(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-17
(45)【発行日】2025-01-27
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20250120BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20250120BHJP
【FI】
B25J19/00 H
B25J9/06 D
(21)【出願番号】P 2024511096
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016754
(87)【国際公開番号】W WO2023188350
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬目 俊文
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-041482(JP,A)
【文献】特開2015-123549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に第1方向へ揺動可能に支持された第1アームと、
ステイを有し、前記第1アームの揺動端部に第2方向へ揺動可能に支持された第2アームと、
前記第2アームに取り付けられて前記第2アームの内部を覆う第1カバーと、
前記ステイに取り付けられて外部から前記第2アームに接続するための外部接続部と、を備えたロボットであって、
前記外部接続部のシール構造は、
外縁を有する第2シールと、前記ステイに設けられ前記第2シールを支持する第2シール支持部と、
前記第2シールの前記外縁と対向する内縁を有する環状の第3シールと、前記第1カバーに設けられ前記第3シールを支持する第3シール支持部と、第1シール押圧部を有する第2カバーと、前記第1シール押圧部と前記第2シール支持部と前記第3シール支持部とを締結する第1締結部材と、を備え、
前記第2シール支持部と前記第1シール押圧部の間には、第2シールが挟持され、前記第3シール支持部と前記第1シール押圧部の間には、第3シールが挟持されており、
前記第3シールにおいて前記第1締結部材と対応する位置には第3貫通孔が設けられ、前記第3貫通孔には第1スペーサが収容されている、ロボット。
【請求項2】
前記第2アームの外周側面に連なる上端には下側対向面が設けられ、
前記第1カバーの外周側面に連なる下端には上側対向面が設けられ、
前記第1カバーが前記第2アームに取り付けられた状態では、前記下側対向面と前記上側対向面が上下方向に対向して配されるようになっており、
前記第2アームにおいて前記下側対向面に連なる下側外周側面と前記第1カバーにおいて前記上側対向面に連なる上側外周側面とには、環状をなす第1シールが装着されている、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記第2アームの端部と前記基台との間に架け渡されたフレキシブルチューブと、
前記ステイに取り付けられて前記フレキシブルチューブを接続するためのチューブ接続部と、を備え、
前記チューブ接続部のシール構造は、
外縁を有する第4シールと、
前記ステイにおいて水平部と垂直部とを備えてL字状に形成され前記第4シールを支持する第4シール支持部と、
前記第4シールの前記外縁と対向する内縁を有する環状の第5シールと、
前記第1カバーにおいて水平部と垂直部とを備えてL字状に形成され前記第5シールを支持する第5シール支持部と、
水平部と垂直部とを備えてL字状に形成された第2シール押圧部を有する第3カバーと、
前記第2シール押圧部の水平部と前記第5シール支持部の水平部と前記第4シール支持部の水平部とを締結する第2締結部材と、
前記第2シール押圧部の垂直部と前記第5シール支持部の垂直部と前記第4シール支持部の垂直部とを締結する第3締結部材と、を備え、
前記第4シール支持部と前記第2シール押圧部の間には、第4シールが挟持され、前記第5シール支持部と前記第2シール押圧部の間には、第5シールが挟持されており、
前記第4シールにおいて前記第3締結部材と対応する位置には第4貫通孔が設けられ、前記第4貫通孔には第3スペーサが収容されており、
前記第5シールにおいて前記第2締結部材と対応する位置には第5貫通孔が設けられ、前記第5貫通孔には第2スペーサが収容されている、請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記第4シールの垂直部の下端と前記第2アームの本体部を覆うケーシングの上端と前記第4シール支持部の垂直部とによって凹部が構成され、前記凹部に第6シールが配されており、
前記ケーシングの外面から前記第6シールの外面にわたって前記第1シールが密着するように取り付けられており、
前記第1シールの外面に前記第5シールが配されており、
前記第2シール押圧部の垂直部に押圧されることによって前記第5シールの垂直部は前記第1シールの外面に密着し、前記第1シールの内面は前記ケーシングの外面に密着する、請求項3に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば多関節型のロボットとして、特開平11-254377号公報に記載されたロボットが知られている。このロボットは、モータの駆動力を、関節部に設けられた減速機を介してアームに伝達するようにしたロボットである。アームの外壁部には、点検等のための開口部が設けられている。この開口部は、防水用のパッキンを介してカバーにより開閉可能に閉塞されている。パッキンは、金属製のフレーム部と、そのフレーム部の側部に固着され、フレーム部の厚みよりも大きな厚みを有するゴム製のシール部と、から構成されている。
【0003】
このパッキンによれば、金属製のフレーム部によってパッキンの形状が保持されるので、パッキンの取り付け作業が容易となり、また、フレーム部によって締付け量ひいてはシール部の圧縮量を一定に保つことができ、締付け過ぎや締付け不足を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のパッキンでは、開口部の形状に沿った大きなフレーム部が必要であるため、重量が増え、アームのイナーシャが増えて性能が低下するとともに、シールに必要とされるコストが高くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のロボットは、基台と、前記基台に第1方向へ揺動可能に支持された第1アームと、ステイを有し、前記第1アームの揺動端部に第2方向へ揺動可能に支持された第2アームと、前記第2アームに取り付けられて前記第2アームの内部を覆う第1カバーと、前記ステイに取り付けられて外部から前記第2アームに接続するための外部接続部と、を備えたロボットであって、前記外部接続部のシール構造は、第2シールと、前記ステイに設けられ前記第2シールを支持する第2シール支持部と、第3シールと、前記第1カバーに設けられ前記第3シールを支持する第3シール支持部と、第1シール押圧部を有する第2カバーと、前記第1シール押圧部と前記第2シール支持部と前記第3シール支持部とを締結する第1締結部材と、を備え、前記第2シール支持部と前記第1シール押圧部の間には、第2シールが挟持され、前記第3シール支持部と前記第1シール押圧部の間には、第3シールが挟持されており、前記第3シールにおいて前記第1締結部材と対応する位置には第3貫通孔が設けられ、前記第3貫通孔には第1スペーサが収容されている、ロボットである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、標準仕様にシール部品を追加するのみでシールでき、設計変更が不要となり、コスト増を回避できる。また、スペーサという簡易な構成でシールの過剰加圧を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図3は、
図1の一点鎖線部を拡大して示した一部切欠断面図である。
【
図10】
図10は、第3シールを第2カバーに接着し、第1ワッシャを第3シールの第3貫通孔に入れて第2カバーに接着した様子を示した斜視図である。
【
図11】
図11は、ステイの第2シール支持部に第2シールを接着した様子を示した斜視図である。
【
図12】
図12は、
図11の状態から第1カバーを第2アームのステイに上方から取り付けた様子を示した斜視図である。
【
図13】
図13は、第2カバーを第1カバーに上方から取り付けた様子を示した斜視図である。
【
図14】
図14は、
図13に第2シールと第3シールの取り付け状態を破線で追加した斜視図である。
【
図16】
図16は、
図15のC-C断面図において第2カバーと第3シールと第2シールとをステイから分離して示した断面図である。
【
図20】
図20は、フレキシブルチューブに第4シール、第5シール、第3カバーを予め通して、チューブ接続部にフレキシブルチューブの一端部を接続した状態を示した斜視図である。
【
図21】
図21は、ステイの第4シール支持部に第4シールを接着した様子を示した斜視図である。
【
図22】
図22は、
図21の状態から第1カバーを第2アームのステイに上方から取り付けた様子を示した斜視図である。
【
図23】
図23は、第6シールを凹部に接着した様子を示した斜視図である。
【
図25】
図25は、第5シールを第3カバーに接着し、第5スペーサを第5シールの第5貫通孔に入れて第3カバーに接着した様子を示した斜視図である。
【
図26】
図26は、第3カバーを第1カバーに上方から取り付けた様子を示した斜視図である。
【
図27】
図27は、
図26に第4シールと第5シールと第6シールとの取り付け状態を破線で追加した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のロボットは、基台と、前記基台に第1方向へ揺動可能に支持された第1アームと、ステイを有し、前記第1アームの揺動端部に第2方向へ揺動可能に支持された第2アームと、前記第2アームに取り付けられて前記第2アームの内部を覆う第1カバーと、前記ステイに取り付けられて外部から前記第2アームに接続するための外部接続部と、を備えたロボットであって、前記外部接続部のシール構造は、第2シールと、前記ステイに設けられ前記第2シールを支持する第2シール支持部と、第3シールと、前記第1カバーに設けられ前記第3シールを支持する第3シール支持部と、第1シール押圧部を有する第2カバーと、前記第1シール押圧部と前記第2シール支持部と前記第3シール支持部とを締結する第1締結部材と、を備え、前記第2シール支持部と前記第1シール押圧部の間には、第2シールが挟持され、前記第3シール支持部と前記第1シール押圧部の間には、第3シールが挟持されており、前記第3シールにおいて前記第1締結部材と対応する位置には第3貫通孔が設けられ、前記第3貫通孔には第1スペーサが収容されている、ロボットである。
【0010】
上記のロボットによると、第2シール、第3シール、第1スペーサ、および第2カバーを追加することで外部接続部をシールできる。第2シールで第2シール支持部と第1シール押圧部の間をシールし、第3シールで第3シール支持部と第1シール押圧部の間をシールすることで二重のシールをすることができ、十分なシール面積を稼ぐことができ、高いシール性を発揮できる。第1スペーサによって第2シールと第3シールの加圧を適度な位置で止めることができる。第2カバーを均一に広い面積で加圧することで第2カバーにかかる応力を小さくできる。
【0011】
(2)前記第2アームの外周側面に連なる上端には下側対向面が設けられ、前記第1カバーの外周側面に連なる下端には上側対向面が設けられ、前記第1カバーが前記第2アームに取り付けられた状態では、前記下側対向面と前記上側対向面が上下方向に対向して配されるようになっており、前記第2アームにおいて前記下側対向面に連なる下側外周側面と前記第1カバーにおいて前記上側対向面に連なる上側外周側面とには、環状をなす第1シールが装着されていることが好ましい。
【0012】
第1シールを追加することで第2アームと第1カバーの間をシールできる。第1シールの素材としてタック感、吸着性の高い素材を用いることで固定部材が不要にもかかわらず、第1シールが第2アームと第1カバーに対してずれることなく高いシール性を発揮できる。固定部材が不要であるから、第1シールの取り付け、取り外しが簡単になる。加圧用のカバー、スペーサ等のへたり防止部品が不要であるから、ロボットが軽量になる。第1カバーを均一に広い面積で加圧するので、第1カバーにかかる応力を小さくできる。
できる。
【0013】
(3)前記第2アームの端部と前記基台との間に架け渡されたフレキシブルチューブと、前記ステイに取り付けられて前記フレキシブルチューブを接続するためのチューブ接続部と、を備え、前記チューブ接続部のシール構造は、第4シールと、前記ステイにおいて水平部と垂直部とを備えてL字状に形成され前記第4シールを支持する第4シール支持部と、第5シールと、前記第1カバーにおいて水平部と垂直部とを備えてL字状に形成され前記第5シールを支持する第5シール支持部と、水平部と垂直部とを備えてL字状に形成された第2シール押圧部を有する第3カバーと、前記第2シール押圧部の水平部と前記第5シール支持部の水平部と前記第4シール支持部の水平部とを締結する第2締結部材と、前記第2シール押圧部の垂直部と前記第5シール支持部の垂直部と前記第4シール支持部の垂直部とを締結する第3締結部材と、を備え、前記第4シール支持部と前記第2シール押圧部の間には、第4シールが挟持され、前記第5シール支持部と前記第2シール押圧部の間には、第5シールが挟持されており、前記第4シールにおいて前記第3締結部材と対応する位置には第4貫通孔が設けられ、前記第4貫通孔には第3スペーサが収容されており、前記第5シールにおいて前記第2締結部材と対応する位置には第5貫通孔が設けられ、前記第5貫通孔には第2スペーサが収容されていることが好ましい。
【0014】
第4シール、第5シール、第2スペーサ、第3スペーサ、および第3カバーを追加することでチューブ接続部をシールできる。第4シールで第4シール支持部と第2シール押圧部の間をシールし、第5シールで第5シール支持部と第2シール押圧部の間をシールすることで二重のシールをすることができ、十分なシール面積を稼ぐことができ、高いシール性を発揮できる。第3スペーサによって第4シールの加圧を適度な位置で止めることができ、第2スペーサによって第5シールの加圧を適度な位置で止めることができる。第3カバーを均一に広い面積で加圧することで第3カバーにかかる応力を小さくできる。
【0015】
(4)前記第4シールの垂直部の下端と前記第2アームの本体部を覆うケーシングの上端と前記第4シール支持部の垂直部とによって凹部が構成され、前記凹部に第6シールが配されており、前記ケーシングの外面から前記第6シールの外面にわたって前記第1シールが密着するように取り付けられており、前記第1シールの外面に前記第5シールが配されており、前記第2シール押圧部の垂直部に押圧されることによって前記第5シールの垂直部は前記第1シールの外面に密着し、前記第1シールの内面は前記ケーシングの外面に密着することが好ましい。
【0016】
第4シールと第5シールを追加するに際して、例えば第1シールが第4シールの垂直部を跨ぐ配置になると、段差によってシール性の低下が懸念される。そのような場合、第4シールの垂直部の下端を上方に移動させて第1シールと第4シールの垂直部とが交差しないようにすることが考えられる。ところが、第4シールの垂直部の下端を上方に移動させると凹部が発生するため、第1シールが凹部で浮いた状態となり第1シールのシール性が低下するおそれがある。そこで、上記構成によると、凹部に第6シールを配するようにしたから、第1シールの浮きをなくすことができる。その上で、第2シール押圧部の垂直部に押圧されることによって第5シールの垂直部は第1シールの外面に密着し、第1シールの内面はケーシングの外面に密着するから、第1シールによるシール性と第5シールによるシール性とを確保できる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のロボットの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
本開示では、シール面積が十分にとれず、シールの過剰加圧を防止する構造のスペースがとれない場合でも、標準仕様に追加部品のみでシール面積を確保し、シールの過剰加圧を防止し、カバーにかかる応力を下げることができる技術を開示する。
【0019】
[実施例1:第1カバーと第2アームのシール構造]
<ロボットの全体構成>
本実施形態ではロボットの具体例としてスカラロボット10を例示している。スカラロボット10は、
図1に示すように、基台20と、この基台20に水平方向(第1方向の一例)へ揺動自在に支持された第1アーム30と、この第1アーム30の揺動端部に水平方向(第2方向の一例)へ揺動自在に支持された第2アーム40と、この第2アーム40の揺動端部に回動自在かつ上下方向に移動自在に支持された作動軸50と、を備えている。なお、図示しないものの、第2アーム40は、作動軸50を回動させる回動駆動装置と、作動軸50を上下方向に移動させる昇降装置と、図示しない工具を取り付けるためのヘッドと、を備えている。また、このスカラロボット10は、クリーンルームでも使用することができるもので、第2アーム40の上で作動軸50およびその周辺の部品を覆う第1カバー60を備えている。
【0020】
基台20は、箱状に形成されており、第1アーム30を支持するとともに駆動するための第1アーム用駆動装置(図示せず)を備えている。この第1アーム用駆動装置は、モータと減速機とから構成されている。モータおよび減速機は、軸線方向が上下方向を指向するように設けられている。この減速機は、モータの回転軸の回転を減速して第1アーム30に伝達する。モータのケーシングは基台20に支持され、モータの出力軸と減速機の入力部材が連結されるとともに、減速機の出力側部材すなわちケーシングは第1アーム30に支持されている。
【0021】
基台20の上端部であって減速機と隣り合う位置には、フレキシブルチューブ70の一端部が回動自在に取り付けられている。このフレキシブルチューブ70は、弾性変形が容易な合成樹脂材料によって形成されており、逆U字状に湾曲した状態で基台20と第2アーム40との間に架け渡されている。このフレキシブルチューブ70の内部には、図示しないものの、複数本の空気パイプや各種ケーブルを収容したキャプタイヤケーブルなどが挿通されている。
【0022】
フレキシブルチューブ70の両端部は、それぞれチューブ接続部21,41を介して基台20および第2アーム40に支持されている。これらのチューブ接続部21,41は、基台20、第2アーム40に支持、固定されている。チューブ接続部21,41の接続端部には、それぞれフレキシブルチューブ継手21C,41Cが設けられており、これらのフレキシブルチューブ継手21C,41Cによってフレキシブルチューブ70は回動自在に支持されている。すなわち、フレキシブルチューブ70は、基台20および第2アーム40に回動自在に支持されている。
【0023】
<第1アーム>
第1アーム30は、内部に空間を有する箱状に形成されている。この第1アーム30は、図示しないものの、一端部に第1アーム駆動装置の減速機が接続されるとともに、他端部に第2アーム用駆動装置の減速機が接続されている。第1アーム30は、第2アーム用駆動装置を介して第2アーム40を揺動自在に支持している。
【0024】
第2アーム用駆動装置は、第2アーム40を支持するとともに駆動するためのもので、モータと減速機とから構成されている。これらのモータおよび減速機は、軸線方向が上下方向を指向するように設けられている。モータのケーシングは第2アーム40に支持され、モータの出力軸と減速機の入力部材が連結されるとともに、減速機の出力側部材すなわちケーシングは、第1アーム30に支持されている。
【0025】
<第2アーム>
第2アーム40は、第2アーム用駆動装置のモータが設けられた揺動基部から水平方向にのびる細長い箱状に形成されている。第2アーム40の揺動端部には、作動軸50を回動させる回動駆動装置(図示せず)が設けられ、第2アーム40の中間部分の下部には、作動軸50を昇降させる昇降装置(図示せず)が設けられている。
【0026】
第2アーム40の上に設けられた第1カバー60は、第2アーム40から上方に突出する作動軸50、昇降装置、回動駆動装置などを周囲の四方から囲む外周側面61と、上方から囲む上面62と、を有している。この第1カバー60は、第2アーム40の上に設けられたステイ42に上方から取り付けられている。
【0027】
第2アーム40の中間部分の上部には、外部から第2アーム40に接続(アクセス)するための外部接続部43が設けられている。外部接続部43は、
図11に示すように、複数の配管43Aと、コネクタ43Bと、を有している。一方、
図1に示すように、第2アーム40の揺動端部の上部には、フレキシブルチューブ70を接続するためのチューブ接続部41が設けられている。
【0028】
第2アーム40は、作動軸50等を周囲の四方から囲む外周側面44を有している。第2アーム40の外周側面44の上端には下側対向面45が設けられている。
図3に示すように、第2アーム40の外周側面44において下側対向面45に連なる側面は下側外周側面44Lとされている。一方、第1カバー60の外周側面61の下端には上側対向面63が設けられている。第1カバー60が第2アーム40に取り付けられた状態では、下側対向面45と上側対向面63が上下方向に対向して配されるようになっている。第1カバー60の外周側面61において上側対向面63に連なる側面は上側外周側面61Uとされている。
【0029】
<第1シール>
下側外周側面61Lと上側外周側面44Uには、第1シール81が装着されている。この第1シール81は、
図2に示すように、環状をなすゴム部品である。第1シール81は、下側外周側面61Lおよび上側外周側面44Uにおける周長よりも小さい周長を有している。第1シール81の材質としては、表面の吸着性が強く、伸び率が非常に高いシリコンゴムが適している。第1シール81の取り付けは、予めフレキシブルチューブ70に通しておき、フレキシブルチューブ70がチューブ接続部41に取り付けられた後、第1シール81を伸ばして下側外周側面61Lおよび上側外周側面44Uにかけて密着させることで行われる。
【0030】
図3に示すように、第2アーム40と第1カバー60の間をシールする場合、下側対向面45と上側対向面63の間にシールを挟む方法も考えられる。しかしながら、上側対向面63の幅が狭い場合、シールやシールの過剰な加圧を防ぐためのへたり防止部品などを入れるのが困難になる。そのような場合でも、吸着性を有しかつ帯状にのびる第1シール81を下側外周側面61Lおよび上側外周側面44Uに密着させるように固定すればよい。したがって、加圧用のカバー、シールを固定する固定部材、へたり防止部品などが不要になり、スカラロボット10の軽量化に寄与しうる。また、第1カバー60の下側外周側面61Lを均一に広い面積で加圧するので、第1カバー60にかかる応力が小さくなる。
【0031】
[実施例2:外部接続部のシール構造]
実施例2は、第1カバー60とステイ42の当たり面の幅が狭く、シール、へたり防止部品を入れるのが困難な場合でも、外部接続部43をシールすることができるシール構造を開示する。外部接続部43では、
図14に示すように、第2シール82と第3シール83と第2カバー64とによって内部からの発塵の流れを防ぐようにしている。第2シール82と第3シール83はいずれも板状のゴム部品であって、第2シール82は第3シール83よりも板厚が大きくなるように設定されている。
【0032】
<第2シール>
第2シール82は、
図8に示すように、複数の配管43Aを個別に通す複数の丸孔82Aと、コネクタ43Bを通す角孔82Bと、を有している。第2シール82は、各配管43Aの周辺部とコネクタ43Bの周辺部とをシールするように形成されている。
【0033】
<ステイの第2シール支持部>
ステイ42は金属製の支持部材であり、
図11に示すように、第2シール82を支持する第2シール支持部42Aを有している。第2シール支持部42Aは、各配管43Aとコネクタ43Bを通す開口部の外周側に平面状に形成され、全体として方形状の外縁を有している。第2シール支持部42Aの角部には、第1ボルト91が締結される第1締結孔42A1が形成されている。第1締結孔42A1は第2シール支持部42Aの4つの角部に対応して全部で4つ設けられている。
【0034】
第2シール支持部42Aの4つの角部のうち1つの角部の付近には、四角孔42A2が貫通して形成されている。第2シール82は、第2シール支持部42Aの四角孔42A2を避けるようにして四角孔42A2と配管43Aおよびコネクタ43Bとの間に接触するように形成されている。
【0035】
<第3シール>
図9に示すように、第3シール83は四角形の枠状に形成され、全体として長方形状の外縁を有している。第3シール83の角部において第1ボルト91と対応する位置には第3貫通孔83Aが形成されている。第3貫通孔83Aは第3シール83の4つの角部に対応して全部で4つ設けられている。第3貫通孔83Aには第1ボルト91を挿通させる第1ワッシャ101が収容されている。
図10に示すように、第3シール83は、予め第2カバー64に接着されている。第3シール83は第2カバー64の周縁部に沿って環状に形成され、第2カバー64の周縁部をシールしている。
【0036】
<第2カバー>
第2カバー64は板状の金属部品であって、第2シール82と第3シール83を押圧する第1シール押圧部64Aを有している。第1シール押圧部64Aは、各配管43Aとコネクタ43Bを通す開口部64A1の外周側に平面状に形成され、全体として方形状の外縁を有している。開口部64A1は、
図12および
図13に示すように、第2シール82に対応する形状とされ、第2シール82の外周縁部を全周にわたって押圧可能に第2シール82よりも小さめに形成されている。
【0037】
第2カバー64の角部において第1ボルト91と対応する位置には第2挿通孔64A2が形成されている。第2挿通孔64A2は第2カバー64の4つの角部に対応して全部で4つ設けられている。各第2挿通孔64A2は各第3貫通孔83Aと対応して配置されている。第3貫通孔83Aは第1ワッシャ101と同軸をなすように配置されている。第1ボルト91は、第2挿通孔64A2と第1ワッシャ101を挿通可能とされている。
【0038】
<第1カバーの第3シール支持部>
第1カバー60は、
図12に示すように、第3シール83を支持する第3シール支持部60Aを有している。第1カバー60は樹脂製のカバーであり、ステイ42よりも強度が弱い。このため、第3シール83は、実質的には第3シール支持部60Aの下に隣接するステイ42によって支持されている。第3シール支持部60Aは、各配管43Aとコネクタ43Bを通す開口部60A1の外周側に平面状に形成され、全体として方形状の外縁を有している。第3シール支持部60Aの角部において第1ボルト91と対応する位置には第1挿通孔60A2が形成されている。開口部60A1は、第2シール82に対応する形状とされ、第2シール82を挿通可能に第2シール82よりも大きめに形成されている。
【0039】
<第2シールと第3シールの加圧>
第1挿通孔60A2は第3シール支持部60Aの4つの角部に対応して全部で4つ設けられている。各第1挿通孔60A2は各第1締結孔42A1と対応して配置されている。第1締結孔42A1は第1挿通孔60A2と同軸をなすように配置されている。第2カバー64が第1カバー60に取り付けられた状態では、
図5から
図7に示すように、第1ボルト91が第2挿通孔64A2と第1ワッシャ101と第1挿通孔60A2とに挿通され、ステイ42の第1締結孔42A1に締結されるようになっている。この締結によって第2シール82と第3シール83が加圧される。
【0040】
第2シール82と第3シール83の加圧は、第1ワッシャ101が第3シール支持部60Aと第1シール押圧部64Aの間に挟まれるまで、すなわち第3シール支持部60Aと第1シール押圧部64Aの間の距離が第1ワッシャ101の高さと等しくなるまで行われ、それ以上の加圧は行われないようになっている。したがって、第2シール82と第3シール83の加圧が適切に行われ、過度な加圧が行われないようになっている。
【0041】
第2シール82と第3シール83が適切に加圧された状態では、第2シール82が横方向に広がるため、第2シール82の側面が第1カバー60の開口部60A1の内壁に密着し、第3シール83が第3シール支持部60Aと第1シール押圧部64Aに密着し、第2シール82の上下面が第2シール支持部42Aと第1シール押圧部64Aに密着することで、内部で生じた粉塵などの異物が外部に流出するのを防ぐことができる。
【0042】
図7に示すように、外部接続部43をシールする場合、ステイ42と第1カバー60の間にシールを挟む方法も考えられる。しかしながら、ステイ42と第1カバー60の当たり面の幅が狭い場合、シールやシールの過剰な加圧を防ぐためのへたり防止部品などを入れるのが困難になる。そのような場合でも、第2シール82、第3シール83、第1ワッシャ101、および第2カバー64を追加することで外部接続部43をシールすることができる。
【0043】
第2シール82と第3シール83を併用することで十分なシール面積を確保することができ、二重のシールをすることができるため、シール性が高いものとなる。第1ワッシャ101によって第2シール82と第3シール83の加圧が適度な位置で止まるため、過度な加圧を防ぐことができる。第1カバー60を均一に広い面積で加圧するので、第1カバー60にかかる応力が小さいものとなる。
【0044】
<取り付け方法>
次に、実施例2のシール構造の取り付け方法について説明する。
図11に示すように、接着面を持つ第2シール82をステイ42の上面に接着する。このとき、予めステイ42に取り付けられた各配管43Aおよびコネクタ43Bが各丸孔82Aおよび角孔82Bに入るように第2シール82の位置調整が行われるため、各配管43Aおよびコネクタ43Bが第2シール82の取り付けのガイドとなる。
【0045】
図12に示すように、第1カバー60をステイ42に載せる。このとき、第1カバー60の開口部60A1に第2シール82が入るように第1カバー60の位置調整が行われるため、第1カバー60の各第1挿通孔60A2とステイ42の各第1締結孔42A1とが同軸に配置される。
【0046】
次に、
図10に示すように、接着面を持つ第3シール83を第2カバー64の下面に接着する。このとき、第3シール83の外形と第2カバー64の外形とが一致するように第3シール83の位置調整が行われるため、第3シール83の各第3貫通孔83Aと第2カバー64の各第2挿通孔64A2とが同軸に配置される。この後、第1ワッシャ101を第3シール83の第3貫通孔83Aに対して圧入気味に入れ、第2カバー64に接着させる。なお、第2カバーは第1ワッシャの形状のボスが予め取り付けられた部品でもよい。
【0047】
次に、
図13に示すように、第3シール83が接着された第2カバー64を第1カバー60の上に載せる。このとき、第2カバー64の開口部64A1の開口縁部によって第2シール82の外周縁部が押圧されるように第2カバー64の位置調整が行われるため、第2カバー64の各第2挿通孔64A2と第1ワッシャ101と第1カバー60の第1挿通孔60A2とステイ42の第1締結孔42A1とが同軸に配置される。この後、第1ボルト91を第2カバー64の上方から第2挿通孔64A2、第1ワッシャ101、第1挿通孔60A2の順に挿通し、第1締結孔42A1に締結する。締結に伴って第2シール82と第3シール83が加圧され、この加圧は、
図6に示すように、第1ワッシャ101が第1カバー60と第2カバー64の間に挟持される位置まで行われる。
【0048】
この結果、
図5、
図7、
図16に示すように、第2シール82はステイ42の第2シール支持部42Aと第2カバー64の第1シール押圧部64Aとの間に挟持され、第3シール83は第1カバー60の第3シール支持部60Aと第2カバー64の第1シール押圧部64Aとの間に挟持される。以上のようにして、実施例2のシール構造の取り付けが完了する。
【0049】
なお、第2シール82と第3シール83が一体に構成された一体型シールを採用してもよい。この場合、一体型シールをステイ42に接着するのではなく、一体型シールを第2カバー64に接着しておき、ステイ42に第1カバー60を載せてから、第2カバー64をステイ42に取り付けるようにしてもよい。
【0050】
[実施例3:チューブ接続部のシール構造]
実施例3は、実施例1と2のシール構造が混在するチューブ接続部41において、そのシールを可能にするシール構造を開示する。
図27に示すように、チューブ接続部41の上面には、複数本の空気パイプや各種ケーブルを収容したキャプタイヤケーブルなどを挿通させるシャフト41Aが上方に突出して取り付けられている。また、チューブ接続部41の外周側面には、角形のスイッチ41Bが取り付けられている。したがって、チューブ接続部41をシールするには、シャフト41Aとスイッチ41Bとの配置を考慮する必要がある。また、チューブ接続部41の下方には実施例1で説明した第1シール81が通っているため、第1シール81との配置についても考慮する必要がある。
【0051】
そこで、チューブ接続部41では、第4シール84と第5シール85と第6シール86という3種類のシール部品を用いることによって内部からの発塵の流れを防ぐようにしている。第4シール84と第5シール85と第6シール86とはいずれも板状のゴム部品であって、第4シール84は第5シール85、第6シール86よりも板厚が大きくなるように設定され、第5シール85と第6シール86はほぼ同じ板厚となるように設定されている。
【0052】
<ステイの第4シール支持部>
ステイ42は、
図21に示すように、第2シール支持部42Aと、第2シール支持部42Aの端部から斜め下方にのびるつなぎ部42Bと、つなぎ部42Bの端部に接続された第4シール支持部42Cと、を有する。第4シール支持部42Cは、ステイ42の上面から外周側面にわたってL字状に形成されている。第4シール支持部42Cは、シャフト41Aを通す開口部の外周側に平面状に形成された水平部42C1と、スイッチ41Bを通す開口部の外周側に平面状に形成された垂直部42C2と、を備える。
【0053】
水平部42C1は、全体として方形状の外縁を有している。水平部42C1の角部には、第2ボルト92が締結される第2締結孔42Fが形成されている。第2締結孔42Fは水平部42C1の4つの角部に対応して全部で4つ設けられている。
図20に示すように、垂直部42C2には、スイッチ41Bと、一対のカシメナット103と、が取り付けられている。カシメナット103は垂直部42C2にかしめて固着されている。カシメナット103には第3ボルト93が締結されるようになっている。
【0054】
図21に示すように、水平部42C1におけるつなぎ部42B側の端部には、下方にのびる一対の取付片42Dが設けられている。一対の取付片42Dは第2アーム40の本体部40Aにボルト締結されている。
図17に示すように、垂直部42C2の下端部には、水平方向内側にのびる取付片42Eが設けられている。取付片42Eは第2アーム40の本体部40Aに2箇所でボルト締結されている。したがって、ステイ42の第4シール支持部42Aは一対の取付片42Dと取付片42Eとによって第2アーム40の本体部40Aに固定されている。
【0055】
<第4シール>
第4シール84は、
図20、
図21に示すように、全体として略方形の板状をなしている。第4シール84は接着面を有し、この接着面をステイ42に接着させることでステイ42に対してL字状に取り付けられる。ステイ42に取り付けられた第4シール84は、ステイ42の水平部42C1に接着される水平部84Aと、ステイ42の垂直部42C2に接着される垂直部84Bと、を備える。
【0056】
第4シール84の水平部84Aは、チューブ接続部41のシャフト41Aを通す大径の丸孔84A1を有している。第4シール84の垂直部84Bは、一対のカシメナット103を通す小径の丸孔84B1と、スイッチ41Bを通す角孔84B2と、を有している。水平部84Aはシャフト41Aの周辺部をシールし、垂直部84Bはスイッチ41Bの周辺部と一対のカシメナット103の周辺部とをシールしている。
【0057】
<第3カバー>
図25に示すように、第3カバー65は全体としてL字状に屈曲した板状の金属部品であって、第4シール84と第5シール85と第6シール86とを押圧する第2シール押圧部65Aを有している。第2シール押圧部65Aは、シャフト41Aを通す開口部65A1の外周側に平面状に形成された水平部65A2と、スイッチ41Bを通す開口部65A3の外周側に平面状に形成された垂直部65A4と、を備える。第2シール押圧部65Aは、第4シール84と第5シール85と第6シール86とを一括して押圧可能である。
【0058】
第2シール押圧部65Aの水平部65A2は、第2ボルト92によって第4シール支持部42Cの水平部42C1に締結され、第2シール押圧部65Aの垂直部65A4は、第3ボルト93によって第4シール支持部42Cの垂直部42C2に締結されるようになっている。
【0059】
第2シール押圧部65Aの水平部65A2は、全体として方形状の外縁を有している。水平部65A2の角部において第2ボルト92と対応する位置には第3挿通孔65A5が形成されている。第3挿通孔65A5は水平部65A2の4つの角部に対応して全部で4つ設けられている。水平部65A2の各第3挿通孔65A5は各第2締結孔42Fと対応して配置されている。
【0060】
第3挿通孔65A5は、
図25に示すように、第2シール押圧部65Aの垂直部65A4にも一対形成されている。一対の第3挿通孔65A5は開口部65A3の側方と上方に配されている。垂直部65A4の各第3挿通孔65A5は各カシメナット93と対応して配置されている。
【0061】
<第5シール>
第5シール85は四角形の枠状に形成され、全体として長方形状の外縁を有している。第5シール85は、
図25に示すように、第3カバー65の水平部65A2に接着される水平部85Aと、第3カバー65の垂直部65A4に接着される垂直部85Bと、を備える。第5シール85は第3カバー65の周縁部に沿って環状に形成され、第3カバー65の周縁部をシールしている。
【0062】
第5シール85の水平部85Aは、全体として方形状の外縁を有している。水平部85Aの角部において第2ボルト92と対応する位置には第5貫通孔85A1が形成されている。第5貫通孔85A1は水平部85Aの4つの角部に対応して全部で4つ設けられている。第5貫通孔85A1には第2ボルト92を挿通させる第2ワッシャ102が収容されている。第5シール85が第3カバー65に接着された後、第2ワッシャ102が第5貫通孔85A1に収容される。
【0063】
第5貫通孔85A1は第2ワッシャ102と同軸をなすように配置されている。第2ボルト92は、第3挿通孔65A5と第2ワッシャ102を挿通可能とされている。各第2ワッシャ102は各第2締結孔42Fと対応して配置されている。
【0064】
<第1カバーの第5シール支持部>
第1カバー60は、
図22と
図26に示すように、第5シール85を支持する第5シール支持部60Bを有している。第5シール85は、実質的には第5シール支持部60Bの下に隣接するステイ42によって支持されている。第5シール支持部60Bは第1カバー60の上面62における第3シール支持部60Aの斜め下方に配されている。第5シール支持部60Bは、第1カバー60の上面62から外周側面61にわたってL字状に形成されている。第5シール支持部60Bは、第4シール84の水平部84Aを通す開口部60B1の外周側に平面状に形成された水平部60B2と、第4シール84の垂直部84Bを通す開口部60B3の外周側に平面状に形成された垂直部60B4と、を備える。開口部60B1と開口部60B2は互いに連通し、一体に形成されている。
【0065】
第5シール支持部60Bの水平部60B2は、第2ボルト92によって第4シール支持部42Cの水平部42C1に締結され、第5シール支持部60Bの垂直部60B4は、第3ボルト93によって第4シール支持部42Cの垂直部42C2に締結されるようになっている。
【0066】
第5シール支持部60Bの水平部60B2は、全体として方形状の外縁を有している。水平部60B2の角部において第2ボルト92と対応する位置には第1挿通孔60B5が形成されている。第1挿通孔60B5は水平部60B2の4つの角部に対応して全部で4つ設けられている。各第2挿通孔64A2は各第3貫通孔83Aと対応して配置されている。各第1挿通孔60B5は各第2締結孔42Fと対応して配置されている。
【0067】
<第6シール>
図27に示すように、第3カバー65の第2シール押圧部65Aの垂直部65A4には実施例1の第1シール81が横切るようになっている。このため、第4シール84の垂直部84Bの下端は第1シール81と重ならないように第1シール81の上端に位置するようになっている。その結果、
図22に示すように、第4シール84の垂直部84Bの下方には凹部66が形成されている。
図18に示すように、凹部66の下端は第3カバー65の第2シール押圧部65Aの垂直部65A4の下端よりも上方に位置している。凹部66の上端は第4シール84の垂直部84Bの下端によって構成され、凹部66の下端は、第2アーム40の本体部40Aを覆うケーシング40Bの上端によって構成され、凹部66の奥面はステイ42の第4シール支持部42Cの垂直部42C2によって構成されている。
【0068】
第6シール86は、
図22に示すように、略方形の板状をなしている。第6シール86は接着面を有し、この接着面を凹部66の奥面に接着させることで凹部66に取り付けられる。
図18に示すように、凹部66に取り付けられた第6シール86の外面と第2アーム40のケーシング40Bの外面とはほぼ面一をなすように第6シール86の厚さが設定されている。第1シール81はケーシング40Bの外面から第6シール86の外面にわたって密着するように取り付けられる。第2シール押圧部65Aの垂直部に押圧されることによって第5シール85の垂直部85Bの下端部は、第1シール81の外面に密着し、これによって第1シール81の内面は第6シール86の外面とケーシング40Bの外面とに密着する。このようにして、第1シール81と第5シール85と第6シール86とは凹部66の周辺部をシールしている。
【0069】
<取り付け方法>
次に、実施例3のシール構造の取り付け方法について説明する。
図20に示すように、フレキシブルチューブ70に第4シール84、第5シール85、第3カバー65を予め通して、ステイ42にフレキシブルチューブ70の一端部を取り付ける。接着面を持つ第4シール84をステイ42の第4シール支持部42Cの外面に接着する。このとき、予めステイ42に取り付けられたフレキシブルチューブ70、シャフト41A、スイッチ41B、およびカシメナット103が取り付けのガイドとなる。
図21に示すように、シャフト41A、スイッチ41B、およびカシメナット103が各丸孔84A,84Bおよび角孔84Cに入るように第4シール84の位置調整が行われる。
【0070】
図22に示すように、第1カバー60をステイ42に載せる。このとき、第1カバー60の開口部60B1に第4シール84の水平部84Aが入るように第1カバー60の位置調整が行われるため、第1カバー60の各第1挿通孔60B5とステイ42の各第2締結孔42Fとが同軸に配置される。
【0071】
次に、
図23に示すように、第4シール84の垂直部84Bの下方に形成された凹部66の奥面に、接着面を持つ第6シール86を接着する。その後、
図24に示すように、第2アーム40と第1カバー60の境界に巻き付けるようにして第1シール81を取り付ける。
【0072】
次に、
図25に示すように、接着面を持つ第5シール85を第3カバー65の内面に接着する。このとき、第5シール85の外形と第3カバー65の外形とが一致するように第5シール85の位置調整が行われるため、第5シール85の各第5貫通孔85A1と第3カバー65の各第3挿通孔65A5とが同軸に配置される。この後、第2ワッシャ102を第5シール85の第5貫通孔85A1に対して圧入気味に入れ、第3カバー65に接着させる。なお、第3カバーは第2ワッシャの形状のボスが予め取り付けられた部品でもよい。また、第5シール85の第3カバー65への取り付け作業は、第1カバー60をステイ42に載せた後に行ってもよい。
【0073】
次に、
図26に示すように、第5シール85が接着された第3カバー65を第1カバー60の上に載せる。このとき、水平部65A2においては第3カバー65の開口部65A1の開口縁部によって第4シール84の外周縁部が押圧されるように第3カバー65の位置調整が行われるため、水平部65A2の各第3挿通孔65A5と第2ワッシャ102と第1カバー60の第1挿通孔60B5とステイ42の第2締結孔42Fとが同軸に配置される。また、垂直部65A4においては第3カバー65の開口部65A3にスイッチ41Bが入るように第3カバー65の位置調整が行われるため、垂直部65A4の各第3挿通孔65A5と各カシメナット103とが同軸に配置される。
【0074】
この後、第2ボルト92を第3カバー65の上方から第3挿通孔65A5、第2ワッシャ102、第1挿通孔60B5の順に挿通し、第2締結孔42Fに締結し、第3ボルト93を第3カバー65の側方から第3挿通孔65A5に挿通し、カシメナット103に締結する。第2ボルト92による締結に伴って第4シール84と第5シール85が加圧され、この加圧は、
図17、
図19に示すように、第2ワッシャ102が第1カバー60と第3カバー65の間に挟持される位置まで行われる。第3ボルト93による締結に伴って第1シール81と第4シール84と第5シール85と第6シール86とが加圧され、この加圧は、
図17、
図18に示すように、カシメナット103がステイ42と第3カバー65の間に挟持される位置まで行われる。以上のようにして、実施例3のシール構造の取り付けが完了する。
【0075】
なお、第4シール84と第5シール85が一体に構成された一体型シールを採用してもよい。この場合、一体型シールをステイ42に接着するのではなく、一体型シールを第3カバー65に接着しておき、ステイ42に第1カバー60を載せてから、第3カバー65をステイ42に取り付けるようにしてもよい。
【0076】
[実施例1から3の作用効果]
(1)本開示のスカラロボット10は、基台20と、基台20に水平方向へ揺動可能に支持された第1アーム30と、ステイ42を有し、第1アーム30の揺動端部に水平方向へ揺動可能に支持された第2アーム40と、第2アーム40に取り付けられて第2アーム40の内部を覆う第1カバー60と、ステイ42に取り付けられて外部から第2アーム40に接続するための外部接続部43と、を備えたスカラロボット10であって、外部接続部43のシール構造は、第2シール82と、ステイ42に設けられ第2シール82を支持する第2シール支持部42Aと、第3シール83と、第1カバー60に設けられ第3シール83を支持する第3シール支持部60Aと、第1シール押圧部64Aを有する第2カバー64と、第1シール押圧部64Aと第2シール支持部42Aと第3シール支持部60Aとを締結する第1ボルト91と、を備え、第2シール支持部42Aと第1シール押圧部64Aの間には、第2シール82が挟持され、第3シール支持部60Aと第1シール押圧部64Aの間には、第3シール83が挟持されており、第3シール83において第1ボルト91と対応する位置には第3貫通孔83Aが設けられ、第3貫通孔83Aには第1ワッシャ101が収容されている、スカラロボット10である。
【0077】
上記のスカラロボット10によると、第2シール82、第3シール83、第1ワッシャ101、および第2カバー64を追加することで外部接続部43をシールできる。第2シール82で第2シール支持部42Aと第1シール押圧部64Aの間をシールし、第3シール83で第3シール支持部60Aと第1シール押圧部64Aの間をシールすることで二重のシールをすることができ、十分なシール面積を稼ぐことができ、高いシール性を発揮できる。第1ワッシャ101によって第2シール82と第3シール83の加圧を適度な位置で止めることができる。第2カバー64を均一に広い面積で加圧することで第2カバー64にかかる応力を小さくできる。
【0078】
(2)第2アーム40の外周側面44に連なる上端には下側対向面45が設けられ、第1カバー60の外周側面61に連なる下端には上側対向面63が設けられ、第1カバー60が第2アーム40に取り付けられた状態では、下側対向面45と上側対向面63が上下方向に対向して配されるようになっており、第2アーム40において下側対向面45に連なる下側外周側面44Lと第1カバー60において上側対向面63に連なる上側外周側面61Uとには、環状をなす第1シール81が装着されていることが好ましい。
【0079】
第1シール81を追加することで第2アーム40と第1カバー60の間をシールできる。第1シール81の素材としてタック感、吸着性の高い素材を用いることで固定部材が不要にもかかわらず、第1シール81が第2アーム40と第1カバー60に対してずれることなく高いシール性を発揮できる。固定部材が不要であるから、第1シール81の取り付け、取り外しが簡単になる。加圧用のカバー、スペーサ等のへたり防止部品が不要であるから、ロボットが軽量になる。第1カバー60を均一に広い面積で加圧するので、第1カバー60にかかる応力を小さくできる。
【0080】
(3)第2アーム40の端部と基台20との間に架け渡されたフレキシブルチューブ70と、ステイ42に取り付けられてフレキシブルチューブ70を接続するためのチューブ接続部41と、を備え、チューブ接続部41のシール構造は、第4シール84と、ステイ42において水平部42C1と垂直部42C2とを備えてL字状に形成され第4シール84を支持する第4シール支持部42Cと、第5シール85と、第1カバー60において水平部60B2と垂直部60B4とを備えてL字状に形成され第5シール85を支持する第5シール支持部60Bと、水平部65A2と垂直部65A4とを備えてL字状に形成された第2シール押圧部65Aを有する第3カバー65と、第2シール押圧部65Aの水平部65A2と第5シール支持部60Bの水平部60B2と第4シール支持部42Cの水平部42C1とを締結する第2ボルト92と、第2シール押圧部65Aの垂直部65A4と第5シール支持部60Bの垂直部60B4と第4シール支持部42Cの垂直部42C2とを締結する第3ボルト93と、を備え、第4シール支持部42Cと第2シール押圧部65Aの間には、第4シール84が挟持され、第5シール支持部60Bと第2シール押圧部65Aの間には、第5シール85が挟持されており、第4シール84において第3ボルト93と対応する位置には丸孔84B1が設けられ、丸孔84B1にはカシメナット103が収容されており、第5シール85において第2ボルト92と対応する位置には第5貫通孔85A1が設けられ、第5貫通孔85A1には第2ワッシャ102が収容されていることが好ましい。
【0081】
第4シール84、第5シール85、第2ワッシャ102、カシメナット103、および第3カバー65を追加することでチューブ接続部41をシールできる。第4シール84で第4シール支持部42Cと第2シール押圧部65Aの間をシールし、第5シール85で第5シール支持部60Bと第2シール押圧部65Aの間をシールすることで二重のシールをすることができ、十分なシール面積を稼ぐことができ、高いシール性を発揮できる。カシメナット103によって第4シール84の加圧を適度な位置で止めることができ、第2ワッシャ102によって第5シール85の加圧を適度な位置で止めることができる。第3カバー65を均一に広い面積で加圧することで第3カバー65にかかる応力を小さくできる。
【0082】
(4)第4シール84の垂直部84Bの下端と第2アーム40の本体部40Aを覆うケーシング40Bの上端と第4シール支持部42Cの垂直部42C2とによって凹部66が構成され、凹部66に第6シール86が配されており、ケーシング40Bの外面から第6シール86の外面にわたって第1シール81が密着するように取り付けられており、第1シール81の外面に第5シール85が配されており、第2シール押圧部65Aの垂直部65A4に押圧されることによって第5シール85の垂直部85Bは第1シール81の外面に密着し、第1シール81の内面はケーシング40Bの外面に密着することが好ましい。
【0083】
第4シール84と第5シール85を追加するに際して、例えば第1シール81が第4シール84の垂直部84Bを跨ぐ配置になると、段差によってシール性の低下が懸念される。そのような場合、第4シール84の垂直部84Bの下端を上方に移動させて第1シール81と第4シール84の垂直部84Bとが交差しないようにすることが考えられる。ところが、第4シール84の垂直部84Bの下端を上方に移動させると凹部66が発生するため、第1シール81が凹部66で浮いた状態となり第1シール81のシール性が低下するおそれがある。そこで、上記構成によると、凹部66に第6シール86を配するようにしたから、第1シール81の浮きをなくすことができる。その上で、第2シール押圧部65Aの垂直部65A4に押圧されることによって第5シール85の垂直部85Bは第1シール81の外面に密着し、第1シール81の内面はケーシング40Bの外面に密着するから、第1シール81によるシール性と第5シール85によるシール性とを確保できる。
【0084】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では第1スペーサとして第1ワッシャ101を例示しているが、第1スペーサとしてカシメナットを用いてもよい。同様に、第2スペーサとしてカシメナットを用いてもよい。
【0085】
(2)上記実施形態では第3スペーサとしてカシメナット103を例示しているが、第3スペーサとしてワッシャを用いてもよい。
【0086】
(3)上記実施形態ではスカラロボット10に適用した場合を例示しているが、スカラロボット10に限らず、垂直多関節ロボットに適用してもよい。また、第1アームの揺動方向(第1方向)と第2アームの揺動方向(第2方向)とは異なるものでもよい。
【符号の説明】
【0087】
10:スカラロボット(ロボット)
20:基台 21:チューブ接続部
30:第1アーム
40:第2アーム 40A:本体部 40B:ケーシング 41:チューブ接続部 41A:シャフト 41B:スイッチ 41C:フレキシブルチューブ継手 42:ステイ 42A:第2シール支持部 42A1:第1締結孔 42A2:四角孔 42B:つなぎ部 42C:第4シール支持部 42C1:水平部 42C2:垂直部 42D:取付片 42E:取付片 42F:第2締結孔 43:外部接続部 43A:配管 43B:コネクタ 44:外周側面 44L:下側外周側面 45:下側対向面
50:作動軸
60:第1カバー 60A:第3シール支持部 60A1:開口部 60A2:第1挿通孔 60B:第5シール支持部 60B1:開口部 60B2:水平部 60B3:開口部 60B4:垂直部 60B5:第1挿通孔 61:外周側面 61U:上側外周側面 62:上面 63:上側対向面 64:第2カバー 64A:第1シール押圧部 64A1:開口部 64A2:第2挿通孔 65:第3カバー 65A:第2シール押圧部 65A1:開口部 65A2:水平部 65A3:開口部 65A4:垂直部 65A5:第3挿通孔 66:凹部
70:フレキシブルチューブ
81:第1シール 82:第2シール 82A:丸孔 82B:角孔 83:第3シール 83A:第3貫通孔 84:第4シール 84A:水平部 84A1:丸孔 84B:垂直部 84B1:丸孔(第4貫通孔) 84B2:角孔 85:第5シール 85A:水平部 85A1:第5貫通孔 85B:垂直部 86:第6シール
91:第1ボルト(第1締結部材) 92:第2ボルト(第2締結部材) 93:第3ボルト(第3締結部材)
101:第1ワッシャ(第1スペーサ) 102:第2ワッシャ(第2スペーサ) 103:カシメナット(第3スペーサ)