(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20250121BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20250121BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20250121BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20250121BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20250121BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20250121BHJP
B60W 20/10 20160101ALI20250121BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20250121BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250121BHJP
H02P 21/22 20160101ALI20250121BHJP
【FI】
B60W20/50
B60K6/445 ZHV
B60K6/48
B60K6/54
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60W20/10
B60L3/00 J
B60L50/16
H02P21/22
(21)【出願番号】P 2021003136
(22)【出願日】2021-01-12
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸将
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-214584(JP,A)
【文献】特開2014-233109(JP,A)
【文献】特開2010-162996(JP,A)
【文献】米国特許第9041329(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00
B60W 10/02
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 10/10
B60W 10/18
B60W 10/26
B60W 10/28
B60W 10/30- 20/50
B60L 3/00
B60L 50/16
H02P 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンに連結された発電機と、一対の駆動輪に動力伝達可能に連結された電動機と、を備えるハイブリッド車両の、制御装置であって、
前記エンジンを作動させたバッテリレス走行中において前記発電機の発電により過電圧が生じると判定した場合には、前記電動機に供給するd軸電流の増加を前記エンジンの出力トルクの低下よりも優先して実行
し、
前記発電機の発電により過電圧が生じるとの判定は、前記発電機の発電電力と前記発電電力を消費する装置での消費電力との電力差が所定電力値を超過したこと及び前記発電電力がインバータにより直流に変換されて出力される電力線対の電圧が所定電圧値を超過したことの少なくとも一方により行われ、
前記発電機及び前記電動機は同一の回転電機である
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと、そのエンジンに連結された発電機と、一対の駆動輪に動力伝達可能に連結された電動機と、を備えるハイブリッド車両の、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、そのエンジンにより駆動される発電機と、一対の駆動輪に動力伝達可能に連結された電動機と、を備えるハイブリッド車両において、走行中に発電機及び電動機に接続されたバッテリが異常状態(例えば故障)となった場合に、(a)電動機の回転に伴って発生する逆起電力に起因する正の界磁電流を打ち消すように負のd軸電流の絶対値を増加させた後に、(b)バッテリを発電機及び電動機から切り離して、切り離しの際に過電圧が発生しないようにするハイブリッド車両の制御装置が知られている。例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド車両の制御装置がそれである。特許文献1に記載のハイブリッド車両の制御装置は、バッテリを発電機及び電動機から切り離した後は、例えば発電機での発電電力と電動機での消費電力とをバランスさせることでバッテリの電力を用いない走行すなわちバッテリレス走行を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリレス走行において発電機での発電電力は、電動機の他に補機等でも消費されるが、補機等での消費電力は一定とは限らず急変する場合がある。例えば、補機等での消費電力が急減した場合には、発電機での発電電力とその発電電力を消費する消費電力とをバランスさせるために電動機での消費電力を増加させることが考えられる。しかし、電動機での消費電力を増加させると、これに起因して電動機から出力される走行用駆動力が増加してしまい、この増加した走行用駆動力が一対の駆動輪に伝達されてしまうおそれがある。この走行用駆動力の増加はドライバーが意図しないものであるため、ドライバーに違和感を与えてしまうおそれがある。一方、電動機の消費電力を増加させない場合には、発電機での発電電力とその発電電力を消費する消費電力とのバランスが崩れることにより過電圧が発生してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、バッテリレス走行において過電圧の発生を抑制しつつドライバーに与える違和感を抑制できるハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、(a)エンジンと、前記エンジンに連結された発電機と、一対の駆動輪に動力伝達可能に連結された電動機と、を備えるハイブリッド車両の、制御装置であって、(b)前記エンジンを作動させたバッテリレス走行中において前記発電機の発電により過電圧が生じると判定した場合には、前記電動機に供給するd軸電流の増加を前記エンジンの出力トルクの低下よりも優先して実行し、(c)前記発電機の発電により過電圧が生じるとの判定は、前記発電機の発電電力と前記発電電力を消費する装置での消費電力との電力差が所定電力値を超過したこと及び前記発電電力がインバータにより直流に変換されて出力される電力線対の電圧が所定電圧値を超過したことの少なくとも一方により行われ、(d)前記発電機及び前記電動機は同一の回転電機であることにある。
【発明の効果】
【0007】
第1発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、前記エンジンを作動させたバッテリレス走行中において前記発電機の発電により過電圧が生じると判定した場合には、前記電動機に供給するd軸電流の増加が前記エンジンの出力トルクの低下よりも優先して実行される。これにより、バッテリレス走行中において、補機等での消費電力を発電機で発電し、補機等での消費電力が急減しても電動機に供給するd軸電流の増加により過電圧の発生を抑制することができる。また、d軸電流の増加ではドライバーの意図しない走行用駆動力が一対の駆動輪に伝達されることが抑制されるので、ドライバーに与える違和感が抑制される。
また、発電機の発電電力とその発電電力を消費する補機等の装置での消費電力との電力差が所定電力値を超過したり、発電機の発電電力がインバータにより直流に変換されて出力される電力線対の電圧が所定電圧値を超過したりした場合には、過電圧が生じると判定することができる。
さらに、単一の回転電機が発電機及び電動機として機能する場合であっても、過電圧の発生が抑制されるとともに、ドライバーの意図しない走行用駆動力が一対の駆動輪に伝達されることが抑制されてドライバーに与える違和感が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1に係る電子制御装置を備えるハイブリッド車両の概略構成図であるとともに、ハイブリッド車両における各種制御のための制御機能の要部を表す機能ブロック図である。
【
図2】
図1に示す電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。
【
図3】本発明の実施例2に係る電子制御装置を備えるハイブリッド車両の概略構成図であるとともに、ハイブリッド車両における各種制御のための制御機能の要部を表す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の各実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1に係る電子制御装置80を備えるハイブリッド車両10の概略構成図であるとともに、ハイブリッド車両10における各種制御のための制御機能の要部を表す機能ブロック図である。
【0013】
ハイブリッド車両10(以下、単に「車両10」と記す。)は、エンジン12、連結軸22、機械式オイルポンプMOP、動力分割機構34、発電機MG1、電動機MG2、AT入力軸26、自動変速機18、AT出力軸28、ディファレンシャルギヤ40、及び一対の車軸30などを備える。機械式オイルポンプMOP、動力分割機構34、発電機MG1、電動機MG2、及び自動変速機18は、ケース20内に収容されている。また、車両10は、電動オイルポンプEOP、油圧制御回路44、インバータ60、エアコン66、メインバッテリ70、システムメインリレー72、電力線対74、補機バッテリ76、DC/DCコンバータ78、及び電子制御装置80を備える。なお、エンジン12及び電動機MG2は車両10の走行用駆動力源であって、その走行用駆動力源から一対の駆動輪32に走行用駆動力が伝達される経路が動力伝達経路PTである。
【0014】
エンジン12は、周知の内燃機関である。エンジン12は、電子制御装置80によって車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等のエンジン制御装置68が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTe[Nm]が制御される。なお、本明細書では、特に区別しない場合には、トルク及び駆動力は同義である。
【0015】
発電機MG1及び電動機MG2は、所謂モータジェネレータであって、例えば三相同期モータジェネレータである。後述するバッテリレス走行では、発電機MG1は発電機として用いられ、電動機MG2は電動機として用いられる。
【0016】
発電機MG1、電動機MG2、及び電動オイルポンプEOPは、各々、インバータ60を介してメインバッテリ70に接続されている。インバータ60は、発電機MG1と電力線対74との間、電動機MG2と電力線対74との間、且つ、電動オイルポンプEOPと電力線対74との間、に設けられ、電子制御装置80によって制御されることにより直流を交流に変換したり交流を直流に変換したりする電源回路である。例えば、インバータ60は、メインバッテリ70から電力線対74に供給されている直流を三相交流に変換して発電機MG1や電動機MG2に出力したり、発電機MG1や電動機MG2で発電された三相交流の発電電力を直流に変換して電力線対74に出力したりする。また、インバータ60は、メインバッテリ70から電力線対74に供給されている直流を三相交流に変換して電動オイルポンプEOPに出力して駆動する。例えば、電動オイルポンプEOPは、EOP駆動用モータ例えば三相同期モータの回転により駆動可能な周知のオイルポンプである。
【0017】
電子制御装置80によってインバータ60が制御されることにより、発電機MG1から出力されるトルクであるMG1出力トルクTmg1[Nm]及び電動機MG2から出力されるトルクであるMG2出力トルクTmg2[Nm]がそれぞれ制御される。MG1出力トルクTmg1及びMG2出力トルクTmg2は、例えば正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。MG2出力トルクTmg2が力行トルクである場合には、電動機MG2から走行用駆動力が出力されているということになる。
【0018】
インバータ60に接続された電力線対74の正極線及び負極線の間には、コンデンサCが接続され、正極線と負極線との間の直流電圧VH[V]の平滑化が図られる。直流電圧VHは、電力線対74の直流電圧である。インバータ60は、発電機MG1、電動機MG2、及び電動オイルポンプEOPを駆動制御するパワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)として機能する。
【0019】
動力分割機構34は、エンジン12と自動変速機18との間に設けられ、例えば遊星歯車装置で構成されている。動力分割機構34は、エンジン12から出力される駆動力を発電機MG1及び中間伝達部材36に機械的に分割する。中間伝達部材36には、電動機MG2が動力伝達可能に接続されている。中間伝達部材36は、自動変速機18の入力軸であるAT入力軸26に連結されている。動力分割機構34は、発電機MG1の運転状態が制御されることにより動力分割機構34を構成する遊星歯車装置の差動状態が制御される電気式の無段変速機として機能する。
【0020】
動力分割機構34において発電機MG1に分割されたエンジン12の駆動力により発電機MG1は発電する。発電機MG1での発電電力Wg1がインバータ60を介して電力線対74に接続されたコンデンサCに蓄えられ更にシステムメインリレー72を介してメインバッテリ70に充電されたり、その発電電力Wg1で電動機MG2が回転駆動されたりする。動力分割機構34において中間伝達部材36に分割されたエンジン12の駆動力は、走行用駆動力としてAT入力軸26を介して自動変速機18に入力される。
【0021】
自動変速機18は、周知の自動変速機であり、電子制御装置80により制御される油圧制御回路44によって異なる変速比γのうちから所望の変速比が形成される。例えば、油圧制御回路44内には、自動変速機18の変速制御用である複数の電磁弁が設けられ、その複数の電磁弁の各駆動電流のオン/オフの組み合わせが切り替えられることにより自動変速機18に設けられたクラッチやブレーキの油圧式係合装置の断接状態が切り替えられて、自動変速機18の変速比γが所望の変速比とされる。自動変速機18の出力軸であるAT出力軸28は、ディファレンシャルギヤ40及び一対の車軸30を介して一対の駆動輪32に連結されている。
【0022】
メインバッテリ70は、充放電可能な二次電池であって、主に発電機MG1、電動機MG2、及び電動オイルポンプEOPを駆動するための電力を放電(供給)したり、回生による発電機MG1での発電電力Wg1や電動機MG2での発電電力Wg2を充電したりするのに用いられる。メインバッテリ70は、システムメインリレー72を介して電力線対74に接続されている。システムメインリレー72は、電子制御装置80によって接続状態と開放状態とが切り替えられる例えばメカニカルリレーであって、メインバッテリ70と電力線対74との間において正極線及び負極線の各々に設けられている。
【0023】
補機バッテリ76は、充放電可能な二次電池であって、主に補機(エンジン制御装置68や各種センサ、スイッチなど)へ電力を供給するために用いられる。用途の相違から、補機バッテリ76は、メインバッテリ70に比較して最大限蓄電可能な電池の容量である充電容量[mAh]が小さい。また、メインバッテリ70は、補機バッテリ76に比較してバッテリ電圧Vbat[V]が高くされている。例えば、補機バッテリ76が12[V]であるのに対して、メインバッテリ70はそれよりも高電圧である。
【0024】
DC/DCコンバータ78は、電力線対74と補機バッテリ76との間に設けられ、直流を昇圧したり降圧したりする電源回路である。例えば、DC/DCコンバータ78は、電力線対74の直流電圧VHを降圧してその直流電圧VHよりも低電圧の直流を補機バッテリ76に充電したり、補機バッテリ76から供給されている直流を昇圧して補機バッテリ76よりも高電圧の直流を電力線対74に出力したりする。
【0025】
エアコン66は、車室内の空気の温度・湿度を調節する装置であって、電力線対74に接続されている。例えば、エアコン66が作動状態にある場合には、電力線対74に接続されたコンデンサCに蓄えられた電力がエアコン66で消費される。
【0026】
車両10においては、例えば走行用駆動力源のうち少なくともエンジン12を作動させて走行するエンジン走行モード及びエンジン12を作動停止(運転停止)させた状態で走行するEV走行モードが選択可能である。エンジン走行モードは、一般に高要求駆動力すなわち高負荷の領域で選択される。EV走行モードは、一般に低要求駆動力すなわち低負荷の領域で選択される。
【0027】
機械式オイルポンプMOPは、連結軸22に配設されている。機械式オイルポンプMOPは、エンジン12により回転駆動される周知のオイルポンプである。電動オイルポンプEOP及び機械式オイルポンプMOPの少なくとも一方が駆動されることで、油圧制御回路44にオイルが圧送される。このオイルは、例えばATF(Automatic Transmission Fluid)等である。
【0028】
電子制御装置80は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。なお、電子制御装置80は、本発明における「制御装置」に相当する。
【0029】
電子制御装置80には、車両10に備えられた各種センサ等(例えば、アクセル開度センサ90、エンジン回転速度センサ92、出力軸回転速度センサ94、バッテリセンサ96、MG1回転速度センサ98a、MG2回転速度センサ98bなど)による検出値に基づく各種信号等(例えば、ドライバーによる加速操作の大きさを表す加速操作量としてのアクセル開度θacc[%]、エンジン回転速度Ne[rpm]、車速V[km/h]に対応するAT出力軸28の回転速度である出力軸回転速度Nout[rpm]、メインバッテリ70のバッテリ温度THbat[℃]やバッテリ電流Ibat[A]やバッテリ電圧Vbat[V]、発電機MG1の回転速度であるMG1回転速度Nmg1[rpm]、電動機MG2の回転速度であるMG2回転速度Nmg2[rpm]など)が、それぞれ入力される。
【0030】
電子制御装置80からは、車両10に備えられた各装置(例えば、エンジン制御装置68、インバータ60、油圧制御回路44、DC/DCコンバータ78、システムメインリレー72など)に各種指令信号(例えば、エンジン12を制御するためのエンジン制御信号Se、インバータ60を介して発電機MG1の回転制御,電動機MG2の回転制御,電動オイルポンプEOPの回転制御をそれぞれ実行するためのMG1制御信号Smg1,MG2制御信号Smg2,EOP制御信号Seop、自動変速機18の変速制御を実行するための油圧制御信号Sp、DC/DCコンバータ78の電圧変換を制御するためのコンバータ制御信号Scon、システムメインリレー72の開閉を制御するためのリレー制御信号Ssmrなど)が、それぞれ出力される。
【0031】
電子制御装置80は、例えばアクセル開度θaccと車速Vとに基づいて、一対の駆動輪32に出力すべき駆動力の目標値(すなわち、AT出力軸28に出力すべき駆動力の目標値)である要求駆動力を計算する。この要求駆動力がAT出力軸28に出力されるように、エンジン12、発電機MG1、電動機MG2、及び自動変速機18がそれぞれ制御される。
【0032】
ところで、メインバッテリ70が異常又は機能制限により使用できない使用不可状態である場合には、車両10は退避走行のためにバッテリレス走行を可能とすることが望まれる。退避走行とは、走行中に何らかの不具合が発生しても車両10を安全な場所に停止させるために走行を継続させることであり、バッテリレス走行とは、バッテリ(本実施例では、メインバッテリ70)を使用せずに行われる走行である。
【0033】
図1に戻り、電子制御装置80は、バッテリ状態判定部82、SMR制御部84、及び走行制御部86を機能的に備える。
【0034】
バッテリ状態判定部82は、車両走行中においてメインバッテリ70が使用不可状態であるか否かを判定する。例えば、バッテリセンサ96で検出されたメインバッテリ70のバッテリ温度THbatやバッテリ電流Ibatやバッテリ電圧Vbatがそれらに対する所定の判定値と比較されることにより、メインバッテリ70に異常が発生してメインバッテリ70が使用不可状態となっているか否かが判定される。なお、所定の判定値は、メインバッテリ70を使用不可とするほどの異常がメインバッテリ70で発生したことを判定するための予め定められた判定値であって、例えばバッテリ温度THbat、バッテリ電流Ibat、及びバッテリ電圧Vbatのそれぞれに対して実験的に或いは設計的に予め定められた値である。また、例えばメインバッテリ70が一時的な機能制限により使用できない場合には、メインバッテリ70が使用不可状態であると判定される。
【0035】
バッテリ状態判定部82により車両走行中においてメインバッテリ70が使用不可状態であると判定されると、SMR制御部84は、システムメインリレー72を開放してメインバッテリ70から発電機MG1、電動機MG2、及び電動オイルポンプEOPへの電力供給を遮断する。なお、EV走行モードで走行中であった場合には、例えば一対の駆動輪32から入力される被駆動力によるクランキングでエンジン12の始動が行われてエンジン走行モードによる走行(バッテリレス走行)とされる。
【0036】
バッテリ状態判定部82により車両走行中においてメインバッテリ70が使用不可状態であると判定されると、走行制御部86は、バッテリレス走行により走行を継続させる。本実施例では、このバッテリレス走行において電動機MG2のMG2出力トルクTmg2を零とする。
【0037】
走行制御部86は、一対の駆動輪32に要求駆動力が中間伝達部材36を介して伝達されるようにエンジン12を作動させ、且つ、エアコン66を含む補機等での消費電力Wc[W]分を発電機MG1で発電させることで走行を継続させる。本明細書において、「補機等」は、補機バッテリ76を介して電力を消費する補機(エンジン制御装置68や各種センサ、スイッチなど)の他、エアコン66のように発電機MG1の発電電力Wg1を消費する装置を含むが、電動機MG2は含まない。
【0038】
バッテリレス走行中においては、補機等での消費電力Wcが急変する場合がある。例えば、エアコン66が作動状態から非作動状態へ変化した場合には、補機等での消費電力Wcが急減する。補機等での消費電力Wcが急減すると、発電機MG1での発電電力Wg1が消費電力Wcを超過することで車両10内(例えば電力線対74の直流電圧VH)で過電圧が発生してしまうおそれがある。電力線対74の直流電圧VHが過電圧となると、コンデンサCの耐久性が低下するおそれがある。
【0039】
なお、この車両10内で過電圧の発生を回避するために、例えばDC/DCコンバータ78を介して補機バッテリ76に充電することが考えられるが、補機バッテリ76はメインバッテリ70に比較して充電容量が小さいため、過電圧の発生の抑制効果も限定的である。
【0040】
走行制御部86は、エンジン制御部86a、MG制御部86b、油圧制御部86c、及び過電圧判定部86dを機能的に備える。なお、MG制御部86bは、過電圧を抑制する過電圧抑制制御部としての機能を有する。
【0041】
エンジン制御部86aは、バッテリレス走行を継続するため、一対の駆動輪32に要求駆動力が伝達され、且つ、補機等での消費電力Wc分が発電機MG1で発電されるようにエンジン12を制御する。MG制御部86bは、発電機MG1が消費電力Wc分を発電するように、エンジントルクTeに対する反力トルクとしてMG1出力トルクTmg1を制御する。油圧制御部86cは、自動変速機18で所望の変速比を形成するように、油圧制御回路44を制御する。これらエンジン制御部86a、MG制御部86b、及び油圧制御部86cの制御により、動力分割機構34において中間伝達部材36に分割されたエンジン12の駆動力が要求駆動力として一対の駆動輪32に伝達される。
【0042】
ここで、電動機MG2のロータの軸線を中心に回転する回転座標系において、電動機MG2のロータの磁極がつくる磁束の向きに沿った軸(例えば埋込磁石型の同期モータジェネレータでは、永久磁石の中心軸)をd軸とし、そのd軸に対して電気的に90°だけ位相が進んだ軸をq軸とする。電動機MG2のステータに巻回されたコイルに供給する供給電流のうち、その供給電流がつくる鎖交磁束がd軸となる電流成分をd軸電流といい、その供給電流がつくる鎖交磁束がq軸となる電流成分をq軸電流ということとする。電動機MG2に供給されるd軸電流は、ロータの磁極がつくる磁束と同じ方向の鎖交磁束をつくるため、d軸電流は発電機MG1での発電電力Wg1を消費するが電動機MG2に駆動トルクを出力させない。一方、電動機MG2に供給されるq軸電流は、ロータの磁極がつくる磁束と直交する方向の鎖交磁束をつくるため、電動機MG2に駆動トルクを出力させる。すなわち、電動機MG2に供給されるq軸電流によって出力される駆動トルクが電動機MG2のMG2出力トルクTmg2である。
【0043】
過電圧判定部86dは、電力線対74の直流電圧VHが制御可能範囲内すなわち過電圧が生じない範囲内であるか否かを判定する。例えば、過電圧判定部86dは、発電機MG1の発電電力Wg1がインバータ60により直流に変換されて出力される電力線対74の直流電圧VHが所定電圧値VH_jdg[V]以下であるか否かを判定する。所定電圧値VH_jdgは、発電機MG1での発電により過電圧が生じないことを判定するために実験的に或いは設計的に予め定められた判定値であって、例えばインバータ60に電気的に接続された部品(例えばコンデンサC)に過負荷を与えず耐久性の低下が実用上許容できる範囲の上限値として定められたものである。直流電圧VHが所定電圧値VH_jdgを超過した状態が継続した場合には、発電機MG1での発電による過電圧によりインバータ60に電気的に接続された部品の耐久性が低下するおそれがある。
【0044】
過電圧判定部86dにより電力線対74の直流電圧VHが制御可能範囲外すなわち過電圧が生じると判定された場合には、エンジン制御部86aとMG制御部86bとは、連携して補機等での消費電力Wcの急変に応じてエンジントルクTeを変化させるとともに、電動機MG2に供給するd軸電流を変化させる。
【0045】
具体的には、補機等での消費電力Wcが急減した場合には、エンジン制御部86aはエンジントルクTeもそれに応じて減少させ(低下させ)、補機等での消費電力Wcが急増した場合には、エンジン制御部86aはエンジントルクTeもそれに応じて増加させる。また、補機等での消費電力Wcが急減した場合には、MG制御部86bは、電動機MG2のd軸電流をそれに応じて増加させ、補機等での消費電力Wcが急増した場合には、MG制御部86bは、電動機MG2のd軸電流をそれに応じて減少させる。
【0046】
エンジン制御部86aによるエンジントルクTeの制御は、電動機MG2によるd軸電流の制御に比較して応答性が劣る。そのため、例えば補機等での消費電力Wcが急減した場合には、エンジン制御部86aによるエンジントルクTeの減少よりもMG制御部86bによる電動機MG2のd軸電流の増加の方が優先して実行される。ここにいう「優先」とは、車両10内(例えば電力線対74の直流電圧VH)で過電圧が生じると判定された場合において速やかに過電圧が生じない状態にするために、エンジントルクTeの減少よりも先に電動機MG2のd軸電流を増加させることである。したがって、消費電力Wcの急減に応じてエンジントルクTeが減少した場合には、増加させられた電動機MG2のd軸電流は減少させられる。
【0047】
図2は、
図1に示す電子制御装置80の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。
図2のフローチャートは、車両走行中に繰り返し実行される。
【0048】
まず、バッテリ状態判定部82の機能に対応するステップS10において、車両走行中にメインバッテリ70に異常が発生しメインバッテリ70が使用不可状態であるか否かが判定される。ステップS10の判定が肯定された場合は、ステップS20が実行される。ステップS10の判定が否定された場合は、リターンとなる。
【0049】
SMR制御部84の機能に対応するステップS20において、システムメインリレー72が開放されてメインバッテリ70から発電機MG1及び電動機MG2への電力供給が遮断される。そして、MG制御部86bの機能に対応するステップS30において、エアコン66を含む補機等での消費電力Wc分が発電機MG1で発電されるようにMG1出力トルクTmg1が制御される。そして、過電圧判定部86dの機能に対応するステップS40において、電力線対74の直流電圧VHが制御可能範囲内(例えば所定電圧値VH_jdg以下)であるか否かが判定される。ステップS40の判定が肯定された場合は、リターンとなる。ステップS40の判定が否定された場合は、ステップS50が実行される。
【0050】
エンジン制御部86a及びMG制御部86bの機能に対応するステップS50において、補機等での消費電力Wcの急減に応じてエンジントルクTeが減少させられるとともに、電動機MG2のd軸電流が増加させられる。なお、補機等での消費電力Wcの急減に対しては、エンジントルクTeの減少よりも電動機MG2のd軸電流の増加の実行が優先される。そしてリターンとなる。
【0051】
本実施例によれば、エンジン12を作動させたバッテリレス走行中において発電機MG1の発電により過電圧が生じると判定した場合には、電動機MG2に供給するd軸電流の増加がエンジントルクTeの低下よりも優先して実行される。これにより、バッテリレス走行中において、補機等での消費電力Wc分を発電機MG1で発電し、補機等での消費電力Wcが急減しても電動機MG2に供給するd軸電流の増加により過電圧の発生を抑制することができる。また、電動機MG2のd軸電流の増加ではドライバーの意図しない走行用駆動力が一対の駆動輪32に伝達されることが抑制されるので、ドライバーに与える違和感が抑制される。なお、過電圧の発生が抑制されることにより部品(例えばコンデンサC)の耐久性の低下を抑制することができる。
【0052】
本実施例によれば、発電機MG1の発電により過電圧が生じるとの判定は、発電機MG1の発電電力Wg1がインバータ60により直流に変換されて出力される電力線対74の直流電圧VHが所定電圧値VH_jdgを超過したことにより行われる。このように、発電機MG1の発電電力Wg1がインバータ60により直流に変換されて出力される電力線対74の直流電圧VHが所定電圧値VH_jdgを超過した場合には、過電圧が生じると判定することができる。
【実施例2】
【0053】
図3は、本発明の実施例2に係る電子制御装置180を備えるハイブリッド車両110の概略構成図であるとともに、ハイブリッド車両110における各種制御のための制御機能の要部を表す機能ブロック図である。
【0054】
ハイブリッド車両110(以下、単に「車両110」と記す。)の構成は、前述の実施例1における車両10の構成と略同じであるが、エンジン12と自動変速機18との間において動力分割機構34の替わりに別の構成となっている点と、電子制御装置80の替わりに電子制御装置180となっている点と、が主に異なる。そのため、実施例1と異なる部分を中心に説明することとし、実施例1と実質的に共通する部分には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0055】
車両110は、エンジン12と自動変速機18との間において、クラッチK0、回転電機MG、機械式オイルポンプMOP、発進クラッチWSCなどをケース20内に収容して備える。また、車両110は、インバータ60及び電子制御装置80の替わりに、インバータ160及び電子制御装置180を備える。なお、エンジン12は、車両110の走行用駆動力源である。回転電機MGは、エンジン12に連結された発電機であるとともに、一対の駆動輪32に動力伝達可能に連結された電動機でもある。すなわち、回転電機MGは、バッテリレス走行では発電機としても電動機としても用いられ、本発明における「発電機」及び「電動機」の両者に相当する。エンジン12から出力された走行用駆動力が伝達される経路が動力伝達経路PTである。
【0056】
回転電機MGは、所謂モータジェネレータであって、例えば三相同期モータジェネレータである。
【0057】
クラッチK0は、エンジン12に連結された連結軸22と、回転電機MGのロータに連結されたロータ軸24と、の間に設けられている。クラッチK0は、エンジン12とロータ軸24との間での動力伝達を断接可能なクラッチであり、例えば湿式多板型の油圧式摩擦係合装置である。
【0058】
回転電機MGは、電子制御装置180によって制御されるインバータ160によりメインバッテリ70に蓄えられた電力を用いて回転駆動され、車両110の走行用駆動力を出力する。また、回転電機MGは、エンジン12からクラッチK0を介して入力される駆動力により発電したり、一対の駆動輪32から入力される被駆動力を回生により電力に変換して発電したりする。
【0059】
インバータ160は、回転電機MGと電力線対74との間、且つ、電動オイルポンプEOPと電力線対74との間、に設けられ、電子制御装置180によって制御されることにより直流を交流に変換したり交流を直流に変換したりする電源回路である。
【0060】
発進クラッチWSCは、自動変速機18の入力軸であるAT入力軸26とロータ軸24との間の動力伝達経路PTに設けられ、動力伝達経路PTにおける動力伝達を断接可能な油圧式クラッチであり、例えば湿式多板型の油圧式摩擦係合装置である。
【0061】
機械式オイルポンプMOPは、ロータ軸24における回転電機MGと発進クラッチWSCとの間に設けられている。機械式オイルポンプMOPは、回転電機MGによる回転駆動が可能であるとともに、クラッチK0が係合されることによってエンジン12による回転駆動も可能である。
【0062】
電子制御装置180の構成は、前述の実施例1における電子制御装置80の構成と略同じであるが、走行制御部86の替わりに走行制御部186(MG制御部86bの替わりにMG制御部186b)となっている点が異なる。なお、電子制御装置180は、本発明における「制御装置」に相当する。電子制御装置180には、MG1回転速度Nmg1及びMG2回転速度Nmg2の替わりに、回転電機MGの回転速度であるMG回転速度Nmg[rpm]がMG回転速度センサ98による検出値に基づく信号として入力される。電子制御装置180からは、MG1制御信号Smg1及びMG2制御信号Smg2の替わりに、回転電機MGを回転制御するためのMG制御信号Smgがインバータ160に出力される。また。電子制御装置180からは、油圧制御回路44に自動変速機18の変速制御に加えてクラッチK0の断接制御,発進クラッチWSCの断接制御をそれぞれ実行するための油圧制御信号Spが出力される。
【0063】
電子制御装置180は、要求駆動力を計算する。この要求駆動力がAT出力軸28に出力されるように、エンジン12、回転電機MG、及び自動変速機18がそれぞれ制御される。
【0064】
走行制御部186は、エンジン制御部86a、MG制御部186b、油圧制御部86c、及び過電圧判定部86dを機能的に備える。なお、MG制御部186bは、過電圧を抑制する過電圧抑制制御部としての機能を有する。
【0065】
エンジン制御部86aは、バッテリレス走行を継続するため、一対の駆動輪32に要求駆動力が伝達され、且つ、補機等での消費電力Wc分が回転電機MGで発電されるようにエンジン12を制御する。MG制御部186bは、回転電機MGが消費電力Wc分を発電するように、エンジントルクTeに対する反力トルクとして回転電機MGの出力トルクであるMG出力トルクTmg[Nm]を制御する。油圧制御部86cは、クラッチK0を係合状態に維持し、発進クラッチWSCを係合状態に維持し、且つ自動変速機18で所望の変速比を形成するように、油圧制御回路44を制御する。これらエンジン制御部86a、MG制御部186b、及び油圧制御部86cの制御により、AT入力軸26に伝達されたエンジン12の駆動力が要求駆動力として一対の駆動輪32に伝達される。
【0066】
ここで、回転電機MGのロータの軸線を中心に回転する回転座標系において、回転電機MGのロータの磁極がつくる磁束の向きに沿った軸をd軸とし、そのd軸に対して電気的に90°だけ位相が進んだ軸をq軸とする。
【0067】
過電圧判定部86dにより電力線対74の直流電圧VHが制御可能範囲外すなわち過電圧が生じると判定された場合には、エンジン制御部86aとMG制御部186bとは、連携して補機等での消費電力Wcの急変に応じてエンジントルクTeを変化させるとともに、回転電機MGのd軸電流を変化させる。具体的には、補機等での消費電力Wcが急減した場合には、エンジン制御部86aはエンジントルクTeもそれに応じて減少させ(低下させ)、MG制御部186bは、回転電機MGのd軸電流をそれに応じて増加させる。なお、このエンジン制御部86aによるエンジントルクTeの減少よりもMG制御部186bによる回転電機MGのd軸電流の増加の方が優先して実行される。
【0068】
本実施例によれば、エンジン12に連結された発電機と、一対の駆動輪32に動力伝達可能に連結された電動機と、が同一の回転電機MGで実現されている。単一の回転電機MGが発電機及び電動機として機能する場合であっても、前述の実施例1と同様に、過電圧の発生が抑制されるとともに、ドライバーの意図しない走行用駆動力が一対の駆動輪32に伝達されることが抑制されてドライバーに与える違和感が抑制される。
【0069】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0070】
前述の実施例1、2における車両10,110には、インバータ60,160と、システムメインリレー72及びDC/DCコンバータ78と、の間の電力線対74上に直流を昇圧したり降圧したりする昇圧コンバータが設けられていなかったが、昇圧コンバータが設けられた態様であっても良い。
【0071】
前述の実施例1、2では、発電機MG1や回転電機MGの発電により過電圧が生じるとの判定は、電力線対74の直流電圧VHが所定電圧値VH_jdgを超過したことにより行われたが、この態様に限らない。例えば、実施例1において発電機MG1の発電により過電圧が生じるとの判定は、発電機MG1の発電電力Wg1と補機等での消費電力Wcとの電力差ΔW(=Wg1-Wc)が所定電力値W_jdg[W]を超過したことにより行われても良い。所定電力値W_jdgは、車両10,110内で過電圧が生じないことを判定するために実験的に或いは設計的に予め定められた判定値であって、例えばインバータ60に電気的に接続された部品(例えばコンデンサC)に過負荷を与えず耐久性の低下が実用上許容できる範囲の上限値として定められたものである。例えば、所定電力値W_jdgは、コンデンサCの容量[F]の大きさに応じて予め定められた電力差ΔW(=Wg1-Wc)の上限値である。電力差ΔWが所定電力値W_jdgを超過した状態が継続した場合には、発電機MG1や回転電機MGの発電による過電圧によりインバータ60,160に電気的に接続された部品の耐久性が低下するおそれがある。
【0072】
前述の実施例1では、バッテリレス走行において電動機MG2のMG2出力トルクTmg2が零とされたが、これに限らない。例えば、バッテリレス走行において電動機MG2のMG2出力トルクTmg2が所定値とされる態様であっても良い。この態様の場合には、動力分割機構34において中間伝達部材36に分割されたエンジン12の駆動力及び電動機MG2から中間伝達部材36に出力された所定値のMG2出力トルクTmg2を合わせたものが、要求駆動力をAT入力軸26上に換算したものとされる。バッテリレス走行において、走行制御部86は、要求駆動力が一対の駆動輪32に伝達されるようにエンジン12を作動させ、且つ、エアコン66を含む補機等での消費電力Wc[W]と電動機MG2に供給する電力(すなわち電動機MG2での消費電力Wm2)との合計電力Wsum(=Wc+Wm2)分を発電機MG1で発電させることで走行を継続させる。そして、補機等での消費電力Wcが急減した場合には、前述の実施例1と同様に、エンジン制御部86aはエンジントルクTeもそれに応じて減少させ(低下させ)、MG制御部86bは電動機MG2のd軸電流をそれに応じて増加させる。
【0073】
前述の実施例1,2では、エンジン12、インバータ60,160、及び油圧制御回路44を制御するのは電子制御装置80,180であったが、電子制御装置80,180は、必要に応じてエンジン12を制御するエンジン制御用ECU(Electronic Control Unit)、インバータ60,160を制御するインバータ制御用ECU、及び油圧制御回路44を制御する動力伝達制御用ECUのそれぞれに分割された構成であっても良い。
【0074】
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0075】
10、110:ハイブリッド車両
12:エンジン
32:一対の駆動輪
80、180:電子制御装置(制御装置)
MG:回転電機(発電機、電動機)
MG1:発電機
MG2:電動機
Te:エンジントルク(エンジンの出力トルク)