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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】後処理装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/36 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
B65H31/36
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020129374
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026084
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】原 俊
(72)【発明者】
【氏名】川上 和久
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095186(JP,A)
【文献】特開2010-052884(JP,A)
【文献】特開2017-001788(JP,A)
【文献】特開2017-105591(JP,A)
【文献】特開平11-301912(JP,A)
【文献】特開2013-056726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0264372(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00-31/40
B65H 29/26-29/28
B65H 29/36-29/38
B65H 37/00-37/06
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録部によって記録された媒体が積載される処理トレイと、
前記処理トレイの上方に設けられ、回転軸を中心に回転することで前記媒体を搬送方向上流へと引き込む引き込み部材と、
前記引き込み部材を前記搬送方向と交差する幅方向に移動させる駆動機構と、
前記引き込み部材の前記回転軸の上方に設けられた回転体と、
前記回転体の上方に設けられ、前記駆動機構を支持する支持部材を構成する上面部材と、を備え、
前記回転体および前記上面部材は、前記引き込み部材の回転軌跡内に設けられていることを特徴とする後処理装置。
【請求項2】
記録部によって記録された媒体が積載される処理トレイと、
前記処理トレイの上方に設けられ、回転軸を中心に回転することで前記媒体を搬送方向上流へと引き込む引き込み部材と、
前記引き込み部材の前記回転軸の上方に設けられた回転体と、
前記回転体の上方に設けられた上面部材と、を備え、
前記引き込み部材は、前記媒体の前記搬送方向と交差する幅方向に移動可能に設けられ、
前記回転体および前記上面部材は、前記引き込み部材の回転軌跡内に設けられ、
前記回転体は、前記引き込み部材が前記幅方向に移動可能な範囲内のどの位置にあっても前記回転体と接触可能な前記幅方向の長さを有することを特徴とする後処理装置
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の後処理装置において、
前記回転体は、前記回転軸と前記上面部材との間において、前記回転軸と前記上面部材との距離が一番近くなる位置に設けられることを特徴とする後処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の後処理装置において、
前記回転体は前記上面部材に設けられ、
前記回転体の下端が前記上面部材の下面よりも下方に突出していることを特徴とする後処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の後処理装置において、
前記引き込み部材は、
媒体と接触して媒体を引き込む引き込み姿勢と、
媒体と接触せずに、前記引き込み部材の先端が上方を向く待機姿勢と、
を切り替え可能であり、
前記待機姿勢において、前記引き込み部材と前記回転体とが側面視で鉛直方向においてオーバーラップしていることを特徴とする後処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の後処理装置において、
前記引き込み部材は、
媒体と接触して媒体を引き込む引き込み姿勢と、
媒体と接触せずに、前記引き込み部材の先端が上方を向く待機姿勢と、
を切り替え可能であり、
前記待機姿勢において、前記引き込み部材と前記回転体とは非接触状態にあり、かつ前記引き込み部材と前記回転体とが側面視で鉛直方向においてオーバーラップしていることを特徴とする後処理装置。
【請求項7】
請求項または請求項に記載の後処理装置において、
前記上面部材には凹部が設けられ、
前記待機姿勢において、前記引き込み部材の先端は前記凹部に受け入れられることを特徴とする後処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の後処理装置において、
前記回転体と前記回転体の軸との間の摩擦係数は、前記回転体と前記引き込み部材との間の摩擦係数よりも小さいことを特徴とする後処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録された用紙等の媒体に後処理を行う後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、画像形成装置から排紙された用紙等の媒体を受け入れて整合トレイ上に収容し、ステープラーによるステープル処理を施す後処理装置が開示されている。後処理装置は、整合トレイ上に送り込まれた媒体を1枚ずつ送る整合パドル(引き込み部材の一例)および整合ベルトを備える。整合トレイ上を媒体の端部が基準ストッパーに当たるまで送られることで複数枚の媒体が送り方向に整合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-40524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の後処理装置では、媒体の端部が基準ストッパーに当たるまで媒体を引き込む引き込み部材として回転式の整合パドルを用いる構成なので、整合パドル等の引き込み部材の回転軌跡が占めるスペースを確保する必要がある。この場合、後処理装置が高さ方向に大型化するという課題がある。一方、後処理装置を高さ方向に小型化しようとすると、整合パドル等の引き込み部材がその上側を覆うフレーム等の上面部材と摺動し、引き込み部材が摩耗するという課題がある。よって、引き込み部材がその上方に位置するフレーム等の上面部材との摺動に起因する摩耗を抑制しつつ、装置の高さ方向の小型化を実現できる後処理装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する後処理装置は、記録部によって記録された媒体が積載される処理トレイと、前記処理トレイの上方に設けられ、回転することで前記媒体を搬送方向上流へと引き込む引き込み部材と、前記引き込み部材の回転軸上方に設けられた回転体と、前記回転体の上方に設けられた上面部材と、を備え、前記回転体および前記上面部材は、前記引き込み部材の回転軌跡内に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態における後処理装置を備える記録システムを示す模式側断面図。
図2】後処理装置の要部を示す正断面図。
図3】後処理装置のパドルユニットを示す正面図。
図4】後処理装置のパドルユニットの要部を示す斜視図。
図5】後処理装置のパドルユニット周辺を示す側断面図。
図6】第1パドルとローラーとの関係を示す模式側面図。
図7】第1パドルの送り動作を説明する模式側面図。
図8】第1パドルの送り動作を説明する模式側面図。
図9】第1パドルの送り動作を説明する模式側面図。
図10】第2実施形態における後処理装置のパドルユニット周辺を示す側断面図。
図11】第3実施形態における後処理装置のパドルユニット周辺を示す側断面図。
図12】第4実施形態における後処理装置のパドルユニット周辺を示す側断面図。
図13】第5実施形態における後処理装置のパドルユニット周辺を示す側断面図。
図14】変更例における後処理装置のパドルユニット周辺を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態における後処理装置を備えた記録システムについて、図面を参照して説明する。記録システムは、例えば、用紙等の媒体に記録する記録動作と、記録された媒体を複数枚積載してその積載された媒体の束に後処理を行う後処理動作とを行う。
【0008】
図1では、記録システム11が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、Z軸と交差する面に沿う互いに交差する2つの軸をX軸およびY軸で示す。X軸、Y軸、およびZ軸は、好ましくは互いに直交する。以下の説明では、X軸と平行な方向を幅方向X、Z軸と平行な重力の方向を鉛直方向Zともいい、幅方向Xと直交して搬送経路17に沿う方向を搬送方向Y0という。搬送方向Y0は、搬送ローラー対19,19A,31が媒体12を搬送する方向であり、記録装置13から後処理装置14に向かって搬送される媒体12の位置に応じて変化する。
【0009】
図1に示されるように、記録システム11は、媒体12に記録する記録装置13と、記録された媒体12に後処理を施す後処理装置14と、記録装置13と後処理装置14との間に配置された中間装置15とを備える。記録装置13は、例えば、媒体12に液体の一例であるインクを吐出し、文字や画像を記録するインクジェット式のプリンターである。中間装置15は、記録装置13から搬入した記録後の媒体12を内部で反転させたのち後処理装置14に排出する。後処理装置14は、中間装置15から搬入した記録後の媒体12に対して後処理を施す。後処理は、例えば、複数の媒体12を綴じるステープル処理等である。なお、後処理は、ステープル処理の他、パンチ処理、中綴じ処理および折り処理等でもよい。ここで、パンチ処理は、1つまたは複数の媒体12にパンチ穴を開ける処理である。
【0010】
記録システム11には、記録装置13から中間装置15を経由して後処理装置14内まで続く図1に二点鎖線で示す搬送経路17が設けられている。記録装置13は、搬送モーター18の駆動により搬送経路17に沿って媒体12を搬送する1つまたは複数の搬送ローラー対19を備える。また、中間装置15は、記録された媒体12を反転させる反転処理部200を備える。中間装置15は、反転処理部200を構成する1つまたは複数の搬送ローラー対19を駆動する搬送モーター(図示略)を備える。
【0011】
また、後処理装置14には、中間装置15で反転された記録後の媒体12が搬入される。後処理装置14は、媒体12を搬送する搬送機構30を備える。搬送機構30は、搬送ローラー対19A,31と、搬送ローラー対19A,31を駆動する搬送モーター(図示略)とを備える。後処理装置14は、搬送ローラー対31から搬入された媒体12を積載する処理トレイ32と、処理トレイ32上に積載された媒体束12Bに後処理を施す後処理機構33と、後処理後の媒体束12Bを処理トレイ32上から排出する排出機構36と、排出された媒体束12Bが積載される排出スタッカー35とを備える。また、後処理装置14は、排出スタッカー35の上方位置に、排出機構36により排出される媒体束12Bを上側からガイドするガイド部材37と、排出される過程の媒体束12Bを一時的に支持した後、排出スタッカー35上に落下させる媒体支持部材38とを備えてもよい。後処理装置14は、排出スタッカー35上の媒体束12Bの積載量が増えるに連れて排出スタッカー35を下降させる昇降機構を備えてもよい。また、後処理装置14は、制御部110を備える。制御部110は、搬送機構30、後処理機構33、排出機構36、ガイド部材37および媒体支持部材38等の駆動を制御する。
【0012】
なお、媒体束12Bとは、複数枚の媒体12が端を揃えた状態で積層された媒体12の束を指す。また、後処理とは、1枚の媒体12または媒体束12Bに施される処理であり、記録または反転等の前処理がなされた媒体12または媒体束12Bに対して前処理の後に施される処理である。
【0013】
次に、記録装置13の詳細な構成について説明する。記録装置13には、媒体12を積層状態に収容する1つまたは複数のカセット20が着脱可能に設けられている。記録装置13は、カセット20に収容された媒体12のうち、最上位の媒体12を送り出すピックアップローラー21と、ピックアップローラー21により送り出された媒体12を分離して1枚のみ送り出す分離ローラー22とを備える。送り出された1枚の媒体12は搬送経路17に沿って搬送される。
【0014】
記録装置13は、搬送経路17沿いの位置に設けられて媒体12を支持する支持部23と、搬送経路17を挟んで支持部23と対向する位置に設けられた記録部24とを備える。記録部24は、液体を吐出可能な複数のノズル26を有する液体吐出ヘッド25を備える。液体吐出ヘッド25は、媒体12のうち支持部23に支持された部分に向かってノズル26からインク等の液体を吐出することで、媒体12に記録する。液体吐出ヘッド25は、例えば、ラインヘッドである。ラインヘッドは、媒体12の幅方向Xの全域に亘る範囲に一定のノズルピッチで配置された多数のノズル26により、媒体12の幅方向Xの全域に亘る範囲に液体を同時に吐出可能である。なお、記録部24は、シリアル記録方式でもよい。シリアル記録方式の場合、記録部24は、幅方向Xに移動可能なキャリッジ(図示略)と、キャリッジに設けられたシリアル式の液体吐出ヘッド25とを備え、キャリッジと共に幅方向Xに移動しながら液体吐出ヘッド25がノズル26から液体を媒体12に向かって吐出することで、媒体12に1走査分(1行分)ずつ記録される。
【0015】
図1に示されるように、記録装置13は、媒体12を搬送する搬送部100を備える。搬送部100は、搬送経路17の一部として、媒体12が排出される排出経路101と、媒体12がスイッチバック搬送されるスイッチバック経路102と、媒体12の表裏が反転される反転経路103とを備える。スイッチバック経路102および反転経路103は、両面記録が行われるときに使用される。両面記録では、媒体12の第1面に記録された媒体12はスイッチバック経路102でスイッチバック搬送されることで、媒体12の後端から反転経路103に入って反転された後、再び液体吐出ヘッド25へ向かって給送される。液体吐出ヘッド25が、媒体12の第1面とは反対側の面である第2面に記録することで、媒体12に両面記録が行われる。液体吐出ヘッド25により片面または両面に記録された媒体12は、排出経路101を通って排出部104に排出されるか、または中間装置15に搬出される。
【0016】
図1に示されるように、中間装置15は、記録装置13から搬入された記録後の媒体12を反転させる前述の反転処理部200を有する。反転処理部200は、導入経路201、第1スイッチバック経路202、第2スイッチバック経路203、第1合流経路204、第2合流経路205および導出経路206を備える。反転処理部200は、各経路201~206に沿って媒体12を搬送する複数の搬送ローラー対19(1つのみ図示)と、各経路201~203の分岐箇所で媒体12の一方の搬送先へ誘導する不図示のフラップとを有する。導入経路201を通った後、媒体12の搬送先は、フラップによって、第1スイッチバック経路202と第2スイッチバック経路203との間で交互に切り換えられる。
【0017】
第1スイッチバック経路202でスイッチバック搬送された媒体12は、第1合流経路204で反転されたのち、導出経路206へ搬送される。一方、第2スイッチバック経路203でスイッチバック搬送された媒体12は、第2合流経路205で反転されたのち、導出経路206へ搬送される。反転された媒体12は導出経路206を通って中間装置15から、記録装置13で直前に記録された面が下方を向く向きで後処理装置14へ送られる。また、中間装置15内を搬送される過程で媒体12の乾燥が進み、媒体12に付着したインク中の水分等に起因するカール等が抑制された媒体12が後処理装置14へ送られる。
【0018】
次に、後処理装置14の構成を、図1図3を参照して詳細に説明する。なお、図2図3では、排出スタッカー35が省略されている。
図1に示されるように、中間装置15で反転された媒体12が、後処理装置14の筐体14A内へ搬入される。筐体14A内に搬入された媒体12は、前述の搬送機構30により搬送された後、処理トレイ32の上方の空間(処理領域)にほぼ水平に排出される。つまり、処理トレイ32側から見ると、搬送機構30から処理トレイ32の上方の空間に媒体12がほぼ水平に搬入される。搬送機構30には、搬送ローラー対19Aと搬送ローラー対31との間の搬送経路上の位置で、媒体12の有無を検知するセンサー34が設けられている。センサー34は、媒体12の搬送方向Y0における先端と後端とを検知する。制御部110は、センサー34が媒体12の後端を検知した検知位置から媒体12の後端が搬送機構30の搬送ローラー対31から離れるタイミングを検知する。制御部110は、媒体12の後端が搬送ローラー対31から離れると、その媒体12を処理トレイ32上に整合状態に積載する整合制御を開始する。
【0019】
図2に示されるように、後処理装置14は、搬送機構30、処理トレイ32、受入機構41、送り機構43、整合機構51、排出機構36、押し下げ機構90、ガイド機構95および媒体支持機構99を備える。
【0020】
搬送機構30は、搬送方向Y0の下流端部に前述の搬送ローラー対31を備える。搬送ローラー対31は、駆動ローラー31Aと従動ローラー31Bとを備える。媒体12は、搬送ローラー対31から処理トレイ32の上方の処理領域にほぼ水平に搬入される。
【0021】
後処理装置14は、搬送機構30からほぼ水平に搬入される媒体12の搬送経路を鉛直方向Zに挟んで、上側に位置するパドルユニット40と、下側に位置する整合ユニット50とを備える。処理トレイ32は、整合ユニット50の上端部に斜めの姿勢で固定されている。
【0022】
このように後処理装置14は、記録部24によって記録された媒体12が積載される処理トレイ32と、処理トレイ32の上方に設けられ、回転することで媒体12を搬送方向Y0上流へと引き込む引き込み部材の一例としての第1パドル45とを備える。詳しくは、処理トレイ32の上方には、第1パドル45を回転可能に支持するパドルユニット40が配置されている。
【0023】
なお、図2に示されるように、後処理装置14は、媒体束12Bを形成する媒体12が搬送される搬送経路FTとは別に他の搬送経路を介して搬送された記録後の媒体が排出される排出トレイ14Cを有する。排出トレイ14Cは、パドルユニット40の上方に位置し、ユーザーが媒体を取り易い高さに配置されている。排出トレイ14Cには、例えば、記録装置13がファクシミリで受信した画像が記録された媒体12が排出される。パドルユニット40の高さ方向の大型化は、排出トレイ14Cの高さ位置を高くしたり、後処理装置14の高さ方向の大型化をもたらしたりする。
【0024】
図2に示される処理トレイ32は、媒体12を積載する積載面32Aを有する。積載面32Aは、搬送方向Y0の下流端よりも上流端の方が鉛直方向Zの下方に位置する斜面となっている。処理トレイ32は幅方向Xに最大幅の媒体12の幅よりも長い所定幅寸法を有する。なお、処理トレイ32の積載面32Aの傾きに応じて、積載面32Aから媒体束12Bが排出される搬送方向Y0を第1搬送方向Y1、第1搬送方向Y1と反対の方向を第2搬送方向Y2(-Y0)という。すなわち、第1搬送方向Y1は、積載面32Aにおける媒体12の搬送方向Y0に等しく、第2搬送方向Y2は、積載面32Aにおける媒体12の搬送方向Y0と反対の方向である反搬送方向-Y0に等しい。
【0025】
パドルユニット40は、受入機構41と、送り機構43の一部と、これらを支持するパドルユニットフレーム40Aとを有する。受入機構41は、搬送ローラー対31からほぼ水平に搬入される媒体12を、水平に対して傾斜する処理トレイ32へ受け入れできるように媒体12の経路を下方へ誘導する。受入機構41は、回動式の可変ガイド42を有する。
【0026】
送り機構43は、受入機構41により処理トレイ32へ誘導された媒体12を斜状の積載面32Aに沿って第2搬送方向Y2に送る機能を有する。送り機構43は、処理トレイ32の上方位置に、前述の大径の第1パドル45と、小径の第2パドル46とを有する。大径の第1パドル45は、処理トレイ32の積載面32Aに対して第2搬送方向Y2の上流寄りの位置の上方に配置される。小径の第2パドル46は、処理トレイ32の積載面32Aに対して第2搬送方向Y2の下流寄りの位置の上方に配置される。第1パドル45は、パドルユニット40に組み付けられている。なお、第2パドル46は、搬送ローラー対31の下方の位置に、パドルユニット40とは別のフレームにより回転可能に支持されている。
【0027】
図2に示される可変ガイド42は、搬送方向Y0の下流端部を中心に所定角度範囲内で回動する。可変ガイド42は、図2に示される待機位置と、待機位置から同図における時計回り方向に所定角度だけ回動した作動位置(図示略)との間を回動する。待機位置にある可変ガイド42の先端は、搬送ローラー対31の搬入口の上方近傍に位置する。また、可変ガイド42は、パドルユニット40の幅中心部に位置する(図3を参照)。可変ガイド42は、待機位置から作動位置に向かって図2における時計回り方向に回動することで、搬送ローラー対31から所定の搬入速度でほぼ水平に搬入される図2に実線で示される媒体12の幅中央部を下方に叩く動作を行う。可変ガイド42が媒体12を下方に叩くことにより、媒体12の経路が処理トレイ32の積載面32Aに沿う方向に変更され、媒体12が処理トレイ32へ受け入れられる。なお、可変ガイド42は、幅方向Xの異なる位置に複数設けられてもよい。
【0028】
図2に示されるように、パドルユニット40は、受入機構41を構成する可変ガイド42およびその駆動機構80と、送り機構43のうち第1パドル45およびその駆動機構60とがパドルユニットフレーム40Aに組み付けられることにより構成される。第1パドル45は駆動機構60によって回転駆動する。可変ガイド42は駆動機構80によって回動変位する。パドルユニットフレーム40Aは、図2に示される側面視および図3に示される正面視において下方に向かって開放される開口を有する断面逆U字状の形状を有している。駆動機構60は第1パドル45の駆動源である電動モーター61を有する。駆動機構80は、可変ガイド42の駆動源である電動モーター81を有する。
【0029】
第1パドル45は、パドルユニットフレーム40Aの下部に回転可能に支持されている。第1パドル45の上方は、パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bにより覆われている。パドルユニットフレーム40Aは、引き戻し部材の一例である第1パドル45の上方を覆う上面部40Bを有する構成であることから、上面部材を構成する。なお、上面部材は、第1パドル45の上方を覆う上面部40Bを少なくとも一部に有する部材である。上面部40Bが必ずしもパドルユニットフレーム40Aの最上面部である必要はない。
【0030】
また、図2に示されるように、可変ガイド42の駆動機構80は、電動モーター81と、電動モーター81の動力で駆動される駆動レバー82と、駆動レバー82により下方に押圧されることで変位する被駆動部83とを有する。被駆動部83は、不図示のばねにより上方に付勢されており、駆動レバー82により押圧されて下方に変位する。被駆動部83が下方に変位すると、可変ガイド42が図2に示される退避位置から所定角度だけ下方へ傾いた作動位置まで回動する。駆動レバー82が被駆動部83を押圧しない位置に復帰すると、ばねの付勢力で可変ガイド42は、作動位置から退避位置へ回動する。この可変ガイド42の往復回動により、搬送ローラー対31から搬入された媒体12が下方へ叩かれる。
【0031】
なお、制御部110は、センサー34(図1参照)が媒体12の後端を検知してから駆動ローラー31Aが、媒体12の後端が搬送ローラー対31のニップ位置を通過したに相当する回転量だけ回転し終わると、電動モーター81を駆動させる。これにより、媒体12の後端が搬送ローラー対31を離れたタイミングで、可変ガイド42が退避位置から作動位置へ回動する。処理トレイ32の上方の処理領域へほぼ水平に搬入された媒体12はその後端の搬送ローラー対31によるニップが外れたタイミングで下方に叩かれ、媒体12の搬送経路が処理トレイ32に沿う方向へ変更される。
【0032】
また、第1パドル45は、可変ガイド42が媒体12を下方へ叩いたタイミングで回転を開始する。媒体12は、可変ガイド42の叩き作用と、第1パドル45の回転作用によって、処理トレイ32へ誘導される。つまり、第1パドル45は、回転することにより可変ガイド42と共に媒体12を積載面32Aへ受け入れる機能も有する。第1パドル45は回転軸67を中心に回転することで、媒体12を第2搬送方向Y2に引き込み可能である。第1パドル45および第2パドル46は、回転しながら第2搬送方向Y2において異なる位置で媒体12に接触して媒体12を第2搬送方向Y2に引き込む。第1パドル45と第2パドル46は、同じ送り速度で媒体12を第2搬送方向Y2に送ってもよい。大径の第1パドル45は媒体12を大きな送り量で送り、第1パドル45の送りが終わると、第2パドル46が媒体12を小さな送り量で送る構成でもよい。
【0033】
図2に示されるように、処理トレイ32における第2搬送方向Y2の下流端部には、突き当て部47が上方に延出している。突き当て部47は、処理トレイ32の端部から上方へ所定形状に延出し、図2の側面視で積載面32Aと直交する面部を有する。パドル45,46は、処理トレイ32上の媒体12を突き当て部47に当たるまで送る。
【0034】
パドル45,46により第2搬送方向Y2に送られた媒体12は、その後端12rが突き当て部47に突き当たることで、その突き当て位置を基準として搬送方向Y0に整合される。突き当て部47は、幅方向Xに間隔をおいて複数設けられている。複数の突き当て部47の間隔は、最小幅の媒体12を複数箇所で突き当てできる長さに設定されている。
【0035】
図2に示される整合機構51は、処理トレイ32上の媒体12を幅方向Xに整合する機能を有する。整合機構51は、処理トレイ32の積載面32Aに沿って幅方向Xに移動可能な一対の整合部材52を備える。整合機構51は、一対の整合部材52を個別に駆動する駆動源である2つの電動モーター(図示略)を備える。一対の整合部材52は、媒体12に間欠的に接触する第1パドル45が媒体12から離れたタイミングで媒体12の両側端を1回または複数回叩くことで、媒体12を幅方向Xに揃える幅方向Xの整合を行う。こうして処理トレイ32上で、媒体12は、搬送方向Y0と幅方向Xとの2方向に整合される。
【0036】
媒体12は、処理トレイ32上に順次積載される。処理トレイ32上で複数の媒体12が端を揃えた状態に整合されることで媒体束12Bが形成される。処理トレイ32上の媒体12の積載枚数が目標枚数に達すると、後処理機構33が処理トレイ32上の媒体束12Bに後処理を施す。本例の後処理機構33は、例えば、ステープル機構であり、幅方向Xに移動可能である。後処理機構33は、必要に応じて幅方向Xに移動し、媒体束12Bの端部に1箇所または複数箇所のステープル処理を施す。
【0037】
図2に示される排出機構36は、処理トレイ32の搬送方向Y0の下流端部に設けられ、処理トレイ32上から後理後の媒体束12Bを排出スタッカー35に向けて排出する。排出機構36は、例えば、ローラー排出方式を採用する。排出機構36は、処理トレイ32上の媒体束12Bを挟持可能な駆動ローラー36Aと従動ローラー36Bとからなるローラー対を有する。本例では、従動ローラー36Bは、可変ガイド42の基端部に軸支されている。従動ローラー36Bは、駆動ローラー36Aから離間した図2に示される離間位置と、駆動ローラー36Aとの間に媒体束12Bをニップ可能なニップ位置(図示略)との間を移動する。この従動ローラー36Bのニップ位置と離間位置との間の移動は、パドルユニット40が、不図示の回動支点を中心に回動して姿勢を変化させることで行われる。従動ローラー36Bは不図示のばねにより駆動ローラー36Aに接近する方向に付勢されている。なお、排出機構36は、ローラー搬送方式に限らず、処理トレイ32上の媒体束12Bを処理トレイ32から押し出すプッシャーを有する押出方式でもよい。
【0038】
排出スタッカー35(図1参照)の上方位置には、ガイド部材37を備えたガイド機構95が設けられている。ガイド機構95は、ガイド部材37によって、排出機構36により処理トレイ32上から排出される媒体束12Bを上方へずれないようにガイドする。ガイド機構95は、駆動源である電動モーター96と、駆動機構97とを備える。駆動機構97の2つの出力軸はアーム98を介してガイド部材37に連結されている。電動モーター96の駆動により、ガイド部材37が媒体支持部材38とガイド部材37との間隔を変化させる方向に位置調整される。ガイド部材37の位置は、媒体束12Bの厚さや、媒体束12Bのカール量に応じて調整されてもよい。
【0039】
また、押し下げ機構90は、搬送方向Y0において処理トレイ32とガイド部材37との間の位置に設けられている。押し下げ機構90は、不図示の駆動源と、駆動源の動力で回転するピニオン91と、ピニオン91に噛合するラック部材92と、ラック部材92の下端に固定された押さえ部材93とを有する。押し下げ機構90は、排出される媒体束12Bの後端部を押さえ部材93が下方へ押し込むことで、媒体束12Bの後端部が駆動ローラー36A付近の部分に引っ掛かって排出スタッカー35上に落下しないことを抑制する。
【0040】
また、媒体支持機構99は、ガイド部材37と排出スタッカー35(図1を参照)との間の位置に配置された一対の媒体支持部材38(図2では一方のみ図示)を有する。一対の媒体支持部材38(図2では一方のみ図示)は、排出スタッカー35(図1参照)の上方に位置し、幅方向Xに移動可能に設けられている。一対の媒体支持部材38は、媒体束12Bを一対の支持面38Aに保持可能な保持位置と、媒体束12Bを一対の支持面38Aに保持できない程度に幅方向Xに離間する退避位置との間を幅方向Xに移動する。一対の媒体支持部材38は、媒体束12Bの下面を支持する支持面38Aと、媒体束12Bの側端をガイドするガイド面38Bとを有する。一対の媒体支持部材38が保持位置に配置された状態では、処理トレイ32上の媒体12の先端部分が一対の支持面38Aに支持されるとともに、一対のガイド面38Bにより媒体12の側端がガイドされて媒体束12Bの幅方向Xのずれが許容範囲内に収まる。
【0041】
一対の媒体支持部材38は、処理トレイ32から排出される過程で媒体束12Bの幅方向Xの両端部を一時的に支持する。一対の媒体支持部材38が媒体束12Bを支持可能な保持位置から幅方向Xに離間することで、媒体束12Bは排出スタッカー35上に落下する。媒体支持機構99は、排出中の媒体束12Bの先端部が垂れ下がることを抑制する。媒体束12Bの垂れ下がった先端部が、排出過程で排出スタッカー35と接触して下側へ巻き込まれて折れ曲がることを防止する。
【0042】
次に、図3図5を参照してパドルユニット40のうち第1パドル45の駆動系について説明する。
図3に示されるように、第1パドル45の駆動機構60は、パドルユニットフレーム40Aの上面に組み付けられた一対の電動モーター61(図2も参照)を備える。第1パドル45は、幅方向Xに隣合う一対が1組で、幅方向Xにユニット中央部を挟んで離れた二位置に2組設けられている。つまり、幅方向Xにユニット中央部を挟んで離された二位置に、2組の第1パドル45が配置されている。一対の電動モーター61は、一対ずつよりなる2組の第1パドル45をそれぞれ組ごと個別に駆動する。
【0043】
パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bの下側には、幅方向Xに異なる位置に2組のプーリー62,63が設けられている。各組のプーリー62,63のうち一方のプーリー62は、電動モーター61の動力で回転駆動される駆動プーリー62であり、パドルユニットフレーム40A内の幅方向Xの両端部に位置する他方のプーリー63が従動プーリーである。各組のプーリー62,63にはそれぞれタイミングベルト64が巻き掛けられている。図3図4に示されるように、左右一対のタイミングベルト64にはそれぞれ可動部材65が固定されている。左右一対の可動部材65は、それぞれ左右一対のガイド軸66に沿って幅方向Xに約半分ずつの領域を移動可能に設けられている。2組の第1パドル45は、可動部材65と共にそれぞれの移動範囲を幅方向Xに移動可能となっている。2組の第1パドル45は、一方が第1方向X1に移動するとき、他方が第2方向X2に移動し、また一方が第2方向X2に移動するとき、他方が第1方向X1に移動する。このため、2組の第1パドル45は、媒体12の幅サイズに応じて幅方向Xの位置を変化させ、媒体12の幅サイズに応じた適切な二位置に媒体12を第2搬送方向Y2に送る送り力を与える。
【0044】
また、図3図4に示されるように、2組の第1パドル45は、幅方向Xに延びる1本の回転軸67に共通に取り付けられている。回転軸67におけるパドルユニットフレーム40Aの側部より外方に突出する一端部には、歯車68が固定されている。パドルユニットフレーム40Aの側部には歯車68を回転させる動力を出力する電動モーター69が配設されている。電動モーター69が駆動されることで、2組の第1パドル45は、処理トレイ32上の媒体12を第2搬送方向Y2に送ることが可能な方向に回転する。
【0045】
図3図4に示される2組の第1パドル45は、回転軸67に対して幅方向Xに移動可能かつ回転軸67と一体に回転可能な状態で係合している。2組の第1パドル45は、幅方向Xの間隔を隔てた状態で、双方の間隔を変化させる位置にそれぞれ移動可能である。電動モーター61,69は、制御部110により駆動制御される。また、図4に示されるように、パドルユニット40は、回転軸67の回転位置を検知するセンサー60Sを備える。制御部110は、センサー60Sの検知信号に基づいて第1パドル45を、図2図4に示される待機姿勢に配置する。第1パドル45の待機姿勢は、処理トレイ32上の媒体12を送る送り動作期間以外の期間である待機期間に第1パドル45がとる回転角度である。
【0046】
図4図5に示されるように、パドルユニット40は、第1パドル45の回転軸67に対して上方に設けられた回転体の一例としてのローラー70を備える。ローラー70は、例えば、ころである。ローラー70はその回転軸線に沿って延びる軸の一例である支軸71に対して回転可能に支持されている。支軸71の軸線方向は、第1パドル45の回転軸67の軸線方向と平行である。ローラー70は、外力が加わると回転する従動ローラーである。
【0047】
ローラー70の上方には、上面部材の一例としてのパドルユニットフレーム40Aが配置されている。詳しくは、ローラー70の上方には、パドルユニットフレーム40Aの一部である上面部40Bが位置する。つまり、ローラー70は、パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bよりも下方に配置されている。また、ローラー70は、第1パドル45の回転軸67よりも上方に配置されている。これにより、ローラー70は、鉛直方向Zにおいて、回転軸67と上面部40Bとの間に位置する。ローラー70は、上面部40Bとの間に所定の隙間を隔てて配置されている。また、ローラー70は、第1パドル45が幅方向Xに移動しても第1パドル45と接触可能な幅方向Xの長さを有している。このため、第1パドル45は、媒体12の幅サイズに応じて幅方向Xの位置を変化させても、回転するときにローラー70と接触する。
【0048】
次に、図5を参照して、第1パドル45およびローラー70に関する特徴的な構成について説明する。
第1パドル45は、処理トレイ32の積載面32Aに到達する長さの複数のブレード45Aを有する。複数のブレード45Aは、回転軸67を中心とする1周(360度)のうち約1/4(約90度)~約半分(約180度)の偏った領域内に等間隔に配置されている。複数のブレード45Aの間隔は、例えば、10~90度の範囲内の所定角度である。図5に示す例では、ブレード45Aの数は3つであり、回転軸67の回り約2/3(約120度)の領域に3つのブレード45Aが、例えば、約60度の等角度間隔で配置されている。
【0049】
このため、第1パドル45の回転角により、いずれかのブレード45Aが積載面32Aまたは積載面32A上の媒体12に接触する送り動作が可能な送り姿勢と、いずれのブレード45Aも、積載面32Aまたは積載面32A上の媒体12に接触しない非送り姿勢とに第1パドル45を切り替えることができる。なお、図5に示される待機姿勢は、非送り姿勢のうち予め待機用に決められた回転角の姿勢である。図5に示す例では、待機姿勢では、全てのブレード45Aが水平よりも上方を向くが、少なくとも1つのブレード45Aが水平よりも上方を向いていればよい。
【0050】
図5に二点鎖線で示される円は、第1パドル45のブレード45Aの先端の回転軌跡L1を示す。但し、この回転軌跡L1は、ローラー70がないものと想定したときの回転軌跡を示す。
【0051】
ローラー70は、第1パドル45の回転軌跡L1内に設けられている。図5に示される例では、ローラー70は、その全部が第1パドル45の回転軌跡L1内に配置されている。ローラー70は、第1パドル45の回転軌跡L1内に一部でも設けられていればよい。
【0052】
また、第1パドル45をその回転軸67の軸方向から見た側面視において、ローラー70およびパドルユニットフレーム40Aは、第1パドル45の回転軌跡L1内に少なくとも一部が設けられている。図5の例では、パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bは、第1パドル45の回転軌跡L1内に一部も設けられていない。この場合、ローラー70と上面部40Bとの間に、駆動機構60,80を構成する部品類を配置する配置スペースを確保することが可能になる。このため、パドルユニット40を高さ方向に小型化することが可能になる。
【0053】
図5に二点鎖線で示す上面部40Bのように、上面部40Bの一部を第1パドル45の回転軌跡L1内に設けてもよい。この場合も、回転軸67と上面部40Bとの間にローラー70が配置されている。この構成では、パドルユニット40を高さ方向に小型化することが可能になる。なお、パドルユニット40の高さ方向は、鉛直方向Zと、処理トレイ32の積載面32Aと垂直な方向とのいずれであってもよい。
【0054】
ところで、引き込み部材の一例である第1パドル45の回転軌跡L1内にパドルユニットフレーム40Aの一部が配置される構成においてローラー70がない場合、パドルユニット40を高さ方向に小型化できるものの、第1パドル45が回転する度にパドルユニットフレーム40Aと接触するため、ブレード45Aが摩耗する。このため、第1パドル45が回転してもブレード45Aが上面部40Bと接触しない高さ位置に、パドルユニットフレーム40Aを配置することが考えられる。しかし、この構成では、パドルユニット40が高さ方向に大型化するので、第1パドル45の摩耗を回避できるものの、後処理装置14の高さ方向の大型化に繋がる。
【0055】
このため、本実施形態では、第1パドル45の回転軌跡L1内にローラー70を配置し、第1パドル45がローラー70と接触することで、ブレード45Aの摩耗を低減する。また、ローラー70が第1パドル45の回転軌跡L1内に配置されると、ブレード45Aがローラー70に接触する過程で屈曲するので、第1パドル45の実際の回転軌跡は、回転軌跡L1よりもローラー70の上側の領域分小さくなる。回転軌跡の小さくなった上側の領域は、駆動機構60,80の部品の配置スペースまたは上面部40Bの配置位置の下降に利用できる。これらいずれの構成も、パドルユニット40を高さ方向に小型化できる。
【0056】
また、ローラー70は、第1パドル45の回転軸67よりも上方に位置する。このため、第1パドル45は、待機姿勢から1回転するうち、ブレード45Aが水平よりも上方を向く姿勢角にあるときにローラー70と接触する。
【0057】
ローラー70は、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aの間において、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aとの距離が一番近くなる位置に設けられる。換言すると、ローラー70は、図5に示される側面視において、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aの間において、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aとの距離が一番近くなる最短距離となる2位置を結ぶ仮想線L2にローラー70がかかる位置に設けられる。なお、最短距離の間に配置されるとは、ローラー70が仮想線L2に少しでもかかればよい。
【0058】
ローラー70と支軸71との間の摩擦係数は、ローラー70と第1パドル45との間の摩擦係数よりも小さい。本例の第1パドル45は、例えば、合成ゴムよりなるゴム製である。また、ローラー70は、少なくとも表面部が合成樹脂よりなる。本例では、ローラー70は、その全部が合成樹脂製である。すなわち、ローラー70の外周面およびローラー70の支軸71が挿通されている内周面が合成樹脂製である。さらに、支軸71は、合成樹脂製である。このため、ローラー70と支軸71との間の摩擦係数は、合成樹脂同士の摩擦係数である。また、ローラー70と第1パドル45との間の摩擦係数は、合成樹脂とゴムとの摩擦係数である。合成樹脂とゴムとの摩擦係数は、合成樹脂同士の摩擦係数よりも大きい。このため、本実施形態では、ローラー70と支軸71との間の摩擦係数が、ローラー70と第1パドル45との間の摩擦係数よりも小さくなっている。
【0059】
また、第2パドル46は、積載面32Aに到達する長さの複数のブレード46Aを有する。第2パドル46は、第1パドル45よりも径が小さいものの、第1パドル45とほぼ同じ形状を有する。第2パドル46は、処理トレイ32の上方位置でかつ回転軸67よりも第2搬送方向Y2の下流側の位置に設けられた幅方向Xに延びる回転軸49に固定されている。一対の第2パドル46は、幅方向Xに一対の第1パドル45の間隔よりも狭い第2間隔を隔てて配置されている。一対の第2パドル46は、小サイズの媒体12にも幅方向Xに二箇所で接触可能な位置にある。なお、一対の第2パドル46を、第1パドル45と同様に媒体12の幅サイズに応じて幅方向Xに移動可能に設けてもよい。また、2組の第1パドル45を幅方向Xへの移動を不能とし、小サイズの媒体12にも幅方向Xに二箇所で接触可能な位置に配置してもよい。
【0060】
図6は、第1パドル45が回転するときにローラー70との接触を伴うブレード45Aの移動軌跡を示す。第1パドル45は図6における反時計回り方向に回転する。ここでは、第1パドル45が有する複数のブレード45Aのうち1つのブレード45Aに着目する。ブレード45Aが第1ポジションP1に位置するとき、ブレード45Aは真っ直ぐ延びた状態でローラー70の外周面に接する。さらにブレード45Aが第2ポジションP2に移動すると、ブレード45Aはローラー70の外周面と当たった箇所で屈曲する。このため、ブレード45Aの先端は、パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bから下方へ離間する。すなわち、ローラー70がない構成で、第2ポジションP2の回転姿勢にあるときに、真っ直ぐ延びていたブレード45Aの先端の位置に比べ、ブレード45Aの先端がパドルユニットフレーム40Aの上面部40Bから下方へ離間する。さらに、ブレード45Aが第3ポジションP3まで移動する過程で、ブレード45Aはローラー70の外周面に接触して変形することでローラー70の下側を通り過ぎる。ローラー70の下側を通り過ぎたブレード45Aは第3ポジションP3で自身の弾性力で真っ直ぐ延びる。この第1ポジションP1から第3ポジションP3までの移動過程で、ブレード45Aの先端は、図5に示される回転軌跡L1の上側の領域で回転軌跡L1よりも下側を通る軌跡を描く。
【0061】
本実施形態では、ローラー70と支軸71との間の摩擦係数は、ローラー70と第1パドル45との間の摩擦係数よりも小さい。このため、第1パドル45のブレード45Aが、ローラー70の外周面と接触する第1ポジションP1から第3ポジションP3まで移動する過程で、ブレード45Aは、ローラー70の外周面と接触したままローラー70が回転することで、屈曲しながらローラー70の下側を通り過ぎる。この過程で、ブレード45Aとローラー70の外周面との間で摺動が発生しないので、ブレード45Aの摩耗が抑制される。
【0062】
次に、図7図9を参照して、第1パドル45の引き込み動作を説明する。処理トレイ32上に媒体束12Bが形成される度に、第1パドル45は待機姿勢の位置まで回動する。この待機姿勢では、第1パドル45の複数のブレード45Aが全て媒体束12Bから離間する。この第1パドル45が待機姿勢をとる状態の下で、排出機構36のローラー36A,36Bが媒体束12Bをニップし、ローラー36A,36Bが回転することで、媒体束12Bが処理トレイ32から排出される。
【0063】
例えば、図7に示されるように、最初の媒体12が処理トレイ32へ受容されるときに、第1パドル45が回転を開始すると、1つ目のブレード45Aが媒体12に接触して媒体12を第2搬送方向Y2に引き込む。
【0064】
次に、図8に示されるように、2つ目のブレード45Aが媒体12に接触して媒体12を第2搬送方向Y2に引き込む。
さらに、図9に示されるように、3つ目のブレード45Aが媒体12に接触して媒体12を第2搬送方向Y2に引き込む。図7図9に示される第1パドル45が媒体12を引き込む(送る)ときの姿勢が引き込み姿勢である。制御部110は、媒体12の先端を突き当て部47に突き当てたタイミングまたはこれより若干遅いタイミングで第1パドル45を停止させる。第1パドル45を1回転ごとに待機姿勢に停止させてもよいし、最後のブレード45Aが処理トレイ32上の媒体12に接触し変形する状態で第1パドル45の停止タイミングを制御してもよい。ブレード45Aが媒体12に接触し変形する状態で媒体12を押さえる。こうして第1パドル45が停止した状態では、処理トレイ32上の媒体12は、その後端12rが突き当て部47に突き当たって第2搬送方向Y2に整合された状態となる。なお、第1パドル45は引き込み過程において複数回転してもよい。
【0065】
第1パドル45は、待機姿勢まで回動して停止した状態では、複数のブレード45Aのうち先端が最も上方を向く1つのブレード45Aがローラー70の外周面に接触して屈曲する状態で停止する。
【0066】
次に、記録システム11の作用について説明する。
記録装置13で記録された媒体12は中間装置15で反転された後、後処理装置14へ送られる。後処理装置14では、搬送機構30に搬入される。図2に示されるように、媒体12は搬送機構30を通って搬送ローラー対31から処理トレイ32の上方に搬入される。このとき、図2に実線で示される媒体12は、可変ガイド42が待機位置から作動位置へ回動することで、下方へ叩き落とされる。これにより、媒体12の搬送経路が下方へ変更される。続いて、図2図3に示される待機位置で待機していた第1パドル45が同図における反時計回り方向に回転する。
【0067】
左右2組の第1パドル45は、後処理対象の媒体12の幅サイズに応じた間隔に位置調整される。すなわち、幅サイズが第1サイズである第1の媒体12のときは、左右2組の第1パドル45は、図3図4に示される幅方向Xの中央寄りに位置する第1位置に位置調整される。そして、幅サイズが第1サイズよりも大きな第2サイズである第2の媒体12のときは、左右2組の第1パドル45は、図3図4に示される幅方向Xの中央寄りの第1位置よりも間隔を広げた第2位置に位置調整される。
【0068】
第1パドル45は回転を開始するまでは、図4および図5に示されるように、複数のブレード45Aのうち少なくとも1つが水平よりも上方に向けた姿勢である待機姿勢に配置されている。このとき、第1パドル45を構成する複数のブレード45Aのうち少なくとも1つは、ローラー70の外周面に接触し、少し折れ曲がった状態にある(図4図5を参照)。
【0069】
第1パドル45が回転することにより、図7図9に示されるように、媒体12は、処理トレイ32の積載面32A上を突き当て部47に向かう第2搬送方向Y2に引き込まれる。そして、第1パドル45により第2搬送方向Y2に送られた媒体12の後端12rが突き当て部47に当たることで、媒体12は第2搬送方向Y2に整合される。媒体12の後端12rが突き当て部47に当たる手前で、第1パドル45よりも小径の第2パドル46(図2図5を参照)により媒体12が第2搬送方向Y2へ送られる。
【0070】
大径の第1パドル45により媒体12は高速に送られ、小径の第2パドル46により媒体12は第1パドル45に比べ低速で送られる。例えば、媒体12の後端12rが突き当て部47に当たる前の途中までは、第1パドル45が媒体12を高速に送り、その途中から媒体12の後端12rが突き当て部47に当たるまでは、第2パドル46が媒体12を低速に送る。このため、媒体12の後端12rが突き当て部47に当たったときの跳ね返りによる整合ミスが発生しにくい。よって、媒体12は、搬送方向Y0にずれなく整合される。なお、パドル45,46により送られる途中で、一対の整合部材52が媒体12の両側端を叩くことで、媒体12は幅方向Xにも整合される。
【0071】
この第1パドル45が回転する過程では、複数のブレード45Aが順番にローラー70の外周面に接触し折れ曲がる。本例では、ローラー70と支軸71との摺動抵抗よりも、ブレード45Aとローラー70との摩擦抵抗の方が大きい。このため、ローラー70の外周面に接触したブレード45A(図6の第1ポジションP1)は、ローラー70の外周面と摺動することなく、ローラー70の外周面と接触した接触箇所を保ったままローラー70が回転することで、ローラー70の下側を折れ曲がりながら(図6の第2ポジションP2)通過する。この通過過程でブレード45Aとローラー70の外周面との間でほとんど滑りが発生しない。よって、ローラー70が回転する。そして、ブレード45Aがローラー70の下側を通り過ぎると、ブレード45Aは自身の弾性復元力によって、折れ曲がった状態から半径方向に真っ直ぐ延びた状態に復帰する(図6の第3ポジションP3)。
【0072】
続いて、次の媒体12についても同様の処理が行われる。すなわち、搬送ローラー対31から搬入された媒体12の経路の変更と、第1パドル45による送り動作と、第2パドル46による送り動作と、整合部材52による幅方向Xの整合動作とが行われる。2枚目以降の媒体12は、第1パドル45および第2パドル46により、処理トレイ32の積載面32A上に先に積載された媒体12の上面に沿って第2搬送方向Y2へ送られる。そして、媒体12の後端12rが突き当て部47に当たることで、媒体12は搬送方向Y0に整合される。こうして媒体12は1枚ずつ搬送方向Y0と幅方向Xに整合されて処理トレイ32上に積載される。
【0073】
そして、処理トレイ32上に積載された媒体12の枚数が目標枚数に達すると、後処理機構33が、処理トレイ32に対して幅方向Xに移動し、処理トレイ32上の媒体束12Bの後端12rにおける所定の位置にステープル処理を施す。指定された位置および数のステープル処理が終わると、処理トレイ32上の媒体束12Bが駆動ローラー36Aと従動ローラー36Bとにニップされる。そして、このニップ状態の下で駆動ローラー36Aが駆動されることで、媒体束12Bは、処理トレイ32から排出される。
【0074】
この排出過程では、待機位置にある押さえ部材93およびガイド部材37により上方へのずれが抑えられつつ、媒体束12Bは媒体支持部材38に一時支持される。これにより媒体束12Bの先端部の垂れ下がりが抑えられる。このため、媒体束12Bの先端部が垂れ下がったまま媒体束12Bが排出されるときに発生し易い先端部の折れを防止できる。そして、一対の媒体支持部材38が幅方向Xに間隔を広げることで、それまで一時的に支持されていた媒体束12Bが排出スタッカー35上へ落下する。
【0075】
本実施形態のパドルユニット40では、ブレード45Aが第1ポジションP1~第3ポジションP3をとる過程で、ローラー70の下側を通るように折れ曲がることで、ローラー70の上方にブレード45Aの通過軌跡とならない空間領域が確保される。本例では、図5に示されるように、ローラー70とパドルユニットフレーム40Aの上面部40Bとの間に空間領域に駆動機構60,80の部品が配置される。この結果、パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bよりも上方位置に組み付けられていた部品の数が減り、パドルユニット40を高さ方向に小型化できる。
【0076】
また、パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bを、図5に二点鎖線で示す位置まで下降させ、図5に二点鎖線で示される上面部40Bを、ブレード45Aの回転軌跡L1内に配置してもよい。この構成では、パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bの高さ位置が低くなる分、パドルユニット40を高さ方向に小型化できる。そして、パドルユニット40の高さ方向の小型化によって、後処理装置14を高さ方向に小型化できる。
【0077】
以上、詳述したように、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)後処理装置14は、記録部24によって記録された媒体12が積載される処理トレイ32と、処理トレイ32の上方に設けられ、回転することで媒体12を搬送方向上流へと引き込む引き込み部材の一例としての第1パドル45とを備える。さらに、後処理装置14は、第1パドル45の回転軸67の上方に設けられた回転体の一例であるローラー70と、ローラー70の上方に設けられた上面部材の一例であるパドルユニットフレーム40Aとを備える。ローラー70およびパドルユニットフレーム40Aは、第1パドル45の回転軌跡L1内に設けられている。なお、パドルユニットフレーム40Aおよびローラー70は一部だけでも回転軌跡L1内にあればよい。よって、第1パドル45の摩耗を抑制しつつ、後処理装置14の高さ方向の小型化を図ることができる。
【0078】
(2)第1パドル45は回転軸67を中心に回転することで媒体12を引き込む。ローラー70は、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aとの間において、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aとの距離が一番近くなる位置に設けられる。最短距離の間に配置されるとは、ローラー70が少しでもその間にあればよい。よって、第1パドル45が最も変形する位置にローラー70を設けることで、第1パドル45とローラー70との摩擦を低減できる。つまり、第1パドル45を回転時に最も変形させる位置に部材を配置する場合、その部材をローラー70とすることで、第1パドル45とローラー70(部材)との摩擦を低減できる。
【0079】
(3)ローラー70と支軸71との間の摩擦係数は、ローラー70と第1パドル45との間の摩擦係数よりも小さい。よって、第1パドル45がローラー70と接触した際にローラー70が回転するので、第1パドル45とローラー70との間の摺動が抑えられる。この結果、第1パドル45のローラー70との接触による摩耗を抑制できる。
【0080】
(第2実施形態)
次に、図10を参照して、第2実施形態について説明する。なお、パドルユニット40を構成する回転体の構成が前記第1実施形態と異なり、パドルユニット40のその他の構成、記録システム11および後処理装置14における構成は、前記第1実施形態と同様である。このため、以下では、本実施形態のパドルユニット40の構成についてのみ説明する。
【0081】
図10に示されるように、本実施形態では、パドルユニット40において第1パドル45の回転軸67とパドルユニットフレーム40Aの上面部40Bとの間には、複数の回転体の一例であるローラー72が設けられている。複数のローラー72は、軸の一例としての支軸73を中心に回転可能な状態で支持されている。図10に示される側面視において、複数のローラー72は、第1パドル45の回転軸67を中心に円弧状を描くように配置されている。ローラー72の径である第2の径は、第1実施形態におけるローラー70の径である第1の径よりも小さい。また、複数のローラー72は、第1パドル45の回転軌跡L1内に配置されている。
【0082】
少なくとも1つのローラー72は、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aの間において、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aとの距離が一番近くなる位置に設けられる。換言すると、少なくとも1つのローラー72は、図10に示される側面視において、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aの間において、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aとの距離が一番近くなる最短距離となる2位置を結ぶ仮想線L2に1つのローラー72がかかる位置に設けられる。なお、最短距離の間に配置されるとは、ローラー72が仮想線L2に少しでもかかればよい。
【0083】
第1実施形態のローラー70に比べ、第2実施形態のローラー72は径が小さいため、ローラー72の占める高さ方向のサイズが、その径が小さい分だけ、相対的に小さく抑えられる。このため、図10における側面視において、複数のローラー72が円弧状に配列されたローラー列とパドルユニットフレーム40Aの上面部40Bとの間のスペースが、前記第1実施形態の構成に比べ高さ方向に広く確保される。このため、このスペースに駆動機構60,80の構成部品を配置することで、パドルユニットフレーム40Aの内側のスペースを部品の配置スペースとして有効に利用することが可能になる。
【0084】
また、上記のスペースに部品を配置する構成に替え、パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bの高さ位置を下方にシフトさせてもよい。つまり、ブレード45Aが位置しないスペースができた分だけ上面部40Bの配置位置を、図10に二点鎖線で示す位置まで第1パドル45の回転軸67に近づける方向(下方)にシフトさせてもよい。この構成によっても、パドルユニット40の高さ方向のサイズを、上面部40Bの高さ位置を下方へシフトさせることで相対的に小型化できる。この構成では、パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bの一部が第1パドル45の回転軌跡L1内に配置される。
【0085】
回転体の一例であるローラー72と支軸73との間の摩擦係数は、ローラー72と第1パドル45との間の摩擦係数よりも小さい。本例の第1パドル45は、例えば、合成ゴムよりなるゴム製である。また、ローラー72は、少なくとも表面部が合成樹脂よりなる。また、ローラー72の支軸73が挿通されている内周面の部分は合成樹脂製である。さらに、支軸73は、合成樹脂製である。このため、ローラー72と支軸73との間の摩擦係数は、合成樹脂同士の摩擦係数である。また、ローラー72と第1パドル45との間の摩擦係数は、合成樹脂とゴムとの摩擦係数である。合成樹脂とゴムとの摩擦係数は、合成樹脂同士の摩擦係数よりも大きい。このため、本実施形態では、ローラー72と支軸73との間の摩擦係数が、ローラー72と第1パドル45との間の摩擦係数よりも小さくなっている。
【0086】
以上、詳述したように、第2実施形態によれば、回転体の一例としてのローラー72を備えるので、ローラー70を備える第1実施形態と同様に前記(1)~(3)の効果が得られる他、以下の効果を得ることができる。
【0087】
(4)複数のローラー72を配列したので、ローラー72の直径を小さくすることができる。よって、ローラー72が占める高さ方向のスペースが小さく済む。この結果、ローラー72と上面部材の一例であるパドルユニットフレーム40Aの上面部40Bとの間に高さ方向に広い空きスペースを確保できる。この空きスペースに部品を配置すれば、パドルユニット40を高さ方向に小型化できる。一方、この空きスペースを上面部40Bの配置位置の下降に利用すれば、パドルユニット40を高さ方向に小型化できる。パドルユニット40の高さ方向の小型化によって、後処理装置14を高さ方向に小型化できる。
【0088】
(第3実施形態)
次に、図11を参照して、第3実施形態について説明する。なお、パドルユニット40を構成する回転体の構成が前記各実施形態と異なり、パドルユニット40のその他の構成、記録システム11および後処理装置14における構成は、前記第1実施形態と同様である。このため、以下では、本実施形態のパドルユニット40の構成についてのみ説明する。
【0089】
図11に示されるように、本実施形態では、パドルユニット40において、引き戻し部材の一例である第1パドル45の回転軸67とパドルユニットフレーム40Aの上面部40Bとの間には、複数の回転体の一例であるローラー70が設けられている。本例では、ローラー70は第1パドル45の回転方向に間隔を空けて2つ設けられている。ローラー70は、前記第1実施形態のローラー70と同じものであるが、ローラー70の数と配置位置が前記第1実施形態と異なる。2つのローラー70は、第1パドル45の回転軌跡L1内に位置する。また、上面部40Bは、回転軌跡L1内に位置しないが、図11に示される側面視においてパドルユニットフレーム40Aの一部は回転軌跡L1内に位置する。なお、上面部40Bの一部を回転軌跡L1内に位置する構成としてもよい。この場合、第1パドル45の回転時にブレード45Aの先端が上面部40Bに接触するが、その接触により摺動する期間はブレード45Aが2つのローラー70間に位置するときに限られるので、ブレード45Aの摩耗は低減される。
【0090】
2つのローラー70は、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、先端が一番高くに位置する1つのブレード45Aをその回転方向に挟む両側の位置に配置されている。図11に示される例では、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、3つのブレード45Aのうち真ん中(2つ目)のブレード45Aが上方に向かって延びている。また、3つ全てのブレード45Aが水平面よりも上方を向いた状態にある。1つ目のブレード45Aと2つ目のブレード45Aとの間に1つのローラー70が配置され、2つ目のブレード45Aと3つ目のブレード45Aとの間に他の1つのローラー70が配置されている。このため、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、ブレード45Aはローラー70に非接触の状態にある。前記第1実施形態、第2実施形態では、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、ブレード45Aが第1実施形態のローラー70または第2実施形態のローラー72に接触して屈曲した形状に保持されるため、ブレード45Aに曲げ癖が形成される可能性があった。これに対して、本実施形態では、第1パドル45が待機姿勢にあるときは、ブレード45Aがローラー70と接触しない非接触状態にあるので、ブレード45Aに曲げ癖が発生することが抑制される。
【0091】
複数のローラー70は、支軸71を中心に回転可能な状態で支持されている。図11に示される側面視において、複数のローラー70は、第1パドル45の回転軸67から等距離となる位置に配置されている。
【0092】
第1パドル45が回転するときは、ブレード45Aが複数のローラー70に順次接触し、この接触によりブレード45Aが屈曲する。第1パドル45の回転軸67に対して複数のローラー70の外周側には、第1パドル45のブレード45Aがローラー70の外周面に接触して屈曲することから、ブレード45Aが位置することがないスペースが確保される。このため、このスペースを駆動機構60,80の構成部品等の配置スペースとして有効利用できる。なお、本実施形態では、図11に示される側面視において、第1パドル45の回転軌跡L1内にパドルユニットフレーム40Aの一部が配置されている。
【0093】
引き込み部材の一例である第1パドル45は、媒体12と接触して媒体12を引き込む引き込み姿勢(図7図9を参照)と、媒体12と接触せずに、第1パドル45の先端が上方を向く待機姿勢(図11参照)とに切り替え可能である。第1パドル45が待機姿勢にあるとき、第1パドル45とローラー70とが鉛直方向Zにおいてオーバーラップしている。パドルユニットフレーム40Aと第1パドル45が装置高さ方向もしくは媒体積載方向でオーバーラップすることで、パドルユニット40の高さ方向の小型化、ひいては後処理装置14の高さ方向の小型化を図ることが可能になる。さらに第1パドル45のブレード45Aの変形を防止することが可能である。
【0094】
また、第1パドル45の待機位置において、第1パドル45の引き込みを行う部分であるブレード45Aが上方を向いた状態で第1パドル45とローラー70とは非接触状態にあり、かつ第1パドル45とローラー70とが鉛直方向Zにおいてオーバーラップしている。待機姿勢において第1パドル45がローラー70と非接触状態にあるので、第1パドル45のブレード45Aが変形することが防止される。なお、第1パドル45とローラー70との鉛直方向Zにおけるオーバーラップは、「装置高さ方向」である鉛直方向Zにおけるオーバーラップに限らず、水平面に対して傾く処理トレイ32の積載面32Aに対して直交する「媒体積載方向」におけるオーバーラップでもよい。
【0095】
回転体の一例であるローラー70と支軸71との間の摩擦係数は、ローラー70と第1パドル45との間の摩擦係数よりも小さい。本例では、第1パドル45、ローラー70および支軸71の材質は、前記第1実施形態と同様である。
【0096】
以上、詳述したように、第3実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に前記(1),(3)の効果が得られる他、以下の効果を得ることができる。
(5)第1パドル45は、媒体12と接触して媒体12を引き込む引き込み姿勢と、媒体12と接触せずに、第1パドル45の先端が上方を向く待機姿勢と、を切り替え可能である。待機位置において、第1パドル45とローラー70とが鉛直方向においてオーバーラップしている。なお、オーバーラップと記載しているが、これは「装置高さ方向」もしくは「媒体12の積載方向」のいずれかでオーバーラップしていればよい。よって、パドルユニットフレーム40Aと第1パドル45が(装置高さ方向もしくは媒体12積載方向で)オーバーラップすることで装置を小型化し、さらに第1パドル45の変形を防止する。
【0097】
(6)第1パドル45は、媒体12と接触して媒体12を引き込む引き込み姿勢と、媒体12と接触せずに、第1パドル45の先端が上方を向く待機姿勢と、を切り替え可能である。待機位置において、上方を向いた状態で第1パドル45とローラー70とは非接触状態にあり、かつ第1パドル45とローラー70とが鉛直方向においてオーバーラップしている。よって、待機姿勢において第1パドル45が変形することを防止する。
【0098】
(第4実施形態)
次に、図12を参照して、第4実施形態について説明する。なお、パドルユニット40の構成が前記各実施形態と異なり、記録システム11および後処理装置14における他の構成は、前記第1実施形態と同様である。このため、以下では、本実施形態のパドルユニット40の構成についてのみ説明する。
【0099】
図12に示されるように、本実施形態では、パドルユニット40において第1パドル45の回転軸67とパドルユニットフレーム40Aの上面部40Bとの間には、回転体の一例であるローラー70が設けられている。パドルユニットフレーム40Aは、上面部40Bからほぼ一定の延出長で下方へ延出する延出部40Cを有する。延出部40Cは、第1パドル45の回転軸67の軸方向(幅方向X)において、ローラー70および第1パドル45を挟む両側の位置に一対形成されている。第1パドル45が軸方向に移動可能な構成である場合、一対の延出部40Cは、第1パドル45の軸方向の移動領域を挟む両側の位置に形成されてもよい。ローラー70は、前記第1実施形態のローラー70と同じものである。ローラー70の支軸71の両端部が、一対の延出部40Cに対して支持されている。この支軸71に対してローラー70が回転可能な状態で支持されている。なお、延出部40Cは、一対ではなく、ローラー70および第1パドル45を挟む両側のうち一方のみに形成されてもよく、この場合、他方はパドルユニットフレーム40Aにおける回転軸67を支持する側板部が兼ねてもよい。
【0100】
ローラー70は、第1パドル45の回転軌跡L1内に位置する。図12に示されるように、ローラー70の上側の一部が少し回転軌跡L1の外側に位置してもよい。このように、支軸71が回転軌跡L1内に位置し、ローラー70一部が回転軌跡L1内に位置してもよい。また、上面部40Bは、回転軌跡L1内に位置しないが、図12に示される側面視においてパドルユニットフレーム40Aの一部である延出部40Cの一部は、回転軌跡L1内に位置する。なお、上面部40Bの一部を回転軌跡L1内に位置する構成としてもよい。この場合、第1パドル45の回転時にブレード45Aの先端が上面部40Bに接触するが、その接触する期間はブレード45Aがローラー70に接触して変形することにより上面部40Bから離間する期間は外れるので、ブレード45Aの摩耗は低減される。
【0101】
回転体の一例であるローラー70は、上面部材の一例であるパドルユニットフレーム40Aに設けられている。ローラー70の下端がパドルユニットフレーム40Aの延出部40Cの下面よりも下方に突出している。なお、ローラー70は、少しでもパドルユニットフレーム40Aの延出部40Cから下方へ突出していればよい。すなわち、ローラー70とパドルユニットフレーム40Aとの位置を高さ方向にオーバーラップさせることで、パドルユニット40の高さ方向の小型化が図られている。
【0102】
ローラー70は、引き戻し部材の一例である第1パドル45が待機姿勢にあるとき、複数のブレード45Aのどれとも接触しない非接触な位置に配置されている。図12に示される例では、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、3つのブレード45Aのうち1つ目のブレード45Aと2つ目のブレード45Aとの間にローラー70が配置されている。このため、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、ブレード45Aはローラー70に非接触な状態にある。前記第1および第2実施形態では、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、ブレード45Aがローラー70またはローラー72に接触して屈曲した形状に保持されるため、ブレード45Aに曲げ癖が形成される可能性があった。これに対して、本実施形態では、第1パドル45が待機姿勢にあるときは、ブレード45Aがローラー70と接触しない非接触状態にあるので、ブレード45Aに曲げ癖が発生することを抑制できる。
【0103】
第1パドル45が待機姿勢から回転するときは、ブレード45Aがローラー70に順次接触し、この接触によりブレード45Aが屈曲する。第1パドル45の回転軸67からローラー70を見た場合、ローラー70の反対側(外周側)のスペースには、第1パドル45のブレード45Aがローラー70の外周面に接触して屈曲するため、ブレード45Aが位置しない。第1パドル45の回転軸67からローラー70を見た場合、ローラー70の反対側(外周側)には、ブレード45Aが位置することがないスペースが確保される。このスペースを駆動機構60,80の構成部品等の配置スペースとして有効利用できる。なお、この構成では、第1パドル45の回転軌跡L1内にパドルユニットフレーム40Aの一部である延出部40Cが配置される。
【0104】
第1パドル45は、媒体12と接触して媒体12を引き込む引き込み姿勢(図7図9を参照)と、媒体12と接触せずに、第1パドル45の先端が上方を向く待機姿勢(図11参照)とに切り替え可能である。第1パドル45が待機姿勢をとるとき、第1パドル45とローラー70とが鉛直方向Zにおいてオーバーラップしている。なお、第1パドル45とローラー70との鉛直方向Zにおけるオーバーラップは、第3実施形態と同様に、「装置高さ方向」もしくは「媒体積載方向」でオーバーラップしていればよい。
【0105】
また、第1パドル45の待機姿勢において、第1パドル45の引き込みを行う部分であるブレード45Aが上方を向いた状態で第1パドル45とローラー70とは非接触状態にあり、かつ第1パドル45とローラー70とが鉛直方向Zにおいてオーバーラップしている。第1パドル45は待機姿勢においてローラー70と非接触状態にある。
【0106】
回転体の一例であるローラー70と支軸71との間の摩擦係数は、ローラー70と第1パドル45との間の摩擦係数よりも小さい。本例では、第1パドル45、ローラー70および支軸71の材質は、前記第1実施形態と同様である。
【0107】
以上、詳述したように、第4実施形態によれば、第1実施形態における効果(1),(3)および第2実施形態における効果(5),(6)が同様に得られる他、以下の効果を得ることができる。
【0108】
(7)ローラー70はパドルユニットフレーム40Aに設けられる。ローラー70の下端がパドルユニットフレーム40Aの下面よりも下方に突出している。なお、ローラー70は少しでもパドルユニットフレーム40Aから突出していればよい。よって、ローラー70とパドルユニットフレーム40Aとをオーバーラップさせることで小型化を図ることができる。
【0109】
(第5実施形態)
次に、図13を参照して、第5実施形態について説明する。なお、パドルユニット40の構成が前記各実施形態と異なり、記録システム11および後処理装置14における他の構成は、前記第1実施形態と同様である。このため、以下では、本実施形態のパドルユニット40の構成についてのみ説明する。
【0110】
図13に示されるように、本実施形態では、パドルユニット40において引き戻し部材の一例である第1パドル45の回転軸67とパドルユニットフレーム40Aの上面部40Bとの間には、複数の回転体の一例であるローラー70が設けられている。上面部40Bは、前記第3実施形態の上面部40Bよりも厚さが大きい厚肉部40Dとなっているか、あるいは第1パドル45の回転軌跡L1に相当する部分の厚さが前記第3実施形態の上面部40Bよりも大きくなった厚肉部40Dを有する。ローラー70は、前記第3実施形態のローラー70と同じものであり、ローラー70の数と配置位置も前記第3実施形態と概ね同じである。すなわち、ローラー70は2つ設けられている。
【0111】
2つのローラー70は、第1パドル45の回転軌跡L1内に位置する。また、上面部40Bの一部が、第1パドル45の回転軌跡L1内に位置している。図13に示される側面視においてパドルユニットフレーム40Aの一部および2つのローラー70が回転軌跡L1内に位置する。
【0112】
2つのローラー70は、支軸71を中心に回転可能な状態で支持されている。図13に示される側面視において、2つのローラー70は、第1パドル45の回転軸67から等距離となる位置に配置されている。
【0113】
2つのローラー70は、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、複数のブレード45Aのうち先端が一番高く位置する1つのブレード45Aをその回転方向に挟む両側の位置に配置されている。図13に示される例では、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、3つのブレード45Aのうち真ん中(2つ目)のブレード45Aが上方に向かって延びている。1つ目のブレード45Aと2つ目のブレード45Aとの間に1つのローラー70が配置され、2つ目のブレード45Aと3つ目のブレード45Aとの間に他の1つのローラー70が配置されている。このため、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、ブレード45Aはローラー70に非接触の状態にある。
【0114】
本実施形態では、パドルユニットフレーム40Aの上面部40Bの厚肉部40Dには、凹部40Eが形成されている。凹部40Eは、厚肉部40Dの下面から上方に向かって凹む凹形状を有する。第1パドル45の待機姿勢において、第1パドル45の複数のブレード45Aのうち先端が一番高く位置する1つのブレード45Aの先端部が、凹部40Eに受け入れられる。前記第1および第2実施形態では、第1パドル45が待機姿勢にあるとき、ブレード45Aがローラー70またはローラー72に接触して屈曲した形状に保持されるため、ブレード45Aに曲げ癖が形成される可能性があった。これに対して、本実施形態では、前記第3実施形態と同様に、第1パドル45が待機姿勢にあるときは、ブレード45Aがローラー70およびパドルユニットフレーム40Aと接触しない非接触状態にあるので、ブレード45Aに曲げ癖が発生することが抑制される。
【0115】
第1パドル45が回転するときは、ブレード45Aが複数のローラー70に順次接触し、この接触によりブレード45Aが屈曲する。第1パドル45の回転軸67に対して複数のローラー70の外周側には、第1パドル45のブレード45Aがローラー70の外周面に接触して屈曲することにより、ブレード45Aが位置することがないスペースが確保される。このため、このスペースを駆動機構60,80の構成部品等の配置スペースとして有効利用できる。
【0116】
第1パドル45は、媒体12と接触して媒体12を引き込む引き込み姿勢(図7図9を参照)と、媒体12と接触せずに、第1パドル45の先端が上方を向く待機姿勢(図11参照)とに切り替え可能である。第1パドル45が待機姿勢をとるとき、第1パドル45とローラー70とが鉛直方向Zにおいてオーバーラップしている。パドルユニットフレーム40Aと第1パドル45が装置高さ方向もしくは媒体積載方向でオーバーラップしていればよい。
【0117】
また、第1パドル45の待機姿勢において、第1パドル45の引き込みを行う部分であるブレード45Aが上方を向いた状態で第1パドル45とローラー70とは非接触状態にあり、かつ第1パドル45とローラー70とが鉛直方向Zにおいてオーバーラップしている。第1パドル45は待機姿勢においてローラー70と非接触状態にある。
【0118】
回転体の一例であるローラー70と支軸71との間の摩擦係数は、ローラー70と第1パドル45との間の摩擦係数よりも小さい。本例では、第1パドル45、ローラー70および支軸71の材質は、前記第1実施形態と同様である。
【0119】
以上、詳述したように、第5実施形態によれば、第1実施形態における効果(1),(3)および第2実施形態における効果(5),(6)が同様に得られる他、以下の効果を得ることができる。
【0120】
(8)パドルユニットフレーム40Aには凹部40Eが設けられている。待機姿勢において、第1パドル45の先端は凹部40Eに受け入れられる。よって、パドルユニットフレーム40Aと第1パドル45が装置高さ方向もしくは媒体積載方向でオーバーラップすることで装置を小型化し、さらに第1パドル45の変形を防止できる。
【0121】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
【0122】
・引き込み部材の一例である第1パドル45と接触する部材は、ローラー70のような回転体でなくてもよい。例えば、図14に示されるように、低摩擦部材であるプレート75でもよい。プレート75は、第1パドル45と対向する面が低摩擦材料よりなる低摩擦面75Aとなっている。また、プレート75は、第1パドル45の回転軌跡L1内に位置するように配置されている。図14の例では、プレート75の少なくとも一部が第1パドル45の回転軌跡L1内に位置する。プレート75と上面部40Bとの間のスペースに部品を配置したり、上面部40Bを、回転軌跡L1内に位置する図14の二点鎖線で示される位置に配置したりすることにより、パドルユニット40の高さ方向の小型化が可能になる。また、プレート75は、図14に示される側面視において、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aの間において、回転軸67とパドルユニットフレーム40Aとの距離が一番近くなる最短距離となる2位置を結ぶ仮想線L2にかかる位置に設けられる。この構成によっても、前記各実施形態と同様に、第1パドル45の摩耗を抑制しつつ、後処理装置14の高さ方向の小型化を図ることができる。なお、プレート75に替え、低摩擦部材は円柱等の他の形状でもよい。
【0123】
・回転体は、回転ベルトでもよい。第1パドル45のブレード45Aと回転ベルトとの摩擦抵抗は、回転ベルトが巻き掛けられている複数のローラーの軸と軸を支持する軸受との摩擦抵抗よりも大きい。
【0124】
・回転体は、ボールでもよい。例えば、プレートにおける第1パドル45と対向する面に複数のボールを一部露出する状態に設ける。但し、ボールの場合、ボールと第1パドル45のブレード45Aとが点接触するので、ころ等の円柱状の回転体に比べ、ブレードが摩耗し易い。このため、例えば、プレートにおける第1パドル45と対向する面に複数のボールを一部露出する状態に設けてもよい。
【0125】
・第1パドル45を、回転軸67の軸方向に移動不能に設けてもよい。
・第1パドル45の幅方向Xへの移動に追従させてローラー70を幅方向Xに移動させてもよい。
【0126】
・前記第3実施形態において、支軸の軸線方向から見た側面視において、回転体の全部が上面部材の内側に隠れてもよい。つまり、上面部材の一例であるパドルユニットフレーム40Aの延出部40Cから回転体の一例であるローラー70の全部が延出部40Cに隠れた構成でもよい。
【0127】
・上面部材および回転体は一部だけでも、引き込み部材の回転軌跡内にあればよい。
・回転体を第2パドル46に適用してもよい。すなわち、第2パドル46が接触する位置にローラー等の回転体を配置してもよい。第2パドル46の回転軌跡内に回転体の少なくとも一部が配置されることが好ましい。また、第2パドル46に適用する場合、第2パドルは、搬送機構30の下方に位置するので、搬送機構30を構成するフレームが、上面部材の一例に相当する。
【0128】
・パドル45,46の駆動源として他の用途のモーターを流用してもよい。
・媒体12を処理トレイ32に受け入れる受入機構41は、可変ガイド42を備えた構成に限定されない。例えば、ベルトに吸着しつつ搬送する吸着搬送ベルトでもよい。吸着搬送ベルトの吸着方法は、負圧や静電気などが挙げられる。この場合、吸着搬送ベルトは、搬送機構30から処理トレイ32の上方位置へ搬送方向Y0に排出された媒体12を吸着して処理トレイ32の上方位置まで搬送した後に、吸着を解除または可動ガイドなどを用いてベルトから媒体12を強制的に剥がして積載面32A上へ落下させることで受け入れてもよい。また、吸着搬送ベルトに吸着した媒体12を搬送方向Y0へ搬送した後、ベルトの移動方向を逆転させることで媒体12を搬送方向Y0と反対の方向である第2搬送方向へ搬送するスイッチバック搬送させる。そして、第2搬送方向に搬送される過程で吸着搬送ベルトから媒体12を剥がして又は媒体12の吸着を解除して、媒体12を積載面32Aに落下させることで受け入れてもよい。
【0129】
・記録システム11において中間装置15は無くてもよい。つまり、記録装置13と後処理装置14とにより記録システム11を構成してもよい。また、中間装置15の反転処理部200を後処理装置14に組み込んでもよい。この場合、後処理装置14は、記録装置13から搬入した媒体12を内部で反転させたのちに処理トレイ32に受け入れて後処理を行う。また、中間装置15の反転処理部200を記録装置13に組み込んでもよい。この場合、後処理装置14は、記録装置13から搬入した反転後の記録済みの媒体12を処理トレイ32に受け入れて後処理を行う。
【0130】
・前記実施形態では、記録装置13と後処理装置14とを備える記録システム11であったが、記録装置13が後処理装置14を備える構成でもよい。換言すれば、記録装置13を備える後処理装置14でもよい。
【0131】
・媒体12は、用紙に限定されず、合成樹脂製のフィルムやシート、布、不織布、ラミネートシートなどでもよい。
・記録装置13は、インクジェット方式のプリンターに限定されず、インクジェット方式の捺染装置でもよい。また、記録装置13は、記録機能に加え、スキャナー機構およびコピー機能を有する複合機でもよい。
【0132】
以下、前記実施形態および変更例から把握される技術思想を効果と共に記載する。
(A)記録部によって記録された媒体が積載される処理トレイと、前記処理トレイの上方に設けられ、回転することで前記媒体を搬送方向上流へと引き込む引き込み部材と、前記引き込み部材の回転軸上方に設けられた回転体と、前記回転体の上方に設けられた上面部材とを備え、前記回転体および前記上面部材は、前記引き込み部材の回転軌跡内に設けられている。なお、上面部材および回転体は一部だけでも回転軌跡内にあればよい。
【0133】
この構成によれば、引き込み部材の摩耗を抑えつつ、後処理装置14の小型化を図ることができる。
(B)上記後処理装置において、前記引き込み部材は回転軸を中心に回転することで媒体を引き込み可能であり、前記回転体は、前記回転軸と前記上面部材との間において、前記回転軸と前記上面部材との距離が一番近くなる位置に設けられてもよい。なお、最短距離の間に配置されるとは、ローラーが少しでもその間にあればよい。
【0134】
この構成によれば、引き込み部材が最も変形する位置に回転体を設けることで摩擦を低減する。
(C)上記後処理装置において、前記回転体は前記上面部材に設けられ、前記回転体の下端が前記上面部材の下面よりも下方に突出してもよい。なお、回転体は少しでも上面部材から突出していればよい。
【0135】
この構成によれば、回転体と上面部材とをオーバーラップさせることで小型化を図ることができる。
(D)上記後処理装置において、前記引き込み部材は、媒体と接触して媒体を引き込む引き込み姿勢と、媒体と接触せずに、前記引き込み部材の先端が上方を向く待機姿勢と、を切り替え可能であり、前記待機姿勢において、前記引き込み部材と前記回転体とが鉛直方向においてオーバーラップしていてもよい。なお、鉛直方向におけるオーバーラップとは、「装置高さ方向」もしくは「媒体積載方向」のいずれかでオーバーラップしていればよい。
【0136】
この構成によれば、上面部材と引き込み部材が(装置高さ方向もしくは媒体積載方向で)オーバーラップすることで装置を小型化し、さらに引き込み部材の変形を防止する。
(E)上記後処理装置において、前記引き込み部材は、媒体と接触して媒体を引き込む引き込み姿勢と、媒体と接触せずに、前記引き込み部材の先端が上方を向く待機姿勢と、を切り替え可能であり、前記待機姿勢において、上方を向いた状態で前記引き込み部材と前記回転体とは非接触状態にあり、かつ前記引き込み部材と前記回転体とが鉛直方向においてオーバーラップしていてもよい。
【0137】
この構成によれば、待機姿勢において引き込み部材が変形することを防止する。
(F)上記後処理装置において、前記上面部材には凹部が設けられ、前記待機姿勢において、前記引き込み部材の先端は前記凹部に受け入れられてもよい。
【0138】
この構成によれば、上面部材と引き込み部材が装置高さ方向もしくは媒体積載方向でオーバーラップすることで装置を小型化し、さらに引き込み部材の変形を防止する。
(G)上記後処理装置において、前記回転体と前記回転体の軸との間の摩擦係数は、前記回転体と前記引き込み部材との間の摩擦係数よりも小さくてもよい。
【0139】
この構成によれば、引き込み部材と回転体が接触した際に良好に回転することができる。引き込み部材と回転体との間の摺動がないまたは摺動が少なく抑えられるので、引き込み部材の回転体との摺動に起因する摩耗を抑制できる。
【符号の説明】
【0140】
11…記録システム、12…媒体、12B…媒体束、12r…後端、13…記録装置、14…後処理装置、15…中間装置、17…搬送経路、18…搬送モーター、19A…搬送ローラー対、20…カセット、21…ピックアップローラー、22…分離ローラー、23…支持部、24…記録部、25…液体吐出ヘッド、26…ノズル、30…搬送機構、31…搬送ローラー対、31A…駆動ローラー、31B…従動ローラー、32…処理トレイ、32A…積載面、33…後処理機構、34…センサー、35…排出スタッカー、36…排出機構、36A…駆動ローラー、36B…従動ローラー、37…ガイド部材、38…媒体支持部材、40…パドルユニット、40A…上面部材の一例であるパドルユニットフレーム、40B…上面部、40C…延出部、40D…厚肉部、40E…凹部、41…受入機構、42…可変ガイド、43…送り機構、43…送り機構、45…引き込み部材の一例としての第1パドル、45A…ブレード、46…第2パドル、47…突き当て部、49…回転軸、50…整合ユニット、51…整合機構、52…整合部材、60…駆動機構、61…電動モーター、62…プーリー、63…プーリー、64…タイミングベルト、65…可動部材、66…ガイド軸、67…回転軸、70…回転体の一例としてのローラー、71…軸の一例としての支軸、72…回転体の一例としての小ローラー、73…軸の一例としての支軸、75…低摩擦部材、80…駆動機構、81…電動モーター、82…駆動レバー、83…被駆動部、90…押し下げ機構、93…押さえ部材、95…ガイド機構、99…媒体支持機構、L1…回転軌跡、L2…仮想線、X…幅方向、X1…第1方向、X2…第2方向、Y0…搬送方向、Y1…第1搬送方向、Y2…第2搬送方向、Z…鉛直方向。
図1
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