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特許76223382-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 263/57 20060101AFI20250121BHJP
   C07C 215/10 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 31/423 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C07D263/57
C07C215/10
A61P25/00
A61P39/02
A61K31/423
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021560231
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020057683
(87)【国際公開番号】W WO2020207753
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】19382273.1
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519190355
【氏名又は名称】インケ、ソシエダ、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】INKE, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ、ロドリゲス、ロペロ
(72)【発明者】
【氏名】フアン、ウゲット、クロテット
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-511612(JP,A)
【文献】特表2014-526498(JP,A)
【文献】特表2006-513250(JP,A)
【文献】Christine E. Bulawa et al.,Tafamidis, a potent and selective transthyretin kinetic stabilizer that inhibits the amyloid cascade,Proceedings of the National Academy of Sciences,2012年,Vol.99, No.24,9629-9634,DOI: 10.1073/pnas.1121005109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、C07C、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
の2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを製造するための方法であって、
a)式II:
【化2】
(式中、RはC-Cアルキルである)
の化合物を、式III:
【化3】
の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールに変換する工程であって、
ここで、工程a)は、
a1)第1の溶媒または第1の溶媒混合物の存在下で、式IIの化合物を、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される第1の無機塩基で処理して、式IIIa:
【化4】
(式中、Mは、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される陽イオンである)
の化合物を得るサブ工程;
a2)サブ工程a1)で得られた式IIIaの化合物を、酸で処理して、式III:
【化5】
の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールを得るサブ工程;
a3)サブ工程a2)後に結果として得られた混合物に水を35℃~70℃の温度で添加するサブ工程;
a4)サブ工程a3)において結果として得られた混合物を35℃~70℃の温度で、デカントし、水相を廃棄するサブ工程;
を含む工程;および
b)式IIIの6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールを、式Iの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールに変換する工程
を含む、方法。
【請求項2】
式IIIの6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールが単離されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サブ工程a3)に添加される水の量が、サブ工程a1)で処理された式IIの化合物の重量に対して1:1(v/w)~10:1(v/w)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
サブ工程a1)において使用される前記第1の溶媒混合物が、テトラヒドロフランと水の混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
テトラヒドロフランと水の比が、2:1(v/v)~15:1(v/v)の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
サブ工程a1)が、40℃~70℃の温度で実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
サブ工程a2)が、35℃~70℃の温度で実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Rがメチルおよびエチルからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
陽イオンMがナトリウムである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)が、
b1)工程a)において得られた式IIIの6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールに、N-メチル-D-グルカミンを添加するサブ工程、
b2)サブ工程b1)において結果として得られた混合物の溶媒を除去するサブ工程、および
b3)サブ工程b2)において結果として得られた混合物を、第2の溶媒または第2の溶媒混合物で処理するサブ工程
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程b3)が、サブ工程b2)において結果として得られた混合物を、アルコールおよび水の混合物で処理することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アルコールが、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
サブ工程b1)および/またはb2)および/またはb3)が、30℃~70℃の温度で実施される、請求項10~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式Iの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを単離することをさらに含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
a2)式IIIa:
【化6】
(式中、Mはナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される)の化合物を、酸で処理して、式III:
【化7】
の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールを得るサブ工程;
a3)サブ工程a2)後に結果として得られた混合物に水を35℃~70℃の温度で添加するサブ工程;
a4)サブ工程a3)において結果として得られた混合物を35℃~70℃の温度で、デカントし、水相を廃棄するサブ工程;を含む、式IIIの6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールを製造するための方法、または
a2)式IIIaの化合物を、酸で処理して、式III:
【化8】
の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールを得るサブ工程;
a3)サブ工程a2)後に結果として得られた混合物に水を35℃~70℃の温度で添加するサブ工程;
a4)サブ工程a3)において結果として得られた混合物を35℃~70℃の温度で、デカントし、水相を廃棄するサブ工程;
b)式IIIの6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールを、式Iの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールに変換する工程を含む、式Iの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを製造するための方法における、式IIIaの化合物の使用。
【請求項16】
式Iの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを含む医薬組成物を製造するための方法であって、式Iの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを得るための、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法を含み、前記式Iの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを少なくとも1種類の薬学上許容される担体または賦形剤とさらに合わせることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンズオキサゾールメグルミンまたはタファミジスメグルミンとしても知られる2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールの製造のための改良された方法に関する。本発明の方法は、高純度かつ高収率でのタファミジスメグルミン塩の工業規模製造に特に好適である。
【0002】
本発明はまた、高収率かつ高純度での6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンズオキサゾールメグルミンの製造のために有用な2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンズオキサゾール-6-カルボン酸のカリウム塩にも関する。
【0003】
本発明はまた、高収率かつ高純度での精製物の工業規模製造に好適な重要中間体である4-(3,5-ジクロロベンズアミド)-3-ヒドロキシ安息香酸メチルの製造のための改良された方法も記載する。
【背景技術】
【0004】
下記の式Iの化合物6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンズオキサゾールメグルミン(タファミジスメグルミン)は、神経周辺を含む身体の組織にアミロイドと呼ばれる線維が増大する遺伝病であるトランスサイレチンアミロイドーシスにより引き起こされる神経損傷を遅延させるために使用される希少疾病用医薬品である。タファミジスメグルミンは、ファイザー社により商標ビンダケルとして市販されている。
【化1】
【0005】
6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンズオキサゾール(タファミジス遊離酸)は、最初に欧州特許EP1587821B1にScripps Research Instituteの名で開示されている。EP1587821B1は、実施例5に、スキーム1に示されるようなタファミジスの製造のための合成アプローチを記載している。還流テトラヒドロフラン中、ピリジンの存在下で4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸と塩化3,5-ジクロロベンゾイルを縮合させると4-(3,5-ジクロロベンズアミド)-3-ヒドロキシ安息香酸が得られ、これを単離せずに、還流キシレン中、p-トルエンスルホン酸一水和物の存在下で環化させ、次いで、ベンゼン/メタノール中、MeSiCHNでメチル化すると、2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-6-カルボン酸メチルが得られ、これを、最後に、テトラヒドロフラン/メタノール/HO中、LiOH・HOによって塩基性加水分解すると、遊離酸タファミジスが白色固体として得られる。
【化2】
【0006】
前述の特許EP1587821B1に記載されている方法で得られるタファミジス遊離酸は、4工程で8%~27%とういう低収率である。加えて、ピリジンおよびベンゼンなどの有毒試薬および溶媒ならびにまたジアゾメタン誘導体MeSiCHNなどの危険な試薬も使用される。純度は開示されていない。
【0007】
Razavi et al. [Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 2758-2761]およびWO2013/168014A1は、スキーム1に示されるものと同じ4工程を含むタファミジス遊離酸の製造を開示している。特に、中間体である2-(3,5-ジクロロフェニル)-ベンズオキサゾール-6-カルボン酸メチルおよびタファミジス遊離酸は、カラムクロマトグラフィーによって精製される。収率および純度は開示されていない。この方法には、工業規模での適用には不適な方法であるカラムクロマトグラフィーによる精製などのいくつかの欠点がある。
【0008】
あるいは、Bulawa et. al. [Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA, Early Edition, 2012, vol. 109, n゜ 24, 9629-9634]は、スキーム2に示されるように、重要中間体である4-(3,5-ジクロロベンズアミド)-3-ヒドロキシ安息香酸メチルを経るタファミジス遊離酸およびタファミジスメグルミン塩の製造を開示している。4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸メチル塩酸塩を、ジクロロメタン中、ピリジンの存在下で塩化3,5-ジクロロベンゾイルと反応させると、4-(3,5-ジクロロベンズアミド)-3-ヒドロキシ安息香酸メチルが得られ、これをアセトンおよび水からさらに精製し、濾過によって単離し、次いで、p-トルエンスルホン酸一水和物の存在下で環化させると、2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-6-カルボン酸メチルが得られ、これを濾過によってさらに単離し、次いで、40~45℃にてテトラヒドロフラン/HO(1:1 v/v)中、LiOHと反応させた後、塩酸でpH調整すると、遊離酸タファミジスが得られる。この化合物を、65℃~70℃にてイソプロピルアルコール/HOの混合物中、N-メチル-D-グルカミン(また、1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール)と反応させることによってメグルミン塩にさらに変換させ、その後、これを濾過により単離する。
【化3】
【0009】
Bulawaらによって記載された別法ではMeSiCHNなどの危険なジアゾメタン誘導体の使用は回避しているが、ピリジンなどの有毒試薬がなお使用されている。収率および純度は開示されていてない。
【0010】
WO2016/038500A1は、1型、2型、4型および6型と呼ばれるタファミジス遊離酸(6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾール)の結晶性固体形態ならびにそれらの製造方法を開示している。WO2016/038500A1によれば、1型は、2-プロパノールからの再結晶によって得られた非吸湿性の無水結晶性固体であり;2型は、結晶性テトラヒドロフラン溶媒和物であり;4型は、低温度(-10℃~25℃)で12時間の溶媒(テトラヒドロフラン)/貧溶媒(トルエン)結晶化法から得られたもう1つの非吸湿性の無水結晶性固体形態;6型は、低温(約0℃)でのテトラヒドロフラン/アセトアミド/ジクロロメタン混合物から得られた他の非吸湿性の無水結晶性固体形態である。一般に、低温で実施されるこれらの結晶化方法は、工業規模での使用には不適である。純度は開示されていない。
【0011】
さらに、WO2016/038500A1によれば、Razaviらの手順(すなわち、EP1587821B1およびWO2013/168014A1にも記載)を再現することによって得られたタファミジス遊離酸は、本質的に非晶質であり、物理的に不安定であり、従って、工業規模での使用には不適であり、最も重要なことは、医薬製造での使用には不適である。
【0012】
すでに説明したように、これまで従来技術では、高純度かつ高収率でタファミジスメグルミン塩を得るための効率的な方法は提供できていない。効率的な製造法がないことにより、最終的なタファミジスメグルミン塩およびそれを含有する医薬組成物のコストを増大させ、すでに高価な医薬品となっている。従って、式Iの化合物の薬理学的価値という点で、低いエネルギー要求およびコストで工業規模に容易に適用できる、高純度かつ高収率でのタファミジスメグルミン塩の効率的かつ安全な製造方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、高収率かつ高純度での製造を可能とし、工業規模で適用できる2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール(タファミジスメグルミン塩)を製造するための、効率的で環境に優しい方法を提供する。本発明の方法は、面倒で実現不可能な精製工程を必要とせずにタファミジスメグルミン塩を得、製薬基準に従う高純度の塩生成物を取得することを可能とする。
【0014】
第1の態様において、本発明は、式Iの化合物2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを製造するための改良された方法を提供し、その方法は、a)RがC-Cアルキルである式IIの化合物を変換する工程、およびb)式IIIの6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールを、式Iの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールに変換する工程を含み、工程a)は、a1)式IIの化合物を、第1の溶媒または第1の溶媒混合物の存在下で、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される第1の無機塩基で処理して、Mがナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される陽イオンである式IIIの化合物を得るサブ工程、およびa2)サブ工程a1)において得られた式IIIaの化合物を酸、好ましくは、塩酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸などの水素酸、より好ましくは、塩酸で処理して、スキーム3に示されるように式IIIの6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールを得るサブ工程を含む。前記塩基の使用により、式IIIの化合物タファミジス遊離酸を単離することなくこの方法を実施することが可能である(すなわち、第1の態様の方法は一反応容器で実施される)。有利には、本発明の方法は、高収率かつ高純度で、式Iの化合物2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを提供する。
【化4】
【0015】
本発明の第2の態様は、Mがナトリウムおよびカリウムからなる群から選択され、好ましくは、Mがナトリウムである式IIIaの化合物を提供する。
【化5】
【0016】
本発明の第3の態様は、Mがナトリウムおよびカリウムからなる群から選択され、好ましくは、Mがナトリウムである化合物IIIaの、式Iの化合物(タファミジスメグルミン塩)の製造のための中間体としての使用に関する。
【0017】
本発明の第5の態様は、式Iの化合物である2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを含む医薬組成物を製造するための方法に関し、前記方法は、第1の態様で定義された方法によって式Iの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを得ることを含み、前記式Iの化合物を少なくとも1種類の薬学上許容される担体または賦形剤と合わせることを含み、所望により、前記組成物が、トランスサイレチンアミロイド-シスの治療において使用するために適合される。
【0018】
定義
用語「一反応容器反応(one reaction vessel reaction)」または「一反応容器方法(one reaction vessel process)」は、一般に、当技術分野で公知であり、出発材料が単一の反応容器内でその反応の最終生成物に変換される、すなわち、単離、除去または精製される中間反応生成物が無い化学反応を指す。「一反応容器反応」は、その最も広い意味において、中間生成物の形成をなお可能とするが、これらはさらなる反応物の添加により最終生成物にさらに変換される(中間体のin situ生成)。一反応容器反応はまた、出発生成物が試薬をさらに添加しなくても順次形成される1または複数の中間生成物の形成(「多段階」反応)によって最終生成物に変換される単一反応容器内での反応も包含する。よって、「一反応容器方法」は、中間生成物または生成物の単離および/または精製なく実施される、好適には単一の反応容器/容器内で実施される、少なくとも2つの反応工程を特徴とする。中間生成物を単離および/または精製しないが、中間段階での反応塊全体の単なる移動は、少なからずこのような方法はin situで形成された中間体が単離および/または精製される必要はないという点で、一反応容器方法に関連する技術的利点をやはり達成すると思われるので、本発明によれば、やはり「一反応容器方法」であることが、当業者により理解されるであろう。
【0019】
用語「脱離基」は、本明細書で使用する場合、不均等結合開裂において電子対とともに離れ、特に、アセチルなどのアシル、トシレートおよびメシレートなどのスルホン酸エステル、ならびにフッ素、塩素、臭素およびヨウ素などのハロゲン原子からなる群から選択される分子断片を指す。好ましくは、「脱離基」は、Br、IまたはClなどのハロゲン、より好ましくは、Clである。
【0020】
用語「水素酸」(別名、二元酸)は、本明細書で使用する場合、水素がS、F、Cl、BrまたはIなどの第2非金属元素と組合わされている無機酸を指す。より好ましくは、「水素酸」は、塩酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸からなる群から選択される。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「溶媒」は、別の物質(すなわち、溶質)を少なくとも部分的に溶解させ得る物質を指す。溶媒は、室温で液体であり得る。溶媒は、有機溶媒(すなわち、少なくとも1個の炭素原子を含む)および水であり得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、2種類以上の有機溶媒の組合せ、または有機溶媒と水の組合せにより形成され得る。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「有機溶媒」は、別の物質(すなわち、溶質)を少なくとも部分的に溶解させ得る有機分子を指す。有機溶媒は室温で液体であり得る。本発明のために使用可能な有機溶媒としては、限定されるものではないが、炭化水素溶媒(例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、パラフィン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど)が挙げられ、これは、芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、およびp-キシレン);エステル溶媒(例えば、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、マロン酸エチルなど);ケトン溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトンまたは2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3-ペンタノンなど);エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、イソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなど);アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert-ブタノール、1-オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、トリフルオロエタノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、m-クレゾールなど);アセトニトリルも含む。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、2種類以上の有機溶媒の組合せにより形成されてよい。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「プロトン性溶媒」は、不安定H、例えば、酸素原子に、窒素原子にまたはフッ素原子に結合した水素原子を含有する溶媒を指す。プロトン性溶媒は、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert-ブタノール、1-オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、トリフルオロエタノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、m-クレゾールなど)、水などである。
【0024】
本明細書で使用する場合、「アルキル」は、1~10個の炭素原子などの示された数の炭素原子を有する不飽和を含まない直鎖または分岐型炭化水素鎖ラジカル(C-C10アルキルとして表される)を意味する。このようなアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、直鎖もしくは分岐型ペンチル、直鎖もしくは分岐型ヘキシル、直鎖もしくは分岐型ヘプチル、直鎖もしくは分岐型ノニルまたは直鎖もしくは分岐型デシルから選択され得る。好ましくは、アルキル基はC-Cアルキルであり、より好ましくは、アルキルはメチルおよびエチルである。
【0025】
用語「ハロゲン」は、本明細書で使用する場合、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される原子を指す。
【0026】
用語「無機塩基」は、本明細書で使用する場合、陽子を受容する傾向がある物質を指す。無機塩基は、金属陽イオンを含有し、有機部分を含有する物質である有機塩基とは対照的に、有機部分を含有しない。本発明に好適な無機塩基は、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムなどのアルカリ金属、またはカルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩である。
【0027】
用語「従来の単離技術」または「精製」は、本明細書で使用する場合、生成物を、異質要素を含まない状態として、精製された生成物を得ることができる方法を指す。用語「工業的精製」は、溶媒抽出、濾過、スラリー化、洗浄、相分離、蒸発、遠心分離または結晶化などの、工業規模で実施され得る精製を指す。用語「従来の単離技術」は、本明細書で使用する場合、目的生成物を反応混合物の他の(望まない)成分から分離する方法を指す。従来の単離技術としては、限定されるものではないが、遠心分離、デカンテーション、濾過、溶媒蒸発などが挙げられる。
【0028】
用語「従来の精製技術」は、本明細書で使用する場合、生成物を、(実質的に)望まない要素を含まない状態として、精製された生成物を得ることができる方法を指す。例えば、限定されるものではないが、溶媒抽出(相分離を用いるまたは用いない)、濾過、スラリー化および結晶化/溶媒または溶媒混合物からの沈澱が挙げられる。クロマトグラフィー技術による精製も「従来の」ものであり、この技術に関連する典型的な低収率および高コスト(とりわけ、大容量の溶媒およびクロマトグラフィー材料の必要のために)という点で当業界ではあまり好ましくなく、これは多くの場合、この方法の工業規模への大規模化を実際上阻む。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「溶媒抽出」は、ある成分に対してより大きな親和性を有し、従って、前記溶媒に前記のある成分よりも混和性が低い少なくとも第2の成分から前記のある成分を分離できる溶媒を用いることによって混合物の成分を分離する方法を指す。
【0030】
用語「濾過」は、固体粒子と液体の混合物を含む供給物から所定のサイズより大きい固体粒子を除去する行為を指す。「濾液」という表現は、濾過方法によって除去される固体粒子を含まない混合物を指す。この混合物は所定の粒子サイズより小さい固体粒子を含有し得ることが理解されるであろう。「濾過ケーキ」という表現は、濾過要素の供給側に残る残留固体材料を指す。
【0031】
用語「蒸発」は、液体から気体への溶媒の状態の変化および反応槽または容器からのその気体の除去を指す。種々の溶媒が本明細書に開示される合成経路の間で蒸発され得る。当業者に知られているように、各溶媒は、異なる蒸発時間および/または温度を有し得る。
【0032】
用語「相分離」は、少なくとも2つの物理的に異なる領域を有する溶液または混合物を指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「スラリー化」は、粗固体生成物を洗浄する、懸濁させるまたは分散させるために溶媒を使用する任意の方法を指す。
【0034】
用語「結晶化」は、化合物を、所望により高温下で溶解させ、その溶液を冷却するか、その溶液から溶媒を除去するか、またはその両方により化合物を沈澱させることによる、単一の溶媒または溶媒の組合せからの結晶化など、当業者に公知の任意の方法も指す。これにはさらに、化合物を溶媒に溶解させ、貧溶媒(すなわち、所望の化合物がより低い溶解度を有する溶媒)の添加により沈澱させるなどの方法が含まれる。
【0035】
用語「高純度」は、本明細書で使用する場合、98%より大きい、または99%より大きい、または99.5%より大きい、または99.7%より大きい、または99.8%より大きい純度を指す。
【0036】
用語「高収率」は、本明細書で使用する場合、70%より大きい、または75%より大きい、または80%より大きい、または85%より大きい収率を指す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明の第1の態様によれば、2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール(タファミジスメグルミン、式Iの化合物):
【化6】
を製造するための改良された方法であって、
a)式II:
【化7】
(式中、Rは、C-Cアルキルである)
の化合物を、式III化合物である6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾール:
【化8】
に変換させる工程であって、
ここで、工程a)は、
a1)第1の溶媒または第1の溶媒混合物の存在下で、式IIの化合物を水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される第1の無機塩基で処理して式IIIa:
【化9】
(式中、Mは、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される陽イオンである)
の化合物を得るサブ工程;および
a2)サブ工程a1)で得られた式IIIaの化合物を、酸、好ましくは、塩酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸などの水素酸、より好ましくは、塩酸で処理して、式III:
【化10】
の6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールを得るサブ工程
を含む工程;および
b)工程a)で得られた式IIIの化合物を、式Iの化合物である2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールに変換する工程
を含む方法が記載される。
【0038】
第1の無機塩基としての水酸化ナトリウムまたはカリウムの使用は、式IIIの化合物の単離のない方法の実施を可能とする。
【0039】
本発明者らは、Bulawaらによって記載されているような方法を再現した際に、タファミジス遊離酸、式IIIの化合物が、塩酸水溶液の添加直後に反応媒体中に沈澱することを認識した。よって、得られたタファミジス遊離酸は反応媒体から濾過により単離され、さらにメグルミン塩に変換される。他方、本発明者らは、驚くべきことに、式Iの化合物が、1つの単一反応容器で、第1の態様の方法に従った工程a)およびb)によって製造可能であることを見出した。重要なのは、第1の態様に従って製造されるタファミジス遊離酸、式IIIの化合物は、それが反応媒体中で沈澱しないために単離されないということである。有利には、第1の態様による本発明の方法は、高収率かつ高純度で式Iの化合物2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを提供する。
【0040】
有利には、本発明の方法は、進行した中間体、すなわち、式IIIaの化合物および式IIIの化合物の単離を回避し、従って、式Iの化合物である2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを提供するための工程数を減らし、これは本発明の好ましい実施形態を構成する。
【0041】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、工程a)は、サブ工程a2)の後に結果として得られた混合物に水を添加する付加的サブ工程a3)をさらに含む。水の量(ミリリットル容量)は、段階a1)で処理された式IIの化合物の重量(グラム)に対して1:1(v/w)~10:1(v/w)、好ましくは1:1(v/w)~5:1(v/w)であり得る。
【0042】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、工程a)は、前段に記載されるようなサブ工程a3)と、その後に、サブ工程a3)において結果として得られた混合物をデカントして、所望の有機相(主として式IIIの化合物を含有する)から水相(主として無機塩を含有する)を分離し、その後、水相を廃棄する付加的サブ工程a4)を含む。
【0043】
有利には、サブ工程a2)において得られる、式IIIの化合物からの副生成不純物である無機塩の分離は、本発明の第1の態様の以下の工程b)であるメグルミン塩の形成を可能とするが、これは塩形成の競合は有意に低減され、結果として、この方法の全体の収率だけでなく式Iの化合物の純度を高めるためである。
【0044】
第1の態様の別の実施形態では、サブ工程a1)で使用される第1の溶媒または第1の溶媒混合物は、有機溶媒および水の混合物である。好適な有機溶媒は、エーテル、アルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。好適なエーテルとしては、ジエチルエーテル、tert-ブチルジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびそれらの混合物が挙げられる。好適なアルコールとしては、直鎖、環状または分岐型C-Cアルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソ-プロパノールおよびそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、サブ工程a1)において使用される第1の溶媒または第1の溶媒混合物は、エーテルおよび水の混合物であり、より好ましくは、サブ工程a1)に使用される溶媒は、テトラヒドロフランと水の混合物である。
【0045】
第1の態様の別の実施形態では、サブ工程a1)において使用されるテトラヒドロフランと水の比(容量による)は、2:1(v/v)~15:1(v/v)、好ましくは5:1(v/v)~10:1(v/v)、より好ましくは6:1(v/v)~8:1(v/v)の範囲である。
【0046】
第1の態様の別の実施形態では、サブ工程a1)は、40℃~70℃、好ましくは45℃~65℃、より好ましくは50℃~60℃の温度範囲で実施され得る。
【0047】
第1の態様の別の実施形態では、本発明の第1の態様に従ってサブ工程a2)において使用される酸は無機酸または有機酸である。好適な酸は、pKa(水に対する)5未満、好ましくは3未満、より好ましくは1未満を有するものである。好ましくは、酸は、pKa(水に対する)-10~5、好ましくは-10~3、より好ましくは-10~1を有する。好適な酸としては、限定されるものではないが、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびカンファースルホン酸が挙げられる。好ましくは、酸は、気体もしくは水溶液として存在し得るか、またはプロトン性溶媒の存在下で例えばハロゲン化アルキルシリルからin situsで生成され得る、塩酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸などの水素酸である。
【0048】
第1の態様の好ましい実施形態では、サブ工程a2)において使用される酸は塩酸である。式IIIaの化合物と酸のモル比は、1:1~1:3である。好ましくは、式IIIaの化合物と酸のモル比は1:1~1:1.5である。
【0049】
第1の態様の別の好ましい実施形態では、サブ工程a2)は、35℃~70℃、好ましくは40℃~60℃、より好ましくは45℃~55℃の温度範囲で実施され得る。
【0050】
第1の態様の別の好ましい実施形態では、サブ工程a3)は、35℃~70℃、好ましくは40℃~60℃、より好ましくは45℃~55℃の温度範囲で実施され得る。
【0051】
第1の態様の別の好ましい実施形態では、サブ工程a4)は、35℃~70℃、好ましくは40℃~60℃、より好ましくは45℃~55℃の温度範囲で実施され得る。
【0052】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、Rはメチルおよびエチルからなる群から選択され、好ましくは、Rはメチルである。
【0053】
第1の態様の別の実施形態では、陽イオンMはナトリウムである。よって、サブ工程a1)において使用されるアルカリ金属の水酸化物は水酸化ナトリウムである。
【0054】
第1の態様好ましい実施形態では、式Iの化合物を製造するための方法は、以下の工程およびサブ工程:
a1)Rがメチルである式IIの化合物を、第1の溶媒または第1の溶媒混合物の存在下で、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択されるアルカリ金属の水酸化物と反応させて、式IIIa:
【化11】
(式中、Mはナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される)
の化合物を得るサブ工程、
a2)サブ工程a1)において得られた式IIIaの化合物に塩酸を添加して、式III:
【化12】
の化合物であるタファミジス遊離酸を得るサブ工程、
a3)サブ工程a2)において結果として得られた混合物に水を添加するサブ工程、
a4)サブ工程a3)において結果として得られた混合物をデカントし、その後、得られた水相を廃棄するサブ工程、および
b)式IIIの化合物を、式Iの化合物である2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールに変換する工程
を含み、ここで、式IIIaの化合物および式IIIの6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールは単離されない(すなわち、この方法は一反応容器で実施される)。
【0055】
第1の態様の別の実施形態では、工程b)は、工程a)において得られた式IIIの化合物を、第2の溶媒または第2の溶媒混合物の存在下で、式Iの化合物である2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールに変換することを含む。
【0056】
第1の態様のさらなる実施形態において、工程b)は、
b1)工程a)において得られた式IIIの化合物に、N-メチル-D-グルカミン(1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール)を添加するサブ工程、
b2)サブ工程b1)において結果として得られた混合物の溶媒を、好ましくは蒸留によって除去するサブ工程、および
b3)サブ工程b2)において結果として得られた混合物を、第2の溶媒または第2の溶媒混合物で処理するサブ工程
を含む。
【0057】
式IIIの化合物にN-メチル-D-グルカミンを添加する方法は、工程a)終了時、特に、サブ工程a2)の後、またはサブ工程a3)およびa4)の最後の工程の後(これらのサブ工程が実施される場合)に実施される。好ましくは、サブ工程a4)は実施され、N-メチル-D-グルカミンは、サブ工程a4)において得られた化合物IIIに添加される。
【0058】
サブ工程b1)において得られた混合物中に存在する溶媒または溶媒混合物は、工程a)の終了時に存在する溶媒、特に、サブ工程a1)、a2)、a3)および/またはa4)から実施される最後のサブ工程に存在する溶媒または溶媒混合物である。
【0059】
第1の態様の一実施形態では、サブ工程b3)において使用される第2の溶媒または第2の溶媒混合物は、有機溶媒および水の混合物であり得る。好適な有機溶媒は、アルコール、エーテル、エステル、ケトンおよびそれらの混合物から選択されてよく、好ましくは、有機溶媒は、アルコールおよびエーテルからなる群から選択される。好適なアルコールとしては、直鎖、環状または分岐型C-Cアルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびそれらの混合物が挙げられる。好適なエーテルとしては、ジエチルエーテル、tert-ブチルジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびそれらの混合物が挙げられる。好適なエステルとしては、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびそれらの混合物が挙げられる。好適なケトンとしては、アセトン、メチルイソブチルケトンおよびそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、サブ工程b3)において使用される溶媒または溶媒混合物は、アルコールおよび水の混合物である。より好ましくは、アルコールは、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される。より好ましくは、アルコールは、イソプロパノールである。
【0060】
第1の態様の別の実施形態では、工程b)は、30℃~70℃、好ましくは40℃~50℃、より好ましくは45℃の温度範囲で実施され得る。
【0061】
第1の態様の別の好ましい実施形態では、サブ工程b1)、b2)および/またはb3)は、30℃~70℃、好ましくは40℃~50℃、より好ましくは45℃の温度範囲で実施され得る。
【0062】
第1の態様の別の実施形態では、本方法は、式Iの化合物を、好ましくは、従来の単離技術、より好ましくは、濾過によって単離することをさらに含む。
【0063】
第1の態様の別の実施形態では、本方法は、式Iの化合物を、好ましくは、従来の精製技術、より好ましくは、結晶化によって生成することをさらに含む。
【0064】
第1の態様の別の好ましい実施形態では、式Iの化合物を製造するための方法は、以下の工程およびサブ工程を含む:
a1)Rがメチルである式IIの化合物を、第1の溶媒または第1の溶媒混合物の存在下で、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択されるアルカリ金属の水酸化物と反応させて、式IIIaの化合物:
【化13】
(式中、Mは、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される)
を得るサブ工程、
a2)サブ工程a1)において得られた式IIIaの化合物に塩酸を添加して式III
【化14】
の化合物であるタファミジス遊離酸を得るサブ工程、
a3)サブ工程a2)において結果として得られた混合物に水を添加するサブ工程、
a4)サブ工程a3)において結果として得られた混合物をデカントし、その後、得られた水相を廃棄するサブ工程、および
b)式IIIの化合物を、式Iの化合物である2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールに変換する工程であって、
b1)サブ工程a4)において得られた式IIIの化合物に、N-メチル-D-グルカミン(1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール)を添加して、式Iの化合物を得るサブ工程、
b2)サブ工程b1)において結果として得られた混合物の溶媒を、好ましくは蒸留によって除去するサブ工程、および
b3)サブ工程b2)において結果として得られた混合物を、第2の溶媒または第2の溶媒混合物で処理するサブ工程
を含む工程
を含み、ここで、式IIIaの化合物および式IIIの6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールは単離されない(すなわち、この方法は一反応容器で実施される)。
【0065】
第1の態様の別の好ましい実施形態では、式Iの化合物を製造するための方法は、以下の工程およびサブ工程:
a1)Rがメチルである式IIの化合物を、テトラヒドロフランおよび水の存在下で、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択されるアルカリ金属の水酸化物と反応させて、式IIIa:
【化15】
(式中、Mは、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される)
の化合物を得るサブ工程、
a2)サブ工程a1)において結果として得られた式IIIaの化合物に、塩酸を添加して、式III:
【化16】
の化合物であるタファミジス遊離酸を得るサブ工程、
a3)サブ工程a2)において結果として得られた混合物に水を添加するサブ工程、
a4)サブ工程a3)において結果として得られた混合物をデカントし、その後、得られた水相を廃棄するサブ工程、および
b)式IIIの化合物を、式Iの化合物である2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールに変換する工程であって、
b1)サブ工程a4)において得られた式IIIの化合物に、N-メチル-D-グルカミン(1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール)を添加して式Iの化合物を得るサブ工程、
b2)サブ工程b1)において結果として得られた混合物の溶媒を、好ましくは蒸留によって除去するサブ工程、および
b3)サブ工程b2)において結果として得られた混合物を、第2の溶媒または第2の溶媒混合物で処理するサブ工程
を含む工程
を含み、ここで、式IIIaの化合物および式IIIの6-カルボキシ-2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールは単離されない(すなわち、この方法は一反応容器で実施される)。
【0066】
サブ工程a1)、a2)、a3)およびa4)は、本明細書に従前に記載されたように実施することができる。
【0067】
工程b1)、b2)およびb3)は、本明細書に従前に記載されたように実施することができる。
【0068】
第2の態様は、Mがナトリウムおよびカリウムからなる群から選択され、好ましくは、Mがカリウムである式IIIaの化合物を提供する。有利には、化合物IIIaのカリウム塩(2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンズオキサゾール-6-カルボン酸のカリウム塩)は、高収率かつ高純度での式Iの化合物である2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールの製造のために特に有用である。
【化17】
【0069】
本発明者らは、Mがリチウムから選択される陽イオンである式IIIaの化合物は、メグルミン塩の代わりに化合物IIIaのリチウム塩を沈澱させる対応塩形成法においてメグルミン塩と競合することを認識している。驚くべきことに、Mがカリウムまたはナトリウムである式IIIaの化合物、すなわち2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンズオキサゾール-6-カルボン酸カリウムまたは2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンズオキサゾール-6-カルボン酸ナトリウムは、反応媒体中で可溶性を維持し、メグルミン塩を沈澱させる際に競合しない。従って、Mがカリウムまたはナトリウムである化合物IIIa、好ましくは、Mがナトリウムである化合物は、化合物IIIaの、対応する既知のリチウム塩と比較した場合に反応媒体中で溶解度が高いために、高収率かつ高純度での式Iの化合物である2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールの製造のために特に有用である。
【0070】
本発明の第3の態様は、Mがナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される化合物IIIaの、式Iの化合物(タファミジスメグルミン塩)の製造のための中間体としての使用に関する。
【0071】
本発明の第4の態様は、RがC-Cアルキルである式II:
【化18】
の化合物の製造のための方法であって、
i)式V:
【化19】
(式中、RはC-Cアルキルである)
の化合物を、式VI:
【化20】
(式中、Xは脱離基、好ましくは、ハロゲンであり、より好ましくは、Xはクロリドである)
の化合物と、第3の溶媒または第3の溶媒混合物中、第2の無機塩基の存在下で反応させて、式IV:
【化21】
(式中、Rは上記で定義される通り)
の化合物を得る工程、および
ii)式IVの化合物を式IIの化合物に変換する工程
を含む方法により製造される方法を提供する。
【0072】
第4の態様の一実施形態では、Rは、メチルおよびエチルからなる群から選択され、好ましくは、メチルである。
【0073】
第4の態様の別の実施形態では、第2の無機塩基は、アルカリ金属炭酸または重炭酸塩であり、好ましくは、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび重炭酸カリウムからなる群から選択され、より好ましくは、重炭酸ナトリウムである。
【0074】
第4の態様の別の実施形態では、第3の溶媒は、テトラヒドロフランであるか、または第3の溶媒混合物は、テトラヒドロフランを含み、好ましくは、第3の溶媒はテトラヒドロフランである。
【0075】
第4の態様の別の実施形態では、本方法は、式IVの化合物を、好ましくは、従来の単離技術、より好ましくは、濾過によって単離することをさらに含む。
【0076】
第4の態様の別の実施形態では、本方法は、式IVの化合物を、好ましくは、従来の精製技術によって、より好ましくは、結晶化によって精製することをさらに含む。
【0077】
式IVの化合物は、従来技術(例えば、Bulawa et. al. [Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA, Early Edition, 2012, vol. 109, n゜ 24, 9629‐9634)に記載されているように、式IIの化合物に変換することができる。特に、化合物IVは、トルエン中(好ましくは、還流温度)、p-トルエンスルホン酸の存在下で環化され、所望により、次いで、木炭で処理して対応する式IIの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸塩を得ることができる。好ましい実施形態では、このようにして得られた式IIの化合物は、アセトンおよび水の混合物中で精製される。
【0078】
本発明の第5の態様は、タファミジスまたはその薬学上許容される塩、好ましくは、タファミジスメグルミンを含む医薬組成物を製造するための方法に関し、その方法は、第1の態様に規定される方法に従って式Iの2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトールを得ること、およびさらに前記タファミジスまたはその薬学上許容される塩を少なくとも1種類の薬学上許容される担体または賦形剤と組合わせることを含み、所望により、前記医薬組成物は、トランスサイレチンアミロイド-シスの治療において使用するために適合される。
【0079】
本発明の種々の態様を概説してきたが、当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの改変および若干の変形形態が可能であることが明らかであろう。以下、本発明を下記の実施例によってさらに説明する。これらの実施例は、特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。別段に示されることがない限り、全てのパーセンテージ表示は重量に対するものであり、温度は摂氏温度である。
【0080】
実験
本発明の化合物は、H-NMRまたは13C-NMR、IR分光測定法(Perkin Elmer ATRアクセサリーを使用するPerkin Elmer FTIR Spectrum One appliance)、示差走査熱量測定(DSC)およびPXRD(粉末X線回折)などの一般分析技術によって、以下の方法を用いて、特性化された。
【0081】
DSC分析は、Mettler Toledo DSC822e熱量計で記録した。実験条件:40μLアルミニウムるつぼ;流速50mL/分の乾燥窒素雰囲気;加熱速度10℃/分で30~300℃。データ収集および評価は、ソフトウエアSTAReで行った。
【0082】
PXRD分析は、透過ジオメトリでCuKα1線(λ=1.54056Å)を用いて、D8 Advance Series 2θ/θ粉末回折システムにて取得した。このシステムは、VANTEC-1単光子計数PSD、ゲルマニウムモノクロメーター、90ポジションオートチェンジャーサンプルステージ、固定発散スリットおよびラジアルソーラーを備えている。サンプルは、2θにおいて4°~40°の範囲で、60分走査して測定した。使用プログラム:DIFFRACおよびXRD Commander V.2.5.1でデータ収集、EVA V.12.0で評価。
【実施例
【0083】
参考例1:4-(3,5-ジクロロベンズアミド)-3-ヒドロキシ安息香酸メチルの製造
乾燥CHCl(20mL)中、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸メチル(2.0g、12.0mmol)の懸濁液に、20~25℃の温度で、ピリジン(1.2mL、15.0mmol)を加えた。この混合物を0~5℃の温度に冷却し、15分間維持した。次に、塩化3,5-ジクロロベンゾイル(2.7g、12.6mmol)の溶液を加えた。得られた懸濁液を20~25℃の温度で温め、反応物を16時間撹拌した。反応が終了したところで、この粘稠な懸濁液を濾過し、CHClで洗浄した。得られた褐色固体をアセトン/HOの混合物に懸濁させ、このスラリーを室温で1時間撹拌し、固体を濾過し、アセトンと水の混合物で洗浄し、45℃のエアオーブン内で乾燥させて、4-(3,5-ジクロロベンズアミド)-3-ヒドロキシ安息香酸メチル(2.46g、7.2mmol)を淡褐色固体として得、これはTLCによればやや不純であった。
収率:60%
【0084】
実施例1:4-(3,5-ジクロロベンズアミド)-3-ヒドロキシ安息香酸メチルの合成
乾燥THF(400mL)中、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸メチル(50.0g、300mmol)の懸濁液に、20~25℃の温度で、NaHCO(27.6g、330mmol)を加えた。この混合物を10~15℃の温度に冷却し、乾燥THF(100mL)中の、塩化3,5-ジクロロベンゾイル(65.8g、314mmol)の溶液を、内部温度を20℃未満に維持しつつ滴下した。次に、この温度を20~25℃に調整し、反応混合物を16時間撹拌した。反応が終了したところで、溶媒を真空蒸発させ、得られた粗物質をアセトン(250mL)と水(250mL)の500mL混合物に再懸濁させた。この粘稠な懸濁液を室温で1時間および0~5℃でさらに1時間撹拌した。得られた固体を濾過し、アセトンと水の混合物で洗浄し、45℃のエアオーブン内で乾燥させて4-(3,5-ジクロロベンズアミド)-3-ヒドロキシ安息香酸メチル(93.4g、275mmol)を淡褐色固体として得た。
収率:91.8%
【0085】
実施例2:2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-6-カルボン酸メチルの合成
トルエン(1,6L)中、実施例1において得られた4-(3,5-ジクロロベンズアミド)-3-ヒドロキシ安息香酸メチル(80g、235.2mmol)の懸濁液に、p-トルエンスルホン酸一水和物(4.5g、23.52mmol)を加えた。得られた混合物を還流下で加熱し、反応物を、水を排出しつつ16時間撹拌した。この溶液を45℃に冷却し、濾過した。溶媒を真空蒸発させ、得られた粗物質をアセトン(560mL)および水(80mL)に再懸濁させた。得られた粘稠な懸濁液を室温で1時間撹拌し、固体を濾過し、アセトンと水の混合物で洗浄し、45℃のエアオーブン内で乾燥させて2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-6-カルボン酸メチル(70.0g、217.0mmol)をやや褐色の固体として得た。
収率:92.4%
【0086】
実施例3:2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール(タファミジスメグルミン)の製造
THF(40mL)中、50~55℃にて、2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-6-カルボン酸メチル(2.0g、6.21mmol)の懸濁液に、水(6mL)中の、KOH(533mg、8.07mmol)の溶液を加えた。得られ橙色の溶液を3時間撹拌し、45℃に冷却し、45℃にて6M HClの水溶液で中和した。水(10mL)を45℃で加え、45℃で相を分離し、水相を廃棄した。メグルミン(1.27g、6.52mmol)を45℃で加え、溶媒を真空蒸発させた。この粗物質にエタノール(40mL)および水(4mL)を加えた。得られた懸濁液を45℃に加熱し、30分間撹拌し、室温までゆっくり冷却した。得られた懸濁液を室温で1時間撹拌し、固体を濾過し、エタノールと水の混合物で洗浄し、45℃のエアオーブン内で乾燥させてタファミジスメグルミン(2.60g、5.17mmol)を灰白色固体として得た。
収率:83.2%
HPLCによる純度:99.70%
DSC:198.6℃での融解のために吸熱ピーク(-155J/g)。
PXRDパターンは、WO2013/038351A1の図1Aに開示されたものに相当する。
【0087】
実施例4:2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール(タファミジスメグルミン)の製造
50~55℃で、THF(1200mL)中、2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-6-カルボン酸メチル(60.0g、186.3mmol)の懸濁液に、水(180mL)中、KOH(16.0g、242.1mmol)の溶液を加えた。得られた橙色の溶液を3時間撹拌し、45℃に冷却し、45℃にて6M HCl水溶液で中和した。水(300mL)を45℃で加え、45℃で相を分離して水相を除去した。メグルミン(38.2g、186.3mmol)を45℃で加え、溶媒を真空蒸発させた。この粗物質にエタノール(1200mL)および水(120mL)を加えた。得られた懸濁液を45℃で加熱し、30分間撹拌し、室温までゆっくり冷却した。得られた懸濁液を室温で1時間撹拌し、固体を濾過し、エタノールと水の混合物で洗浄し、45℃のエアオーブン内で乾燥させてタファミジスメグルミン(80.9g、161.0mmol)を灰白色固体として得た。
収率:86.3%
【0088】
実施例5:2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール(タファミジスメグルミン)の製造
50~55℃で、THF(40mL)中、2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-6-カルボン酸メチル(2.0g、6.21mmol)の懸濁液に、水(6mL)中、LiOH・HO(340mg、8.07mmol)の溶液を加えた。得られた黄色溶液を3時間撹拌し、45℃に冷却し、6M HCl水溶液で中和した。次に、1%NaCl水溶液(10mL)を45℃~50℃で加え、相を分離して水相を廃棄した。メグルミン(1.27g、6.52mmol)を45℃~50℃で加え、溶媒を真空蒸発させた。この粗物質にエタノール(40mL)および水(4mL)を加えた。得られた懸濁液を45℃に加熱し、30分間撹拌し、室温までゆっくり冷却した。この懸濁液を室温で1時間撹拌し、濾別し、エタノールと水の混合物で洗浄し、エアオーブン内にて45℃で乾燥させてタファミジスメグルミン(2.20g、4.37mmol)を灰白色固体として得た。
収率:70.4%
【0089】
実施例6:2-(3,5-ジクロロフェニル)-6-ベンズオキサゾールカルボン酸1-デオキシ-1-メチルアミノ-D-グルシトール(タファミジスメグルミン)の製造
600mLのTHF中、30.0g(93.13mmol)の式IIの2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-6-カルボン酸メチルの懸濁液を50~55℃で加熱した。次に、90mLの水中、NaOH(4.16g、102.4mmol)を加えた。得られた橙色の溶液を6時間撹拌し、HCl 6Mで中和した。水(150mL)を加え、相を分離して水相を廃棄した。メグルミン(19.09g、97.8mmol)を加え、溶媒を真空蒸発させた。この粗物質にイソプロパノール(600mL)および水(150mL)を加えた。得られた懸濁液を65℃に加熱し、30分間撹拌し、室温までゆっくり冷却した。この懸濁液を室温で6時間撹拌し、固体を濾過し、IPA/H2Oの混合物で洗浄し、エアオーブン内にて45℃で乾燥させてタファミジスメグルミン(38.9g、77.3mmol)を灰白色固体(SRR-TAF-148-1)として得た。
収率:83.0%
HPLC純度:99.87%
DRX:M型