(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】搬送システム、搬送車両、及びステーション進入方法
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20250120BHJP
B61B 10/04 20060101ALI20250120BHJP
B62D 61/10 20060101ALI20250120BHJP
B62D 65/18 20060101ALI20250120BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20250120BHJP
【FI】
B61B13/00 V
B61B10/04 F
B62D61/10
B62D65/18 B
B62D65/18 C
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2023111579
(22)【出願日】2023-07-06
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】北澤 匡哉
(72)【発明者】
【氏名】冨松 熱志
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-001131(JP,A)
【文献】特開2021-126913(JP,A)
【文献】特開平11-180696(JP,A)
【文献】特開2003-237304(JP,A)
【文献】特開2021-080037(JP,A)
【文献】特開2010-026772(JP,A)
【文献】特許第7462081(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B61B 10/04
B62D 61/10
B62D 65/18
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に走行を制御して搬送物を搬送する搬送車両と、
前記搬送車両によって前記搬送物が搬入または搬出され、前記搬送車両が進入及び退出する入退出口を備えたステーションと、を備え、
前記搬送車両は、
車体の前後方向の中央部に設けられた駆動輪と、
前記車体の前方と後方にそれぞれ設けられた従動輪と、
前記駆動輪と前記車体の前方の従動輪とを、前記車体に回動可能に設けられた連結部材で連結したボギー機構とを備え、
前記搬送物を搭載しているか否かを判定し、
前記搬送物を搭載している場合には、前記搬送物を前記ステーションへ搬入するために前記入退出口へ進入すると
判断して、前記入退出口へ前進して進入し、
前記搬送物を搭載していない場合には、前記搬送物を前記ステーションから搬出するために前記入退出口へ進入すると
判断して、前記入退出口へ後退して進入する
搬送システム。
【請求項2】
前記搬送車両は、
前記搬送物が載置されて上下に昇降する昇降機構を備え、
前記搬送物が載置されているときには前記昇降機構は上昇し、前記搬送物が載置されていないときには前記昇降機構は下降し、
前記昇降機構が上昇しているときには前記搬送物を搭載していると判定し、前記昇降機構が下降しているときには前記搬送物を搭載していないと判定する
請求項
1に記載の搬送システム。
【請求項3】
自律的に走行を制御して搬送物を搬送する搬送車両と、
前記搬送車両によって前記搬送物が搬入または搬出され、前記搬送車両が進入及び退出する入退出口を備えたステーションと、を備え、
前記ステーションは、
前記入退出口から進入した前記搬送車両が停車する停車スペースの上方に前記搬送物を載置する支持部を備え、
前記搬送車両は、
車体の前後方向の中央部に設けられた駆動輪と、
前記車体の前方と後方にそれぞれ設けられた従動輪と、
前記駆動輪と前記車体の前方の従動輪とを、前記車体に回動可能に設けられた連結部材で連結したボギー機構と、
前記支持部に載置された搬送物を検出するセンサを備え、
前記センサで前記支持部に載置された搬送物が検出されたか否かを判定し、
前記センサで前記支持部に載置された搬送物が検出されなかった場合には、前記搬送車両に搭載された搬送物を前記ステーションへ搬入するために前記入退出口へ進入すると判断して、前記入退出口へ前進して進入し、
前記センサで前記支持部に載置された搬送物が検出された場合には、前記支持部に載置された搬送物を前記ステーションから搬出するために前記入退出口へ進入すると判断して、前記入退出口へ後退して進入する
搬送システム。
【請求項4】
自律的に走行を制御して、入退出口を備えたステーションへ搬送物を搬入または搬出する搬送車両において、
車体の前後方向の中央部に設けられた駆動輪と、
前記車体の前方と後方にそれぞれ設けられた従動輪と、
前記駆動輪と前記車体の前方の従動輪とを、前記車体に回動可能に設けられた連結部材で連結したボギー機構とを備え、
前記搬送物を搭載しているか否かを判定し、
前記搬送物を搭載している場合には、前記搬送物を前記ステーションへ搬入するために前記入退出口へ進入すると
判断して、前記入退出口へ前進して進入し、
前記搬送物を搭載していない場合には、前記搬送物を前記ステーションから搬出するために前記入退出口へ進入すると
判断して、前記入退出口へ後退して進入する
搬送車両。
【請求項5】
自律的に走行を制御して搬送物を搬送する搬送車両をステーションへ進入させるステーション進入方法において、
前記ステーションは、前記搬送車両によって前記搬送物が搬入または搬出され、前記搬送車両が進入及び退出する入退出口を備え、
前記搬送車両は、
車体の前後方向の中央部に設けられた駆動輪と、
前記車体の前方と後方にそれぞれ設けられた従動輪と、
前記駆動輪と前記車体の前方の従動輪とを、前記車体に回動可能に設けられた連結部材で連結したボギー機構とを備え、
前記搬送車両が前記搬送物を搭載しているか否かを判定し、
前記搬送車両が前記搬送物を搭載している場合には、前記搬送車両が前記搬送物を前記ステーションへ搬入するために前記入退出口へ進入すると
判断して、前記搬送車両を前記入退出口へ前進して進入させ、
前記搬送車両が前記搬送物を搭載していない場合には、前記搬送車両が前記搬送物を前記ステーションから搬出するために前記入退出口へ進入すると
判断して、前記搬送車両を前記入退出口へ後退して進入させる
ステーション進入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送システム、搬送車両、及びステーション進入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板金などの材料を加工する工場では、異なる種類の加工機を用いて継続性のある加工を行うことがある。例えば、レーザ切断加工機によって切り出された材料を、プレスブレーキによって所望の形状へと折り曲げるといった如くである。工場には、材料が搭載されたパレットを載置するためのステーションが加工機毎に設けられており、搬送車両がステーション間を行き来することで、材料の搬送が自動的に行われる。搬送車両は、AMR(Autonomous Mobile Robot)と称される自律移動ロボットであり、センサにより自己位置を推定して自律的に走行する機能を備えている。
【0003】
このようなAMRでは、異物が落ちていることが多い工場内を走行する場合でも安定した駆動力を得るために、ボギー機構を備えている。例えば特許文献1には、簡単な構成で走行装置の安定走行及び低床化を可能とする走行装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の走行装置では、ボギー機構が前輪側のみに設けられているので、搬送物を搭載した状態で後退する場合には安定した駆動力を得ることができなかった。また、後退するときにも安定した駆動力を得るために、後輪側にもボギー機構を設けると、部品点数が増加してコストが増加するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の搬送システムは、自律的に走行を制御して搬送物を搬送する搬送車両と、前記搬送車両によって前記搬送物が搬入または搬出され、前記搬送車両が進入及び退出する入退出口を備えたステーションと、を備え、前記搬送車両は、車体の前後方向の中央部に設けられた駆動輪と、前記車体の前方と後方にそれぞれ設けられた従動輪と、前記駆動輪と前記車体の前方の従動輪とを、前記車体に回動可能に設けられた連結部材で連結したボギー機構とを備え、前記搬送物を前記ステーションへ搬入するために前記入退出口へ進入するときには、前記入退出口へ前進して進入し、前記搬送物を前記ステーションから搬出するために前記入退出口へ進入するときには、前記入退出口へ後退して進入する。
【0007】
本発明の一態様の搬送システムによれば、搬送物をステーションへ搬入するときには、搬送車両が入退出口へ前進して進入し、搬送物をステーションから搬出するときには、搬送車両が入退出口へ後退して進入する。これにより、搬送物を搭載しているときには必ず搬送車両は前進するので、ボギー機構が前方側のみに設けられていても、搬送物を搭載しているときには常に安定した駆動力を得ることができる。また、後方側にボギー機構を設ける必要がないので、部品点数の増加によるコストの増加を防止することもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、搬送物を搭載しているときには常に安定した駆動力を得ることができ、部品点数の増加によるコストの増加を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る搬送システムのシステム構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、搬送システムが適用される環境を説明する図である。
【
図3】
図3は、AMRの外部構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、AMRの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、ステーションの構造を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、AMRによるステーション進入処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7に続く、AMRによるステーション進入処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、スキャン位置に到達するまでのAMRの走行の様子を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、パレットを搭載しているときにAMRがステーションへ進入する様子を示す図である。
【
図10B】
図10Bは、パレットをステーションに載置した後にAMRがステーションから退出する様子を示す図である。
【
図11A】
図11Aは、パレットを搭載していないときにAMRがステーションへ進入する様子を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、パレットをステーションで搭載した後にAMRがステーションから退出する様子を示す図である。
【
図12】
図12は、停車スペースに進入するまでのAMRの走行の様子を示す図である。
【
図13】
図13は、停車位置に停車するまでのAMRの走行の様子を示す図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係るAMRがステーションへ進入する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、図面を参照し、本実施形態に係る搬送システム、搬送車両、及びステーション進入方法について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る搬送システムのシステム構成を示す説明図である。本実施形態に係る搬送システムは、自律的に走行を制御して搬送物を搬送する搬送車両(以下、AMR(自律移動ロボット:Autonomous Mobile Robot))2と、AMR2によって搬送物が搬入または搬出され、AMR2が進入及び退出する入退出口120を備えたステーション1と、を備えている。AMR2は、車体200の前後方向の中央部に設けられた駆動輪25a、25bと、車体200の前方と後方にそれぞれ設けられた従動輪30a、30b、32a、32bと、駆動輪25a、25bと車体200の前方の従動輪30a、30bとを、車体200に回動可能に設けられた連結部材34a、34bで連結したボギー機構とを備えている。そして、AMR2は、搬送物をステーション1へ搬入するために入退出口120へ進入するときには、入退出口120へ前進して進入し、搬送物をステーション1から搬出するために入退出口120へ進入するときには、入退出口120へ後退して進入する。
【0012】
AMR2は、ボギー機構を構成する従動輪30a、30bの側が前方向であり、
図1では進行方向FWで示されている。したがって、
図1の進行方向FWに対して逆向き方向、進行方向FWに対して左側、進行方向FWに対して右側が、それぞれAMR2の後方向、左方向、右方向となる。また、ステーション1の方向は、ステーション1の入退出口120に対して正体した状態のAMR2からみた方向によって定められる。具体的には、AMR2からみて近い側(手前側)、AMR2からみて遠い側(奥側)、AMR2からみて左側、AMR2からみて右側が、それぞれステーション1の前方向、後方向、左方向、右方向となる。
【0013】
以下、本実施形態に係る搬送システムの詳細を説明する。
図2は、搬送システムが適用される環境を説明する図である。本実施形態に係る搬送システムが適用される環境は、例えば工場である。工場には、材料に対して切断加工を行うレーザ切断加工機などの第1加工機7と、材料に対して曲げ加工を行うプレスブレーキなどの第2加工機8とが設けられている。この工場では、第1加工機7で材料を切断して所定の製品用の部品を作製する工程と、第2加工機8で製品用の部品を折り曲げて所定の製品を作製する工程が行われる。
【0014】
搬送システムは、材料の搬送を自動で行うシステムである。搬送システムによる材料の搬送には、第1加工機7への材料(加工前の材料)の搬入、第1加工機7で加工された材料(製品用の部品)の搬出及び第2加工機8への搬入、第2加工機8で加工された材料(製品)の搬出などが含まれる。
【0015】
搬送システムは、2つのステーション1と、AMR2とで構成されている。2つのステーション1は、第1及び第2加工機7、8に対応して設けられている。個々のステーション1の構成は同一である。AMR2は、材料を載せたパレット(搬送物の一例)5を各ステーション1へと搬送することにより、各加工機7、8に対して材料の搬入及び搬出を行う。
【0016】
なお、
図2に示す例において、工場には、2つの加工機7、8及び2つのステーション1が設けられているが、本実施形態はこれに限定されない。また、パレット5を搬送する1台のAMR2が例示されているが、本実施形態はこれに限定されない。
【0017】
[AMRの構成]
まず、
図1、
図3~
図5を参照し、本実施形態に係るAMR2について説明する。
図3は、AMRの外部構成を示す斜視図である。
図4A、
図4Bは、AMRの内部構造を示す斜視図である。
図5は、AMRの構成を示すブロック図である。
【0018】
AMR2は、周囲の物体に関する検出結果に基づいて自律的に走行を制御して、搬送物であるパレット5を搬送する搬送車両である。AMR2は、図示していないバッテリを搭載しており、バッテリから供給される電力で走行する。
【0019】
図3、4A、4Bに示すように、AMR2は、車体200と、天板210と、駆動輪25a、25bと、前方の従動輪30a、30bと、後方の従動輪32a、32bと、連結部材34a、34bとを備えている。
【0020】
天板210は、車体200の天井部分を形成し、パレット5(図示せず)を搭載することができる。すなわち、AMR2は、天板210にパレット5を搭載した状態で走行することで、パレット5の搬送を行う。
【0021】
駆動輪25a、25bは、車体200の前後方向の中央部に設けられており、連結部材34a、34bの後方の端部に設けられた水平な回動軸の回りに回動する。
【0022】
従動輪30a、30bは、車体200の前方に設けられたキャスターであり、水平な回動軸の回りに回動してAMR2を進行方向へ移動させる。また、従動輪30a、30bは、連結部材34a、34bの前方の端部に設けられた垂直な回動軸の回りに回動してAMR2の進行方向を変更させる。
【0023】
従動輪32a、32bは、車体200の後方に設けられたキャスターであり、水平な回動軸の回りに回動してAMR2を進行方向へ移動させるとともに、車体200に設けられた垂直な回動軸の回りに回動してAMR2の進行方向を変更させる。
【0024】
連結部材34a、34bは、駆動輪25a、25bと車体200の前方の従動輪30a、30bとを連結し、車体200に回動可能に設けられている。連結部材34a、34bの両端には、それぞれ従動輪30a、30bと駆動輪25a、25bが回動可能に設けられており、中央部にある水平な回動軸36a、36bの回りに、連結部材34a、34bが上下方向に回動する。すなわち、従動輪30a、30bが上昇すれば、駆動輪25a、25bは下降し、従動輪30a、30bが下降すれば、駆動輪25a、25bは上昇する。
【0025】
AMR2は、駆動輪25a、25bと従動輪30a、30bとを連結部材34a、34bで連結したボギー機構を備えている。ボギー機構は、駆動輪25a、25bが地面から離れることを防止して、安定した駆動力を得るために設けられている。例えば、ボギー機構がない場合に、前方の従動輪30a、30bが異物を踏んでしまうと、前方の従動輪30a、30bと後方の従動輪32a、32bとの間で車体200を支えることになる。したがって、中央部にある駆動輪25a、25bは、地面から浮いてしまい、駆動力を得ることができない。
【0026】
しかし、ボギー機構を備えていると、AMR2が前進して従動輪30a、30bが異物に乗り上げて上昇すると、回動軸36a、36bの回りに連結部材34a、34bが上下方向に回動するので、駆動輪25a、25bは下降する。したがって、駆動輪25a、25bは常に地面に接触していることができるので、AMR2は、スクラップ等が落ちている板金工場のようなところでも安定して駆動力を得ることができる。
【0027】
また、AMR2は、前方側のみにボギー機構を備えているが、駆動力を必要とする搬送物を搭載しているときには、後述するように、AMR2は常に前進するように制御されている。したがって、前方側のみにボギー機構を備えていれば、AMR2は常に安定して駆動力を得ることができる。さらに、前方側のみにボギー機構を備えていることにより、後方側にもボギー機構を備えている場合と比較して、部品点数を減らすことができるので、コストの増加を防止することもできる。
【0028】
図5に示すように、AMR2は、制御部21と、無線通信部22と、一対のセンサ23a、23bと、一対の駆動モータ24a、24bと、一対の駆動輪25a、25bと、リフタ駆動部26と、リフタ27と、地図記憶部29とを備えている。AMR2を構成するこれらの要素は、
図3に示す車体200内に格納されている。
【0029】
制御部21は、例えばマイクロコンピュータなどのコンピュータで構成され、AMR2の動作を制御する。無線通信部22は、第1及び第2加工機7、8、或いは工場の生産を管理する管理装置などの外部装置と通信する。無線通信部22は、通信回路及び無線の送受信機によって構成することができる。
【0030】
一対のセンサ23a、23bは、互いに同じ構成を有するので、一方のセンサ23aの構成について説明する。センサ23aは、周囲に照射した検出光の反射光を受光して周囲の物体を検出する。例えば、センサ23aはLiDAR(Light Detection and Ranging)であり、AMR2の周囲に存在する物体までの距離を示す点群データを取得する。なお、センサ23a、23bは、ステレオカメラ、又はTOF(Time Of Flight)センサなどを用いてもよい。
【0031】
図1に示すように、一対のセンサ23a、23bのうち、一方のセンサ23aは、AMR2の車体200前方における左端部に配置され、他方のセンサ23bは、AMR2の車体200後方における右端部に配置される。一方のセンサ23aは、AMR2の前側正面よりも若干左向きに取り付けられている。一方のセンサ23aは、AMR2の前方及び左側方に存在する物体を検出することができる程度の検出範囲θb1を備えている。他方のセンサ23bは、AMR2の後側正面よりも若干右向きに取り付けられている。他方のセンサ23bは、AMR2の後方及び右側方に存在する物体を検出することができる程度の検出範囲θb2を備えている。このような一対のセンサ23a、23bの配置形態により、少ないセンサ数でも、AMR2の周囲全域を検出することができるようになっている。
【0032】
図5に示すように、一方の駆動モータ24aは、一方の駆動輪25aを回転駆動するモータであり、他方の駆動モータ24bは、他方の駆動輪25bを回転駆動するモータである。各駆動モータ24a、24bは、制御部21によって独立して制御可能である。
【0033】
図1に示すように、一対の駆動輪25a、25bは、左右に離隔した状態で車体200に配置されている。個々の駆動輪25a、25bは、車体200に対して向きが固定されている。
図3に示すように、AMR2が前進する場合には、一対の駆動輪25a、25bが回転方向R1の方向に回転して、矢印FWの方向に移動する。
図3に示す回転方向R1と逆向きに駆動輪25a、25bが回転すれば、AMR2は後退する。
【0034】
図5に示すように、リフタ駆動部26は、リフタ27を駆動する駆動部であり、例えばモータなどのアクチュエータによって構成されている。リフタ27は、搬送物が載置されて上下に昇降する昇降機構であり、天板210を上下に昇降させる。AMR2の天板210にパレット5が載置されている状態でリフタ27が天板210を上昇させれば、パレット5が上方へと持ち上げられる。
【0035】
リフタ27は、図示していないリミットスイッチを備え、リフタ27が上昇すると、リミットスイッチがONするので、制御部21は、リミットスイッチのON、OFFによって、リフタ27が上昇しているか否かを検知することができる。また、リフタ27は、天板210にパレット5が載置されているときには常に上昇し、天板210にパレット5が載置されていないときには常に下降している。したがって、制御部21は、リミットスイッチがONになってリフタ27が上昇しているときには搬送物を搭載していると判定し、リミットスイッチがOFFになってリフタ27が下降しているときには搬送物を搭載していないと判定する。尚、リフタ27が、天板210を上下させるためにシリンダを備えている場合には、シリンダスイッチのON、OFFによって、搬送物を搭載しているか否かを判定してもよい。
【0036】
地図記憶部29は、AMR2が走行する環境、すなわち工場の地図データを記憶している。この地図データは、工場内をAMR2が事前に走行した際に得られる点群データから構成されている。地図記憶部29は、例えば不揮発性メモリなどで構成されている。
【0037】
このような構成のAMR2において、センサ23a、23bは、AMR2の周囲に検出光を照射し、その反射光を受光して周囲の物体を検出する。周囲物体の検出は、AMR2の周囲にある物体までの距離を示す点群データの検出に相当する。AMR2は、センサ23a、23bの検出結果に基づいて自律的に走行して、パレット5を搬送する。
【0038】
この自律走行において、制御部21は、地図記憶部29から読み出した地図データと、センサ23a、23bの検出結果とのマッチングからAMR2の位置(自己位置)を推定する。そして、制御部21は、自己位置の推定結果に基づいて駆動モータ24a、24bを制御することでAMR2の進路を決定し、これにより、工場内の目的位置までAMR2を走行させることができる。また、制御部21は、センサ23a、23bの検出結果から地図データには存在しない物体(障害物)を認識した場合には、駆動モータ24a、24bを制御することで、その物体を回避することができる。
【0039】
[ステーションの構造]
つぎに、
図1及び
図6を参照し、ステーション1について説明する。
図6は、ステーションの構造を示す斜視図である。ステーション1は、4つの脚部100、101、102、103と、支持部110とで構成されている。
【0040】
図6に示すように、4つの脚部100、101、102、103は、略矩形状を有する支持部110の角部に配置されている。4つの脚部100、101、102、103によって囲まれる範囲は、AMR2が進入して停車するための停車スペースPsに相当する。停車スペースPsへは、AMR2が入退出口120から進入し、入退出口120から退出する。すなわち、停車スペースPsへはAMR2が一方向から出入りするようになっている。
【0041】
支持部110は、4つの脚部100、101、102、103によって支持され、入退出口120から進入したAMR2が停車する停車スペースPsの上方に配置されている。支持部110は、略矩形状を有する枠体であり、パレット5を載置可能に構成されている。支持部110の前側は、AMR2が進入可能なように開放されている。支持部110に載置されたパレット5は、入退出口120の上部に位置する。
【0042】
図1に示すように、前側にある一対の脚部100、102は、停車スペースPsに進入するAMR2からみて左右に離隔して配置されている。左右の脚部100、102は、停車スペースPsへの入退出口120を定める左右の構造体に相当する。
【0043】
図6に示すように、左側にある一対の脚部100、101の間には、停車スペースPsの左境界を規定する左の横壁130が設けられている。左の横壁(以下「左壁」という)130は、上下方向に起立する板状の部材であり、AMR2が停車スペースPsに進入する進入方向である前後方向に沿って設けられている。また、左壁130は、前後方向に沿って面一に形成されている。
【0044】
右側にある一対の脚部102、103の間には、停車スペースPsの右境界を規定する右の横壁132が設けられている。右の横壁(以下「右壁」という)132の機能及び構造は、左壁130と同様である。
【0045】
図1に示すように、ステーション1は、第1進入用反射板140、第2進入用反射板141、及び停止用反射板145を備えている。各反射板140、141、145は、AMR2がステーション1に進入及び停車する際に利用される。各反射板140、141、145は、光(入射光)を反射する反射部材であり、AMR2に搭載されたセンサ23a、23bから照射される検出光を反射することができる。個々の反射板140、141、145は、例えばプリズム反射板で構成されている。各反射板140、141、145は、AMR2の周囲にある物体よりも高い輝度で検出光を反射させることができる。これにより、AMR2は、反射光の輝度レベルに応じて、反射板140、141、145を他の物体から区別して認識することができる。
【0046】
第1進入用反射板140は、左前にある脚部100に配置され、第2進入用反射板141は、右前にある脚部102に配置されている。第1及び第2進入用反射板140、141は、入退出口120に向かうAMR2の走行をガイドするための反射板である。第1及び第2進入用反射板140、141は、停車スペースPsに進入するAMR2と向かい合うように、脚部100、102の前面に配置されている。具体的には、第1及び第2進入用反射板140、141は、その反射範囲θa1、θa2の中心が前後方向に沿うように配置されている。
【0047】
一方、停止用反射板145は、左壁130に配置されており、停車スペースPs内の規定の停車位置でAMR2を停車させるための反射板である。停止用反射板145は、停車スペースPsに進入するAMR2からみて、進入用反射板140、141よりも停車スペースPsの奥側(後方)に配置されている。
図1に示す例では、停止用反射板145は、停車スペースPsの最も奥側、例えば左後の脚部101と同じ位置に配置されている。この停止用反射板145は、右壁132と向かい合うように配置されている。具体的には、停止用反射板145は、その反射範囲θa3の中心が、AMR2の進入方向と直交する方向である左右方向に沿うように配置されている。
【0048】
第1及び第2進入用反射板140、141は、停車スペースPsに進入前のAMR2から広く検出されることができるように、前方に向かって膨らんだ凸面形状を有している。これに対して、停止用反射板145は、平面形状を有している。したがって、第1及び第2進入用反射板140、141の反射範囲θa1、θa2は、停止用反射板145の反射範囲θa3よりも大きくなっている。ここで、「反射範囲」とは、検出光を反射板に入射させたときに一定の強度以上の反射光を維持することができる入射角の範囲をいう。
【0049】
このような構成のステーション1は、AMR2によって搬送されるパレット5を支持部110によって支持することができる。ステーション1へ搬送物を搬入するとき、AMR2は、パレット5が搭載されているリフタ27を上昇させた状態で停車スペースPsへ進入する。そして、停車スペースPsに進入して停止すると、AMR2は、リフタ駆動部26を制御してリフタ27を下降させる。これにより、AMR2は、ステーション1の支持部110にパレット5を載置して搬送物を搬入することができる。
【0050】
一方、ステーション1から搬送物を搬出するとき、AMR2は、パレット5が搭載されていないリフタ27を下降させた状態で停車スペースPsへ進入する。そして、停車スペースPsに進入して停止すると、AMR2は、リフタ駆動部26を制御してリフタ27を上昇させる。これにより、AMR2は、ステーション1の支持部110に載置されているパレット5を天板210上に搭載して搬送物をステーション1から搬出することができる。この後、AMR2は、リフタ27を下降させることなくパレット5を上方に持ち上げたまま走行する。
【0051】
[ステーション進入処理]
以下、
図7から
図13を参照し、AMR2をステーション1の停車スペースPsに進入させて停止させるまでの一連の方法であるステーション進入方法について説明する。ここで、
図7及び
図8は、本実施形態に係るAMR2によるステーション進入処理の処理手順を示すフローチャートである。
図9は、スキャン位置に到達するまでのAMR2の走行の様子を示す図である。
図10A、10Bは、パレットを搬入するときのAMR2によるステーション1への入退出の様子を示す図である。
図11A、11Bは、パレットを搬出するときのAMR2によるステーション1への入退出の様子を示す図である。
図12は、停車スペースPsに進入するまでのAMR2の走行の様子を示す図である。
図13は、停車位置に停車するまでのAMR2の走行の様子を示す図である。
【0052】
図7に示すステップS10において、制御部21は、無線通信部22を介して、ステーション1への移動指令を受信する。移動指令は、工場内の第1加工機7又は第2加工機8(
図2参照)、若しくは工場の生産を管理する管理装置などの外部装置から送信される。
【0053】
ステップS11において、制御部21は、
図9に示すように、現在位置からスキャン位置Pscまで、自己位置推定によりAMR2を走行させる。具体的に、制御部21は、地図データとセンサ23a、23bの検出結果とのマッチングからAMR2の現在位置を推定する。そして、制御部21は、自己位置推定の結果に基づいて駆動モータ24a、24bを制御することで、スキャン位置Pscに向かって走行することができる。
【0054】
スキャン位置Pscは、停車スペースPsの入退出口120に対してAMR2が正体するような位置及び向きとして予め定義されており、制御部21は、スキャン位置Pscの情報を予め保有している。制御部21の制御のもとAMR2が自己位置推定により走行を継続することで、AMR2はスキャン位置Pscへと到達することができる。
【0055】
図7のステップS12において、制御部21は、スキャン位置Pscに対する位置決め及び角度決めを完了させる。自己位置推定によるAMR2の走行には多少の誤差が含まれる。そのため、
図9に示すように、制御部21がスキャン位置Pscに対してAMR2の位置決め及び角度決めを行った場合でも、スキャン位置Pscに対するAMR2のずれが発生することがある。
【0056】
図7に示すステップS13において、制御部21は、搬送物をステーション1へ搬入するために、AMR2が入退出口120へ進入するのか否かを判定する。そして、搬送物をステーション1へ搬入するために入退出口120へ進入する場合(S13:YES)、ステップS14へ進む。一方、搬送物をステーション1へ搬入するために、AMR2が入退出口120へ進入するのではない場合、すなわち搬送物をステーション1から搬出するために、AMR2が入退出口120へ進入する場合(S13:NO)、ステップS15へ進む。
【0057】
ここで、AMR2が搬送物を搬入するのか搬出するのかの判断方法としては、AMR2が搬送物を搭載しているか否かで判定すればよい。具体的に、制御部21は、AMR2が搬送物を搭載しているか否かを判定し、搬送物を搭載している場合には、搬送物をステーション1へ搬入するために、AMR2が入退出口120へ進入すると判断する。一方、AMR2が搬送物を搭載していない場合には、ステーション1から搬送物を搬出するために、AMR2が入退出口120へ進入すると判断する。
【0058】
さらに、AMR2が搬送物を搭載しているか否かの判断方法としては、リフタ27が上昇しているか否かで判定すればよい。リフタ27は、搬送物が載置されているときには常に上昇し、搬送物が載置されていないときには常に下降する。また、リフタ27にはリミットスイッチが設けられており、リフタ27が上昇すると、リミットスイッチがONするので、制御部21は、リミットスイッチがONのときにはリフタ27が上昇していると判定する。一方、制御部21は、リミットスイッチがOFFのときには、リフタ27が下降していると判定する。
【0059】
したがって、制御部21は、リミットスイッチがONになってリフタ27が上昇しているときには搬送物を搭載していると判定し、リミットスイッチがOFFになってリフタ27が下降しているときには搬送物を搭載していないと判定する。
【0060】
この結果、制御部21は、リミットスイッチがONのときには、搬送物をステーション1へ搬入するために、AMR2が入退出口120へ進入すると判定する。一方、制御部21は、リミットスイッチがOFFのときには、搬送物をステーション1から搬出するために、AMR2が入退出口120へ進入すると判定する。
【0061】
ステップS14において、制御部21は、AMR2を入退出口120へ前進して進入させることを決定する。
図10Aに示すように、AMR2がパレット5を搬入するとき、すなわちパレット5を搭載しているときには、ボギー機構を備えている前方からAMR2をステーション1へ進入させる。これにより、AMR2は、パレット5を搭載してステーション1へ進入するときに、異物を踏むことがあっても常に安定した駆動力を得ることができる。
【0062】
尚、AMR2は、停車スペースPsに停止した後、
図10Bに示すように、リフタ27を下降させてパレット5を支持部110に載置し、入退出口120から退出する。このとき、AMR2は、後退して退出するが、すでにパレット5を搭載していないので、ボギー機構を備えていない後方へ走行しても支障なく走行することができる。
【0063】
ステップS15において、制御部21は、AMR2を入退出口120へ後退して進入させることを決定する。
図11Aに示すように、AMR2は、後退して入退出口120へ進入するが、パレット5を搭載していないので、ボギー機構を備えていない後方へ走行しても支障なく走行することができる。
【0064】
尚、AMR2は、停車スペースPsに停止した後、
図11Bに示すように、リフタ27を上昇させてパレット5を搭載し、入退出口120から退出する。このとき、AMR2は、ボギー機構を備えている前方へ走行してステーション1を退出するので、異物を踏むことがあっても常に安定した駆動力を得ることができる。
【0065】
ステップS16において、制御部21は、前側のセンサ23aまたは後側のセンサ23bを利用して、第1及び第2進入用反射板140、141を検索する。
【0066】
ステップS17において、制御部21は、センサ23aまたはセンサ23bによって検出された第1及び第2進入用反射板140、141の情報から、AMR2に対する第1及び第2進入用反射板140、141の相対位置を把握する。センサ23a、23bによって検出される点群データより、AMR2(センサ23a、23b)から第1及び第2進入用反射板140、141までの距離、及びAMR2(センサ23a、23b)からみた第1及び第2進入用反射板140、141の角度がそれぞれ把握される。制御部21は、距離及び角度から第1及び第2進入用反射板140、141の相対位置関係を把握する。
【0067】
ステップS18において、制御部21は、第1及び第2進入用反射板140、141の相対位置関係から、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を算出する。
図12に示すように、制御部21は、AMR2の中心Ctが、第1及び第2進入用反射板140、141の間に規定される基準位置Rp、例えば中央位置と一致するように、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を算出する。そして、制御部21は、算出した駆動量に応じて駆動モータ24a、24bを制御して、AMR2を前進または後退させる。
【0068】
図7に示すステップS19において、制御部21は、AMR2がアプローチ位置Papに到達したか否かを判断する。
図12に示すように、アプローチ位置Papは、停車スペースPsの入退出口120から一定距離Laだけ手前に設定されている。
図7に示すように、AMR2がアプローチ位置Papに到達していないと判断した場合(S19:NO)、制御部21は、ステップS20、S21の処理を行った上で、ステップS19の処理を改めて行う。一方、AMR2がアプローチ位置Papに到達したと判断した場合(S19:YES)、制御部21は、後述するステップS22の処理を行う。
【0069】
ステップS20において、制御部21は、AMR2を走行させながら、センサ23aまたはセンサ23bを利用して第1及び第2進入用反射板140、141の位置を確認する。そして、ステップS21において、制御部21は、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を修正する。そして、制御部21は、修正した駆動量に応じて駆動モータ24a、24bを制御して、AMR2を前進または後退させる。
【0070】
図12に示すように、基準位置RpよりもAMR2が右側にずれている場合、制御部21は、右側の駆動モータ24bの駆動量が左側の駆動モータ24aの駆動量よりも大きくなるように、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を修正する。一方、基準位置RpよりもAMR2が左側にずれている場合、制御部21は、左側の駆動モータ24aの駆動量が右側の駆動モータ24bの駆動量よりも大きくなるように、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を修正する。また、制御部21は、基準位置RpとAMR2とが概ね一致している場合には、左右の駆動モータ24a、24bの駆動量が一致するように、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を修正する。
【0071】
このように、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を修正しながら、AMR2がアプローチ位置Papへと近づくことで、AMR2の中心Ctを基準位置Rpへと近づけることができる。AMR2は、一対の駆動輪25a、25bを転舵させるのではなく、駆動輪25a、25bの回転速度の差に応じて進路を切り替えることができる。そのため、アプローチ位置Papへと近づく際、AMR2は、左右へと蛇行しながら前進することとなる。
【0072】
図8に示すステップS22において、制御部21は、センサ23aまたはセンサ23bを利用して、ステーション1の左壁130を検索する。ステップS23において、制御部21は、ステーション1の左壁130が検索されたか否かを判断する。左壁130が検索されない場合(S23:NO)、制御部21は、ステップS24の処理を行った上で、ステップS23の処理を改めて行う。一方、左壁130が検索された場合(S23:YES)、制御部21は、ステップS25の処理を行う。
【0073】
ステップS24において、制御部21は、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を算出して、AMR2を前進または後退させる。センサ23a、23bによって第1及び第2進入用反射板140、141が検索できる範囲にAMR2がいる場合、制御部21は、第1及び第2進入用反射板140、141の相対位置関係に基づいて一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を算出する。一方、
図12に示すように、AMR2が前進または後退することで、センサ23aまたはセンサ23bによって第1及び第2進入用反射板140、141が検索できなくなると、制御部21は、AMR2が直進するように、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を算出する。
【0074】
図8に示すステップS25において、制御部21は、左壁130の情報に基づいて、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を算出する。
図13に示すように、制御部21は、AMR2と左壁130との距離dswが、予め定められた基準値となるように一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を算出する。そして、制御部21は、算出した駆動量に応じて駆動モータ24a、24bを制御して、AMR2を前進または後退させる。
【0075】
図8に示すステップS26において、制御部21は、センサ23aまたはセンサ23bを利用して停止用反射板145を検索し、センサ23aまたはセンサ23bによって停止用反射板145が検索されたか否かを判断する。停止用反射板145が検索されない場合(S26:NO)、制御部21は、ステップS27、S28の処理を行った上で、ステップS26の処理を改めて行う。一方、停止用反射板145が検索された場合(S26:YES)、制御部21は、ステップS29の処理を行う。
【0076】
ステップS27において、制御部21は、AMR2を走行させながら、センサ23aまたはセンサ23bを利用して左壁130までの距離dswを確認する。そして、ステップS28において、制御部21は、AMR2と左壁130との距離dswが基準値となるように、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を修正する。
【0077】
図13に示すように、AMR2と左壁130との距離dswが基準値よりも大きい場合、AMR2は、距離dswが基準値に近づくように、左壁130に向かうような進路を取りながら走行する。そして、距離dswが基準値に近づいていくに連れ、AMR2の向きは、前後方向と平行に近づいていく。
【0078】
図8に示すステップS29において、制御部21は、AMR2からみた停止用反射板145の位置が適正範囲にあるか否かを判断する。
図13に示すように、AMR2から停止用反射板145までの距離dm、及びAMR2からみた停止用反射板145の角度θcが、センサ23aまたはセンサ23bによって検出される。制御部21は、距離dmが予め定められた判定距離以下になっており、且つ、角度θcが予め定められた判定角度以上になった場合に、停止用反射板145の位置が適正範囲にあると判断する。
【0079】
停止用反射板145の位置が適正範囲にない場合(S29:NO)、制御部21は、ステップS30、S31の処理を行った上で、ステップS29の処理を改めて行う。一方、停止用反射板145の位置が適正範囲にある場合(S29:YES)、制御部21は、ステップS32の処理を行う。
【0080】
ステップS30において、制御部21は、AMR2を走行させながら、センサ23aまたはセンサ23bを利用して停止用反射板145の位置を確認する。そして、ステップS31において、制御部21は、停止用反射板145の位置が適正範囲内になるように、一対の駆動モータ24a、24bの駆動量を修正する。
【0081】
ステップS32において、制御部21は、一対の駆動モータ24a、24bを停止させ、AMR2の走行を停止させる。こうして、AMR2が、停車スペースPsの規定の位置に規定の向きで停止すると、本実施形態に係るステーション進入処理は終了する。
【0082】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る搬送システムでは、AMR2が搬送物をステーション1へ搬入するために入退出口120へ進入するときには、入退出口120へ前進して進入し、搬送物をステーション1から搬出するために入退出口120へ進入するときには、入退出口120へ後退して進入する。これにより、搬送物を搭載しているときにはAMR2は必ず前進するので、ボギー機構が前方側のみに設けられていても、搬送物を搭載しているときに常に安定した駆動力を得ることができる。また、後方側にボギー機構を設ける必要がないので、部品点数の増加によるコストの増加を防止することもできる。
【0083】
また、本実施形態に係る搬送システムでは、AMR2は、搬送物を搭載しているか否かを判定し、搬送物を搭載している場合には、搬送物をステーション1へ搬入するために入退出口120へ進入すると判断して、入退出口120へ前進して進入し、搬送物を搭載していない場合には、ステーション1から搬送物を搬出するために入退出口120へ進入すると判断して、入退出口120へ後退して進入する。これにより、AMR2が搬送物をステーション1へ搬入するのか、搬出するのかを正確に判断することができる。
【0084】
さらに、本実施形態に係る搬送システムでは、AMR2に搬送物が載置されて上下に昇降するリフタ27を備え、搬送物が載置されているときにはリフタ27は上昇し、搬送物が載置されていないときにはリフタ27は下降し、リフタ27が上昇しているときには搬送物を搭載していると判定し、リフタ27が下降しているときには搬送物を搭載していないと判定する。これにより、リフタ27の上昇または下降によって、AMR2が搬送物を搭載しているか否かを正確に判断することができる。
【0085】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0086】
図14に示すように、本実施形態に係るAMR2は、支持部110に載置された搬送物を検出する搬送物検出センサ50を備えたことが第1実施形態と相違している。
【0087】
ステーション1は、入退出口120から進入したAMR2が停車する停車スペースPsの上方にパレット5を載置する支持部110を備えている。支持部110に載置されたパレット5は、
図14に示すように入退出口120の上部に位置しているので、搬送物検出センサ50でパレット5を検出することができる。そこで、制御部21は、搬送物検出センサ50で支持部110に載置された搬送物が検出されたか否かを判定する。
【0088】
そして、制御部21は、搬送物検出センサ50で支持部110に載置された搬送物が検出されなかった場合には、AMR2に搭載された搬送物をステーション1へ搬入するために入退出口120へ進入すると判断して、入退出口120へ前進して進入する。一方、制御部21は、搬送物検出センサ50で支持部110に載置された搬送物が検出された場合には、支持部110に載置された搬送物をステーション1から搬出するために入退出口120へ進入すると判断して、入退出口120へ後退して進入する。
【0089】
搬送物検出センサ50は、AMR2の前方と後方に設置され、AMR2の前方または後方の物体を検出するセンサであり、例えばステレオカメラやLiDAR、TOFセンサ等である。また、支持部110に載置されたパレット5を検出できるように、センサ23a、23bを設定すれば、センサ23a、23bを搬送物検出センサ50として用いてもよい。
【0090】
[ステーション進入処理]
次に、本実施形態に係るAMR2によるステーション進入処理を説明する。本実施形態では、
図7のステップS13~S15の処理が第1実施形態と相違しており、その他のステップは第1実施形態と同一である。そこで、ステップS13~S15以外のステップについては詳細な説明は省略する。
【0091】
図7に示すステップS13において、制御部21は、搬送物をステーション1へ搬入するために、AMR2が入退出口120へ進入するのか否かを判定する。そして、搬送物をステーション1へ搬入するために入退出口120へ進入する場合(S13:YES)、ステップS14へ進む。一方、搬送物をステーション1へ搬入するために、AMR2が入退出口120へ進入するのではない場合、すなわち搬送物をステーション1から搬出するために、AMR2が入退出口120へ進入する場合(S13:NO)、ステップS15へ進む。
【0092】
ここで、AMR2が搬送物を搬入するのか搬出するのかの判断方法として、本実施形態では、搬送物検出センサ50で支持部110に載置された搬送物が検出されたか否かで判定する。具体的に、制御部21は、搬送物検出センサ50で支持部110に載置されたパレット5が検出されたか否かを判定し、支持部110に載置されたパレット5が検出されなかった場合には、AMR2に搭載された搬送物をステーション1へ搬入するために入退出口120へ進入すると判断する。一方、搬送物検出センサ50で支持部110に載置されたパレット5が検出された場合には、支持部110に載置されたパレット5をステーション1から搬出するために入退出口120へ進入すると判断する。
【0093】
ステップS14において、制御部21は、AMR2を入退出口120へ前進して進入させることを決定する。
図10Aに示すように、搬送物検出センサ50で支持部110に載置されたパレット5が検出されなかったときは、AMR2が搬送物を搭載して搬入するときなので、ボギー機構を備えている前方からAMR2をステーション1へ進入させる。これにより、AMR2は、搬送物を搭載してステーション1へ進入するときに、異物を踏むことがあっても常に安定した駆動力を得ることができる。
【0094】
尚、AMR2は、停車スペースPsに停止した後、
図10Bに示すように、リフタ27を下降させてパレット5を支持部110に載置し、入退出口120から退出する。このとき、AMR2は、後退して退出するが、すでに搬送物を搭載していないので、ボギー機構を備えていない後方へ走行しても支障なく走行することができる。
【0095】
ステップS15において、制御部21は、AMR2を入退出口120へ後退して進入させることを決定する。
図11Aに示すように、搬送物検出センサ50で支持部110に載置されたパレット5が検出されたときには、AMR2は搬送物を搭載していないので、ボギー機構を備えていない後方へ走行しても支障なく走行することができる。
【0096】
尚、AMR2は、停車スペースPsに停止した後、
図11Bに示すように、リフタ27を上昇させてパレット5を搭載し、入退出口120から退出する。このとき、AMR2は、ボギー機構を備えている前方からステーション1を退出するので、異物を踏むことがあっても常に安定した駆動力を得ることができる。この後、ステップS16以降の処理を行って、本実施形態に係るステーション進入処理を終了する。
【0097】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る搬送システムでは、搬送物検出センサ50で支持部110に載置された搬送物が検出されたか否かを判定し、支持部110に載置された搬送物が検出されなかった場合には、AMR2に搭載された搬送物をステーション1へ搬入するために入退出口120へ進入すると判断して、AMR2は入退出口120へ前進して進入する。一方、支持部110に載置された搬送物が検出された場合には、支持部110に載置された搬送物をステーション1から搬出するために入退出口120へ進入すると判断して、AMR2は入退出口120へ後退して進入する。これにより、AMR2が搬送物をステーション1へ搬入するのか、搬出するのかを正確に判断することができる。
【0098】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0099】
1 ステーション
2 AMR(搬送車両)
5 パレット(搬送物)
7 第1加工機
8 第2加工機
21 制御部
22 無線通信部
23a、23b センサ
24a、24b 駆動モータ
25a、25b 駆動輪
26 リフタ駆動部
27 リフタ
29 地図記憶部
30a、30b、32a、32b 従動輪
34a、34b 連結部材
36a、36b 回動軸
50 搬送物検出センサ
100、101、102、103 脚部
110 支持部
120 入退出口
130 左壁(横壁(横ガイド))
132 右壁(横壁(横ガイド))
140 第1進入用反射板
141 第2進入用反射板
145 停止用反射板
200 車体
210 天板
Ct 中心
dm 停止用反射板までの距離
dsw 左壁までの距離
FW 進行方向
La 一定距離
Pap アプローチ位置
Ps 停車スペース
Psc スキャン位置
R1 回転方向
Rp 基準位置
θa1 反射範囲
θa2 反射範囲
θa3 反射範囲
θb1 検出範囲
θb2 検出範囲
θc 停止用反射板の角度