(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、および液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 301
B41J2/14 611
(21)【出願番号】P 2021022330
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】平井 栄樹
(72)【発明者】
【氏名】塩沢 優
(72)【発明者】
【氏名】森 政貴
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-81131(JP,A)
【文献】特開2014-177092(JP,A)
【文献】特開2013-18279(JP,A)
【文献】特開2017-30270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0043063(US,A1)
【文献】特開2018-30374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、第2電極、および圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、および前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる圧電素子と、
前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に設けられる振動板であって、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、
前記振動板に対して前記積層方向の前記一方側に設けられる圧力室基板であって、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が複数設けられる圧力室基板と、
配線基板と、
を有する液体吐出ヘッドであって、
前記積層方向と交差する方向を第1方向としたとき、
前記第1電極は、前記第1方向に並ぶ複数の前記圧力室に対して個別に設けられ、
前記第2電極は、前記複数の前記圧力室に対して共通に設けられ、
前記第1電極は、前記圧電体に対して前記積層方向の前記一方側に設けられ、
前記第2電極は、前記圧電体に対して前記積層方向の他方側に設けられ、
前記配線基板と前記第1電極とを電気的に接続する
個別リード電極と、
前記配線基板と前記第2電極とを電気的に接続する
共通リード電極と、
前記圧力室の温度を検出するための温度検知部と、
前記配線基板と前記温度検知部とを電気的に接続する測定用リード電極と、
を
更に有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記温度検知部は、前記第1電極と同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記温度検知部は、前記第2電極と同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記温度検知部は、前記
個別リード電極および前記
共通リード電極のいずれかと同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記複数の前記圧力室が形成する複数の圧力室群に対応して設けられる複数の前記温度検知部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記積層方向と交差する方向を第1方向としたとき、
前記複数の前記圧力室は、複数の前記圧力室が前記第1方向に並ぶ圧力室列を形成し、
前記複数の前記圧力室群は、前記圧力室列の前記第1方向の一方側に位置する複数の前記圧力室が形成する第1圧力室群と、前記圧力室列の前記第1方向の他方側に位置する複数の前記圧力室が形成する第2圧力室群と、を含むことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記積層方向と交差する方向を第1方向、前記積層方向および前記第1方向と交差する方向を第2方向としたとき、
前記複数の前記圧力室群は、複数の前記圧力室が前記第1方向に並ぶ第1圧力室列と、前記第1圧力室列に対して前記第2方向に離れ、複数の前記圧力室が前記第1方向に並ぶ第2圧力室列と、を含むことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記積層方向と交差する方向を第1方向、前記積層方向および前記第1方向と交差する方向を第2方向としたとき、
前記複数の前記圧力室は、複数の前記圧力室が前記第1方向に並ぶ第1圧力室列と、前記第1圧力室列に対して前記第2方向に離れ、複数の前記圧力室が前記第1方向に並ぶ第2圧力室列と、を形成し、
前記複数の前記圧力室群は、前記第1圧力室列の前記第1方向の一方側に位置する複数の前記圧力室が形成する第1圧力室群と、前記第1圧力室列の前記第1方向の他方側に位置する複数の前記圧力室が形成する第2圧力室群と、前記第2圧力室列の前記第1方向の前記一方側に位置する複数の前記圧力室が形成する第3圧力室群と、前記第2圧力室列の前記第1方向の前記他方側に位置する複数の前記圧力室が形成する第4圧力室群と、を含むことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記配線基板はヘッド回路を備え、前記ヘッド回路は、前記
個別リード電極を介して、液体の吐出量に対応して変化する駆動電圧を前記第1電極に対して印加し、前記
共通リード電極を介して、液体の吐出量に関わらず一定の保持電圧を前記第2電極に対して印加することが可能であることを特徴とする請求項
1から請求項8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記
共通リード電極は、前記第1方向において、前記個
別リード電極と前記
測定用リード電極との間に設けられることを特徴とする請求項
1から請求項
9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記
測定用リード電極は、前記第1方向において、前記
個別リード電極と前記
共通リード電極との間に設けられることを特徴とする請求項
1から請求項
9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記温度検知部の電気抵抗値を取得する抵抗取得部と、
前記抵抗取得部で取得された前記電気抵抗値に基づいて、前記圧電素子の駆動に際した温度を取得する温度取得部と、を更に有することを特徴とする請求項1から請求項1
1のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記抵抗取得部は、二端子測定法および四端子測定法のいずれかによって、前記電気抵抗値を取得することを特徴とする請求項1
2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記温度検知部の材料における温度と電気抵抗値の対応関係を予め記憶する記憶部を更に有し、
前記温度取得部は、前記記憶部に記憶された前記対応関係と、前記抵抗取得部で取得された前記電気抵抗値と、に基づいて、前記圧電素子の駆動に際した温度を取得することを特徴とする請求項1
3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
請求項1から請求項1
4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出動作を制御する制御部と、を有することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、および液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電素子と、圧力室と、圧力室と連通するノズルとを有する液体吐出ヘッドが開示されている。この液体吐出ヘッドは、液体吐出装置の一例であるプリンターに備えられ、制御部が圧電素子を駆動させることで圧力室の容積を変化させ、圧力室に供給された液体の一例であるインクをノズルから吐出する。また、プリンターには、液体吐出ヘッドが取り付けられるキャリッジの側面に、液体吐出ヘッドの外部の環境温度を測定する温度センサーが設けられている。そして、制御部は、温度センサーに測定される環境温度に基づいて圧電素子を駆動制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような液体吐出装置では、温度センサーが液体吐出ヘッドの外部に設けられている。このため、温度センサーにより測定される温度と圧力室内のインクの温度との差が液体吐出ヘッド内の温度と圧力室内のインクの温度との差と比較して大きくなる虞がある。この場合、液体吐出装置は、圧力室内のインクの温度に適した液体吐出ヘッドの吐出制御を行なえない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
液体吐出ヘッドは、第1電極、第2電極、および圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、および前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる圧電素子と、前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に設けられる振動板であって、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、前記振動板に対して前記積層方向の前記一方側に設けられる圧力室基板であって、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が複数設けられる圧力室基板と、配線基板と、前記配線基板と前記第1電極とを電気的に接続する第1配線と、前記配線基板と前記第2電極とを電気的に接続する第2配線と、前記配線基板と電気的に接続され、前記圧力室の温度を検出するための温度検知部と、を有する。
【0006】
液体吐出装置は、前記液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出動作を制御する制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態としての液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置の概略構成を示すブロック図。
【
図2】液体吐出ヘッドの詳細構成を示す分解斜視図。
【
図4】
図3に示した液体吐出ヘッドのIV-IV断面を示す断面図。
【
図6】
図3に示した液体吐出ヘッドのVI-VI断面を示す断面図。
【
図7】実施形態2に係る液体吐出ヘッドの要部詳細図。
【
図8】実施形態3に係る液体吐出ヘッドの要部詳細図。
【
図9】実施形態4に係る液体吐出ヘッドを示す平面図。
【
図10】実施形態4に係る液体吐出ヘッドの変形例を示す平面図。
【
図11】実施形態4に係る液体吐出ヘッドの変形例を示す平面図。
【
図12】実施形態5に係る液体吐出ヘッドを示す平面図。
【
図13】他の実施形態に係る液体吐出ヘッドの要部詳細図。
【
図14】他の実施形態に係る液体吐出ヘッドの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。各図において同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向とする。向きを特定する場合には、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用し、各図の矢印が向かう向きを+方向、矢印の反対方向を-方向として説明する。またZ方向は、鉛直方向を示し、+Z方向は鉛直下向き、-Z方向は鉛直上向きを示す。さらに、正方向及び負方向を限定しない3つのX、Y、Zの空間軸については、X軸、Y軸、Z軸として説明する。
【0010】
1.実施形態1
本実施形態において、液体吐出装置500は、インクジェット式プリンターとして構成され、印刷用紙Pにインクを吐出して画像を形成する。インクは液体の一例である。なお、印刷用紙Pに代えて、樹脂フィルム、布帛等の任意の種類の媒体を、インクの吐出対象としてもよい。
【0011】
図1に示すように、液体吐出装置500は、液体吐出ヘッド510と、インクタンク550と、搬送機構560と、移動機構570と、制御部580とを備える。
【0012】
液体吐出ヘッド510は、多数のノズル21を有し、+Z方向にインクを吐出して印刷用紙P上に画像を形成する。また、液体吐出ヘッド510は、温度検知部の一例である抵抗配線401を有する。液体吐出ヘッド510の詳細構成は後述する。吐出するインクとしては、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの合計4色のインクを吐出してもよい。なお、上記4色に限らずライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイトなど、任意の色のインクを吐出してもよい。液体吐出ヘッド510は、移動機構570が有する後述のキャリッジ572に搭載され、キャリッジ572の移動と共に主走査方向に往復移動する。本実施形態において、主走査方向は、+X方向および-X方向である。
【0013】
インクタンク550は、液体吐出ヘッド510から吐出するインクを収容する。インクタンク550は、キャリッジ572には搭載されていない。インクタンク550と液体吐出ヘッド510とは、樹脂製のチューブ552によって接続されており、かかるチューブ552を介してインクタンク550から液体吐出ヘッド510へとインクが供給される。なお、インクタンク550に代えて、可撓性フィルムで形成された袋状の液体パックを用いてもよい。
【0014】
搬送機構560は、印刷用紙Pを副走査方向に搬送する。副走査方向は、主走査方向であるX軸方向と直交する方向であり、本実施形態では、+Y方向および-Y方向である。搬送機構560は、3つの搬送ローラー562が装着された搬送ロッド564と、搬送ロッド564を回転駆動する搬送用モーター566とを備える。搬送用モーター566が搬送ロッド564を回転駆動することにより、複数の搬送ローラー562が回転して印刷用紙Pが副走査方向における+Y方向に搬送される。なお、搬送ローラー562の数は3つに限らず任意の数であってもよい。また、搬送機構560を複数備える構成としてもよい。
【0015】
移動機構570は、上述のキャリッジ572に加えて、搬送ベルト574と、移動用モーター576と、プーリー577とを備える。キャリッジ572は、インクを吐出可能な状態で液体吐出ヘッド510を搭載する。キャリッジ572は、搬送ベルト574に取り付けられている。搬送ベルト574は、移動用モーター576とプーリー577との間に架け渡されている。移動用モーター576が回転駆動することにより、搬送ベルト574は、主走査方向に往復移動する。これにより、搬送ベルト574に取り付けられているキャリッジ572も、主走査方向に往復移動する。
【0016】
制御部580は、液体吐出装置500の全体を制御する。例えば、制御部580は、キャリッジ572の主走査方向に沿った往復動作や、印刷用紙Pの副走査方向に沿った搬送動作、液体吐出ヘッド510の吐出動作を制御する。また、本実施形態において、制御部580は、液体吐出ヘッド510が有する温度検知部により測定される測定値に基づいて、後述する圧力室12の温度を検出する。また、制御部580は、後述の圧電素子300の駆動制御部としても機能する。すなわち、制御部580は、検出した圧力室12の温度に基づく駆動信号を液体吐出ヘッド510に出力して圧電素子300を駆動させることにより、印刷用紙Pへのインクの吐出を制御する。制御部580は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の1または複数の処理回路と半導体メモリー等の1または複数の記憶回路とにより構成されてもよい。
【0017】
図2に示すように、液体吐出ヘッド510は、Z軸方向、より具体的は+Z方向にインク滴を噴射するものである。液体吐出ヘッド510は、圧力室基板10と、連通板15と、ノズルプレート20と、コンプライアンス基板45と、後述する振動板50と、後述する圧電素子300と、保護基板30と、ケース部材40と、配線基板120と、を構成部材として有する。また、圧力室基板10、連通板15、ノズルプレート20、コンプライアンス基板45、振動板50、圧電素子300、保護基板30、およびケース部材40は、積層されることで、液体吐出ヘッド510を形成する積層部材の一例とも言える。
【0018】
圧力室基板10は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板等からなる。圧力室基板10は、基板の一例とも言える。
【0019】
図3に示すように、圧力室基板10には、複数の圧力室12がY軸方向に沿って並ぶ圧力室列が、X軸方向に2列配置されている。換言すると、液体吐出ヘッド510は、複数の圧力室12を有し、複数の圧力室12は、複数の圧力室12がY軸方向に沿って並ぶ圧力室列を形成する。Y軸方向は第1方向の一例であり、X軸方向は第2方向の一例である。また、圧力室列は圧力室群の一例である。なお、2列の圧力室列のうち、+X方向側となる圧力室列を第1圧力室列、第1圧力室列とX軸方向において-X方向に離れる圧力室列を第2圧力室列とも言う。+X方向は第2方向の一方の一例であり、-X方向は第2方向の他方の一例である。なお、
図3は、液体吐出ヘッド510の平面図であるが、圧力室基板10周辺の構成を記載し、説明の便宜上、保護基板30、ケース部材40も省略している。
【0020】
各圧力室列を構成する複数の圧力室12は、X軸方向の位置が同じ位置となるように、Y軸方向に沿った直線上に配置されている。Y軸方向で互いに隣り合う圧力室12は、
図6に示す隔壁11によって区画されている。もちろん、圧力室12の配置は特に限定されるものではない。例えば、Y軸方向に並ぶ複数の圧力室12の配置は、各圧力室12を1つ置きにX軸方向にずれた位置とする、いわゆる千鳥配置となっていてもよい。
【0021】
また本実施形態の圧力室12は、+Z方向からの平面視においてX軸方向の長さがY軸方向の長さよりも長い、例えば、長方形に形成されている。もちろん、+Z方向からの平面視における圧力室12の形状は、特に限定されず、平行四辺形状、多角形状、円形状、オーバル形状等であってもよい。なお、ここでいうオーバル形状とは、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円状とした形状をいい、角丸長方形状、楕円形状、卵形状などが含まれるものとする。
【0022】
図2、
図4に示すように、圧力室基板10の+Z方向側には、連通板15とノズルプレート20及びコンプライアンス基板45とが順次積層されている。
【0023】
連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。また連通板15には、複数の圧力室12が連通する共通液室となるマニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15をZ軸方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15をZ軸方向に貫通することなく、+Z方向側の面に開口して設けられている。
【0024】
さらに連通板15には、圧力室12のX軸方向の一方の端部に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と各圧力室12とを連通して、マニホールド100内のインクを各圧力室12に供給する。
【0025】
連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板等を用いることができる。金属基板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。なお連通板15は、熱膨張率が圧力室基板10と略同一の材料を用いることが好ましい。これにより、圧力室基板10及び連通板15の温度が変化した際、熱膨張率の違いに起因する圧力室基板10及び連通板15の反りを抑制することができる。
【0026】
ノズルプレート20は、連通板15の圧力室基板10とは反対側、すなわち、+Z方向側の面に設けられている。ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が形成されている。
【0027】
本実施形態では、複数のノズル21は、Y軸方向に沿って一列となるように並んで配置されている。そしてノズルプレート20には、これら複数のノズル21が列設されたノズル列がX軸方向に離れて2列設けられている。2列のノズル列は第1圧力室列、第2圧力室列にそれぞれ対応する。各列の複数のノズル21は、X軸方向の位置が同じ位置となるように配置されている。なおノズル21の配置は特に限定されるものではない。例えば、Y軸方向に並んで配置されるノズル21は、1つ置きにX軸方向にずれた位置に配置されていてもよい。
【0028】
ノズルプレート20の材料としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板を用いることができる。金属基板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。さらにノズルプレート20の材料としては、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることもできる。ただし、ノズルプレート20は、連通板15の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。これにより、ノズルプレート20及び連通板15の温度が変化した際、熱膨張率の違いに起因するノズルプレート20及び連通板15の反りを抑制することができる。
【0029】
コンプライアンス基板45は、ノズルプレート20と共に、連通板15の圧力室基板10とは反対側、すなわち、+Z方向側の面に設けられている。このコンプライアンス基板45は、ノズルプレート20の周囲に設けられ、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18の開口を封止する。コンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっている。このため、マニホールド100の一方面は、可撓性を有する封止膜46のみで封止されたコンプライアンス部49となっている。
【0030】
一方、圧力室基板10のノズルプレート20等とは反対側、すなわち-Z方向側の面には、詳しくは後述するが、振動板50と、この振動板50を撓み変形させて圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる圧電素子300とが積層されている。換言すると、振動板50は圧電素子300に対してZ軸方向の+Z方向に設けられ、圧力室基板10は振動板50に対してZ軸方向の+Z方向に設けられている。Z軸方向は積層方向の一例であり、+Z方向は積層方向の一方の一例であり、-Z方向は積層方向の他方の一例である。なお、
図4は液体吐出ヘッド510の全体構成を説明するための図であり、圧電素子300の構成については簡略化して示している。
【0031】
圧力室基板10の-Z方向側の面には、さらに、圧力室基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接着剤等によって接合されている。保護基板30は、圧電素子300を保護する空間である保持部31を有する。保持部31は、Y軸方向に並んで配置された圧電素子300の列毎に独立して設けられたものであり、X軸方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、X軸方向に並んで配置された2つの保持部31の間にZ軸方向に貫通する貫通孔32が設けられている。
【0032】
また、保護基板30上には、複数の圧力室12に連通するマニホールド100を圧力室基板10と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、-Z方向からの平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。
【0033】
このようなケース部材40は、圧力室基板10及び保護基板30を収容可能な深さの空間である収容部41を保護基板30側に有する。この収容部41は、保護基板30の圧力室基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、収容部41に圧力室基板10及び保護基板30が収容された状態で収容部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。
【0034】
またケース部材40には、X軸方向における収容部41の両外側に、第3マニホールド部42がそれぞれ画成されている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、Y軸方向に亘って連続して設けられており、各圧力室12とマニホールド100とを連通する供給連通路19は、Y軸方向に並んで配置されている。
【0035】
また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための供給口44が設けられている。さらにケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して配線基板120が挿通される接続口43が設けられている。
【0036】
このような本実施形態の液体吐出ヘッド510では、チューブ552を介してインクタンク550と接続された供給口44からインクを取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで内部をインクで満たした後、ヘッド回路121から、圧力室12に対応するそれぞれの圧電素子300に、駆動信号に基づく電圧を印加する。これにより圧電素子300と共に振動板50がたわみ変形して各圧力室12内の圧力が高まり、各ノズル21からインク滴が噴射される。
【0037】
以下、上述の振動板50、圧電素子300を含む、圧力室基板10の-Z方向側に積層形成される構成について詳しく説明する。液体吐出ヘッド510は、圧力室基板10の-Z方向側に積層される構成として、振動板50、圧電素子300に加え、個別リード電極91、共通リード電極92、測定用リード電極93、および抵抗配線401を有する。
【0038】
図4から
図6に示すように、振動板50は、圧力室基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウム膜からなる絶縁体膜52と、で構成されている。圧力室12等の液体流路は、圧力室基板10を+Z方向側の面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力室12等の液体流路の-Z方向側の面は、弾性膜51で構成されている。
【0039】
なお振動板50の構成は特に限定されるものではない。振動板50は、例えば、弾性膜51と絶縁体膜52との何れか一方で構成されていてもよく、さらには、弾性膜51及び絶縁体膜52以外のその他の膜が含まれていてもよい。その他の膜の材料としては、シリコン、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0040】
圧電素子300は、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる圧電アクチュエーターの一例である。この圧電素子300は、振動板50側である+Z方向側から-Z方向側に向かって順次積層された第1電極60と、圧電体70と、第2電極80とを有する。換言すると、圧電素子300は、第1電極60、第2電極80、および圧電体70を含み、第1電極60、第2電極80、および圧電体70が積層されるZ軸方向において、圧電体70が第1電極60と第2電極80との間に設けられる。
【0041】
第1電極60および第2電極80は、いずれも配線基板120と電気的に接続され、配線基板120に実装されるヘッド回路121から供給される駆動信号に応じた電圧を、圧電体70に印加する。第1電極60には、インクの吐出量に応じて異なる駆動電圧が供給され、第2電極80には、インクの吐出量に関わらず、一定の保持電圧が供給される。なお、インクの吐出量が圧力室12の必要な容積変化量となる。これにより、第1電極60と第2電極80との間に電位差が生じて、圧電体70が変形する。すなわち、圧電素子300が駆動されることにより、振動板50が変形または振動し、圧力室12の容積が変化することにより、圧力室12に収容されているインクに圧力が付与され、ノズル連通路16を介してノズル21からインクが吐出される。
【0042】
圧電素子300のうち、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加した際に、圧電体70に圧電歪みが生じる部分を活性部310と称する。これに対して、圧電体70に圧電歪みが生じない部分を非活性部320と称する。すなわち、圧電素子300のうち、圧電体70が第1電極60と第2電極80とで挟まれた部分が活性部310であり、圧電体70が第1電極60と第2電極80とで挟まれていない部分が非活性部320である。また圧電素子300を駆動させた際、実際にZ軸方向に変位する部分を可撓部と称し、Z方向に変位しない部分を非可撓部と称する。すなわち、圧電素子300のうち、圧力室12にZ軸方向で対向する部分が可撓部となり、圧力室12の外側部分が非可撓部となる。なお、活性部310は能動部、非活性部320は非能動部とも言う。
【0043】
一般的には、活性部310の何れか一方の電極を活性部310毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部310に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極60が個別電極を構成し、第2電極80が共通電極を構成している。
【0044】
具体的には、第1電極60は、圧電体70に対して、Z軸方向の+Z方向側に設けられ、圧力室12毎に切り分けられて活性部310毎に独立する個別電極を構成する。すなわち、第1電極60は、複数の圧力室12に対して個別に設けられる。第1電極60は、Y軸方向において、圧力室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、Y軸方向において、第1電極60の端部は、圧力室12に対向する領域の内側に位置している。
【0045】
また第1電極60の+X方向の端部60a及び-X方向の端部60bは、それぞれ圧力室12の外側に配置されている。例えば、第1圧力室列では、
図5に示すように、第1電極60の端部60aは、圧力室12の+X方向の端部12aよりも+X方向側となる位置に配置されている。第1電極60の端部60bは、圧力室12の-X方向の端部12bよりも-X方向側となる位置に配置されている。
【0046】
第1電極60の材料は特に限定されないが、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)といった金属、ITOと略される酸化インジウムスズといった導電性金属酸化物等の導電材料が用いられる。或いは、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)等の複数の材料が積層されて形成されてもよい。本実施形態では、第1電極60として白金(Pt)を用いた。
【0047】
圧電体70は、
図3に示すように、X軸方向の長さを所定長さとして、Y軸方向に亘って連続して設けられている。すなわち圧電体70は、所定の厚さで圧力室12の並設方向に沿って連続して設けられている。圧電体70の厚さは特に限定されないが、1000ナノメートルから4000ナノメートル程度の厚さで形成される。
【0048】
また、
図5に示すように、圧電体70のX軸方向の長さは、圧力室12の長手方向であるX軸方向の長さよりも長い。このため、圧力室12のX軸方向の両側では、圧電体70は、圧力室12の外側まで延在している。このように、圧電体70がX軸方向において圧力室12の外側まで延在していることで、振動板50の強度が向上する。したがって、活性部310を駆動させて圧電素子300を変位させた際、振動板50や圧電素子300にクラック等が発生するのを抑制することができる。
【0049】
また、例えば、第1圧力室列では、
図5に示すように、圧電体70の+X方向の端部70aは、第1電極60の端部60aよりも外側となる+X方向側に位置している。すなわち、第1電極60の端部60aは圧電体70によって覆われている。一方、圧電体70の-X方向の端部70bは、第1電極60の端部60bよりも内側となる+X方向側に位置しており、第1電極60の端部60bは、圧電体70では覆われていない。
【0050】
なお、圧電体70には、
図3および
図6に示すように、各隔壁11に対応して他の領域よりも厚さが薄い部分である溝部71が形成されている。本実施形態の溝部71は、圧電体70をZ軸方向に完全に除去することで形成されている。すなわち、圧電体70が他の領域よりも厚さの薄い部分を有するとは、圧電体70がZ軸方向に完全に除去されたものも含む。もちろん、溝部71の底面に圧電体70が他の部分よりも薄く形成されていてもよい。
【0051】
また、溝部71のY軸方向の長さ、つまり溝部71の幅は、隔壁11の幅と同一もしくは、それより広くなっている。本実施形態では、溝部71の幅は、隔壁11の幅よりも広くなっている。
【0052】
このような溝部71は、-Z方向側からの平面視において、矩形状となるように形成されている。もちろん、溝部71の-Z方向側からの平面視した形状は、矩形状に限定されず、5角形以上の多角形状であってもよく、円形状や楕円形状等であってもよい。
【0053】
圧電体70に溝部71を設けることにより、振動板50の圧力室12のY軸方向の端部に対向する部分、いわゆる振動板50の腕部の剛性が抑えられるため、圧電素子300をより良好に変位させることができる。
【0054】
圧電体70としては、第1電極60上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜、所謂ペロブスカイト型結晶が挙げられる。圧電体70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等を用いることができる。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。本実施形態では、圧電体70として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた。
【0055】
また、圧電体70の材料としては、鉛を含む鉛系の圧電材料に限定されず、鉛を含まない非鉛系の圧電材料を用いることもできる。非鉛系の圧電材料としては、例えば、鉄酸ビスマス((BiFeO3)、略「BFO」)、チタン酸バリウム((BaTiO3)、略「BT」)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)(NbO3)、略「KNN」)、ニオブ酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(NbO3))、ニオブ酸タンタル酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(Nb,Ta)O3)、チタン酸ビスマスカリウム((Bi1/2K1/2)TiO3、略「BKT」)、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi1/2Na1/2)TiO3、略「BNT」)、マンガン酸ビスマス(BiMnO3、略「BM」)、ビスマス、カリウム、チタン及び鉄を含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物(x[(BixK1-x)TiO3]-(1-x)[BiFeO3]、略「BKT-BF」)、ビスマス、鉄、バリウム及びチタンを含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物((1-x)[BiFeO3]-x[BaTiO3]、略「BFO-BT」)や、これにマンガン、コバルト、クロムなどの金属を添加したもの((1-x)[Bi(Fe1-yMy)O3]-x[BaTiO3](Mは、Mn、CoまたはCr))等が挙げられる。
【0056】
第2電極80は、
図3、
図5、
図6に示すように、圧電体70に対して、第1電極60とは反対側であるZ軸方向の-Z方向側に設けられ、複数の活性部310に共通する共通電極を構成する。すなわち、第2電極80は、複数の圧力室12に対して共通に設けられる。第2電極80は、X軸方向の長さを所定長さとして、Y軸方向に亘って連続して設けられている。この第2電極80は、溝部71の内面、すなわち圧電体70の溝部71の側面上及び溝部71の底面である絶縁体膜52上にも設けられている。なお溝部71内に関しては、第2電極80は、溝部71の内面の一部のみに設けられていてもよく、溝部71の内面の全面に亘って設けられていなくてもよい。
【0057】
また、例えば、第1圧力室列では、
図5に示すように、第2電極80の+X方向の端部80aは、圧電体70で覆われている第1電極60の端部60aよりも外側となるように+X方向側に配置されている。すなわち第2電極80の端部80aは、圧力室12の端部12aよりも外側となる+X方向側で、第1電極60の端部60aよりも外側となる+X方向側に位置している。本実施形態では、第2電極80の端部80aは、X軸方向において、圧電体70の端部70aと実質的に一致している。このため、活性部310の+X方向の端部、すなわち活性部310と非活性部320との境界は、第1電極60の端部60aによって規定されている。
【0058】
一方、第2電極80の-X方向の端部80bは、圧力室12の-X方向の端部12bよりも外側となる-X方向側に配置されているが、圧電体70の端部70bよりも内側となる+X方向側に配置されている。上述のように圧電体70の端部70bは、第1電極60の端部60bよりも+X方向側となる内側に位置している。したがって第2電極80の端部80bは、第1電極60の端部60bよりも+X方向側となる圧電体70上に位置している。このため、第2電極80の端部80bの-X方向側には、圧電体70の表面が露出された部分が存在する。
【0059】
このように第2電極80の端部80bは、圧電体70の端部70b及び第1電極60の端部60bよりも+X方向側に配置されているため、活性部310の-X方向の端部、すなわち活性部310と非活性部320との境界は、第2電極80の端部80bによって規定される。
【0060】
第2電極80の材料は特に限定されないが、第1電極60と同様に、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)といった金属、ITOと略される酸化インジウムスズといった導電性金属酸化物等の導電材料が用いられる。或いは、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)等の複数の材料が積層されて形成されてもよい。本実施形態では、第2電極80としてイリジウム(Ir)を用いた。
【0061】
また、第2電極80の端部80bの外側、すなわち第2電極80の端部80bのさらに-X方向側には、第2電極80と同一層となるが、第2電極80とは電気的に不連続となる配線部85が設けられている。また、配線部85は、第2電極80の端部80bと接触しないように間隔を空けた状態で、圧電体70上から圧電体70よりも-X方向に延設された第1電極60上に亘って形成されている。この配線部85は、活性部310毎に独立して設けられている。すなわち、配線部85は、Y軸方向に沿って所定の間隔で複数配置されている。なお配線部85は、第2電極80とは別の層で形成されていてもよいが、第2電極80と同一層で形成することが好ましい。これにより、配線部85の製造工程を簡略化してコストの低減を図ることができる。
【0062】
また、圧電素子300を構成する第1電極60と第2電極80とには、第1電極60には個別リード電極91が接続され、第2電極80には駆動用共通電極である共通リード電極92がそれぞれ電気的に接続されている。個別リード電極91は第1配線の一例であり、共通リード電極92は第2配線の一例である。個別リード電極91及び共通リード電極92の圧電素子300に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有する配線基板120が電気的に接続されている。配線基板120には、制御部580および図示しない電源回路と接続するための複数の配線が形成されている。本実施形態において、配線基板120は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)により構成されている。なお、FPCに代えて、FFC(Flexible Flat Cable)など、可撓性を有する任意の基板により構成されてもよい。
【0063】
本実施形態では、個別リード電極91及び共通リード電極92は、保護基板30に形成された貫通孔32内に露出するように延設され、この貫通孔32内で配線基板120と電気的に接続されている。配線基板120には、圧電素子300を駆動するためのスイッチング素子を有するヘッド回路121が実装されている。
【0064】
個別リード電極91及び共通リード電極92は、本実施形態では、同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、個別リード電極91と共通リード電極92とをそれぞれ個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、個別リード電極91と共通リード電極92とを異なる層で形成するようにしてもよい。
【0065】
個別リード電極91及び共通リード電極92の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。本実施形態では、個別リード電極91及び共通リード電極92として金(Au)を用いた。また、個別リード電極91及び共通リード電極92は、第1電極60及び第2電極80や振動板50との密着性を向上する密着層を有していてもよい。
【0066】
個別リード電極91は、活性部310毎、すなわち、第1電極60毎に設けられたものである。
図5に示すように、例えば、第1圧力室列では、個別リード電極91は、配線部85を介して、圧電体70の外側に設けられた第1電極60の端部60b付近に接続され、圧力室基板10上、実際には振動板50上まで-X方向に引き出されている。
【0067】
一方、
図3に示すように、例えば、第1圧力室列では、共通リード電極92は、Y軸方向の両端部において、圧電体70上の共通電極を構成する第2電極80上から振動板50上にまで-X方向に引き出されている。また、共通リード電極92は、延設部92a、および延設部92bを有する。
図3、
図5に示すように、例えば、第1圧力室列では、延設部92aは、圧力室12の端部12aに対応する領域にY軸方向に沿って延設され、延設部92bは、圧力室12の端部12bに対応する領域にY軸方向に沿って延設される。これら延設部92a、および延設部92bは、複数の活性部310に対してY軸方向に亘って連続して設けられている。
【0068】
また、延設部92a、および延設部92bは、X軸方向において、圧力室12の内側から圧力室12の外側まで延設されている。本実施形態では、圧電素子300の活性部310は、圧力室12のX軸方向の両端部において圧力室12の外側まで延設されており、延設部92a、および延設部92bは、この活性部310上を圧力室12の外側まで延設されている。
【0069】
図5に示すように、振動板50の-Z方向側の面には、抵抗配線401(第1抵抗配線)が設けられる。抵抗配線401は、圧力室12の温度を検出するための温度検知部の一例である。本実施形態の温度検知部は、金属や半導体等の電気抵抗値が温度によって変化する特性を利用したものである。抵抗配線401の材料は、電気抵抗値が温度依存性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いることができる。このうち、白金(Pt)は、温度による抵抗値変化が大きく、安定性と精度が高いという観点から抵抗配線401の材料として好適に採用できる。なお、電気抵抗値は、測定される温度検知部の測定値の一例である。本実施形態では、抵抗配線401を、第1電極60と同層とし、第1電極60とは電気的に不連続となるように、振動板50の-Z方向側の面に積層形成している。よって、抵抗配線401の材料は第1電極60と同じ白金(Pt)である。これにより、抵抗配線401を、第1電極60と別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、抵抗配線401を第1電極60と異なる層で形成するようにしてもよい。
【0070】
図3に示すように、抵抗配線401は連続しており、X軸方向において+X方向側となる抵抗配線401の一端は、測定用リード電極93aと接続され、X軸方向において-X方向側となる抵抗配線401の他端は、測定用リード電極93bと接続される。これにより、抵抗配線401は、配線基板120と電気的に接続され、制御部580は、抵抗配線401の電気抵抗値を測定可能になる。測定用リード電極93aおよび測定用リード電極93bを含む測定用リード電極93は、抵抗配線401の配線基板120との接続部の一例である。また、本実施形態では、抵抗配線401は、圧電体70に覆われており、Z軸方向において、振動板50と圧電体70との間に位置する。
【0071】
抵抗配線401は、X軸方向において+X方向側となる第1圧力室列側蛇行パターンと、X軸方向において-X方向側となる第2圧力室列側蛇行パターンと、を備える。第1圧力室列側蛇行パターンは、-Z方向から見て、第1圧力室列を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置において、Y軸方向に沿って蛇行している。第2圧力室列側蛇行パターンは、-Z方向から見て、第2圧力室列を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行している。すなわち、抵抗配線401は、複数の圧力室12が形成する第1圧力室列に対応する第1圧力室列側蛇行パターンと、複数の圧力室12が形成する第2圧力室列に対応する第2圧力室列側蛇行パターンと、を備える。また、
図4、
図5に示すように、圧力室12の-Z方向側の端部と抵抗配線401とのZ軸方向における距離は、圧力室12のZ軸方向における寸法より短い。また、例えば、第1圧力室列では、圧力室12の+X方向の端部12aと抵抗配線401とのX軸方向における最長距離は、圧力室12のX軸方向における寸法より短い。このため、抵抗配線401の電気抵抗値は、圧力室12の温度変化に対応して変化しやすい。
【0072】
測定用リード電極93aおよび測定用リード電極93bを含む測定用リード電極93は、本実施形態では、個別リード電極91および共通リード電極92と同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、測定用リード電極93を、個別リード電極91および共通リード電極92と個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、測定用リード電極93を、個別リード電極91および共通リード電極92と異なる層で形成するようにしてもよい。
【0073】
測定用リード電極93の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。本実施形態では、測定用リード電極93として金(Au)を用いた。よって、測定用リード電極93の材料は、個別リード電極91および共通リード電極92と同じ材料である。また、測定用リード電極93は、抵抗配線401や振動板50との密着性を向上する密着層を有していてもよい。
【0074】
本実施形態では、測定用リード電極93は、保護基板30に形成された貫通孔32内に露出するように延設され、この貫通孔32内で配線基板120と電気的に接続されている。これにより、制御部580は、配線基板120を介して、抵抗配線401の電気抵抗値を取得可能になる。本実施形態では、制御部580は、抵抗配線401の電気抵抗値と温度との対応関係を予め記憶している。そして、制御部580は、圧電素子300の駆動に際して、抵抗配線401の電気抵抗値を測定し、抵抗配線401の電気抵抗値と温度との対応関係に基づいて、圧力室12の温度を検出する。
【0075】
例えば、温度検知部が液体吐出ヘッド510の外部に設けられていると、温度検知部により測定される温度と圧力室12内の温度との差が、液体吐出ヘッド510内の温度と圧力室12内の温度との差と比較して大きくなる虞がある。この場合、液体吐出装置500は、圧力室12内のインクの温度に適した液体吐出ヘッド510の吐出制御を行なえない虞がある。本実施形態では、抵抗配線401は、液体吐出ヘッド510の構成部材である振動板50に積層して設けられている。すなわち、抵抗配線401が液体吐出ヘッド510内に設けられている。これによれば、液体吐出ヘッド510は、抵抗配線401を有するので、液体吐出ヘッド510の外部環境の温度を測定する場合と比較して、測定される抵抗配線401の電気抵抗値に基づき検出される温度と圧力室12内の温度との差を小さくすることができる。また、これによれば、液体吐出装置500は、圧力室12内のインクの温度に適した液体吐出ヘッド510の吐出制御を行ないやすい。
【0076】
以上述べたように、実施形態1に係る液体吐出ヘッド510、および実施形態1に係る液体吐出装置500によれば、以下の効果を得ることができる。
【0077】
液体吐出ヘッド510は、第1電極60、第2電極80、および圧電体70を含み、第1電極60、第2電極80、および圧電体70が積層されるZ軸方向において、圧電体70が第1電極60と第2電極80との間に設けられる圧電素子300と、圧電素子300に対してZ軸方向の+Z方向側に設けられる振動板50と、振動板50に対してZ軸方向の+Z方向側に設けられる圧力室基板10であって、圧電素子300の駆動による振動板50の変形により容積が変化する圧力室12が複数設けられる圧力室基板10と、配線基板120と、配線基板120と第1電極60とを電気的に接続する個別リード電極91と、配線基板120と第2電極80とを電気的に接続する共通リード電極92と、配線基板120と電気的に接続され、圧力室12の温度を検出するための抵抗配線401と、を有する。これによれば、液体吐出ヘッド510は、抵抗配線401を有するので、液体吐出ヘッド510の外部環境の温度を測定する場合と比較して、測定される抵抗配線401の測定値に基づき検出される温度と圧力室12内の温度との差を小さくすることができる。
【0078】
抵抗配線401は、第1電極60と同じ材料で形成されている。これによれば、抵抗配線401を形成する場合に第1電極60と同じ工程で形成しやすい。
【0079】
第1電極60は、Y軸方向に並ぶ複数の圧力室12に対して個別に設けられ、第2電極80は、前記複数の前記圧力室12に対して共通に設けられ、第1電極60は、圧電体70に対してZ軸方向の+Z方向側に設けられ、第2電極80は、圧電体70に対してZ軸方向の-Z方向側に設けられる。これによれば、必要なインクの吐出量に応じた圧電素子300の駆動を容易に行える。
【0080】
配線基板120はヘッド回路121を備え、ヘッド回路121は、個別リード電極91を介して、インクの吐出量に対応して変化する駆動電圧を第1電極60に対して印加し、共通リード電極92を介して、インクの吐出量に関わらず一定の保持電圧を第2電極80に対して印加することが可能である。これによれば、インクの必要な吐出量に応じた圧電素子300の駆動を容易に行える。
【0081】
個別リード電極91は、Y軸方向において、共通リード電極92と測定用リード電極93との間に設けられる。これによれば、第1電極60、第2電極80、および抵抗配線401を配線基板120と効率よく接続できる。
【0082】
液体吐出装置500は、液体吐出ヘッド510と、液体吐出ヘッド510からのインクの吐出動作を制御する制御部580と、を有する。これによれば、液体吐出ヘッド510の吐出動作を制御可能な構成を容易に実現できる。
【0083】
2.実施形態2
次に、本開示の一実施形態としての実施形態2の液体吐出ヘッド510が備える抵抗配線451について説明する。なお、実施形態1の液体吐出ヘッド510と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0084】
実施形態1の抵抗配線401は、第1電極60と同層とし、第1電極60とは電気的に不連続となるように、振動板50の-Z方向側の面に積層形成されていた。これに対して、本実施形態の抵抗配線451は、
図7に示すように、圧電体70の-Z方向側の面に設けられる。抵抗配線451は、圧力室12の温度を検出するための温度検知部の一例である。抵抗配線451の材料は、電気抵抗値が温度依存性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いることができる。本実施形態では、抵抗配線451を、第2電極80と同層とし、第2電極80とは電気的に不連続となるように、圧電体70の-Z方向側の面に積層形成している。よって、抵抗配線451の材料は第2電極80と同じイリジウム(Ir)である。これにより、抵抗配線451を、第2電極80と別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、抵抗配線451を第2電極80と異なる層で形成するようにしてもよい。
【0085】
以上述べたように、実施形態2に係る液体吐出ヘッド510によれば、抵抗配線451は、第2電極80と同じ材料で形成されているので、抵抗配線451を形成する場合に第2電極80と同じ工程で形成しやすい。
【0086】
3.実施形態3
次に、本開示の一実施形態としての実施形態3の液体吐出ヘッド510が備える抵抗配線461について説明する。なお、実施形態1の液体吐出ヘッド510と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0087】
実施形態1の抵抗配線401は、第1電極60と同層とし、第1電極60とは電気的に不連続となるように、振動板50の-Z方向側の面に積層形成されていた。これに対して、本実施形態の抵抗配線461は、
図8に示すように、圧電体70の-Z方向側の面に設けられる。抵抗配線461は、圧力室12の温度を検出するための温度検知部の一例である。抵抗配線461の材料は、電気抵抗値が温度依存性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いることができる。
【0088】
本実施形態では、抵抗配線461を、測定用リード電極93aおよび測定用リード電極93bを含む測定用リード電極93と同層とし、測定用リード電極93と電気的に連続となるように、圧電体70の-Z方向側の面に積層形成している。すなわち、抵抗配線461は測定用リード電極93と同一配線である。このため、本実施形態の抵抗配線461は、個別リード電極91および共通リード電極92と同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。よって、抵抗配線461の材料は個別リード電極91、および共通リード電極92と同じ材料である金(Au)である。これにより、抵抗配線461を、個別リード電極91および共通リード電極92と個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、抵抗配線461を、個別リード電極91、共通リード電極92、および測定用リード電極93と異なる層で形成するようにしてもよい。
【0089】
以上述べたように、実施形態3に係る液体吐出ヘッド510によれば、抵抗配線461は、個別リード電極91および共通リード電極92のいずれかと同じ材料で形成されているので、抵抗配線461を形成する場合に個別リード電極91および共通リード電極92のいずれかと同じ工程で形成しやすい。
【0090】
4.実施形態4
次に、本開示の一実施形態としての実施形態4の液体吐出ヘッド510が備える抵抗配線について説明する。なお、実施形態1の液体吐出ヘッド510と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0091】
実施形態1の抵抗配線401は、複数の圧力室12が形成する第1圧力室列に対応する第1圧力室列側蛇行パターンと、複数の圧力室12が形成する第2圧力室列に対応する第2圧力室列側蛇行パターンと、を備えていた。すなわち、実施形態1の液体吐出ヘッド510は、第1圧力室列および第2圧力室列に対応する1つの抵抗配線401を有していた。これに対して、本実施形態の液体吐出ヘッド510は、
図9から
図11に示すように、複数の圧力室12が形成する複数の圧力室群に対応して設けられる複数の温度検知部を有してもよい。これによれば、液体吐出ヘッド510は、複数の圧力室12の温度を複数の群に分けて検出することができる。
【0092】
本実施形態では、
図9に示すように、第1圧力室列のY軸方向における中央より-Y方向側に位置する複数の圧力室12が形成する圧力室群を第1圧力室群G1、第1圧力室列のY軸方向における中央より+Y方向側に位置する複数の圧力室12が形成する圧力室群を第2圧力室群G2、第2圧力室列のY軸方向における中央より-Y方向側に位置する複数の圧力室12が形成する圧力室群を第3圧力室群G3、第2圧力室列のY軸方向における中央より+Y方向側に位置する複数の圧力室12が形成する圧力室群を第4圧力室群G4として説明する。なお、-Y方向は第1方向における一方の一例であり、+Y方向は第1方向における他方の一例である。
【0093】
例えば、
図9に示すように、液体吐出ヘッド510は、-Z方向から見て、第1圧力室列を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行する蛇行パターンを備える抵抗配線402(第2抵抗配線)と、-Z方向から見て、第2圧力室列を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行する蛇行パターンを備える抵抗配線403(第3抵抗配線)と、を備えてもよい。抵抗配線402、および抵抗配線403は、圧力室12の温度を検出するための温度検知部の一例である。また、測定用リード電極93は、測定用リード電極93a、測定用リード電極93b、測定用リード電極93c、および測定用リード電極93dを含んでもよい。
【0094】
抵抗配線402は連続しており、抵抗配線402の一端は、測定用リード電極93aと接続され、抵抗配線402の他端は、測定用リード電極93cと接続される。また、抵抗配線403は連続しており、抵抗配線403の一端は、測定用リード電極93bと接続され、抵抗配線403の他端は、測定用リード電極93dと接続される。これにより、抵抗配線402は配線基板120と電気的に接続され、制御部580は抵抗配線402の電気抵抗値を測定可能になる。また、抵抗配線403は配線基板120と電気的に接続され、制御部580は抵抗配線403の電気抵抗値を測定可能になる。
【0095】
この場合、複数の圧力室群は、第1圧力室列と、第2圧力室列と、を含む。これによれば、本実施形態の液体吐出ヘッド510は、第1圧力室列を構成する圧力室12内のインクの温度と、第2圧力室列を構成する圧力室12内のインクの温度と、が異なる場合に、それぞれの圧力室列を構成する圧力室12内のインクの温度に対応する圧電素子300の駆動を行うことができる。また、これによれば、液体吐出装置500は、圧力室12内のインクの温度に適した液体吐出ヘッド510の吐出制御をより行ないやすい。
【0096】
また、例えば、
図10に示すように、液体吐出ヘッド510は、-Z方向から見て、第1圧力室群G1を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行する蛇行パターンと、第3圧力室群G3を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行する蛇行パターンと、を備える抵抗配線404(第4抵抗配線)と、-Z方向から見て、第2圧力室群G2を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行する蛇行パターンと、第4圧力室群G4を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行する蛇行パターンと、を備える抵抗配線405(第5抵抗配線)と、を備えてもよい。抵抗配線404、および抵抗配線405は、圧力室12の温度を検出するための温度検知部の一例である。また、測定用リード電極93は、測定用リード電極93a、測定用リード電極93b、測定用リード電極93c、および測定用リード電極93dを含んでもよい。
【0097】
抵抗配線404は連続しており、抵抗配線404の一端は、測定用リード電極93aと接続され、抵抗配線404の他端は、測定用リード電極93bと接続される。また、抵抗配線405は連続しており、抵抗配線405の一端は、測定用リード電極93cと接続され、抵抗配線405の他端は、測定用リード電極93dと接続される。これにより、抵抗配線404は配線基板120と電気的に接続され、制御部580は、抵抗配線404の電気抵抗値を測定可能になる。また、抵抗配線405は配線基板120と電気的に接続され、制御部580は抵抗配線405の電気抵抗値を測定可能になる。
【0098】
この場合、複数の圧力室群は、第1圧力室群G1と、第2圧力室群G2と、を含む。あるいは、複数の圧力室群は、第3圧力室群G3と、第4圧力室群G4と、を含む。これによれば、本実施形態の液体吐出ヘッド510は、圧力室列の一方側の圧力室群を構成する圧力室12内のインクの温度と、圧力室列の他方側の圧力室群を構成する圧力室12内のインクの温度と、が異なる場合に、それぞれの圧力室群を構成する圧力室12内のインクの温度に対応する圧電素子300の駆動を行うことができる。また、これによれば、液体吐出装置500は、圧力室12内のインクの温度に適した液体吐出ヘッド510の吐出制御をより行ないやすい。
【0099】
また、例えば、
図11に示すように、液体吐出ヘッド510は、-Z方向から見て、第1圧力室群G1を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行する蛇行パターンを備える抵抗配線406(第6抵抗配線)と、-Z方向から見て、第2圧力室群G2を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行する蛇行パターンを備える抵抗配線407(第7抵抗配線)と、第3圧力室群G3を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行する蛇行パターンを備える抵抗配線408(第8抵抗配線)と、-Z方向から見て、第4圧力室群G4を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行する蛇行パターンを備える抵抗配線409(第9抵抗配線)と、を備えてもよい。抵抗配線406、抵抗配線407、抵抗配線408、および抵抗配線409、は、圧力室12の温度を検出するための温度検知部の一例である。また、測定用リード電極93は、測定用リード電極93a、測定用リード電極93b、測定用リード電極93c、測定用リード電極93d、測定用リード電極93e、測定用リード電極93f、測定用リード電極93g、および測定用リード電極93hを含んでもよい。
【0100】
抵抗配線406は連続しており、抵抗配線406の一端は、測定用リード電極93eと接続され、抵抗配線406の他端は、測定用リード電極93aと接続される。また、抵抗配線407は連続しており、抵抗配線407の一端は、測定用リード電極93cと接続され、抵抗配線407の他端は、測定用リード電極93gと接続される。また、抵抗配線408は連続しており、抵抗配線408の一端は、測定用リード電極93fと接続され、抵抗配線408の他端は、測定用リード電極93bと接続される。また、抵抗配線409は連続しており、抵抗配線409の一端は、測定用リード電極93dと接続され、抵抗配線409の他端は、測定用リード電極93hと接続される。これにより、抵抗配線406は配線基板120と接続され、制御部580は、抵抗配線406の電気抵抗値を測定可能になる。また、抵抗配線407は配線基板120と接続され、制御部580は、抵抗配線407の電気抵抗値を測定可能になる。また、抵抗配線408は配線基板120と接続され、制御部580は、抵抗配線408の電気抵抗値を測定可能になる。また、抵抗配線409は配線基板120と接続され、制御部580は、抵抗配線409の電気抵抗値を測定可能になる。
【0101】
この場合、複数の圧力室群は、第1圧力室群G1と、第2圧力室群G2と、第3圧力室群G3と、第4圧力室群G4と、を含む。これによれば、本実施形態の液体吐出ヘッド510は、例えば、第1圧力室群G1を構成する圧力室12内のインクの温度、第3圧力室群G3を構成する圧力室12内のインクの温度、第2圧力室群G2を構成する圧力室12内のインクの温度、および第4圧力室群G4を構成する圧力室12内のインクの温度と、が異なる場合に、それぞれの圧力室群を構成する圧力室12内のインクの温度に対応する圧電素子300の駆動を行うことができる。また、これによれば、液体吐出装置500は、圧力室12内のインクの温度に適した液体吐出ヘッド510の吐出制御をより行ないやすい。
【0102】
5.実施形態5
次に、本開示の一実施形態としての実施形態5の液体吐出ヘッド510が備える測定用リード電極93および抵抗配線410について説明する。なお、実施形態1の液体吐出ヘッド510と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0103】
実施形態1の測定用リード電極93は測定用リード電極93aおよび測定用リード電極93bを含み、抵抗配線401の一端は測定用リード電極93aと接続され、抵抗配線401の他端は測定用リード電極93bと接続されていた。これに対して、
図12に示すように、本実施形態の測定用リード電極93は測定用リード電極93iおよび測定用リード電極93jを含む。測定用リード電極93iおよび測定用リード電極93jを含む測定用リード電極93は、抵抗配線410の配線基板120との接続部の一例である。
【0104】
また、本実施形態の液体吐出ヘッド510は、抵抗配線410を有する。抵抗配線410は、圧力室12の温度を検出するための温度検知部の一例である。抵抗配線410は連続しており、X軸方向において+X方向側となる抵抗配線410の一端は、測定用リード電極93iと接続され、X軸方向において-X方向側となる抵抗配線410の他端は、測定用リード電極93jと接続される。これにより、抵抗配線410は配線基板120と電気的に接続され、制御部580は、抵抗配線410の電気抵抗値を測定可能になる。
【0105】
本実施形態における測定用リード電極93は、Y軸方向において個別リード電極91と共通リード電極92との間に設けられる。これによれば、第1電極60、第2電極80、および抵抗配線410を配線基板120と効率よく接続できる。
【0106】
また、本実施形態のように測定用リード電極93を、Y軸方向において個別リード電極91と共通リード電極92の間に設けつつ、実施形態2~実施形態4のように複数の圧力室群に対応する複数の温度検知部を設けても良い。
【0107】
本発明の上記実施形態に係る液体吐出ヘッド510、上記実施形態に係る液体吐出装置500は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。また、上記実施形態および以下に説明する他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。以下、他の実施形態について説明する。
【0108】
上記各実施形態において、制御部580は、抵抗配線401の電気抵抗値を測定し、圧力室12の温度を検出する機能を備えなくてもよい。そして、抵抗配線401の電気抵抗値を測定し、圧力室12の温度を検出する機能を液体吐出ヘッド510が有してもよい。この場合、例えば、液体吐出ヘッド510は、温度検知部における測定値と温度の対応関係を予め記憶する記憶部SAと、温度検知部における測定値を測定する測定値取得部MAと、記憶部SAに記憶された前記対応関係と、測定値取得部MAで取得された前記測定値と、に基づいて、圧電素子300の駆動に際した温度を取得する温度取得部TAを有する温度検出回路を備えてもよい。なお、温度検知部における測定値は電気抵抗値であってもよく、この場合、測定値取得部MAは、抵抗取得部MAであってもよい。あるいは、液体吐出ヘッド510は、記憶部SA、測定値取得部MA、および温度取得部TAをヘッド回路121に備えてもよい。そして、液体吐出ヘッド510は、圧電素子300の駆動に際して、抵抗配線401の電気抵抗値を測定し、抵抗配線401の電気抵抗値と温度との対応関係に基づいて、圧力室12の温度を検出してもよい。
【0109】
上記各実施形態において、抵抗配線401の電気抵抗値を測定する方法は特に限定されない。例えば、公知の二端子測定法や四端子測定法を用いることができる。
【0110】
上記各実施形態において、抵抗配線は、全ての圧力室12に対応して設けられていなくてもよい。例えば、実施形態1において、抵抗配線401が、第1圧力室列を構成する複数の圧力室12に対応して設けられ、第2圧力室列を構成する圧力室12に対応して設けられていなくてもよい。あるいは、抵抗配線401が、第1圧力室列を構成する複数の圧力室12のうち一部の圧力室12と、第2圧力室列を構成する複数の圧力室12のうち一部の圧力室12と、に対応して設けられてもよい。
【0111】
上記各実施形態において、抵抗配線が備える蛇行パターンは、-Z方向から見て、対応する圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行していなくてもよい。例えば、実施形態1において、抵抗配線401の第1圧力室列側蛇行パターンは、-Z方向から見て、第1圧力室列を構成する各圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置においてX軸方向に沿って蛇行していてもよい。
【0112】
上記各実施形態において、抵抗配線は、-Z方向から見て、対応する圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置に設けられていれば蛇行していなくてもよい。
【0113】
上記各実施形態において、抵抗配線は、-Z方向から見て、対応する圧力室12と重なる位置を通るように設けられてもよい。例えば、実施形態1において、抵抗配線401が、-Z方向から見て、第1電極60に対してY軸方向における外側となる位置であって、かつ圧力室12と重なる位置を通るように設けてもよい。
【0114】
上記各実施形態において、第1電極60が共通電極であり、第2電極80が個別電極であってもよい。この場合、第1電極60は、圧電体70に対して、Z軸方向の+Z方向側に設けられ、複数の圧力室12に対して共通に設けられる。また、第2電極80は、圧電体70に対して、Z軸方向の-Z方向側に設けられ、複数の圧力室12に対して個別に設けられる。また、この場合、第1電極60は共通リード電極92と接続され、第2電極80は個別リード電極91と接続される。
【0115】
上記各実施形態において、温度検知部は、温度検知部における測定値に基づいて圧力室12の温度を検出できるのであれば、抵抗配線でなくてもよく、例えば、熱電対であってもよい。例えば、実施形態1において、抵抗配線401を熱電対に替える場合、-Z方向から見て、第1圧力室列および第2圧力室列を構成する複数の圧力室12と連通する供給連通路19と重なる位置に、熱電対を構成する2種類の金属配線の一端同士が接続される測温接点を配置してもよい。そして、一方の金属配線の他端を測定用リード電極93aに電気的に接続し、他方の金属配線の他端を測定用リード電極93bに電気的に接続することにより、制御部580が、一方の金属配線の他端と他方の金属配線の他端との間の電位差である熱電対の熱起電力を測定可能になる。そして、制御部580は、圧電素子300の駆動に際して、熱電対の熱起電力を測定し、熱電対の熱起電力と配線基板120に別途設けた温度センサーが検出する配線基板120付近の温度に基づいて、圧力室12の温度を検出してもよい。また、この場合、熱電対を構成する2種類の金属配線を、第1電極60、第2電極80、個別リード電極91、共通リード電極92のうちいずれかと同層として積層形成してもよい。例えば、
図13に示すように、実施形態1において、熱電対471を構成する2種類の金属配線のうち一方の金属配線471aを、第2電極80と同層とし、第2電極80とは電気的に不連続となるように、圧電体70の-Z方向側の面に積層形成する。そして、熱電対471を構成する他方の金属配線471bを、個別リード電極91および共通リード電極92と同層とし、個別リード電極91および共通リード電極92とは電気的に不連続となるように、金属配線471aの-Z方向側の面に積層形成してもよい。さらに、第2電極80の材料を白金(Pt)とし、金属配線471aの材料を白金(Pt)、金属配線471bの材料を金(Au)としてもよい。
【0116】
上記各実施形態において、ノズル21に排出流路を連通させ、供給流路からノズル21を介して排出流路へと液体を循環させつつ、ノズル21からインクを吐出してもよい。例えば、
図14に示すように、-X方向側に位置する供給口44に加え、+X方向側に位置する排出口200を設け、更に2つのノズル連通路16をX軸方向に延在する流路で接続し、その接続部分の途中にノズル21を設けても良い。この場合、供給口44から供給されたインクが、-X方向側の圧力室12、ノズル連通路16、+X方向側の圧力室12の順に流れ、排出口200から排出されるように、不図示のポンプによってインクの流れが制御される。ノズル21からのインクの吐出を行いながら、上記のような一連のインクの供給、排出からなる循環動作を行うことにより、ノズル21近傍でのインク蒸発に起因する粘性の増加等を抑制することができる。なお、
図14では1つのノズル21に対して2つの圧力室12が連通し、2つの圧電素子300の駆動により1つのノズル21からのインクの吐出を行う場合について説明したが、1つの圧力室12が1つのノズル21に連通していてもよい。例えば、
図14において、+X方向側の圧電素子300を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0117】
10…圧力室基板、11…隔壁、12…圧力室、15…連通板、16…ノズル連通路、17…第1マニホールド部、18…第2マニホールド部、19…供給連通路、20…ノズルプレート、21…ノズル、30…保護基板、31…保持部、32…貫通孔、40…ケース部材、41…収容部、42…第3マニホールド部、43…接続口、44…供給口、45…コンプライアンス基板、46…封止膜、47…固定基板、48…開口部、49…コンプライアンス部、50…振動板、51…弾性膜、52…絶縁体膜、60…第1電極、70…圧電体、71…溝部、80…第2電極、85…配線部、91…個別リード電極、92…共通リード電極、93,93a,93b,93c,93d,93e,93f,93g,93h,93i,93j…測定用リード電極、100…マニホールド、120…配線基板、121…ヘッド回路、300…圧電素子、310…活性部、320…非活性部、401,402,403,404,405,406,407,408,409,410,451,461…抵抗配線、500…液体吐出装置、510…液体吐出ヘッド、550…インクタンク、552…チューブ、560…搬送機構、562…搬送ローラー、564…搬送ロッド、566…搬送用モーター、570…移動機構、572…キャリッジ、574…搬送ベルト、576…移動用モーター、577…プーリー、580…制御部、G1…第1圧力室群、G2…第2圧力室群、G3…第3圧力室群、G4…第4圧力室群。