(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】インクジェット印刷用チタン紙及び化粧板
(51)【国際特許分類】
B41M 5/52 20060101AFI20250121BHJP
B41M 5/50 20060101ALI20250121BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250121BHJP
D21H 17/67 20060101ALI20250121BHJP
D21H 19/38 20060101ALI20250121BHJP
D21H 19/44 20060101ALI20250121BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20250121BHJP
D21H 19/72 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B41M5/52 110
B41M5/50 120
B32B27/00 E
D21H17/67
D21H19/38
D21H19/44
D21H27/30 A
D21H19/72
(21)【出願番号】P 2020202869
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】村山 朝彦
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-239778(JP,A)
【文献】特開2015-202672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/52
B41M 5/50
B32B 27/00
D21H 17/67
D21H 19/38
D21H 19/44
D21H 27/30
D21H 19/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン紙の表面にインク受理層が形成されたインクジェット印刷用チタン紙であって、
前記インク受理層は、尿素系樹脂および無機金属を含有し、
前記インク受理層における前記無機金属の含有量は、当該インク受理層の全質量に対して10質量%以上であり、
前記無機金属は、
炭酸カルシウムであって、体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径が
3μm以上5μm以下であり、
前記インク受理層の乾燥固形分が1g/m
2以上である
インクジェット印刷用チタン紙。
【請求項2】
前記インク受理層は、当該インク受理層の全質量に対して前記尿素系樹脂を5質量%以上90質量%以下の範囲内で含有する
請求項1記載のインクジェット印刷用チタン紙。
【請求項3】
前記インク受理層は、当該インク受理層の全質量に対して前記無機金属を10質量%以上90質量%以下の範囲内で含有する
請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用チタン紙。
【請求項4】
前記インク受理層は、乾燥固形分が1g/m
2以上20g/m
2以下の範囲内である
請求項1から
3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用チタン紙。
【請求項5】
化粧板用基材と、
前記化粧板用基材に貼り合わされた請求項1から
4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用チタン紙と、を備える化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェット印刷用チタン紙及び化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物が用いられる分野のひとつに、建具用途がある。建具用の化粧板に用いられる合板やパーティクルボード等の基材の色は、種々ばらついていたり、暗褐色に近いものがあったりする。このため、木目柄、抽象柄等の絵柄の印刷を施して意匠性を付与した化粧紙を基材に貼り付けて、化粧板表面を安定した美しい色に保持する必要がある。化粧紙としては、隠蔽性に優れたチタン紙と称される原紙が使用されていることが知られている。
【0003】
従来、インクジェット印刷用チタン紙としては、例えば、パルプにチタンホワイトを抄き込んだ原紙が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。このようなインクジェット印刷用チタン紙は、例えば、原紙の一方の面に、インクジェット印刷によって絵柄が形成され意匠性が付与される。また、原紙の他方の面には、パーティクルボードや合板等の基材が貼り付けられ、さらに、メラミン樹脂やポリエステル樹脂、ダップ樹脂等の熱硬化性樹脂が塗布・含浸されて硬化され、化粧板の表面化粧材として使用される。これにより、基材の色にばらつきや暗褐色があっても、基材の色を隠蔽でき、化粧板の表面を安定した美しい色に保持することができる。
また、特許文献1~3には、インクジェット印刷適性を向上するために、化粧板の原紙の表面にインク受理層を設けることが提案されている。また熱硬化性樹脂の含浸性を向上するために、インク受理層に炭酸カルシウムを含有させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭54-5434号公報
【文献】特開2001-71447号公報
【文献】特表2010-531251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、インクジェット印刷適正と熱硬化性樹脂の含浸性とを両立することは困難であった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、インクジェット印刷適正および熱硬化性樹脂の含浸性に優れたインクジェット印刷用チタン紙及び化粧板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るインクジェット印刷用チタン紙は、チタン紙の表面にインク受理層が形成されたインクジェット印刷用チタン紙であって、前記インク受理層は、尿素系樹脂および無機金属を含有し、前記インク受理層における前記無機金属の含有量は、当該インク受理層の全質量に対して10質量%以上であり、前記無機金属は、炭酸カルシウムであって、体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径が3μm以上5μm以下であり、前記インク受理層の乾燥固形分が1g/m2以上である。
【0007】
また、本発明の他の態様に係る化粧板は、化粧板用基材と、前記化粧板用基材に貼り合わされた前記インクジェット印刷用チタン紙と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、インクジェット印刷適正および熱硬化性樹脂の含浸性に優れたインクジェット印刷用チタン紙及び化粧板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るインクジェット印刷用チタン紙の一構成例を示す断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る化粧板の一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
【0011】
本発明の第一実施形態に係るインクジェット印刷用チタン紙について説明する。本発明に係るインクジェット印刷用チタン紙は、例えば、建具等に施工される化粧板に用いることが好ましいインクジェット印刷用チタン紙である。なお、以下の説明では、インクジェット印刷用チタン紙の貼り付け面に接触する側を「下」、インクジェット印刷用チタン紙の貼り付け面に接触する側と反対側(表面)を「上」として説明する場合がある。
以下、図面を参照して本発明の各実施形態の各態様について説明する。
【0012】
1.第一実施形態
(インクジェット印刷用チタン紙10の基本構成)
図1に示すように、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」という)のインクジェット印刷用チタン紙10は、チタン紙1の一方の面に、インク受理層2が形成されて構成される。インクジェット印刷用チタン紙10は、インク受理層2の表面にインクジェット印刷で絵柄模様層(不図示)を形成して、化粧紙を形成してもよい。
【0013】
(チタン紙1)
チタン紙1は、パルプにチタンホワイトを抄き込んだ原紙である。チタン紙1は、例えばカレンダー処理された坪量60g/m2以上110g/m2未満の印刷用原紙に、酸化チタンを含む紙料を、長網抄紙機で抄造して得られる。灰分は、20質量%以上40質量%未満の範囲内とする。
【0014】
(インク受理層2)
インク受理層2は、インクジェット印刷で塗布される水性インクジェットインキを滲みなく定着させるための層である。インク受理層2は、チタン紙1の表面に、インク受理層2用の塗工液を塗工することによって設けることができる。塗工装置としては、例えば、グラビアコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーターを使用できる。塗工液の塗工量としては、例えば、乾燥固形分で1g/m2以上とする。
【0015】
つまり、本実施形態に係るインクジェット印刷用チタン紙10において、インク受理層2は、乾燥固形分が1g/m2以上であると好ましい。インク受理層2の乾燥固形分を1g/m2未満とした場合には、水性インクジェットインキの発色が低下し、インクジェット印刷適性が低下し得る。また、塗工液の塗工量の上限は乾燥固形分で20g/m2とする。つまり、インク受理層2の乾燥固形分は、1g/m2以上20g/m2以下の範囲内であることがより好ましい。
【0016】
また、インク受理層2は、例えばバインダー樹脂と、無機金属と、添加剤とを含んで構成される。本実施形態において、バインダー樹脂としては、例えば尿素系樹脂を使用することができる。つまり、本実施形態に係るインクジェット印刷用チタン紙10においてインク受理層2は、尿素系樹脂を含んでいる。
【0017】
インク受理層2における尿素系樹脂の含有量は、インク受理層2の全質量に対して、乾燥固形分率で、5質量%以上90質量%以下の範囲内が好ましい。インク受理層2における尿素系樹脂の含有量が5質量%未満である場合には、熱硬化性樹脂の含浸性が悪くなる場合がある。このため、例えばインクジェット印刷用チタン紙10を用いて化粧板を形成する際において、加熱加圧プレスによる熱硬化性樹脂の含浸時に膨れ(ブリスター)が生じやすい。
一方、インク受理層2における尿素系樹脂の含有量が90質量%より大きい場合には、インク受理層2の尿素系樹脂の含有量が多いため、インク受理層2とチタン紙1との密着性が低減し得る。尿素系樹脂の含有量が5質量%以上90質量%以下の範囲内であることにより、樹脂含浸性が良好となりブリスターの発生を抑制することができる。
【0018】
また、インク受理層2における無機金属の含有量は、インク受理層2の全質量に対して、乾燥固形分率で、10質量%以上が好ましい。10質量%未満である場合には、インク受理層2の無機金属の含有量が少ないため、印刷画像の反射濃度が低くなる。
一方、インク受理層2における無機金属の含有量が90質量%より大きい場合には、インク受理層2の無機金属の含有量が多いため、インク受理層2用の塗工液を塗工しづらく、インク受理層2の形成が困難になり得る。つまり、インク受理層2は、インク受理層2の全質量に対して無機金属を10質量%以上90質量%以下の範囲内で含有することがより好ましい。
【0019】
さらに、無機金属は、体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径が5μm以下であると好ましい。無機金属の平均粒径が5μmを超えると、インク受理層2の表面が粗くなり平滑性が低下し得る。このため印刷された絵柄パターンの精細性が劣化する場合があり、インクジェット印刷適性が低下し得る。
一方、無機金属の平均粒径は、粒子の大きさは0.1μm以上とすることが、製造上、取扱上および化学的安定性の観点から好ましい。したがって、無機金属の平均粒径は、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0020】
本実施形態に係るインクジェット印刷用チタン紙10において、インク受理層2に添加する無機金属としては、チタニア、シリカ、カルシウム、アルミナ、ジルコニア、クロム、ニッケルなどを用いることができる。インク受理層2には、これらの無機金属の化合物が用いられてもよい。また、インク受理層2には、これらの無機金属が単体で用いられてもよいし、混合体で用いられてもよい。
また、インク受理層2において、添加剤としては、例えば、カチオン性インキセット剤を使用できる。さらに、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、耐水化剤等を添加してもよい。
【0021】
(絵柄模様層)
上述のように、本実施形態のインクジェット印刷用チタン紙10には絵柄模様層を設けてもよい。絵柄模様層は、水性インクジェットインキによって意匠性を付与するための絵柄が印刷された層である。絵柄模様層は、インク受理層2の表面に、インクジェット印刷で絵柄を印刷することによって設けることができる。絵柄としては、例えば、木目、コルク、抽象柄等、インクジェット印刷用チタン紙10を用いる箇所に適した絵柄を選択できる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態に係るインクジェット印刷用チタン紙10は、チタン紙1の表面にインク受理層2が形成されたインクジェット印刷用チタン紙であって、インク受理層2は、尿素系樹脂および無機金属を含有し、インク受理層2における無機金属の含有量は、インク受理層2の全質量に対して10質量%以上であり、無機金属は、体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径が5μm以下であり、インク受理層2の乾燥固形分が1g/m2以上である。
このような構成によれば、インクジェット印刷適性および樹脂含浸性に優れたインクジェット印刷用チタン紙を提供することができる。
【0023】
2.第二実施形態
本開示の第二実施形態に係る化粧板について、
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の第二実施形態に係る化粧板11の一構成例を説明するための断面図である。
(化粧板)
図2に示すように、化粧板11は、化粧板用基材である基材3と、基材3に貼り合わされたインクジェット印刷用チタン紙10と、を備える。具体的には、化粧板11は、チタン紙1の一方の面側にインク受理層2を設けたインクジェット印刷用チタン紙10を用いており、チタン紙1の他方の面側が基材3と貼り合わされている。
すなわち、化粧板11は、基材3を備える点で、第一実施形態に係るインクジェット印刷用チタン紙10と相違する。なお、インクジェット印刷用チタン紙10については、上記第一実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0024】
基材3としては、例えば建具用基材が想定され、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。
【0025】
図2に示す例では、チタン紙1の他方の面に、基材3が貼り付けられ、さらに、インク受理層2に熱硬化性樹脂が塗布・含浸されて硬化され、化粧板11を形成する。化粧板11としては、例えば、高圧メラミン化粧板、低圧メラミン化粧板、ポリエステル化粧板、ダップ化粧板がある。基材3とインクジェット印刷用チタン紙10とを一体化する方法としては、例えば、加熱加圧プレス機によって、加熱加圧プレス(加熱加圧成型)する方法を用いることができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係る化粧板11は、化粧板用基材である基材3と、基材3に貼り合わされたインクジェット印刷用チタン紙10と、を備える。
このような構成によれば、インクジェット印刷適性および樹脂含浸性に優れた化粧板を提供することができる。
【実施例1】
【0027】
以下、本開示に係るインクジェット印刷用チタン紙について、実施例を挙げて説明する。
実施例では、以下の各実施例及び各比較例で説明する構成のインクジェット印刷用チタン紙を作製し、作製したインクジェット印刷用チタン紙の表面に水性インキジェット印刷機で絵柄パターンを印刷した印刷物の評価を行った。
【0028】
<実施例1>
チタン紙1として坪量80g/m2の印刷用白色原紙((株)興人製:「KSH-801P)」を用いた。チタン紙1の一方の面に無機金属である炭酸カルシウムと、尿素系樹脂とを含むインク受理層2用の塗工液を塗布して、インク受理層2を形成した。塗工液は、インク受理層2の全質量に対して、乾燥固形分率で無機金属が55質量%、尿素系樹脂が45質量%となるようにした。無機金属は、体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径を5μmとした。また、塗工液の塗工量は、乾燥固形分が2g/m2となるようにした。無機金属としては、白石カルシウム株式会社製、Brilliant-1500を用いた。塗工液の塗工には、グラビア印刷機を使用した。続いて、200℃オーブンで塗工液を乾燥させ、チタン紙1の一方の面に、インク受理層2を形成した。
すなわち、インク受理層2が、尿素系樹脂および無機金属を含有し、インク受理層2の全質量に対して、体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径が5μm以下の無機金属を10質量%以上含むようにするとともに、乾燥固形分が1g/m2以上となるようにした。これにより、実施例1のインクジェット用チタン紙を得た。さらに、実施例1のインクジェット印刷用チタン紙のインク受理層2側の表面に水性インキジェット印刷機で絵柄パターンを印刷して実施例1の印刷物を得た。
<実施例2>
無機金属の体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径を0.1μmとした。それ以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用チタン紙および印刷物を作製した。
<実施例3>
インク受理層2における無機金属の含有量を10質量%とし、無機金属の体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径を3μmとした。それ以外は、実施例2同様にしてインクジェット印刷用チタン紙および印刷物を作製した。
<実施例4>
インク受理層2における尿素系樹脂の含有量を10質量%とし、無機金属の含有量を90質量%とした。それ以外は、実施例3と同様にしてインクジェット印刷用チタン紙および印刷物を作製した。
<実施例5>
インク受理層2における尿素系樹脂の含有量を5質量%とし、無機金属の含有量を55質量%とした。それ以外は、実施例3と同様にしてインクジェット印刷用チタン紙および印刷物を作製した。
<実施例6>
インク受理層2における尿素系樹脂の含有量を90質量%とした。それ以外は、実施例3と同様にしてインクジェット印刷用チタン紙および印刷物を作製した。
<実施例7>
無機金属の体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径を3μmとし、インク受理層2の乾燥固形分を1g/m2とした。それ以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用チタン紙および印刷物を作製した。
<実施例8>
無機金属の体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径を3μmとし、インク受理層2の乾燥固形分を20g/m2とした。それ以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用チタン紙および印刷物を作製した。
【0029】
<比較例1>
インク受理層を塗工しない以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット印刷用チタン紙を得た。さらに、比較例1のインクジェット印刷用チタン紙のチタン紙1の表面に水性インキジェット印刷機で絵柄パターンを印刷して比較例1の印刷物を得た。
<比較例2>
インク受理層2の塗工液において尿素系樹脂を用いずに、アクリル樹脂を用いた。インク受理層2においてアクリル樹脂の含有量を60質量%とし、無機金属の含有量を9質量%とし、無機金属の体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径を6μmとし、インク受理層2の乾燥固形分を0.5g/m2とした。それ以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用チタン紙および印刷物を作製した。
【0030】
<評価判定>
上述した実施例1~8、比較例1および2で得られた印刷物について、以下の方法で評価を行った。
【0031】
<評価>
〔印刷適正〕
(印刷濃度試験)
実施例1~8、比較例1および2の各印刷物において、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の重ね刷り印刷を行い、重ね刷り印刷部の印刷濃度を比較した。具体的には、各印刷物の重ね刷り印刷部の反射濃度を、分光測色計(エックスライト社製「eXact」)を用いて測定した。測定した反射濃度を以下の〇、△、×の3段階で評価した。
<評価基準>
○:反射濃度が1.6以上
△:反射濃度が1.2以上かつ1.6未満
×:反射濃度が1.2未満
【0032】
(細線表現試験)
実施例1~8、比較例1および2の各印刷物において印刷された絵柄パターンの精細性を目視で確認し、以下の基準により〇、△、×の3段階で官能評価した。
<評価基準>
〇:既存の一般的なインク受理層を持つ印刷物との精細性の差異が認められない
△:既存の一般的なインク受理層を持つ印刷物と比べて、精細性がわずかに劣る
×:インク受理層を持たない印刷物と同等レベルに精細性が劣る
【0033】
〔樹脂含浸性〕
(含浸スピード試験)
実施例1~8、比較例1および2の各印刷物を直径50mmの円形にカットし、100℃のオーブンにて3時間乾燥後、50w%ニカレジン水溶液に試験体の印刷面が下向きとなるように水平に投入し、試験体が液面に接してから試験体の含浸率が90%に達するまでの含浸時間を計測した(N=5)。計測した含浸時間を以下の〇、△、×の3段階で評価した。
<評価基準>
基準含浸時間=インク受理層を設けていないチタン紙の含浸時間
〇:計測した含浸時間≦基準含浸時間の5%増し
△:基準含浸時間の5%増し<計測した含浸時間≦基準含浸時間の20%増し
×:計測した含浸時間>基準含浸時間の20%増し
【0034】
以上の評価結果をインク受理層2の組成と合わせて、表1に示す。なお、以上の評価結果において、「〇」を合格とし、「△」および「×」を不合格とする。
【0035】
【0036】
表1中に表されるように、実施例1から8のように、インク受理層2が、尿素系樹脂および無機金属を含有し、インク受理層2の全質量に対して、体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径が5μm以下の無機金属を10質量%以上含むようにし、且つインク受理層2の乾燥固形分が1g/m2以上となるようにした場合には、印刷適正および樹脂含浸性の評価がすべて「〇」(合格)となった。つまり、実施例1から8のインクジェット印刷用チタン紙は、インクジェット印刷適正および熱硬化性樹脂の含浸性に優れていることが分かった。
【0037】
これに対し、インク受理層2が設けられていない比較例1のインクジェット印刷用チタン紙を用いた印刷物では、樹脂含浸性の評価は合格であるものの、印刷適正の評価においては、印刷濃度試験が「△」、細線表現試験が「×」となり、ともに不合格となった。また、インク受理層が尿素系樹脂を含まず、且つ印刷受理層における無機金属の含有量が10質量%未満であり、当該無機金属の体積基準粒子径の粒度分布における平均粒径が5μmより大きく、さらにインク受理層の乾燥固形分が1g/m2未満である比較例2のインクジェット印刷用チタン紙を用いた印刷物では、印刷適正の評価は合格であるものの、樹脂含浸性の評価が「△」となり、不合格であった。
【0038】
つまり、比較例1および2のインクジェット印刷用チタン紙は、優れたインクジェット印刷適正および優れた樹脂含浸性を両立することができなかった。
【0039】
なお、本発明のインクジェット印刷用チタン紙及び化粧板は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 チタン紙
2 インク受理層
3 基材
10 インクジェット印刷用チタン紙
11 化粧板