(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 89/00 20250101AFI20250121BHJP
H10D 10/80 20250101ALI20250121BHJP
H10D 88/00 20250101ALI20250121BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20250121BHJP
H03F 3/20 20060101ALN20250121BHJP
【FI】
H01L27/04 A
H01L29/72 H
H01L27/00 301A
H01L27/04 U
H04B1/38
H03F3/20
(21)【出願番号】P 2020210055
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】吉見 俊二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】深澤 美紀子
【審査官】石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0200189(US,A1)
【文献】特開2007-073812(JP,A)
【文献】特開2020-120185(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181590(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/331
H01L 21/822
H01L 27/00
H01L 27/04
H01L 29/737
H03F 3/20
H04B 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、相互に並列に接続されて第1増幅回路を構成する複数の第1トランジスタを含む第2部材と、
前記第2部材から、前記第1部材の側とは反対側に突出する導体突起と
を備え、
前記複数の第1トランジスタは、平面視において前記第1部材の複数の回路ブロックのいずれとも重ならない領域に配置されて
おり、かつ前記第1部材と重なっている半導体装置。
【請求項2】
前記第2部材は、平面視において、前記第1部材の複数の回路ブロックの少なくとも1つと重なっている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、相互に並列に接続されて第1増幅回路を構成する複数の第1トランジスタを含む第2部材と、
前記第2部材から、前記第1部材の側とは反対側に突出する導体突起と
を備え、
前記複数の第1トランジスタは、平面視において前記第1部材の複数の回路ブロックのいずれとも重ならない領域に配置されており、
前記第1部材の複数の回路ブロックのうち1つは、前記第1増幅回路から出力された高周波信号が入力される1つの入力接点に入力された高周波信号を複数の出力接点から選択した1つの出力接点に出力させるバンド選択スイッチを構成しており、
前記バンド選択スイッチを構成する回路ブロックは、平面視において前記第2部材の外側に配置されてい
る半導体装置。
【請求項4】
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、相互に並列に接続されて第1増幅回路を構成する複数の第1トランジスタを含む第2部材と、
前記第2部材から、前記第1部材の側とは反対側に突出する導体突起と
を備え、
前記複数の第1トランジスタは、平面視において前記第1部材の複数の回路ブロックのいずれとも重ならない領域に配置されており、
前記第1部材の複数の回路ブロックのうち1つは、複数の入力接点から選択した1つの入力接点に入力された高周波信号を、前記第1増幅回路に入力させる入力スイッチを構成しており、
前記入力スイッチを構成する回路ブロックは、平面視において前記第2部材の外側に配置されてい
る半導体装置。
【請求項5】
前記第2部材は、前記第1増幅回路の前段に接続された第2増幅回路を構成する少なくとも1つの第2トランジスタをさらに含み、
前記少なくとも1つの第2トランジスタは、平面視において前記第1部材の複数の回路ブロックのいずれとも重ならない領域に配置されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、相互に並列に接続されて第1増幅回路を構成する複数の第1トランジスタを含む第2部材と、
前記第2部材から、前記第1部材の側とは反対側に突出する導体突起と
を備え、
前記複数の第1トランジスタは、平面視において前記第1部材の複数の回路ブロックのいずれとも重ならない領域に配置されており、
前記第1部材の複数の回路ブロックのうち1つは、前記第1増幅回路の前段に接続された第2増幅回路を構成しており、
前記第2部材は、前記第1増幅回路にバイアス電流を供給するバイアス回路を含み、前記バイアス回路は、前記第1部材の複数の回路ブロックの少なくとも1つと重な
る半導体装置。
【請求項7】
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、相互に並列に接続されて第1増幅回路を構成する複数の第1トランジスタを含む第2部材と、
前記第2部材から、前記第1部材の側とは反対側に突出する導体突起と
を備え、
前記複数の第1トランジスタは、平面視において前記第1部材の複数の回路ブロックのいずれとも重ならない領域に配置されており、
前記第1部材の複数の回路ブロックのうち1つは、前記第1増幅回路にバイアス電流を供給するバイアス回路を構成してい
る半導体装置。
【請求項8】
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、相互に並列に接続されて第1増幅回路を構成する複数の第1トランジスタを含む第2部材と、
前記第2部材から、前記第1部材の側とは反対側に突出する導体突起と
を備え、
前記複数の第1トランジスタは、平面視において前記第1部材の複数の回路ブロックのいずれとも重ならない領域に配置されており、
前記第2部材は、平面視において前記第1部材の複数の回路ブロックのいずれとも重ならな
い半導体装置。
【請求項9】
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、相互に並列に接続されて第1増幅回路を構成する複数の第1トランジスタを含む第2部材と、
前記第2部材から、前記第1部材の側とは反対側に突出する導体突起と
を備え、
前記複数の第1トランジスタは、平面視において前記第1部材の複数の回路ブロックのいずれとも重ならない領域に配置されており、
前記第1部材は、半導体基板と、前記半導体基板の一方の表面の上に配置された多層配線構造とを含み、
前記第1面は、前記多層配線構造の側の面であり、
前記多層配線構造は、平面視において前記第2部材と重なり、前記複数の回路ブロックのいずれとも電気的に接続されていない金属パターンを含
む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信や衛星通信等に用いられる電子機器に、高周波信号の送受信機能を一体化したRFフロントエンドモジュールが組み込まれている。RFフロントエンドモジュールは、高周波増幅機能を持つモノリシックマイクロ波集積回路素子(MMIC)、高周波増幅回路を制御する制御IC、スイッチIC、デュプレクサ等を備えている。
【0003】
MMICの上に制御ICを積み重ねることによって小型化した高周波モジュールが下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された高周波モジュールは、モジュール基板の上に搭載されたMMICと、その上に積み重ねられた制御ICとを含む。MMICの電極、制御ICの電極、及びモジュール基板上の電極が、ワイヤボンディングにより電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2015/0303971号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高周波増幅回路に、例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)が用いられる。HBTは、動作中にコレクタ損失が発生することによって発熱する。発熱によるHBTの温度上昇は、コレクタ電流をさらに増大させる方向に働く。この正帰還の条件が満たされるとHBTが熱暴走に至る。HBTの熱暴走を回避するために、HBTの出力電力の上限値が制限される。
【0006】
高周波増幅回路の高出力化を図るために、HBT等を含む半導体装置からの放熱特性を向上させることが望まれる。特許文献1に開示された高周波モジュールでは、近年の高周波増幅回路に対する高出力化の要求を満たすことが困難である。
【0007】
本発明の目的は、放熱特性を高めることが可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によると、
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、相互に並列に接続されて第1増幅回路を構成する複数の第1トランジスタを含む第2部材と、
前記第2部材から、前記第1部材の側とは反対側に突出する導体突起と
を備え、
前記複数の第1トランジスタは、平面視において前記第1部材の複数の回路ブロックのいずれとも重ならない領域に配置されており、かつ前記第1部材と重なっている半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
第1トランジスタで発生した熱が、第1トランジスタから第1部材に至る伝熱経路と、導体突起を経由する伝熱経路との2つの伝熱経路を通って伝導される。このため、第1トランジスタからの放熱特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施例による半導体装置を含む高周波モジュールのブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施例による高周波モジュールの回路部品の平面視における位置関係を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施例による半導体装置の概略断面図である。
【
図4】
図4Aは、第1実施例による半導体装置の第1増幅回路を構成する複数のセルの各々の等価回路図であり、
図4Bは、第2部材に形成された第1増幅回路を構成する1つのセルの概略断面図である。
【
図5】
図5Aは、第1実施例による半導体装置の第1面を平面視したときの各回路ブロックの面内の配置を示す模式図であり、
図5Bは、第1増幅回路を構成する複数のトランジスタの平面視における配置を示す図である。
【
図6】
図6Aから
図6Fまでの図面は、製造途中段階における半導体装置の断面図である。
【
図7】
図7Aから
図7Cまでの図面は、製造途中段階における半導体装置の断面図であり、
図7Dは、完成した半導体装置の断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施例による半導体装置の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第3実施例による半導体装置の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。
【
図10】
図10は、第4実施例による半導体装置の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。
【
図11】
図11は、第5実施例による半導体装置の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。
【
図12】
図12は、第6実施例による半導体装置の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。
【
図13】
図13は、第7実施例による半導体装置の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施例]
図1から
図7Dまでの図面を参照して、第1実施例による半導体装置について説明する。以下に説明する第1実施例による半導体装置は、高周波電力増幅器である。
【0012】
図1は、第1実施例による半導体装置を含む高周波モジュール20のブロック図である。この高周波モジュール20は、第1実施例による半導体装置30、出力整合回路76、複数のデュプレクサ70、アンテナスイッチ72、2つの受信用のバンド選択スイッチ73、2つのローノイズアンプ71、受信用の出力端子選択スイッチ74、及び第2制御回路75を含む。これらの回路部品はモジュール基板にフリップチップ実装される。この高周波モジュール20は、周波数分割複信(FDD)方式の送受信を行う機能を有する。
【0013】
半導体装置30は、第1部材31と、第1部材31に接合された第2部材32とを含む。第1部材31に、入力スイッチ43、第1制御回路42、及びバンド選択スイッチ41が形成されている。第2部材32に、第1増幅回路51及び第2増幅回路52からなる2段構成の高周波増幅回路50、及びバイアス回路53が形成されている。第2増幅回路52が初段の増幅回路であり、第1増幅回路51が最終段の増幅回路である。
図1において、第1部材31に設けられている回路ブロックに相対的に淡いハッチングを付し、第2部材32に設けられている回路ブロックに相対的に濃いハッチングを付している。バイアス回路53は、第1制御回路42からの制御信号に応じて、第1増幅回路51及び第2増幅回路52にバイアス電流を供給する。
【0014】
入力スイッチ43の2つの入力接点が、それぞれモジュール基板に設けられた高周波信号入力端子IN1、IN2に接続されている。2つの高周波信号入力端子IN1、IN2から高周波信号が入力される。入力スイッチ43は、2つの入力接点から1つの接点を選択し、選択した接点に入力される高周波信号を高周波増幅回路50に入力させる。
【0015】
高周波増幅回路50で増幅された高周波信号が、出力整合回路76を通ってバンド選択スイッチ41の1つの入力接点に入力される。バンド選択スイッチ41は、複数の出力接点から1つの接点を選択し、高周波増幅回路50で増幅された高周波信号を、選択した出力接点から出力させる。
【0016】
バンド選択スイッチ41の複数の出力接点のうち2つの接点は、それぞれモジュール基板に設けられた補助出力端子PAAUX1、PAAUX2に接続されている。他の6個の接点は、それぞれバンドごとに準備された複数のデュプレクサ70の送信用入力ポートに接続されている。バンド選択スイッチ41は、バンドごとに準備された複数のデュプレクサ70から1つのデュプレクサ70を選択する機能を有する。
【0017】
アンテナスイッチ72が、回路側の複数の接点とアンテナ側の2つの接点とを有する。アンテナスイッチ72の複数の回路側の接点のうち2つの接点が、それぞれ送信信号入力端子TRX1、TRX2に接続されている。回路側の他の6個の接点は、それぞれ複数のデュプレクサ70の入出力共用ポートに接続されている。アンテナ側の2つの接点は、それぞれアンテナ端子ANT1、ANT2に接続されている。アンテナ端子ANT1、ANT2に、それぞれアンテナが接続される。
【0018】
アンテナスイッチ72は、2つのアンテナ側の接点を、それぞれ回路側の複数の接点から選択した2つの接点に接続する。1つのバンドを用いて通信を行う場合には、アンテナスイッチ72は、回路側の1つの接点と、アンテナ側の1つの接点とを接続する。高周波増幅回路50で増幅され、対応するバンド用のデュプレクサ70を通過した高周波信号が、選択されたアンテナ側の接点に接続されているアンテナから送信される。
【0019】
2つの受信用のバンド選択スイッチ73の各々が、4個の入力接点と1つの出力接点とを有する。2つのバンド選択スイッチ73の各々の4個の入力接点のうち3個の接点は、それぞれデュプレクサ70の受信用出力ポートに接続されている。2つのバンド選択スイッチ73の各々の残りの1つの接点は、それぞれ補助入力端子LNAAUX1、LNAAUX2に接続されている。
【0020】
2つの受信用のバンド選択スイッチ73の出力接点は、それぞれ2つのローノイズアンプ71に接続されている。2つの受信用のバンド選択スイッチ73は、それぞれデュプレクサ70を通過した受信信号をローノイズアンプ71に入力させる。
【0021】
出力端子選択スイッチ74の2つの回路側の接点が、それぞれ2つのローノイズアンプ71の出力ポートに接続されている。出力端子選択スイッチ74の3つの端子側の接点が、それぞれ受信信号出力端子LNAOUT1、LNAOUT2、LNAOUT3に接続されている。ローノイズアンプ71で増幅された受信信号が、出力端子選択スイッチ74で選択された受信信号出力端子から出力される。
【0022】
モジュール基板に設けられた電源端子VCC1、VCC2から、それぞれ第1増幅回路51及び第2増幅回路52に電源電圧が印加される。
【0023】
第1制御回路42が、電源端子VIO1、制御信号端子SDATA1、及びクロック端子SCLK1に接続されている。第1制御回路42は、制御信号端子SDATA1に与えられる制御信号に基づいてバイアス回路53、入力スイッチ43、及びバンド選択スイッチ41を制御する。
【0024】
第2制御回路75が、電源端子VIO2、制御信号端子SDATA2、及びクロック端子SCLK2に接続されている。第2制御回路75は、制御信号端子SDATA2に与えられる制御信号に基づいてローノイズアンプ71、受信用のバンド選択スイッチ73、及び出力端子選択スイッチ74を制御する。
【0025】
モジュール基板に、さらに電源端子VBAT及びドレイン電圧端子VDD2が設けられている。電源端子VBATから、高周波増幅回路50のバイアス回路及び第1制御回路42に電源が供給される。ドレイン電圧端子VDD2からローノイズアンプ71に電源電圧が印加される。
【0026】
図2は、第1実施例による高周波モジュール20の回路部品の平面視における位置関係を示す図である。モジュール基板21に、半導体装置30、複数のデュプレクサ70、ローノイズアンプ71、アンテナスイッチ72、及びその他の表面実装型の複数の受動部品が実装されている。半導体装置30の第1部材31は、平面視において第2部材32より大きく、第2部材32を包含している。
【0027】
第1部材31に、バンド選択スイッチ41、第1制御回路42、及び入力スイッチ43が形成されている。
図2において、バンド選択スイッチ41、第1制御回路42、及び入力スイッチ43等の回路ブロックが配置される領域を破線で囲んで示している。ここで、回路ブロックとは、ある機能を実現するために構成された半導体素子、受動素子等の複数の回路素子、及びこれらの回路素子を相互に接続する配線の集合体を意味する。一般的に、回路ブロックごとに回路設計が行われ、回路ブロックごとに半導体基板上にレイアウトされる。
【0028】
出力整合回路76は、モジュール基板内に配置されたインダクタ等の受動素子と、モジュール基板に表面実装されたキャパシタ等で構成される。出力整合回路76を構成するインダクタは、平面視において半導体装置30と重なる位置に配置されている。本明細書において「平面視において2つの部材が重なっている」状態は、一方の部材が他方の部材を包含している状態、一方の部材の一部が他方の部材の一部と重なっている状態、及び2つの部材の外周線が一致している状態を含む。
【0029】
図3は、第1実施例による半導体装置30の概略断面図である。第1部材31は、基板311、その上に配置された多層配線構造312、及び多層配線構造312の表面を覆う第1部材保護膜317を含んでいる。基板311は、単体半導体系の半導体部分を含む。基板311として、例えばシリコン基板またはシリコンオンインシュレータ(SOI)基板が用いられる。バンド選択スイッチ41(
図1)、第1制御回路42(
図1)、及び入力スイッチ43(
図1)が、基板311の表層部に形成された半導体素子及び多層配線構造312内の配線により構成される。
図3では、入力スイッチ43が形成される領域を破線で囲んで示している。第1部材31の最表面を第1面31Aということとする。第1部材保護膜317の一部に開口が設けられており、開口に金属膜318が充填されている。第1部材保護膜317及び金属膜318の上面が第1面31Aに相当する。
【0030】
第2部材32が、第1部材31の第1面31Aに面接触して接合されている。また、平面視において、第2部材32の少なくとも一部分が金属膜318の少なくとも一部分と重なっており、第2部材32が金属膜318に面接触している。第2部材32を覆うように、第1面31Aの上に層間絶縁膜67が配置されている。層間絶縁膜67の所定の位置に複数の開口が設けられている。層間絶縁膜67の上に、パッド62、63、及び配線61が配置されている。パッド62、63、及び配線61が配置された配線層は、再配線層といわれる場合がある。再配線層内の配線61は、再配線といわれる場合がある。
【0031】
配線61は、層間絶縁膜67に設けられている開口を通って、第2部材32に形成されている回路と、第1部材31に形成されている回路とを接続する。例えば、配線61は、多層配線構造312内の配線315を介して入力スイッチ43に接続されている。例えば、配線61は、
図1に示した入力スイッチ43と第2増幅回路52との接続、第1制御回路42と第2増幅回路52との接続、第1制御回路42と第1増幅回路51との接続等に用いられる。
【0032】
パッド62は、平面視において第2部材32に包含されており、第2部材32に形成されている回路に接続されている。他のパッド63は、平面視において第2部材32の外側に配置されており、多層配線構造312内の配線316を介して、第1部材31に形成されている入力スイッチ43に接続されている。
【0033】
再配線層を覆うように、層間絶縁膜67の上に保護膜68が配置されている。保護膜68に、パッド62、63のそれぞれの上面の一部の領域を露出させる開口が設けられている。パッド62、63の上に、それぞれ導体突起82、83が配置されている。導体突起82は、パッド62に接続されたCuピラー82Aと、Cuピラー82Aの上面に配置されたハンダ層82Bとを含む。このような構造の導体突起82は、Cuピラーバンプといわれる。
【0034】
なお、Cuピラー82Aの底面に、密着性向上を目的としてアンダーバンプメタル層を配置してもよい。他の導体突起83も、導体突起82と同じ積層構造を有する。なお、導体突起82、83等に、Cuピラーバンプに代えて、Auバンプ、ハンダボールバンプ、パッド上に立てられた導体柱等を用いてもよい。Auバンプのように、ハンダ層が載せられていないバンプは、ピラーともいわれる。パッド上に立てられた導体柱は、ポストともいわれる。
【0035】
導体突起82は、例えば
図1に示した電源端子VCC1と第1増幅回路51との接続、電源端子VCC2と第2増幅回路52との接続、第1増幅回路51と出力整合回路76との接続に用いられる。さらに、導体突起82は、第2部材32内のグランド導体と、モジュール基板のグランド導体との接続に用いられる。
【0036】
導体突起83は、例えば
図1に示した入力スイッチ43と高周波信号入力端子IN1、IN2との接続、第1制御回路42と電源端子VIO1、制御信号端子SDATA1、及びクロック端子SCLK1との接続、バンド選択スイッチ41と出力整合回路76、複数のデュプレクサ70等との接続に用いられる。
【0037】
多層配線構造312内に、少なくとも1層の金属パターン313、及び金属パターン313同士、または金属膜318と金属パターン313とを厚さ方向に接続する複数のビア314が配置されている。複数の金属パターン313は、平面視において第2部材32の一部の領域と重なっている。最も下の配線層に配置された金属パターン313は、複数のビア314を介して基板311に接続されている。金属パターン313は、第1部材31のいずれの回路ブロックにも電気的に接続されていない。金属膜318、金属パターン313及びビア314は、第2部材32から基板311に至る伝熱経路として機能する。また、導体突起82は、電流経路としての機能の他に、第2部材32からモジュール基板に至る伝熱経路としての機能を持つ。
【0038】
図4Aは、第1実施例による半導体装置の第1増幅回路51(
図1)を構成する複数のセルの各々の等価回路図である。第1増幅回路51は、相互に並列に接続された複数のセルで構成される。なお、第2増幅回路52(
図1)も、第1増幅回路51と同様の回路構成を有する。ただし、第2増幅回路52を構成するセルの個数は、第1増幅回路51を構成するセルの個数より少ない。
【0039】
各セルは、トランジスタQ、入力キャパシタCin、及びバラスト抵抗素子Rbを含む。トランジスタQのベースが入力キャパシタCinを介して高周波信号入力配線105RFに接続されている。さらに、トランジスタQのベースが、バラスト抵抗素子Rbを介してベースバイアス配線104BBに接続されている。トランジスタQのエミッタが接地されている。トランジスタQのコレクタがコレクタ配線104Cに接続されている。コレクタ配線104Cを介してトランジスタQのコレクタに電源電圧が印加されるとともに、増幅された高周波信号がコレクタから出力される。
【0040】
図4Bは、第2部材32に形成された第1増幅回路51(
図1)を構成する1つのセルの概略断面図である。第2部材32が下地半導体層101を含む。下地半導体層101が第1部材31に面接触することにより、第2部材32が第1部材31に接合されている。下地半導体層101は、導電領域101Aと素子分離領域101Bとに区分されている。下地半導体層101には、例えばGaAsが用いられる。導電領域101Aはn型GaAsで形成されており、素子分離領域101Bはn型GaAs層に絶縁化不純物をイオン注入することにより形成される。
【0041】
導電領域101Aの上に、トランジスタQが配置されている。トランジスタQは、導電領域101Aから順番に積層されたコレクタ層102C、ベース層102B、及びエミッタ層102Eを含む。エミッタ層102Eは、ベース層102Bの一部の領域の上に配置されている。一例として、コレクタ層102Cはn型GaAsで形成され、ベース層102Bはp型GaAsで形成され、エミッタ層102Eはn型InGaPで形成される。すなわち、トランジスタQは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタである。
【0042】
ベース層102Bの上にベース電極103Bが配置されており、ベース電極103Bがベース層102Bに電気的に接続されている。エミッタ層102Eの上にエミッタ電極103Eが配置されており、エミッタ電極103Eがエミッタ層102Eに電気的に接続されている。導電領域101Aの上にコレクタ電極103Cが配置されている。コレクタ電極103Cは、導電領域101Aを介してコレクタ層102Cに電気的に接続されている。
【0043】
トランジスタQ、コレクタ電極103C、ベース電極103B、及びエミッタ電極103Eを覆うように、下地半導体層101の上に1層目の層間絶縁膜111が配置されている。1層目の層間絶縁膜111は、例えばSiN等の無機絶縁材料で形成される。層間絶縁膜111の所定の位置に複数の開口が設けられている。
【0044】
層間絶縁膜111の上に、1層目のエミッタ配線104E、ベース配線104B、コレクタ配線104C、ベースバイアス配線104BBが配置されている。さらに、層間絶縁膜111の上にバラスト抵抗素子Rbが配置されている。エミッタ配線104Eは、層間絶縁膜111に設けられた開口を通ってエミッタ電極103Eに接続されている。ベース配線104Bは、層間絶縁膜111に設けられた他の開口を通ってベース電極103Bに接続されている。コレクタ配線104Cは、層間絶縁膜111に設けられた他の開口を通ってコレクタ電極103Cに接続されている。
【0045】
ベース配線104Bは、トランジスタQが配置されていない領域まで延びており、その先端がバラスト抵抗素子Rbの一方の端部に重なっている。重なり部分において、ベース配線104Bとバラスト抵抗素子Rbとが電気的に接続されている。バラスト抵抗素子Rbの他方の端部がベースバイアス配線104BBに重なっている。重なり部分において、バラスト抵抗素子Rbとベースバイアス配線104BBとが電気的に接続されている。
【0046】
1層目のエミッタ配線104E、ベース配線104B、ベースバイアス配線104BB、及びバラスト抵抗素子Rbを覆うように、層間絶縁膜111の上に2層目の層間絶縁膜112が配置されている。2層目の層間絶縁膜112も、SiN等の無機絶縁材料で形成される。
【0047】
層間絶縁膜112の上に、2層目のエミッタ配線105E及び高周波信号入力配線105RFが配置されている。2層目のエミッタ配線105Eは、層間絶縁膜112に設けられた開口を通って1層目のエミッタ配線104Eに接続されている。高周波信号入力配線105RFの一部分は、平面視において1層目のベース配線104Bと重なっている。両者の重なり領域に入力キャパシタCinが形成される。
【0048】
2層目のエミッタ配線105E及び高周波信号入力配線105RFを覆うように、3層目の層間絶縁膜67が配置されている。3層目の層間絶縁膜67は、例えばポリイミド等の有機絶縁材料で形成される。なお、3層目の層間絶縁膜67は、
図3に示したように第1部材31の上まで広がっている。
【0049】
3層目の層間絶縁膜67の上にパッド62が配置されている。パッド62は、層間絶縁膜67に設けられた開口を通って2層目のエミッタ配線105Eに接続されている。
【0050】
図5Aは、第1実施例による半導体装置30の第1面31Aを平面視したときの各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第1部材31に形成された複数の回路ブロックに、バンド選択スイッチ41、第1制御回路42、及び入力スイッチ43が含まれる。これらの回路ブロックは、第1面31Aを平面視したとき、第1面31Aの内部の領域に配置されている。
【0051】
第2部材32に形成された複数の回路ブロックに、最終段の第1増幅回路51、初段の第2増幅回路52、及びバイアス回路53が含まれる。
図5Aにおいて、第1部材31に形成されている回路ブロックに右下がりのハッチングを付している。第2部材32に形成されている第2増幅回路52及びバイアス回路53が配置される領域に右上がりのハッチングを付している。
図8から
図13までの図面においても、同様のハッチングを付している。
【0052】
図5Bは、第1増幅回路51を構成する複数のトランジスタQ(
図4A、
図4B)の平面視における配置を示す図である。複数のトランジスタQの各々が、コレクタ層102C及びベース層102Bを含む。平面視において、コレクタ層102Cの外周線とベース層102Bの外周線とは、ほぼ一致している。エミッタ層102E(
図4B)は、平面視においてベース層102Bに包含される。トランジスタQの各々は、平面視において一方向(
図5Bにおいて上下方向)に長い形状を有する。複数のトランジスタQのそれぞれの長手方向は平行であり、複数のトランジスタQは、長手方向に対して直交する方向(
図5Bにおいて左右方向)に並んで配置されている。
【0053】
複数のトランジスタQが領域55内に分布している。複数のトランジスタQが分布する領域55は、例えば、平面視において複数のトランジスタQを包含する最小の凸多角形と定義される。
【0054】
複数のトランジスタQからなるトランジスタ列を、トランジスタQが配列する方向に対して直交する方向に、複数列配置してもよい。この場合には、複数のトランジスタ列に含まれるすべてのトランジスタQを包含する最小の凸多角形を、複数のトランジスタQが分布する領域55と定義すればよい。
【0055】
図5Aに示すように、第1増幅回路51を構成する回路ブロック内に、複数のトランジスタQが分布する領域55が配置されている。導体突起82E、82Cが、それぞれ複数のトランジスタQのエミッタ及びコレクタに接続されている。平面視においてエミッタ用の導体突起82Eは、複数のトランジスタQが分布する領域55を包含している。第1増幅回路51を構成する回路ブロック内には、その他に
図4A及び
図4Bに示した入力キャパシタCin及びバラスト抵抗素子Rbが配置されている。
【0056】
第1増幅回路51は、第1部材31に形成されているいずれの回路ブロックとも重なっていない。このため、複数のトランジスタQが分布する領域55も、第1部材31に形成されているいずれの回路ブロックとも重なっていない。さらに、複数のトランジスタQの各々も、第1部材31に形成されているいずれの回路ブロックとも重なっていない。平面視において第1増幅回路51を構成する回路ブロックと重なる領域に、多層配線構造312(
図3)内の金属パターン313、ビア314、及び金属膜318(
図3)が配置されている。
【0057】
第2増幅回路52及びバイアス回路53のそれぞれを構成する回路ブロックは、第1部材31に形成されたいずれかの回路ブロックと重なっている。例えば、第2増幅回路52を構成する回路ブロックは、第1部材31に形成された入力スイッチ43及び第1制御回路42を構成する回路ブロックと重なっており、バイアス回路53を構成する回路ブロックは、第1部材31に形成された第1制御回路42及びバンド選択スイッチ41を構成する回路ブロックと重なっている。このように、第2部材32の回路ブロックのうち第1増幅回路51を構成する回路ブロックではない1つの回路ブロックが、第1部材31の複数の回路ブロックに跨って重なるようにしてもよいし、その他の構成として、第1部材31の1つの回路ブロックと重なるようにしてもよい。
【0058】
次に、
図6Aから
図7Dまでの図面を参照して、第1実施例による半導体装置30の作製方法について説明する。
図6Aから
図7Cまでの図面は、製造途中段階における半導体装置30の断面図であり、
図7Dは、完成した半導体装置30の断面図である。
【0059】
図6Aに示すように、GaAs等の化合物半導体の単結晶の母基板200の上に剥離層201をエピタキシャル成長させ、剥離層201の上に素子形成層202を形成する。素子形成層202には、
図4Bに示した第2部材32のトランジスタQ、1層目の配線層、2層目の配線層等が形成されている。これらの回路素子及び配線層は、一般的な半導体プロセスにより形成される。
図6Aでは、素子形成層202に形成されている素子構造については記載を省略している。この段階では、素子形成層202は個々の第2部材32に分離されていない。
【0060】
次に、
図6Bに示すように、レジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、素子形成層202(
図5A)及び剥離層201をパターニングする。この段階で、素子形成層202(
図5A)は第2部材32ごとに分離される。
【0061】
次に、
図6Cに示すように、分離された第2部材32の上に連結支持体204を貼り付ける。これにより、複数の第2部材32が、連結支持体204を介して相互に連結される。なお、
図6Bのパターニング工程でエッチングマスクとして用いたレジストパターンを残しておき、第2部材32と連結支持体204との間にレジストパターンを介在させてもよい。
【0062】
次に、
図6Dに示すように、母基板200及び第2部材32に対して剥離層201を選択的にエッチングする。これにより、第2部材32及び連結支持体204が母基板200から剥離される。剥離層201を選択的にエッチングするために、剥離層201として、母基板200及び第2部材32のいずれともエッチング耐性の異なる化合物半導体が用いられる。
【0063】
図6Eに示すように、第1部材31(
図3)に設けられる入力スイッチ43及び多層配線構造312(
図3)等が形成された基板210を準備する。この段階で、基板210は個々の第1部材31に分離されていない。
【0064】
図6Fに示すように、第2部材32を基板210に接合する。第2部材32と基板210との接合は、ファンデルワールス結合または水素結合による。その他に、静電気力、共有結合、共晶合金結合等によって第2部材32を基板210に接合してもよい。例えば、基板210の表面の一部がAuで形成されている場合、第2部材32をAu領域に密着させて加圧することにより、両者を接合してもよい。
【0065】
次に、
図7Aに示すように、第2部材32から連結支持体204を剥離する。連結支持体204を剥離した後、
図7Bに示すように、基板210及び第2部材32の上に層間絶縁膜67及び再配線層を形成する。再配線層には、配線61、パッド62、63(
図3)等が含まれる。
【0066】
次に、
図7Cに示すように、再配線層の上に保護膜68を形成し、保護膜68の所定の位置に開口を形成する。その後、開口内及び保護膜68の上に、導体突起82を形成する。導体突起82の形成と同時に、他の導体突起83(
図3)等も形成する。
【0067】
最後に、
図7Dに示すように、基板210をダイシングする。これにより、半導体装置30が得られる。
【0068】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例では、
図3に示したように、第2部材32から第1部材31に向かう伝熱経路が形成される。第2部材32が第1部材31に面接触しているため、第2部材32と第1部材31とは、低い熱抵抗で熱的に結合される。さらに、第2部材32の直下の多層配線構造312内に、金属パターン313及びビア314が配置されているため、第2部材32の直下の多層配線構造312の全域が絶縁材料で形成されている構成と比べて、第2部材32から基板311までの伝熱経路の熱抵抗が低くなる。なお、金属パターン313は、第1部材31のいずれの回路ブロックにも電気的に接続されていないため、伝熱経路として機能する金属パターン313は、第1部材31の回路ブロックの動作に影響を及ぼさない。なお、金属パターン313を、第1部材31内のグランド導体に電気的に接続してもよい。
【0069】
第2部材32から第1部材31に伝導された熱は、第1部材31内に拡散される。第1部材31内に拡散した熱は、第1部材31の表面から外部に放射される。半導体装置30がモジュール基板に実装された状態で、モールド樹脂で覆われている場合には、第1部材31からモールド樹脂に熱が伝導される。
【0070】
さらに、導体突起82が、第2部材32からモジュール基板までの伝熱経路として機能する。このように、第2部材32から、モジュール基板に向かう伝熱経路と、第1部材31に向かう伝熱経路との2つの経路を通って放熱される。このため、第2部材32からの放熱特性を高めることができる。放熱特性を高める十分な効果を得るために、第1部材31の基板311の半導体部分に、第2部材32に形成されている半導体素子を形成する化合物半導体よりも熱伝導率の高い半導体、例えばSi、Ge等の単体半導体を用いることが好ましい。また、第2部材32に形成されている半導体素子として、高周波信号の増幅のために、第1部材31の基板311の半導体部分よりも電子移動度の高い化合物半導体系の半導体素子を用いることが好ましい。
【0071】
第2部材32のうち、第1増幅回路51を構成する複数のトランジスタQが分布する領域55(
図5A)で特に発熱が生じやすい。複数のトランジスタQが分布する領域55から第1部材31の基板311(
図3)までの伝熱経路の熱抵抗を低減させるために、複数のトランジスタQが分布する領域55が平面視において金属パターン313(
図3)に包含されるように、金属パターン313を配置することが好ましい。さらに、複数のトランジスタQが分布する領域55が平面視において金属膜318(
図3)に包含されるように、金属膜318を配置することが好ましい。
【0072】
第1増幅回路51には、第2増幅回路52やバイアス回路53に比べて大きな高周波電流が流れるため、第1増幅回路51がノイズの発生源になりやすい。第1実施例では、第1増幅回路51(
図5A)が、平面視において第1部材31のいずれの回路ブロックとも重ならないため、第1部材31の各回路ブロックが、第1増幅回路51で発生したノイズの影響を受けにくいという優れた効果が得られる。
【0073】
また、第1実施例では、第2部材32の第2増幅回路52及びバイアス回路53(
図5A)が、平面視において第1部材31のいずれかの回路ブロックと重なっている。このため、半導体装置30の平面視における寸法を小さくすることが可能である。
【0074】
次に、第1実施例の変形例について説明する。
第1実施例では、金属膜318(
図3)、第1部材31の多層配線構造312内の複数の金属パターン313及び複数のビア314(
図3)からなる伝熱経路が、第2部材32及び基板311に接触しているが、金属膜318、金属パターン313及び複数のビア314からなる伝熱経路は、必ずしも第2部材32及び基板311に接触する必要はない。例えば、複数の金属パターン313及び複数のビア314からなる伝熱経路が、絶縁膜を介して第2部材32及び基板311に熱結合してもよい。この場合には、絶縁膜が、第2部材32から基板311までの伝熱経路の一部として機能する。また、金属膜318を配置せず、第1面31Aの全域を第1部材保護膜317としてもよい。この場合には、第1部材保護膜317のうち第2部材32に接触する部分が、主として伝熱経路として機能する。
【0075】
また、金属パターン313及びビア314を配置しない場合には、第2部材32から基板311までの伝熱経路の熱抵抗が高くなるが、第1増幅回路51からの十分な放熱特性が得られる場合には、金属パターン313及びビア314を配置しなくてもよい。この場合には、多層配線構造312に含まれる絶縁膜が伝熱経路として機能する。
【0076】
第1実施例による半導体装置30の高周波増幅回路50(
図1)は、初段の第2増幅回路52と最終段の第1増幅回路51との2段構成であるが、高周波増幅回路50を3段以上の多段構成としてもよい。この場合も、最終段の第1増幅回路51を構成する複数のトランジスタQが分布する領域55(
図5A)が、第1部材31のいずれの回路ブロックとも重ならないようにするとよい。
【0077】
第1実施例では、半導体装置30を周波数分割複信(FDD)方式の高周波モジュール20(
図1)に搭載したが、時分割複信(TDD)方式の高周波モジュールに搭載することも可能である。
【0078】
半導体装置30をTDD方式の高周波モジュールに搭載する場合には、バンド選択スイッチ41を送受信切替スイッチに置き換えればよい。送受信切替スイッチは、2つの接点と1つのコモン端子とを有する。2つの接点のうち一方の接点が出力整合回路76(
図1)を介して最終段の第1増幅回路51に接続され、もう一方の接点が、受信信号を増幅するためのローノイズアンプ71(
図1)に接続されるか、または受信用のバンド選択スイッチ73(
図1)を介してローノイズアンプ71に接続される。コモン端子は、フィルタを介してアンテナ端子に接続される。例えば、送受信切替スイッチは、第1実施例のバンド選択スイッチ41(
図5A)と同様に、第2部材32のバイアス回路53と、平面視において重なっている。
【0079】
[第2実施例]
次に、
図8を参照して第2実施例による半導体装置について説明する。以下、
図1から
図7Dまでの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0080】
図8は、第2実施例による半導体装置30の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第1実施例(
図5A)では、第1部材31のバンド選択スイッチ41を構成する回路ブロックの一部が第2部材32に重なっている。これに対して第2実施例では、バンド選択スイッチ41を構成する回路ブロックが平面視において第2部材32に重なっておらず、第2部材32の外側に配置されている
【0081】
第2部材32のバイアス回路53を構成する回路ブロックが、第1部材31の入力スイッチ43を構成する回路ブロック、及び第1制御回路42を構成する回路ブロックと重なっている。第2部材32の第2増幅回路52を構成する回路ブロックが、第1部材31の第1制御回路42を構成する回路ブロックと重なっている。
【0082】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第2実施例においても第1実施例と同様に、第1増幅回路51のトランジスタQからの放熱特性を高めることができる。さらに、第2実施例では、バンド選択スイッチ41を構成する回路ブロックが、平面視において第2部材32と重なっていないため、入出力のアイソレーションを確保しやすいという優れた効果が得られる。具体的には、バンド選択スイッチ41を伝送される高周波信号が、第2部材32を通って高周波増幅回路50(
図1)の入力側に結合しにくくなる。これにより、高周波増幅回路50の発振が生じにくくなるという優れた効果が得られる。
【0083】
次に、第2実施例の変形例について説明する。第2実施例では、半導体装置30をFDD方式の高周波モジュールに搭載しているが、TDD方式の高周波モジュールに搭載することも可能である。半導体装置30をTDD方式の高周波モジュールの搭載する場合には、バンド選択スイッチ41を送受信切替スイッチに置き換えればよい。この場合、送受信切替スイッチを構成する回路ブロックが平面視において第2部材32に重ならず、第2部材32の外側に配置された構成とするとよい。
【0084】
[第3実施例]
次に、
図9を参照して第3実施例による半導体装置について説明する。以下、
図8を参照して説明した第2実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0085】
図9は、第3実施例による半導体装置30の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第2実施例(
図8)では、第1部材31の入力スイッチ43を構成する回路ブロックが、平面視において第2部材32と重なっている。これに対して第3実施例では、入力スイッチ43を構成する回路ブロックが、平面視において第2部材32と重なっていない。
【0086】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
第3実施例においても第2実施例と同様に、第1増幅回路51のトランジスタQからの放熱特性を高めることができる。さらに第3実施例では、高周波増幅回路50の入力側に接続された入力スイッチ43及び出力側に接続されたバンド選択スイッチ41を構成する回路ブロックの両方が、第2部材32と重なっていない。このため、高周波増幅回路50の入出力のアイソレーションをより高めることができる。
【0087】
[第4実施例]
次に、
図10を参照して第4実施例による半導体装置について説明する。以下、
図9を参照して説明した第3実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0088】
図10は、第4実施例による半導体装置30の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第3実施例では、第2部材32の第2増幅回路52を構成する回路ブロックが、第1部材31の第1制御回路42を構成する回路ブロックと重なっている。これに対して第4実施例では、第2部材32の第2増幅回路52を構成する回路ブロックが、第1部材31のいずれの回路ブロックとも重なっていない。
【0089】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。
第4実施例においても第3実施例と同様に、第1増幅回路51のトランジスタQからの放熱特性を高めることができる。さらに第4実施例では、第2部材32の第2増幅回路52を構成する回路ブロックが、第1部材31のいずれの回路ブロックとも重なっていないため、第2増幅回路52で発生したノイズが第1部材31に形成された回路に及ぼす影響を軽減することができる。
【0090】
なお、第2増幅回路52を構成する複数のトランジスタが分布する領域を、第1部材31のいずれの回路ブロックとも重ならないように配置し、第2増幅回路52の他の領域は、第1部材31のいずれかの回路ブロックと重ねて配置してもよい。この場合でも、第2増幅回路52を構成する複数のトランジスタからの放熱特性を高める効果が得られる。
【0091】
[第5実施例]
次に、
図11を参照して第5実施例による半導体装置について説明する。以下、
図10を参照して説明した第4実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0092】
図11は、第5実施例による半導体装置30の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第4実施例(
図10)では、平面視において、第2部材32の第1増幅回路51及び第2増幅回路52を構成する回路ブロックが、第1部材31のいずれの回路ブロックとも重ならず、第2部材32のバイアス回路53を構成する回路ブロックは、第1部材31の第1制御回路42を構成する回路ブロックと重なっている。これに対して第5実施例では、第2部材32のいずれの回路ブロックも、平面視において第1部材31の回路ブロックと重ならない。言い換えると、第1部材31のいずれの回路ブロックも、平面視において第2部材32と重ならない。
【0093】
次に、第5実施例の優れた効果について説明する。
第5実施例においても第4実施例と同様に、第1増幅回路51のトランジスタQからの放熱特性を高めることができる。さらに第5実施例では、第1部材31に形成された回路が、第2部材32からの熱やノイズの影響を受けにくいという優れた効果が得られる。第1部材31の第1制御回路42は、例えば所定の電圧を得るチャージポンプを含む。第1制御回路42のチャージポンプやデジタル回路は、アナログ回路に対するノイズ源になりやすい。第5実施例では、第2部材32が第1部材31のいずれの回路ブロックとも重ならないため、第2部材32の回路が第1部材31のノイズ源の影響を受けにくいという優れた効果が得られる。
【0094】
第5実施例では、第2部材32が第1部材31のいずれの回路ブロックとも重ならないため、半導体装置30の平面視における寸法が、第1実施例から第4実施例までのいずれかの半導体装置30の寸法より大きくなる。半導体装置30として、いずれの実施例の構成を採用するかは、必要とされるノイズ対策の程度に応じて決定すればよい。
【0095】
[第6実施例]
次に、
図12を参照して第6実施例による半導体装置について説明する。以下、
図1から
図7Dまでの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0096】
図12は、第6実施例による半導体装置30の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第1実施例(
図1、
図5等)では、高周波増幅回路50の初段の第2増幅回路52が第2部材32に形成されている。これに対して第6実施例では、第2増幅回路52が第1部材31に形成されている。第2部材32には、第1増幅回路51及びバイアス回路53が形成されている。
【0097】
第2部材32のバイアス回路53を構成する回路ブロックは、第1部材31の入力スイッチ43を構成する回路ブロックと平面視において重なっている。第2部材32の第1増幅回路51を構成する回路ブロックは、平面視において第1部材31のいずれの回路ブロックとも重なっていない。
【0098】
次に、第6実施例の優れた効果について説明する。
第6実施例においても第1実施例と同様に、第1増幅回路51のトランジスタQからの放熱特性を高めることができる。また、第6実施例では、第2増幅回路52が第1部材31に形成されているため、第2部材32を小さくすることができる。一般に、シリコン等の単体半導体系の基板は、GaAs等の化合物半導体系の基板より安価である。さらに、単体半導体系の半導体製造プロセスは、化合物半導体系の半導体製造プロセスに比べて低コスト化しやすい。第6実施例では、化合物半導体系の半導体素子を含む第2部材32を小さくすることにより、半導体装置30の低コスト化を図ることが可能である。
【0099】
[第7実施例]
次に、
図13を参照して第7実施例による半導体装置について説明する。以下、
図12を参照して説明した第6実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0100】
図13は、第7実施例による半導体装置30の各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第6実施例では、第2増幅回路52を第1部材31に形成しているが、バイアス回路53は第2部材32に残している。これに対して第7実施例では、バイアス回路53も第1部材31に形成する。
【0101】
次に、第7実施例の優れた効果について説明する。
第7実施例では、第2増幅回路52及びバイアス回路53の両方を第1部材31に形成している。第2部材32には、最終段の第1増幅回路51のみが残っている。このため、第7実施例においては、第6実施例と比べて第2部材32をより小さくすることが可能である。これにより、半導体装置30の低コスト化をさらに進めることができる。
【0102】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0103】
20 高周波モジュール
21 モジュール基板
30 半導体装置
31 第1部材
31A 第1面
32 第2部材
41 送信用のバンド選択スイッチ
42 第1制御回路
43 入力スイッチ
50 高周波増幅回路
51 最終段の第1増幅回路
52 初段の第2増幅回路
53 バイアス回路
55 第1増幅回路の複数のトランジスタが分布する領域
61 配線
62、63 パッド
67 層間絶縁膜
68 保護膜
70 デュプレクサ
71 ローノイズアンプ
72 アンテナスイッチ
73 受信用のバンド選択スイッチ
74 出力端子選択スイッチ
75 第2制御回路
76 出力整合回路
82 導体突起
82A Cuピラー
82B ハンダ層
82C コレクタ用導体突起
82E エミッタ用導体突起
83 導体突起
101 下地半導体層
101A 導電領域
101B 素子分離領域
102B ベース層
102B ベース層
102C コレクタ層
102E エミッタ層
103B ベース電極
103C コレクタ電極
103E エミッタ電極
104B ベース配線
104BB ベースバイアス配線
104C コレクタ配線
104E エミッタ配線
105E エミッタ配線
105RF 高周波信号入力配線
111 層間絶縁膜
112 層間絶縁膜
200 母基板
201 剥離層
202 素子形成層
204 連結支持体
210 基板
311 基板
312 多層配線構造
313 金属パターン
314 ビア
315、316 配線
317 第1部材保護膜