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特許7622090熱成形フィルムの深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのハンドツール
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  • 特許-熱成形フィルムの深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのハンドツール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】熱成形フィルムの深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのハンドツール
(51)【国際特許分類】
   A61C 1/08 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
A61C1/08 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022560027
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021056135
(87)【国際公開番号】W WO2021197786
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】20166847.2
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー、ハンス-クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ファルティン、ペーター
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/220221(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0198912(US,A1)
【文献】特開平04-092659(JP,A)
【文献】特開平10-108872(JP,A)
【文献】特開2012-056018(JP,A)
【文献】特開2001-337411(JP,A)
【文献】実開昭51-157298(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱成形フィルムのアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのハンドツール(1)であって、
保持するためのグリップ(2)と、
前記深絞り加工された熱成形フィルムを熱的に分離し、前記分離された深絞り加工された熱成形フィルムを改良するための分離要素(3)と、
前記熱成形フィルムの温度を少なくともそのガラス温度に実質的に上昇させるように、前記分離要素(3)の加熱を調整するように適合された加熱手段と、
前記加熱手段に電力を供給するための電力供給手段と
を備えることを特徴とする、ハンドツール(1)。
【請求項2】
前記分離要素(3)の近傍で前記熱成形フィルムの前記温度を感知するための温度センサをさらに備え、前記加熱手段が、前記感知された温度に基づいて前記分離要素(3)の加熱を調整するようにさらに適合されることを特徴とする、請求項1に記載のハンドツール(1)。
【請求項3】
前記加熱手段が、ポリメチルメタクリレートのガラス温度に対応する少なくとも105℃に前記熱成形フィルムの前記温度を実質的に上昇させるように前記分離要素(3)の加熱を調整するようにさらに適合される
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のハンドツール(1)。
【請求項4】
前記分離要素(3)が、前記グリップ(2)の前部から突出している、ナイフ、チゼル、スパイク、または針の形で提供される
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
【請求項5】
前記分離要素(3)の近傍に配置された導管(4a)と、前記導管(4a)内に配置されたフィルタと、前記深絞り加工された熱成形フィルムの前記分離中に生じるヒュームを前記フィルタに向けて前記導管(4a)に取り出すように適合されたファンと、を備える吸引手段(4)をさらに備え、前記吸引手段(4)が前記グリップ(2)に統合され、前記電力供給手段が、前記ファンに電力を供給するようにさらに適合されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
【請求項6】
前記分離要素(3)の近傍に配置された導管(4a)と、ホース(6)に取り外し可能に接続可能であるまたはこれに接続された外部取り出し器に、前記深絞り加工された熱成形フィルムの前記分離中に生じるヒュームを運搬するための、前記導管(4a)に接続されたホース(6)とを備える吸引手段(4)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
【請求項7】
前記ホース(6)が、前記グリップ(2)の後部において前記導管(4a)に取り外し可能に接続可能である、請求項6に記載のハンドツール(1)。
【請求項8】
照明手段(5)をさらに備え、前記電力供給手段が、前記照明手段(5)に電力を供給するようにさらに適合されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
【請求項9】
前記照明手段(5)が、前記分離要素(3)の近傍に配置され、前記分離要素(3)を移動させるときにユーザに視覚的ガイダンスを提供するように適合されたレーザポインタ(5a)を有することを特徴とする、請求項8に記載のハンドツール(1)。
【請求項10】
前記照明手段(5)が、前記分離要素(3)の少なくとも先端を照らすように適合された1つまたは複数の光源を有することを特徴とする、請求項8または9に記載のハンドツール(1)。
【請求項11】
前記照明手段(5)が、1つまたは複数の異なる色をもつ1つまたは複数の光源を有し、前記照明手段(5)が、対応する色を選択することを通じて前記分離要素(3)の温度を示すように適合されることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
【請求項12】
前記電力供給手段が、1つまたは複数の再充電可能バッテリによって動作可能であり、前記グリップ(2)が、1つまたは複数の再充電可能バッテリを受け入れるためのバッテリホルダを有する
ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
【請求項13】
前記電力供給手段が、前記バッテリを再充電するための電源に接続可能である充電ユニットを有する
ことを特徴とする、請求項12に記載のハンドツール(1)。
【請求項14】
前記電力供給手段が、電気ケーブルを介して前記電源に接続可能である
ことを特徴とする、請求項13に記載のハンドツール(1)。
【請求項15】
前記電力供給手段が、前記グリップ(2)上にソケットを有し、前記ソケットが、前記電源に接続可能である電気ケーブルのプラグを受け入れることができる
ことを特徴とする、請求項14に記載のハンドツール(1)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のハンドツール(1)を使用する方法であって、
アライナまたはバイトスプリントなどの顎にまたがる歯科装置を製造するためにモデルを使用して熱成形フィルムを深絞り加工するステップと、
前記モデルによって支持または挟持された状態で、および前記熱成形フィルムまたは前記モデル上で分離外形に沿って前記加熱された分離要素(3)を移動させることによって、前記深絞り加工された熱成形フィルムを分離および改良するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形フィルムのアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる(jaw-spanning)歯科装置を分離するためのハンドツールに関する。本発明は、ハンドツールを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
歯ぎしりの治療のためのアライナまたはバイトスプリントなどの、ポリメチルメタクリレートまたは類似の材料から作製された、顎にまたがる歯科装置は、その使用中にかなりの咀嚼負荷にさらされる。そのため、これらは、3Dプリンティングなどの現代の生産方法にもかかわらず、依然として熱成形フィルムの深絞り加工プロセスを使用して製造される。熱成形フィルムの深絞り加工の後の比較的複雑な後処理は、フライス加工ツール、研削ツール、および/または研磨ツールによる、深絞り加工された熱成形フィルムの手動切断およびトリミングである。深絞り加工された熱成形フィルムの手動切断およびトリミングは、たとえば、モータ付きハンドピースによって動作される回転器具を用いてなされる。結果として生じる鋭利な縁は、時間のかかるプロセスにおいて滑らかにされなければならない。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、従来技術の問題を克服することと、熱成形フィルムのアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのハンドツールを提供することである。
【0004】
この目的は、請求項1に記載のハンドツールを通じて達成された。従属請求項の主題は、さらなる実施形態および発展に関する。
【0005】
本発明は、熱成形フィルムのアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのハンドツールを提供する。このハンドツールは、保持するためのグリップと、深絞り加工された熱成形フィルムを熱的に分離し、この分離された深絞り加工された熱成形フィルムを改良するための分離要素と、熱成形フィルムの温度を少なくともそのガラス温度に実質的に上昇させるように、分離要素の加熱を調整するように適合された加熱手段と、この加熱手段に電力を供給するための電力供給手段とを備える。
【0006】
本発明の主な有利な効果は、熱成形フィルムを少なくともそのガラス温度に実質的に加熱することによって、分離および改良が単一のステップで行われ得ることである。それによって、作業ステップの数が減少可能であり、急速でスムーズな分離プロセスが達成可能であり、全体的なプロセスが単純化可能である。本発明の別の主な有利な効果は、実質的にそのガラス温度への熱成形フィルムの温度の調整を介して、熱成形フィルムの分離は、その分解および不必要な溶解なしに可能であり、したがって、アライナまたはバイトスプリントを損傷するリスクは、可能な限り防止または減少可能であることである。
【0007】
本発明によれば、温度調整は、閉ループまたは開ループを通じて実行されてよい。本発明によれば、加熱手段は、熱成形フィルムの温度が、熱成形フィルムの分解温度に決して到達せず、熱成形フィルムの分解温度をはるかに下回ったままである、好ましくは実質的に熱成形フィルムのガラス温度であるかまたはそれをわずかに上回ったままであるように、分離要素の加熱を調整する。したがって、一実施形態では、温度センサは、分離要素の近傍で熱成形フィルムの温度を感知するために使用される。加熱手段は、感知された温度に基づいて分離要素の加熱を調整する。あるいは、温度センサを使用する必要性を取り除くために、熱力学モデルが加熱手段に適用されることがある。したがって、加熱手段は、分離要素とその近傍の熱成形フィルムとの間の温度降下を考慮する熱力学モデルに基づいて分離要素の加熱を調整し得る。熱力学モデルは、経験的データに基づいてよい。
【0008】
アライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置は通常、ポリメチルメタクリレート(PMMA)から作製される。したがって、一実施形態では、加熱手段は、ポリメチルメタクリレートのガラス温度に対応する少なくとも105℃に熱成形フィルムの温度を実質的に上昇させるように分離要素の加熱を調整するようにさらに適合される。しかしながら、あるいは、異なるタイプの熱成形フィルムが使用されてもよい。したがって、あるいは、ユーザは、分離されることになる熱成形フィルムのタイプに応じて加熱手段を選択的に設定することが可能であることがある。
【0009】
本発明によれば、分離要素は、分離プロセスを機械的に改善する異なる形態が提供されてよい。代替実施形態では、分離要素は、好ましくは、グリップの前部から突出している、ナイフ、チゼル、スパイク、または針の形で提供される。
【0010】
本発明によれば、ハンドツールは、深絞り加工された熱成形フィルムの分離中に生じるヒューム(fume)を取り出すための吸引手段が提供されてよい。この吸引手段は、可搬式ハンドツールに完全に統合されてよい。したがって、一実施形態では、吸引手段は、好ましくは、完全に可搬式でグリップに完全に統合される。この実施形態では、吸引手段は、分離要素の近傍に配置された導管と、この導管内に配置されたフィルタと、深絞り加工された熱成形フィルムの分離中に生じるヒュームをフィルタに向けて導管に取り出すように適合されたファンとを備える。さらに、電力供給手段は、ファンに電力を供給するようにさらに適合される。フィルタは、好ましくは、活性炭を備える。あるいは、吸引手段は、ハンドツールに部分的に統合されてよい。したがって、一代替実施形態では、吸引手段は、分離要素の近傍に配置された導管と、好ましくはホースの他方の端に取り外し可能に接続可能である外部取り出し器に、深絞り加工された熱成形フィルムの分離中に生じるヒュームを運搬するための、導管に接続されたホースとを備える。あるいは、ホースは、固定された様式で外部取り出し器に接続されてよい。ホースは、好ましくは、グリップの後部において導管に取り外し可能に接続可能である。あるいは、ホースは、固定された様式でグリップに接続されてよい。外部取り出し器は、フィルタと、ファンとを有する。
【0011】
本発明によれば、ハンドツールは、視覚的/ナビゲーションガイダンス、改善された視覚および/またはユーザガイダンスの目的で、照明が提供されてよい。したがって、一実施形態では、ハンドツールは、照明手段をさらに備える。電力供給手段は、照明手段に電力を供給するようにさらに適合される。この実施形態の一バージョンでは、照明手段は、分離要素の近傍に配置され、分離要素を移動させるときにユーザに視覚的ガイダンスを提供するように適合されたレーザポインタを有する。この実施形態のさらなるバージョンでは、照明手段は、改善された視覚をユーザに提供するために分離要素の少なくとも先端を照らすように適合された1つまたは複数の光源を有する。この実施形態のさらなるバージョンでは、照明手段は、1つまたは複数の異なる色をもつ1つまたは複数の光源を有する。さらに、照明手段は、ユーザガイダンスを提供するために対応する色を選択することを通じて分離要素の温度を示すように適合される。たとえば、緑色は、調整中に、温度が分離プロセスのための目標レベルに到達したことを示すために使用されることがある。さらに、赤色は、調整中に、温度が分離プロセスのための目標レベルにまだ到達していないことを示すために使用されることがあり、したがって、ユーザは、緑色の光がオンにされるのを待つ必要がある。
【0012】
本発明によれば、電力供給手段は、バッテリ駆動であってよく、および/または固定ケーブルもしくは取り外し可能なケーブルを介して電源に接続可能であってよい。
【0013】
一実施形態では、電力供給手段は、好ましくは、電気ケーブルを介して電源に接続可能である。電力供給手段は、好ましくは、グリップ上にソケットを有する。さらに、ソケットは、電源に接続可能である電気ケーブルのプラグを受け入れることができる。あるいは、ケーブルは、固定された様式でグリップに接続されてよい。一実施形態では、電力供給手段は、好ましくは、1つまたは複数のバッテリ、好ましくは再充電可能バッテリによって、動作可能である。さらに、グリップは、1つまたは複数のバッテリを受け入れるためのバッテリホルダを有する。この実施形態の一バージョンでは、電力供給手段は、好ましくは、バッテリを再充電するための電源に接続可能である充電ユニットを有する。充電ユニットは、好ましくは、ハンドツールを受け入れる別個の可搬式ステーションの形で提供される。代わりに、充電ユニットは、グリップに統合され、電気ケーブルを介して電源に接続可能であることがある。
【0014】
本発明は、ハンドツールを使用する方法も提供する。この方法は、少なくとも、アライナまたはバイトスプリントなどの顎にまたがる歯科装置を製造するためにモデルを使用して熱成形フィルムを深絞り加工するステップと、モデルによって支持または挟持された状態で、および熱成形フィルムまたはモデル上で分離外形に沿って加熱された分離要素を移動させることによって、深絞り加工された熱成形フィルムを分離および改良するステップとを備える。
【0015】
以後の説明では、本発明のさらなる態様および有利な効果が、例示的な実施形態を使用し、図面を参照することによって、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態によるハンドツールの概略部分図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面に示される参照番号は、以下で列挙される要素を示し、例示的な実施形態の以後の説明で参照される。
【符号の説明】
【0018】
1 ハンドツール
2 グリップ
3 分離要素
4 吸引手段
4a 導管
5 照明手段
5a レーザポインタ
6 ホース
【0019】
図1は、熱成形フィルムのアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのハンドツール(1)の一実施形態を示す。ハンドツール(1)は、保持するためのグリップ(2)と、深絞り加工された熱成形フィルムを熱的に分離し、分離された深絞り加工された熱成形フィルムを改良するための分離要素(3)と、熱成形フィルムの温度を少なくともそのガラス温度に実質的に上昇させるように、分離要素(3)の加熱を調整するように適合された加熱手段と、この加熱手段に電力を供給するための電力供給手段とを備える。
【0020】
さらなる実施形態では、ハンドツール(1)は、分離要素(3)の近傍で熱成形フィルムの温度を感知するための温度センサを備え、加熱手段は、感知された温度に基づいて分離要素(3)の加熱を調整するようにさらに適合される。
【0021】
さらなる代替実施形態では、熱力学モデルは、温度センサを使用する必要性を取り除くために、加熱手段に適用される。したがって、熱力学モデルは、分離要素とその近傍の熱成形フィルムとの間の温度降下を考慮する。熱力学モデルは、経験的データに基づく。
【0022】
アライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置は通常、ポリメチルメタクリレート(PMMA)から作製される。したがって、さらなる実施形態では、加熱手段は、ポリメチルメタクリレートのガラス温度に対応する少なくとも105℃に熱成形フィルムの温度を実質的に上昇させるように分離要素(3)の加熱を調整するようにさらに適合される。
【0023】
さらなる代替実施形態では、加熱手段は、分離されることになるPMMA以外の熱成形フィルムに応じて調整可能である。この実施形態の代替バージョンでは、ユーザは、分離されることになる熱成形フィルムのタイプに応じて加熱手段を選択的に設定することがある。
【0024】
さらなる代替実施形態では、分離要素(3)は、好ましくは、グリップ(2)の前部から突出している、ナイフ、チゼル、スパイク、または針の形で提供される。
【0025】
図1に示されるように、ハンドツール(1)は、分離要素(3)の近傍に配置された導管(4a)と、好ましくはホース(6)に取り外し可能に接続可能である外部取り出し器に、深絞り加工された熱成形フィルムの分離中に生じるヒュームを運搬するための、導管(4a)に接続されたホース(6)とを備える吸引手段(4)を備える。
【0026】
さらなる代替実施形態では、ホース(6)は、固定された様式で外部取り出し器に接続される。
【0027】
さらなる他の実施形態では、ホース(6)は、グリップ(2)の後部において導管(4a)に取り外し可能に接続可能である。
【0028】
さらなる代替実施形態では、ホース(6)は、グリップ(2)に固定される。
【0029】
代替実施形態では、吸引手段(4)は、グリップ(2)に完全に統合される。この代替実施形態では、吸引手段(4)は、分離要素(3)の近傍に配置された導管(4a)と、導管(4a)内に配置されたフィルタと、深絞り加工された熱成形フィルムの分離中に生じるヒュームをフィルタに向けて導管(4a)に取り出すように適合されたファンとを備える。さらに、電力供給手段は、ファンに電力を供給するようにさらに適合される。フィルタは、好ましくは、活性炭を備える。
【0030】
図1に示されるように、ハンドツール(1)は、照明手段(5)をさらに備える。電力供給手段は、照明手段(5)に電力を供給するようにさらに適合される。
【0031】
図1に示されるように、照明手段(5)は、分離要素(3)の近傍に配置され、分離要素(3)を移動させるときにユーザに視覚的ガイダンスを提供するように適合されたレーザポインタ(5a)を有する。
【0032】
さらなる実施形態では、照明手段(5)は、分離要素(3)の少なくとも先端を照らすように適合された1つまたは複数の光源を有する。
【0033】
さらなる実施形態では、照明手段(5)は、1つまたは複数の異なる色をもつ1つまたは複数の光源を有する。さらに、照明手段(5)は、対応する色を選択することを通じて分離要素(3)の温度を示すように適合される。たとえば、緑色は、調整中に、温度が分離プロセスのための目標レベルに到達したことを示すために使用されることがある。さらに、赤色は、調整中に、温度が分離プロセスのための目標レベルにまだ到達していないことを示すために使用されることがあり、したがって、ユーザは、緑色の光がオンにされるのを待つ必要がある。
【0034】
さらなる実施形態では、電力供給手段は、1つまたは複数の再充電可能バッテリを通じて動作可能である。さらに、グリップ(2)は、再充電可能バッテリを受け入れるためのバッテリホルダを有する。
【0035】
さらなる実施形態では、電力供給手段は、バッテリを再充電するための電源に接続可能である充電ユニットを有する。
【0036】
さらなる実施形態では、電力供給手段は、電気ケーブルを介して電源に接続可能である。
【0037】
さらなる実施形態では、電気ケーブルは、ホース(6)内に配置される。
【0038】
さらなる実施形態では、電力供給手段は、グリップ(2)上にソケットを有する。さらに、ソケットは、電源に接続可能である電気ケーブルのプラグを受け入れることができる。
【0039】
本発明は、ハンドツール(1)を使用する方法も提供する。この方法は、少なくとも、アライナまたはバイトスプリントなどの顎にまたがる歯科装置を製造するためにモデルを使用して熱成形フィルムを深絞り加工するステップと、モデルによって支持または挟持された状態で、および熱成形フィルムまたはモデル上で分離外形に沿って加熱された分離要素(3)を移動させることによって、深絞り加工された熱成形フィルムを分離および改良するステップとを備える。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載事項を付記する。
[1] 熱成形フィルムのアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのハンドツール(1)であって、
保持するためのグリップ(2)と、
前記深絞り加工された熱成形フィルムを熱的に分離し、前記分離された深絞り加工された熱成形フィルムを改良するための分離要素(3)と、
前記熱成形フィルムの温度を少なくともそのガラス温度に実質的に上昇させるように、前記分離要素(3)の加熱を調整するように適合された加熱手段と、
前記加熱手段に電力を供給するための電力供給手段と
を備えることを特徴とする、ハンドツール(1)。
[2] 前記分離要素(3)の近傍で前記熱成形フィルムの前記温度を感知するための温度センサをさらに備え、前記加熱手段が、前記感知された温度に基づいて前記分離要素(3)の加熱を調整するようにさらに適合されることを特徴とする、[1]に記載のハンドツール(1)。
[3] 前記加熱手段が、ポリメチルメタクリレートのガラス温度に対応する少なくとも105℃に前記熱成形フィルムの前記温度を実質的に上昇させるように前記分離要素(3)の加熱を調整するようにさらに適合される
ことを特徴とする、[1]または[2]に記載のハンドツール(1)。
[4] 前記分離要素(3)が、前記グリップ(2)の前部から突出している、ナイフ、チゼル、スパイク、または針の形で提供される
ことを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
[5] 前記分離要素(3)の近傍に配置された導管(4a)と、前記導管(4a)内に配置されたフィルタと、前記深絞り加工された熱成形フィルムの前記分離中に生じるヒュームを前記フィルタに向けて前記導管(4a)に取り出すように適合されたファンと、を備える吸引手段(4)をさらに備え、前記吸引手段(4)が前記グリップ(2)に統合され、前記電力供給手段が、前記ファンに電力を供給するようにさらに適合されることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
[6] 前記分離要素(3)の近傍に配置された導管(4a)と、ホース(6)に取り外し可能に接続可能であるまたはこれに接続された外部取り出し器に、前記深絞り加工された熱成形フィルムの前記分離中に生じるヒュームを運搬するための、前記導管(4a)に接続されたホース(6)とを備える吸引手段(4)をさらに備えることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
[7] 前記ホース(6)が、前記グリップ(2)の後部において前記導管(4a)に取り外し可能に接続可能である、[6]に記載のハンドツール(1)。
[8] 照明手段(5)をさらに備え、前記電力供給手段が、前記照明手段(5)に電力を供給するようにさらに適合されることを特徴とする、[1]から[7]のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
[9] 前記照明手段(5)が、前記分離要素(3)の近傍に配置され、前記分離要素(3)を移動させるときにユーザに視覚的ガイダンスを提供するように適合されたレーザポインタ(5a)を有することを特徴とする、[8]に記載のハンドツール(1)。
[10] 前記照明手段(5)が、前記分離要素(3)の少なくとも先端を照らすように適合された1つまたは複数の光源を有することを特徴とする、[8]または[9]に記載のハンドツール(1)。
[11] 前記照明手段(5)が、1つまたは複数の異なる色をもつ1つまたは複数の光源を有し、前記照明手段(5)が、対応する色を選択することを通じて前記分離要素(3)の温度を示すように適合されることを特徴とする、[8]から[10]のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
[12] 前記電力供給手段が、1つまたは複数の再充電可能バッテリによって動作可能であり、前記グリップ(2)が、1つまたは複数の再充電可能バッテリを受け入れるためのバッテリホルダを有する
ことを特徴とする、[1]から[11]のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
[13] 前記電力供給手段が、前記バッテリを再充電するための電源に接続可能である充電ユニットを有する
ことを特徴とする、[12]に記載のハンドツール(1)。
[14] 前記電力供給手段が、電気ケーブルを介して前記電源に接続可能である
ことを特徴とする、[1]から[13]のいずれか一項に記載のハンドツール(1)。
[15] 前記電力供給手段が、前記グリップ(2)上にソケットを有し、前記ソケットが、前記電源に接続可能である電気ケーブルのプラグを受け入れることができる
ことを特徴とする、[14]に記載のハンドツール(1)。
[16] [1]から[15]のいずれか一項に記載のハンドツール(1)を使用する方法であって、
アライナまたはバイトスプリントなどの顎にまたがる歯科装置を製造するためにモデルを使用して熱成形フィルムを深絞り加工するステップと、
前記モデルによって支持または挟持された状態で、および前記熱成形フィルムまたは前記モデル上で分離外形に沿って前記加熱された分離要素(3)を移動させることによって、前記深絞り加工された熱成形フィルムを分離および改良するステップと
を備えることを特徴とする方法。
図1