた二層構造の導電性ゴム引布(以下、「二層構造導電性ゴム引布」と称す。)を形成する。これにより、導電性ゴムによる生体信号の良好な検出を可能とするとともに、布帛による機械的強度の向上を図ることができる。このように、機械的強度に優れた二層構造導電性ゴム引布を生体用電極として採用することが可能である。
【0008】
なお、他の生体用電極の例として、絶縁性の布地に導電性材料を含浸させ、その後に配線及び電極等を施して形成した導電性布帛(特開2014-151018号公報参照)が知られている。また、基材となる布帛に導電性ゴムを用いて電極及び配線を接続させ、伸縮性を備えた伸縮性電極や配線シート(国際公開第2016/114298号参照)等が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
二層構造導電性ゴム引布を生体用電極として使用した場合、下記に掲げる問題点を生じる可能性がある。
二層構造導電性ゴム引布は、電気を通さない性質の絶縁性の布帛と、電気を通す性質の導電性ゴムとを互いに貼り合わせ、一体的に形成される。そのため、導電性ゴムを単体で使用した場合と比較して、絶縁性の布帛により、二層構造導電性ゴム引布の全体の電気抵抗値が増大することがある。その結果、生体信号の検出精度が低下し、微弱な生体信号の変化が検出できなくなるおそれがある。すなわち、生体用電極としての十分な性能を発揮できない可能性がある。
【0010】
具体的には、自動車の車室内に設置された車載機器の操作や制御のために、自動車のシート、アームレスト、或いはステアリングホイールの一部に、二層構造導電性ゴム引布から形成される生体用電極が用いられる。これにより、運転者の生体情報(生体信号)を取得する。この場合、生体用電極自体は、一般に長尺状に形成されることが多い。
【0011】
生体用電極自体は、車載機器等から延びた配線と、金属端子を介して電気的に接続される。しかし、長尺状の生体用電極では、配線と接続した金属端子から離れた生体用電極の電極面では、絶縁性の布帛の影響により電気抵抗値が高くなる可能性がある。すると、生体信号として捉える電流量が流れ難くなり、電極面での微弱な生体信号の変化を検出する検出精度が低下するおそれがある。
【0012】
このような不具合を解消するために、例えば、生体用電極に取り付ける金属端子の数を増やし、金属端子からの電極面の距離が長くならないような対応も考えられる。しかし、金属端子の設置数の増加によって、生体用電極自体が嵩張り、装着位置が制約される。また、生体用電極自体の見栄えが悪くなり、設置する車室内の美観を損なう。また、金属端子の設置数の増加により、コストが高くなる。また、例えば、ステアリングホイールに金属端子のような付属物を多数取付けると、ステアリングホイール自体の操作性が低下するおそれがある。
【0013】
本開示は、電気抵抗値の増大を抑え、微弱な生体信号の検出精度の低下を防ぐことのできる、生体用電極として使用可能な導電性ゴム引布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の第1の観点は、
導電性の基布で形成され、第1の導電性基布層面を有する導電性基布層と、
前記第1の導電性基布層面に導電性ゴムを積層して形成される導電性ゴム層と、
を有する、導電性ゴム引布である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の導電性ゴム引布は、電気抵抗値の増大を抑え、微弱な生体信号の検出精度の低下を防ぎ、生体用電極として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の導電性ゴム引布の概略構成の説明図
図2図1におけるA-A’線断面図
図3】比較例1の導電性ゴム引布の概略構成の断面図
図4】比較例2の導電性ゴム引布の概略構成の断面図
図5】導電性ゴム引布の電気抵抗値の測定方法の概略構成を示す説明図
図6】導電性ゴム引布の電気抵抗値の測定時における配線方法の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本開示の導電性ゴム引布の実施形態について詳述する。なお、実施形態の密封装置は、以下に示すものに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の設計の変更、修正、及び改良等を加え得るものである。
実施形態の導電性ゴム引布1は、図1及び図2に示すように、導電性基布層2と、導電性ゴム層3とを有する。導電性ゴム引布1は、二層が積層した二層構造を有する。
【0018】
図1は、実施形態の導電性ゴム引布1の概略構成の説明図である。図2は、図1のA-A’線断面図である。
【0019】
実施形態の導電性ゴム引布1は、図1及び図2に示すように、導電性基布層2と、導電性ゴム層3とを有する。導電性基布層2は、導電性の基布4によって形成される。導電性ゴム層3は、導電性基布層2の第1の導電性基布層面2aの全面に亘って当接する導電性ゴム5によって形成される。
【0020】
実施形態の導電性ゴム引布1は、導電性基布層2と導電性ゴム層3によって形成され二層構造導電性ゴム引布である。実施形態の導電性基布層2を形成する基布4は、導電性を有する。ここで、基布4は、ポリエステル繊維等をベースとし、ポリエステル繊維の表面に金属メッキ等が施されている。これにより、基布4自体にも導電性が付与される。
【0021】
図1及び図2に示されるように、導電性ゴム層3は、導電性ゴム5を圧延加工等によって所定厚さのシート状に形成したものである。未加硫のゴム生地の導電性ゴム5を第1の導電性基布層面2aの上に押出しながら、複数のロール間で加熱及び加圧等を行う。そして、導電性ゴム層3を形成しつつ導電性基布層2と貼り合わせるカレンダー成形等によって、導電性基布層2と導電性ゴム層3を一体的に形成できる。
【0022】
ここで、導電性ゴム引布1の製造は、導電性ゴム層3を形成しつつ導電性基布層2と貼り合わせるものに限定されない。例えば、予めシート状に形成した導電性ゴム層3を周知の接着技術等により、導電性の接着剤を用いて導電性基布層2と貼り合わせてもよい。この場合、導電性基布層2と導電性ゴム層3の間で全面に亘って、接着剤が塗布されることが好ましい。更に、カレンダー成形以外の成形加工技術を用いてもよい。
【0023】
導電性ゴム引布1のサイズは、特に限定されない。生体用電極等としての使用を想定する場合、例えば、導電性基布層2、及び導電性ゴム層3を含む二層全体の厚さは、0.1mm~10mm程度、より好ましくは、0.3mm~1mm程度であることが好ましい。また、長尺体として形成される導電性ゴム引布1の長さは、50mm以上である。
【0024】
このような導電性ゴム引布1のサイズにより、金属端子から離間した電極面であっても、電気抵抗値の増大を抑制し、かつ、生体信号を精度良く検出できる。
【0025】
導電性基布層2に用いられる基布4は、特に限定されず、種々の生地素材を用いることができる。例えば、ポリエステル繊維等の周知の繊維材料を基材とし、基材の表面に銅(Cu)やニッケル(Ni)等を金属めっきや金属コーティングしたものを使用できる。
【0026】
生地素材からなる基布4によって構成される導電性基布層2は、基布4の内部に複数の空隙(不図示)が形成された多孔質構造を有する。そのため、カレンダー成形等の成形加工技術によって、導電性ゴム5を基布4に圧着しながら貼り合わせて導電性ゴム層3を形成する際に、貼り合わされた導電性ゴム5の一部が基布4の空隙に侵入する。その結果、基布4の内部の空隙に、導電性ゴム5の一部が混在する。
【0027】
これにより、第1の導電性基布層面2a側に形成された導電性ゴム層3と、導電性基布層2との間が、電気的に接続される。そのため、導電性ゴム引布1の電極面の電気抵抗値の増大が抑制される。これにより、良好な導電性を保持し、生体信号の検出時の不具合を防止する。
【0028】
導電性ゴム5は、従来から周知の導電性ゴム引布に使用されるものである。導電性ゴム5は、例えば、シリコーンゴムを基材として用いた導電性シリコーンゴムや、ウレタンゴムを基材として用いた導電性ウレタンゴムである。
【0029】
なお、導電性ゴム5は、シリコーンゴム等の基材に対してカーボンブラックやグラファイト等の導電性炭素粒子や銀ペーストや銀粉等を適宜混合し、練り混ぜた後に所定のゴム成形技術(直圧成形技術、直圧注入技術、射出成形技術等)を用いて所望のサイズに成形加工することにより、導電性が付与されたシート状の導電性ゴム5としてもよい。
ここで、シリコーンゴムやウレタンゴム等のベースに対する導電性炭素粒子等の混合比率は、特に限定されず、例えば、10重量%~70重量%の範囲、より好ましくは20重量%~50重量%の範囲で混合したものを使用できる。
【0030】
導電性基布層2に用いられる基布4に含まれる導電性材料は、例えば、銀や銅などの導電性の金属材料である。導電性材料を基布4のベースとなるポリエステル繊維の素材表面(繊維表面)に、金属めっき等によってコーティング可能なものである。
また、導電性ゴム5と同様、ベースとなる基材(シリコーンゴム等)に対して導電性炭素粒子等を、例えば、基材100重量部に対して、50重量部から500重量部の範囲、より好ましくは100重量部から300重量部で混合したものを使用し、これを基布4を構成する各種生地素材の表面にコーティングしたもの、或いは生地素材(繊維)に練り込んだものでもよい。
【0031】
本実施形態の導電性ゴム引布1は、導電性の基布4によって形成される導電性基布層2と、導電性ゴム5によって形成される導電性ゴム層3とを有する。導電性基布層2と導電性ゴム層3のいずれの層も、導電性を有する。そのため、基布が絶縁性素材で形成される従来の二層構造導電性ゴム引布と比して、電気抵抗値の増大を抑制できる。特に、導電性基布層2が多孔質構造を有することで、導電性ゴム5の一部を混在させることができる。これにより、導電性ゴム層3及び導電性基布層2の間の電気的な接続が確保され、導電性ゴム引布1の全体での良好な導電性が確保される。そのため、生体用電極として好適に使用できる。
【0032】
また、生体用電極に接続する金属端子の数を最低限にすることができ、美観を損なうことがなく、かつ操作性等に影響を及ぼすことがない。
また、導電性ゴム層3を設けることにより、耐摩耗性に優れ、繰り返しの使用が可能となる。その結果、ステアリングホイール等に取り付けるセンサーとして好適に用いることができる。更に、導電性ゴム引布1を製造する際の製造工程の複雑化を防ぎ、製造効率の低下を抑えつつ、製造コストが低くなる。そのため、特に生体用電極として好適に導電性ゴム引布を利用できる。
【実施例
【0033】
以下、実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例の他にも、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えることができる。
【0034】
(1)使用部材、及び導電性ペースト材料の使用条件
導電性基布:ポリエステル繊維ベース+導電性材料(Cu+Ni)、織物生地
導電性ゴム:導電性シリコーンゴム
導電性ペースト材料:銀粉分散シリコーンゴム
【0035】
導電性基布(基布)、及び導電性シリコーンゴムのそれぞれの電気抵抗値(表面抵抗値)を表1に示す。なお、端子間距離は、90mmに設定して測定した。また、比較例2に使用される導電性ペースト材料(銀分散シリコーンゴム)の電気抵抗値も、併せて表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1の電気抵抗値の測定結果から、導電性シリコーンゴムの電気抵抗値よりも導電性基布の電気抵抗値が低いことが示される。
【0038】
(2)実施例1、及び比較例1,2の導電性ゴム引布の作製
上記使用部材を用い、実施例1、及び比較例1,2の導電性ゴム引布の作製を行った。ポリエステル繊維をベースとする導電性基布とシート状に成形加工された導電性ゴムとを貼り合わせ、ロール間で加熱及び加圧する。これにより、導電性基布層2及び導電性ゴム層3からなる二層構造の実施例1の導電性ゴム引布1を作製した(図1及び図2参照)。カレンダー成形加工による成形方法は周知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0039】
実施例1と比較するため、ポリエステル繊維をベースとし、かつ導電性材料を含まない絶縁性の基布11を用い、上記と同様のカレンダー成形加工によって、基布11によって形成される基布層12及び第1の基布層面12aと当接する導電性ゴム13からなる導電性ゴム層14を有する導電性ゴム引布10を比較例1として作製した(図3参照)。
【0040】
更に、比較例1として作製された導電性ゴム引布10に対し、導電性ゴム層14と相対する基布層12の第2の基布層面12bの全面に亘って、使用部材で示した導電性ペースト材料15を形成する。ここで、スキージ及びスクリーン印刷を用いて、薄く均一となるように導電性ペースト材料15をコーティングし、所定時間の乾燥及び硬化を経て、導電性ペースト層16を形成した。この三層構造の導電性ゴム引布17を比較例2とする(図4参照)。
【0041】
(3)電気抵抗値の測定方法
実施例1、及び比較例1,2の導電性ゴム引布を、図5に模式的に示す電気抵抗値の測定方法により測定を行った。ここで、電気抵抗値の測定に使用したテスターTは、三和電機計器株式会社製(型名:CD772)であり、最大定格入力は40MΩである。
【0042】
図6に示すように、電気抵抗値の測定において、測定対象となる長尺体の導電性ゴム引布からなる試料Sと配線18a,18bとを、導電性素材で形成された導通材19a,19bで固定する。そして、実施例1の場合は、導電性基布層2の側で配線18a等と導通させる必要がある。比較例1の場合は、基布層12側で配線18a等と導通させる必要がある。比較例2の場合は、導電性ペースト層16の側で配線18a等と導通させる必要がある。そのため、図5に示す電気抵抗値の測定方法を採用している。ここで、図5は、実施例1の導電性ゴム引布1の電気抵抗値の測定方法を示す。図6は、実施例1の導電性ゴム引布1の配線方法を例示する。
【0043】
テスターTを配置し、テスターTと接続した第1の端子20aを試料Sの一端(図5における右方向)と接続する。更に、テスターTに接続した第2の端子20bをアルミホイル21の一端(図5における左方向)と接続する。アルミホイル21は、第2の端子20bから第1の端子20aに向かって(図5における左方向から右方向に)延びる。
【0044】
アルミホイルの先端21aから10mmの試料密着区間L1の範囲で、アルミホイル21の上に試料Sを被せる。これにより、導電性のアルミホイル21と測定対象の試料Sの一部とが密着する。なお、測定時における密着状態を保持するために、試料Sの上から更に錘22が載せられ、試料Sとアルミホイル21の密着が固定される。
ここで、テスターTと接続した第1の端子20aから第2の端子20bの間の距離(端子間距離L2)は、100mmとなるように設定される。
【0045】
このような電気抵抗値の測定方法により、それぞれの試料S(実施例1、比較例1,2)を所定位置にセットした後、テスターTによる電気抵抗値の測定を3回行い、その平均値を算出した。その結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
(4)測定結果のまとめ
上記表2の電気抵抗値の測定結果に示されるように、導電性基布層を有する実施例1の導電性ゴム引布は、導電性基布層を有しない比較例1の導電性ゴム引布、及び三層構造の比較例2の導電性ゴム引布と比較して、電気抵抗値が著しく低いことが示される。これにより、本開示の導電性ゴム引布による電気抵抗値の増大の抑制効果が示された。
【0048】
上記において、織物生地の導電性基布(基布)を用いて導電性ゴム引布を作製したもの実施例1として示したが、ウレタンゴムベースの導電性ゴムを用いる場合等の種々の条件に応じて導電性基布の生地素材を適宜変更できる。すなわち、ニット生地やメッシュ生地等の粗目の生地素材を使用することにより、導電性ゴムの材料粘度に応じたカレンダー成形加工が可能となる。表3に本開示の導電性ゴム引布に使用可能な各種の生地素材(布タイプ)の導電性基布の例(参考例1~7)、及びこれらの導電性基布の電気抵抗値(表面抵抗値)をそれぞれ示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3において、参考例3の導電性基布が実施例1の基布として使用したものである。また、参考例1の導電性基布が最も大きな空隙(間隙)を有し、以下、参考例2から参考例7に至るまで空隙の大きさが小さくなる。本開示の導電性ゴム引布は、導電性基布層として上記の導電性基布を用いることができる。
【0051】
以上、説明したように、本開示の導電性ゴム引布は、導電性の基布から形成された導電性基布層を有することで、電極面における電気抵抗値の増大を飛躍的に抑制することが確認された。これにより、微弱な生体信号の検出を精度よく行う生体用電極として、好適に使用できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示の導電性ゴム引布は、脳波計等の医療機器、活動量計等のウェアラブル情報機器、或いは車載機器等の各種電子機器において、生体信号を検出するための生体用電極として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1,10,17:導電性ゴム引布
2:導電性基布層
2a:第1の導電性基布層面
3,14:導電性ゴム層
4,11:基布
5,13:導電性ゴム
12:基布層
12a:第1の基布層面
12b:第2の基布層面
15:導電性ペースト材料
16:導電性ペースト層
18a,18b:配線
19a,19b:導通材
20a:第1の端子
20b:第2の端子
21:アルミホイル
21a:アルミホイルの先端
22:錘
L1:試料密着区間
L2:端子間距離
S:試料
T:テスター
図1
図2
図3
図4
図5
図6