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特許7622092勾配ガラス状セラミック構造体及びそのボトムアップ製造方法
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  • 特許-勾配ガラス状セラミック構造体及びそのボトムアップ製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】勾配ガラス状セラミック構造体及びそのボトムアップ製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/06 20060101AFI20250120BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20250120BHJP
   C08G 77/44 20060101ALI20250120BHJP
   C08G 79/00 20060101ALI20250120BHJP
   C07F 7/08 20060101ALN20250120BHJP
【FI】
C08G77/06
H01L21/316 H
H01L21/316 M
C08G77/44
C08G79/00
C07F7/08 Y
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022560955
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 US2021025370
(87)【国際公開番号】W WO2021206999
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】63/005,506
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508129090
【氏名又は名称】ジェレスト, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バリー・シー・アルクレス
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・キャンベル・ディメッラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ディー・ゴフ
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0274974(US,A1)
【文献】特開2000-273187(JP,A)
【文献】特開2005-350519(JP,A)
【文献】特開昭59-030823(JP,A)
【文献】特表2010-519584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00-77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配特性を有するSiO2リッチ構造体であって、電気陰性β置換基を有するシルセスキオキサン、及び少なくとも1種の有機官能性シランから形成され
複数のケイ素原子が、それぞれ4個の酸素原子に結合しており、ケイ素原子の50%以下が、炭素原子に結合しており、
少なくとも1種の有機官能性シランの勾配濃度を有する、SiO2リッチ構造体。
【請求項2】
勾配疎水性/親水性特性を有する、請求項1に記載のSiO2リッチ構造体。
【請求項3】
シルセスキオキサンがβ位にハロゲン、エーテル、又はカルボキシレート官能基を有する、請求項1に記載のSiO2リッチ構造体。
【請求項4】
シルセスキオキサンが、2-アセトキシエチルシルセスキオキサンである、請求項3に記載のSiO2リッチ構造体。
【請求項5】
少なくとも1種の有機官能性シランが、ジアルキルジアルコキシシラン又はアルキルトリアルコキシシランであり、前記ジアルキルジアルコキシシラン又は前記アルキルトリアルコキシシラン中のアルキル基は置換されていても置換されていなくてもよい、請求項1に記載のSiO2リッチ構造体。
【請求項6】
少なくとも1種の有機官能性シランが、ジアルキルジメトキシシラン又はジアルキルジエトキシシランである、請求項5に記載のSiO2リッチ構造体。
【請求項7】
少なくとも1種の有機官能性シランが、アルキルトリメトキシシラン又はアルキルトリエトキシシランである、請求項5に記載のSiO2リッチ構造体。
【請求項8】
少なくとも1種の有機官能性シランが、メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシラン又はイソブチルトリエトキシシランである、請求項5に記載のSiO2リッチ構造体。
【請求項9】
2-アセトキシエチルシルセスキオキサン、メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシラン、及びイソブチルトリエトキシシランから形成される、請求項1に記載のSiO2リッチ構造体。
【請求項10】
セラミック膜である、請求項1に記載のSiO2リッチ構造体。
【請求項11】
セラミック膜が、15~500nmの厚さを有する、請求項10に記載のSiO2リッチ構造体。
【請求項12】
勾配特性を有するSiO2リッチ構造体を形成する方法であって、電気陰性β置換基を有するシルセスキオキサンと、少なくとも1種の有機官能性シランと、場合により溶媒とを含むコーティング組成物を調製する工程と、基板に混合物をコーティングする工程と、コーティングされた基板に加熱及び/又はUV照射する工程とを含み、
SiO 2 リッチ構造体において、複数のケイ素原子が、それぞれ4個の酸素原子に結合しており、ケイ素原子の50%以下が、炭素原子に結合しており、
コーティングする工程において、前記コーティング組成物中の少なくとも1種の有機官能性シランの濃度を変化させて、SiO 2 リッチ構造体の前記勾配特性を生じさせる、方法。
【請求項13】
コーティング組成物が、揮発性極性溶媒を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コーティングが、スピンオン堆積、3Dプリンティング、マイクロコンタクトプリンティング、又は直接書き込みを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
加熱及び/又はUV照射が、少なくとも0.5%の相対湿度を含有する雰囲気中で実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
加熱が、150℃~700℃で実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
コーティングする工程が、少なくとも1種の有機官能性シランの相対流量を調整する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2020年4月6日出願の、同時係属中の米国仮特許出願第63,005,506号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
二酸化ケイ素(SiO2)薄膜及び基板は、現在広く使用されている診断デバイス、光学デバイス、及びマイクロエレクトロニクスデバイスの必須構造部品である。これらのSiO2含有薄膜は、一般に、フライス及びエッチング技術又は周知のシラン、例えばSiH4、シランエステル、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)、又はシルセスキオキサン、例えば、水素シルセスキオキサン樹脂、例えばHaluskaの米国特許第5,290,354号及びBallanceらの米国特許第5,320,863号に記載されているものを使用して作製される。これらすべての技術の目的は、安定した、相互作用しない、又はデバイスの化学プロセス若しくは湿潤プロセスに影響を与えない、均一な機械的、光学的、又は電子的構造を作製することである。基本的に、デバイスは、ガラス又はガラス状構造体が不活性な構造部品であることを必要とする。
【0003】
Sommerら、「Organosilicon Compounds V. β-Eliminations Involving Silicon」、J. Amer、Chem、Soc.、68、1083~1085ページ(1946)では、β-クロロエチルシリコーンの合成を含む、β-クロロエチルトリクロロシラン及びβ-クロロ-n-プロピルトリクロロシランの化学反応研究が要約されている。式ClCH2CH2SiO1.5を有するβ-クロロエチルシリコーンポリマーを希アルカリと反応させて、エチレン及びSi(OH)4を得た。これらの化合物の最終用途は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5,290,354号
【文献】米国特許第5,320,863号
【文献】米国特許第5,853,808号
【文献】米国特許第6,770,726号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Sommerら、「Organosilicon Compounds V. β-Eliminations Involving Silicon」、J Amer、Chem、Soc.、68、1083~1085ページ(1946)
【文献】J. Sol-Gel Sci Tech、8、465(1997)
【文献】J. Mater.Res.14(3)、990(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、本開示は、勾配特性を有するSiO2リッチ構造体であって、電気陰性β置換基を有するシルセスキオキサン及び少なくとも1種の有機官能性シランから形成される、SiO2リッチ構造体に関する。
【0007】
本開示のさらなる態様は、ゲルマニウム、タンタル、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムの酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物の勾配濃度を有するSiO2リッチ構造体であって、対応する金属アルコキシド、及び電気陰性β置換基を有するシルセスキオキサンから形成される、SiO2リッチ構造体に関する。
【0008】
本開示のなおさらなる態様は、勾配特性を有するSiO2リッチ構造体を形成する方法であって、電気陰性β置換基を有するシルセスキオキサンと、少なくとも1種の有機官能性シランと、場合により溶媒とを含むコーティング組成物を調製する工程と、基板に混合物をコーティングする工程と、コーティングされた基板に加熱及び/又はUV照射する工程とを含む、方法に関する。
【0009】
本開示の更なる態様は、勾配特性を有するSiO2リッチ構造体を形成する方法であって、電気陰性β置換基を有するシルセスキオキサンと、少なくとも1種の金属アルコキシドと、場合により溶媒とを含むコーティング組成物を調製する工程と、基板に混合物をコーティングする工程と、コーティングされた基板に加熱及び/又はUV照射する工程とを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態による生成物の合成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の態様は、15~500nmの範囲の厚さを有する有機又は物理的官能構造を有するガラス状セラミック薄膜及びそれらの製造のためのボトムアップ方法に関する。これらの構造体の物理化学的性質は、空間勾配特性、すなわち空間内の特定の長さにわたって変化する特性を有する。本明細書に記載の構造体及び方法によって、勾配が拡散、エッチング、若しくは熱、光分解のエネルギー強度の変化、又はプレセラミックからセラミックへの変換の他のエネルギー的方法によって誘発される、低温での高密度二酸化ケイ素の製造における従来の課題が克服される。本明細書に記載の技術により、表面及びバルク機能を調整する能力を備えた、低温(<250℃)での二酸化ケイ素(SiO2)ベースのセラミックのマイクロコンタクトプリンティング及び直接書き込みが可能となる。ボトムアップ方法と整合性のある透明なガラス状セラミック構造体は、スピンオン、直接書き込み、又はマイクロコンタクトプリンティング技術によって堆積できる。このコーティングは非透過性で、極端なpHの水系から溶媒型の系まで広範囲な流体に耐えることができ、チャンネルの歪み又は破損を伴わない。この方法はまた、種々の表面パターニング技術によって表面を局所的に変更することを可能にする。このボトムアップアプローチは、エッチダウン又は研磨フライス方法に比べて、複雑なデバイス製造を容易にする。
【0012】
以下でより詳細に記載するように、本開示の一実施形態による勾配特性を有するSiO2リッチ材料又は構造体を作製する方法は、1種又は複数の有機官能性シラン、例えば有機官能性アルコキシシランと、電気陰性β置換基を有するシルセスキオキサンベースポリマーとを組み合わせることを伴う。
【0013】
シルセスキオキサンベースポリマーのβ置換基は、炭素-ケイ素結合に対して位置するアルキル基のβ炭素上に位置し、2-炭素位と称される場合もある。β置換アルキル基は、α位又は1-炭素位でケイ素に結合している。
【0014】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,853,808号及び第6,770,726号、並びに出版物J. Sol-Gel Sci Tech、8、465(1997)及びJ. Mater.Res.14(3)、990(1999)は、下記のスキーム1に示すように、電子求引性置換基がβ位にあるオルガノシルセスキオキサンが、エチレンの除去とその後の加水分解縮合を伴う化学経路によって、中間構造を介してSiO2に変換されることを実証している。この変換は、熱又はUV暴露によって開始できる。本明細書では、これらの材料を「シルセスキオキサンベースポリマー」と称する。
【0015】
【化1】
【0016】
シルセスキオキサンベースポリマーは、アセトキシエチルシルセスキオキサン-アセトキシシルセスキオキサンコポリマーのように、CH2CH2結合を介してではなく、骨格のケイ素原子に直接結合した電気陰性基によるポリマー骨格の部分置換を含むこともできる。シルセスキオキサンベースポリマーは、加水分解性アルコキシ基が存在する他のコポリマー、例えばアセトキシエチルシルセスキオキサン-エトキシシルセスキオキサンコポリマー、及びアセトキシエチルシルセスキオキサン-メトキシプロポキシシルセスキオキサンコポリマーを含むこともできるが、加水分解性置換基がコポリマーの20%未満を構成するのが好ましい。アルコキシシルセスキオキサン又は置換アルコキシシルセスキオキサンコポリマーは、アルコール、例えばエタノール、メトキシエタノール、又はメトキシプロパノールを含有する溶液中でシルセスキオキサンホモポリマーを温めるか、又は貯蔵することによって容易に形成することができる。好ましい実施形態では、2-アセトキシエチル基が好ましい一次コモノマーであり、アルキルエーテル置換アルコキシ基が、二次コモノマーの好ましい置換基である。
【0017】
その後、β置換オルガノシルセスキオキサンベースポリマーを相対的に中程度の温度条件、例えば約150℃超で加熱することにより、又は紫外線に曝すことによって、不安定なβ置換アルキル基が揮発して実質的に除去されるように見受けられ、シルセスキオキサンポリマーが電子基板上の薄膜又は層の調製に好適なSiO2リッチセラミック材料に変換される。
【0018】
本明細書に記載される勾配特性を有するSiO2リッチ構造体を形成するための例示的な反応を、スキーム2に示す。
【0019】
【化2】
【0020】
加熱により、残留ヒドロキシル基を有するシルセスキオキサンベースポリマー(スキーム2の構造1)が有機官能アルコキシシランと縮合し、本開示の中間シルセスキオキサン(スキーム2の構造2)を形成する。このような発明的有機官能性シラン変性シルセスキオキサンベースポリマーは、本明細書では「シルセスキオキサン堆積ポリマー(silsesquioxane deposition polymer)」と称される。シルセスキオキサン堆積ポリマーは、シルセスキオキサンベースポリマーのヒドロキシル(シラノール)基と有機官能性アルコキシシラン類又は金属アルコキシド類との反応によって形成される。この加熱により、シルセスキオキサンのヒドロキシル基がアルコキシ基を置換してアルコールを遊離させる縮合反応、及びアセトキシ基がエチレンの損失に伴いケイ素に移動する転位反応が同時に起こる。第2の水分駆動工程では、アセトキシ基が加水分解され、セラミック樹脂への縮合が起こる。図示されていないが、第2段階の加水分解縮合反応は、アルコキシシランの任意の残りのアルコキシ基と反応することができるシラノールの形成を伴うことが理解される。シルセスキオキサンベースポリマーが、アセトキシエチルシルセスキオキサン-メトキシプロポキシシルセスキオキサンコポリマーのように、加水分解性基が存在するコポリマーを含む場合、高湿度環境下での堆積を行い、加水分解性基のシラノールへの変換を開始することが好ましい。
【0021】
本開示のSiO2リッチ構造体を形成するのに適切なシルセスキオキサン堆積ポリマーは、SiO2リッチ材料への変換に先立ち、又はそれと同時に有機官能性シランを添加することにより誘導体化される、β置換アルキルシルセスキオキサンベースポリマーから得られるポリマー反応生成物である。オルガノシランは、一般式RnSiX(4-n)を有し、ここで、nは1又は2であり、Xは、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素からなる群から選択される加水分解性基、又は好ましくはメトキシ、エトキシ及びプロポキシ置換基からなる群から選択されるアルコキシ基である。
【0022】
非常に好ましいβ置換オルガノシルセスキオキサンベースポリマーは、β置換エチル基を含有するオルガノシランの加水分解及び縮合重合から得られるポリマー反応生成物であり、好ましいオルガノシラン類としては、それらに限定されないが、スキーム2の第1構造に示されるように、ケイ素に結合したヒドロキシル基(シラノール基)を含有するβ-アセトキシエチルトリメトキシシランCH3COOCH2CH2Si(OCH3)3及びアセトキシエチルトリクロロシランCH3COOCH2CH2SiCl3が挙げられる。
【0023】
シルセスキオキサンベースポリマーは、好ましくはオルガノシランの単独重合から得られるポリマー反応生成物である。代替的実施形態では、β置換オルガノシルセスキオキサンポリマーは、オルガノシランとアルコキシシラン、例えば、テトラアルコキシシラン又は有機置換アルコキシシランとの共重合から得られるポリマー反応生成物であってもよい。アルコキシシランは、好ましくはテトラアルコキシシラン類、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、及びメトキシトリエトキシシラン、トリエトキシクロロシラン、並びに有機置換アルコキシシラン、例えばビス(トリメトキシシリル)エタン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチル-1H,2H,2H-オクチルトリエトキシシラン、及びフェニルトリメトキシシランからなる群から選択される。
【0024】
β置換オルガノシランの加水分解及び縮合重合反応から得られるシルセスキオキサンベースポリマーは、遊離シラノール基(Si--OH)、すなわち未反応又は非縮合シラノール基を含有しなければならない。好ましいシルセスキオキサンベースポリマーは、ポリマー反応生成物中に、100個のケイ素原子あたり少なくとも約5個のシラノール基を含有し、100個のケイ素原子あたり最大約75個のシラノール基を含有する。より好ましくは、シルセスキオキサンベースポリマーは、ポリマー反応生成物中に、100個のケイ素原子あたり約20~約50個のシラノール基を含有する。
【0025】
ポリマー反応生成物中の遊離シラノール含有量は、好ましくは高く、これは、反応混合物を中和し、ポリマー反応生成物を回収し、ポリマーを極性溶媒中の溶液として保つことによって維持することができる。
【0026】
シルセスキオキサンベースポリマーは、上記のオルガノシランモノマーの単独重合又はその共重合のいずれかにおいて、β置換オルガノシランの加水分解及び縮合によって得られる。加水分解及び縮合重合反応は発熱性であり、そのような加水分解及び縮合反応において典型的に重要な因子によって制御される場合があり、これらのいくつかを以下に記載する。
【0027】
加水分解及び縮合重合は、オルガノシランモノマー(又は共重合の場合は両方のモノマー)を水性媒体に添加することにより、従来の装置で行うことができる。水性媒体は、単に水であってもよいし、水性アルコールであってもよい。モノマーは、そのままで添加してもよいし、又は溶媒、例えば塩化メチレンに最初に可溶化されてもよい。モノマーは、好ましくは、加水分解及び縮合のより正確な制御を得るために、測定された速度で、例えばゆっくりと水性媒体に添加される。
【0028】
加水分解及び縮合重合反応の更なる制御は、反応温度を約0℃~約50℃の範囲に維持することにより水性反応媒体の温度を調整することによっても得られる。好ましくは、水性反応媒体の温度は、水性媒体の凝固点付近の(ただしそれより高い)温度に維持され、約0℃~約5℃が好ましい。
【0029】
好ましい反応温度では、加水分解及び縮合反応はよりゆっくりと起こる。これにより、例えば、ポリマー反応生成物中のシラノール含有量のレベルをより高度な制御及び正確さで調整することが可能になる。好ましい加水分解性置換基はアルコキシ基であるが、これは、加水分解が酸によって触媒される場合でさえ発熱性が低く、概して、より高いヒドロキシル含有量のシルセスキオキサンベースポリマーをもたらすためである。
【0030】
ポリマー反応生成物、すなわちβ置換オルガノシルセスキオキサンベースポリマーを水性反応媒体から回収することは、従来技術、例えば溶媒抽出(ポリマー反応生成物を可溶化するが、水性反応媒体に非相溶性である有機溶媒を用いる)、ポリマー反応生成物の塩析等を使用して行うことができる。次いで、ポリマー反応生成物を、適宜抽出溶媒の濾過又は蒸発によって、固体形態の実質的に純粋な材料(すなわち、ポリマー)として回収することができる。
【0031】
シルセスキオキサン堆積ポリマー
有機置換基のβ位で置換する好ましい可溶性で液体のホモポリマー及びコポリマーシルセスキオキサンとしては、ハロゲン、例えば2-クロロエチルシルセスキオキサン及び2-ブロモエチルシルセスキオキサン、エーテル、例えば2-メトキシエチルシルセスキオキサン並びにカルボキシレート、例えば2-アセトキシエチルシルセキオキサンが挙げられる。これらの材料は、連続構造と考えることができるベースポリマーと見なすことができ、連続構造は、セラミック変換時に1種又は複数の共反応成分を変化させて勾配を形成することによって変性される。
【0032】
シルセスキオキサンに添加されるアルコキシシラン又は金属酸化物が存在しない合成の時点で、ベースポリマーは堆積ポリマーになる。以下に記載する実施例では、正確な中間点で、未変性のシルセスキオキサンベースポリマーが存在し、合成中の他のすべての時点では、アルコキシシラン又は金属酸化物の共反応成分又は添加剤によって変性される。
【0033】
無機酸副生成物は、有機置換基と反応する可能性が高いので、酢酸が副生成物であるという理由から、アセトキシ基がβ位にあるのが好ましい。本開示の好ましいオルガノシルセスキオキサンは、2-アセトキシエチルシルセスキオキサンであり、より好ましくは、ポリマー骨格上にシラノールとして示されるヒドロキシル置換基を有するものである。例示的な好ましいシルセスキオキサンであるアセトキシシルセスキオキサンは、式(I)を有し、ここで、Rは2-アセトキシエチル(CH3COOCH2CH2-)である。
【0034】
【化3】
【0035】
有機官能性シラン類
本明細書に記載のSiO2リッチ構造体を形成するための適切な有機官能性シラン類は、好ましくは有機官能性アルコキシシラン類である。SiO2リッチ構造体を調製する際に、1種、2種、又はそれ以上のこれらのシラン類を含めることは、本開示の範囲内である。適切なアルコキシシラン類は、概してトリアルコキシシランであるが、アルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基(低質量の揮発性副生成物をもたらす)であるジアルコキシシランも使用することができ、例えば、アルキル置換基(ジアルキルジアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)を含有するものが挙げられる。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。プロポキシ基及びイソプロポキシ基等の高級アルコキシ基を有するシラン類を利用することは、本開示の範囲内であるが、得られる膜はより割れを生じやすい。適切なアルキル基としては、1個の炭素原子(メチル)から20個超の炭素原子を有するものが挙げられる。メトキシ(ポリエチレンオキシ)基等で置換されたアルキル基についても、本開示の範囲内である。また、それらに限定されないが、フェニルトリメトキシシラン等の芳香族置換基を含有するシラン類を利用することは、本開示の範囲内である。好ましいアルコキシシラン類としては、以下に示すイソブチルトリエトキシシラン及びメトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0036】
【化4】
【0037】
金属アルコキシド類
アルコキシシランを、1種又は複数の金属アルコキシド類に置き換えることも本開示の範囲内であり、金属アルコキシド類としては、それらに限定されないが、例えば酸化ゲルマニウム勾配を生成するためのゲルマニウムイソプロポキシド、酸化タンタル勾配を生成するためのタンタルエトキシド、酸化チタン勾配を生成するためのチタンn-ブトキシド、酸化ジルコニウム勾配を生成するためのジルコニウムn-プロポキシド、及び酸化ハフニウム勾配を生成するためのハフニウムn-ブトキシドが挙げられる。これらの金属酸化物の使用により、そのような元素を組み込んだSiO2リッチ構造体が得られ、他の特性の中でも、光学デバイス、例えばレンズ、導波路、及び光ファイバーに用途を有する屈折率の勾配が生成される。例示的な反応スキームを、以下のスキーム3に示す。
【0038】
【化5】
【0039】
勾配特性を持つSiO2リッチ構造体
本開示において、SiO2リッチという用語は、複数のケイ素原子がそれぞれ4つの酸素原子に結合し、ケイ素原子の約50%以下が炭素原子に結合している材料を記載するために使用される。
【0040】
SiO2リッチ構造体は、好ましくは、約15nm~約500nmの厚さを有する薄膜の形態である。最大1500nmの厚さを有する膜等、より厚い膜を調製することも本開示の範囲内であるが、そのような膜は、応力割れ又は欠陥を有する可能性がより高い場合がある。
【0041】
線として書かれ得る非平面活性構造の形成は、脱離縮合反応を実施する前に、上記のシルセスキオキサンベースポリマーを、金属アルコキシド類及び上記の有機官能性アルコキシシラン類等の有機官能性シラン類と組み合わせることにより達成することができ、金属アルコキシド類としてはゲルマニウムエトキシドが挙げられる。有機官能基(organic functionality)の取り込みは、濃度を変更して勾配を作製する方法で、分注及び/又は書き込み中に導入することができる。スピンオン堆積法では、堆積ポリマーは、ゲルマニウムアルコキシドの濃度を増加させることによって屈折率勾配を作製できる。したがって、膜の外側部分は比較的低い屈折率を有し、中央部分はより高い屈折率を有する。セラミック構造体は、平面的ではあるが、凸レンズのように挙動する。
【0042】
得られた材料は、活性表面構造を作製するのに十分な有機官能基を有するセラミック状構造体、好ましくは膜である。ガラス状セラミック構造体への変換中、金属は構造に組み込まれ、変換条件下で有機官能基が安定している限り、有機官能性シランの場合には有機基も同様に組み込まれる。約300℃未満の温度では、有機官能性SiO2膜が容易に形成される。したがって、シルセスキオキサンベースポリマーに少なくとも1種の有機官能性アルコキシシランを添加することにより、分注/書き込み、濃度の変化、及び勾配の作製中に有機官能基を導入することが可能になる。
【0043】
例えば、SiO2リッチ構造体は、異なる疎水性/親水性特性を有する、例えば一方が疎水性シランで一方が親水性シランである2種の有機官能性シランから形成され得る。SiO2リッチ膜の堆積中、親水性及び疎水性比の相対比を変化させて、コーティング組成物が、最初にシルセスキオキサンに加えて、より多い割合の親水性シラン及びより少ない割合の疎水性シランを含む(又は疎水性シランを含まない)ようにすることができ、2種のシランの相対量が堆積中に変化し、堆積の途中で等しくなり、次いで最後に逆になるようにすることができる。つまり、堆積終了時には疎水性シランの割合が多く、親水性シランの割合が少ない(又はまったくない)。結果として得られる材料は、勾配のある親水性/疎水性特性を示し、一方の端ではより親水性が高く、他方の端ではより疎水性が高い。このような変化する親水性/疎水性特性は、SiO2リッチ構造体に水滴を垂らし、濡れ性の違い及び一端から他端への広がりを観察するか、又は両端での接触角を測定することによって観察できる。例示的な合成を図1に示す。
【0044】
1種のアルコキシシラン(又は以下に記載する金属アルコキシド)のみを採用する場合、コーティング組成物中のこの成分の相対濃度を変化させることにより、構造体又は膜の一端から他端への勾配特性が生じる。勾配特性は、親水性/疎水性に限定されず、屈折率及び共有結合反応性を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書に記載の方法は、異なる金属酸化物、例えば酸化ゲルマニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び酸化ハフニウムを、金属酸化物濃度が変化するSiO2リッチ構造体に組み込むための便利な方法としても使用することができる。この変換方法は、ボトムアップ製造を介して種々の基板上に薄いSiO2構造体を構築する方法を提供する。これらの他の元素、例えばゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びタンタルの酸化物を組み込んだ構造体は、勾配屈折率(GRIN)構造体を形成できる。これらの材料には有機含有量が含まれていないため、より高い温度で処理できる。
【0046】
本明細書に記載のSiO2リッチ材料は、当技術分野で周知の方法を使用して、スピンオン堆積、マイクロコンタクトプリンティング、3Dプリンティング、又は直接書き込みによって施すことができ、又は均質/均一な特性の膜を生成し、所望により熱成長させた酸化物の80%を超える密度を達成するために開発され得る。直接書き込みの場合、成分の相対流量を連続的に調整することにより、勾配機能性を備えた膜を実現できる。様々な機能性には、疎水性と親水性のバランス、屈折率、及び/又は共有結合反応性が含まれる。得られる材料は、熱的に安定した物理的構成要素として生成されるセラミック状組成物である。
【0047】
理論に拘泥することを望まないが、組み込みの明白な機構は、主に、セラミック変換反応の除去段階の後に利用可能な酸誘発加水分解縮合経路である。シルセスキオキサン中のシラノールの存在は、有益であるように見受けられる。アルコキシシランとの反応を促進するため、高濃度のシラノール(ヒドロキシル)基が望ましい。
【0048】
堆積中、アルコキシシラン又は金属アルコキシドが反応混合物に分注されると、中間組成物が形成される。2-アセトキシエチルシルセスキオキサン、イソブチルトリエトキシシラン、及びメトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランから生成される材料の特定の例では、中間体は(アセトキシエチルシルセスキオキサン)-(アセトキシエチル-イソブチルジメトキシシロキシ)シロキサンコポリマー、アセトキシエチルシルセスキオキサン、及びイソブチルトリメトキシシランの混合物である。
【0049】
好ましい溶液コーティング方法では、溶液は概して、シルセスキオキサンポリマーを溶媒又は溶媒の混合物に単に溶解又は懸濁させることによって形成される。この方法で使用することができる溶媒は、好ましくは揮発性の適度に極性の溶媒であり、芳香族炭化水素及びそれらのエポキシ官能性誘導体、グリコールエーテル、アルカン及びそれらのエポキシ官能性誘導体、ケトン、エステル、例えば酢酸モノメチルエーテル、オルトエステル、塩素化炭化水素、クロロフルオロカーボン、及びアルコールからなる群から選択される有機溶媒を含み得る。例示的な有機溶媒としては、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、ジメトキシエタン、メトキシエチルアセテート、トルエン、並びにアルコール、例えばエタノール、メトキシプロパノール、プロポキシプロパノール、及びプロピレングリコールが挙げられる。特に好ましい溶媒としては、ジグリム及びメトキシプロパノールが挙げられる。
【0050】
ハロゲンゲッタリング溶媒は、コーティング溶媒として特に有用であり、これらにはオルトギ酸トリメチル等のオルトエステル及びエポキシブタン等のエポキシ官能性溶媒が含まれる。これらの溶媒は、副生成物の塩化水素と反応する能力、又は中間的なSi--Cl含有種と反応する能力に有用であると考えられており、したがって反応速度を緩和し、腐食性副生成物を除去する。
【0051】
次いで、種々の組成の反応生成物を、場合により有機溶媒中で形成し、様々な濃度のアルコキシシラン又は金属アルコキシドを有するシルセスキオキサンベースポリマーを含有する液体であるコーティング組成物を基板に塗布する。コーティング手段、例えばスピン、スプレー、ディップ、フローコーティングを利用することができる。円形基板に塗布する場合、コーティング組成物は、例えば、基板の周囲と中心の間に勾配が形成されるように、従来のスピンオングラス(SOG)技術によって塗布され得る。
【0052】
基板にコーティング組成物を塗布した後、簡単な空気乾燥、周囲環境への暴露、又は真空若しくは温和な熱の適用により、コーティング溶媒を蒸発させる。
【0053】
上述の方法は、主に溶液アプローチの使用に焦点を当てているが、当業者は、本開示の観点から、他の同等のコーティング手段(例えば、溶融コーティング)も本明細書において機能し、本開示の範囲内であると想定されることを認識するであろう。
【0054】
膜等のSiO2リッチ構造体の形成は、コーティングされた基板を適度に上昇した温度で処理するか、又はUV照射によって処理し、シルセスキオキサン堆積ポリマー組成物をSiO2リッチセラミック薄膜に変換することによって行われる。この架橋変換は、少なくとも約0.5%の相対湿度を含有し、好ましくは約15%の相対湿度から約100%の相対湿度を含有する水分含有雰囲気中で行われる。特定のレベルの水分は、セラミック薄膜を形成するための全処理手順の間、雰囲気中に存在してもよく、又は代替として、手順の一部の間にのみ存在してもよい。ベースポリマー又は堆積ポリマーのいずれかのシルセスキオキサンに典型的に存在する高レベルのシラノール基(Si--OH)も、変換手順中に起こる架橋反応を促進するように見受けられ、シルセスキオキサンポリマーをSiO2リッチセラミック薄膜へ効率的に変換するのに必要な相対湿度のレベルを低下させる可能性があることに留意されたい。シラノール形成を誘発する1つの方法は、加水分解性基が存在するシルセスキオキサンコポリマー、例えばアセトキシエチルシルセスキオキサン-メトキシプロポキシシルセスキオキサンコポリマーを利用し、堆積中及び熱セラミック化又はUVセラミック化の前に、それらを高湿度環境に曝すことである。
【0055】
水分含有雰囲気中の他の成分は重要ではなく、不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が存在してもよく、反応性ガス、例えば空気、酸素、塩化水素、アンモニア等が存在してもよい。
【0056】
本開示の一実施形態では、コーティングされた基板上のシルセスキオキサン堆積ポリマーの転化は、コーティングされた基板を加熱することによる熱処理を介して達成される。加熱中に採用される温度は、中程度であり、好ましくは少なくとも約100℃であり、クロロエチルシルセスキオキサン又はフッ化物触媒によるフッ化テトラブチルアンモニウム、アセトキシエチルシルセスキオキサン樹脂については、より好ましくは少なくとも約150℃である。特に金属化された電子基板等、基板上に存在する他の材料に有害であることが多い極度に高い温度は不要である。約150℃~約700℃の範囲の加熱温度が好ましく、無触媒シルセスキオキサンポリマーについては約250℃~約500℃の範囲の温度がより好ましい。
【0057】
正確な温度は、利用される特定のβ置換オルガノシルセスキオキサンベースポリマー、雰囲気の組成(相対湿度を含む)、加熱時間、コーティング厚さ、及びコーティング組成物成分、例えばフッ化物触媒等の要因に依存し、これらのすべてが変換温度に影響する可能性がある。例えば、フッ化物の存在は、樹脂転化温度を劇的に低下させ、ハロゲン化物置換樹脂はアセトキシ基を含有する樹脂よりも低い温度で変換することが見出されている。場合によっては、応力割れを減少させるために、セラミック化より低い温度で存在する任意の溶媒を除去することが望ましい可能性がある。例えば、セラミック化前に温度を50℃から120℃の間に保持して溶媒を蒸発除去することにより、溶存した堆積ポリマーがセラミック転化温度まで急速に加熱され、膜形成能力に悪影響を及ぼし兼ねない場合に発生し得る急激なガス放出を低減する。
【0058】
加熱は概して、所望のSiO2リッチセラミック薄膜を形成するのに十分な時間行われる。加熱時間は典型的には、最大約6時間の範囲である。約2時間未満の加熱時間、例えば約0.1~約2時間が好ましい。
【0059】
加熱手順は概して周囲圧、すなわち大気圧で行われるが、亜大気圧又は部分真空又は超大気圧を採用することもできる。加熱の任意の方法、例えば対流式オーブン、急速熱処理、ホットプレート、又は放射エネルギー若しくはマイクロ波エネルギーの使用が、概して機能する。更に、加熱速度も重要ではないが、可能な限り迅速に加熱することが最も実用的であり、好ましい。
【0060】
本開示の代替の実施形態では、SiO2リッチ構造体の形成は、コーティングされた基板に紫外(UV)照射を施すことによって達成される。コーティングされた基板をUV波長の光に曝すと、コーティングされた基板中のシルセスキオキサンポリマーの所望の架橋変換をもたらすことが見出されている。UV照射処理は、通常、コーティングされた基板を熱処理に使用される高温に曝すことなく行われるが、所望であれば、UV照射処理及び熱処理の組み合わせを採用することができる。
【0061】
UV光処理を使用して形成されたSiO2リッチ構造体は、概して、他の点では同一のコーティング条件下で熱処理によって典型的に得られる結果よりも、高いSiO2含有量を有することを特徴とする。UV処理を使用する利点は、UV照射の選択的集束によってパターン化膜が基板上に生成され得ることである。
【0062】
本発明は、以下の非限定的な例に関連してこれより記載される。
<実施例1>
【0063】
勾配のある透明ガラス状セラミック構造体の書き込みを、接続された3つのシリンジポンプを利用し、チップの端にある分注オリフィスに隣接する混合チャンバーに供給することによって達成した。混合物を、連続膜を提供するために、移動床に固定したスライドガラスに分注した。中央の大型シリンジポンプは、新たに調製した2-アセトキシエチルシルセスキオキサンベースポリマーのメトキシプロパノール(米国特許第6,770,726号に記載)の20%溶液の連続流を供給した。2つの渦流ポンプ(peripheral pump)は、イソブチルトリエトキシシラン及びメトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランを(別々に)含有していた。シランの添加は、中間点でシルセスキオキサンベースポリマーの5.5体積%から0体積%の間で独立に変化した。すなわち、疎水性シランの濃度は、堆積開始時の5.5体積%から中間点での0体積%に減少し、親水性シランの濃度は、中間点の0体積%から堆積終了時の5.5体積%に増加した。したがって、混合中に様々な組成のシルセスキオキサン堆積ポリマーを生成した。空気中で110℃にて4時間加熱して溶媒を除去した後、透明な膜が残った。相対湿度(RH)~60%で更に~250℃に加熱することにより、膜は半透明になった。無溶媒膜の空気中のTGA質量損失は、500℃の温度で47%であった。ベースシルセスキオキサンの対照TGAは、44%であった。この比較は、ガラス状セラミックへの有機官能基の組み込みとよく一致していた。一方の端部は85°の静的水接触角で疎水性であり、他方の端部は15°の静的水接触角で比較的親水性であった。同一条件下でオクタデシルトリメトキシシランをイソブチルトリエトキシシランに置き換えた場合、疎水性端部での静的水接触角は100°であった。
【0064】
【化6】
【0065】
<実施例2(予言的)>
【0066】
実施例1のベースポリマーを、20%のメトキシプロパノール溶液として約2週間老化させる。2-エチルケイ素からケイ素骨格へのアセトキシ基の移動と、それに続くメトキシプロパノールによる置換が、アセトキシエチルシルセスキオキサン-メトキシプロポキシシルセスキオキサンコポリマーを形成することが観察される。2-エチルアセトキシ基のメトキシプロピル基に対する比は6:1であり、得られる薄膜セラミック材料は、1.55g/mLの密度を有する。勾配堆積は、実施例1と同一条件下で実施する。
<実施例3(予言的)>
【0067】
実施例1に記載された方法を、同一条件下で両方のシランの代替としてゲルマニウムイソプロポキシドを使用して繰り返し、屈折率を高める。
<実施例4(予言的)>
【0068】
実施例1に記載された方法を、同一条件下でシランの片方又は両方の代替としてジメチルジメトキシシランを使用して繰り返し、コーティングのモジュラスを低下させる。
【0069】
広範な発明的概念から逸脱することなく、上記の実施形態に変更を加えることができることは、当業者によって理解されるであろう。また、この開示に基づいて、当業者は、上記の成分の相対的な比率が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変化し得ることを更に認識するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲内の改変を包含することを意図していることが理解される。
図1