(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】表示体
(51)【国際特許分類】
G09F 19/12 20060101AFI20250121BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20250121BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20250121BHJP
B42D 25/324 20140101ALI20250121BHJP
【FI】
G09F19/12 Z
G09F3/02 W
G02B5/18
B42D25/324
(21)【出願番号】P 2020087346
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】柴田 城
(72)【発明者】
【氏名】山口 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】籠谷 彰人
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521159(JP,A)
【文献】特開2017-037273(JP,A)
【文献】特開2010-286722(JP,A)
【文献】特開平11-024541(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054216(WO,A1)
【文献】特表2015-526311(JP,A)
【文献】特開2005-301066(JP,A)
【文献】特開2001-331085(JP,A)
【文献】特開2009-145764(JP,A)
【文献】特開2010-020005(JP,A)
【文献】特開2007-212529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 19/00-27/00
G09F 1/00- 5/04
B42D 25/00-25/485
G03B 5/00- 5/136
G03B 35/00-37/06
G03H 1/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象物の画像と第2対象物の画像とを含む三次元画像を回折画像として表示する表示体であって、
前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、
前記第1対象物に対応した第1立体物は、前記表示体を観察する観察者から見て前記表示体の表示面よりも手前の位置に、前記表示面から離間するように復元され、
前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記観察者から見て前記表示面の奥の位置に、前記表示面から離間するように復元され、
前記第1立体物と前記第2立体物との間に他の立体物は復元されず、
前記三次元画像は回折格子によって表示される画像であ
り、
前記三次元画像を表示する前記回折格子としてのレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ層と、
前記主面のうち前記レリーフ構造が設けられた領域を少なくとも部分的に被覆した反射層と
を備え、前記表示面は、前記反射層の表面又は前記レリーフ構造と前記反射層との間の界面である表示体。
【請求項2】
前記表示体を正面から観察した場合に、前記第1対象物の前記画像と前記第2対象物の前記画像とは少なくとも部分的に重なり合う請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記表示面から前記第1立体物までの距離及び前記表示面から前記第2立体物までの距離の各々は0.5mm以上である請求項1又は2に記載の表示体。
【請求項4】
前記第1立体物及び前記第2立体物の各々は、その全体が、前記表示面からの距離が4mm以下の範囲内に位置している請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体。
【請求項5】
前記第1立体物の表面のうち前記表示面から最も離れた位置の前記表示面からの距離は、前記第2立体物の表面のうち前記表示面から最も離れた位置の前記表示面からの距離と等しい請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項6】
前記第1立体物の表面のうち前記表示面から最も離れた位置の前記表示面からの距離は、前記第2立体物の表面のうち前記表示面から最も離れた位置の前記表示面からの距離と比較してより短い請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項7】
前記表示面と向き合った印刷層を更に備え、前記印刷層は、前記表示体の表面に複数の凸部を生じさせている請求項
1乃至6の何れか1項に記載の表示体。
【請求項8】
前記複数の凸部の高さは5乃至40μmの範囲内にある請求項
7に記載の表示体。
【請求項9】
前記複数の凸部は、互いから離間して幅方向に配列した複数のラインパターンを含んだ請求項
7又は8に記載の表示体。
【請求項10】
前記複数のラインパターンの各々の幅は0.02乃至0.1mmの範囲内にあり、前記複数のラインパターンは0.2乃至0.5mmの範囲内のピッチで配列している請求項
9に記載の表示体。
【請求項11】
請求項1乃至
10の何れか1項に記載の表示体を含んだ転写材層と、
前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と
を備えた転写箔。
【請求項12】
請求項1乃至
10の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体上に設けられた粘着層と
を備えた粘着ラベル。
【請求項13】
請求項1乃至
10の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体を支持した物品と
を備えた表示体付き物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、商品等の物品が真正品であることを証明する目的で、ホログラムによって三次元画像を表示可能な表示体を、上記物品において使用することがある(特許文献1及び2を参照のこと)。また、ホログラムの代わりに、回折格子を利用して、三次元画像を表示可能とすることもある(特許文献3及び4を参照のこと)。ホログラム又は回折格子によって三次元画像を表示する表示体は、偽造や複製が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-109362号公報
【文献】特開2010-139673号公報
【文献】特開平6-281804号公報
【文献】特開平7-104211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホログラム又は回折格子が表示する三次元画像は、観察者に強い立体感を与えないことがある。
本発明は、観察者に強い立体感を与える三次元画像を表示可能な表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によると、第1対象物の画像と第2対象物の画像とを含む三次元画像を回折画像として表示する表示体であって、前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、前記第1対象物に対応した第1立体物は、前記表示体を観察する観察者から見て前記表示体の表示面よりも手前の位置に、前記表示面から離間するように復元され、前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記観察者から見て前記表示面の奥の位置に、前記表示面から離間するように復元され、前記第1立体物と前記第2立体物との間に他の立体物は復元されず、前記三次元画像は回折格子によって表示される画像であり、前記三次元画像を表示する前記回折格子としてのレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ層と、前記主面のうち前記レリーフ構造が設けられた領域を少なくとも部分的に被覆した反射層とを備え、前記表示面は、前記反射層の表面又は前記レリーフ構造と前記反射層との間の界面である表示体が提供される。
【0006】
ここで、用語「三次元画像」は、両眼視差又は運動視差によって観察者に立体感を感じさせる画像を意味する。また、用語「回折画像」は、ホログラム又は回折格子によって表示される画像を意味する。
【0007】
上記の通り、この表示体によると、第1立体物は表示体の表示面よりも手前の位置に復元され、第2立体物は表示面の奥の位置に復元される。それ故、例えば、照明条件を一定としたまま、所定の軸の周りで表示体を時計回り又は反時計回りに僅かに回転させると、第1対象物の画像は右又は左へ移動し、第2対象物の画像は第1対象物の画像とは逆方向へ移動する。それ故、第1対象物の画像及び第2対象物の画像の一方は、他方の動きを際立たせる。
【0008】
また、上記の通り、第1立体物は、表示面よりも手前の位置に、表示面から離間するように復元される。他方、第2立体物は、表示面よりも奥の位置に、表示面から離間するように復元される。そして、第1立体物と第2立体物との間に他の立体物(第3立体物)は復元されない。即ち、第1立体物と第2立体物とは不連続である。このような構成によると、以下に説明するように、上記の効果が損なわれることがない。
【0009】
第1立体物と第2立体物との間に第3立体物が復元されると、観察者は、表示体を回転させることに伴う第1対象物又は第2対象物の画像の相対的な移動を、第3立体物に対応した第3対象物の画像の位置を基準として知覚する可能性がある。第3立体物は第1立体物と第2立体物との間に位置しているので、第3対象物も第1対象物と第2対象物との間に位置している。それ故、第1立体物と第2立体物との間に他の立体物が復元される場合、第1立体物と第2立体物との間に他の立体物が復元されない場合と比較して、観察者は、表示体を回転させることに伴う第1対象物又は第2対象物の画像の相対的な移動の量が少ないと感じ得る。
【0010】
上記の表示体では、第1立体物と第2立体物との間に第3立体物は復元されない。それ故、第1対象物の画像及び第2対象物の画像の一方が他方の動きを際立たせる効果が、第3立体物に対応した第3対象物の画像によって損なわれることがない。従って、この表示体は、観察者に強い立体感を与える三次元画像を表示することが可能である。
【0011】
なお、運動視差による立体視を例に挙げて説明するのと同様の効果は、両眼視差による立体視の場合にも得られる。
また、レリーフ構造によって三次元構造を表示する構成を採用した表示体は、高い生産性で製造することができる。
【0012】
本発明の他の側面によると、前記表示体を正面から観察した場合に、前記第1対象物の前記画像と前記第2対象物の前記画像とは少なくとも部分的に重なり合う上記側面に係る表示体が提供される。
この構成によると、観察者は、表示体を回転させることに伴う第1対象物又は第2対象物の画像の相対的な移動を特に知覚し易い。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記表示面から前記第1立体物までの距離及び前記表示面から前記第2立体物までの距離の各々は0.5mm以上である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
これら距離を長くすると、観察者は、表示体を回転させることに伴う第1対象物又は第2対象物の画像の相対的な移動をより知覚し易くなる。これら距離は、1mm以上であることが好ましい。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記第1立体物及び前記第2立体物の各々は、その全体が、前記表示面からの距離が4mm以下の範囲内に位置している上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0015】
通常、この距離を長くすると、第1対象物又は第2対象物の画像が暗くなる。この距離は、3mm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、前記第1立体物の表面のうち前記表示面から離れた位置の前記表示面からの距離は、前記第2立体物の表面のうち前記表示面から離れた位置の前記表示面からの距離と等しい上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
この構成は、第1対象物の画像の明るさと第2対象物の画像の明るさとをほぼ等しくする場合に好適である。
【0017】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記第1立体物の表面のうち前記表示面から離れた位置の前記表示面からの距離は、前記第2立体物の表面のうち前記表示面から離れた位置の前記表示面からの距離と比較してより短い上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
この構成は、第1対象物の画像を、第2対象物の画像と比較してより明るく表示する場合に好適である。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、前記表示面と向き合った印刷層を更に備え、前記印刷層は、前記表示体の表面に複数の凸部を生じさせている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
この構成を採用した表示体は、三次元画像を表示可能であるのに加え、印刷層が表示体の表面に生じさせる凸部によって、観察者に特殊な触感を感じさせることができる。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の凸部の高さは5乃至40μmの範囲内にある上記側面に係る表示体が提供される。
凸部の高さが小さいと、観察者が表示体の表面に触れたときに、これら凸部の存在を触覚で知覚することが困難になる。凸部の高さが過剰に大きいと、ブロッキングを生じ易くなる。
【0021】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の凸部は、互いから離間して幅方向に配列した複数のラインパターンを含んだ上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
この構成を採用した表示体は、観察者がその表面に触れたときに、凸部の存在を触覚で知覚することが容易である。また、この構成は、三次元画像のうち、ラインパターンに隠れて見えなかった部分を、ラインパターンの長さ方向に略平行な軸の周りで表示体を僅かに回転させることにより見えるようするのに適している。例えば、表示面から第1立体物までの距離が1mmである表示体を正面から観察した場合(0°の観察角度で観察した場合)と、10°の観察角度で観察した場合とでは、第1対象物の像の位置は約0.17mm変化する。従って、ラインパターンの幅が十分に小さければ、三次元画像のうち、ラインパターンに隠れて見えなかった部分が見えるようになる。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、前記複数のラインパターンの各々の幅は0.02乃至0.1mmの範囲内にあり、前記複数のラインパターンは0.2乃至0.5mmの範囲内のピッチで配列している上記側面に係る表示体が提供される。
この構成によると、隣り合ったラインパターンが繋がり難い。また、この構成を採用した表示体は、観察者がその表面に触れたときに、凸部の存在を触覚で知覚することが容易である。更に、この構成は、三次元画像のうち、ラインパターンに隠れて見えなかった部分を、ラインパターンの長さ方向に略平行な軸の周りで表示体を僅かに回転させることによって見えるようにするのに適している。
【0023】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体を含んだ転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを備えた転写箔が提供される。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体と、前記表示体上に設けられた粘着層とを備えた粘着ラベルが提供される。
【0025】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体と、前記表示体を支持した物品とを備えた表示体付き物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表示体を示す平面図。
【
図2】
図1に示す表示体のII-II線に沿った断面図。
【
図3】
図1及び
図2の表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物と、観察者との、仮想空間における位置関係の一例を示す図。
【
図4】
図1乃至
図3に示す表示体が、略正面から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図5】
図1乃至
図3に示す表示体が、斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図6】
図1乃至
図3に示す表示体が、斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図7】第1比較例に係る表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物と、観察者との、仮想空間における位置関係の一例を示す図。
【
図8】
図7に示す表示体が、略正面から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図9】
図7に示す表示体が、斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図10】
図7に示す表示体が、斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図11】第2比較例に係る表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物と、観察者との、仮想空間における位置関係の一例を示す図。
【
図12】
図11に示す表示体が、略正面から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図13】
図11に示す表示体が、斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図14】
図11に示す表示体が、斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図。
【
図15】
図1及び
図2の表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物との、仮想空間における位置関係の一例を示す図。
【
図17】
図16の表示体が、或る条件下で表示する画像を示す図。
【
図18】
図16の表示体が、他の条件下で表示する画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0028】
<表示体>
図1は、本発明の一実施形態に係る表示体を示す平面図である。
図2は、
図1に示す表示体のII-II線に沿った断面図である。
【0029】
なお、図中、X方向及びY方向は、表示体10の主面に平行であり且つ互いに直交する方向である。また、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向である。即ち、Z方向は、表示体10の厚さ方向である。
【0030】
図1及び
図2に示す表示体10は、レリーフ層11と反射層12と保護層13とを含んでいる。
レリーフ層11は、光透過性を有している材料、例えば、無色透明な材料からなる。レリーフ層11の反射層12側の主面には、三次元画像を回折画像として表示するレリーフ構造RSが設けられている。ここでは、レリーフ構造RSは、上記主面の一部の領域にのみ設けられている。レリーフ層11の上記主面のうち、レリーフ構造RSが設けられた領域は第1領域R1であり、レリーフ構造RSが設けられていない領域の一部は第2領域R2であり、残りの領域は第3領域である。
【0031】
ここでは、第1領域R1は、X方向に伸びた長円形状を有している。第2領域R2は、第1領域R1を取り囲んでいる。第3領域は、レリーフ層11のY方向に平行な縁に沿って伸びている。レリーフ層11の上記主面は、第2領域R2及び第3領域の少なくとも一方を含んでいなくてもよい。
【0032】
レリーフ構造RSは、表面レリーフ型のホログラムを構成するものであってもよく、回折格子であってもよい。前者の場合、レリーフ構造RSには、例えば、国際公開第2017/209113号に記載された構成を採用することができる。後者の場合、レリーフ構造RSには、例えば、特開平6-281804号公報や特開平7-104211号公報に記載された構成を採用することができる。
【0033】
レリーフ構造RSは、上記の通り、三次元画像を回折画像として表示する。レリーフ構造RSは、単色の画像を表示するように設計されたものであってもよく、多色の画像を表示するように設計されたものであってもよい。レリーフ構造RSが表示する三次元画像については、後で詳述する。
【0034】
反射層12は、第1領域R1と第2領域R2とを被覆している。反射層12は、パターニングされた金属層である。反射層12のうちレリーフ構造RSを被覆している部分は、レリーフ構造に対してコンフォーマルな形状を有している。
【0035】
保護層13は、反射層12を被覆しており、反射層12と同じ形状を有している。保護層13は、金属層を反射層12へとパターニングする際に、エッチングマスクとして利用した層である。保護層13は省略することができる。
【0036】
この表示体10は、以下に説明するように、観察者に強い立体感を与える三次元画像を表示することが可能である。
【0037】
図3は、
図1及び
図2の表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物と、観察者との、仮想空間における位置関係の一例を示す図である。
図4は、
図1乃至
図3に示す表示体が、略正面から観察した場合に表示する画像を示す図である。
図5は、
図1乃至
図3に示す表示体が、斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図である。
図6は、
図1乃至
図3に示す表示体が、斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図である。
【0038】
図1及び
図2に示す表示体10のレリーフ構造RSは、
図3に示すように、それが表示する三次元画像から立体物を三次元復元した場合に、第1立体物TOD1と第2立体物TOD2とが復元されるように設計されている。更に、このレリーフ構造RSは、
図3に示すように、それが表示する三次元画像から立体物を三次元復元した場合に、第1立体物TOD1と第2立体物TOD2との間に他の立体物が復元されないように設計されている。
【0039】
ここでは、第1立体物TOD1は、中心部が周縁部よりも厚い星形状を有しており、その厚さ方向はZ方向に平行である。また、ここでは、第2立体物TOD2は円盤形状を有しており、その厚さ方向はZ方向に平行である。
【0040】
第1立体物TOD1は、表示体10を観察する観察者OB1乃至OB3から見て表示体10の表示面よりも手前の位置に、表示面から離間するように復元される。第2立体物TOD2は、観察者OB1乃至OB3から見て表示体10の奥の位置に、表示面から離間するように復元される。ここで、表示体10の表示面は、表示体10の厚さ方向に対して垂直であり且つレリーフ層11と反射層12との界面が位置した平面である。
【0041】
ここでは、第1立体物TOD1及び第2立体物TOD2は、Z方向から見た場合に位置が等しい。なお、実際には、第1立体物TOD1のうち観察者OB1乃至OB3の何れとも向き合っていない部分は、三次元復元されない。また、第2立体物TOD2のうち、第1立体物TOD1によって遮られて、観察者OB1乃至OB3の何れからも見えない部分も、三次元復元されない。
図3では、理解を容易にするために、そのような部分も三次元復元されているが如く、それら立体物を描いている。
【0042】
なお、三次元画像からの立体物の三次元復元は、以下の方法により行う。
即ち、先ず、異なる観察角度で表示体10が表示する複数の画像を撮像し、それら画像間で特徴点のマッチングを行う。画像間での特徴点のマッチングには、ORB、SIFT又はFLANNを使用することができる。
【0043】
仮想空間における各特徴点の位置は、三角測量の原理を利用して求めることができる。従って、これを利用して、仮想空間内に立体物を復元する。
【0044】
三角測量の原理を利用して3つ以上の画像から立体物の復元を行う場合には、仮想空間において、同一の特徴点が複数の位置に現れることがある。この場合は、これら位置の重心を、その特徴点の仮想空間における位置とする。この場合、仮想空間において、同一の特徴点が複数の位置に現れ、その1つの位置が他の2以上の位置から大きくずれているときには、前者を除外して重心を算出することができる。
【0045】
次に、立体物を復元した仮想空間に、表示体10を再現する。具体的には、仮想空間に再現した観察者が立体物を見たときに知覚する像と、この観察者に向けて表示体10が表示する画像とが重なるように、仮想空間に表示体10を再現する。
上記のようにして、仮想空間に、第1立体物TOD1及び第2立体物TOD2を復元し、表示体10及び観察者OB1を再現すると、以下の通り、それらを用いて、表示体10が表示する画像を説明することができる。
【0046】
表示体10のレリーフ層11側の面を、X方向に対して垂直であり且つY方向に対して傾いた方向から白色光で照明し、これを略正面から観察した場合、即ち、観察者OB1の位置から観察した場合、表示体10は、
図4に示すように、第1対象物の像I1と第2対象物の像I2とを表示する。ここで、第1対象物及び第2対象物は、それぞれ、上記の第1立体物TOD1及び第2立体物TOD2に対応している。即ち、ここでは、第1対象物は、中心部が周縁部よりも厚い星形状を有しており、第2対象物は円盤形状を有している。上記の観察条件下では、表示体10は、像I1及び像I2を、各々が略正面を各々が向き、第1対象物が第2対象物よりも手前に位置し、それらの中心の位置が一致するように表示する。
【0047】
同様の照明条件下で、表示体10のレリーフ層11側の面を斜め右から観察した場合、即ち、観察者OB2の位置から観察した場合、表示体10は、第1対象物の像I1と第2対象物の像I2とを
図5に示すように表示する。即ち、表示体10は、像I1を、第1対象物が、観察者から見て、斜め左を向き、
図4の状態から僅かに左へ移動したが如く表示する。また、表示体10は、像I2を、第2対象物が、観察者から見て、斜め左を向き、
図4の状態から僅かに右へ移動したが如く表示する。
【0048】
また、同様の照明条件下で、表示体10のレリーフ層11側の面を斜め左から観察した場合、即ち、観察者OB3の位置から観察した場合、表示体10は、第1対象物の像I1と第2対象物の像I2とを
図6に示すように表示する。即ち、表示体10は、像I1を、第1対象物が、観察者から見て、斜め右を向き、
図4の状態から僅かに右へ移動したが如く表示する。また、表示体10は、像I2を、第2対象物が、観察者から見て、斜め右を向き、
図4の状態から僅かに左へ移動したが如く表示する。
【0049】
このように、表示体10は、それが表示する画像における第1及び第2対象物の向き及び位置が、観察角度の変化に応じて連続的に変化するように構成されている。それ故、表示体10が表示する画像は、両眼視差及び/又は運動視差により立体的に見える。
【0050】
図7は、第1比較例に係る表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物と、観察者との、仮想空間における位置関係の一例を示す図である。
図8は、
図7に示す表示体が、略正面から観察した場合に表示する画像を示す図である。
図9は、
図7に示す表示体が、斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図である。
図10は、
図7に示す表示体が、斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図である。
【0051】
図7の表示体10は、以下の設計を採用したこと以外は、
図1乃至
図6を参照しながら説明した表示体10と同様である。即ち、
図7の表示体10では、第1立体物TOD1は、表示体10を観察する観察者OB1乃至OB3から見て表示体10の表示面よりも手前の位置であるが、表示面と接するように復元される。また、第2立体物TOD2は、観察者OB1乃至OB3から見て表示体10の奥の位置であるが、表示面と接するように復元される。
【0052】
図7の表示体10のレリーフ層11側の面を、X方向に対して垂直であり且つY方向に対して傾いた方向から白色光で照明し、これを略正面から観察した場合、即ち、観察者OB1の位置から観察した場合、この表示体10は、第1対象物の像I1と第2対象物の像I2とを
図8に示すように表示する。即ち、この条件下で
図7の表示体10が表示する画像は、
図4を参照しながら説明した画像とほぼ同様である。
【0053】
同様の照明条件下で、
図7に示す表示体10のレリーフ層11側の面を斜め右から観察した場合、即ち、観察者OB2の位置から観察した場合、この表示体10は、第1対象物の像I1と第2対象物の像I2とを
図9に示すように表示する。即ち、この表示体10は、像I1を、第1対象物が、位置をほぼ変化させることなしに、観察者から見て斜め左を向いたが如く表示する。また、この表示体10は、像I2を、第2対象物が、位置をほぼ変化させることなしに、観察者から見て斜め左を向いたが如く表示する。
【0054】
また、同様の照明条件下で、
図7に示す表示体10のレリーフ層11側の面を斜め左から観察した場合、即ち、観察者OB3の位置から観察した場合、この表示体10は、第1対象物の像I1と第2対象物の像I2とを
図10に示すように表示する。即ち、この表示体10は、像I1を、第1対象物が、位置をほぼ変化させることなしに、観察者から見て斜め右を向いたが如く表示する。また、この表示体10は、像I2を、第2対象物が、位置をほぼ変化させることなしに、観察者から見て斜め右を向いたが如く表示する。
【0055】
このように、
図7に示す表示体10も、それが表示する画像における第1及び第2対象物の向きが、観察角度の変化に応じて連続的に変化するように構成されている。それ故、表示体10が表示する画像は、両眼視差及び/又は運動視差により立体的に見える。但し、
図7に示す表示体10は、観察角度を変化させても、それが表示する画像における第1及び第2対象物の逆方向への移動は殆ど生じない。それ故、
図7に示す表示体10が表示する三次元画像は、
図1乃至
図6を参照しながら説明した表示体10が表示する三次元画像ほど、観察者に強い立体感を与えない。
【0056】
図11は、第2比較例に係る表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物と、観察者との、仮想空間における位置関係の一例を示す図である。
図12は、
図11に示す表示体が、略正面から観察した場合に表示する画像を示す図である。
図13は、
図11に示す表示体が、斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図である。
図14は、
図11に示す表示体が、斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図である。
【0057】
図11の表示体10は、以下の設計を採用したこと以外は、
図1乃至
図6を参照しながら説明した表示体10と同様である。即ち、
図11の表示体10では、第2立体物TOD2は、
図1乃至
図6を参照しながら説明した表示体10と比較して、Z方向における寸法がより大きく復元される。具体的には、
図11の表示体10では、第2立体物TOD2は、その一部が、観察者OB1乃至OB3から見て表示体10の奥に位置しているが、残りの部分が、観察者OB1乃至OB3から見て表示体10の手前の位置で第1立体物TOD1と接するように復元される。
【0058】
図11の表示体10のレリーフ層11側の面を、X方向に対して垂直であり且つY方向に対して傾いた方向から白色光で照明し、これを略正面から観察した場合、即ち、観察者OB1の位置から観察した場合、この表示体10は、第1対象物の像I1と第2対象物の像I2とを
図12に示すように表示する。即ち、この条件下で
図11の表示体10が表示する画像は、
図4を参照しながら説明した画像とほぼ同様である。
【0059】
同様の照明条件下で、
図11に示す表示体10のレリーフ層11側の面を斜め右から観察した場合、即ち、観察者OB2の位置から観察した場合、この表示体10は、第1対象物の像I1と第2対象物の像I2とを
図13に示すように表示する。即ち、この表示体10は、像I1を、第1対象物が、観察者から見て、斜め左を向き、
図12の状態から僅かに左へ移動したが如く表示する。また、この表示体10は、像I2を、第2対象物が、位置をほぼ変化させることなしに、観察者から見て斜め左を向いたが如く表示する。
【0060】
また、同様の照明条件下で、
図11に示す表示体10のレリーフ層11側の面を斜め左から観察した場合、即ち、観察者OB3の位置から観察した場合、この表示体10は、第1対象物の像I1と第2対象物の像I2とを
図14に示すように表示する。即ち、この表示体10は、像I1を、第1対象物が、観察者から見て、斜め右を向き、
図12の状態から僅かに右へ移動したが如く表示する。また、この表示体10は、像I2を、第2対象物が、位置をほぼ変化させることなしに、観察者から見て斜め右を向いたが如く表示する。
【0061】
このように、
図11に示す表示体10も、それが表示する画像における第1及び第2対象物の向きが、観察角度の変化に応じて連続的に変化するように構成されている。また、この表示体10では、観察角度を変化させると、それが表示する画像における第1及び第2対象物の逆方向への相対的な移動を生じる。それ故、この表示体10が表示する画像は、両眼視差及び/又は運動視差により立体的に見える。但し、この表示体10では、観察角度を変化させた場合、第1対象物が僅かに移動したが如く像I1を表示するものの、第2対象物の位置をほぼ変化させることなしに像I2を表示する。それ故、この表示体10が表示する画像における、第1及び第2対象物の逆方向への相対的な移動の量は小さい。従って、
図11に示す表示体10が表示する三次元画像は、
図1乃至
図6を参照しながら説明した表示体10が表示する三次元画像ほど、観察者に強い立体感を与えない。
【0062】
以上の通り、
図1乃至
図6を参照しながら説明した表示体10は、観察者に強い立体感を与える三次元画像を表示することが可能である。
【0063】
表示体10には、以下の設計を採用することが好ましい。
図15は、
図1及び
図2の表示体と、それが表示する三次元画像から三次元復元することにより得られる第1及び第2立体物との、仮想空間における位置関係の一例を示す図である。
【0064】
表示面から第1立体物TOD1までの距離D1min及び表示面から第2立体物TOD2までの距離D2minの各々は、上記の通り、0.5mm以上であることが好ましい。これら距離D1min及びD2minの各々を長くすると、観察者は、表示体10を回転させることに伴う第1対象物及び第2対象物の画像の相対的な移動をより知覚し易くなる。
【0065】
第1立体物TOD1は、上記の通り、その全体が、表示面からの距離D1maxが4mm以下の範囲内に位置していることが好ましい。同様に、第2立体物TOD2は、上記の通り、その全体が、表示面からの距離D2maxが4mm以下の範囲内に位置していることが好ましい。表示面からの距離が長い部分を第1立体物TOD1が含んでいる場合、この部分に対応した位置で、第1対象物の画像が暗くなる。同様に、表示面からの距離が長い部分を第2立体物TOD2が含んでいる場合、この部分に対応した位置で、第2対象物の画像が暗くなる。
【0066】
<表示体の変形例>
図1乃至
図6を参照しながら説明した表示体10には、様々な変形が可能である。
図16は、変形例に係る表示体の断面図である。
図16に示す表示体10は、印刷層14を更に含んでいること以外は、
図1乃至
図6を参照しながら説明した表示体10と同様である。
【0067】
印刷層14は、レリーフ層11上に設けられている。印刷層14は、互いから離間して幅方向に配列した複数のラインパターン141を含んでいる。ここでは、ラインパターン141は、各々がY方向に伸び、X方向に配列している。
【0068】
印刷層14は、表示体10の表面に複数の凸部を生じさせている。それ故、この表示体10は、
図1乃至
図6を参照しながら説明した表示体10と同様に、観察者に強い立体感を与える三次元画像を表示可能であるのに加え。観察者に特殊な触感を感じさせることができる。
【0069】
印刷層14を構成しているパターン、ここではラインパターン141は、光透過性であってもよく、遮光性であってもよい。後者の場合であっても、表示体10は、観察者に強い立体感を与える三次元画像を表示可能である。
【0070】
図17は、
図16の表示体が、或る条件下で表示する画像を示す図である。
図18は、
図16の表示体が、他の条件下で表示する画像を示す図である。
【0071】
ラインパターン141が遮光性である場合、
図17及び
図18に示すように、レリーフ構造RSが表示する像I1及びI2のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えない。但し、
図17及び
図18に示すように、観察角度を変化させると、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分が、見えるようになる。
【0072】
印刷層14が表示体10の表面に生じさせる凸部の高さは、好ましくは5乃至40μmの範囲内にある。凸部の高さが小さいと、観察者が表示体10の表面に触れたときに、これら凸部の存在を触覚で知覚することが困難になる。凸部の高さが過剰に大きいと、ブロッキングを生じ易くなる。なお、凸部の高さが大きな印刷層14は、例えば、凹版印刷によって形成することができる。
【0073】
ラインパターン141の各々の幅は、0.02乃至0.1mmの範囲内にあることが好ましい。また、ラインパターン141は、0.2乃至0.5mmの範囲内のピッチで配列していることが好ましい。
【0074】
この構成によると、隣り合ったラインパターン141が繋がり難い。また、この構成を採用した表示体10は、観察者がその表面に触れたときに、凸部の存在を触覚で知覚することが容易である。更に、この構成は、三次元画像のうち、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分を、ラインパターン141の長さ方向に略平行な軸ARの周りで表示体10を僅かに回転させることによって見えるようにするのに適している。
【0075】
<転写箔>
図19は、転写箔の一例を示す断面図である。
【0076】
図19に示す転写箔2は、支持体21と転写材層22と接着層23とを含んでいる。
支持体21は、転写材層22を剥離可能に支持している。支持体21は、例えば、帯形状を有している。
【0077】
転写材層22は、レリーフ層221と、反射層222と、保護層223と、剥離保護層224とを含んでいる。剥離保護層224、レリーフ層221、反射層222、及び保護層223は、この順に、支持体21上に積層されている。レリーフ層221と反射層222と保護層223との積層順は、逆であってもよい。
【0078】
転写材層22は、熱圧の印加によって物品へ転写される転写部と、物品へ転写されない非転写部とを含んでいる。転写部は、上述した表示体10として利用される部分である。従って、レリーフ層221のうち転写部に位置した部分と、反射層222のうち転写部に位置した部分と、保護層223のうち転写部に位置した部分とは、それぞれ、レリーフ層11と反射層12と保護層13とに相当する。
【0079】
剥離保護層224は、支持体21と隣接するように設けられている。剥離保護層224は、光透過性を有している材料、例えば、無色透明な材料からなる。剥離保護層224は、省略することができる。
【0080】
接着層23は、転写材層22を間に挟んで支持体21と向き合っている。接着層の母材は、熱可塑性樹脂とすることができる。その樹脂成分は、アクリル樹脂とすることができる。アクリル樹脂は、ポリメチルメタクリレート等とすることができる。転写箔2は、接着層23を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0081】
<粘着ラベル>
図20は、粘着ラベルの一例を示す断面図である。
【0082】
図20に示す粘着ラベル3は、表示体31と粘着層32とを含んでいる。なお、
図20において、符号33は剥離シートを表している。
【0083】
表示体31は、基材311と反射層312と保護層313とを含んでいる。表示体31は、上述した表示体10に相当している。従って、基材311と反射層312と保護層313とは、それぞれ、レリーフ層11と反射層12と保護層13とに相当している。
【0084】
粘着層32は、表示体31の一方の主面に設けられている。粘着層32は、粘着ラベル3の使用直前まで、剥離シート33によって保護される。
【0085】
粘着層32は、感圧接着剤などの粘着剤からなる。粘着剤としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、又は、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコーン系若しくはポリイソブチル系粘着剤を使用する。
【0086】
粘着剤は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン及びビニルモノマーなどの凝集成分;不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー及びアクリルニトリルなどの改質成分;重合開始剤;可塑剤;硬化剤;硬化促進剤;酸化防止;又はそれらの2つ以上を含んだ混合物を使用する。
【0087】
<表示体付き物品>
図21は、表示体付き物品の一例を示す平面図である。
【0088】
図21に示す表示体付き物品4は、印刷物である。表示体付き物品4は、例えば、紙幣、有価証券、証明書類、クレジットカード、パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体、又は、内容物を包装する包装体である。
【0089】
この表示体付き物品4は、表示体41と、これを支持した物品42とを含んでいる。
【0090】
表示体41は、上述した表示体10である。表示体41は、例えば、物品42の表面に貼り付けるか又は物品42内に埋め込まれることにより、物品42によって支持されている。
【0091】
物品42は、印刷基材などの物品本体421と、これに設けられた印刷層422を含んでいる。物品本体421の材質は、例えば、プラスチック、金属、紙、又はそれらの複合体である。
【実施例】
【0092】
以下に、本発明の例を記載する。
(例1)
図19を参照しながら説明した転写箔2を製造した。なお、保護層223は省略した。また、転写材層22には、
図1乃至
図6及び
図15を参照しながら表示体10について説明した構造を採用した。
【0093】
ここでは、第1立体物TOD1は、厚さを有していない星形状とし、距離D1min及びD1maxの各々は2mmとした。また、第2立体物TOD2は、厚さを有していない月形状とし、距離D2min及びD2maxの各々は2mmとした。
【0094】
レリーフ構造RSには、国際公開第2017/209113号に記載された構造を採用した。具体的には、第1立体物TOD1及び第2立体物TOD2の各々を、一辺の長さが100μmの正方形領域へ区分し、X方向及びY方向の各々の視野角を20°とした。また、レリーフ構造RSが含むパターンの最小サイズは400nmとし、深さは4段階とした。
【0095】
転写箔2の製造においては、先ず、ニッケル製の版を製造した。具体的には、レジスト層の表面に、電子線描画装置を用いて、レリーフ構造RSに対応したパターンを描画した。次いで、この表面にニッケルをスパッタリングし、更にニッケルをめっきした。その後、ニッケル層からレジスト層を除去した。以上のようにして、ニッケル製の版を得た。
【0096】
次に、支持体21としてポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを準備し、その上に、ポリメチルメタクリル酸とポリエチレンワックスとを含んだ液を塗工して、剥離保護層224を形成した。次いで、剥離保護層224上に、アクリルポリオールとイソシアネートとフッ素樹脂とを含んだ層を形成した。この層に、上記のニッケル製の版が取り付けられ、150℃に温度を設定した加熱ロールを押し当てるとともに、紫外線を照射して、版のパターンを転写した。これにより、レリーフ層221を得た。
【0097】
レリーフ層221と剥離保護層224と支持体21とを含む積層体を版から剥離した後、レリーフ層221上にアルミニウムを蒸着して、反射層222を形成した。更に、反射層222上に、エチレン-酢酸ビニル共重合体を塗工して、接着層23を形成した。
以上のようにして、
図19に示す転写箔2を得た。
【0098】
次に、この転写箔2を用いて、表示体付き物品を製造した。ここでは、表示体を支持させるべき物品として、上質紙を使用した。表示体付き物品を製造においては、転写箔2を上質紙に重ね、この状態で、それらの積層体の一部に熱圧を印加した。次いで、支持体21を、転写材層22のうち熱圧を印加していない部分とともに上質紙から剥離した。このようにして、転写材層22のうち熱圧を印加した部分を、表示体10として、支持体21から上質紙へ転写した。以上のようにして、表示体付き物品を得た。
【0099】
この表示体付き物品を白色光で照明し、表示体10が表示する三次元画像を肉眼で観察した。その結果、この表示体10は、観察者に強い立体感を与える三次元画像を表示することを確認できた。
【0100】
(比較例)
三次元画像を三次元復元した場合に第2立体物TOD2が復元されないようにレリーフ構造RSを設計したこと以外は、例1と同様の方法により、表示体付き物品を製造した。
【0101】
この表示体付き物品を白色光で照明し、表示体が表示する三次元画像を肉眼で観察した。その結果、この表示体は、例1の表示体10ほど、観察者に強い立体感を与えるものではないことを確認できた。
【0102】
(例2)
転写材層22の一部を支持体21から上質紙へ転写した後に、
図16乃至
図18を参照しながら説明した印刷層14を形成したこと以外は、例1と同様の方法により、表示体付き物品を製造した。ここでは、印刷層14は、凹版印刷によって形成した。また、印刷層14の厚さは15μmとし、ラインパターン141の幅は0.05mmとし、ラインパターン141のピッチは0.3mmとした。
【0103】
この表示体付き物品を白色光で照明し、表示体10が表示する三次元画像を肉眼で観察した。その結果、或る条件下では、像I1及びI2のうち、ラインパターン141の真下に位置した部分は、ラインパターン141に隠れて見えなかったが、観察角度を変化させることにより、ラインパターン141に隠れて見えなかった部分は見えるようになった。また、この表示体10は、比較例の表示体と比較して、観察者により強い立体感を与えるものであることを確認できた。更に、この表示体10は、印刷層14に触れることにより、ラインパターン141により生じる凹凸を、他の部分との触感の違いとして認識することができた。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
第1対象物の画像と第2対象物の画像とを含む三次元画像を回折画像として表示する表示体であって、
前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、
前記第1対象物に対応した第1立体物は、前記表示体を観察する観察者から見て前記表示体の表示面よりも手前の位置に、前記表示面から離間するように復元され、
前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記観察者から見て前記表示面の奥の位置に、前記表示面から離間するように復元され、
前記第1立体物と前記第2立体物との間に他の立体物は復元されない表示体。
[2]
前記表示体を正面から観察した場合に、前記第1対象物の前記画像と前記第2対象物の前記画像とは少なくとも部分的に重なり合う項1に記載の表示体。
[3]
前記表示面から前記第1立体物までの距離及び前記表示面から前記第2立体物までの距離の各々は0.5mm以上である項1又は2に記載の表示体。
[4]
前記第1立体物及び前記第2立体物の各々は、その全体が、前記表示面からの距離が4mm以下の範囲内に位置している項1乃至3の何れか1項に記載の表示体。
[5]
前記第1立体物の表面のうち前記表示面から最も離れた位置の前記表示面からの距離は、前記第2立体物の表面のうち前記表示面から最も離れた位置の前記表示面からの距離と等しい項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
[6]
前記第1立体物の表面のうち前記表示面から最も離れた位置の前記表示面からの距離は、前記第2立体物の表面のうち前記表示面から最も離れた位置の前記表示面からの距離と比較してより短い項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
[7]
前記三次元画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ層と、
前記主面のうち前記レリーフ構造が設けられた領域を少なくとも部分的に被覆した反射層と
を備え、前記表示面は、前記反射層の表面又は前記レリーフ構造と前記反射層との間の界面である項1乃至6の何れか1項に記載の表示体。
[8]
前記レリーフ構造には前記三次元画像が干渉縞として記録された項7に記載の表示体。
[9]
前記表示面と向き合った印刷層を更に備え、前記印刷層は、前記表示体の表面に複数の凸部を生じさせている項7又は8に記載の表示体。
[10]
前記複数の凸部の高さは5乃至40μmの範囲内にある項9に記載の表示体。
[11]
前記複数の凸部は、互いから離間して幅方向に配列した複数のラインパターンを含んだ項9又は10に記載の表示体。
[12]
前記複数のラインパターンの各々の幅は0.02乃至0.1mmの範囲内にあり、前記複数のラインパターンは0.2乃至0.5mmの範囲内のピッチで配列している項11に記載の表示体。
[13]
項1乃至12の何れか1項に記載の表示体を含んだ転写材層と、
前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と
を備えた転写箔。
[14]
項1乃至12の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体上に設けられた粘着層と
を備えた粘着ラベル。
[15]
項1乃至12の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体を支持した物品と
を備えた表示体付き物品。
【符号の説明】
【0104】
2…転写箔、3…粘着ラベル、4…表示体付き物品、10…表示体、11…レリーフ層、12…反射層、13…保護層、14…印刷層、21…支持体、22…転写材層、23…接着層、31…表示体、32…粘着層、33…剥離シート、41…表示体、42…物品、141…ラインパターン、221…レリーフ層、222…反射層、223…保護層、224…剥離保護層、421…物品本体、422…印刷層、AR…軸、I1…像、I2…像、OB1…観察者、OB2…観察者、OB3…観察者、R1…第1領域、R2…第2領域、RS…レリーフ構造、TOD1…第1立体物、TOD2…第2立体物。