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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】自立性包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/16 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
B65D30/16 E BRH
B65D30/16 BSG
B65D30/16 D BSF
B65D30/16 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020193438
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082082
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】工藤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】門屋 春菜
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020755(JP,A)
【文献】特開2017-206296(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230621(WO,A1)
【文献】特開2003-182745(JP,A)
【文献】特開2020-157514(JP,A)
【文献】特開2010-089800(JP,A)
【文献】特開2015-006905(JP,A)
【文献】特開2002-211587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0083161(US,A1)
【文献】再公表特許第2003/099678(JP,A1)
【文献】特開2006-44714(JP,A)
【文献】特開昭62-52051(JP,A)
【文献】特表2016-534949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00
B65D 75/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、シーラント層とを備える積層体によって構成される自立性包装袋であって、
内容物が収容される胴部と、
底部と、
を備え、
前記底部は、
前記積層体を折り曲げることによって形成された一対の谷折り部と、
前記一対の谷折り部の間に形成された一本の山折り部と、
前記谷折り部と前記山折り部との間の領域を前記底部の横方向にヒートシールすることによって形成された空気封入部と、
を有し、
前記空気封入部は、前記ヒートシールによって形成されたヒートシール部で構成された上端と、前記谷折り部で構成された下端とを有するとともに、前記上端から前記下端の方向に向かうにしたがって前記積層体の内面同士の間隔が広くなる部分を有し、
前記谷折り部が当該自立性包装袋の下端をなしている、自立性包装袋。
【請求項2】
前記空気封入部の高さが5~30mmである、請求項1に記載の自立性包装袋。
【請求項3】
前記谷折り部と前記山折り部との間の領域であり且つ前記積層体の側部に設けられた少なくとも一対の切り欠き部又はくり抜き穴を有し、
前記一対の切り欠き部又はくり抜き穴を通じて前記シーラント層同士が局所的に融着した融着部が設けられている、請求項1又は2に記載の自立性包装袋。
【請求項4】
下記式(1)で算出される前記融着部の面積率が30~70%である、請求項3に記載の自立性包装袋。
面積率(%)=(前記融着部の面積)/(L×10)×100
[式(1)中、Lは前記谷折り部から前記山折り部までの距離(単位:mm)を示す。]
【請求項5】
前記融着部の形状が半円状である、請求項3又は4に記載の自立性包装袋。
【請求項6】
前記基材層が第一のポリエステル樹脂からなり、前記シーラント層が第二のポリエステル樹脂からなり、
前記第二のポリエステル樹脂の融点が前記第一のポリエステル樹脂の融点よりも低い、請求項1~5のいずれか一項に記載の自立性包装袋。
【請求項7】
前記基材層が第一のポリオレフィン樹脂からなり、前記シーラント層が第二のポリオレフィン樹脂からなり、
前記第二のポリオレフィン樹脂の融点が前記第一のポリオレフィン樹脂の融点よりも低い、請求項1~5のいずれか一項に記載の自立性包装袋。
【請求項8】
前記積層体がガスバリア層を更に備える、請求項1~のいずれか一項に記載の自立性包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自立性包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋は、包装する内容物の性質、内容物の量、内容物の変質を保護するための後処理、包装体(包装袋に内容物が収容されたもの)を運搬する形態、包装体を開封する方法、廃棄する方法などによって、さまざまな素材が組み合わせて用いられている。
【0003】
スタンディングパウチなどの自立性包装袋は、店頭の商品棚で商品を目立たせることが可能で、採用の範囲が広がっている。パウチが途中で折れ曲がることなく、全面が見えるようにするためには、パウチを構成する積層体がある程度の剛性を有している必要がある。また、パウチの内容物が液体であれば、落下の衝撃で破袋して液体が漏洩しない強度が求められる。これらの機能に対応するため、ポリエステルフィルムやナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルムなどを組み合わせた積層体が用いられてきた(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-237281号公報
【文献】特開平7-241967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の環境問題への意識の高まりから、包装袋の分野においても省資源又は再利用が求められている。例えば、省資源の観点から、一つの詰め替えパウチに複数回分の詰め替え量が充填される傾向にある。しかし、内容物の容量が多くなれば、落下時の衝撃が大きくなるため、落下によって内容物が漏洩するリスクが高まる。耐衝撃性を向上させる手段として、パウチを構成するフィルム(例えば、シーラントフィルム)を厚くすることが考えられる。しかし、この手段はプラスチックの使用量削減に逆行するものである。
【0006】
再利用の観点から、包材を構成する積層体を同系統の材料で構成して、包材を一体の素材として再利用する技術も検討されている。これは包材のモノマテリアル化と称される。従来の包材は、上述のとおり、様々な異種材料を組み合わせることにより耐衝撃性をはじめとする要求物性を向上させてきた。しかし、包材を同系統の材料で構成する場合、十分な落下耐性を確保しにくいという課題がある。
【0007】
本開示は、優れた落下耐性を有する自立性包装袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る自立性包装袋は、基材層と、シーラント層とを備える積層体によって構成されるものあり、内容物が収容される胴部と、底部とを備える。上記底部は、上記積層体を折り曲げることによって形成された一対の谷折り部と、一対の谷折り部の間に形成された一本の山折り部と、谷折り部と山折り部との間の領域を底部の横方向にヒートシールすることによって形成された空気封入部とを有する。
【0009】
上記自立性包装袋は、上述のとおり、底部に空気封入部を有するため、優れた落下耐性を有する。空気封入部の高さは、内容物の種類及び内容量に応じて設定すればよく、例えば、5~30mmである。
【0010】
上記自立性包装袋は、谷折り部と山折り部との間の領域であり且つ積層体の側部に設けられた少なくとも一対の切り欠き部又はくり抜き穴を有し、一対の切り欠き部又は一対のくり抜き穴を通じてシーラント層同士が局所的に融着した融着部が設けられていてもよい。融着部の形状は、例えば、半円状である。かかる構成により、包装袋の自立性及び落下耐性をより一層向上させることができる。優れた落下耐性の観点から、融着部の面積率は30~70%であることが好ましい。ここでいう面積率は下記式(1)によって算出される値を意味する。
面積率(%)=(融着部の面積)/(L×10)×100…(1)
[式(1)中、Lは前記谷折り部から前記山折り部までの距離(単位:mm)を示す。]
なお、対象の領域に複数の融着部がある場合、式(1)中の「融着部の面積」は「複数の融着部の面積の合計」である。
【0011】
本開示において、基材層及びシーラント層は同系の樹脂材料からなることが好ましい。これらの層が同系の樹脂材料であることで、上記自立性包装袋のモノマテリアル化を実現でき、樹脂材料のリサイクルの促進に寄与できる。上記積層体は、内容物の種類等に応じて、ガスバリア層を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、優れた落下耐性を有する自立性包装袋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本開示の一実施形態に係る自立性包装袋を模式的に示す正面図である。
図2図2図1に示す自立性包装袋の空気封入部を模式的に示す断面図である。
図3図3は積層体をW字状に折った状態を模式的に示す斜視図である。
図4図4は積層体の原反に複数の貫通孔を設けた状態を模式的に示す平面図である。
図5図5は比較例に係る自立性包装袋を模式的に示す正面図である。
図6図6図5に示す包装袋の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ここでは、モノマテリアル化が実現されたスタンディングパウチを例に挙げて説明する。スタンディングパウチは、シャンプー、ハンドソープ、洗剤などの詰め替えパウチや、スープ、調味料などのパウチとして使用されるものである。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<スタンディングパウチ>
図1は本実施形態に係るスタンディングパウチ(自立性包装袋)を模式的に示す正面図である。この図に示すスタンディングパウチ10は、内容物が収容される胴部10aと、底部10bとを備え、底部10bに空気封入部5,6が形成されている。図2はスタンディングパウチ10の空気封入部5,6を拡大して示す断面図である。空気封入部5,6がクッションの役割を果たすことで、落下の衝撃によってスタンディングパウチ10が破袋することを抑制できる。なお、本発明者らの検討によると、従来のスタンディングパウチは、液状物が収容された状態において、底部が下方の向きで落下することが多く、また、このような状態で落下したときに、底部が破袋しやすい。
【0016】
スタンディングパウチ10は、基材層1と、シーラント層2とを少なくとも備える積層体3をW字状に折り曲げる工程を経て製造されるものである。図3は積層体3をW字状に折った状態を模式的に示す斜視図である。図3に示されたように、基材層1が外側に、シーラント層2が内側に配置されるように、積層体3をW字状に折り曲げる。積層体3をW字状に折り曲げることで、積層体3は以下の四つの領域R1a,R1b,R2b,R2aに区分けされる。
・領域R1a:積層体3の端部から谷折り部V1までの領域
・領域R1b:谷折り部V1から山折り部M1までの領域
・領域R2b:山折り部M1から谷折り部V2までの領域
・領域R2a:谷折り部V2から積層体3の端部までの領域
【0017】
スタンディングパウチ10の側部は、ヒートシール部11で構成されている。図1に示すヒートシール部11の幅は、例えば、5~18mmであり、7~15mmであってもよい。ヒートシール部11の幅が5mm以上であることで十分なシール強度を達成できる傾向にあり、他方、18mm以下であることでスタンディングパウチ10の十分な内容量を確保しやすい傾向にある。
【0018】
底部10bは、積層体3をW字状に折り曲げることによって形成された一対の谷折り部V1,V2と、これらの間に形成された一本の山折り部M1とを有する。谷折り部V1又は谷折り部V2から山折り部M1までの距離L(図1参照)は、例えば、10~60mmであり、15~50mmであってもよい。距離Lが10mm以上であることで空気封入部5,6の高さを十分に確保しやすく、スタンディングパウチ10の落下耐性をより一層向上できる傾向にある。他方、距離Lが60mm以下であることでスタンディングパウチ10の十分な内容量を確保しやすい傾向にある。
【0019】
空気封入部5,6は、谷折り部V1と山折り部M1との間を底部10bの横方向の全体にわたってヒートシールすることによって形成される。すなわち、領域R1aのシーラント層2と領域R1bのシーラント層2が横方向にヒートシールされることで空気封入部5を構成するヒートシール部12が形成される。他方、領域R2aのシーラント層2と領域R2bのシーラント層2が横方向にヒートシールされることで空気封入部6を構成するヒートシール部12が形成される。ヒートシール部12の幅W(図1参照)は、例えば、5~15mmであり、7~12mmであってもよい。ヒートシール部12の幅が5mm以上であることで十分なシール強度を達成できる傾向にあり、他方、15mm以下であることでスタンディングパウチ10の内容量及び空気封入部5,6の高さの両方を十分に確保しやすい傾向にある。空気封入部5,6はヒートシール部12によって胴部10aと隔離されている。このため、仮に、谷折り部V1,V2が例えば摩擦によって破損しても、内容物が漏洩しないというメリットがある。
【0020】
ヒートシールによって空気封入部5,6を形成する際、空気封入部5,6となる部分にノズル等で空気を注入したり吹き付けしながら、ヒートシールをしてもよいが、空気の注入又は吹き付けを実施しなくてもよい。スタンディングパウチ10を構成する積層体3は、ある程度の剛性を有し且つ一旦折り曲げられても復元力があるため、空気の注入又は吹き付けを実施しなくても、空気封入部5,6内に十分な量の空気が収容される。
【0021】
空気封入部5,6の高さH(図1参照)は、例えば、5~30mmであり、8~25mmであってもよい。高さHが5mm以上であることでスタンディングパウチ10の落下耐性をより一層向上できる傾向にあり、他方、30mm以下であることでスタンディングパウチ10の十分な内容量を確保しやすい傾向にある。
【0022】
図1に示されたとおり、スタンディングパウチ10は、底部10bの両サイドに融着部9をそれぞれ有する。本実施形態においては、スタンディングパウチ10の一方のサイドに二つの融着部9が上下に並んで形成され、他方、他方のサイドにも二つの融着部9が上下に並んで形成されている。スタンディングパウチ10の融着部9は積層体3の領域R1aと領域R2aとを接合している。融着部9は、領域R1b,R2bに設けられた切り欠き部8a,8bを通じて領域R1a,R2aのシーラント層2同士が局所的に融着している箇所である。図3に示されたように、切り欠き部8a,8bは、領域R1b,R2bの側部に設けられている。底部10bの両サイドに融着部9が設けられていることで、スタンディングパウチ10の自立性及び落下耐性をより一層向上させることができる。スタンディングパウチ10の優れた落下耐性の観点から、融着部9の面積率は、好ましくは30~70%であり、より好ましくは32~50%である。この面積率は下記式(1)によって算出される値である。
面積率(%)=(融着部9の面積)/(L×10)×100…(1)
式(1)中、Lは谷折り部V1から山折り部M1までの距離(単位:mm)を示す。式(1)の分母における「10」は底部10bの側部において融着部9が形成される領域の幅を想定したものである。
【0023】
<積層体>
本実施形態においては、モノマテリアル化の観点から、基材層1及びシーラント層2はいずれもポリエステル樹脂で構成されている。本実施形態に係る積層体3におけるポリエステルの含有量は90質量%以上であることが好ましい。モノマテリアル化をより高度に達成する観点から、積層体3におけるポリエステルの含有量は、92質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。以下、積層体3の構成について説明する。
【0024】
[基材層]
基材層1は、支持体となるフィルム(ベースフィルム)である。基材層1の厚さは、例えば、5μm~1mm以下とすることができ、5~800μmであってよく、5~500μmであってよい。基材層1として、例えば、結晶性ポリエステルを使用でき、その具体例として、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0025】
基材層1は再生ポリエステルを含んでもよい。再生ポリエステルとしてはエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる容器をケミカルリサイクルしてなるケミカルリサイクルポリエステル、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる容器をメカニカルリサイクルしてなるメカニカルリサイクルポリエステル等を挙げることができる。
【0026】
[シーラント層]
シーラント層2は、積層体3においてヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層2の厚さは、優れたシールド強度の観点から、例えば、15μm以上であり、15~100μm又は20~60μmであってよい。
【0027】
本実施形態におけるシーラント層2は、基材層1よりも融点の低い、又は融点を示さないポリエステルフィルムで構成されている。シーラント層2の融点は、例えば、200℃以下であり、130~150℃であってもよい。融点を示さない非晶性ポリエステルフィルムは、ガラス転移温度以上に加熱された際、充分な流動性を有するため、低温で融着することが可能である。なお、ポリエステルフィルムの結晶性は、共重合に供するモノマーの種類を変えることで調整することができる。また、ポリエステルフィルムを成膜する際の冷却速度を変えることで、結晶化の進行の程度を調整し、結晶性を調整することができる。成膜したポリエステルフィルムに熱処理を施すことによっても、結晶性を調整してもよい。
【0028】
スタンディングパウチ10のシーラント層2としての機能を充分に発現する観点から、ポリエステルとして、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。シーラント層2は基材層1と同様、再生ポリエステルを含んでもよい。シーラント層2は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加材を含んでもよい。シーラント層L2の形成方法として、例えば、キャスト法及びインフレ法が挙げられる。
【0029】
積層体3は、例えば、水蒸気や酸素に対するガスバリア性向上の観点から、ガスバリア層を更に含んでもよい。ガスバリア層は、基材層1とシーラント層2との間に設けられてもよく、基材層1のシーラント層2とは反対側の面に設けられてもよい。積層体3の水蒸気透過量は、例えば、5g/m・dayであり、1g/m・day以下又は0.5g/m・day以下であってもよい。積層体3の酸素透過量は、例えば、1cc/m・atm・dayであり、0.5g/m・atm・day以下又は0.2g/m・atm・day以下であってもよい。積層体3がガスバリア層を含むことで、内容物を水蒸気や酸素による劣化から保護し、長期的に品質を保持しやすくなる。
【0030】
ガスバリア層の一例として、無機酸化物の蒸着層が挙げられる。無機酸化物の蒸着層を用いることにより、積層体3のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。無機酸化物の蒸着層の厚さは、例えば5nm以上100nm以下とすることができ、10nm以上50nm以下であってよい。厚さが5nm以上であることでバリア性が良好に発揮されやすく、厚さが100nm以下であることで、積層体3の可撓性が維持されやすい。蒸着層は、例えば物理気相成長法、化学気相成長法等によって形成することができる。
【0031】
積層体3は、無機酸化物の蒸着層に代えて、あるいは加えて、金属層(金属箔)を含んでもよい。金属層としては、アルミニウム、ステンレス鋼等からなる各種金属箔を使用することができ、これらのうち、防湿性、延展性等の加工性、コスト等の面から、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔としては、一般の軟質アルミニウム箔を用いることができる。なかでも、耐ピンホール性及び成型時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。金属層を設ける場合、その厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性等の点から、7~50μmであってよく、9~15μmであってよい。
【0032】
積層体3は、基材層1とシーラント層2との間にアンカーコート層を備えていてもよい。アンカーコート層は、積層体3のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層でよく、アンカーコート剤を用いて形成することができる。アンカーコート剤としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。アンカーコート剤としては、耐熱性及び層間接着強度の観点から、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0033】
積層体3は、例えば、印刷層を更に含んでもよい。印刷層は、基材層1とシーラント層2との間に設けられてもよく、基材層1のシーラント層2とは反対側の面に設けられてもよい。印刷層を設ける場合、印刷インキには塩素を含まないものを用いることが、印刷層が再溶融時に着色したり、臭いが発生したりすることを防ぐ観点から好ましい。また、印刷インキに含まれる化合物にはバイオマス材料を使用することが、環境配慮の観点から好ましい。
【0034】
<スタンディングパウチの製造方法>
スタンディングパウチ10は以下の工程を経て製造される。
(A)積層体3の原反20に、後に切り欠き部8a,8bとなる複数の貫通孔20aを形成する工程(図4参照)。
(B)原反20をW字状に折り曲げる工程。
(C)W字状の原反20にヒートシール部11を形成する工程。
(D)原反20にヒートシール部12を形成して空気封入部を形成する工程。
(E)原反20を所定の長さに切断することによって複数のスタンディングパウチ10を得る工程。
【0035】
この方法によれば、スタンディングパウチ10を効率的に製造することができる。スタンディングパウチ10の空気封入部5がクッションの役割を果たすため、モノマテリアル化の観点から使用できる材料に制約があるにもかかわらず、優れた落下耐性を実現できる。このため、内容物が液状であって内容量が、例えば、200mL以上の大容量であっても、落下による破袋のリスクを十分に低減できる。
【0036】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、スタンディングパウチ10の一つのサイドの二対の切り欠き部8a,8bを設け、二つの融着部9を形成した場合を例示したが、例えば、一対の切り欠き部を設け、一つの融着部9を形成してもよい。また、切り欠き部の代わりにくり抜き穴を設けることによって融着部を形成してもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、ポリエステル樹脂でモノマテリアルを実現する場合を例示したが、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂)でモノマテリアルを実現してもよい。モノマテリアル化を高度に実現する観点から、スタンディングパウチにおける特定の材料(例えば、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂)の含有量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは92質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。他方、スタンディングパウチがモノマテリアルであることが求められていない場合には、従来のように、ポリエステルフィルムやナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルムなどを組み合わせた積層体を使用し、本開示に係る自立性包装袋を構成してもよい。
【実施例
【0038】
以下、本開示について実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
基材層として、二軸延伸PETフィルム(PETフィルム、厚さ:12μm)及び延伸ナイロンフィルム(ONYフィルム、厚さ:15μm)を使用した。シーラント層として、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム、厚さ:50μm)を使用した。PETフィルム、ONYフィルム及びLLDPEフィルムをこの順序にドライラミネート法によって積層した。ドライラミネートの接着剤として、ウレタン樹脂系接着剤を使用した。この接着剤の塗布量は3g/m(厚さ3μm)となるように調整した。得られた積層体の両サイドに複数の切り欠きを設けた。
【0040】
上記積層体をW字状に折り込んだ後、両サイドと底部をヒートシールすることによって図1に示す態様の包装袋を得た。包装袋のサイズは以下のとおりとした。
・包装袋の幅:130mm
・包装袋の高さ:250mm
・谷折り部から山折り部までの距離L:50mm
・包装袋の両サイドの縦ヒートシール部の幅:10mm
・空気封入部を形成するための横ヒートシール部の幅:10mm
・空気封入部の高さH:15mm
・融着部:φ15mmの半円(2つ)
【0041】
<実施例2>
基材層として、未延伸高密度ポリエチレンフィルム(HDPEフィルム、厚さ:32μm)を使用した。シーラント層として、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム、厚さ:50μm)を使用したことの他は、実施例1と同様にして包装袋を得た。
【0042】
<実施例3>
基材層として、延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム、厚さ:20μm)を使用した。シーラント層として、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム、厚さ50μm)を使用したことの他は、実施例1と同様にして包装袋を得た。
【0043】
<実施例4>
基材層として、二軸延伸PETフィルム(厚さ:25μm)及び二軸延伸PETフィルム(厚さ:12μm)を使用した。シーラント層として、非晶性PETシーラントフィルム(厚さ50μm)を使用したことの他は、実施例1と同様にして包装袋を得た。
【0044】
<実施例5>
包装袋の両サイドに切り欠き部による融着部を2つずつ設ける代わりに、1つずつ設けたことの他は、実施例4と同様にして包装袋を得た。
【0045】
<実施例6>
切り欠き部を直径15mmの半円とする代わりに、直径20mmの半円としたことの他は、実施例4と同様にして包装袋を得た。
【0046】
<実施例7>
実施例4における二軸延伸PETフィルム(厚さ:12μm)の片面にシリカ蒸着膜を設けてバリアフィルムとしたことの他は、実施例4と同様にして包装袋を得た。
【0047】
<実施例8>
空気封入部の高さHを15mmとする代わりに、3mmとしたことの他は、実施例7と同様にして包装袋を得た。
【0048】
<実施例9>
空気封入部の高さHを15mmとする代わりに、30mmとしたことの他は、実施例7と同様にして包装袋を得た。
【0049】
<比較例1>
実施例1と同様の構成の積層体を使用して図5及び図6に示す構成の包装袋を得た。すなわち、表面用の積層体3aと裏面用の積層体3bのシーラント層同士を対面させ、これらの間に二つ折りにした状態の底部用の積層体3cを配置した。底部用の積層体3cはシーラント層が外側になるように折った。それぞれ対面するシーラント層同士をヒートシールすることによって比較例1に係る包装袋を得た。包装袋のサイズは以下のとおりとした。
・包装袋の幅:130mm
・包装袋の高さ:250mm
・包装袋の底辺から底部用の積層体3cの折り目までの距離L1:40mm
・包装袋の両サイドの縦ヒートシール部の幅:10mm
・包装袋の底部のシール形状:半径60mmの曲線
・融着部:φ15mmの半円(2つ)
なお、図5に示す距離L1は積層体3aと積層体3bの内面同士(シーラント層同士)が接した状態での距離である。
【0050】
<比較例2>
実施例2と同様の構成の積層体を使用したことの他は、比較例1と同様にして包装袋を得た。
【0051】
<比較例3>
実施例3と同様の構成の積層体を使用したことの他は、比較例1と同様にして包装袋を得た。
【0052】
<比較例4>
実施例4と同様の構成の積層体を使用したことの他は、比較例1と同様にして包装袋を得た。
【0053】
<比較例5>
実施例7と同様の構成の積層体を使用したことの他は、比較例1と同様にして包装袋を得た。
【0054】
[落下試験]
包装袋に内容物として水を50ml、100ml、200ml、300ml、400ml又は500ml入れ、包装袋の上部をヒートシールすることによって包装体を得た。これらの包装体を5℃に環境下で24時間保管した。その後、包装袋の底部が下になるように高さ1mの位置から垂直落下させ、破袋するまでの落下回数を数えた。20個の試料について同一条件で試験を実施し、以下の基準に従って評価した。表1~3に結果を示した。
A:20回落下時点で破袋しなかった試料が90%以上
B:20回落下時点で破袋しなかった試料が50%以上90%未満
C:20回落下時点で破袋しなかった試料が50%未満
【0055】
[酸素・水蒸気バリア性の評価]
積層体の酸素透過量及び水蒸気透過量をJIS K7126Bに記載の方法に準拠して測定した。表1~3に結果を示した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
実施例及び比較例の評価結果から、積層体の構成が同じであっても、包装袋の底部に空気封入部を設けることで、落下耐性が大幅に向上した。単一材料からなる構成(実施例4~9)であっても、十分な落下耐性が得られ、内容物の保存性とリサイクル性を兼ね備えた包装袋を提供することが可能である。なお、表1~3において、実施例における融着部の面積率は上記式(1)によって算出される値であり、比較例における融着部の面積率は下記式(2)によって算出される値である。
面積率(%)=(融着部の面積の合計)/(L1×10)×100…(2)
[式(2)中、L1は包装袋の底辺から底部用の積層体の折り目までの距離(単位:mm)を示す。]
【符号の説明】
【0060】
1…基材層、2…シーラント層、3…積層体、5…空気封入部、8a,8b…切り欠き部、9…融着部、10a…胴部、10b…底部、10…スタンディングパウチ(自立性包装袋)、11,12…ヒートシール部、M1…山折り部、V1,V2…谷折り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6