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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】圧電モーターの制御方法およびロボット
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/14 20060101AFI20250121BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
H02N2/14
B25J17/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021018925
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022121928
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友寿
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-022872(JP,A)
【文献】特開2016-010253(JP,A)
【文献】特開2010-246177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0211422(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/14
B25J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸まわりに回転する被駆動体と、
前記被駆動体に駆動力を伝達することにより前記被駆動体を回転させる複数の圧電振動子と、を有し、
前記複数の圧電振動子には、第1圧電振動子と、前記回転軸からの距離が前記第1圧電振動子よりも大きい第2圧電振動子と、が含まれ、
前記被駆動体を加速させる際、
前記被駆動体の回転速度が第1速度未満の場合は、前記第2圧電振動子の駆動力により前記被駆動体を回転させ、
前記被駆動体の回転速度が前記第1速度以上の場合は、前記第1圧電振動子の駆動力により前記被駆動体を回転させることを特徴とする圧電モーターの制御方法。
【請求項2】
前記圧電振動子は、圧電素子への通電により振動する振動部と、前記被駆動体に当接し、前記振動部の振動を前記被駆動体に伝達する伝達部と、を有し、
駆動力を前記被駆動体に伝達するときは、前記伝達部を楕円振動させ、
駆動力を前記被駆動体に伝達しないときは、前記伝達部を前記被駆動体に接近および離間する方向に往復振動させる請求項1に記載の圧電モーターの制御方法。
【請求項3】
前記被駆動体の加速時は、前記被駆動体の回転速度が前記第1速度以上になったら前記第1圧電振動子の振動を前記往復振動から前記楕円振動とし、前記第2圧電振動子の振動を前記楕円振動から前記往復振動とする請求項2に記載の圧電モーターの制御方法。
【請求項4】
前記第1圧電振動子および前記第2圧電振動子が共に前記楕円振動する状態を経て、前記第1圧電振動子が前記楕円振動し、前記第2圧電振動子が前記往復振動する状態となる請求項3に記載の圧電モーターの制御方法。
【請求項5】
前記第1圧電振動子および前記第2圧電振動子が共に前記楕円振動する状態では、
前記第1圧電振動子の駆動力を前記第2圧電振動子の駆動力よりも小さくする請求項に記載の圧電モーターの制御方法。
【請求項6】
前記被駆動体の減速時は、前記被駆動体の回転速度が第2速度以下になったら前記第1圧電振動子の振動を前記楕円振動から前記往復振動とし、前記第2圧電振動子の振動を前記往復振動から前記楕円振動とする請求項2に記載の圧電モーターの制御方法。
【請求項7】
前記被駆動体の減速時は、前記第1圧電振動子および前記第2圧電振動子の振動を共に前記楕円振動とする請求項2に記載の圧電モーターの制御方法。
【請求項8】
前記被駆動体の減速時は、前記第1圧電振動子および前記第2圧電振動子の駆動を停止する請求項2に記載の圧電モーターの制御方法。
【請求項9】
相互連結されている第1部材および第2部材と、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の圧電モーターの制御方法により駆動が制御され、前記第1部材に対して前記第2部材を変位させる圧電モーターと、を有することを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電モーターの制御方法およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、同一円周上に等間隔配置された3つの振動子と、これら3つの振動子の駆動により回転するリング形状の被駆動体と、を有する振動型アクチュエーターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-068112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の振動型アクチュエーターでは、3つの振動子部が同一円周上に位置している。そのため、被駆動体の径が大きければ高トルク/低速度に向いた振動型アクチュエーターとなり、反対に、被駆動体の径が小さければ、低トルク/高速度に向いた振動型アクチュエーターとなる。したがって、広い速度領域の全域にわたって優れたエネルギー効率で駆動させることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の圧電モーターの制御方法は、回転軸まわりに回転する被駆動体と、
前記被駆動体に駆動力を伝達することにより前記被駆動体を回転させる複数の圧電振動子と、を有し、
前記複数の圧電振動子には、第1圧電振動子と、前記回転軸からの距離が前記第1圧電振動子よりも大きい第2圧電振動子と、が含まれ、
前記被駆動体を加速させる際、
前記被駆動体の回転速度が第1速度未満の場合は、前記第2圧電振動子の駆動力により前記被駆動体を回転させ、
前記被駆動体の回転速度が前記第1速度以上の場合は、前記第1圧電振動子の駆動力により前記被駆動体を回転させる。
【0006】
本発明のロボットは、相互連結されている第1部材および第2部材と、
上述の制御方法により駆動が制御され、前記第1部材に対して前記第2部材を変位させる圧電モーターと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る圧電モーターを示す断面図である。
図2】圧電モーターが有する圧電駆動装置を示す正面図である。
図3】圧電駆動装置が有する圧電振動子を示す正面図である。
図4】圧電駆動装置を回転軸に沿う方向から見た平面図である。
図5】圧電振動子に印加する駆動信号を示す図である。
図6】圧電振動子の駆動状態を示す正面図である。
図7】圧電モーターの制御方法を示す図である。
図8】圧電モーターの制御方法を示す図である。
図9】第2実施形態に係る圧電モーターの制御方法を示す図である。
図10】第3実施形態に係る圧電モーターの制御方法を示す図である。
図11】本発明の第4実施形態に係るロボットを示す斜視図である。
図12】第1アームと第2アームとの関節部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の圧電モーターの制御方法およびロボットを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧電モーターを示す断面図である。図2は、圧電モーターが有する圧電駆動装置を示す正面図である。図3は、圧電駆動装置が有する圧電振動子を示す正面図である。図4は、圧電駆動装置を回転軸に沿う方向から見た平面図である。図5は、圧電振動子に印加する駆動信号を示す図である。図6は、圧電振動子の駆動状態を示す正面図である。図7および図8は、それぞれ、圧電モーターの制御方法を示す図である。
【0010】
なお、以下では、説明の便宜上、圧電振動子のローター側を「先端側」とも言い、ローターと反対側を「基端側」とも言う。また、圧電振動子固有の座標軸として、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、X軸に沿う方向をX軸方向、Y軸に沿う方向をY軸方向、Z軸に沿う方向をZ軸方向とも言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」とも言い、矢印と反対側を「マイナス側」とも言う。また、本明細書では、未満/以上と以下/超は同義である。
【0011】
図1に示す圧電モーター100は、ベース200と、ベース200に対して回転軸Oまわりに回転可能な被駆動体としてのローター300と、ローター300を回転軸Oまわりに回転させる圧電駆動装置400と、ローター300の回転量を検出する図示しないエンコーダーと、圧電駆動装置400の駆動を制御する制御装置600と、を有する。このような圧電モーター100では、制御装置600による制御により圧電駆動装置400が駆動し、圧電駆動装置400で生じる駆動力がローター300に伝わることにより、ローター300が回転軸Oまわりに回転する。
【0012】
ローター300は、ベアリングBを介してベース200に軸受けされ、ベース200に対して回転軸Oまわりに回転可能となっている。また、ローター300は、回転軸Oを中心とする円環状をなしており、内周310および外周320を有する。また、ベース200は、その上面に配置された2つの当接部330、340を有する。当接部330は、回転軸Oを中心とする円環状をなし、内周310に沿って配置されている。また、当接部340は、回転軸Oを中心とする円環状をなし、外周320に沿って配置されている。これら2つの当接部330、340には、圧電駆動装置400が当接している。
【0013】
圧電駆動装置400は、複数の圧電振動子410と、各圧電振動子410をローター300に向けて付勢する付勢部材490と、を有する。図2に示すように、各圧電振動子410は、振動部411と、振動部411を支持する支持部412と、振動部411と支持部412とを接続する接続部413と、振動部411の振動をローター300に伝達する凸状の伝達部414と、を有する。
【0014】
図3に示すように、振動部411は、Z軸方向を厚さ方向とし、X軸およびY軸を含むX-Y平面に広がる板状である。また、振動部411は、平面視で、Y軸方向を長手とする長手形状、特に本実施形態では長方形である。ただし、振動部411の形状は、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。また、振動部411は、駆動用の圧電素子420A~420Fと、振動部411の振動を検出する検出用の圧電素子420Gと、を有する。振動部411の中央部には、圧電素子420C、420DがY軸方向に並んで配置されている。また、圧電素子420C、420DのX軸方向プラス側には圧電素子420A、420BがY軸方向に並んで配置され、X軸方向マイナス側には圧電素子420E、420FがY軸方向に並んで配置されている。これら圧電素子420A~420Fは、それぞれ、通電によってY軸方向に伸縮する。ただし、駆動用の圧電素子の数や配置は、振動部411に所望の振動を励振することができれば特に限定されない。
【0015】
検出用の圧電素子420Gは、圧電素子420C、420Dの間に配置されている。圧電素子420Gは、振動部411の振動に応じた外力を受け、受けた外力に応じた検出信号を出力する。そのため、圧電素子420Gから出力される検出信号に基づいて、振動部411の振動状態を検知することができる。なお、検出用の圧電素子の数や配置は、振動部411の振動を検出することができれば特に限定されない。また、検出用の圧電素子は、省略してもよい。
【0016】
これら圧電素子420A~420Fは、例えば、圧電体を一対の電極で挟み込んだ構成である。圧電体の構成材料は、特に限定されず、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、メタニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電セラミックスを用いることができる。また、圧電体としては、上述した圧電セラミックスの他にも、ポリフッ化ビニリデン、水晶等を用いてもよい。また、圧電体の形成方法としては、特に限定されず、バルク材料から形成してもよいし、ゾル-ゲル法やスパッタリング法を用いて形成してもよい。
【0017】
伝達部414は、振動部411の先端部に設けられ、振動部411からY軸方向マイナス側へ突出している。そして、伝達部414がローター300の当接部330、340と接触している。そのため、振動部411の振動は、伝達部414を介してローター300に伝達される。
【0018】
以上、圧電振動子410の構成について説明した。図1および図4に示すように、これら複数の圧電振動子410には、第1圧電振動子410Aと、第2圧電振動子410Bと、が含まれている。第1圧電振動子410Aは、当接部330と対向して配置され、その伝達部414が当接部330と接触している。一方、第2圧電振動子410Bは、当接部340と対向して配置され、その伝達部414が当接部340と接触している。そのため、第2圧電振動子410Bと回転軸Oとの離間距離Dbは、第1圧電振動子410Aと回転軸Oとの離間距離Daよりも大きい。つまり、Db>Daである。
【0019】
また、図4に示すように、第1圧電振動子410Aは、当接部330に沿って回転軸Oまわりに等間隔に複数配置されている。同様に、第2圧電振動子410Bは、当接部340に沿って回転軸Oまわりに等間隔に複数配置されている。このように、第1圧電振動子410Aおよび第2圧電振動子410Bを複数配置することにより、より大きな駆動力を発生させることができる。なお、第1圧電振動子410Aおよび第2圧電振動子410Bの数としては、それぞれ、特に限定されず、1つであってもよい。また、第1圧電振動子410Aと第2圧電振動子410Bの数は、同じであっても異なっていてもよい。内周310は、外周320よりも短くなるため、本実施形態では、第1圧電振動子410Aの数(10個)は、第2圧電振動子410Bの数(20個)よりも少ない。
【0020】
図2に示すように、付勢部材490は、圧電振動子410毎に配置されている。付勢部材490は、圧電振動子410をローター300に向けて付勢し、伝達部414を当接部330、340に押し当てる。付勢部材490は、圧電振動子410の支持部412を保持する保持部491と、圧電振動子410をベース200に固定する基台492と、保持部491と基台492とを接続する一対のばね群493、494と、を有する。付勢部材490は、ばね群493、494を撓ませた状態でベース200に固定されており、ばね群493、494の復元力を利用して圧電振動子410を当接部330、340に向けて付勢する。ただし、付勢部材490の構成は、特に限定されない。
【0021】
制御装置600は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサーと、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能なプログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶されたプログラムを読み込んで実行する。このような制御装置600は、図示しないホストコンピューターからの指令を受け、この指令に基づいて各圧電振動子410を駆動する。なお、本実施形態では、全ての第1圧電振動子410Aを一括制御し、全ての第2圧電振動子410Bを一括制御する。これにより、装置構成が簡単となる。ただし、これに限定されず、例えば、全ての圧電振動子410を独立して制御してもよい。また、例えば、第1圧電振動子410Aを複数のグループに分け、グループごとに独立して制御してもよい。同様に、第2圧電振動子410Bを複数のグループに分け、グループごとに独立して制御してもよい。
【0022】
例えば、図5に示す駆動信号V1を圧電素子420A、420Fに印加し、駆動信号V2を圧電素子420C、420Dに印加し、駆動信号V3を圧電素子420B、420Eに印加すると、図6に示すように、振動部411がY軸方向に伸縮振動しつつZ軸方向に屈曲振動し、これらの振動が合成されて伝達部414の先端が矢印A1で示すように反時計回りに楕円軌道を描く楕円運動する。そして、伝達部414の楕円運動により、ローター300が送り出され、ローター300が矢印B1で示すように順回転する。駆動信号V1、V3の波形を切り換えると、ローター300が逆回転する。なお、「楕円運動」とは、軌跡が楕円と一致する運動の他にも、例えば、軌跡が円、長円等、楕円から若干ずれた運動も含む意味である。
【0023】
以下では、説明の便宜上、振動部411のY軸方向への伸縮振動を「往復振動」とも言い、X軸方向への屈曲振動を「屈曲振動」とも言う。往復振動は、圧電素子420C、420Dへの駆動信号V2の印加により励振され、屈曲振動は、圧電素子420A、420B、420E、420Fへの駆動信号V1、V3の印加により励振される。そのため、往復振動は、駆動信号V2によって制御され、屈曲振動は、駆動信号V1、V3によって制御される。
【0024】
次に、制御装置600による圧電モーター100の駆動制御方法について、図7に示すように、ローター300を回転位置θ0から回転位置θ1まで回転移動させる例について代表して説明する。回転位置θ0から回転位置θ1までの回転移動中には、ローター300を停止状態から目標最高速度Vmまで加速させる加速領域Q1と、ローター300を目標最高速度Vmに維持する等速領域Q2と、ローター300を目標最高速度Vmから停止状態まで減速させる減速領域Q3と、を有する。
【0025】
ここで、前述したように、第2圧電振動子410Bと回転軸Oとの離間距離Dbは、第1圧電振動子410Aと回転軸Oとの離間距離Daよりも大きい。そのため、消費電力が同じであれば(つまり、駆動信号V1、V2、V3の振幅が同じであれば)、第2圧電振動子410Bの方が第1圧電振動子410Aよりもローター300を大きいトルクで回転させることができ、反対に、第1圧電振動子410Aの方が第2圧電振動子410Bよりもローター300を高速に回転させることができる。そのため、例えば、自動車の変速機のように、必要な回転速度、必要なトルクに応じて駆動させる圧電振動子410を第1圧電振動子410A、第2圧電振動子410Bから選択することにより、最適な駆動状態を選択することができ、優れた駆動効率を発揮することができる。
【0026】
[加速領域Q1]
まず、制御装置600は、第2圧電振動子410Bを楕円振動させる。これにより、大きなトルクでローター300を回転させることができ、停止状態のローター300をスムーズに加速させることができる。また、第1圧電振動子410Aの楕円振動を用いた場合と比べて高いエネルギー効率でローター300を回転させることができ、圧電モーター100の省電力駆動が可能となる。
【0027】
なお、各圧電振動子410は、付勢部材490によって当接部330、340に押し付けられている。そのため、第1圧電振動子410Aが停止したままだと、第1圧電振動子410Aがブレーキとして作用してローター300の加速が阻害されるおそれがある。そこで、制御装置600は、第1圧電振動子410Aを往復振動させる。これにより、第1圧電振動子410Aの伝達部414が当接部330と当接・離間を繰り返し、実質的にブレーキが解除された状態となる。そのため、第2圧電振動子410Bの楕円振動によってローター300をスムーズに加速させることができ、エネルギーロスが小さくなる。
【0028】
ローター300の回転速度つまり角速度が予め設定されている第1速度Vr1以上となったら、制御装置600は、ローター300の駆動を担う圧電振動子410を第2圧電振動子410Bから第1圧電振動子410Aに切り替える。つまり、ローター300の回転速度が第1速度Vr1以上となったら、第1圧電振動子410Aの振動を往復振動から楕円振動に移行させ、第2圧電振動子410Bの振動を楕円振動から往復振動に移行させる。なお、ローター300の回転速度は、図示しないエンコーダーの出力を用いて検出することができる。これにより、より高い速度でローター300を回転させることができ、ローター300をスムーズに加速させることができる。また、第2圧電振動子410Bの楕円振動を用いてそのまま加速させた場合と比べて高いエネルギー効率でローター300を回転させることができ、圧電モーター100の省電力駆動が可能となる。
【0029】
第2圧電振動子410Bの振動を楕円振動から往復振動に移行させるのは、前述した理由と同様であり、第2圧電振動子410Bがブレーキになることを抑制するためである。
【0030】
第1速度Vr1としては、特に限定されず、離間距離Da、Dbの値に基づいてエネルギー効率がよりよくなるように適宜設定することができる。また、第1速度Vr1は、一定であってもよいし、例えば、指定された加速度に応じて変化してもよい。例えば、制御装置600は、指定された加速度が大きい程、第1速度Vr1を高めてもよい。これにより、より高速域まで第2圧電振動子410Bを用いることができるため、より高速まで急峻に加速させることができる。
【0031】
本実施形態では、ローター300の駆動を担う圧電振動子410を第2圧電振動子410Bから第1圧電振動子410Aに切り替える際、第1、第2圧電振動子410A、410Bが共に楕円振動する時間帯T1が設けられている。つまり、ローター300の回転速度が第1速度Vr1以上となっても、そこから所定時間あるいはローター300の回転速度が所定値以上となるまでは、第1圧電振動子410Aを楕円振動させた後も第2圧電振動子410Bの楕円振動を継続する。このような時間帯T1を設けることにより、動力を途切れさせることなく、第2圧電振動子410Bから第1圧電振動子410Aに切り替えることができる。そのため、動力のスムーズな切り替えが可能となる。
【0032】
ローター300の駆動を担う圧電振動子410を第1圧電振動子410Aに切り替えた後は、第1圧電振動子410Aの楕円振動によってローター300を目標最高速度Vmまで加速させる。
【0033】
[等速領域Q2]
等速領域Q2では、制御装置600は、ローター300の回転速度を目標最高速度Vmに維持する。
【0034】
[減速領域Q3]
減速領域Q3では、前述した加速領域Q1とは逆の手順によってローター300を減速させる。まず、制御装置600は、第1圧電振動子410Aの楕円振動の振幅を徐々に小さくし、ローター300を減速させる。そして、ローター300の回転速度が第2速度Vr2以下となったら、ローター300の駆動を担う圧電振動子410を第1圧電振動子410Aから第2圧電振動子410Bに切り替える。つまり、ローター300の回転速度が第2速度Vr2以下となったら、第2圧電振動子410Bの振動を往復振動から楕円振動に移行させ、第1圧電振動子410Aの振動を楕円振動から往復振動させる。これにより、大きなトルクでローター300を回転させることができ、ローター300をスムーズに減速させることができる。また、第1圧電振動子410Aの楕円振動を用いてそのまま減速させた場合と比べて高いエネルギー効率でローター300を減速させることができ、圧電モーター100の省電力駆動が可能となる。
【0035】
第1圧電振動子410Aの振動を楕円振動から往復振動に移行させるのは、前述した理由と同様であり、第1圧電振動子410Aがブレーキになって減速が不安定となることを抑制するためである。
【0036】
ここで、本実施形態では、ローター300の駆動を担う圧電振動子410を第1圧電振動子410Aから第2圧電振動子410Bに切り替える際、第1、第2圧電振動子410A、410Bが共に楕円振動する時間帯T2が設けられている。つまり、ローター300の回転速度が第2速度Vr2以下となっても、そこから所定時間あるいはローター300の回転速度が所定値以下となるまでは、第2圧電振動子410Bを楕円振動させた後も第1圧電振動子410Aの楕円振動を継続する。このような時間帯T2を設けることにより、動力を途切れさせることなく、第1圧電振動子410Aから第2圧電振動子410Bに切り替えることができる。そのため、動力のスムーズな切り替えが可能となる。
【0037】
なお、第2速度Vr2としては、特に限定されず、離間距離Da、Dbの値に基づいてエネルギー効率がよりよくなるように適宜設定することができる。また、第2速度Vr2は、一定であってもよいし、例えば、指定された加速度に応じて変化してもよい。例えば、制御装置600は、指定された減速度が大きい程、第2速度Vr2を高めてもよい。これにより、より高速域から第2圧電振動子410Bを用いることができるため、より高速域から急峻に減速させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、加速時に第2圧電振動子410Bから第1圧電振動子410Aに切り替える第1速度Vr1と、減速時に第1圧電振動子410Aから第2圧電振動子410Bに切り替える第2速度Vr2とが同じであるが、これに限定されず、異なっていてもよい。
【0039】
ローター300の駆動を担う圧電振動子410を第2圧電振動子410Bに切り替えた後は、第2圧電振動子410Bの楕円振動の振幅を徐々に小さくし、ローター300が回転位置θ1に到達したときに第1、第2圧電振動子410A、410Bの駆動を共に停止する。第1、第2圧電振動子410A、410Bの駆動を停止した状態では、第1、第2圧電振動子410A、410Bがブレーキとして機能するため、ベース200に対するローター300の回転が阻止され、ローター300の位置が回転位置θ1に維持される。つまり、圧電モーター100によれば、圧電振動子410がローター300を回転させる駆動源としても、ローター300の回転を阻止するブレーキとしても機能するため、駆動源の他にブレーキを別途設ける必要がない。そのため、圧電モーター100の小型化を図ることができる。
【0040】
以上、制御装置600による圧電モーター100の駆動制御方法について説明した。ただし、制御装置600による圧電モーター100の駆動制御方法は、上記の方法に限定されない。例えば、加速時、減速時または等速時に関わらず、より大きなトルクでローター300を回転させたい場合には、第1、第2圧電振動子410A、410Bを共に楕円振動させればよい。これにより、第1、第2圧電振動子410A、410Bの協働によって、より大きなトルクでローター300を回転させることができる。例えば、図8に示す例では、加速領域Q1の全域と減速領域Q3の全域とでは第1、第2圧電振動子410A、410Bを共に楕円振動させ、等速領域Q2では第1圧電振動子410Aを楕円振動させ、第2圧電振動子410Bを往復振動させている。
【0041】
なお、Db>Daであるため、第1、第2圧電振動子410A、410Bを同じ振幅で楕円振動させてしまうと、ローター300の内周側に加わる角速度が外周側に加わる角速度よりも大きくなってしまうため、内側に位置する第1圧電振動子410Aがブレーキのように作用し、外側に位置する第2圧電振動子410Bがローター300に引きずられるような形となる。そのため、ローター300のスムーズな回転が阻害され、ローター300や伝達部414の摩耗が過度に進行したり、駆動効率が悪化したりするおそれがある。
【0042】
そこで、ローター300の内周側と外周側とで生じる角速度が等しくなるように、第1圧電振動子410Aの駆動力を第2圧電振動子410Bの駆動力よりも小さくすることが好ましい。駆動力を小さくする方法としては、例えば、第2圧電振動子410Bに印加する駆動信号V1、V3の電圧に対して、第1圧電振動子410Aに印加する駆動信号V1、V3の電圧を小さくする方法が挙げられる。これにより、第1圧電振動子410Aの楕円振動の振幅が第2圧電振動子410Bの楕円振動の振幅よりも小さくなり、第1圧電振動子410Aの駆動力が第2圧電振動子410Bの駆動力よりも小さくなる。したがって、上述した問題の発生が抑制され、ローター300をスムーズに回転させることができる。
【0043】
なお、角速度は、概ね駆動信号V1、V3の電圧比に比例するため、例えば、Db、Daの比に基づいて第1圧電振動子410Aに印加する駆動信号V1、V3の大きさを決定してもよい。つまり、第1圧電振動子410Aに印加する駆動信号V1、V3の大きさを、第2圧電振動子410Bに印加する駆動信号V1、V3の大きさのDa/Db程度としてもよい。これにより、ローター300の内周側と外周側とで生じる角速度がほぼ等しくなり、ローター300のスムーズな回転が可能となる。また、そのため、ローター300や伝達部414の摩耗を抑制することができると共に、高いエネルギー効率でローター300を回転させることができる。
【0044】
以上のような圧電モーターの制御方法は、前述したように、回転軸Oまわりに回転する被駆動体としてのローター300と、ローター300に駆動力を伝達することによりローター300を回転させる複数の圧電振動子410と、を有し、複数の圧電振動子410には、第1圧電振動子410Aと、回転軸Oからの距離が第1圧電振動子410Aよりも大きい第2圧電振動子410Bと、が含まれ、ローター300を加速させる際、ローター300の回転速度が第1速度Vr未満の場合は、第2圧電振動子410Bの駆動力をローター300に伝達することによりローター300を回転させ、ローター300の回転速度が第1速度Vr以上の場合は、第1圧電振動子410Aの駆動力をローター300に伝達することによりローター300を回転させる。このように、ローター300の回転速度に応じてローター300を駆動させる圧電振動子410を選択することにより、優れたエネルギー効率でローター300を回転させることができる。
【0045】
また、前述したように、圧電振動子410は、圧電素子420A~420Fへの通電により振動する振動部411と、ローター300に当接し、振動部411の振動をローター300に伝達する伝達部414と、を有する。そして、駆動力をローター300に伝達するときは、伝達部414を楕円振動させ、駆動力をローター300に伝達しないときは、伝達部414をローター300に接近および離間する方向に往復振動させる。これにより、駆動力を伝達しない側の圧電振動子410がブレーキとなって、駆動効率が低下するのを抑制することができる。
【0046】
また、前述したように、ローター300の加速時は、ローター300の回転速度が第1速度Vr以上になったら第1圧電振動子410Aの振動を往復振動から楕円振動とし、第2圧電振動子410Bの振動を楕円振動から往復振動とする。これにより、優れたエネルギー効率でローター300を加速させることができる。
【0047】
また、前述したように、第1圧電振動子410Aおよび第2圧電振動子410Bが共に楕円振動する状態を経て、第1圧電振動子410Aが楕円振動し、第2圧電振動子410Bが往復振動する状態となる。これにより、動力を途切れさせることなく、第2圧電振動子410Bから第1圧電振動子410Aに切り替えることができる。そのため、動力のスムーズな切り替えが可能となる。
【0048】
また、前述したように、第1圧電振動子410Aおよび第2圧電振動子410Bが共に楕円振動する状態では、第1圧電振動子410Aの駆動力を第2圧電振動子410Bの駆動力よりも小さくする。これにより、ローター300の内周側と外周側とで生じる角速度の差が小さく、好ましくはゼロとなり、ローター300を高いエネルギー効率でスムーズに回転させることができる。
【0049】
また、前述したように、ローター300の減速時は、ローター300の回転速度が第2速度Vr2以下になったら第1圧電振動子410Aの振動を楕円振動から往復振動とし、第2圧電振動子410Bの振動を往復振動から楕円振動とする。これにより、優れたエネルギー効率でローター300を減速させることができる。
【0050】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態に係る圧電モーターの制御方法を示す図である。
【0051】
本実施形態の圧電モーターの制御方法は、減速領域Q3での制御方法が異なること以外は、前述した第1実施形態の圧電モーターの制御方法と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関しては、その説明を省略する。また、図9において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0052】
[減速領域Q3]
図9に示すように、本実施形態の減速領域Q3では、まず、制御装置600は、第1圧電振動子410Aの楕円振動の振幅を徐々に小さくし、ローター300を減速させる。そして、ローター300の回転速度が第2速度Vr2以下となったら、ローター300の駆動を担う圧電振動子410に第2圧電振動子410Bを追加する。つまり、ローター300の回転速度が第2速度Vr2以下となったら、第1圧電振動子410Aの振動を楕円振動に維持したまま、第2圧電振動子410Bの振動を往復振動から楕円振動に移行させ、第1、第2圧電振動子410Bの協働によりローター300を回転させる。これにより、より大きなトルクでローター300を回転させることができ、かつ、静止摩擦力によりローター300を減速させることができるため、ローター300をスムーズにかつ高い減速度で減速させることができる。
【0053】
なお、第2速度Vr2以下では、ローター300の内周側と外周側とで生じる角速度が等しくなるように、第1圧電振動子410Aの駆動力を第2圧電振動子410Bの駆動力よりも小さくする。これにより、第1圧電振動子410Aの楕円振動の振幅が第2圧電振動子410Bの楕円振動の振幅よりも小さくなり、第1圧電振動子410Aの駆動力が第2圧電振動子410Bの駆動力よりも小さくなる。したがって、前述した第1実施形態で述べたような問題の発生が抑制され、ローター300をスムーズに回転させることができる。
【0054】
ローター300の駆動を担う圧電振動子410を第1、第2圧電振動子410A、410Bに切り替えた後は、第1、第2圧電振動子410A、410Bの楕円振動の振幅を徐々に小さくし、ローター300が回転位置θ1に到達したときに第1、第2圧電振動子410A、410Bの駆動を共に停止する。
【0055】
以上のように、本実施形態の圧電モーターの制御方法では、ローター300の減速時は、第1圧電振動子410Aおよび第2圧電振動子410Bの振動を共に楕円振動とする。これにより、より大きなトルクでローター300を回転させることができ、ローター300をスムーズにかつ高い減速度で減速させることができる。
【0056】
このような第2実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。なお、第2実施形態としては、これに限定されず、例えば、減速領域Q3の全域において、第1、第2圧電振動子410A、410Bを共に楕円振動させることによりローター300を回転、減速させてもよい。
【0057】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態に係る圧電モーターの制御方法を示す図である。
【0058】
本実施形態の圧電モーターの制御方法は、減速領域Q3での制御方法が異なること以外は、前述した第1実施形態の圧電モーターの制御方法と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関しては、その説明を省略する。また、図10において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0059】
[減速領域Q3]
図10に示すように、本実施形態の減速領域Q3では、まず、制御装置600は、第1圧電振動子410Aの楕円振動の振幅を徐々に小さくし、ローター300を減速させる。そして、ローター300の回転速度が第2速度Vr2以下となったら、第1、第2圧電振動子410A、410Bの駆動を共に停止する。これにより、ローター300にブレーキがかかり、ローター300を減速させることができる。このような方法によれば、第1、第2圧電振動子410A、410Bへの通電が不要となるため、圧電モーター100の省電力駆動が可能となる。
【0060】
以上のように、本実施形態の圧電モーターの制御方法では、ローター300の減速時は、第1圧電振動子410Aおよび第2圧電振動子410Bの駆動を停止する。これにより、ローター300にブレーキがかかり、ローター300を減速させることができる。また、第1、第2圧電振動子410A、410Bへの通電が不要となるため、圧電モーター100の省電力駆動が可能となる。
【0061】
このような第3実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。なお、第3実施形態としては、これに限定されず、例えば、減速領域Q3の全域において、第1、第2圧電振動子410A、410Bの駆動を共に停止してもよい。
【0062】
<第4実施形態>
図11は、本発明の第4実施形態に係るロボットを示す斜視図である。図12は、第1アームと第2アームとの関節部分を示す断面図である。
【0063】
図11に示すロボット1000は、精密機器やこれを構成する部品の給材、除材、搬送および組立等の作業を行うことができる。このようなロボット1000は、6軸多関節ロボットであり、床や天井に固定されるベース1100と、ベース1100に支持されたマニピュレーター1200と、を有する。
【0064】
マニピュレーター1200は、複数の相互連結されたアームを有することにより複数自由度で運動するロボティックアームであり、ベース1100に回動自在に連結された第1アーム1210と、第1アーム1210に回動自在に連結された第2アーム1220と、第2アーム1220に回動自在に連結された第3アーム1230と、第3アーム1230に回動自在に連結された第4アーム1240と、第4アーム1240に回動自在に連結された第5アーム1250と、第5アーム1250に回動自在に連結された第6アーム1260と、第6アーム1260に装着されたエンドエフェクター1270と、を有する。
【0065】
なお、これら第1~第6アーム1210~1260およびエンドエフェクター1270のうちから任意に選択したものを第1部材とし、この第1部材を除いた中から任意に選択したものを第2部材とすることができる。また、例えば、エンドエフェクター1270内に、相対的に移動可能な複数の部材、例えば、ワークを把持するための一対の爪が存在する場合には、一方の爪を第1部材とし、他方の爪を第2部材とすることができる。図示の構成では、第1アーム1210を第1部材R1とし、第2アーム1220を第2部材R2としている。
【0066】
また、ロボット1000は、ベース1100と第1アーム1210との関節に配置され、ベース1100に対して第1アーム1210を回動させる第1アーム回動機構1310と、第1アーム1210と第2アーム1220との関節に配置され、第1アーム1210に対して第2アーム1220を回動させる第2アーム回動機構1320と、第2アーム1220と第3アーム1230との関節に配置され、第2アーム1220に対して第3アーム1230を回動させる第3アーム回動機構1330と、第3アーム1230と第4アーム1240との関節に配置され、第3アーム1230に対して第4アーム1240を回動させる第4アーム回動機構1340と、第4アーム1240と第5アーム1250との関節に配置され、第4アーム1240に対して第5アーム1250を回動させる第5アーム回動機構1350と、第5アーム1250と第6アーム1260との関節に配置され、第5アーム1250に対して第6アーム1260を回動させる第6アーム回動機構1360と、エンドエフェクター1270を駆動するエンドエフェクター駆動機構1370と、を有する。また、ロボット1000は、これら第1~第6アーム回動機構1310~1360およびエンドエフェクター駆動機構1370の駆動を制御するロボット制御部1400を有する。
【0067】
第1~第6アーム回動機構1310~1360およびエンドエフェクター駆動機構1370の一部または全部には、その動力源として圧電モーター100が搭載されており、圧電モーター100の駆動によって対象の第1~第6アーム1210~1260およびエンドエフェクター1270が駆動する。また、圧電モーター100の制御には、例えば、上述した第1~第3実施形態で述べた圧電モーター100の制御方法が適用されている。したがって、ロボット1000は、上述した圧電モーター100の制御方法による効果を享受することができ、優れたエネルギー効率で駆動することができる。
【0068】
ここで、前述したように、圧電モーター100は、圧電振動子410として、第1圧電振動子410Aおよび第2圧電振動子410Bを有する。そのため、圧電モーター100は、第1圧電振動子410Aと第2圧電振動子410Bとを切り替えることにより、減速機としても機能する。つまり、圧電モーター100は、減速機を兼ねる。したがって、図12に示すように、第1アーム回動機構1310では、ベース200が第1アーム1210に固定され、ローター300が第2アーム1220に固定され、ローター300と第2アーム1220との間にローター300の回転を減速する減速機が設けられていない。そのため、第1アーム回動機構1310の小型化を図ることができる。第2~第6アーム回動機構1320~1360およびエンドエフェクター駆動機構1370についても同様である。
【0069】
また、前述したように、圧電モーター100では、第1、第2圧電振動子410A、410Bがその駆動を停止することにより、ローター300の回転を阻止し、連結するアーム同士の相対的位置を維持するブレーキとしても機能する。つまり、第1、第2圧電振動子410A、410Bがローター300の回転を阻止するブレーキを兼ねる。したがって、図12に示すように、第1アーム回動機構1310には、圧電モーター100とは別に、ローター300の回転を阻止するブレーキが設けられていない。そのため、第1アーム回動機構1310の小型化を図ることができる。第2~第6アーム回動機構1320~1360およびエンドエフェクター駆動機構1370についても同様である。
【0070】
以上のように、ロボット1000は、相互連結されている第1部材R1としての第1アーム1210および第2部材R2としての第2アーム1220と、第1アーム1210に対して第2アーム1220を変位させる圧電モーター100と、を有する。そのため、ロボット1000は、圧電モーター100の効果を享受でき、優れたエネルギー効率での駆動が可能となる。
【0071】
また、前述したように、圧電モーター100は、減速機を兼ねる。そのため、圧電モーター100とは別に減速機を設ける必要がないため、ロボット1000の小型化を図ることができる。
【0072】
また、前述したように、圧電モーター100は、圧電振動子410がローター300の回転を阻止するブレーキを兼ねる。そのため、圧電モーター100とは別にブレーキを設ける必要がないため、ロボット1000の小型化を図ることができる。
【0073】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0074】
以上、本発明の圧電モーターの制御方法およびロボットを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。また、前述した実施形態では、圧電モーターの制御方法をロボットに適用した構成について説明したが、圧電モーターの制御方法は、ロボット以外の、駆動力を必要とする各種電子デバイス、例えば、プリンター、プロジェクター等に適用することもできる。
【符号の説明】
【0075】
100…圧電モーター、200…ベース、300…ローター、310…内周、320…外周、330…当接部、340…当接部、400…圧電駆動装置、410…圧電振動子、410A…第1圧電振動子、410B…第2圧電振動子、411…振動部、412…支持部、413…接続部、414…伝達部、420A…圧電素子、420B…圧電素子、420C…圧電素子、420D…圧電素子、420E…圧電素子、420F…圧電素子、420G…圧電素子、490…付勢部材、491…保持部、492…基台、493…ばね群、494…ばね群、600…制御装置、1000…ロボット、1100…ベース、1200…マニピュレーター、1210…第1アーム、1220…第2アーム、1230…第3アーム、1240…第4アーム、1250…第5アーム、1260…第6アーム、1270…エンドエフェクター、1310…第1アーム回動機構、1320…第2アーム回動機構、1330…第3アーム回動機構、1340…第4アーム回動機構、1350…第5アーム回動機構、1360…第6アーム回動機構、1370…エンドエフェクター駆動機構、1400…ロボット制御部、A1…矢印、B…ベアリング、B1…矢印、Da…離間距離、Db…離間距離、O…回転軸、Q1…加速領域、Q2…等速領域、Q3…減速領域、R1…第1部材、R2…第2部材、T1…時間帯、T2…時間帯、V1…駆動信号、V2…駆動信号、V3…駆動信号、Vm…目標最高速度、Vr1…第1速度、Vr2…第2速度、θ0…回転位置、θ1…回転位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12