(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】血圧計、血圧測定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20250121BHJP
A61B 5/0225 20060101ALI20250121BHJP
A61B 5/0235 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
A61B5/022 300F
A61B5/0225 F
A61B5/0235
(21)【出願番号】P 2020126438
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】江副 美佳
(72)【発明者】
【氏名】山下 新吾
(72)【発明者】
【氏名】浅野 康夫
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-178065(JP,A)
【文献】特開平02-021843(JP,A)
【文献】特開2020-103638(JP,A)
【文献】特開昭57-173038(JP,A)
【文献】特開昭60-163635(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055716(WO,A1)
【文献】特開2018-102872(JP,A)
【文献】特開2005-261820(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026647(WO,A1)
【文献】特開2002-045347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/03
A61B 5/00 - 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧測定用カフによって被測定部位を一時的に圧迫して血圧測定を行う血圧計であって、
上記カフに流体を供給して上記カフを加圧するポンプと、
上記カフの圧力を検出する圧力センサと、
血圧測定時に上記カフから流体を排出して上記カフを減圧するための通常測定用の第1の弁と、
上記第1の弁が故障していることによって上記第1の弁による上記流体の排出が正常に行われない異常発生時に、上記カフから流体を排出して上記カフを減圧するための緊急排気用の第2の弁と、
上記圧力センサが出力する上記カフの圧力に基づいて、上記ポンプ、上記第1および第2の弁の動作を制御して、上記被測定部位の血圧を測定する血圧測定部と、
上記第1の弁に閉指示を与え、かつ上記第2の弁に開指示を与えた状態で、上記ポンプによって上記カフに流体を供給して、上記カフの圧力が上昇する程度に応じて、緊急排気機能に異常が有るか無いかを判定する判定処理を行う異常判定部と、
を備え
、
上記判定処理は、上記ポンプの駆動開始による上記カフへの上記流体供給の開始から予め定められた基準時間が経過するとき、上記カフの圧力が予め定められた基準圧力以上であれば、上記緊急排気機能に異常有りと判定する一方、上記カフの圧力が上記基準圧力未満であれば、上記緊急排気機能に異常無しと判定するようになっている
ことを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧計において、
上記異常判定部は、上記血圧測定部による血圧測定の都度、その血圧測定に先立って、上記判定処理を行う
ことを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血圧計において、
上記異常判定部が上記緊急排気機能に異常有りと判定したとき、上記血圧測定部は上記被測定部位の血圧測定を中止する一方、上記異常判定部が上記緊急排気機能に異常無しと判定したとき、上記血圧測定部は血圧測定を開始する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記第1の弁は常開弁であり、
上記第2の弁は常閉弁である
ことを特徴とする血圧計。
【請求項5】
請求項1に記載の血圧計において、
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する自動測定モードを有し、
上記自動測定モードで、上記異常判定部は、上記血圧測定部による上記スケジュールに応じた血圧測定の都度、その血圧測定に先立って、上記判定処理を行う
ことを特徴とする血圧計。
【請求項6】
請求項5に記載の血圧計において、
入力された血圧測定指示に応じて血圧測定を行う通常の血圧測定モードを有し、
上記通常の血圧測定モードで、上記異常判定部は上記判定処理を行わず、上記血圧測定部は、上記入力された血圧測定指示に応じて上記被測定部位の血圧を測定する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項7】
請求項5に記載の血圧計において、
上記自動測定モードへ移行する移行指示が入力されると、その指示に応じて、上記異常判定部は上記判定処理を行い、
上記異常判定部は、上記緊急排気機能に異常有りと判定したとき、この血圧計が上記自動測定モードに移行するのを禁止する一方、上記緊急排気機能に異常無しと判定したとき、この血圧計が上記自動測定モードに移行するのを許容する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記異常判定部が上記緊急排気機能に異常有りと判定したとき、上記緊急排気機能に異常有りとの報知を行う報知部を備えた
ことを特徴とする血圧計。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記血圧測定部と上記異常判定部は、プログラムされた第1のプロセッサと、この第1のプロセッサとは別の、プログラムされた第2のプロセッサとによって構成され、
上記第1の弁は上記第1のプロセッサによって駆動され、
上記第2の弁は上記第2のプロセッサによって駆動される
ことを特徴とする血圧計。
【請求項10】
血圧測定用カフによって被測定部位を一時的に圧迫して血圧測定を行う血圧測定方法であって、
上記カフに流体を供給して上記カフを加圧するポンプと、
上記カフの圧力を検出する圧力センサと、
血圧測定時に上記カフから流体を排出して上記カフを減圧するための通常測定用の第1の弁と、
上記第1の弁が故障していることによって上記第1の弁による上記流体の排出が正常に行われない異常発生時に、上記カフから流体を排出して上記カフを減圧するための緊急排気用の第2の弁とを備え、
上記血圧測定方法は、
上記圧力センサが出力する上記カフの圧力に基づいて、上記ポンプ、上記第1および第2の弁の動作を制御して、上記被測定部位の血圧を測定する測定ステップと、
上記測定ステップの都度、その測定ステップに先立って行われるステップとして、上記第1の弁に閉指示を与え、かつ上記第2の弁に開指示を与えた状態で、上記ポンプによって上記カフに流体を供給して、上記カフの圧力が上昇する程度に応じて、緊急排気機能に異常が有るか無いかを判定する判定ステップを有
し、
上記判定ステップは、上記ポンプの駆動開始による上記カフへの上記流体供給の開始から予め定められた基準時間が経過するとき、上記カフの圧力が予め定められた基準圧力以上であれば、上記緊急排気機能に異常有りと判定する一方、上記カフの圧力が上記基準圧力未満であれば、上記緊急排気機能に異常無しと判定するようになっている
ことを特徴とする血圧測定方法。
【請求項11】
請求項10に記載の血圧測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧計に関し、より詳しくは、血圧測定用カフによって被測定部位を一時的に圧迫して血圧測定を行う血圧計に関する。また、この発明は、そのような血圧計によって血圧を測定する血圧測定方法に関する。また、この発明は、そのような血圧測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の血圧計としては、例えば特許文献1(特開平3-23837号公報)に開示されているように、生体を圧迫するカフ(縛帯)と、血圧測定の動作を制御する測定制御部と、血圧測定時に上記カフにつながる加圧管の空気をリークさせるためのリーク弁と、非常時にカフにつながる加圧管を開放するための非常開放弁と、上記測定制御部が測定開始後、所定時間経過しても測定完了を示す信号を出力しない場合に、上記非常開放弁を動作させる安全制御部とを備えたものが知られている。さらに同文献には、測定を開始する前に上記測定制御部、上記安全制御部への電源電圧値が正常に供給できるかどうかを確認することにより、事故を未然に防ぐことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、測定を開始する前に上記電源電圧値が正常に供給できるかどうかが確認されているけれども、上記非常開放弁の動作までは確認されていない。このため、非常開放弁自体が故障していた場合には、緊急時(非常時)の排気が行われないという問題がある。例えば、夜間血圧計のように、被験者の睡眠中(夜間)に予め定められたスケジュールに従って血圧の測定開始をする血圧計では、非常時に非常開放弁が万一故障していると、被験者が無意識のまま被測定部位が長時間圧迫され、動脈が阻血されたままの状態となってしまう。
【0005】
そこで、この発明の課題は、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを確実に回避できる血圧計および血圧測定方法を提供することにある。また、この発明の課題は、そのような血圧測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この開示の血圧計は、
血圧測定用カフによって被測定部位を一時的に圧迫して血圧測定を行う血圧計であって、
上記カフに流体を供給して上記カフを加圧するポンプと、
上記カフの圧力を検出する圧力センサと、
血圧測定時に上記カフから流体を排出して上記カフを減圧するための通常測定用の第1の弁と、
上記第1の弁が故障していることによって上記第1の弁による上記流体の排出が正常に行われない異常発生時に、上記カフから流体を排出して上記カフを減圧するための緊急排気用の第2の弁と、
上記圧力センサが出力する上記カフの圧力に基づいて、上記ポンプ、上記第1および第2の弁の動作を制御して、上記被測定部位の血圧を測定する血圧測定部と、
上記第1の弁に閉指示を与え、かつ上記第2の弁に開指示を与えた状態で、上記ポンプによって上記カフに流体を供給して、上記カフの圧力が上昇する程度に応じて、緊急排気機能に異常が有るか無いかを判定する判定処理を行う異常判定部と、
を備え、
上記判定処理は、上記ポンプの駆動開始による上記カフへの上記流体供給の開始から予め定められた基準時間が経過するとき、上記カフの圧力が予め定められた基準圧力以上であれば、上記緊急排気機能に異常有りと判定する一方、上記カフの圧力が上記基準圧力未満であれば、上記緊急排気機能に異常無しと判定するようになっている
ことを特徴とする。
【0007】
本明細書で、弁に「閉指示」を与えるとは、その弁のタイプが常開弁と常閉弁とのいずれであるかにかかわらず、その弁を閉じるように制御することを指す。また、弁に「開指示」を与えるとは、弁のタイプが常開弁と常閉弁とのいずれであるかにかかわらず、その弁を開くように制御することを指す。
【0008】
この開示の血圧計では、上記異常判定部は、上記第1の弁に閉指示を与え、かつ上記第2の弁に開指示を与えた状態で、上記ポンプによって上記カフに流体を供給する。この場合において、
(i) 例えば、第1のケースとして、上記第1の弁が正常で閉状態であり、かつ上記第2の弁が正常で開状態であれば、上記ポンプによって上記カフに流体を供給したとき、上記第2の弁が開状態であるから上記カフの圧力が上昇する程度は低い。この「低い」という結果に応じて、上記異常判定部は、緊急排気機能に異常無しと判定する。
(ii) 次に、第2のケースとして、上記第1の弁が正常で閉状態であり、かつ上記第2の弁が異常で閉状態であれば、上記ポンプによって上記カフに流体を供給したとき、上記第1および第2の弁が開状態であるから上記カフの圧力が上昇する程度は高い。この「高い」という結果に応じて、上記異常判定部は、緊急排気機能に異常有りと判定する。
(iii) 次に、第3のケースとして、上記第1の弁が異常で開状態であり、かつ上記第2の弁が正常で開状態であれば、上記ポンプによって上記カフに流体を供給したとき、上記第1の弁が開状態であるから上記カフの圧力が上昇する程度は低い。この「低い」という結果に応じて、上記異常判定部は、緊急排気機能に異常無しと判定する。
(iv) 最後に、第4のケースとして、上記第1の弁が異常で開状態であり、かつ上記第2の弁が異常で閉状態であれば、上記ポンプによって上記カフに流体を供給したとき、上記第1の弁が開状態であるから上記カフの圧力が上昇する程度は低い。この「低い」という結果に応じて、上記異常判定部は、緊急排気機能に異常無しと判定する。
【0009】
この結果、上記第2のケースでは、緊急排気機能に異常有りとの判定結果に応じて、上記血圧測定部は上記被測定部位の血圧測定を例えば中止することができる。したがって、上記被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを回避できる。一方、上記第1のケース、上記第3のケースおよび上記第4のケースでは、緊急排気機能に異常無しとの判定結果に応じて、上記血圧測定部は上記被測定部位の血圧測定を開始できる。ただし、上記第3のケースおよび上記第4のケースでは、上記第1の弁が異常で開状態のままであるから、たとえ上記血圧測定部が上記ポンプを動作させて上記カフに流体を供給しても、上記カフの圧力が上昇しない(典型的には、測定エラーとなる)。したがって、上記被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを回避できる。上記第1のケースでは、上記血圧測定部は、上記圧力センサが出力する上記カフの圧力に基づいて、上記ポンプ、上記第1および第2の弁の動作を制御して、上記被測定部位の血圧を測定することができる。この場合、上記第2の弁が正常であるから、緊急時(非常時)には上記第2の弁を開状態にして、緊急排気を行うことができる。このように、この血圧計によれば、上記被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを、確実に回避できる。
【0010】
一実施形態の血圧計では、上記異常判定部は、上記血圧測定部による血圧測定の都度、その血圧測定に先立って、上記判定処理を行うことを特徴とする。
【0011】
この一実施形態の血圧計では、上記異常判定部は、上記血圧測定部による血圧測定の都度、その血圧測定に先立って、上記判定処理を行う。したがって、上記被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを、さらに確実に回避できる。
【0012】
一実施形態の血圧計では、上記異常判定部が上記緊急排気機能に異常有りと判定したとき、上記血圧測定部は上記被測定部位の血圧測定を中止する一方、上記異常判定部が上記緊急排気機能に異常無しと判定したとき、上記血圧測定部は血圧測定を開始することを特徴とする。
【0013】
この一実施形態の血圧計では、上記異常判定部が上記緊急排気機能に異常有りと判定したとき、上記血圧測定部は上記被測定部位の血圧測定を中止する。したがって、上記被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを、確実に回避できる。一方、上記異常判定部が上記緊急排気機能に異常無しと判定したとき、上記血圧測定部は血圧測定を開始する。ここで、上記第3のケースおよび上記第4のケースでは、上記第1の弁が異常で開状態のままであるから、たとえ上記血圧測定部が上記ポンプを動作させて上記カフに流体を供給しても、上記カフの圧力が上昇しない。したがって、上記血圧測定部は、上記カフの圧力が上昇する程度に応じて、上記第1の弁が異常で測定エラーが発生したと判定することができ、この判定結果に応じて、測定を中止することができる。上記第1のケースでは、上記血圧測定部が上記ポンプを動作させて上記カフに流体を供給すると、上記カフの圧力が正常に上昇するので、上記血圧測定部は血圧測定を完了することができる。
【0014】
一実施形態の血圧計では、
上記第1の弁は常開弁であり、
上記第2の弁は常閉弁である
ことを特徴とする。
【0015】
この一実施形態の血圧計では、上記第1の弁と上記第2の弁とは互いに異なるタイプの弁(常開弁と常閉弁)であるから、互いに同じタイプの弁である場合に比して、同じ故障原因で異常発生する確率が低い。したがって、上記血圧計の製品としての信頼性を高めることができる。また、血圧測定用の上記第1の弁は常開電磁弁であるから、血圧測定時(血圧測定用カフによって被測定部位を一時的に圧迫する期間)に閉指示(作動指示)を受けて閉状態になれば足り、血圧測定時以外の期間は非作動で開状態であればよい。緊急排気用の上記第2の弁は常閉電磁弁であるから、緊急排気時に開指示(作動指示)を受けて開状態になれば足り、緊急排気時以外の期間は非作動で閉状態であればよい。したがって、上記第1の弁と上記第2の弁に関する消費電力を低減できる。
【0016】
一実施形態の血圧計では、
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する自動測定モードを有し、
上記自動測定モードで、上記異常判定部は、上記血圧測定部による上記スケジュールに応じた血圧測定の都度、その血圧測定に先立って、上記判定処理を行う
ことを特徴とする。
【0017】
上記自動測定モードで、緊急時(非常時)に万一緊急排気用の上記第2の弁が故障していると、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となる恐れがある。そこで、この一実施形態の血圧計では、上記自動測定モードで、上記異常判定部は、上記血圧測定部による上記スケジュールに応じた血圧測定の都度、その血圧測定に先立って、上記判定処理を行う。したがって、被験者が無意識のまま被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるような事態を、確実に回避できる。
【0018】
一実施形態の血圧計では、
入力された血圧測定指示に応じて血圧測定を行う通常の血圧測定モードを有し、
上記通常の血圧測定モードで、上記異常判定部は上記判定処理を行わず、上記血圧測定部は、上記入力された血圧測定指示に応じて上記被測定部位の血圧を測定する
ことを特徴とする。
【0019】
上記通常の血圧測定モードで、上記血圧測定部による血圧測定の都度、その血圧測定に先立って、上記異常判定部が上記判定処理を行うと、1回の血圧測定に要する時間(ここでは、上記判定処理に要する時間と、実際の血圧測定に要する時間との合計時間を意味する。)が全体として長くなる。一方、上記通常の血圧測定モードでは、被測定者は覚醒状態にあるので、例えば、夜間血圧計のように、被験者の睡眠中(夜間)に予め定められたスケジュールに従って血圧の測定開始をする場合に比して、上記判定処理を行う意義は少ないと言える。そこで、この一実施形態の血圧計では、上記通常の血圧測定モードで、上記異常判定部は上記判定処理を行わず、上記血圧測定部は、上記入力された血圧測定指示に応じて上記被測定部位の血圧を測定する。したがって、上記血圧測定部による血圧測定の都度、その血圧測定に先立って、上記異常判定部が上記判定処理を行う場合に比して、1回の血圧測定に要する時間が全体として短くなる。
【0020】
一実施形態の血圧計では、
上記自動測定モードへ移行する移行指示が入力されると、その指示に応じて、上記異常判定部は上記判定処理を行い、
上記異常判定部は、上記緊急排気機能に異常有りと判定したとき、この血圧計が上記自動測定モードに移行するのを禁止する一方、上記緊急排気機能に異常無しと判定したとき、この血圧計が上記自動測定モードに移行するのを許容する
ことを特徴とする。
【0021】
この一実施形態の血圧計では、上記自動測定モードへ移行する移行指示が入力されると、その指示に応じて、上記異常判定部は上記判定処理を行う。そして、上記異常判定部は、上記緊急排気機能に異常有りと判定したとき、この血圧計が上記自動測定モードに移行するのを禁止する一方、上記緊急排気機能に異常無しと判定したとき、この血圧計が上記自動測定モードに移行するのを許容する。したがって、被験者が無意識のまま被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるような事態を、さらに確実に回避できる。
【0022】
なお、上記自動測定モードへ移行する「移行指示」は、例えば、上記血圧計の本体に設けられた操作部としてのスイッチを介して入力される。
【0023】
一実施形態の血圧計では、上記異常判定部が上記緊急排気機能に異常有りと判定したとき、上記緊急排気機能に異常有りとの報知を行う報知部を備えたことを特徴とする。
【0024】
この一実施形態の血圧計では、上記異常判定部が上記緊急排気機能に異常有りと判定したとき、報知部は上記緊急排気機能に異常有りとの報知を行う。この報知によって、ユーザ(典型的には、被験者)は、緊急排気機能に異常が有ることを知り、例えば、血圧計メーカのサービス部門に保守サービスを依頼するなどの対処をとることができる。
【0025】
一実施形態の血圧計では、
上記血圧測定部と上記異常判定部は、プログラムされた第1のプロセッサと、この第1のプロセッサとは別の、プログラムされた第2のプロセッサとによって構成され、
上記第1の弁は上記第1のプロセッサによって駆動され、
上記第2の弁は上記第2のプロセッサによって駆動される
ことを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の血圧計では、上記第1のプロセッサと上記第1の弁との組、上記第2のプロセッサと上記第2の弁との組のうち、いずれか一方の組に異常が発生したとしても、他方の組が正常であれば、上記カフの排気が行われ得る。したがって、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを、さらに確実に回避できる。
【0027】
別の局面では、この開示の血圧測定方法は、
血圧測定用カフによって被測定部位を一時的に圧迫して血圧測定を行う血圧測定方法であって、
上記カフに流体を供給して上記カフを加圧するポンプと、
上記カフの圧力を検出する圧力センサと、
血圧測定時に上記カフから流体を排出して上記カフを減圧するための通常測定用の第1の弁と、
上記第1の弁が故障していることによって上記第1の弁による上記流体の排出が正常に行われない異常発生時に、上記カフから流体を排出して上記カフを減圧するための緊急排気用の第2の弁とを備え、
上記血圧測定方法は、
上記圧力センサが出力する上記カフの圧力に基づいて、上記ポンプ、上記第1および第2の弁の動作を制御して、上記被測定部位の血圧を測定する測定ステップと、
上記測定ステップの都度、その測定ステップに先立って行われるステップとして、上記第1の弁に閉指示を与え、かつ上記第2の弁に開指示を与えた状態で、上記ポンプによって上記カフに流体を供給して、上記カフの圧力が上昇する程度に応じて、緊急排気機能に異常が有るか無いかを判定する判定ステップを有し、
上記判定ステップは、上記ポンプの駆動開始による上記カフへの上記流体供給の開始から予め定められた基準時間が経過するとき、上記カフの圧力が予め定められた基準圧力以上であれば、上記緊急排気機能に異常有りと判定する一方、上記カフの圧力が上記基準圧力未満であれば、上記緊急排気機能に異常無しと判定するようになっている
ことを特徴とする。
【0028】
この開示の血圧測定方法によれば、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを確実に回避できる。
【0029】
さらに別の局面では、この開示のプログラムは、上記血圧測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0030】
この開示のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記血圧測定方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上より明らかなように、この開示の血圧計および血圧測定方法によれば、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを確実に回避できる。また、この開示のプログラムによれば、そのような血圧測定方法をコンピュータに実施させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】この発明の一実施形態の手首式血圧計の外観を示す図である。
【
図3】上記血圧計が被測定部位としての左手首に装着された態様を示す図である。
【
図5】上記血圧計が通常の血圧測定モードで保護装置部の動作確認を行う場合の動作フローを示す図である。
【
図6】上記血圧計が夜間血圧測定モードでのみ緊急排気機能の異常有無の判定を行う場合の動作フローを示す図である。
【
図7】
図5、
図6の動作フローにおける、血圧測定ルーチンの具体的なフローを示す図である。
【
図8】
図5、
図6の動作フローにおける、保護装置部の動作確認ルーチンの具体的なフローを示す図である。
【
図9】上記血圧計において、カフの圧力が上昇する程度に応じて、緊急排気機能に異常が有るか無いかを判定する仕方を、模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
(血圧計の構成)
図1は、この発明の一実施形態の手首式血圧計100の外観を示している。この血圧計100は、大別して、被測定部位としての左手首90(後述の
図3参照)に装着されるべき血圧測定用カフ20と、このカフ20に一体に取り付けられた本体10とを備えている。
【0035】
カフ20は、手首式血圧計用の一般的なものであり、左手首90を周方向に沿って取り巻くように細長い帯状の形状を有している。このカフ20内には、左手首90を圧迫するための流体袋22(
図2参照)が内包されている。なお、カフ20を常時環状に維持するために、カフ20内に、適度な可撓性を有するカーラが設けられてもよい。
【0036】
図3に示すように、本体10は、帯状のカフ20の長手方向に関して略中央の部位に、一体に取り付けられている。この例では、本体10が取り付けられた部位は、装着状態で左手首90の掌側面(手の平側の面)90aに対応することが予定されている。
【0037】
本体10は、カフ20の外周面に沿った偏平な略直方体状の形状を有している。この本体10は、ユーザ(この例では、被験者を指す。以下同様。)の睡眠の邪魔にならないように、小型で、薄厚に形成されている。また、本体10のコーナー部にはアールが施されている(角が丸くされている。)。
【0038】
図1に示すように、本体10の外面のうち左手首90から最も遠い側の面(頂面)には、表示画面をなす表示器50と、ユーザからの指示を入力するための操作部52とが設けられている。
【0039】
表示器50は、この例では、LCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)からなり、後述のCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)110からの制御信号に従って所定の情報を表示する。この例では、最高血圧(単位;mmHg)、最低血圧(単位;mmHg)、脈拍(単位;拍/分)を表示するようになっている。なお、表示器50は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイからなっていてもよいし、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を含んでいてもよい。
【0040】
操作部52は、ユーザによる指示に応じた操作信号を後述のCPU110に入力する。この例では、操作部52は、ユーザによる血圧測定指示を受け付けるための測定指示入力部としての測定スイッチ52Aと、通常の血圧測定モードと夜間血圧測定モードとの間でモードを切り替える指示を受け付けるためのモード操作部としての夜間測定スイッチ52Bとを含んでいる。ここで、「通常の血圧測定モード」とは、測定スイッチ52Aによって血圧測定指示が入力されると、その血圧測定指示に応じて血圧測定を行うモードを意味する(ただし、後述のように、緊急排気機能に異常が無いことを、血圧測定開始の条件としてもよい。)。「夜間血圧測定モード」とは、ユーザが睡眠中に血圧値を測定することができるように、予め定められたスケジュールに従って血圧測定が自動的に開始されるモード(自動測定モード)を意味する(ただし、後述のように、緊急排気機能に異常が無いことを、血圧測定開始の条件としてもよい。)。予め定められたスケジュールとは、例えば深夜1時、2時、3時などの定刻に測定する計画や、夜間測定スイッチ52Bが押されてから例えば2時間毎に1回測定する計画などを指す。
【0041】
具体的には、この例では、測定スイッチ52A、夜間測定スイッチ52Bは、いずれもモーメンタリタイプ(自己復帰タイプ)のスイッチであり、押し下げられている間だけオン状態になり、離されるとオフ状態に戻る。
【0042】
血圧計100が通常の血圧測定モードにある間に測定スイッチ52Aが一旦押し下げられると、それは血圧測定指示を意味し、カフ20によって被測定部位(左手首90)が一時的に圧迫されて、オシロメトリック法により血圧測定が実行される。血圧測定中(例えば、カフ20の加圧中)に測定スイッチ52Aが再び押し下げられると、それは血圧測定停止の指示を意味し、直ちに血圧測定が停止される。
【0043】
血圧計100が通常の血圧測定モードにある間に夜間測定スイッチ52Bが一旦押し下げられると、それは夜間血圧測定モードへの移行の指示を意味し、血圧計100は通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードへ移行する(ただし、後述のように、緊急排気機能に異常が無いことを、夜間血圧測定モードへの移行条件としてもよい。)。夜間血圧測定モードでは、上述のように、予め定められたスケジュールに従ってオシロメトリック法による血圧測定が自動的に開始される。血圧計100が夜間血圧測定モードにある間に夜間測定スイッチ52Bが再び押し下げられると、それは夜間血圧測定モード停止の指示を意味し、血圧計100は夜間血圧測定モードから通常の血圧測定モードへ移行する。
【0044】
【0045】
カフ20は、既述のように被測定部位としての左手首90を圧迫するための流体袋22を含んでいる。この流体袋22と本体10とは、エア配管39によって流体流通可能に接続されている。
【0046】
本体10は、大別して、血圧測定のための主部190と、緊急排気のための保護装置部200とを搭載している。
【0047】
主部190は、既述の表示器50と操作部52とに加えて、制御部としてのCPU110の一部をなす第1のCPU1100と、記憶部としてのメモリ51と、電源部53と、第1の圧力センサ31と、ポンプ32と、血圧測定用の第1の弁33とを含んでいる。さらに、主部190は、第1の圧力センサ31の出力をアナログ信号からデジタル信号へ変換する第1のA/D変換回路310と、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320と、第1の弁33を駆動する第1の弁駆動回路330とを含んでいる。
【0048】
保護装置部200は、制御部としてのCPU110の一部をなす第2のCPU2100と、第2の圧力センサ231と、緊急排気用の第2の弁233と、第2の圧力センサ231の出力をアナログ信号からデジタル信号へ変換する第2のA/D変換回路2310と、第2の弁233を駆動する第2の弁駆動回路2330とを含んでいる。
【0049】
第1の圧力センサ31、ポンプ32、第1の弁33、第2の圧力センサ231、および第2の弁233は、エア配管39を通して共通に、流体袋22に対して流体流通可能に接続されている。
【0050】
CPU110は、主に血圧測定のために働く第1のプロセッサとしての第1のCPU1100と、主に緊急排気のために働く第2のプロセッサとしての第2のCPU2100とを含み、この血圧計100全体の動作を制御する。具体的には、CPU110は、メモリ51に記憶された血圧計100を制御するためのプログラムに従って圧力制御部として働いて、操作部52からの操作信号に応じて、ポンプ32、第1の弁33、および第2の弁233を駆動する制御を行う。また、CPU110、特に第1のCPU1100は、血圧算出部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを使用して血圧値を算出し、表示器50およびメモリ51を制御する。CPU110、特に第2のCPU2100は、異常判定部として働いて、保護装置部200の動作確認を行う。
【0051】
メモリ51は、血圧計100を制御するためのプログラム、血圧計100を制御するために用いられるデータ、血圧計100の各種機能を設定するための設定データ、および血圧値の測定結果のデータなどを記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0052】
電源部53は、この例では2次電池からなり、CPU110、第1の圧力センサ31、ポンプ32、第1の弁33、表示器50、メモリ51、第1のA/D変換回路310、ポンプ駆動回路320、第1の弁駆動回路330、第2の圧力センサ231、第2の弁233、第2のA/D変換回路2310と、および第2の弁駆動回路2330の各部に電力を供給する。
【0053】
ポンプ32は、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)を加圧するために、エア配管39を通して流体袋22に流体としての空気を供給する。ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU110から与えられる制御信号に基づいて駆動する。
【0054】
第1の弁33は、この例では常開電磁弁からなり、エア配管39を通して流体袋22の空気を排出し、または流体袋22に空気を封入してカフ圧を制御するために開閉される。第1の弁駆動回路330は、第1の弁33を、第1のCPU1100から与えられる制御信号に基づいて開閉する。第1の弁33が正常であれば、開指示(非通電)を受けたとき開状態になり、閉指示(通電)を受けたとき閉状態になる。
【0055】
第1の圧力センサ31と第1のA/D変換回路310は、カフの圧力を検出する圧力検出部として働く。第1の圧力センサ31は、この例ではピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管39を通して、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)をピエゾ抵抗効果による電気抵抗として出力する。第1のA/D変換回路310は、第1の圧力センサ31の出力(電気抵抗)をアナログ信号からデジタル信号へ変換してCPU110に出力する。この例では、第1のCPU1100は、第1の圧力センサ31からの電気抵抗に応じた周波数で発振する発振回路として働いて、その発振周波数に応じて、カフ圧を表す信号を取得する。
【0056】
第2の弁233は、この例では常閉電磁弁からなり、緊急時(非常時)に、エア配管39を通して流体袋22の空気を緊急排気するために開かれる。第2の弁駆動回路2330は、第2の弁233を、第2のCPU2100から与えられる制御信号に基づいて開閉する。第2の弁233が正常であれば、閉指示(通電)を受けたとき開状態になり、開指示(非通電)を受けたとき閉状態になる。
【0057】
第2の圧力センサ231と第2のA/D変換回路2310は、カフの圧力を検出する圧力検出部として働く。第2の圧力センサ231は、この例ではピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管39を通して、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)をピエゾ抵抗効果による電気抵抗として出力する。第2のA/D変換回路2310は、第2の圧力センサ231の出力(電気抵抗)をアナログ信号からデジタル信号へ変換してCPU110に出力する。この例では、第2のCPU2100は、第2の圧力センサ231からの電気抵抗に応じた周波数で発振する発振回路として働いて、その発振周波数に応じて、カフ圧を表す信号を取得する。
【0058】
図4A、
図4Bは、それぞれ、被験者が血圧計100を用いて血圧測定を行う場合に推奨される「座位」、「仰臥位」の測定姿勢を示している。ここで、「座位」とは、
図4Aに示すように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が椅子97などに座り、左肘をテーブル98に着いて左手首90を体幹に対して前方で斜め(手が上、肘が下)に挙げることにより、左手首90(および血圧計100)を心臓81の高さレベルに維持した姿勢を意味する。この姿勢は、ユーザ80の左手首90と心臓81との間の高低差を無くせるので、通常の血圧測定モードでは、血圧測定精度を高めるために推奨される。一方、「仰臥位」とは、
図4Bに示すように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が、左肘を伸ばし体幹に沿わせた状態で、水平な床面99などに仰向けに横たわった姿勢を意味する。夜間血圧測定モードでは、被験者の睡眠中(夜間)に予め定められたスケジュールに従って血圧測定が開始されることから、被験者が「仰臥位」の測定姿勢をとることが予定されている。
【0059】
(血圧測定方法)
この血圧計100では、通常の血圧測定モードで緊急排気機能の異常有無の判定を行う場合(
図5の動作フロー)と、それとは別に、夜間血圧測定モードでのみ緊急排気機能の異常有無の判定を行う場合(
図6の動作フロー)とがある。なお、以下では、第1のCPU1100と第2のCPU2100とを特に区別する場合を除き、それらを併せてCPU110と呼ぶ。
【0060】
(通常の血圧測定モードで緊急排気機能の異常判定を行う場合)
図5は、血圧計100が通常の血圧測定モードで緊急排気機能の異常有無の判定を行う場合の動作フローを示している。なお、この例では、電源オフ状態で測定スイッチ52Aが押されると、電源がオンして、デフォルトで通常の血圧測定モードになる。
【0061】
図4Aに示したように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が、座位の姿勢をとっているものとする。
【0062】
この状態で、
図5のステップS1に示すように、ユーザが本体10に設けられた測定スイッチ52Aを押し下げて血圧測定指示を入力すると(ステップS1でYes)、CPU110は、ステップS2に進んで、保護装置部の動作確認ルーチンに入る。
【0063】
(保護装置部の動作確認ルーチン)
具体的には、保護装置部の動作確認ルーチンでは、
図8に示すように、CPU110は、第1の弁駆動回路330を介して第1の弁33に閉指示(通電)を与え(ステップS201)、第2の弁駆動回路2330を介して第2の弁233に開指示(通電)を与える(ステップS202)。この状態で、CPU110は、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して、エア配管39を通してカフ20(流体袋22)に空気を供給する(ステップS203)。そして、CPU110は異常判定部として働いて、カフ20の圧力が上昇する程度に応じて、緊急排気機能に異常が有るか無いかを判定する判定処理を行う(ステップS204,S205)。
【0064】
詳しくは、CPU110、特に第2のCPU2100は、第2の圧力センサ231からの出力に基づいて、カフ圧が基準圧力Pref(この例では、Pref=5mmHg)以上であるか否かを判断する(ステップS204)。ここで、カフ圧が基準圧力Pref未満であれば(ステップS204でNo)、ポンプ32の駆動開始から基準時間tref(この例では、tref=5sec)を経過するまで、カフ圧が基準圧力Pref以上であるか否かの判断を継続する(ステップS204,S205)。そして、ポンプ32の駆動開始から基準時間trefを経過するまでにカフ圧が基準圧力Pref以上になれば(ステップS204でYes)、緊急排気機能に異常有りと判定する。一方、ポンプ32の駆動開始から基準時間trefを経過するまでカフ圧が基準圧力Pref未満であれば(ステップS205でYes)、緊急排気機能に異常無しと判定する。なお、基準時間trefの値、基準圧力Prefの値は、それぞれ可変して設定され得る。
【0065】
上記判定処理(ステップS204,S205)を行う理由は、次の通りである。
(i) 例えば、第1のケースとして、第1の弁33が正常で閉状態であり、かつ第2の弁233が正常で開状態であれば、ポンプ32によってカフ20に流体を供給したとき、
図9中に実線で示す曲線C1として例示するように、第2の弁233が開状態であるからカフ20の圧力が上昇する程度は低い。この「低い」という結果に応じて、第2のCPU2100は、緊急排気機能に異常無しと判定する。
(ii) 次に、第2のケースとして、第1の弁33が正常で閉状態であり、かつ第2の弁233が異常で閉状態であれば、ポンプ32によってカフ20に流体を供給したとき、
図9中に破線で示す曲線C2として例示するように、第1および第2の弁33,233が閉状態であるからカフ20の圧力が上昇する程度は高い。この「高い」という結果に応じて、第2のCPU2100は、緊急排気機能に異常有りと判定する。
図9の例では、ポンプ32の駆動開始から時間tfが経過した時点で、緊急排気機能に異常有りと判定される。
(iii) 次に、第3のケースとして、第1の弁33が異常で開状態であり、かつ第2の弁233が正常で開状態であれば、ポンプ32によってカフ20に流体を供給したとき、第1の弁33が開状態であるからカフ20の圧力が上昇する程度は低い。この「低い」という結果に応じて、第2のCPU2100は、緊急排気機能に異常無しと判定する。
(iv) 最後に、第4のケースとして、第1の弁33が異常で開状態であり、かつ第2の弁233が異常で閉状態であれば、ポンプ32によってカフ20に流体を供給したとき、第1の弁33が開状態であるからカフ20の圧力が上昇する程度は低い。この「低い」という結果に応じて、第2のCPU2100は、緊急排気機能に異常無しと判定する。
【0066】
この結果、第2のケース(ii)では、緊急排気機能に異常有りとの判定結果に応じて、CPU110は被測定部位の血圧測定を例えば中止することができる。したがって、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを回避できる。
図8の例では、CPU110は、ポンプ32を停止し(ステップS208)、第1の弁33に開指示(非通電)を与えて第1の弁33を開く(ステップS209)。このとき、第1の弁33は、常開電磁弁であるから、開指示に応じて開くことが期待される。続いて、CPU110は報知部として働いて、表示器50に、緊急排気機能に異常が有る旨の報知としてエラー表示を行う(ステップS210)。このエラー表示は、「緊急排気機能に異常が発生しました」のようなメッセージであってもよいし、「E〇△」のようなエラーコード(〇△は予め定められた数字を表す)であってもよい。報知は、図示しないブザーによるアラーム音であってもよい。この報知によって、ユーザ(典型的には、被験者)は、緊急排気機能に異常が有ることを知り、例えば、血圧計メーカのサービス部門に保守サービスを依頼するなどの対処をとることができる。
【0067】
一方、第1のケース(i)、第3のケース(iii)および第4のケース(iv)では、緊急排気機能に異常無しとの判定結果に応じて、CPU110は被測定部位の血圧測定を開始できる。ただし、第3のケース(iii)および第4のケース(iv)では、第1の弁33が異常で開状態のままであるから、たとえCPU110が血圧測定のためにポンプ32を動作させてカフ20に流体を供給しても、カフ20の圧力が上昇しない。したがって、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを回避できる。この例では、カフ20の圧力が上昇しないので、CPU110は、測定エラーが発生したと判定して、血圧測定を中止する。
【0068】
第1のケース(i)では、CPU110は、第1および第2の圧力センサ31,231が出力するカフ20の圧力に基づいて、ポンプ32、第1および第2の弁33,233の動作を制御して、被測定部位の血圧を測定することができる。この場合、第2の弁233が正常であるから、万一の緊急時(非常時)には第2の弁233を開状態にして、緊急排気を行うことができる。
【0069】
図8の例では、血圧測定ルーチンを開始するために、CPU110は、ポンプ32を一旦停止し(ステップS206)、第2の弁233に閉指示(非通電)を与えて第2の弁233を閉じる(ステップS207)。このとき、第2の弁233は、常閉電磁弁であるから、閉指示に応じて閉じることが期待される。その後、
図5のフローへリターンして、血圧測定ルーチンに入る(ステップS3)。
【0070】
(血圧測定ルーチン)
血圧測定ルーチンに入ると、
図7に示すように、CPU110は、第1および第2の圧力センサ31,231を初期化する(ステップS101)。具体的には、CPU110は、処理用メモリ領域を初期化するとともに、ポンプ32を停止し、第1の弁33に開指示(非通電)、第2の弁233に開指示(通電)をそれぞれ与える。このとき、第1の弁33は、常開電磁弁であるから、開指示に応じて開くことが期待される。第1の弁33と第2の弁233とのいずれかが正常で開いていれば、カフ圧は大気圧に等しくなる。この状態で、第1の圧力センサ31、第2の圧力センサ231の0mmHg調整(大気圧を0mmHgに設定する。)を行う。
【0071】
次に、CPU110は、第1の弁駆動回路330を介して第1の弁33に閉指示(通電)を与え、また、第2の弁駆動回路2330を介して第2の弁233に閉指示(非通電)を与える(ステップS102)。このとき、第1の弁33は、閉指示に応じて閉じるか否か不明であるが、第2の弁233は、常閉電磁弁であるから、閉指示に応じて閉じることが期待される。続いて、CPU110は、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して、カフ20(流体袋22)の加圧を開始する(ステップS103)。このとき、CPU110は、ポンプ32からエア配管39を通して流体袋22に空気を供給しながら、この例では第1の圧力センサ31の出力に基づいて、流体袋22内の圧力であるカフ圧の加圧速度を制御する。
【0072】
ここで、仮に第1の弁33が異常で開状態のままであれば(上述の第3のケース(iii)および第4のケース(iv))、たとえCPU110が血圧測定のためにポンプ32を動作させてカフ20に流体を供給しても、カフ20の圧力が上昇しない。この例では、例えば
図9中に示した曲線C1のように、ポンプ32の駆動開始から予め定められた基準時間tref(この例では、tref=5sec)が経過しても、カフ圧が基準圧力Pref(この例では、Pref=5mmHg)以上にならないとき、測定エラーとなり、以降の処理が中止される(なお、基準時間trefの値、基準圧力Prefの値は、それぞれ可変して設定され得る。)。したがって、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを回避できる。なお、このとき、CPU110は報知部として働いて、表示器50に、第1の弁33に異常が有る旨の報知としてエラー表示を行ってもよい。このエラー表示は、「血圧測定用の弁に異常が発生しました」のようなメッセージであってもよいし、「E□◇」のようなエラーコード(□◇は予め定められた数字を表す)であってもよい。
【0073】
次に、
図7のステップS104で、CPU110、特に第1のCPU1100は血圧算出部として働いて、この時点で取得されている脈波信号(第1の圧力センサ31の出力に含まれた脈波による変動成分)に基づいて、公知のオシロメトリック法により、メモリ51に記憶されているアルゴリズムを使用して血圧値(最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧))の算出を試みる。
【0074】
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS105でNo)、カフ圧が上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS103~S105の処理を繰り返す。
【0075】
このようにして血圧値の算出ができたら(ステップS105でYes)、CPU110は、ポンプ32を停止し(ステップS106)、第1の弁駆動回路330を介して第1の弁33に開指示(非通電)を与える(ステップS107)。このとき、第1の弁33は、常開電磁弁であるから、開指示に応じて開くことが期待される。これにより、カフ20(流体袋22)内の空気を排気する制御を行う。また、CPU110は、算出した血圧値を表示器50へ表示し(ステップS108)、血圧値をメモリ51へ保存する制御を行う。
【0076】
この後、CPU110、特に第2のCPU2100は、第2の圧力センサ231の出力に基づいて、カフ20からの排気が完了したか否かを判定する(ステップS109)。具体的には、第1の弁33に開指示(非通電)を与えてから、予め定められた時間(例えば、10秒間)経過後に、カフ圧が予め定められた圧力(例えば、5mmHg)未満になったか否かを判定する。ここで、万一何らかの原因によってカフ20からの排気が完了しなければ(ステップS109でNo)、第2のCPU2100は、第2の弁駆動回路2330を介して第2の弁233に開指示(通電)を与える(ステップS110)。ここで、第2の弁233については、直前の保護装置部の動作確認ルーチン(
図8)によって、異常で閉状態(上述の第2のケース(ii))にはならないことが確認されている。したがって、第2の弁233は開指示(通電)に応じて開くことが確実に期待される。これにより、カフ20からの排気を確実に完了させることができる。
【0077】
カフ20からの排気が完了すれば(ステップS109でYes)、
図5の動作フローにリターンする。
図5の例では、そのまま動作フローを終了する。
【0078】
このように、この血圧計100によれば、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを、確実に回避できる。
【0079】
また、
図5の動作フローでは、第2のCPU2100は、第1のCPU1100による血圧測定ルーチン(ステップS3)の都度、その血圧測定ルーチンに先立って、保護装置部の動作確認ルーチン(ステップS2)を行う。したがって、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを、さらに確実に回避できる。
【0080】
また、この血圧計100では、第1の弁33と第2の弁233とは互いに異なるタイプの弁(常開弁と常閉弁)であるから、互いに同じタイプの弁である場合に比して、同じ故障原因で異常発生する確率が低い。したがって、血圧計100の製品としての信頼性を高めることができる。また、血圧測定用の第1の弁33は常開電磁弁であるから、血圧測定時(カフ20によって被測定部位を一時的に圧迫する期間)に閉指示(作動指示、つまり通電)を受けて閉状態になれば足り、血圧測定時以外の期間は非作動(非通電)で開状態であればよい。緊急排気用の第2の弁233は常閉電磁弁であるから、緊急排気時に開指示(作動指示、つまり通電)を受けて開状態になれば足り、緊急排気時以外の期間は非作動(非通電)で閉状態であればよい。したがって、第1の弁33と第2の弁233に関する消費電力を低減できる。
【0081】
(夜間血圧測定モードでのみ緊急排気機能の異常判定を行う場合)
図6は、血圧計100が夜間血圧測定モードでのみ緊急排気機能の異常有無の判定を行う場合の動作フローを示している。このフロー開始時に、血圧計100は、電源がオンされて、通常の血圧測定モードにあるものとする。
【0082】
図4Bに示したように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が、仰臥位の姿勢をとっているものとする。
【0083】
図6のステップS11に示すように、ユーザが本体10に設けられた夜間測定スイッチ52Bを押し下げると、この例ではその押し下げに応じて、血圧計100は通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードへ移行する。この例では、夜間血圧測定モードでは、夜間測定スイッチ52Bが押されてから、例えば午前7時まで、2時間毎に1回測定するスケジュールが定められているものとする。なお、このスケジュールに限られるものではなく、夜間測定スイッチ52Bが押されてから、例えば午前7時まで、午前1時、2時、3時などの定刻に測定するスケジュールが定められていてもよい。
【0084】
次に、
図6のステップS12に示すように、CPU110は、(夜間血圧測定モードの)スケジュールで定められた測定時刻であるか否かを判断する。スケジュールで定められた測定時刻でなければ(ステップS12でNo)、スケジュールで定められた測定時刻になるのを待つ。
【0085】
上記スケジュールで定められた測定時刻になると(ステップS12でYes)、CPU110は、
図6のステップS13に示すように、
図5のステップS2におけるのと同様に保護装置部の動作確認ルーチンを実行する。すなわち、CPU110、特に第2のCPU2100は異常判定部として働いて、カフ20の圧力が上昇する程度に応じて、緊急排気機能に異常が有るか無いかを判定する判定処理を行う。ここで、緊急排気機能に異常が有れば、CPU110は、被測定部位の血圧測定を中止し、表示器50に、緊急排気機能に異常が有る旨のエラー表示を行う(特に、
図8のステップS208~S210)。
【0086】
一方、緊急排気機能に異常が無ければ、
図6のステップS14に示すように、
図5のステップS3におけるのと同様に血圧測定ルーチンを実行する。すなわち、CPU110、特に第1のCPU1100は血圧算出部として働いて、脈波信号(第1の圧力センサ31の出力に含まれた脈波による変動成分)に基づいて、公知のオシロメトリック法により、メモリ51に記憶されているアルゴリズムを使用して血圧値(最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧))の算出を行い、算出した血圧値を表示器50へ表示等する(特に、
図7のステップS101~S108)。続いて、万一何らかの原因によってカフ20からの排気が完了しなければ(
図7のステップS109でNo)、CPU110、特に第2のCPU2100は、第2の弁駆動回路2330を介して第2の弁233に開指示(通電)を与える(ステップS110)。これにより、カフ20からの排気を確実に完了させる。
【0087】
このようにして上記スケジュールで定められた1回の血圧測定が完了すると、ステップS15で、CPU110は、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する。ここで、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されている限り(ステップS15でNo)、上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になるのを待つ。
【0088】
上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になると(ステップS12でYes)、CPU110は、ステップS13~S15の処理を繰り返す。さらに、ステップS15で、CPU110は、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する。このようにして、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了すると(ステップS15でYes)、CPU110は上記夜間血圧測定モードを終了する。
【0089】
夜間血圧測定モードでは、緊急時(非常時)に万一緊急排気用の第2の弁233が故障していると、被験者が無意識のまま被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となる。そのような事態は、確実に回避されるべきである。そこで、この
図6の動作フローでは、夜間血圧測定モードで、第2のCPU2100は、第1のCPU1100による血圧測定ルーチン(ステップS14)の都度、その血圧測定ルーチンに先立って、保護装置部の動作確認ルーチン(ステップS13)を行う。したがって、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを、さらに確実に回避できる。
【0090】
一方、
図6の動作フローでは、夜間測定スイッチ52Bを押し下げられない限り(ステップS11でNo)、通常の血圧測定モードが維持される。この場合、CPU110は、測定スイッチ52Aが押し下げられると(ステップS21でYes)、CPU110は、保護装置部の動作確認ルーチン(
図8)に入ることなく(要するに、上述の判定処理(ステップS204,S205)を行わず)、入力された血圧測定指示に応じてステップS22に進んで、血圧測定ルーチンを実行する。これにより、被測定部位の血圧を測定する。
【0091】
このように、
図6の動作フローにおける通常の血圧測定モード(ステップS21~S22)で保護装置部の動作確認ルーチン(
図8)を省略する理由は、次の通りである。第1に、通常の血圧測定モードでは、第1のCPU1100による血圧測定ルーチンの都度、その血圧測定ルーチンに先立って、保護装置部の動作確認ルーチンを行うと、1回の血圧測定に要する時間(ここでは、保護装置部の動作確認ルーチンに要する時間と、実際の血圧測定ルーチンに要する時間との合計時間を意味する。)が全体として長くなるからである。第2に、通常の血圧測定モードでは、被験者は覚醒状態にあるので、夜間血圧測定モードに比して、保護装置部の動作確認ルーチン(要するに、上述の判定処理(ステップS204,S205))を行う意義は少ないと言えるからである。
【0092】
上述の実施形態では、血圧測定部と異常判定部は、プログラムされた第1のCPU1100と、この第1のCPU1100とは別の、プログラムされた第2のCPU2100とによって構成されている。そして、第1の弁33は第1の弁駆動回路330を介して第1のCPU1100によって駆動され、また、第2の弁233は第2の弁駆動回路2330を介して第2のCPU2100によって駆動される。したがって、第1のCPU1100と第1の弁駆動回路330と第1の弁33との組、第2のCPU2100と第2の弁駆動回路2330と第2の弁233との組のうち、いずれか一方の組に異常が発生したとしても、他方の組が正常であれば、カフ20の排気が行われ得る。したがって、被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるのを、さらに確実に回避できる。
【0093】
(変形例)
図6の動作フローでは、ステップS11に示すように、ユーザが本体10に設けられた夜間測定スイッチ52Bを押し下げると、その押し下げに応じて直ちに、血圧計100は通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードへ移行するものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、ユーザが本体10に設けられた夜間測定スイッチ52Bを押し下げると(ステップS11)、その押し下げに応じて、CPU110は、まず保護装置部の動作確認ルーチン(
図8)を実行してもよい。そして、CPU110は、緊急排気機能に異常有りと判定したとき、この血圧計100が夜間血圧測定モードに移行するのを禁止する一方、緊急排気機能に異常無しと判定したとき、この血圧計が夜間血圧測定モードに移行するのを許容してもよい。これにより、被験者が無意識のまま被測定部位が長時間圧迫されたままの状態となるような事態を、さらに確実に回避できる。
【0094】
上述の実施形態では、第1の弁33は常開電磁弁であり、また、第2の弁233は常閉電磁弁であるものとしたが、これに限られるものではない。第1の弁33、第2の弁233のタイプ(常開弁と常閉弁)はいずれであってもよい。
【0095】
また、この血圧計100は、被測定部位としての手首(上の例では左手首90としたが、右手首でもよい。)を圧迫するタイプであるから、上腕を圧迫するタイプに比して、ユーザ(被験者)の睡眠を妨げる程度が少ないことが期待される(Imai et al., “Development and evaluation of a home nocturnal blood pressure monitoring system using a wrist-cuff device”, Blood Pressure Monitoring 2018, 23,P318-326)。したがって、この血圧計100は、夜間血圧測定に適する。
【0096】
また、この血圧計100は、手首式血圧計として一体かつコンパクトに構成されているので、ユーザによる取り扱いが便利になる。
【0097】
また、上述の実施形態では、カフ20(流体袋22)の加圧過程で血圧を算出したが、これに限られるものではない。カフ20の減圧過程で血圧を算出してもよい。
【0098】
また、上述の実施形態では、操作部として、それぞれ本体10に設けられた測定スイッチ52A、夜間測定スイッチ52Bを備えたが、これに限られるものではない。操作部は、例えば、血圧計100の外部に存在するスマートフォン等から無線通信を介して指示を受け付ける通信部によって構成されてもよい。
【0099】
また、上述の実施形態では、本体10がカフ20と一体に設けられているものとしたが、これに限られるものではない。本体10は、カフ20と別体として構成され、可撓性のエアチューブを介してカフ20(流体袋22)と流体流通可能に接続されているものとしてもよい。
【0100】
上述の血圧算出方法(特に、
図5~
図8の動作フロー)を、ソフトウェア(コンピュータプログラム)として、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル万能ディスク)、フラッシュメモリなどの非一時的(non-transitory)にデータを記憶可能な記録媒体に記録してもよい。このような記録媒体に記録されたソフトウェアを、パーソナルコンピュータ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)、スマートフォンなどの実質的なコンピュータ装置にインストールすることによって、それらのコンピュータ装置に、上述の血圧算出方法を実行させることができる。
【0101】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0102】
10 本体
20 血圧測定用カフ
31 第1の圧力センサ
32 ポンプ
33 第1の弁
50 表示器
51 メモリ
52 操作部
52A 測定スイッチ
52B 夜間測定スイッチ
110 CPU
231 第2の圧力センサ
233 第2の弁
1100 第1のCPU
2100 第2のCPU