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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】温感油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/26 20060101AFI20250121BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20250121BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
A61K8/26
A61K8/39
A61K8/86
A61Q19/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021117443
(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公開番号】P2022187456
(43)【公開日】2022-12-19
【審査請求日】2023-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】柚口 耕二
(72)【発明者】
【氏名】吉村 武志
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-126345(JP,A)
【文献】特開2016-193839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油剤を55質量%以上含み、水を含まないか、又は水を含み且つ化粧料100質量%中の水の含有量が1質量%以下である温感油性クレンジング化粧料であって、
下記成分A~成分C:
成分A:Ca-A型ゼオライト 10~30質量%
成分B:ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル及び/又はポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタン 4~18質量%
成分C:脂肪酸ポリグリセリル 0.1~5質量%
を含有してなり、
前記ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル及び/又はポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンとしてPEG-7(カプリル/カプリン酸)グリセリズ、トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン及びテトラオレイン酸ソルベス-30からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分を含有し、
前記脂肪酸ポリグリセリルとしてトリイソステアリン酸ポリグリセリル及びテトライソステアリン酸ポリグリセリル-2からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分を含有し
前記トリイソステアリン酸ポリグリセリルにおけるポリグリセリンの平均重合度が2~12であることを特徴とする温感油性クレンジング化粧料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温感油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マッサージ化粧料やクレンジング化粧料の技術分野において、温感効果を付与する試みが多数検討されている。このような化粧料の多くは、肌に対する安全性の観点、穏やかな発熱を生じさせる観点から、多価アルコール類の水和熱が利用されている。
【0003】
具体的には、グリセリン又はジグリセリンとアニオン性高分子化合物と水とを含むゲル状温感マッサージ料(例えば、特許文献1を参照)、特定の多価アルコールとスクラブ剤と水溶性高分子化合物とを含むマッサージ料(例えば、特許文献2を参照)、グリセリンと特定の架橋ポリマーと特定の増粘剤と特定の非イオン性界面活性剤とを含むクレンジング料(例えば、特許文献3を参照)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、多価アルコール類の水和熱では、温感の発現が穏やかであり、温感を感じる時間も短く、望む温感が得られ難いといった問題がある。さらに、多価アルコール類は水を配合していない非水系化粧料には容易に配合できるものの、化粧料中の大半が油である油性化粧料では、例え配合したとしても温感を発現させることが困難であるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-012126号公報
【文献】特開2000-247860号公報
【文献】特開2013-028542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものである。すなわち、油性化粧料において格段に優れた温感効果を発揮させることができる温感油性化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、油剤を55質量%以上含み、水を含まないか、又は水を含み且つ化粧料100質量%中の水の含有量が1質量%以下である温感油性化粧料であって、下記成分Aおよび成分Bを含有することを特徴とする温感油性化粧料を提供する。
成分A:Ca-A型ゼオライト
成分B:ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルおよび/又はポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタン
【0008】
上記成分Aの含有量が10~30質量%であることが好ましい。
【0009】
さらに、下記成分Cを含有することが好ましい。
成分C:脂肪酸ポリグリセリル
【0010】
本発明の温感油性化粧料は、実質的に、多価アルコールを含有しないことが好ましい。
【0011】
本発明の温感油性化粧料は、温感油性クレンジング化粧料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の温感油性化粧料は、上記構成要件を満たすことにより、油性化粧料であるにもかかわらず、優れた製剤安定性を有する。また、マッサージやクレンジングなどの施術時において、格段に優れた温感効果を発揮させることができ、洗浄時の洗い落ちに優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の温感油性化粧料は、油剤を55質量%以上含み、水を含まないか、又は水を含み且つ化粧料100質量%中の水の含有量が1質量%以下であって、下記成分Aおよび成分Bを含有する。
成分A:Ca-A型ゼオライト
成分B:ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルおよび/又はポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタン
【0014】
以下、本発明の温感油性化粧料に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0015】
本発明の温感油性化粧料は、油剤を55質量%以上含むものである。用いられる油剤としては、例えば、植物油、植物油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油などが挙げられる。これら油剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0016】
具体的な植物油としては、例えば、アボガド油、オリーブ油、ククイナッツ油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメヌカ油、コメ胚芽油、サンフラワー油、大豆油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、メドウホーム油、綿実油、ヤシ油などが挙げられる。また、本発明においては、これら植物油の水素添加物である水素添加植物油であってもよい。これら植物油は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0017】
具体的な植物油脂としては、例えば、アストロカリウムツクマ種子脂、アストロカリウムムルムル種子脂、アフリカマンゴノキ核脂、アボガド脂、イネ脂、カカオ脂、ガルシニアインディカ種子脂、ゴマ種子脂、サラソウジュ種子脂、シア脂、ショレアステノプラテ種子脂、テオブロマグランジフロルム種子脂、トウツバキ種子脂、トリチリアロカ種子脂、トリチリアロカ種子脂、パーム脂、バシアラチホリア種子脂、バッシアブチラセア種子脂、ビロラスリナメンシス種子脂、プラトニアインシグニス種子脂、ペンタデスマブチラセア種子脂、ポウテリアサポタ種子脂、ホホバ脂、マンゴー種子脂などが挙げられる。これら植物油脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0018】
具体的なロウ類としては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、モンタンロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ホホバロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリンなどが挙げられる。これらロウ類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0019】
具体的な炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、セレシン、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス(合成ワックス)、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン末、ワセリンなどが挙げられる。これら炭化水素油は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0020】
具体的な高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、12-ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。これら高級脂肪酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0021】
具体的な高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルデカノール、デシルテトラデカノールなどが挙げられる。これら高級アルコールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0022】
具体的なエステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、カプリル酸プロピルヘプチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リシノール酸オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソパルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソスエアリン酸オクチルドデシルなどのモノエステル油;ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルヘキシル、炭酸ジカプリリルなどのジエステル油;トリカプリル酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンなどのトリエステル油などが挙げられる。これらエステル油は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0023】
具体的なシリコーン油としては、例えば、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノール、25℃における粘度が例えば1mPa・s以上10mPa・s未満のジメチルポリシロキサン、25℃における粘度が例えば10mPa・s以上6,000mPa・s未満のジメチルポリシロキサン、25℃における粘度が例えば6,000mPa・s以上20,000,000mPa・s以下であり、かつ数平均重合度が650以上である高重合ジメチルポリシロキサンなど鎖状シリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などアミノ変性シリコーン油;カルボキシ変性シリコーン油、脂肪酸エステル変性シリコーン油、アルコール変性シリコーン油、エポキシ変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油などが挙げられる。これらシリコーン油は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0024】
なお、本発明においては、上記油剤は市販品を用いることができる。油剤の市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0025】
本発明の温感油性化粧料中の油剤の含有量は、油性化粧料とする観点から、化粧料100質量%中、55質量%以上であり、60質量%以上であることが好ましい。また、使用感の観点から、化粧料100質量%中、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。なお、上記油剤の含有量は、純分に換算した量である。
【0026】
[成分A]
上記成分Aは、Ca-A型ゼオライトである。ゼオライトとは、沸石とも称されるミクロ多孔性の結晶性アルミケイ酸塩のことをいう。その化学組成は、一般式:MO・Al・xSiO・yHO(nは陽イオンMn原子価、xは2以上の数、yは吸着水量を表す)で表される。また、ゼオライトの結晶構造には、例えば、A型、X型、L型、Y型、ベータ、ZSM-5、フェリエナイト、モルデナイトなどがあり、結晶構造中にカリウム、ナトリウム、カルシウムなどの陽イオンを有している。
【0027】
本発明の成分AであるCa-A型ゼオライトとは、結晶構造がA型であり、結晶構造中の陽イオンがカルシウムのゼオライトのことである。用いられる成分Aは、自然界に存在する天然ゼオライトであっても、人工的に合成された合成ゼオライトであっても、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、合成ゼオライトを用いることが好ましい。
【0028】
ゼオライトは、一般的に温感を発揮することが知られている成分であるが、本発明では、結晶構造がA型であり、結晶構造中の陽イオンがカルシウムであるゼオライト(Ca-A型ゼオライト)を用いることにより、他の結晶構造や他の陽イオンのゼオライトと比較して、油性化粧料において、より最適な温感を発揮させることが可能となる。また、温感効果により毛穴を広げて毛穴の奥底に詰まった老廃物を浮かせる効果も期待できる、加えて、成分Aは微粒子であることから、適度なスクラブ効果によるマッサージ作用によって肌のキメを整える効果も期待できる。
【0029】
上記成分Aの平均粒径は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、本発明では、次に示す粒径範囲のものを用いることが好ましい。具体的には、篩通過法により粒度分布測定を行った場合の平均粒径が、0.001~200μmの範囲のものを用いることが好ましく、0.01~160μmの範囲のものを用いることがより好ましい。若しくは、レーザ回折・拡散法により湿式法で粒度分布測定を行った場合の平均粒径が、0.001~40μmの範囲のものを用いることが好ましく、0.01~30μmの範囲のものを用いることがより好ましい。本発明においては、上記範囲を満たす成分Aを用いることにより、化粧料中における成分Aの分散性を高めることができ、格段に優れた温感効果を発揮させることが可能となる。
【0030】
なお、本発明においては、上記成分Aは市販品を用いることができる。成分Aの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。また、本発明においては、上記粒径範囲を満たす市販品をそのまま用いてもよいが、市販品を粉砕機により更に細かく粉砕し、上記好適な粒径範囲に調製した調製物を用いてもよい。
【0031】
本発明の温感油性化粧料中の成分Aの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、最適な温感効果を発揮させる観点から、化粧料100質量%中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、製剤安定性の観点から、化粧料100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Aの含有量は、純分に換算した量である。
【0032】
[成分B]
上記成分Bは、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルおよび/又はポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンである。本発明では、上記成分Bを用いることにより、本発明の温感油性化粧料の製剤安定性と、上記成分Aの化粧料中の分散性を高めるとともに、洗浄時の洗い落ちを良好にすることができる。
【0033】
上記成分BのHLB値は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、製剤安定性を高める観点、成分Aの分散性を高める観点、並びに洗い落ちを高める観点から、2~20であることが好ましく、2~16であることがより好ましい。これら成分Bは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0034】
なお、本明細書において、上記ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルを「成分B1」、上記ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンを「成分B2」と称することがある。
【0035】
上記成分B1および成分B2を構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であっても、これら脂肪酸の縮合体(重合体)であっても、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されない。また、前記脂肪酸は、直鎖脂肪酸であっても、分岐脂肪酸であっても、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されない。加えて、前記脂肪酸は、単鎖型であっても、多鎖型であっても、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されない。
【0036】
好適な成分B1としては、例えば、ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ラウリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、オレイン酸ポリオキシエチレングリセリル、ヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルなどが挙げられる。これら好適な成分B1は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記成分B1における酸化エチレンの平均付加モル数は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、2~60であることが好ましく、2~40であることがより好ましい。上記成分B1の酸化エチレンの平均付加モル数が上記範囲内であると、本発明の温感油性化粧料の製剤安定性と上記成分Aの分散性を高め、洗浄時の洗い落ちを良好にすることができる。
【0038】
好適な成分B2としては、例えば、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなどが挙げられる。これら好適な成分B2は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記成分B2における酸化エチレンの平均付加モル数は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、2~60であることが好ましく、2~40であることがより好ましい。上記成分B2の酸化エチレンの平均付加モル数が上記範囲内であると、本発明の温感油性化粧料の製剤安定性と上記成分Aの分散性を高め、洗浄時の洗い落ちを良好にすることができる。
【0040】
なお、本発明においては、上記成分Bは市販品を用いることができる。成分Bの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0041】
本発明の温感油性化粧料中の成分Bの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、製剤安定性と上記成分Aの分散性を高める観点、並びに洗い落ちを良好にする観点から、化粧料100質量%中、4質量%以上であることが好ましく、6質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、化粧料100質量%中、18質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Bの含有量は、純分に換算した量である。
【0042】
[成分C]
本発明の温感油性化粧料には、成分Cとして脂肪酸ポリグリセリルを更に含有させることが好ましい。上記成分Cを用いることにより、温感油性化粧料の製剤安定性をより一層高めるとともに、洗浄時の洗い落ちをより一層良好にすることができる。
【0043】
具体的な成分Cとしては、例えば、カプリン酸ポリグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル、ミリスチン酸ポリグリセリル、パルミチン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル、オレイン酸ポリグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル、ジカプリン酸ポリグリセリル、ジミリスチン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ジオレイン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリミリスチン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸ポリグリセリル、トリオレイン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、テトララウリン酸ポリグリセリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリルなどが挙げられる。これら好適な成分Cは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記成分Cにおけるポリグリセリンの平均重合度は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、2~12であることが好ましく、2~10であることがより好ましい。上記成分Cのポリグリセリンの平均重合度が上記範囲内であると、本発明の温感油性化粧料の製剤安定性をより一層高め、洗浄時の洗い落ちをより一層良好にすることができる。
【0045】
なお、本発明においては、上記成分Cは市販品を用いることができる。成分Cの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0046】
本発明の温感油性化粧料中の成分Cの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、製剤安定性をより一層高める観点、並びに洗い落ちをより一層良好にする観点から、化粧料100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、化粧料100質量%中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Cの含有量は、純分に換算した量である。
【0047】
本発明の温感油性化粧料は、油剤を55質量%以上含み、上記した成分A~成分Cを組み合わせることにより、マッサージやクレンジングなどの施術時において、格段に優れた温感効果を発揮させることができることから、水和熱により温感効果を発揮する多価アルコールを実質的に含有させないことが好ましい。なお、本発明でいう実質的にとは、「別途、多価アルコールを含有させることはしない」という意味であり、各配合成分中に含まれる微量の多価アルコールまでを除外するものではない。
【0048】
[その他成分]
本発明の温感油性化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの上記成分Bおよび成分C以外の界面活性剤;増粘性高分子、粘土鉱物、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、防腐剤、美白剤、抗炎症剤、清涼剤、植物抽出エキス、植物発酵エキス、pH調整剤、中和剤、香料などを目的や用途に応じて適宜配合することができる。
【0049】
本発明の温感油性化粧料は、マッサージやクレンジングなどの施術時において、最適な温感を発揮させる観点から、水を含まないか、又は水を含み且つ化粧料100質量%中の水の含有量が1質量%以下である。すなわち、本発明の温感油性化粧料中の水の含有量は、0~1質量%であり、0~0.5質量%であることがより好ましい。
【0050】
本発明の温感油性化粧料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、上記各構成成分を混合し、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて撹拌する方法などが挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0051】
本発明の温感油性化粧料の性状は、特に限定されないが、例えば、液状、ペースト状、半固形状、固形状などが挙げられる。これら中でも、上記成分Aの分散を良好にし、優れた温感効果を発揮させる観点、並びに塗布時や延展時において厚みのある使用感を付与する観点から、半固形状に調製されることが好ましい。なお、本明細書において、「半固形状」とは、流動性がなく指の押圧などの応力により変形する固形状の剤型を意味する。また、「流動性がない」とは、化粧料を広口容器に充填し、該容器を斜め45度に30秒間傾けた際に、該化粧料が広口容器から垂れ落ちない状態をいう。
【0052】
本発明の温感油性化粧料は、チューブ容器、広口ジャー容器などの容易に取り出すことができる容器に充填されていることが好ましい。また、本発明の温感油性化粧料は、化粧品、医薬部外品、指定医薬部外品、雑貨などの形態をとり得る。
【0053】
[他の実施形態]
本発明の温感油性化粧料は、油性剤型であり、かつ、施術時に最適な温感を発揮させることができることから、クレンジング機能を付与した温感油性化粧料、所謂、温感油性クレンジング化粧料とすることもできる。
【0054】
本発明の温感油性化粧料を温感油性クレンジング化粧料とする場合においては、汚れとの馴染みの観点、並びに優れたクレンジング効果(汚れ除去効果)を発揮させる観点から、上記した油剤の中でも、植物油、植物油脂、ロウ類、炭化水素油およびエステル油から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0055】
上記温感油性クレンジング化粧料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、上記各構成成分を混合し、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて撹拌する方法などが挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0056】
上記温感油性クレンジング化粧料の性状は、特に限定されないが、例えば、液状、ペースト状、半固形状、固形状などが挙げられる。これら中でも、上記成分Aの分散を良好にし、優れた温感効果を発揮させる観点、並びに塗布時や延展時において厚みのある使用感を付与し、クレンジング効果を高める観点から、半固形状に調製されることが好ましい。
【0057】
上記温感油性クレンジング化粧料は、チューブ容器、広口ジャー容器などの容易に取り出すことができる容器に充填されていることが好ましい。また、上記温感油性クレンジング化粧料は、化粧品、医薬部外品、指定医薬部外品、雑貨などの形態をとり得る。
【0058】
上記温感油性クレンジング化粧料は、上記構成要件を満たすことにより、製剤の分離や離液がなく、優れた製剤安定性を有する。また、施術時に最適な温感効果を感じながらクレンジングを行うことができ、洗い落ちにも優れた効果を発揮する。
【実施例
【0059】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
なお、配合量は、特記しない限り「質量%」を表し、表中の成分の配合量は全て純分に換算した値である。また、評価は全て恒温下(25±2℃)で実施した。
【0060】
実施例および比較例では、下記成分を用いた。
【0061】
[油剤]
水添パーム油:商品名「TRIFAT P-52」(日光ケミカルズ社製)
シア脂:商品名「CROPURE SHEA BUTTER-SO-(JP)」(クローダジャパン社製)
ミツロウ:商品名「精製ミツロウ CY-100」(横関油脂工業社製)
フィッシャー・トロプシュワックス:商品名「Sasolwax C80」(サゾール社製)
パルミチン酸2-エチルヘキシル:商品名「コーヨーPOC」(交洋ファインケミカル社製)
セバシン酸ジエチルヘキシル:商品名「FineNeo-EHS」(日本精化社製)
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル:商品名「MIGLYOL 812N(F)」(IOI Oleo GmbH社製)
【0062】
[成分A]
Ca-A型ゼオライト:商品名「ゼオラム LB-310D」(東ソー社製)
【0063】
[成分B]
PEG-7(カプリル/カプリン酸)グリセリズ:商品名「CETIOL HE810」(BASFジャパン社製)
トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル:商品名「EMALEX GWIS-305」(日本エマルジョン社製)
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル:商品名「MファインオイルISG-20T」(ミヨシ油脂社製)
モノオレイン酸POE(20)ソルビタン:商品名「レオドールTW-O120V」(花王社製)
テトラオレイン酸ソルベス-30:商品名「レオドール430V」(花王社製)
【0064】
[成分C]
トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2:商品名「コスモール 43V」(日清オイリオ社製)
テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2
【0065】
(試料の調製1)
表1に記した組成に従い、実施例1~4および比較例1~4の温感油性化粧料を常法に準じて半固形状に調製し、下記評価に供した。結果を表1に併記する。
【0066】
(試験例1:製剤安定性の評価)
実施例および比較例で得られた各試料を、90g容量の広口容器にそれぞれ充填し、40℃の恒温槽にて1週間保管した。保管後の剤の状態を目視観察し、下記評価基準に従い評価した。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
【0067】
<製剤安定性の評価基準>
○(良好):製造直後と対比して、均一状態を維持し続けている(変化が全く認められない)
△(不十分):製造直後と対比して、均一状態を維持しているが、僅かな離液が認められる
×(不良):製造直後と対比して、均一状態を維持しておらず、明らかな離液が認められる
【0068】
(試験例2:使用感の評価)
乾いた手の平に各試料3gを取り、顔全体に塗布し、指先で小さな円を描きながら肌に馴染ませるように1分間マッサージを行い、その後、40℃の温水で十分に洗い流してタオルドライにより顔の水分を拭き取ってもらった。
【0069】
使用試験は、マッサージ時の「温感」、洗浄時の「洗い落ち」について行い、下記評価基準に従って官能評価した。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
【0070】
<温感の評価基準>
○(良好):最適な温感を十分に感じる
△(不十分):温感を感じるが十分でない
×(不良):温感を感じない
【0071】
<洗い落ちの評価基準>
○(良好):洗い落ちに優れる
△(不十分):洗い落ちに劣る
×(不良):洗い落ちが悪い
【0072】
【表1】
【0073】
表1の結果から、各実施例の温感油性化粧料は、製剤の分離や離液がなく、格段に優れた製剤安定性を発揮していることが分かる。また、各実施例の温感油性化粧料は、マッサージ時に最適な温感を十分に感じることができ、洗い落ちにも優れていることが分かる。これに対し、本発明の必須構成成分を充足しない比較例では、温感、洗い落ちに劣り、本発明の効果を十分に発揮し得ないものであることが分かる。
【0074】
(試料の調製2)
表2に記した組成に従い、実施例5~7および比較例5~7の温感油性クレンジング化粧料を常法に準じて半固形状に調製し、下記評価に供した。結果を表2に併記する。
【0075】
(試験例3:製剤安定性の評価)
実施例および比較例で得られた各試料を、90g容量の広口容器にそれぞれ充填し、40℃の恒温槽にて1週間保管した。保管後の剤の状態を目視観察し、下記評価基準に従い評価した。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
【0076】
<製剤安定性の評価基準>
○(良好):製造直後と対比して、均一状態を維持し続けている(変化が全く認められない)
△(不十分):製造直後と対比して、均一状態を維持しているが、僅かな離液が認められる
×(不良):製造直後と対比して、均一状態を維持しておらず、明らかな離液が認められる
【0077】
(試験例4:使用感の評価)
乾いた手の平に各試料3gを取り、メイクを施した顔全体に塗布し、メイク汚れが気になる箇所を中心に指先で小さな円を描きながら肌に馴染ませるように1分間クレンジングを行い、その後、40℃の温水で十分に洗い流してタオルドライにより顔の水分を拭き取ってもらった。
【0078】
使用試験は、マッサージ時の「温感」、洗浄時の「洗い落ち」タオルドライ後の「クレンジング効果(汚れの除去効果)」について行い、下記評価基準に従って官能評価した。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
【0079】
<温感の評価基準>
○(良好):最適な温感を十分に感じる
△(不十分):温感を感じるが十分でない
×(不良):温感を感じない
【0080】
<洗い落ちの評価基準>
○(良好):洗い落ちに優れる
△(不十分):洗い落ちに劣る
×(不良):洗い落ちが悪い
【0081】
<クレンジング効果の評価基準>
○(良好):クレンジング効果(汚れ除去効果)に優れる
△(不十分):クレンジング効果(汚れ除去効果)に劣る
×(不良):クレンジング効果(汚れ除去効果)がない
【0082】
【表2】
【0083】
表2の結果から、各実施例のクレンジング機能を発揮する温感油性化粧料は、製剤の分離や離液がなく、格段に優れた製剤安定性を発揮していることが分かる。また、各実施例の温感油性化粧料は、クレンジング時に最適な温感を十分に感じることができ、洗い落ちにも優れ、良好なクレンジング効果(汚れ除去効果)を発揮していることが分かる。これに対し、本発明の必須構成成分を充足しない比較例では、温感、洗い落ち、クレンジング効果に劣り、本発明の効果を十分に発揮し得ないものであることが分かる。