(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】フラックス塗布状態検査装置及びフラックス塗布状態検査方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20250120BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20250120BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
H05K3/34 512B
G01B11/02 H
G01N21/956 B
(21)【出願番号】P 2023184942
(22)【出願日】2023-10-27
【審査請求日】2024-12-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 健介
(72)【発明者】
【氏名】神戸 聡
(72)【発明者】
【氏名】今泉 汐理
(72)【発明者】
【氏名】奥田 学
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-047067(JP,A)
【文献】実開平04-105581(JP,U)
【文献】特開2008-235739(JP,A)
【文献】特開2003-152330(JP,A)
【文献】特開2007-085964(JP,A)
【文献】特開2008-084944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 - 3/46
G01B 11/02
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地部が緑色、赤色又は茶色の基板における電極に塗布された、透明又は半透明のフラックスを検査するためのフラックス塗布状態検査装置であって、
前記基板に対し、該基板の素地部の色と同色の可視光を、55°以上75°以下の入射角で照射可能な照射手段と、
光軸が前記基板と直交するようにして前記基板の上方に配置されており、前記照射手段から前記基板に照射されて前記基板を反射した光を撮像することで、前記電極が暗部となり、前記素地部が前記暗部よりも高輝度の明部となり、前記電極上にフラックスの存在する部分が前記暗部及び前記明部の各輝度の中間の輝度を有する中間輝度部となる輝度画像を取得可能な撮像手段と、
前記輝度画像における前記暗部及び前記中間輝度部を、前記基板における前記電極の存在領域を示す電極領域として特定する第一特定手段と、
前記電極領域内に位置する前記輝度画像の前記中間輝度部を、前記電極にフラックスが塗布された領域を示すフラックス塗布領域として特定すること、及び、前記電極領域内に位置する前記輝度画像の前記暗部を、前記電極が露出した領域を示す電極露出領域として特定すること、のうちの少なくとも一方が可能に構成された第二特定手段と、
前記第二特定手段により特定された前記フラックス塗布領域及び前記電極露出領域のうちの少なくとも一方に基づき、前記電極に対するフラックスの塗布状態に係る良否判定を行う判定手段とを備えることを特徴とするフラックス塗布状態検査装置。
【請求項2】
前記照射手段から前記基板に対し照射される光の入射角を60°以上75°以下に設定したことを特徴とする請求項1に記載のフラックス塗布状態検査装置。
【請求項3】
前記基板の素地部の色を入力するための入力手段と、
前記入力手段により入力された色に基づき、前記照射手段から照射される可視光の波長を自動的に制御可能な波長制御手段とを備え、
前記波長制御手段は、
前記入力手段により入力された色が緑色である場合、前記照射手段から照射される光の波長を520nm以上530nm以下に設定し、
前記入力手段により入力された色が赤色又は茶色である場合、前記照射手段から照射される光の波長を625nm以上635nm以下に設定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフラックス塗布状態検査装置。
【請求項4】
素地部が緑色、赤色又は茶色の基板における電極に塗布された、透明又は半透明のフラックスを検査するためのフラックス塗布状態検査方法であって、
前記基板に対し、該基板の素地部の色と同色の可視光を、55°以上75°以下の入射角で照射する照射工程と、
光軸が前記基板と直交するようにして前記基板の上方に配置された撮像手段によって、前記照射工程により前記基板に照射されて前記基板を反射した光を撮像することで、前記電極が暗部となり、前記素地部が前記暗部よりも高輝度の明部となり、前記電極上にフラックスの存在する部分が前記暗部及び前記明部の各輝度の中間の輝度を有する中間輝度部となる輝度画像を取得する撮像工程と、
前記輝度画像における前記暗部及び前記中間輝度部を、前記基板における前記電極の存在領域を示す電極領域として特定する第一特定工程と、
前記電極領域内に位置する前記輝度画像の前記中間輝度部を、前記電極にフラックスが塗布された領域を示すフラックス塗布領域として特定すること、及び、前記電極領域内に位置する前記輝度画像の前記暗部を、前記電極が露出した領域を示す電極露出領域として特定すること、のうちの少なくとも一方を行う第二特定工程と、
前記第二特定工程により特定された前記フラックス塗布領域及び前記電極露出領域のうちの少なくとも一方に基づき、前記電極に対するフラックスの塗布状態に係る良否判定を行う判定工程とを含むことを特徴とするフラックス塗布状態検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対するフラックスの塗布状態を検査するための検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板上に電子部品を実装する場合、まずプリント基板上に配設された電極上にクリーム半田が印刷される。次いで、クリーム半田が印刷されたプリント基板に対し、クリーム半田の粘性に基づいて電子部品が仮止めされる。そして、電子部品の仮止め後、プリント基板がリフロー炉へ導かれ、所定のリフロー工程を経ることで半田付けが行われる。
【0003】
また、小型化や実装不良の発生抑制などを図るべく、電子部品として、ボールグリッドアレイ(BGA)など、底面に、複数の球形状のバンプ(半田ボール)が規則的に配列された半導体パッケージが提案されている。電子部品としてこのような半導体パッケージをプリント基板に実装する場合には、電極に対しバンプを載置すればよく、クリーム半田を印刷する必要はない。しかしながら、プリント基板に対しこのような半導体パッケージを実装するにあたっては、電極上にバンプを載置する前に、半田の濡れ性を高めるべく、電極にフラックスを塗布しておくことが好ましい。
【0004】
ここで、電極に対するフラックスの塗布状態が不適切なものとなっていると、プリント基板に対する電子部品の接合強度が不十分なものとなる等の不具合が生じるおそれがある。そのため、プリント基板に電子部品を載置する前に、フラックスの塗布状態を予め検査しておくことが好ましい。フラックスの塗布状態を検査するための検査装置としては、撮像機により撮影されたフラックスと、パターン認識された電極(回路パターン)とを比較することによって、フラックスの塗布状態を検査するものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の検査装置において、塗布されたフラックスの面積は電極(印刷回路)の全面の面積よりも広くなるように設定されており、また、フラックスは不透明なものとされている。従って、撮影機によりフラックスを撮影することはできても、フラックスが塗布された電極(印刷回路)を撮影することはできない。それ故、検査においては、検査領域として、実際の電極ではなく、あくまでパターン認識された電極を利用して、すなわち、仮想的に推定された電極の存在領域を利用して、フラックスの塗布状態が検査される。従って、十分な検査精度を確保するためには、実際の電極の位置に合うよう適切な検査領域を設定する必要がある。
【0006】
ここで、実際の電極の位置に合う適切な検査領域を設定するための手法としては、例えば、プリント基板に設けられたマークを基準として用いる手法が考えられる(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-271165号公報
【文献】特開2005-286309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、マークを基準として用いる場合において、極めて小さなピッチで複数の電極が設けられるプリント基板(例えば、BGAなどの半導体パッケージが搭載されるプリント基板)に係る検査を行うときには、適切な検査領域を設定するために極めて高精度の処理が必要となるおそれがある。このような高精度の処理を行うことは、処理負担の増大ひいては検査効率の低下に繋がる。
【0009】
一方、処理負担を軽減するために処理を簡略化すれば、検査領域と実際の電極の位置との間で「ずれ」が生じやすくなり、結果的に、十分な検査精度を確保することができないおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、検査領域を比較的簡単な処理で設定可能としながら、良好な検査精度を得ることができるフラックス塗布状態検査装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.素地部が緑色、赤色又は茶色の基板における電極に塗布された、透明又は半透明のフラックスを検査するためのフラックス塗布状態検査装置であって、
前記基板に対し、該基板の素地部の色と同色の可視光を、55°以上75°以下の入射角で照射可能な照射手段と、
光軸が前記基板と直交するようにして前記基板の上方に配置されており、前記照射手段から前記基板に照射されて前記基板を反射した光を撮像することで、前記電極が暗部となり、前記素地部が前記暗部よりも高輝度の明部となり、前記電極上にフラックスの存在する部分が前記暗部及び前記明部の各輝度の中間の輝度を有する中間輝度部となる輝度画像を取得可能な撮像手段と、
前記輝度画像における前記暗部及び前記中間輝度部を、前記基板における前記電極の存在領域を示す電極領域として特定する第一特定手段と、
前記電極領域内に位置する前記輝度画像の前記中間輝度部を、前記電極にフラックスが塗布された領域を示すフラックス塗布領域として特定すること、及び、前記電極領域内に位置する前記輝度画像の前記暗部を、前記電極が露出した領域を示す電極露出領域として特定すること、のうちの少なくとも一方が可能に構成された第二特定手段と、
前記第二特定手段により特定された前記フラックス塗布領域及び前記電極露出領域のうちの少なくとも一方に基づき、前記電極に対するフラックスの塗布状態に係る良否判定を行う判定手段とを備えることを特徴とするフラックス塗布状態検査装置。
【0013】
上記手段1によれば、照射手段は、基板に対し、基板の素地部と同色の可視光を55°以上75°以下の入射角で照射する。ここで、基板の素地部と同色の可視光が照射されるから、基板の素地部ではこの可視光が反射(乱反射)される。また、照射手段から基板へと比較的大きな入射角で光が入射されることで、フラックスが塗布されていない電極(露出電極)で正反射した光は撮像手段に至りにくくなる一方、フラックスが塗布された電極ではフラックスによる光の乱反射が生じるから、この電極を反射した光は撮像手段に至りやすくなる。そのため、撮像手段により得られた輝度画像では、電極が暗部となり、素地部が前記暗部よりも高輝度の明部となり、電極上にフラックスの存在する部分が前記暗部及び前記明部の各輝度の中間の輝度を有する中間輝度部となる。
【0014】
そして、第一特定手段は、輝度画像における暗部及び中間輝度部を、基板における電極の存在領域を示す電極領域として特定する。従って、電極領域、すなわち、フラックスが適切に塗布されているか否かの判定の対象となる検査領域をより正確かつより容易に特定することができる。これにより、検査領域の設定に係る処理負担の軽減を図ることができ、ひいては検査効率を向上させることができる。また、基板に設けられたマークなどの基準を利用することなく検査領域(電極領域)を特定することができるため、基板の形状変化(例えば反りや収縮、膨張)に起因する基準の位置変動に伴い検査精度が低下することをより確実に防止できる。
【0015】
一方、第二特定手段は、電極領域内に位置する輝度画像の中間輝度部及び/又は暗部を、フラックス塗布領域及び/又は電極露出領域として特定する。従って、電極に対するフラックスの塗布状態を表す領域である、フラックス塗布領域や電極露出領域をより正確にかつより容易に特定することができる。
【0016】
そして、判定手段は、第二特定手段により特定された、フラックス塗布領域及び電極露出領域のうちの少なくとも一方に基づき、電極に対するフラックスの塗布状態に係る良否判定を行う。上記の通り、検査領域に相当する電極領域を正確に特定することができ、また、この電極領域内に位置するフラックス塗布領域や電極露出領域もそれぞれ正確に特定することができるため、判定手段による良否判定において、良好な検査精度を得ることができる。これにより、極めて小さなピッチで複数の電極が設けられる基板(例えば、BGAが搭載される基板)に係る検査を行うような場合であっても、十分な検査精度を確保することができる。
【0017】
手段2.前記照射手段から前記基板に対し照射される光の入射角を60°以上75°以下に設定したことを特徴とする手段1に記載のフラックス塗布状態検査装置。
【0018】
上記手段2によれば、電極にて正反射された光が撮像手段へとより至りにくくなるため、輝度画像において、露出電極の輝度とフラックスの塗布されている電極の輝度との差をより大きなものとすることができる。その結果、輝度画像から電極露出領域やフラックス塗布領域をより正確に特定することができ、検査精度をさらに高めることができる。
【0019】
尚、検査精度の更なる向上を図るという点では、照射手段から基板に対する光の入射角を60°以上70°以下とすることがより好ましい。
【0020】
手段3.前記基板の素地部の色を入力するための入力手段と、
前記入力手段により入力された色に基づき、前記照射手段から照射される可視光の波長を自動的に制御可能な波長制御手段とを備え、
前記波長制御手段は、
前記入力手段により入力された色が緑色である場合、前記照射手段から照射される光の波長を520nm以上530nm以下に設定し、
前記入力手段により入力された色が赤色又は茶色である場合、前記照射手段から照射される光の波長を625nm以上635nm以下に設定するように構成されていることを特徴とする手段1に記載のフラックス塗布状態検査装置。
【0021】
上記手段3によれば、入力手段によって基板の素地部の色(色についての情報)を入力することで、照射手段から照射される光の波長を、その素地部の色に合った適切なものに自動的に設定することができる。従って、良好な検査精度をより確実に得ることができるとともに、検査に係る利便性を一層高めることができる。
【0022】
手段4.素地部が緑色、赤色又は茶色の基板における電極に塗布された、透明又は半透明のフラックスを検査するためのフラックス塗布状態検査方法であって、
前記基板に対し、該基板の素地部の色と同色の可視光を、55°以上75°以下の入射角で照射する照射工程と、
光軸が前記基板と直交するようにして前記基板の上方に配置された撮像手段によって、前記照射工程により前記基板に照射されて前記基板を反射した光を撮像することで、前記電極が暗部となり、前記素地部が前記暗部よりも高輝度の明部となり、前記電極上にフラックスの存在する部分が前記暗部及び前記明部の各輝度の中間の輝度を有する中間輝度部となる輝度画像を取得する撮像工程と、
前記輝度画像における前記暗部及び前記中間輝度部を、前記基板における前記電極の存在領域を示す電極領域として特定する第一特定工程と、
前記電極領域内に位置する前記輝度画像の前記中間輝度部を、前記電極にフラックスが塗布された領域を示すフラックス塗布領域として特定すること、及び、前記電極領域内に位置する前記輝度画像の前記暗部を、前記電極が露出した領域を示す電極露出領域として特定すること、のうちの少なくとも一方を行う第二特定工程と、
前記第二特定工程により特定された前記フラックス塗布領域及び前記電極露出領域のうちの少なくとも一方に基づき、前記電極に対するフラックスの塗布状態に係る良否判定を行う判定工程とを含むことを特徴とするフラックス塗布状態検査方法。
【0023】
上記手段4によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0024】
尚、上記各手段に係る技術事項を適宜組み合わせてもよい。従って、例えば、上記手段2に係る技術事項に対し、上記手段3に係る技術事項を組み合わせてもよい。また、上記手段4に対し、上記手段2,3に係る技術事項のうちの少なくとも1つを適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】電極を示すために電子部品などを省略したプリント基板の平面模式図である。
【
図5】電極に搭載される前の電子部品などを示す部分拡大断面図である。
【
図6】プリント基板の製造ラインの構成を示すブロック図である。
【
図7】電極に塗布されたフラックスなどを示すプリント基板の部分拡大平面模式図である。
【
図8】フラックス塗布状態検査装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図9】フラックス検査状態検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図10】1の電極群を構成する複数の電極の全てがフラックスで適切に覆われている場合におけるプリント基板の部分拡大平面模式図である。
【
図11】1の電極群を構成する複数の電極の全てがフラックスで適切に覆われている場合における輝度画像を示す模式図である。
【
図12】複数の電極のうちの一部がフラックスで適切に覆われておらず、露出している場合におけるプリント基板の部分拡大平面模式図である。
【
図13】複数の電極のうちの一部がフラックスで適切に覆われておらず、露出している場合における輝度画像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、基板としてのプリント基板の構成について説明する。
【0027】
図1~3に示すように、プリント基板1(以下、単に「基板1」という)は、いわゆるガラスエポキシ基板であり、ガラスエポキシ樹脂等からなる平板状のベース基板2に、銅箔からなる電極3(
図1では不図示)などが形成されたものである。電極3上には、半田粒をフラックスで練ってなるクリーム半田4(以下、単に「半田4」という)を介してチップ等の電子部品5が搭載されている。
【0028】
また、ベース基板2における電極3や回路パターン(電極パターン)を除く部位は、ガラスエポキシやレジスト等からなる素地部6であり、本実施形態では、緑色を呈している。
【0029】
さらに、
図4に示すように、本実施形態における電子部品5は、その底面に、複数のバンプ4aが規則的に並んでなる、いわゆるボールグリッドアレイ(BGA)である。各バンプ4aは、後述するリフロー装置14におけるリフロー工程において溶融して電極3の表面を広がることで、最終的に半田4を構成する。そして、ベース基板2は、1の電子部品5における各バンプ4aの搭載対象となる複数の電極3からなる電極群3x(
図2参照)を有しており、ベース基板2に対し電子部品5を搭載する際には、電極群3xを構成する各電極3に対し各バンプ4aが搭載されるようになっている。本実施形態において、ベース基板2は、複数(例えば4つ)の電極群3xを備えており、各電極群3xに対し1つずつ電子部品5が搭載されるようになっている。尚、本実施形態において、1の電極群3xを構成する複数の電極3のピッチは、非常に小さなもの(例えば、1.8mm以下又は0.5mm以下)とされている。
【0030】
また、
図5に示すように、電極群3xに対する電子部品5の搭載前において、電極群3xを構成する複数の電極3の表面には、予めフラックス7が塗布されている。フラックス7は、電極3や電子部品5、半田4における金属酸化膜を除去し、半田4の濡れ性を高めるために使用される。フラックス7は、透明又は半透明のものであって視認しにくいものである。また、本実施形態において、フラックス7は、1の電極群3xを構成する複数の電極3を個別に覆っている。
【0031】
次に、基板1を製造する製造ライン(製造工程)について説明する。
図6に示すように、製造ライン10には、その上流側(
図6上側)から順に、フラックス塗布装置11、フラックス塗布状態検査装置12、部品実装機13、リフロー装置14及びリフロー後検査装置15が設置されている。基板1は、これら装置に対しこの順序で搬送されるように設定されている。
【0032】
フラックス塗布装置11は、基板1における少なくとも電極3の表面に対しフラックス7の塗布を行う。フラックス塗布装置11は、例えば、基板1上に所定のマスクを配置した上で、スクリーン印刷を利用して電極3の表面にフラックス7を塗布する。本実施形態において、フラックス塗布装置11は、
図7に示すように、1の電極群3xを構成する複数の電極3を個別に覆うようにしてフラックス7を塗布する。
図7,10,12は、基板1の部分拡大平面模式図であり、これらの図では、図示の便宜上、フラックス7に斜線を付しているが、フラックス7は透明又は半透明であるため、実際には、フラックス7の塗布領域を目視によって明確に把握することは容易ではない。尚、フラックス塗布装置11は、所定のディスペンサーによってフラックス7を塗布するものなどであってもよい。
【0033】
フラックス塗布状態検査装置12は、電極3に塗布されたフラックス7の塗布状態を検査するものである。フラックス塗布状態検査装置12については後に説明する。
【0034】
部品実装機13は、電極3などに電子部品5を搭載する部品実装工程(マウント工程)を行う。これにより、電子部品5は、バンプ4aを介して電極群3xに載置される。
【0035】
リフロー装置14は、バンプ4aなどを加熱溶融させるためのリフロー工程を行うものである。リフロー工程を経た基板1において、バンプ4aは、溶融して電極3の表面を広がるとともに最終的に固化して半田4となる。そして、半田4によって電極3と電子部品5とが接合された状態となる。
【0036】
リフロー後検査装置15は、リフロー工程において半田接合が適切に行われたか否か等について検査するリフロー後検査工程を行う。例えばリフロー工程後の基板1の画像データ等を用いて電子部品5における位置ずれの有無などを検査する。
【0037】
この他、図示は省略するが、製造ライン10は、フラックス塗布装置11とフラックス塗布状態検査装置12との間などの上記各装置間に、基板1を移送するためのコンベア等を備えている。また、フラックス塗布状態検査装置12と部品実装機13との間やリフロー後検査装置15の下流側には分岐装置が設けられている。そして、フラックス塗布状態検査装置12やリフロー後検査装置15にて良品判定された基板1は、そのまま下流側へ案内される一方、検査装置12,15の少なくとも一方にて不良品判定された基板1は分岐装置により不良品貯留部(不図示)へと排出されるようになっている。
【0038】
次に、フラックス塗布状態検査装置12の構成について説明する。
図8,9に示すように、フラックス塗布状態検査装置12は、基板1の搬送や位置決め等を行う搬送機構31と、フラックス7の検査を行うための検査ユニット32と、搬送機構31や検査ユニット32の駆動制御をはじめ、検査装置12における各種制御や画像処理、演算処理を実行する制御装置33とを備えている。
【0039】
搬送機構31は、基板1の搬入出方向に沿って配置された一対の搬送レール31aと、各搬送レール31aに対し回転可能に配設された無端のコンベアベルト31bとを備えている。また、図示は省略するが、搬送機構31には、前記コンベアベルト31bを駆動するモータ等の駆動手段と、基板1を所定位置に位置決めするためのチャック機構とが設けられている。搬送機構31は、制御装置33(後述する搬送機構制御部339)により駆動制御される。
【0040】
上記構成の下、フラックス塗布状態検査装置12へ搬入された基板1は、搬入出方向と直交する幅方向の両側縁部がそれぞれ搬送レール31aに挿し込まれるとともに、コンベアベルト31b上に載置される。続いて、コンベアベルト31bが動作を開始し、基板1が所定の検査位置まで搬送される。基板1が検査位置に達すると、コンベアベルト31bが停止するとともに、前記チャック機構が作動する。このチャック機構の動作により、コンベアベルト31bが押し上げられ、コンベアベルト31bと搬送レール31aの上辺部によって基板1の両側縁部が挟持された状態となる。これにより、基板1が検査位置に位置決め固定される。検査が終了すると、チャック機構による固定が解除されるとともに、コンベアベルト31bが動作を開始する。これにより、基板1は、フラックス塗布状態検査装置12から搬出される。勿論、搬送機構31の構成は、上記形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
【0041】
検査ユニット32は、搬送レール31a(基板1の搬送路)の上方に配設されている。検査ユニット32は、照明装置321及びカメラ322を備えている。本実施形態では、照明装置321が「照射手段」を構成し、カメラ322が「撮像手段」を構成する。
【0042】
また、検査ユニット32は、X軸方向(
図8左右方向)の移動を可能とするX軸移動機構323、及び、Y軸方向(
図8前後方向)の移動を可能とするY軸移動機構324をも備えている。両移動機構323,324は、制御装置33(後述する移動機構制御部338)により駆動制御される。
【0043】
照明装置321は、フラックス塗布状態検査装置12による検査対象となる基板1に対し、基板1の素地部6と同色の可視光を照射する。本実施形態において、素地部6は緑色であるため、照明装置321は、基板1に対し、緑色(例えば、波長が520nm以上530nm以下の光)の可視光を照射する。
【0044】
また、照明装置321は、55°以上70°以下の入射角θで光を照射する。特に本実施形態において、照明装置321から基板1(特に後述する検査対象範囲KH)に対する光の入射角θは、60°以上75°以下に設定されている。尚、検査精度の向上という点では、入射角θを60°以上70°以下とすることがより好ましい。本実施形態では、照明装置321から基板1に対し光を照射する工程が「照射工程」に相当する。
【0045】
カメラ322は、その光軸Oが検査対象の基板1に直交するようにして該基板1の真上に配置されており、該基板1における検査対象範囲KHを真上から撮像する。本実施形態において、検査対象範囲KHは、搭載予定の電子部品5ごとに予め設定されたものであり、1の電極群3xを構成する複数の電極3の全てを包含する範囲とされている(
図7参照)。
【0046】
また、カメラ322は、照明装置321から照射される各光に感度を有するCCDカメラ等で構成されており、制御装置33(後述するカメラ制御部333)により動作制御される。そして、制御装置33の動作制御により、カメラ322は、照明装置321から基板1に対する光の照射が行われている状態で、検査対象範囲KHにおける基板1から反射した光の撮像を行う。これにより、検査対象範囲KHに係る輝度画像が取得される。輝度画像は、それぞれ輝度に係るデータを有する多数の画素を備えたものである。本実施形態では、カメラ322によって、照明装置321から照射され基板1を反射した光を撮像する工程が「撮像工程」に相当する。
【0047】
尚、輝度画像において、フラックス7が塗布されていない電極3(露出電極)は、暗部となる。これは、照明装置321から基板1へと比較的大きな入射角θで光が照射されることで、露出電極を正反射した光がカメラ322に至りにくくなるためである。
【0048】
また、輝度画像において、素地部6は、暗部(露出電極)よりも高輝度の明部となる。これは、照明装置321から照射される可視光が素地部6の色と同色とされることで、素地部6でこの可視光が反射(乱反射)されて、カメラ322に至るためである。尚、素地部6にフラックス7が塗布されている場合であっても、素地部6は明部となる。
【0049】
さらに、輝度画像において、電極3上にフラックス7が存在する部分は、暗部(露出電極)及び明部(素地部6)の各輝度の中間の輝度を有する中間輝度部(例えば、グレー部)となる。これは、フラックス7が塗布された電極3ではフラックス7による光の乱反射が生じ、この電極3を反射した光がカメラ322に至りやすくなるためである。
【0050】
従って、1の電極群3xを構成する複数の電極3の全てがフラックス7で適切に覆われている場合(例えば、
図10参照)、輝度画像においては、素地部6が明部として表れ、電極3上にフラックス7が存在する部分が中間輝度部(グレー部)として表れる(例えば、
図11参照)。一方、電極3の一部又は全部がフラックス7で適切に覆われておらず、露出した電極3である露出電極3eが存在している場合(例えば、
図12参照)、輝度画像においては、露出電極3eが暗部として表れる(例えば、
図13参照)。
【0051】
カメラ322によって取得された輝度画像は、制御装置33(後述の画像取込部334)に転送される。制御装置33は、輝度画像に基づきフラックス7の塗布状態に関する検査処理を実行する。
【0052】
制御装置33は、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種プログラムや固定値データ等を記憶するROM(Read Only Memory)、各種演算処理の実行に際して各種データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)及びこれらの周辺回路等を含んだコンピュータからなる。
【0053】
制御装置33は、CPUが各種プログラムに従って動作することで、メイン制御部331、照明制御部332、カメラ制御部333、画像取込部334、第一特定部335、第二特定部336、判定部337、移動機構制御部338、搬送機構制御部339などの各種機能部として機能する。
【0054】
但し、上記各種機能部は、上記CPU、ROM、RAMなどの各種ハードウェアが協働することで実現されるものであり、ハード的又はソフト的に実現される機能を明確に区別する必要はなく、これらの機能の一部又は全てがICなどのハードウェア回路により実現されてもよい。本実施形態では、第一特定部335が「第一特定手段」を構成し、第二特定部336が「第二特定手段」を構成し、判定部337が「判定手段」を構成する。
【0055】
さらに、制御装置33には、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される入力部340、液晶ディスプレイ等で構成される、表示画面を備えた表示部341、各種データやプログラム、演算結果、検査結果等を記憶可能な記憶部342、外部と各種データを送受信可能な通信部343などが設けられている。まず、記憶部342及び通信部343について説明する。本実施形態では、入力部340が「入力手段」を構成する。
【0056】
記憶部342は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置で構成されており、各種情報を記憶する。記憶部342は、画像記憶部342a、検査用情報記憶部342b及び検査結果記憶部342cを備えている。
【0057】
画像記憶部342aは、カメラ322により撮像され取得された画像を記憶する。画像記憶部342aに記憶された画像は、適宜表示部341に表示させることが可能である。
【0058】
検査用情報記憶部342bは、フラックス7の検査に用いられる各種情報を記憶する。例えば、検査用情報記憶部342bには、良否判定を行う際に用いられる各種閾値や数値範囲、設計データ及び製造データなどが記憶されている。設計データ及び製造データには、フラックス7の塗布予定領域や電子部品5の実装領域などが含まれており、設計データや製造データに基づき、検査対象範囲KHが設定される。
【0059】
検査結果記憶部342cは、判定部337によるフラックス7の塗布状態に係る検査結果データを記憶する。また、検査結果記憶部342cには、検査結果データを確率統計的に処理した統計データなども記憶される。これらの検査結果データや統計データは、適宜表示部341に表示させることが可能となっている。
【0060】
通信部343は、例えば有線LAN(Local Area Network)や無線LAN等の通信規格に準じた通信インターフェースなどを備え、外部と各種データを送受信可能に構成されている。例えば判定部337により行われた検査の結果などが通信部343を介して外部に出力されたり、リフロー後検査装置15により行われた検査の結果が通信部343を介して入力されたりする。
【0061】
次に、制御装置33を構成する上記各種機能部について詳しく説明する。まず、移動機構制御部338及び搬送機構制御部339について説明し、その後、メイン制御部331等について説明する。
【0062】
移動機構制御部338は、X軸移動機構323及びY軸移動機構324を駆動制御する機能部であり、メイン制御部331からの指令信号に基づき、検査ユニット32の位置を制御する。移動機構制御部338は、X軸移動機構323及びY軸移動機構324を駆動制御することにより、検査ユニット32を、検査位置に位置決め固定された基板1における任意の検査対象範囲KHの上方位置へ移動させることができる。そして、基板1に設定された複数の検査対象範囲KHに検査ユニット32が順次移動されつつ、該検査対象範囲KHに係る検査が実行されていくことで、全ての検査対象範囲KHにおけるフラックス7の検査が実行される。
【0063】
搬送機構制御部339は、搬送機構31を駆動制御する機能部であり、メイン制御部331からの指令信号に基づき、基板1の搬送位置を制御する。
【0064】
次いで、メイン制御部331等について説明する。メイン制御部331は、フラックス塗布状態検査装置12全体の制御を司る機能部であり、照明制御部332やカメラ制御部333など他の機能部と各種信号を送受信可能に構成されている。
【0065】
照明制御部332は、照明装置321を駆動制御する機能部である。照明制御部332は、メイン制御部331からの指令信号に基づき、照明装置321から基板1に対する光の照射又は照射停止に関するタイミング制御などを行う。
【0066】
カメラ制御部333は、カメラ322を駆動制御する機能部である。カメラ制御部333は、メイン制御部331からの指令信号に基づき、カメラ322における撮像動作のタイミングなどを制御する。
【0067】
画像取込部334は、カメラ322により撮像され取得された輝度画像を取り込むための機能部である。画像取込部334によって取り込まれた各画像は、画像記憶部342aに記憶される。
【0068】
第一特定部335は、輝度画像に基づき、基板1における電極3の存在領域を示す電極領域DR(
図11,13参照)を特定する。より詳しくは、第一特定部335は、検査用情報記憶部342bに記憶された数値範囲を利用して、輝度画像における暗部(露出電極3e)及び中間輝度部(電極3上にフラックス7が存在する部分)を抽出する。そして、第一特定部335は、抽出した暗部及び中間輝度部を電極領域DRとして特定する。電極領域DRは、電極3の存在位置を示すものであり、フラックス7が適切に塗布されているか否かの判定の対象となる検査領域として機能する。本実施形態では、第一特定部335によって電極領域DRを特定する工程が「第一特定工程」に相当する。
【0069】
第二特定部336は、輝度画像に基づき、電極領域DR内に位置する輝度画像の中間輝度部を、電極3にフラックス7が塗布された領域を示すフラックス塗布領域FR(
図11,13参照)として特定すること、及び、電極領域DR内に位置する輝度画像の暗部を、電極3が露出した領域を示す電極露出領域RR(
図13参照)として特定することのうちの少なくとも一方を行う。本実施形態において、第二特定部336は、輝度画像に基づき、フラックス塗布領域FRを特定する。
【0070】
フラックス塗布領域FRの特定にあたり、第二特定部336は、検査用情報記憶部342bに記憶された数値範囲を利用して、輝度画像における中間輝度部(グレー部)を抽出する。そして、第二特定部336は、抽出した暗部(グレー部)のうち電極領域DR内に位置する部位を、フラックス塗布領域FRとして特定する。本実施形態では、第二特定部336によってフラックス塗布領域FRを特定する工程が「第二特定工程」に相当する。
【0071】
判定部337は、第二特定部336により特定されたフラックス塗布領域FRに基づき、基板1に塗布されたフラックス7の検査を行う。より詳しくは、判定部337は、電極領域DRごとに、フラックス塗布領域FRの面積(本実施形態では、画素数)を算出する。尚、判定部337は、検査対象範囲KHに位置する全てのフラックス塗布領域FRの合計面積を算出するものであってもよい。
【0072】
その上で、判定部337は、算出したフラックス塗布領域FRの面積と検査用情報記憶部342bに予め記憶された面積閾値とを比較する。そして、判定部337は、少なくとも1のフラックス塗布領域FRの面積が面積閾値以下である場合、少なくとも1の電極3に対するフラックス7の塗布が不十分であるとして、フラックス7の塗布状態を「不良」と判定する。一方、判定部337は、算出した全てのフラックス塗布領域FRの面積がそれぞれ面積閾値を上回る場合、1の電子部品5に対応する複数の電極3に対しフラックス7が適切に塗布されているとして、フラックス7の塗布状態を「良」と判定する。尚、判定部337が検査対象範囲KHに位置する全てのフラックス塗布領域FRの合計面積を算出するものである場合、判定部337は、算出した合計面積及び面積閾値を比較することで良否判定を行う。
【0073】
そして、判定部337は、全ての検査対象範囲KHを対象として上述の判定を行い、少なくとも1つの検査対象範囲KHにおいてフラックス7の塗布状態を「不良」と判定した場合には、検査対象の基板1を、フラックス7の塗布状態の点で「不良」と判定する。一方、判定部337は、全ての検査対象範囲KHを対象として上述の判定を行った結果、全ての検査対象範囲KHにおいてフラックス7の塗布状態を「良」と判定した場合には、検査対象の基板1を、フラックス7の塗布状態の点で「良」と判定する。尚、良否判定結果(検査結果データ)は、検査結果記憶部342cに記憶される。本実施形態では、判定部337によってフラックス7の塗布状態に係る良否判定を行う工程が「判定工程」に相当する。
【0074】
以上詳述したように、本実施形態によれば、照明装置321は、基板1に対し、基板1の素地部6と同色の可視光を55°以上75°以下の入射角θで照射する。そのため、電極3(露出電極3e)が暗部となり、素地部6が明部となり、電極3上にフラックス7の存在する部分が中間輝度部となった輝度画像を得ることができる。
【0075】
そして、第一特定部は、輝度画像における暗部及び中間輝度部を、電極領域DRとして特定する。従って、電極領域DR、すなわち、フラックス7が適切に塗布されているか否かの判定の対象となる検査領域をより正確かつより容易に特定することができる。これにより、検査領域の設定に係る処理負担の軽減を図ることができ、ひいては検査効率を向上させることができる。また、基板1に設けられたマークなどの基準を利用することなく検査領域(電極領域DR)を特定することができるため、基板1の形状変化(例えば反りや収縮、膨張)に起因する基準の位置変動に伴い検査精度が低下することをより確実に防止できる。
【0076】
一方、第二特定部336は、電極領域DR内に位置する輝度画像の中間輝度部をフラックス塗布領域FRとして特定する。従って、フラックス塗布領域FR、すなわち、電極3に対するフラックスの塗布状態を表す領域をより正確にかつより容易に特定することができる。
【0077】
そして、検査領域に相当する電極領域DRや、フラックス7の塗布状態を表すフラックス塗布領域FRを正確に特定することができるため、判定部337による良否判定において、良好な検査精度を得ることができる。これにより、極めて小さなピッチで複数の電極3が設けられる基板1(例えば、BGAが搭載される基板)に係る検査を行うような場合であっても、十分な検査精度を確保することができる。
【0078】
さらに、入射角θが60°以上75°以下に設定されているため、電極3にて正反射された光がカメラ322へとより至りにくくなる。そのため、輝度画像において、露出電極3eの輝度とフラックス7の塗布されている電極3の輝度との差をより大きなものとすることができる。その結果、輝度画像からフラックス塗布領域FRをより正確に特定することができ、検査精度をさらに高めることができる。
【0079】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0080】
(a)上記実施形態において、基板1の素地部6は緑色とされているが、赤色又は茶色であってもよい。尚、素地部6の色に合わせて、照明装置321から照射される可視光の色(波長)が設定される。
【0081】
(b)照明装置321は、基板1へと照射する可視光の波長を変更(調節)する機能を有するものであってもよい。また、この場合、照明制御部332によって、照明装置321から照射される各光の波長を制御可能に構成してもよい。
【0082】
さらに、入力部340を、基板1の素地部6の色(色についての情報)を入力可能に構成するとともに、入力部340により入力された色に基づき、照明制御部332が、照明装置321から照射される各光の波長を制御するように構成してもよい。また、この構成において、照明制御部332は、次のようにして照明装置321から照射される各光の波長を自動的に制御してもよい。
【0083】
すなわち、照明制御部332は、入力部340により入力された色が緑色である場合(色情報が緑色に対応するものである場合)、照明装置321から照射される光の波長を520nm以上530nm以下に設定してもよい。また、照明制御部332は、入力部340により入力された色が赤色又は茶色である場合(色情報が赤色又は茶色に対応するものである場合)、照明装置321から照射される光の波長を625nm以上635nm以下に設定してもよい。
【0084】
上記のように、素地部6の色に合わせて照射光の波長が自動的に適切に設定される構成とすることで、良好な検査精度をより確実に得ることができるとともに、検査に係る利便性を一層高めることができる。尚、この構成においては、照明制御部332が「波長制御手段」に相当する。
【0085】
(c)上記実施形態において、第二特定部336は、輝度画像に基づきフラックス塗布領域FRを特定するように構成されているが、輝度画像に基づき電極露出領域RRを特定するものであってもよい。電極露出領域RRの特定は、輝度画像における暗部(露出電極3e)を抽出すること等により行うことができる。
【0086】
また、電極露出領域RRを特定する場合、判定部337は、特定された電極露出領域RRの面積などに基づき、フラックス7の塗布状態に係る良否判定を行うことができる。
【0087】
尚、第二特定部336は、フラックス塗布領域FR及び電極露出領域RRの双方を特定するものであってもよく、また、判定部337は、特定した両領域FR,RRに基づき、フラックス7の塗布状態に係る良否判定を行うものであってもよい。
【0088】
(d)上記実施形態において、判定部337は、算出したフラックス塗布領域FRの面積と検査用情報記憶部342bに予め記憶された面積閾値とを比較することで、フラックス7の塗布状態を検査するように構成されている。これに対し、判定部337は、電極領域DRの面積に対するフラックス塗布領域FRの面積の比を算出し、この比に基づきフラックス7の塗布状態を判定するものであってもよい。勿論、その他の判定手法(フラックス塗布領域FRや電極露出領域RRの形状に基づく判定手法など)を用いて、フラックス7の塗布状態を判定してもよい。
【0089】
(e)上記実施形態において、基板1はガラスエポキシ基板とされているが、その他のタイプの基板であってもよい。従って、例えば、基板1はセラミック基板などであってもよい。
【0090】
(f)上記実施形態では、電子部品5としてBGAを挙げているが、電子部品5は、その他の半導体パッケージ〔例えば、CSP(Chip Size Package)など〕であってもよい。
【0091】
(g)上記実施形態において、フラックス7は、1の電極群3xを構成する複数の電極3を個別に覆うものとされているが、これら電極3の全てを一括して覆うものであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…プリント基板(基板)、3…電極、6…素地部、7…フラックス、12…フラックス塗布状態検査装置、321…照明装置(照射手段)、322…カメラ(撮像手段)、332…照明制御部(波長制御手段)、335…第一特定部(第一特定手段)、336…第二特定部(第二特定手段)、337…判定部(判定手段)、340…入力部(入力手段)、DR…電極領域、FR…フラックス塗布領域、RR…電極露出領域。
【要約】
【課題】検査領域を比較的簡単な処理で設定可能としながら、良好な検査精度を得ることができるフラックス塗布状態検査装置などを提供する。
【解決手段】フラックス塗布状態検査装置12は、基板の素地部の色と同色の可視光を大入射角で照射可能な照明装置321と、照明装置321から基板に照射されて基板を反射した光を撮像するカメラ322と、カメラ322により得られた輝度画像の暗部及び中間輝度部を電極領域として特定する第一特定部335と、電極領域内に位置する中間輝度部をフラックス塗布領域として特定すること、及び/又は、電極領域内に位置する暗部を電極露出領域として特定することが可能な第二特定部336とを備える。判定部337によって、第二特定部336により特定されたフラックス塗布領域及び/又は電極露出領域に基づき、電極に対するフラックスの塗布状態に係る良否判定を行う。
【選択図】
図9