(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】プレス装置、制御装置、及び、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B30B 15/14 20060101AFI20250121BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20250121BHJP
B30B 1/06 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B30B15/14 F
B30B15/00 B
B30B1/06
(21)【出願番号】P 2021004833
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】ニデックドライブテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】松木 康司
(72)【発明者】
【氏名】田中 康宏
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-080200(JP,A)
【文献】特開2014-121717(JP,A)
【文献】特開平06-344008(JP,A)
【文献】特開2009-156698(JP,A)
【文献】特開平09-277100(JP,A)
【文献】特開2011-083790(JP,A)
【文献】特開昭63-299899(JP,A)
【文献】特開平04-322898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/14
B30B 15/00
B30B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を加工する金型の上型が取り付けられることが可能であり、鉛直方向に沿って移動するスライドと、
回転運動を往復運動に変換して、前記スライドを鉛直方向に沿って移動させるスライド移動機構と、
前記回転運動の回転角度を検出する回転検出部と、
前記金型の下型が取り付けられることが可能なボルスタと、
前記回転検出部の検出結果に基づいて、前記スライドの残り移動距離を算出するスライド位置算出部と、
前記上型における第1被検出部位と前記下型における第2被検出部位との間の距離である上下間距離と、前記残り移動距離とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて、前記スライド移動機構を制御するスライド制御部と
を備え、
前記回転検出部は、前記スライドの下死点よりも上方の位置で前記スライドが停止している状態において、前記回転角度を検出し、
前記上下間距離は、前記スライドの下死点よりも上方の前記位置で前記スライドが停止している前記状態において検出された距離を示し、
前記スライドの前記残り移動距離は、前記上下間距離が検出された時の前記スライドの
下面の鉛直方向の位置から、前記スライドの下死点までの距離を示す、プレス装置。
【請求項2】
前記上型は、鉛直下方に向かって突出する第1突出部を備え、
前記下型は、鉛直上方に向かって突出する第2突出部を備え、
前記第1突出部と前記第2突出部とは、鉛直方向に対向し、
前記スライドが上死点から下降することで、前記第1突出部の下端が前記第2突出部の上端に接触し、
前記第1被検出部位は、前記第1突出部の前記下端を示し、
前記第2被検出部位は、前記第2突出部の前記上端を示す、請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記スライドが停止している状態で前記スライドの
下面の鉛直方向の位置が調整された後であって、前記スライドが下死点に到達する前に、前記比較部は前記上下間距離と前記残り移動距離とを比較し、前記スライド制御部は前記比較部の比較結果に基づいて前記スライド移動機構を制御する、請求項1又は請求項2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記スライド制御部は、前記残り移動距離から前記上下間距離を減算して得られる差分値が閾値より大きい場合、前記スライドの移動を禁止する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプレス装置。
【請求項5】
前記差分値が前記閾値より大きい場合、ダイハイトが異常であることを報知する報知部を更に備える、請求項4に記載のプレス装置。
【請求項6】
前記上下間距離を検出する距離検出部を更に備え、
前記距離検出部は、前記金型に対して離隔した位置に固定される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプレス装置。
【請求項7】
前記上下間距離は、前記金型に固定される距離検出部によって検出される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプレス装置。
【請求項8】
対象物を加工する金型の上型が取り付けられることが可能であり、鉛直方向に沿って移動するスライドと、
回転運動を往復運動に変換して、前記スライドを鉛直方向に沿って移動させるスライド移動機構と、
前記回転運動の回転角度を検出する回転検出部と、
前記金型の下型が取り付けられることが可能なボルスタと
を備えるプレス装置を制御する制御装置であって、
前記回転検出部の検出結果に基づいて、前記スライドの残り移動距離を算出するスライド位置算出部と、
前記上型における第1被検出部位と前記下型における第2被検出部位との間の距離である上下間距離と、前記残り移動距離とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて、前記スライド移動機構を制御するスライド制御部と
を備え、
前記回転角度は、前記スライドの下死点よりも上方の位置で前記スライドが停止している状態において検出された角度を示し、
前記上下間距離は、前記スライドの下死点よりも上方の前記位置で前記スライドが停止している前記状態において検出された距離を示し、
前記スライドの前記残り移動距離は、前記上下間距離が検出された時の前記スライドの
下面の鉛直方向の位置から、前記スライドの下死点までの距離を示す、制御装置。
【請求項9】
対象物を加工する金型の上型が取り付けられることが可能であり、鉛直方向に沿って移動するスライドと、
回転運動を往復運動に変換して、前記スライドを鉛直方向に沿って移動させるスライド移動機構と、
前記回転運動の回転角度を検出する回転検出部と、
前記金型の下型が取り付けられることが可能なボルスタと
を備えるプレス装置を制御するコンピュータに、
前記回転検出部の検出結果に基づいて、前記スライドの残り移動距離を算出するステップと、
前記上型における第1被検出部位と前記下型における第2被検出部位との間の距離である上下間距離と、前記残り移動距離とを比較するステップと、
前記上下間距離と前記残り移動距離との比較結果に基づいて、前記スライド移動機構を制御するステップと
を実行させ、
前記回転角度は、前記スライドの下死点よりも上方の位置で前記スライドが停止している状態において検出された角度を示し、
前記上下間距離は、前記スライドの下死点よりも上方の前記位置で前記スライドが停止している前記状態において検出された距離を示し、
前記スライドの前記残り移動距離は、前記上下間距離が検出された時の前記スライドの
下面の鉛直方向の位置から、前記スライドの下死点までの距離を示す、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置、制御装置、及び、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプレス装置は、上金型および下金型を用いてワークをプレス加工する。プレス装置は、スライドと、ボルスタと、サーボモータと、モータ指示部とを備える(例えば、特許文献1)。スライドは、上金型が取り付けられる。ボルスタは、下金型が載置される。サーボモータは、スライドを上下方向に往復動作させる。モータ指示部は、下金型に載置したワークへの上金型の接近を検出する近接センサによって上金型のワークへの接近が検出されると、スライドの速度を変更するようにサーボモータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプレス装置では、例えば、ダイハイトの誤調整、又は、誤った金型の設置によって、スライドの下死点の近傍において、上金型から下金型に対して過荷重が加わる可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上型から下型に対して過荷重が加わることを予防できるプレス装置、制御装置、及び、コンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なプレス装置は、スライドと、スライド移動機構と、回転検出部と、ボルスタと、スライド位置算出部と、比較部と、スライド制御部とを備える。スライドには、対象物を加工する金型の上型が取り付けられることが可能である。スライドは、鉛直方向に沿って移動する。スライド移動機構は、回転運動を往復運動に変換して、前記スライドを鉛直方向に沿って移動させる。回転検出部は、前記回転運動の回転角度を検出する。ボルスタには、前記金型の下型が取り付けられることが可能である。スライド位置算出部は、前記回転検出部の検出結果に基づいて、前記スライドの残り移動距離を算出する。比較部は、前記上型における第1被検出部位と前記下型における第2被検出部位との間の距離である上下間距離と、前記残り移動距離とを比較する。スライド制御部は、前記比較部の比較結果に基づいて、前記スライド移動機構を制御する。前記回転検出部は、前記スライドの下死点よりも上方の位置で前記スライドが停止している状態において、前記回転角度を検出する。前記上下間距離は、前記スライドの下死点よりも上方の前記位置で前記スライドが停止している前記状態において検出された距離を示す。前記スライドの前記残り移動距離は、前記上下間距離が検出された時の前記スライドの下面の鉛直方向の位置から、前記スライドの下死点までの距離を示す。
【0007】
本発明の例示的な制御装置は、プレス装置を制御する。プレス装置は、スライドと、スライド移動機構と、回転検出部と、ボルスタとを備える。スライドには、対象物を加工する金型の上型が取り付けられることが可能である。スライドは、鉛直方向に沿って移動する。スライド移動機構は、回転運動を往復運動に変換して、前記スライドを鉛直方向に沿って移動させる。回転検出部は、前記回転運動の回転角度を検出する。ボルスタには、前記金型の下型が取り付けられることが可能である。制御装置は、スライド位置算出部と、比較部と、スライド制御部とを備える。スライド位置算出部は、前記回転検出部の検出結果に基づいて、前記スライドの残り移動距離を算出する。比較部は、前記上型における第1被検出部位と前記下型における第2 被検出部位との間の距離である上下間距離と、前記残り移動距離とを比較する。スライド制御部は、前記比較部の比較結果に基づいて、前記スライド移動機構を制御する。前記回転角度は、前記スライドの下死点よりも上方の位置で前記スライドが停止している状態において検出された角度を示す。前記上下間距離は、前記スライドの下死点よりも上方の前記位置で前記スライドが停止している前記状態において検出された距離を示す。前記スライドの前記残り移動距離は、前記上下間距離が検出された時の前記スライドの下面の鉛直方向の位置から、前記スライドの下死点までの距離を示す。
【0008】
本発明の例示的なコンピュータプログラムは、対象物を加工する金型の上型が取り付けられることが可能であり、鉛直方向に沿って移動するスライドと、回転運動を往復運動に変換して、前記スライドを鉛直方向に沿って移動させるスライド移動機構と、前記回転運動の回転角度を検出する回転検出部と、前記金型の下型が取り付けられることが可能なボルスタとを備えるプレス装置を制御するコンピュータに、前記回転検出部の検出結果に基づいて、前記スライドの残り移動距離を算出するステップと、前記上型における第1被検出部位と前記下型における第2被検出部位との間の距離である上下間距離と、前記残り移動距離とを比較するステップと、前記上下間距離と前記残り移動距離との比較結果に基づいて、前記スライド移動機構を制御するステップとを実行させる。前記回転角度は、前記スライドの下死点よりも上方の位置で前記スライドが停止している状態において検出された角度を示す。前記上下間距離は、前記スライドの下死点よりも上方の前記位置で前記スライドが停止している前記状態において検出された距離を示す。前記スライドの前記残り移動距離は、前記上下間距離が検出された時の前記スライドの下面の鉛直方向の位置から、前記スライドの下死点までの距離を示す。
【発明の効果】
【0009】
例示的な本発明によれば、上型から下型に対して過荷重が加わることを予防できるプレス装置、制御装置、及び、コンピュータプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプレス装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るプレス装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るプレス装置の制御方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施形態の変形例に係るプレス装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0012】
まず、
図1を参照して、プレス装置1を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るプレス装置1を示す模式図である。
図1では、プレス装置1を正面から見ている。プレス装置1には、対象物(不図示)を加工する金型2が取り付けられる。
図1では、図面の簡略化のために、対象物の図示を省略している。対象物は、被加工物であり、プレス装置1による加工対象である。対象物は、例えば、金属製である。対象物は、例えば、ワークである。
【0013】
プレス装置1は、金型2によって対象物を加工する。具体的には、プレス装置1は、金型2によって対象物をプレス加工する。金型2は、例えば、金属製である。金型2は、上型21と、下型23とを備える。プレス装置1は、上型21と下型23との間に対象物を挟み込んで、対象物をプレス加工する。なお、
図1では、理解を容易にするために金型2を簡略化して示しているが、実際には、金型2は、対象物のプレス加工の目的に応じた形状を有する。
【0014】
図1に示すように、プレス装置1は、フレーム3と、スライド移動機構5と、スライド7と、ダイハイト調整機構9と、ボルスタ11とを備える。プレス装置1は距離検出部13を更に備えることが好ましい。
【0015】
フレーム3は、クラウン31と、複数のコラム33と、ベッド35とを備える。例えば、フレーム3は、4本のコラム33を備える。クラウン31は、ベッド35の上方に配置される。ベッド35は、床面に設置される。複数のコラム33は、クラウン31とベッド35との間に配置される。複数のコラム33はクラウン31を支持する。ただし、フレーム3は、クラウン31と、複数のコラム33と、ベッド35とが分かれずに一体となった構造でもよい。
【0016】
スライド7とボルスタ11とは、クラウン31とベッド35との間に配置される。
【0017】
ボルスタ11はベッド35に配置される。具体的には、ボルスタ11はベッド35の上面35aに配置される。
【0018】
ボルスタ11には、下型23が取り付けられることが可能である。従って、対象物を加工する際には、ボルスタ11に下型23が取り付けられる。具体的には、ボルスタ11の上面11aに、下型23が取り付けられることが可能である。従って、対象物を加工する際には、ボルスタ11の上面11aに、下型23が取り付けられる。
【0019】
下型23は、下型本体231と、複数の第2突出部233とを備える。下型本体231は、ボルスタ11に取り付けられる。第2突出部233は、下型本体231から鉛直上方に向かって突出する。具体的には、第2突出部233は、下型本体231の上部231aから鉛直上方に向かって突出する。第2突出部233は、例えば、略円柱形状又は略円筒形状を有する。
【0020】
スライド7には、上型21が取り付けられることが可能である。従って、対象物を加工する際には、スライド7に上型21が取り付けられる。具体的には、スライド7の下面7aに、上型21が取り付けられることが可能である。従って、対象物を加工する際には、スライド7の下面7aに、上型21が取り付けられる。
【0021】
上型21は、上型本体211と、複数の第1突出部213とを備える。上型本体211は、スライド7に取り付けられる。第1突出部213は、上型本体211から鉛直下方に向かって突出する。具体的には、第1突出部213は、上型本体211の下部211aから鉛直下方に向かって突出する。第1突出部213は、例えば、略円柱形状又は略円筒形状を有する。
【0022】
複数の第1突出部213は、それぞれ、複数の第2突出部233に対応する。そして、第1突出部213と第2突出部233とは、鉛直方向VDに対向する。
【0023】
スライド7は、鉛直方向VDに沿って移動する。具体的には、スライド7は、鉛直方向VDに沿って延びる複数のガイド(不図示)に沿って移動する。
【0024】
図1では、説明の便宜のために、スライド7の上死点TD及び下死点BDを黒点によって示す。また、便宜上、スライド7の下面7aの鉛直方向VDの位置によって、上死点TD及び下死点BDが示される。
【0025】
スライド7は、鉛直方向VDに沿って上死点TDと下死点BDとの間を往復運動する。スライド7が上死点TDから下降することで、下死点BDにおいて、第1突出部213の下端213aが第2突出部233の上端233aに接触する。従って、第1突出部213及び第2突出部233は、スライド7の下降を規制するストッパとして機能する。つまり、第1突出部213及び第2突出部233の各々は、例えば、ストロークエンドブロックである。なお、
図1では、理解を容易にするために上型本体211及び下型本体231を簡略化して示しているが、実際には、第1突出部213と第2突出部233とが接触した状態では、上型本体211と下型本体231とに、対象物が挟み込まれてプレス加工される。
【0026】
スライド移動機構5は、回転運動を往復運動に変換して、スライド7を鉛直方向VDに沿って移動させる。
図1の例では、スライド移動機構5は、クランク機構によって、スライド7を鉛直方向VDに沿って移動させる。つまり、
図1の例では、プレス装置1はクランクプレスを実行する。
【0027】
スライド移動機構5はクラウン31に配置される。つまり、スライド移動機構5は、スライド7の上方に配置される。そして、スライド移動機構5は、ダイハイト調整機構9を介してスライド7に連結される。
【0028】
ダイハイト調整機構9は、スライド7が停止している状態でスライド7の鉛直方向VDの位置を調整する。本実施形態では、一例として、ダイハイト調整機構9は、スライド7が上死点TDで停止している状態でスライド7の鉛直方向VDの位置を調整する。
【0029】
換言すれば、ダイハイト調整機構9はダイハイトを調整する。ダイハイトとは、スライド7の下死点BDからボルスタ11の上面11aまでの距離のことである。スライド7のストローク長さは一定であるため、実質的には、上死点TDで停止している状態でスライド7の鉛直方向VDの位置を調整することは、ダイハイトを調整することに相当する。ストローク長さは、スライド7の上死点TDから下死点BDまでの距離を示す。
【0030】
ダイハイト調整機構9は連結部材91を備える。そして、スライド移動機構5は、連結部材91によってスライド7に連結される。連結部材91は、例えば、ねじ等の螺合部材を備える。
【0031】
図1の例では、スライド移動機構5は、コネクティングロッド51と、クランク軸52と、クラッチ(不図示)と、フライホイール53と、ベルト54と、プーリ55と、モータ56とを備える。
【0032】
コネクティングロッド51の先端部は、連結部材91を介してスライド7に連結される。一方、コネクティングロッド51の基端部は、クランク軸52に連結される。クランク軸52は回転方向RDに回転する。クランク軸52が回転方向RDに回転することを正転と記載する場合がある。なお、クランク軸52は、回転方向RDの反対の回転方向に回転することも可能である。クランク軸52が回転方向RDの反対の回転方向に回転することを逆転と記載する場合がある。
【0033】
クランク軸52が回転すると、クランク軸52に連結されたコネクティングロッド51が上下に往復運動する。その結果、コネクティングロッド51に連結されたスライド7が鉛直方向VDに沿って往復運動する。
【0034】
図1の例では、クランク軸52のクランク角度θがゼロ度のときに、スライド7は上死点TDに位置する。一方、クランク角度θが180度のときに、スライド7は下死点BDに位置する。クランク角度θは、スライド移動機構5が回転運動を往復運動に変換する際の回転運動の回転角度を示す。
図1の例では、クランク角度θは、クランク軸52の回転角度を示す。そして、クランク軸52が最上端に位置するときのクランク角度θをゼロ度に設定している。クランク角度θは、「回転運動の回転角度」の一例に相当する。
【0035】
クランク軸52の軸方向の一端部は、クラッチ(不図示)を介して、フライホイール53に連結される。そして、クランク軸52は、フライホイール53の回転にともなって回転する。フライホイール53は、例えば、略円板形状又は略円柱形状を有する。
【0036】
ベルト54は、フライホイール53とプーリ55とに、張力のかかった状態で架け渡される。プーリ55は、略円板形状又は略円柱形状を有する。
【0037】
プーリ55は、モータ56の回転軸に連結される。従って、モータ56が回転すると、プーリ55が回転する。プーリ55が回転すると、ベルト54が回転する。ベルト54が回転すると、フライホイール53が回転する。フライホイール53が回転すると、クランク軸52が回転する。クランク軸52が回転すると、コネクティングロッド51が上下に往復運動する。コネクティングロッド51が上下に往復運動すると、スライド7が鉛直方向VDに沿って往復運動する。スライド7が鉛直方向VDに沿って往復運動すると、上型21が鉛直方向VDに沿って往復運動する。その結果、上型21(具体的には上型本体211)と下型23(具体的には下型本体231)との間に対象物が挟み込まれて、対象物が成形される。
【0038】
距離検出部13は、金型2の上下間距離d1を検出する。上下間距離d1は、上型21における第1被検出部位FDと下型23における第2被検出部位SDとの間の鉛直方向VDの距離である。第1被検出部位FDと第2被検出部位SDとは、例えば、鉛直方向VDに対向する。本実施形態では、第1被検出部位FDは、第1突出部213の下端213aを示す。第2被検出部位SDは、第2突出部233の上端233aを示す。
【0039】
図1の例では、距離検出部13は、金型2に対して離隔した位置に固定される。従って、本実施形態によれば、プレス装置1のメーカーは、距離検出部13をプレス装置1に組み込んで販売できる。その結果、金型2に距離検出部13を固定する場合と比較して、プレス装置1及び金型2のユーザの利便性を向上できる。例えば、プレス装置1及び金型2のユーザは、距離検出部13を固定するための金型2の加工を要求されない。
【0040】
具体的には、距離検出部13は、フレーム3(例えば、コラム33)に固定される。この場合、例えば、距離検出部13は、第1突出部213と第2突出部233との間の空間に対して水平方向HDに対向する。
【0041】
本実施形態では、距離検出部13は、画像処理装置である。画像処理装置は、カメラ及びマイクロコンピュータを備える。この場合、距離検出部13のカメラは、第1突出部213及び第2突出部233を撮像する。そして、距離検出部13のマイクロコンピュータは、撮像画像に含まれる第1突出部213及び第2突出部233の画像を解析して、第1被検出部位FDと第2被検出部位SDとの間の上下間距離d1を算出する。なお、距離検出部13が、カメラを備え、撮像画像を、後述する制御部151(
図2)に出力してもよい。そして、制御部151が、撮像画像に含まれる第1突出部213及び第2突出部233の画像を解析して、上下間距離d1を算出してもよい。
【0042】
なお、距離検出部13が画像処理装置である場合、距離検出部13による検出精度を向上するために、第1被検出部位FD及び第2被検出部位SDの各々にマーカを配置してもよい。マーカは、例えば、特定色彩の塗料である。
【0043】
次に、
図2を参照してプレス装置1を説明する。
図2は、プレス装置1を示すブロック図である。
図2に示すように、プレス装置1は、スライド位置算出部A1と、比較部A2と、スライド制御部A3と、ダイハイト調整指示部A4と、設定部A5とを更に備える。
【0044】
具体的には、プレス装置1は、制御装置15を備える。制御装置15はプレス装置1を制御する。制御装置15は「コンピュータ」の一例に相当する。制御装置15は、
図1に示すように、例えば、フレーム3(例えば、コラム33)に固定される。なお、制御装置15の位置は、特に限定されず、フレーム3から離隔していてもよい。
【0045】
制御装置15は、制御部151と、記憶部153と、操作表示部155とを備える。
【0046】
具体的には、制御部151は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む。記憶部153は、記憶装置を含み、データおよびコンピュータプログラムを記憶する。具体的には、記憶部153は、半導体メモリ等の主記憶装置と、半導体メモリ、ソリッドステートドライブ、及び/又は、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置とを含む。記憶部153は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。記憶部153は、非一時的コンピュータ読取可能記憶媒体の一例に相当する。
【0047】
制御部151は、スライド位置算出部A1と、比較部A2と、スライド制御部A3と、ダイハイト調整指示部A4と、設定部A5とを備える。具体的には、制御部151のプロセッサは、記憶部153の記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、スライド位置算出部A1、比較部A2、スライド制御部A3、ダイハイト調整指示部A4、及び、設定部A5として機能する。制御部151の詳細は後述する。
【0048】
操作表示部155は、各種情報を表示するとともに、ユーザからの操作を受け付ける。具体的には、操作表示部155は、操作部B1と、表示部B2とを備える。
【0049】
操作部B1は、ユーザからの操作を受け付ける。操作部B1は、例えば、タッチスクリーン、又は、キーボード及びマウスである。操作部B1がタッチスクリーンである場合、操作部B1と表示部B2とは重ねて配置される。
【0050】
例えば、操作部B1は、ユーザからダイハイトの調整指示を受け付ける。そして、操作部B1は、ダイハイトの調整指示をダイハイト調整指示部A4に出力する。ダイハイトの調整指示は、ダイハイトの調整量を含む。そして、ダイハイト調整指示部A4は、ダイハイト調整量に基づいてダイハイトを調整するように、ダイハイト調整機構9に指示を出す。その結果、ダイハイト調整機構9は、指示されたダイハイト調整量だけダイハイトを調整する。具体的には、ダイハイト調整機構9は、駆動部92を更に備える。駆動部92は、例えば、インダクションモータ又はサーボモータである。駆動部92は、スライド7が停止している状態で連結部材91を駆動することで、ダイハイトを調整する。
【0051】
例えば、操作部B1は、ユーザから、スライド7及びスライド移動機構5に対する各種設定値(ストローク長さを含む)を受け付ける。そして、設定部A5は、操作部B1が受け付けた各種設定値を記憶部153に記憶させる。
【0052】
表示部B2は、各種情報を表示する。表示部B2は、例えば、液晶ディスプレイ、又は、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである。表示部B2は、「報知部」の一例に相当する。
【0053】
プレス装置1は回転検出部17を更に備える。回転検出部17はクランク角度θを検出する。回転検出部17は、例えば、クランク軸52に取り付けられる。そして、回転検出部17は、クランク軸52のクランク角度θを検出して、クランク角度θを示す検出信号を制御部151に出力する。回転検出部17は、例えば、回転エンコーダである。
【0054】
プレス装置1は運転指示入力部19を更に備える。運転指示入力部19は、ユーザから、プレス装置1の運転指示の入力を受け付ける。運転指示入力部19は、例えば、ボタンスイッチである。なお、運転指示入力部19は、操作部B1に含まれていてもよい。また、プレス装置1は、運転指示を外部装置から受け付けてもよい。
【0055】
スライド制御部A3は、スライド移動機構5を制御する。例えば、スライド制御部A3は、クランク軸52とフライホイール53との間に配置されるクラッチ(不図示)を制御して、フライホイール53からクランク軸52への回転力の伝達と遮断とを切り替える。例えば、運転指示入力部19が運転指示の入力を受け付けた場合、スライド制御部A3は、クラッチを制御して、フライホイール53からクランク軸52へ回転力を伝達する。その結果、スライド7が鉛直方向VDに沿って往復運動する。
【0056】
引き続き
図1及び
図2を参照して、制御部151、回転検出部17、及び、距離検出部13を説明する。
【0057】
回転検出部17は、スライド7の下死点BDよりも上方の位置でスライド7が停止している状態においてクランク角度θ(以下、「クランク角度θs」と記載する)を検出する。つまり、クランク角度θsは、スライド7の下死点BDよりも上方の位置でスライド7が停止している状態において検出された角度を示す。回転検出部17は、クランク角度θsを示す検出信号をスライド位置算出部A1に出力する。
【0058】
距離検出部13は、回転検出部17がクランク角度θsを検出した時のスライド7の停止位置において、金型2の上下間距離d1を検出する。つまり、距離検出部13は、スライド7の下死点BDよりも上方の位置でスライド7が停止している状態において、金型2の上下間距離d1を検出する。従って、金型2の上下間距離d1は、スライド7の下死点BDよりも上方の位置でスライド7が停止している状態において検出された距離を示す。距離検出部13は、金型2の上下間距離d1を示す検出信号を比較部A2に出力する。
【0059】
スライド位置算出部A1は、回転検出部17の検出結果に基づいて、スライド7の残り移動距離d2を算出する。本実施形態では、スライド位置算出部A1は、回転検出部17によって検出されたクランク角度θsに基づいて、スライド7の残り移動距離d2を算出する。スライド7の残り移動距離d2は、金型2の上下間距離d1が検出された時のスライド7の鉛直方向VDの位置から、スライド7の下死点BDまでの距離を示す。
【0060】
例えば、スライド7の現在位置Pから下死点BDまでの距離dが、式(1)によって表される。式(1)において、「SL」は、スライド7のストローク長さである。f(θ)は、スライド7の上死点TDから現在位置Pまでの距離を表す関数であり、「θ」は、クランク角度θである。関数f(θ)にクランク角度θを入力すると、スライド7の上死点TDから現在位置Pまでの距離が出力される。
【0061】
d=SL-f(θ) …(1)
【0062】
スライド位置算出部A1は、式(1)にクランク角度θsを入力することで、式(2)に示すように、スライド7の残り移動距離d2を算出する。
【0063】
d2=SL-f(θs) …(2)
【0064】
比較部A2は、金型2の上下間距離d1とスライド7の残り移動距離d2とを比較する。そして、スライド制御部A3は、比較部A2の比較結果に基づいて、スライド移動機構5を制御する。従って、本実施形態によれば、スライド制御部A3は、上型21と下型23とが接触する前に、比較部A2の比較結果に基づいて上型21から下型23に対して過荷重が加わるか否かを予測できる。そして、スライド制御部A3は、予測結果に基づいてスライド移動機構5を制御することで、上型21から下型23に対して過荷重が加わることを予防できる。例えば、スライド制御部A3は、金型2による対象物の加工前に、上型21から下型23に対して過荷重が加わるか否かを予測して、予測結果に基づいてスライド移動機構5を制御することで、上型21から下型23に対して過荷重が加わることを予防できる。上型21から下型23に対して過荷重が加わることを予防できると、金型2の耐久性を向上できる。また、プレス装置1に対しても過荷重が加わることが予防されるので、プレス装置1の耐久性も向上できる。
【0065】
例えば、スライド制御部A3は、金型2の上下間距離d1とスライド7の残り移動距離d2との比較結果に基づいて、スティック状態が発生するか否かを予測できる。そして、スライド制御部A3は、スティック状態が発生すると予測した場合には、スライド7の移動(例えば下降)を禁止することで、スティック状態の発生を予防できる。また、本実施形態では、油圧によるスティック回避機構を備えていなくてもよいため、プレス装置1の製造コストを低減できる。
【0066】
スティック状態とは、例えば、スライド7が下死点BD近傍に位置する場合において、過荷重によって上型21(例えば、第1突出部213)が下型23(例えば、第2突出部233)に噛み込んで、上型21が下型23から離脱困難な状態のことである。プレス装置1にスティック状態が発生すると、例えば、スライド移動機構5において、回転運動を往復運動に変換する際の回転運動の正転及び逆転の双方が困難になって、スライド7を移動することが困難になる。
【0067】
具体的には、比較部A2は、スライド7の残り移動距離d2から金型2の上下間距離d1を減算して、減算値である差分値DF(=d2-d1)を算出する。差分値DFが閾値THより大きい場合は、スライド7の下死点BD近傍において上型21から下型23に対して過荷重が加わる可能性がある。つまり、金型2の上下間距離d1を超えてスライド7が下降し過ぎてしまい、上型21から下型23に対して過荷重が加わる可能性がある。閾値THは、ゼロ以上の実数である。閾値THは、上下間距離d1がゼロである場合のスライド7の位置に対するスライド7の鉛直下方の超過距離を示す。閾値THは、実験的及び/又は経験的に定められる。
【0068】
そこで、スライド制御部A3は、スライド7の残り移動距離d2から金型2の上下間距離d1を減算して得られる差分値DFが閾値THより大きい場合、スライド7の移動を禁止する。従って、本実施形態によれば、上型21から下型23に対して過荷重が加わることを効果的に予防できる。例えば、スティック状態の発生を効果的に予防できる。
【0069】
具体的には、スライド制御部A3は、差分値DFが閾値THより大きい場合は、スライド移動機構5を制御して、スライド7の移動を禁止する。
【0070】
例えば、スライド制御部A3は、差分値DFが閾値THより大きい場合は、クランク軸52とフライホイール53との間に配置されるクラッチ(不図示)を制御して、フライホイール53からクランク軸52への回転力の伝達を遮断する。その結果、スライド7の移動が禁止される。
【0071】
特に、スライド制御部A3は、差分値DFが閾値THより大きい場合は、運転指示入力部19が運転指示の入力を受け付けた場合であっても、スライド7の移動を禁止する。
【0072】
一方、スライド制御部A3は、差分値DFが閾値TH以下である場合、スライド7の移動を許可する。
【0073】
具体的には、差分値DFが閾値TH以下である場合は、運転指示入力部19がプレス装置1の運転指示の入力を受け付けると、スライド制御部A3は、スライド移動機構5を制御して、スライド7を駆動する。その結果、スライド7は、鉛直方向VDに沿って往復運動する。
【0074】
例えば、差分値DFが閾値TH以下である場合は、運転指示入力部19がプレス装置1の運転指示の入力を受け付けると、スライド制御部A3は、クランク軸52とフライホイール53との間に配置されるクラッチ(不図示)を制御して、フライホイール53からクランク軸52へ回転力を伝達する。その結果、スライド7が駆動される。
【0075】
また、本実施形態では、スライド制御部A3は、差分値DFが閾値THより大きい場合、ダイハイトが異常であることを報知するように、表示部B2を制御する。従って、表示部B2は、差分値DFが閾値THより大きい場合、ダイハイトが異常であることを報知する。その結果、本実施形態によれば、ユーザに対して、ダイハイトを調整することを喚起できる。そして、ダイハイトの調整によって、上型21から下型23に対して過荷重が加わることを予防できる。
【0076】
例えば、表示部B2は、ダイハイトが異常であることを直接的又は間接的に報知する。直接的な報知は、例えば、「ダイハイトが異常です。」、又は、「ダイハイトが小さ過ぎです。」、である。間接的な報知は、例えば、「ダイハイトを調整して下さい。」、「上型から下型に対して過荷重が加わる可能性があります。」、又は、「スティック状態が発生する可能性があります。」、である。
【0077】
また、本実施形態では、一例として、スライド7が停止している状態でスライド7の鉛直方向VDの位置が調整された後であって、スライド7が下死点BDに到達する前に、回転検出部17はクランク角度θsを検出し、スライド位置算出部A1は、回転検出部17の検出結果であるクランク角度θsに基づいてスライド7の残り移動距離d2を算出し、距離検出部13は金型2の上下間距離d1を検出する。加えて、スライド7が停止している状態でスライド7の鉛直方向VDの位置が調整された後であって、スライド7が下死点BDに到達する前に、比較部A2は金型2の上下間距離d1とスライド7の残り移動距離d2とを比較し、スライド制御部A3は比較部A2の比較結果に基づいてスライド移動機構5を制御する。
【0078】
例えば、ダイハイト調整機構9によってスライド7が静止している状態でスライド7の鉛直方向VDの位置が調整される場合、ユーザの操作ミスによって誤調整が発生し得る。スライド7の位置の誤調整は、上型21から下型23への過荷重の原因になり得る。そこで、スライド7の鉛直方向VDの位置が調整された後であって、スライド7が下死点BDに到達する前において、スライド制御部A3が、比較部A2の比較結果に基づいてスライド移動機構5を制御することで、上型21から下型23に対して過荷重が加わることを効率的に予防できる。
【0079】
また、本実施形態では、一例として、プレス装置1に金型2が取り付けられた直後であって、スライド7が下死点BDに到達する前に、回転検出部17はクランク角度θsを検出し、スライド位置算出部A1は、回転検出部17の検出結果であるクランク角度θsに基づいてスライド7の残り移動距離d2を算出し、距離検出部13は金型2の上下間距離d1を検出する。加えて、プレス装置1に金型2が取り付けられた直後であって、スライド7が下死点BDに到達する前に、比較部A2は金型2の上下間距離d1とスライド7の残り移動距離d2とを比較し、スライド制御部A3は比較部A2の比較結果に基づいてスライド移動機構5を制御する。
【0080】
例えば、プレス装置1に金型2が誤って取り付けられた場合、又は、プレス装置1に誤った金型2が取り付けられた場合、上型21から下型23への過荷重の原因になり得る。そこで、プレス装置1に金型2が取り付けられた直後であって、スライド7が下死点BDに到達する前において、スライド制御部A3が、比較部A2の比較結果に基づいてスライド移動機構5を制御することで、上型21から下型23に対して過荷重が加わることを効率的に予防できる。
【0081】
なお、プレス装置1に金型2が取り付けられることは、スライド7に上型21が取り付けられ、ボルスタ11に下型23が取り付けられることを示す。
【0082】
また、本実施形態では、
図1に示すように、第1被検出部位FDは、第1突出部213の下端213aを示す。また、第2被検出部位SDは、第2突出部233の上端233aを示す。従って、距離検出部13によって検出される金型2の上下間距離d1は、上型21の第1突出部213の下端213aと下型23の第2突出部233の上端233aとの間の距離である。
【0083】
そこで、本実施形態では、スライド制御部A3は、上型21の第1突出部213と下型23の第2突出部233とが接触する前に、比較部A2の比較結果に基づいて第1突出部213から第2突出部233に対して過荷重が加わるか否かを予測できる。そして、スライド制御部A3は、予測結果に基づいてスライド移動機構5を制御することで、第1突出部213から第2突出部233に対して過荷重が加わることを予防できる。
【0084】
例えば、スライド制御部A3は、第1突出部213が第2突出部233に噛み込むことに起因するスティック状態が発生するか否かを予測できる。そして、スライド制御部A3は、スティック状態が発生すると予測した場合には、スライド7の移動(例えば下降)を禁止することで、スティック状態の発生を予防できる。
【0085】
次に、
図2及び
図3を参照して、プレス装置1の制御方法を説明する。
図3は、プレス装置1の制御方法を示すフローチャートである。
図3に示すように、制御方法は、ステップS1~ステップS9を含む。
図2の記憶部153に記憶されたコンピュータプログラムは、制御装置15(具体的には制御部151)に、ステップS1~ステップS9の処理を実行させる。
【0086】
図3に示すように、ステップS1及びステップS3が並行して実行される。
【0087】
具体的には、まず、ステップS1において、回転検出部17は、スライド7の下死点BDよりも上方の位置でスライド7が停止している状態において、クランク角度θsを検出する。そして、スライド位置算出部A1は、回転検出部17から、クランク角度θsを取得する。
【0088】
次に、ステップS2において、スライド位置算出部A1は、回転検出部17の検出結果であるクランク角度θsに基づいて、スライド7の残り移動距離d2を算出する。
【0089】
一方、ステップS3において、距離検出部13は、スライド7の下死点BDよりも上方の位置でスライド7が停止している状態において、金型2の上下間距離d1を検出する。そして、比較部A2は、距離検出部13から、金型2の上下間距離d1を取得する。
【0090】
次に、ステップS4において、比較部A2は、スライド7の残り移動距離d2から金型2の上下間距離d1を減算して、差分値DFを算出する。
【0091】
次に、ステップS5において、比較部A2は、差分値DFが閾値THよりも大きいか否かを判定する。つまり、比較部A2は、金型2の上下間距離d1と、スライド7の残り移動距離d2とを比較する。
【0092】
ステップS5で差分値DFが閾値THよりも大きいと判定された場合(Yes)、処理はステップS7に進む。
【0093】
次に、ステップS7において、スライド制御部A3は、スライド移動機構5を制御して、スライド7の移動を禁止する。つまり、スライド制御部A3は、比較部A2の比較結果に基づいてスライド移動機構5を制御して、スライド7の移動を禁止する。
【0094】
次に、ステップS8において、スライド制御部A3は、ダイハイトが異常であることを報知するように表示部B2を制御する。その結果、表示部B2は、ダイハイトが異常であることを報知する。
【0095】
次に、ステップS9において、ダイハイト調整指示部A4は、操作部B1が受け付けたダイハイト調整量に基づいてダイハイトを調整するように、ダイハイト調整機構9に指示を出す。その結果、ダイハイト調整機構9は、指示されたダイハイト調整量だけダイハイトを調整する。そして、処理はステップS1、S3に進む。
【0096】
一方、ステップS5で差分値DFが閾値TH以下であると判定された場合(No)、処理はステップS6に進む。
【0097】
次に、ステップS6において、スライド制御部A3は、スライド移動機構5を制御して、スライド7の移動を許可する。つまり、スライド制御部A3は、比較部A2の比較結果に基づいてスライド移動機構5を制御して、スライド7の移動を許可する。そして、処理は終了する。
【0098】
以上、
図3を参照して説明したように、本実施形態によれば、差分値DFが閾値THよりも大きい場合にスライド7の移動を禁止することで、上型21から下型23に対して過荷重が加わることを予防できる。
【0099】
なお、ステップS1よりも後にステップS3が実行されてもよいし、ステップS3よりも後にステップS1が実行されてもよい。つまり、ステップS1とステップS3との順番は特に限定されない。
【0100】
(変形例)
図4を参照して、本発明の実施形態の変形例に係るプレス装置1Aを説明する。変形例に係るプレス装置1Aの距離検出部13Aが金型2に固定される点で、距離検出部13が金型2に対して離隔しているプレス装置1(
図1)と主に異なる。以下、変形例が
図1を参照して説明した実施形態と異なる点を主に説明する。
【0101】
図4は、本発明の実施形態の変形例に係るプレス装置1Aを示す模式図である。
図4に示すように、距離検出部13Aは金型2に固定される。例えば、距離検出部13Aは金型2に埋め込まれる。そして、距離検出部13Aは、金型2の上下間距離d1Aを検出する。変形例によれば、ユーザは、金型2の所望の位置に距離検出部13Aを固定できる。また、変形例では、例えば、比較的安価な距離検出部13Aを利用できる。距離検出部13Aは、例えば、レーザ変位センサ、LED(Light Emitting Diode)変位センサ、渦電流式変位センサ、又は、超音波変位センサである。
【0102】
図4の例では、距離検出部13Aは、上型21に固定される。具体的には、距離検出部13Aは、上型本体211に固定される。例えば、距離検出部13Aは、上型本体211に埋め込まれる。
【0103】
なお、距離検出部13Aは、下型23に固定されてもよい。具体的には、距離検出部13Aは、下型本体231に固定される。例えば、距離検出部13Aは、下型本体231に埋め込まれる。
【0104】
また、距離検出部13Aが2つの要素を備える場合、一方の要素が上型21(例えば上型本体211)に固定され、他方の要素が下型23(例えば下型本体231)に固定されてもよい。
【0105】
ここで、変形例では、一例として、第1被検出部位FDAは上型本体211の特定部位211bを示し、第2被検出部位SDAは下型本体231の特定部位231bを示す。金型2の上下間距離d1Aは、第1被検出部位FDAと第2被検出部位SDAとの間の鉛直方向VDの距離である。
【0106】
図4の例では、第1被検出部位FDAは、上型本体211の下部211aに位置する。また、第1被検出部位FDAは、上型本体211のうち、対象物(被加工物)に接触する部位と異なる部位を示す。一方、第2被検出部位SDAは、下型本体231の上部231aに位置する。また、第2被検出部位SDAは、下型本体231のうち、対象物(被加工物)に接触する部位と異なる部位を示す。また、
図4の例では、第1被検出部位FDAと第2被検出部位SDAとは鉛直方向VDに対向する。
【0107】
また、
図2に示す比較部A2は、金型2の上下間距離d1Aとスライド7の残り移動距離d2とを比較する。そして、スライド制御部A3は、比較部A2の比較結果に基づいて、スライド移動機構5を制御する。その結果、変形例では、
図1及び
図2を参照して説明した実施形態と同様に、上型21から下型23に対して過荷重が加わることを予防できる。
【0108】
具体的には、比較部A2は、スライド7の残り移動距離d2から金型2の上下間距離d1Aを減算し、減算値である差分値DFAを算出する。この場合、差分値DFAは負の値を示す。従って、差分値DFAが大きいほど、つまり、差分値DFAの絶対値が小さいほど、スライド7の下死点BDにおいて、スライド7がボルスタ11に接近する。その結果、スライド7の下死点BD近傍において上型21から下型23に対して過荷重が加わる可能性がある。
【0109】
そこで、比較部A2は、差分値DFAが閾値THAより大きいか否かを判定する。閾値THAは、許容できる限界の荷重が上型21から下型23に加わる場合の第1被検出部位FDAと第2被検出部位SDAとの間の鉛直方向VDの距離を示す。閾値THAは、ゼロよりも小さい実数である。閾値THAは、実験的及び/又は経験的に定められる。
【0110】
そして、スライド制御部A3は、差分値DFAが閾値THAより大きい場合、スライド移動機構5を制御して、スライド7の移動を禁止する。その結果、上型21から下型23に対して過荷重が加わることを効果的に予防できる。その他、変形例に係るスライド制御部A3の動作は、
図1及び
図2を参照して説明した実施形態に係るスライド制御部A3の動作と同様である。
【0111】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0112】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0113】
(1)
図1を参照して説明した実施形態では、第1被検出部位FDは第1突出部213の下端213aを示し、第2被検出部位SDは第2突出部233の上端233aを示した。ただし、第1被検出部位FDが上型21に位置し、第2被検出部位SDが下型23に位置する限りは、第1被検出部位FD及び第2被検出部位SDの位置は、特に限定されない。この場合、例えば、第1被検出部位FDと第2被検出部位SDとは、鉛直方向VDに沿って一直線上に位置する。
【0114】
例えば、第1被検出部位FDは、第1突出部213において下端213aと異なる部位であってもよいし、上型本体211の部位であってもよい。第1被検出部位FDが上型本体211の部位である場合、第1被検出部位FDは、上型本体211のうち、対象物(被加工物)に接触する部位と異なる部位である。
【0115】
例えば、第2被検出部位SDは、第2突出部233において上端233aと異なる部位であってもよいし、下型本体231の部位であってもよい。第2被検出部位SDが下型本体231の部位である場合、第2被検出部位SDは、下型本体231のうち、対象物(被加工物)に接触する部位と異なる部位である。
【0116】
一例として、
図1に示すように、第1被検出部位FDAが上型本体211の側面の特定部位であり、第2被検出部位SDAが下型本体231の側面の特定部位である場合を説明する。第1被検出部位FDA及び第2被検出部位SDAの各々は、マーカを含んでいてもよい。マーカは、例えば、特定色彩の塗料又は光反射材である。そして、距離検出部13は、金型2の上下間距離d1Aを検出する。上下間距離d1Aは、第1被検出部位FDAと第2被検出部位SDAとの間の鉛直方向VDの距離である。この例では、
図2に示す比較部A2及びスライド制御部A3の処理は、
図4を参照して説明した変形例に係る比較部A2及びスライド制御部A3の処理と同様である。
【0117】
(2)
図4を参照して説明した変形例では、第1被検出部位FDAは上型本体211の特定部位211bを示し、第2被検出部位SDAは下型本体231の特定部位231bを示した。ただし、第1被検出部位FDAが上型21に位置し、第2被検出部位SDAが下型23に位置する限りは、第1被検出部位FDA及び第2被検出部位SDAの位置は、特に限定されない。この場合、例えば、第1被検出部位FDAと第2被検出部位SDAとは、鉛直方向VDに沿って一直線上に位置する。
【0118】
例えば、第1被検出部位FDAは、上型本体211において特定部位211bと異なる部位であってもよいし、第1突出部213における部位(例えば、下端213a)であってもよい。例えば、第2被検出部位SDAは、下型本体231において特定部位231bと異なる部位であってもよいし、第2突出部233における部位(例えば、上端233a)であってもよい。
【0119】
一例として、
図4に示すように、第1被検出部位FDが第1突出部213の下端213aであり、第2被検出部位SDが第2突出部233の上端233aである。この場合、距離検出部13Aは、例えば、第1突出部213又は第2突出部233に固定される。そして、距離検出部13Aは、金型2の上下間距離d1を検出する。上下間距離d1は、第1被検出部位FDと第2被検出部位SDとの間の鉛直方向VDの距離である。この例では、
図2に示す比較部A2及びスライド制御部A3の処理は、
図1及び
図2を参照して説明した実施形態の比較部A2及びスライド制御部A3の処理と同様である。なお、距離検出部13Aが2つの要素を備える場合、一方の要素が第1突出部213に固定され、他方の要素が第2突出部233に固定されてもよい。
【0120】
(3)
図1及び
図4を参照して説明した実施形態及び変形例では、スライド移動機構5は、クラッチ(不図示)、フライホイール53、ベルト54、及び、プーリ55を備えていたが、回転運動を往復運動に変換できる限りは、スライド移動機構5の構成は、特に限定されない。
【0121】
例えば、スライド移動機構5において、クランク軸52にモータ56が直結されていてもよい。具体的には、モータ56がギア(不図示)を介してクランク軸52に連結されていてもよい。この場合、モータ56は、サーボモータである。そして、この場合、回転検出部17は、モータ56の回転軸に取り付けられ、モータ56の回転角度を検出する。さらに、回転検出部17は、モータ56の回転角度を示す検出信号を制御部151に出力する。そして、制御部151は、モータ56の回転角度に基づいて、クランク角度θを算出する。
【0122】
この例では、
図2のスライド制御部A3は、モータ56を制御して、モータ56からクランク軸52への回転力の伝達と遮断とを切り替える。
【0123】
例えば、スライド制御部A3は、差分値DF、DFAが閾値TH、THAより大きい場合は、モータ56を停止して、モータ56からクランク軸52への回転力の伝達を遮断する。その結果、スライド7の移動が禁止される。一方、例えば、差分値DF、DFAが閾値TH、THA以下である場合は、運転指示入力部19がプレス装置1の運転指示の入力を受け付けると、スライド制御部A3は、モータ56を駆動して、モータ56からクランク軸52へ回転力を伝達する。その結果、スライド7が駆動され、スライド7が鉛直方向VDに沿って往復運動する。
【0124】
また、
図1及び
図4では、スライド移動機構5はクランク機構を採用した。ただし、スライド移動機構5は、例えば、リンク機構によって、スライド7を鉛直方向VDに沿って移動させてもよい。つまり、プレス装置1はリンクプレスを実行してもよい。また、スライド移動機構5は、例えば、ナックル機構によって、スライド7を鉛直方向VDに沿って移動させてもよい。つまり、プレス装置1はナックルプレスを実行してもよい。
【0125】
(4)
図1及び
図4を参照して説明した実施形態及び変形例では、差分値DF、DFAが閾値TH、THAより大きい場合、表示部B2が、ダイハイトが異常であることを報知した。ただし、この場合、スピーカ等の音声出力部が、ダイハイトが異常であることを報知してもよい。この場合、音声出力部が「報知部」の一例に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、例えば、プレス装置、制御装置、及び、コンピュータプログラムに利用できる。
【符号の説明】
【0127】
1、1A プレス装置
2 金型
5 スライド移動機構
7 スライド
11 ボルスタ
13、13A 距離検出部
15 制御装置(コンピュータ)
17 回転検出部
21 上型
23 下型
213 第1突出部
233 第2突出部
A1 スライド位置算出部
A2 比較部
A3 スライド制御部
B2 表示部(報知部)