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特許7622175航跡確立装置、レーダ装置および目標検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】航跡確立装置、レーダ装置および目標検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/72 20060101AFI20250120BHJP
【FI】
G01S13/72
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023171359
(22)【出願日】2023-10-02
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-169936(JP,A)
【文献】特開2014-153088(JP,A)
【文献】特開2023-125647(JP,A)
【文献】特開2006-329771(JP,A)
【文献】特開2001-255368(JP,A)
【文献】特開2004-093533(JP,A)
【文献】特開2022-001864(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119081(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103678949(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナが受信した受信信号から目標とする移動物体の候補として検出する検出点を示すプロットデータを作成するプロットデータ作成部と、
前記プロットデータ作成部により作成したプロットデータを記憶装置に保存する保存部と、
前記移動物体が移動する場合に取り得る航跡を示す情報を含む想定目標情報を管理する情報管理部と、
前記プロットデータ作成部により作成したプロットデータの検出点と前記記憶装置に保存した過去のプロットデータの検出点とから候補となる複数の検出点を選出し、選出した候補となる複数の検出点のうち時系列に繋げた軌跡が、前記情報管理部から取得する前記想定目標情報が示す前記移動物体が移動する場合に取り得る航跡に沿った軌跡になる複数の検出点を前記移動物体の航跡として推定する航跡推定部と、
前記航跡推定部により前記移動物体の航跡として推定された複数の検出点が前記移動物体として検出する基準を満たす場合に前記移動物体を検出したことを出力する目標検出部と、
を有する航跡確立装置。
【請求項2】
前記プロットデータ作成部は、前記受信信号においてプロット検出用の閾値を超える振幅となる点を検出点とする、
請求項1に記載に航跡確立装置。
【請求項3】
前記想定目標情報は、対象位置に向かって前記移動物体が移動する場合に取り得る航跡を示す情報を含み、
前記目標検出部は、前記航跡推定部により前記移動物体の航跡として推定された複数の検出点から算出する前記対象位置への接近度が目標検出用の閾値を超えた場合に前記移動物体を検出したことを出力する、
請求項に記載に航跡確立装置。
【請求項4】
さらに、前記移動物体の航跡に関する学習結果に基づいて前記航跡推定部による航跡の推定結果から前記移動物体の航跡を選定し、選定した前記移動物体の航跡を前記目標検出部へ供給する航跡学習部を有する、
請求項1に記載に航跡確立装置。
【請求項5】
前記航跡推定部は、前記プロットデータ作成部が作成した現在のプロットデータにおける検出点を起点とし、前記起点とする検出点に対する時系列の相関に基づいて過去のプロットデータが示す検出点から候補となる複数の検出点を選出する、
請求項1に記載に航跡確立装置。
【請求項6】
前記航跡推定部は、前記起点とする検出点から過去のプロットデータごとに推定位置範囲を設定し、前記起点となる検出点と前記推定位置範囲内にある過去の検出点とを複数の検出点として選出する、
請求項に記載に航跡確立装置。
【請求項7】
前記情報管理部は、複数種類の移動物体ごとに移動物体が移動する場合に取り得る航跡を示す情報を含む想定目標情報を管理し、
前記航跡推定部は、選出した候補となる複数の検出点のうち時系列に繋げた軌跡が、複数種類の移動物体ごとの想定目標情報が示す航跡に沿った軌跡になる複数の検出点を複数種類の移動物体ごとに移動物体の航跡として推定し、
前記目標検出部は、複数種類の移動物体ごとに推定した航路の検出点から前記基準を満たす航路の検出点を検出し、検出した移動物体の種類を出力する、
請求項1乃至の何れか1項に記載に航跡確立装置。
【請求項8】
所定のスキャン範囲における電波を受信するアンテナと、
アンテナが受信した受信信号から目標とする移動物体の候補として検出する検出点を示すプロットデータを作成するプロットデータ作成部と、
前記プロットデータ作成部により作成したプロットデータを記憶装置に保存する保存部と、
前記移動物体が移動する場合に取り得る航跡を示す情報を含む想定目標情報を管理する情報管理部と、
前記プロットデータ作成部により作成したプロットデータの検出点と前記記憶装置に保存した過去のプロットデータの検出点とから候補となる複数の検出点を選出し、選出した候補となる複数の検出点のうち時系列に繋げた軌跡が、前記情報管理部から取得する前記想定目標情報が示す前記移動物体が移動する場合に取り得る航跡に沿った軌跡になる複数の検出点を前記移動物体の航跡として推定する航跡推定部と、
前記航跡推定部により前記移動物体の航跡として推定された複数の検出点が前記移動物体として検出する基準を満たす場合に前記移動物体を検出したことを出力する目標検出部と、
を有するレーダ装置。
【請求項9】
コンピュータに、
アンテナが受信した受信信号から目標とする移動物体の候補として検出する検出点を示すプロットデータを作成する処理と、
前記作成したプロットデータを記憶装置に保存する処理と、
前記移動物体が移動する場合に取り得る航跡を示す情報を含む想定目標情報を管理する処理と、
前記作成したプロットデータの検出点と前記記憶装置に保存した過去のプロットデータの検出点とから候補となる複数の検出点を選出し、選出した候補となる複数の検出点のうち時系列に繋げた軌跡が、前記想定目標情報が示す前記移動物体が移動する場合に取り得る航跡に沿った軌跡になる複数の検出点を前記移動物体の航跡として推定する処理と、
前記移動物体の航跡として推定された複数の検出点が前記移動物体として検出する基準を満たす場合に前記移動物体を検出したことを出力する処理と、
を実行させる目標検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、航跡確立装置、レーダ装置および目標検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠方から到来する飛翔体などの移動体(以下、目標とも称する)を探知するシステムとして電波を使用したレーダ装置がある。近年、目標の移動速度の高速化が進んでいるため、レーダ装置は、遠方で早期に探知することが必要となってきている。目標を遠方で早期に探知するために、レーダ装置は、大型化および高出力化などの基本性能の向上、低SNでの目標検出技術の研究、目標航跡の抽出技術の研究などが行われている。
【0003】
従来技術としては、複数回のフレームを1つの観測値として3次元または2次元の座標に配列し、目標とする点を検出する方法がある。しかしながら、上述した従来技術は、目標の速度が速い場合には複数回のフレームで目標を観測する間隔(周期)が長くなるため、目標の航跡として想定するのが難しくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-174004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みて為されたもので、目標を高精度に検出できる航跡確立装置、レーダ装置および目標検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、航跡確立装置は、プロットデータ作成部と保存部と情報管理部と航跡推定部と目標検出部とを有する。プロットデータ作成部は、アンテナが受信した受信信号から目標とする移動物体の候補として検出する検出点を示すプロットデータを作成する。保存部は、プロットデータ作成部により作成したプロットデータを記憶装置に保存する。情報管理部は、記移動物体が移動する場合に取り得る航跡を示す情報を含む想定目標情報を管理する。航跡推定部は、プロットデータ作成部により作成したプロットデータの検出点と記憶装置に保存した過去のプロットデータの検出点とから候補となる複数の検出点を選出し、選出した候補となる複数の検出点のうち時系列に繋げた軌跡が、前記情報管理部から取得する前記想定目標情報が示す前記移動物体が移動する場合に取り得る航跡に沿った軌跡になる複数の検出点を前記移動物体の航跡として推定する。目標検出部は、航跡推定部により移動物体の航跡として推定された複数の検出点が移動物体として検出する基準を満たす場合に移動物体を検出したことを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る航跡確立装置を含むレーダ装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る航跡確立装置がスキャン範囲における検出点を示すプロットデータの例を模式的に示す図である。
図3図3は、実施形態に係る航跡確立装置がプロットデータとして作成する現フレームとN個の過去フレームとの例を模式的に示す図である。
図4図4は、実施形態に係る航跡確立装置が設定する現フレームの検出点と4個の過去フレームの検出点と過去フレームごとの推定位置範囲との例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る航跡確立装置が分類された検出点群から航跡として推定する検出点群を選出する例を説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係る航跡確立装置による目標検出までの動作例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る航跡確立装置12を含むレーダ装置1の構成例を示すブロック図である。
レーダ装置1は、飛翔体、航空機又は無人機などの飛行体を含む移動物体(以下、目標と称する)を電波によって探知する装置である。レーダ装置1は、電波を用いて所定の範囲(スキャン範囲)をスキャン(走査)することによりスキャン範囲に存在する物体を探知する。本実施形態に係るレーダ装置1は、所定のレーダ位置に対して接近してくる目標を探知するものとする。具体例としては、レーダ装置1は、特定の施設(対象施設)又は対象施設の周辺にレーダ位置を設定することにより対象施設に接近する物体である目標を探知する。
【0009】
図1に示す構成例において、レーダ装置1は、アンテナ11と航跡確立装置12とを有する。レーダ装置1は、アンテナ11が受信した信号を航跡確立装置12が取得する構成を備えるものであれば良い。レーダ装置1は、アンテナ11と航跡確立装置12とを一体的に構成したものであって良いし、アンテナ11と航跡確立装置12とを離れた場所に設置した構成であっても良い。
【0010】
さらに、レーダ装置1は、アンテナ11をUAV(無人機)などの飛行体(移動物体)に設置し、航跡確立装置12がアンテナ11から受信信号を取得する構成としても良い。また、レーダ装置1は、アンテナ11と航跡確立装置12とを飛行体などの移動物体に設置し、航跡確立装置12が所定位置に設けた外部装置に目標の検出結果などの情報を出力する構成としても良い。
【0011】
アンテナ11は、電波を送受信する。アンテナ11は、目標を探知するための電波を発信し、発信した電波の反射波を受信する。アンテナ11は、所定のスキャン範囲に電波を送出する構成を備える。スキャン範囲に存在する物体は、アンテナ11から送出された電波を反射する。アンテナ11は、スキャン範囲に存在する物体で反射された反射波を含む電波を受信する。
【0012】
すなわち、アンテナ11は、1回のスキャン(走査)動作で所定のスキャン範囲に存在する物体からの反射波を含む電波を受信信号として受信する。アンテナ11は、スキャン範囲をスキャンした結果である受信信号を航跡確立装置12へ出力する。アンテナ11は、所定の間隔ごとにスキャン動作を実行することにより所定間隔でスキャン範囲をスキャンした受信信号を航跡確立装置12へ出力する。
【0013】
航跡確立装置12は、アンテナ11が受信した電波である受信信号を取得する。航跡確立装置12は、所定の間隔でスキャン範囲をスキャンした結果である受信信号を取得する。航跡確立装置12は、アンテナ11からの受信信号において移動物体らしい検出点(プロット)を検出する。航跡確立装置12は、1スキャン(フレーム)ごとの検出点を示すプロットデータを作成する。ここで、1回のスキャンを1フレームとも称し、1回のスキャンで得られた受信信号から作成するプロットデータを1フレーム分のプロットデータとも称するものとする。
【0014】
航跡確立装置12は、複数スキャン(フレーム)のプロットデータから各検出点の航跡(軌跡)を推定する。航跡確立装置12は、フレーム間の時間相関に基づいて複数の過去フレームにおける検出点からノイズとなる検出点を排除し、ノイズとなる検出点を排除した航跡推定の対象とする検出点を分類した検出点群の航跡に基づいて検出点が探知すべき目標であるか否かを判定する。航跡確立装置12は、推定した航跡によって検出点が目標であると判定した場合に目標が検出されたことを出力する。
【0015】
航跡確立装置12は、プロセッサ、メモリおよびインターフェースを備えるコンピュータなどで構成される。航跡確立装置12としてのコンピュータは、プロセッサがメモリに記憶したプログラムを実行することにより種々の処理を実行する。例えば、航跡確立装置12としてのコンピュータは、後述する処理を実行するための目標検出プログラムをメモリにインストールし、プロセッサが目標検出プログラムを実行することにより後述する動作を実現するようにしても良い。
【0016】
航跡確立装置12は、後述する時系列のプロットデータを記憶するメモリおよび設定情報を記憶するメモリなどの記憶装置を有する。航跡確立装置12は、アンテナ11から受信信号を取得するインターフェースを備える。また、航跡確立装置12は、アンテナ11からの受信信号を処理する1又は複数の回路を備えるものであっても良い。
【0017】
図1に示す構成例において、航跡確立装置12は、インターフェース部120、プロットデータ作成部121、プロットデータ保存部(保存部)122、航跡推定部123、情報管理部124、航跡学習部125、および、航跡判定部(目標検出部)126などの機能を有する。
インターフェース部120、プロットデータ作成部121、プロットデータ保存部122、航跡推定部123、情報管理部124、航跡学習部125、および、航跡判定部126は、航跡確立装置12としてのプロセッサ、メモリおよびインターフェースを備えるコンピュータがプログラムを実行することにより実現される機能である。
なお、インターフェース部120、プロットデータ作成部121、プロットデータ保存部122、航跡推定部123、情報管理部124、航跡学習部125、および、航跡判定部126の一部又は全部の機能は、回路などのハードウエアによって実現されるようにしても良い。
【0018】
インターフェース部120は、アンテナ11が受信した受信信号をアンテナ11から取得する。インターフェース部120は、アンテナ11の受信信号をプロットデータ作成部121へ供給する。インターフェース部120は、アンテナ11から取得する受信信号を処理する信号回路を含むものであっても良い。
【0019】
プロットデータ作成部121は、インターフェース部120を介して3次元空間における位置を示す情報と電波の振幅とを示すアンテナ11の受信信号を取得する。プロットデータ作成部121は、インターフェース部120により取得したアンテナ11の受信信号に基づいてスキャン範囲における目標の候補とする検出点を検出(抽出)する。プロットデータ作成部121は、高速で接近する移動物体や遠方の移動物体などの目標も検出するため、ノイズの誤検出を許容した条件で目標の候補とする検出点を検出する。
【0020】
プロットデータ作成部121は、1回のスキャン(1フレーム)ごとにスキャン範囲において検出した検出点を示すプロットデータを作成する。例えば、プロットデータ作成部121は、距離、方位角、仰角で示されるスキャン範囲とする空間の各点における受信信号の振幅値を示す振幅のプロットデータを生成する。プロットデータ作成部121は、振幅のプロットデータが示すスキャン範囲における各点の振幅値とプロット検出用の閾値(スレッショルド)とを比較する。
【0021】
プロット検出用の閾値は、アンテナ11が受信する電波(受信信号)から目標の候補となる検出点を検出するために設定される。本実施形態に係る航跡確立装置12では、高速で接近する移動物体や遠方の移動物体などのSN比が小さい点も目標の候補として検出するために、ノイズの誤検出を許容した値がプロット検出用の閾値として設定される。すなわち、航跡確立装置12のプロットデータ作成部121は、ノイズである検出点が含まれることも許容しつつ、高速で接近する移動物体や遠方の移動物体などのSN比が小さい目標の候補を検出できるようなプロット検出用の閾値を用いて検出点を検出する。
【0022】
図2は、1回のスキャン動作により得られるスキャン範囲における検出点の検出例を示すプロットデータの例を模式的に示す図である。
プロットデータ作成部121は、基準位置とするレーダ位置R(図4参照)を基準とした距離、方位角および仰角によって定義する3次元空間であるスキャン範囲における各点が目標の候補とする検出点であるか否か(検出の有無)を判定する。プロットデータ作成部121は、スキャン範囲における各点の振幅値とプロット検出用の閾値とを比較することにより各点が目標の候補とする検出点であるか否かを判定する。
【0023】
例えば、プロットデータ作成部121は、スキャン範囲において振幅がプロット検出用の閾値を超える点を検出点として検出する。プロット検出用の閾値は、上述したように、SN比が小さい目標の候補となる検出点を検出するためにノイズの誤検出を許容した値とする。プロットデータ作成部121は、1回のスキャン動作によるスキャン範囲において検出した全ての検出点についての距離、方位角、仰角および振幅を示すデータを1フレーム分のプロットデータとする。
【0024】
すなわち、プロットデータ作成部121は、プロット検出用の閾値を用いて検出点を検出すると、検出点の検出結果に基づいてスキャン範囲における検出点を示すデータをプロットデータとして作成する。プロットデータ作成部121は、作成したプロットデータをプロットデータ保存部122と航跡推定部123とに供給する。
【0025】
プロットデータ保存部122は、プロットデータ作成部121が作成したプロットデータを時系列順に航跡確立装置12が備える記憶装置(メモリ)に保存する。例えば、プロットデータ保存部122は、プロットデータ作成部121が作成する1スキャンごとのプロットデータ(フレーム)に時系列の順番を示す識別情報(例えばID)を付与して記憶装置に記憶する。
【0026】
航跡推定部123は、複数の時系列順のプロットデータに基づいて目標の候補である検出点の航跡を推定する航跡推定処理を実行する。航跡推定部123は、プロットデータ作成部121が作成したプロットデータ(現フレーム)を取得する。また、航跡推定部123は、プロットデータ保存部122が保存した時系列順の過去のプロットデータ(過去フレーム)を取得する。航跡推定部123は、プロットデータ作成部121が作成した現在のプロットデータとプロットデータ保存部122が保存した時系列順の過去のプロットデータとに基づいて検出点の航跡を推定する。
【0027】
図3は、複数フレームのプロットデータが示す検出点を模式的に示す図である。
図3では、プロットデータ作成部121が作成した現在のプロットデータ(現フレーム)における検出点とプロットデータ保存部122が保存したN個の過去のプロットデータ(過去フレーム)における検出点との例を模式的に表す。
【0028】
図3に示す例において、N個の過去フレームは、現フレームからの時系列順に、「過去1フレーム」、…、「過去Nフレーム」とする。例えば、「過去1フレーム」は、時系列の順番で並べた場合に現フレームの直近(現フレームからの時系列順が「1」)となる過去のプロットデータ(過去フレーム)であり、「過去Nフレーム」は、時系列の順番で並べた場合に現フレームからの時系列順が「N」となる過去のプロットデータ(過去フレーム)である。
【0029】
図3に示す例では、現フレームおよび過去フレームにおいて、黒点で示す検出点が検出されたものとする。各フレームにおける検出点を1つの座標に配列することにより時系列の検出点を示すデータが得られる。航跡推定部123は、時系列で得られる複数の検出点をフレーム間の時間相関に基づいてノイズと判定される検出点を排除し、ノイズを排除した検出点による航跡を推定する。
【0030】
本実施形態に係る航跡確立装置12の航跡推定部123は、起点となるフレーム(現フレーム)における検出点とそれよりも過去の複数フレームにおける検出点とを時系列の時間相関に基づく距離によって航跡推定の対象とする検出点を抽出する。言い換えると、航跡推定部123は、目標の想定速度と起点とするフレームからの時系列順とに基づいてノイズとなる検出点を排除するための距離を設定する。
【0031】
すなわち、航跡推定部123は、現フレームにおける検出点を起点とし、複数の過去フレームにおける検出点を時間相関に基づく距離によって航跡推定の対象とする検出点とノイズとして排除する検出点とに選別する。例えば、航跡推定部123は、時系列の過去フレームごとに「距離=目標の想定速度×現フレームからの時系列順(N)」により距離を設定する。航跡推定部123は、目標の速度変化を想定した下限と上限とを設定し、過去フレームごとに速度変化の下限(目標の想定速度の下限)に基づく距離と上限(目標の想定速度の上限)に基づく距離との間となる推定位置範囲を設定する。
【0032】
また、実施形態に係る航跡確立装置12はレーダ位置Rに向かって移動する目標を検出するため、航跡推定部123は、現フレームの検出点よりもレーダ位置R側の領域を推定位置範囲外とする。航跡推定部123は、過去のフレームごとに推定位置範囲を設定すると、過去のフレームにおける検出点のうち推定位置範囲内に存在する検出点を航跡として推定する対象とする。
【0033】
航跡推定部123は、航跡を推定する場合、過去のフレーム数(n)と検出点の最小値(MinPts)とを設定する。航跡推定部123は、n個の過去フレームにおける検出点から航跡を推定する対象とする検出点を抽出するために、過去フレームごとに推定位置範囲内に検出点が存在するか否かを確認する。航跡推定部123は、推定位置範囲内に検出点があるフレーム数がMinPts以上となれば、それらの検出点群を航跡として推定する。
【0034】
本実施形態においては、航跡として推定する時系列の複数の検出点を選出する処理をクラスタリングと称するものとする。航跡推定部123によるクラスタリングに用いる過去のフレーム数nと検出点の最小値MinPtsとは、設定記憶部123aに記憶される。クラスタリングに用いる過去のフレーム数nと検出点の最小値MinPtsとは、当該レーダ装置1の運用に応じて設定可能である。例えば、n=3、かつ、MinPts=3とした場合、現フレームと3個の過去フレームとの合計4個のフレームにおける検出点をクラスタリングの対象とし、推定位置範囲内になる検出点が3フレームあれば、推定位置範囲内にないフレーム(非検出のフレーム)が1つあってもクラスタリングされる。
【0035】
図4は、現フレームにおける検出点とN個の過去フレームにおける検出点とによるクラスタリングの例を説明するための図である。
図4に示す例において、検出点P0は、現フレームにおいて検出された点であり、クラスタリングの起点となる点であるものとする。検出点以外の各検出点P11、…、P43は、現フレームより過去のフレームにおける検出点である。
【0036】
図4に示す例において、検出点P11、P12、P13は、現フレームから時系列順で1番目(直近)の過去フレーム(過去1フレーム)において検出された点である。検出点P21、P22は、現フレームから時系列順で2番目の過去フレーム(過去2フレーム)において検出された点である。検出点P31、P32は、現フレームから時系列順で3番目の過去フレーム(過去3フレーム)において検出された点である。検出点P41、P42、P43は、現フレームから時系列順で4番目の過去フレーム(過去4フレーム)において検出された点である。
【0037】
航跡推定部123は、目標の想定速度に対する下限および上限を設定し、過去フレームごとに検出点P0を起点とした推定位置範囲G1、G2、G3、G4を設定する。推定位置範囲GN(G1、G2、G3、G4)は、検出点P0を起点として、レーダ位置Rよりも遠い側に設定され、現フレームからの時系列順(N)に対応した距離(想定速度×N)に基づいて設定される。
【0038】
例えば、推定位置範囲G1は、過去1フレームに対応した距離(想定速度×1)に基づいて設定される。推定位置範囲G1は、検出点P0を起点とし、目標の想定速度の下限から算出する距離を示すライン(半円)と目標の想定速度の上限から算出する距離を示すライン(半円)とに囲まれた領域である。推定位置範囲G2は、過去2フレームに対応した距離(想定速度×2)に基づいて設定される。推定位置範囲G2は、検出点P0を起点とし、目標の想定速度の下限×2で算出する距離を示すライン(半円)と目標の想定速度の上限×2で算出する距離を示すライン(半円)とに囲まれた領域である。
【0039】
推定位置範囲G3は、過去3フレームに対応した距離(想定速度×3)に基づいて設定される。推定位置範囲G3は、検出点P0を起点とし、目標の想定速度の下限×3で算出する距離を示すライン(半円)と目標の想定速度の上限×3で算出する距離を示すライン(半円)とに囲まれた領域である。推定位置範囲G4は、過去4フレームに対応した距離(想定速度×4)に基づいて設定される。推定位置範囲G4は、検出点P0を起点とし、目標の想定速度の下限×3で算出する距離を示すライン(半円)と目標の想定速度の上限×3で算出する距離を示すライン(半円)とに囲まれた領域である。
【0040】
航跡推定部123は、起点とする検出点POの現フレームから時系列で1番目の過去のフレーム(過去1フレーム)における各検出点P11、P12、P13が推定位置範囲G1内にあるか否かを判定する。図4に示す例では、検出点P11、P12が推定位置範囲G1内に存在し、検出点P13が推定位置範囲G1の外にある。この結果、航跡推定部123は、過去1フレームにおいて、検出点P11、P12を航跡推定の対象とし、検出点P13を航跡推定の対象外とする。
【0041】
航跡推定部123は、現フレームから時系列で2番目の過去のフレーム(過去2フレーム)における検出点P21、P22が推定位置範囲G2内にあるか否かを判定する。図4に示す例では、検出点P21、P22が推定位置範囲G2内に存在している。この結果、航跡推定部123は、過去2フレームにおける検出点P21、P22を航跡推定の対象とする。
【0042】
航跡推定部123は、現フレームから時系列で3番目の過去のフレーム(過去3フレーム)における検出点P31、P32が推定位置範囲G3内にあるか否かを判定する。図4に示す例では、検出点P31、P32が推定位置範囲G3内に存在している。この結果、航跡推定部123は、過去3フレームにおける検出点P31、P32を航跡推定の対象とする。
【0043】
航跡推定部123は、現フレームから時系列で4番目の過去のフレーム(過去4フレーム)における検出点P41、P42、P43が推定位置範囲G4内にあるか否かを判定する。図4に示す例では、検出点P41、P42が推定位置範囲G4内に存在し、検出点P42、P43が推定位置範囲G4外にある。この結果、航跡推定部123は、過去4フレームにおける検出点P41、P42を航跡推定の対象とし、検出点P43を航跡推定の対象外とする。
【0044】
航跡推定部123は、航跡推定の対象として検出点P11、P12、P21、P22、P31、P32、P41、P42を抽出すると、それらの検出点を航跡として推定するための検出点群に分類(グループ分け)する処理を実行する。すなわち、航跡推定部123は、クラスタリングによって検出点P11、P21、P22、P31、P41、P42を時系列順に検出点P0を含むグループに分類する。例えば、航跡推定部123は、各フレーム間における検出点の位置関係に応じて検出点P0から時系列順に繋がる過去フレームの検出点を選出する。
【0045】
図4に示す例によれば、航跡推定部123は、現フレームの検出点P0と過去1フレームの検出点P11との位置関係から推定される移動速度や移動方向に基づいて検出点P11に連結する検出点を抽出する。図4に示す例では、航跡推定部123は、過去1フレームの検出点P11に対して過去2フレームの検出点P21を連結し、過去2フレームの検出点P22を別グループと判定する。また、航跡推定部123は、過去2フレームの検出点P21には過去3フレームの検出点P31を連結し、過去3フレームの検出点P31には過去4フレームの検出点P41を連結する。これらの結果、航跡推定部123は、検出点P0、P11、P21、P31、P41を含む1つのグループO1を選出する。
【0046】
また、航跡推定部123は、過去1フレームの検出点P11と連結しなかった過去2フレームの検出点P22を過去4フレームの検出点P42と連結し、検出点P22、P42をグループO2として選出する。
さらに、航跡推定部123は、過去1フレームの検出点P12を過去3フレームの検出点P32と連結し、検出点P12、P32をグループO3として選出する。
【0047】
航跡推定部123は、航跡推定の対象とする複数の検出点をグループ分けした検出点群を、航跡の推定結果とするか否かを情報管理部124が管理する情報(管理情報)に基づいて判定する。つまり、航跡推定部123は、グループ分けした検出点群から管理情報に基づいて航跡として推定される検出点群を選出し、航跡として推定される検出点群を示す情報を航跡の推定結果として航跡学習部125へ供給する。
【0048】
情報管理部124は、グループ分けされた複数の検出点を航跡として推定するか否かを判定するための情報を管理する。情報管理部124は、記憶装置に記憶した対象施設の位置(対象位置)を示す情報、および、想定する目標に関する情報(想定目標情報)などの情報を航跡推定のための管理情報として航跡推定部123へ供給する。想定目標情報は、目標が対象位置に向かって移動する場合の目標が取り得る航跡(想定される航跡)を示す情報を含む。想定目標情報としては、例えば、目標とする移動物体の移動速度や旋回角度(最大旋回角度)などの移動能力を示す情報を含む。
【0049】
図4に示す例によれば、航跡推定部123は、検出点P0、P11、P21、P31、P41からなるグループO1の検出点群と、検出点P22、P42からなるグループO2の検出点群と、検出点P12、P32からなるグループO3の検出点群と、がそれぞれ航跡の推定結果とすべきか否かを判定する。
【0050】
図5は、図4に示すようにグループ分けした検出点群を航跡として推定するか否かを説明するための図である。
図5に示すグループO1の検出点群は、図4に示す検出点P0、P11、P21、P31、P41に対応する。グループO1を構成する複数の検出点を時系列の順番に繋げると、検出点P0、P11、P21、P31、P41を順番に繋げた軌跡は、図5に示すように、対象位置に向かう航跡となる。従って、航跡推定部123は、グループO1を構成する検出点P0、P11、P21、P31、P41を目標らしい航跡として推定する。
【0051】
また、図5に示すグループO2の検出点群は、図4に示す検出点P22、P42に対応する。グループO2を構成する検出点P22、P42を時系列の順番に繋げた軌跡は、図5に示すように、対象位置とは異なる方向に移動する航跡となる。このため、航跡推定部123は、グループO2の検出点P22、P42からなる軌跡を目標の航跡ではないと判定する(航跡として推定しない)。
【0052】
また、図5に示すグループO3の検出点群は、図4に示す検出点P12、P32に対応する。グループO3を構成する検出点P12、P32を時系列の順番に繋げた軌跡は、図5に示すように、対象位置とは異なる方向に移動する航跡となる。このため、航跡推定部123は、グループO3の検出点P22、P42からなる軌跡も目標の航跡ではないと判定する(航跡として推定しない)。
【0053】
なお、図4および図5は、推定位置範囲Gの例を簡易的に2次元で表しているが、航跡推定部123は、検出点Pが3次元の位置として検出される場合には3次元の推定位置範囲Gを設定する。これにより、航跡推定部123は、3次元における検出点に対してもノイズとなる検出点を排除して分類した検出点を繋げた軌跡を目標の航跡として推定するか否かを判定することができる。
また、図5に示す例では、簡易的に2次元で示す検出点を繋げた軌跡が直線となる場合について説明したが、航跡として推定する軌跡は、2次元の直線だけでなく、3次元における曲線などであっても良い。航跡推定部123は、分類した複数の検出点を繋げた軌跡が3次元における曲線である場合も想定目標情報により特定される航跡と比較して目標の航跡として推定するか否かを判定するようにしても良い。
【0054】
航跡学習部125は、航跡推定部123より供給される航跡の推定結果から目標の航跡を選出する。また、航跡学習部125は、目標とする移動物体の航跡を事前に学習する。例えば、航跡学習部125は、実際に目標として検出した航跡を示す情報などを外部装置又は航跡判定部126から取得し、目標とする移動物体の航跡を学習する。航跡学習部125は、学習結果を保持し、学習結果に基づいて航跡推定部123による航跡の推定結果から目標の航跡を選出する。航跡学習部125は、学習結果に基づいて選出した目標の航跡を航跡判定部126へ供給する。
【0055】
航跡判定部126は、航跡学習部125によって目標の航跡として選出された検出点を目標として検出するか否かを判定する。航跡判定部126は、航跡学習部125が目標の航跡として選出した複数の検出点を目標として検出するか否かを判定する。航跡判定部126は、航跡として推定された検出点を目標として検出すると判定した場合、当該検出点を目標として検出したことを出力する。
【0056】
航跡判定部126は、目標の航跡として選出された検出点が目標であるか否かを判定するための判定条件(目標とする基準)を設定しておき、判定条件に基づいて選出された航跡が目標の航跡であるか否かを判定する。例えば、航跡判定部126は、目標の航跡として選出された各検出点の振幅に基づく検出確率の累積値が目標判定用の閾値(目標とする基準)を超えるか否かにより目標であるか否かを判定するようにしても良い。
【0057】
次に、実施形態に係る航跡確立装置12の動作の流れについて説明する。
図6は、実施形態に係る航跡確立装置12による目標検出までの動作例を説明するためのフローチャートである。
まず、レーダ装置1において、アンテナ11は、所定のスキャン間隔で所定のスキャン範囲をスキャンする。アンテナ11は、スキャン範囲をスキャンするごとに受信した電波を示す受信信号を航跡確立装置12へ供給する。
【0058】
航跡確立装置12は、インターフェース部120によりアンテナ11が受信した受信信号を取得する(ステップST11)。インターフェース部120がアンテナ11から取得する受信信号は、スキャン範囲を含む3次元空間における位置を示す情報と受信した電波の振幅とを示す信号であるものとする。航跡確立装置12において、インターフェース部120は、アンテナ11の受信信号をプロットデータ作成部121へ供給する。
【0059】
航跡確立装置12のプロットデータ作成部121は、インターフェース部120がアンテナ11から取得した受信信号に基づいて1スキャン分のプロットデータを作成する(ステップST12)。プロットデータ作成部121は、1回分のスキャンデータである受信信号からスキャン範囲における目標(移動物体)の候補とする検出点を検出し、スキャン範囲における検出点を示すプロットデータを作成する。
【0060】
例えば、プロットデータ作成部121は、距離、方位角、仰角で示されるスキャン範囲の各点における受信信号の振幅のうちプロット検出用の閾値を超える点を検出点として検出し、検出した検出点を示すプロットデータを作成する。ただし、検出点を検出するためのプロット検出用の閾値は、上述したように、低SNの点も目標の候補として検出するようにノイズの検出を含むことを許容する値に設定される。
【0061】
航跡確立装置12は、プロットデータ作成部が1スキャン分のプロットデータを作成すると、プロットデータ保存部122によりプロットデータ作成部121が作成したプロットデータを時系列順に記憶装置に保存する(ステップST13)。
【0062】
航跡確立装置12の航跡推定部123は、プロットデータ作成部が作成する1スキャン分のプロットデータ(現フレーム)とプロットデータ保存部122が保存する過去のプロットデータ(過去フレーム)とに基づいて航跡推定処理を実行する(ステップST14-18)。
【0063】
航跡推定部123は、プロットデータ作成部121が作成したプロットデータ(現フレーム)とプロットデータ保存部122が記憶装置に保存した時系列順の過去のプロットデータ(過去フレーム)とを取得する(ステップST14)。航跡推定部123は、現フレームからの時系列順にクラスタリングに用いるフレーム数(n個)の過去フレームを記憶装置から取得する。航跡推定部123は、現フレームとn個の過去フレームとを取得すると、現フレームの検出点と過去フレームの検出点とを1つの座標に配置する。
【0064】
航跡推定部123は、現フレームにおける検出点を起点とし、n個の過去フレームごとに推定位置範囲を設定する(ステップST15)。航跡推定部123は、目標の想定速度に対する速度変化によって目標の想定速度の下限値と上限値とを設定し、目標の想定速度の下限値と上限値とに基づく推定位置範囲を設定する。例えば、航跡推定部123は、現フレームから時系列順にN番目の過去フレームに対して起点からの距離を目標の想定速度(下限および上限)×Nとして推定する。従って、航跡推定部123は、N番目の過去フレームに対し、起点からの距離が想定速度の下限×Nから上限×Nまでとなる範囲を推定位置範囲に設定する。
【0065】
航跡推定部123は、過去フレームごとの推定位置範囲を設定すると、過去フレームごとの推定位置範囲を用いて航跡推定の対象とする検出点を抽出し、抽出した検出点を用いて航跡の候補となる複数の検出点を選出する(ステップST16)。
【0066】
航跡推定部123は、過去Nフレームにおける各検出点が過去Nフレームに対応する推定位置範囲内に存在するか否かを判定する。航跡推定部123は、過去Nフレームについて推定位置範囲内にある検出点を航跡推定の対象とする。航跡推定部123は、航跡推定の対象とする検出点を抽出すると、抽出した検出点を対象として時系列順に検出点をグループ分けすることにより航跡の候補となる複数の検出点を選出する。例えば、航跡推定部123は、対象位置を特定し、現フレームの検出点と過去のNフレームごとの各検出点との距離および相対距離を比較することにより対象位置に向かって移動する航跡の候補となる複数の検出点群を選出する。
【0067】
また、航跡推定部123は、情報管理部124から航跡を推定するために必要な情報を取得する(ステップS17)。航跡推定部123は、航跡を推定するために必要な情報として、対象位置の位置情報および想定目標情報などを取得する。航跡推定部123は、情報管理部124から取得する想定目標情報に基づいて目標が対象位置に向かって移動する場合に想定する目標の航跡を特定する。
【0068】
航跡推定部123は、情報管理部124からの情報から特定した想定する目標の航跡と航跡の候補として選出した複数の検出点とに基づいて航跡を推定する(ステップST19)。航跡推定部123は、航跡の候補として選出した複数の検出点を時系列で繋げた軌跡を作成する。航跡推定部123は、複数の検出点を時系列で結んだ軌跡と対象位置および想定目標情報に基づいて想定した目標の航跡とを比較する。航跡推定部123は、候補となる複数の検出点のうち時系列で繋げた軌跡が想定した目標の航跡に沿った軌跡となる複数の検出点を航跡として推定する。航跡推定部123は、航跡の推定結果を航跡学習部125へ供給する。
【0069】
航跡学習部125は、航跡推定部123より供給される航跡の推定結果から目標の航跡を選出する(ステップST19)。航跡学習部125は、事前に目標の検出結果などに基づいて目標の航跡を学習し、学習結果を保持している。航跡学習部125は、学習結果に基づいて航跡推定部123による航跡の推定結果から目標の航跡を選出する。航跡学習部125は、学習結果に基づいて選出した目標の航跡を航跡判定部126へ供給する。

航跡確立装置12の航跡判定部126は、航跡学習部125が選出した目標の航跡を得ると、目標の航跡として選出された検出点を目標として検出するか否かを判定する航跡確立処理(目標検出処理)を実行する(ステップST20-22)。
【0070】
航跡判定部126は、航跡学習部125が選出した目標の航跡となる検出点を目標として検出するか否かを判定するための接近度を算出する(ステップST20)。ここでは、航跡判定部126は、目標の航跡が対象位置に対して接近している場合に目標を検出したことを出力するものとする。例えば、対象位置にある施設に飛翔体や無人機などの移動物体(目標)が接近してきたことを検出することを想定する。この場合、航跡判定部126は、選出した軌跡で目標が移動する場合に対象位置に接近する度合を接近度(脅威度)として算出する。
【0071】
航跡判定部126は、目標の軌跡から算出する接近度に基づいて目標を検出するか否かを判定する(ステップST21)。例えば、航跡判定部126は、目標の軌跡から算出する接近度が目標検出用の閾値を超えたか否かにより目標を検出するか否かを判定する。航跡判定部126は、接近度が目標検出用の閾値を超えた場合には目標として検出し、接近度が目標検出用の閾値に達していない場合には目標として検出しないものとする。
【0072】
航跡判定部126は、目標として検出しない場合(ステップST21、NO)、上記ステップST11へ戻り、上述した処理を再度繰り返す。
航跡判定部126は、目標の航跡を目標として検出する場合(ステップS21、YES)、目標を検出したことを出力する(ステップST22)。例えば、航跡確立装置12は、目標が検出された場合に目標を検出したことを示す情報を表示装置に表示する。また、航跡確立装置12は、目標として検出された検出点を示す情報をスキャン範囲に存在する目標の位置として出力しても良い。また、航跡確立装置12は、目標と判定された検出点群からなる航跡を検出した目標の航跡として出力しても良い。
【0073】
以上のように、実施形態に係る航跡確立装置は、アンテナが受信した電波(受信信号)から目標の候補として検出する検出点を示すプロットデータを作成し、作成したプロットデータをメモリに保存し、作成したプロットデータが示す検出点と過去のプロットデータの検出点とから候補となる複数の検出点を選出し、時系列に繋げた軌跡が想定する目標の航跡に沿った軌跡になる複数の検出点を航跡として推定し、航跡として推定された検出点が目標であると判定した場合に目標を検出したことを出力する。
【0074】
これにより、実施形態に係る航跡確立装置によれば、アンテナがスキャン範囲を複数回スキャンした受信信号から作成する時系列のプロットデータが示す多数の検出点から航跡の候補となる検出点群を多数選出した場合であっても、目標の航跡として想定される軌跡となる検出点群を航跡の推定結果として得ることができる。また、実施形態に係る航跡確立装置によれば、低SNで目標の候補となる検出点を検出した場合であっても目標の航跡として推定される軌跡となる検出点群を航跡の推定結果として得ることができるため、目標が高速移動する移動物体などであっても遠方で検出することが可能となる。
【0075】
(変形例)
航跡確立装置12が検出する対象である目標とする移動物体は、飛翔体、無人機あるいは航空機などの種々の移動物体が想定される。目標となり得る移動物体は、機体の種類によって移動可能な速度(想定速度)や航跡が異なると考えられる。このため、航跡確立装置12を含むレーダ装置1は、複数種類の目標を検出できるようにしても良い。航跡確立装置12の変形例として、複数種類の目標に対して、目標の種類ごとに想定速度などに応じた推定位置範囲を設定する例について説明する。
【0076】
このような変形例に係る航跡確立装置12は、上述した構成を同様な構成で、情報管理部124が複数種類の目標ごとに目標想定情報を管理することにより実現できる。複数種類の目標を検出対象とする場合、航跡確立装置12は、複数種類の目標ごとに想定する目標の航跡を設定し、想定する目標の航跡に応じた航跡推定処理を各目標について実行すれば良い。
【0077】
また、航跡確立装置12は、複数種類の目標から検出した目標の種類を識別した場合には検出した目標がどの種類の目標であるかを示す情報を出力するようにしても良い。例えば、航跡確立装置12は、飛翔体を目標として検出した場合には飛翔体を検出したこと出力し、航空機を目標として検出した場合には航空機を検出したこと出力するようにしても良い。
【0078】
以上のように、実施形態の変形例に係る航跡確立装置は、複数種類の目標ごとに想定する目標の航跡を設定し、複数種類の目標ごとに設定した想定する目標の航跡に沿った軌跡となる検出点群を航跡として推定する。この結果、変形例として説明した航跡確立装置によれば、複数種類の目標についてそれぞれの目標に想定される航跡に基づいて各種の目標を検出することができる。
【0079】
なお、上記した各処理はいくつかのソフトウェアによって実行することが可能である。このため、上記処理の手順を実行するいくつかのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じてこれらプログラムを航跡確立装置としてのコンピュータにインストールして実行することで、上記処理を実現することができる。例えば、航跡確立装置を構成するコンピュータは、プログラムをネットワーク経由でダウンロードし、ダウンロードしたプログラムを記憶することで、プログラムをインストールするようにしても良い。また、航跡確立装置としてのコンピュータは、上記プログラムを各種の情報記憶媒体から読み取り、読み取ったプログラムを記憶することで、プログラムをインストールするようにしても良い。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1…レーダ装置、
11…アンテナ、
12…航跡確立装置、
120…インターフェース部、
121…プロットデータ作成部、
122…プロットデータ保存部(保存部)、
123…航跡推定部、
123a…設定記憶部、
124…情報管理部、
125…航跡学習部、
126…航跡判定部(目標検出部)、
P(P0、P11、…、P43)…検出点、
R…レーダ位置、
G(G1、…、G4)…推定位置範囲。
【要約】
【課題】 目標を精度良く検出できる航跡確立装置、レーダ装置および目標検出プログラムを提供する。
【解決手段】 実施形態によれば、航跡確立装置は、プロットデータ作成部と保存部と航跡推定部と目標検出部とを有する。プロットデータ作成部は、アンテナが受信した受信信号から目標の候補として検出する検出点を示すプロットデータを作成する。保存部は、プロットデータ作成部により作成したプロットデータを記憶装置に保存する。航跡推定部は、プロットデータ作成部により作成したプロットデータの検出点と記憶装置に保存した過去のプロットデータの検出点とから候補となる複数の検出点を選出し、選出した候補となる複数の検出点のうち時系列に繋げた軌跡が想定する目標の航跡に沿った軌跡になる複数の検出点を航跡として推定する。目標検出部は、航跡推定部により航跡として推定された複数の検出点が目標として検出する基準を満たす場合に目標を検出したことを出力する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6