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特許7622500波長変換装置、光源装置及びプロジェクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】波長変換装置、光源装置及びプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20250121BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20250121BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20250121BHJP
   F21V 7/26 20180101ALI20250121BHJP
   F21V 29/502 20150101ALI20250121BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20250121BHJP
   F21V 29/83 20150101ALI20250121BHJP
   F21V 29/85 20150101ALI20250121BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20250121BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20250121BHJP
【FI】
G03B21/14 A
F21S2/00 311
F21V5/04 350
F21V7/26
F21V29/502 100
F21V29/70
F21V29/83
F21V29/85
G03B21/00 D
F21Y115:30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021051760
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149549
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】横尾 友博
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-025247(JP,A)
【文献】特開2018-107298(JP,A)
【文献】特開2020-030224(JP,A)
【文献】特開2020-122868(JP,A)
【文献】特表2011-515848(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181858(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/123145(WO,A1)
【文献】特開2017-215549(JP,A)
【文献】特開2020-056899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V1/00-15/04
G02B5/20-5/28
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を波長変換する波長変換層と、
前記波長変換層で波長変換された光が入射する第1面と、前記光を射出する第2面とを
有する複数のセルからなる光学アレイ層と、
を備え、
前記光学アレイ層は、前記第1面から前記第2面にかけて隣り合う前記セルとの界面で
前記光を反射する反射面を有
前記波長変換層の前記光学アレイ層が対向する対向面とは反対側の面に前記励起光を入
射させる入射側光学アレイ層を備え、
前記入射側光学アレイ層は、前記励起光が入射する第3面と、入射した前記励起光を射
出する第4面とを有する複数のセルからなり、前記第3面から前記第4面にかけて隣り合
うセルとの界面で光を反射する反射面を有し、
前記励起光は、前記入射側光学アレイ層を介して前記波長変換層に入射し、波長変換さ
れた光は前記光学アレイ層に入射する、
波長変換装置。
【請求項2】
前記反射面は誘電体膜で構成されている、
請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記反射面は拡散反射面を含む、
請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項4】
隣り合う前記セル間に空気層が形成され、
前記セルと前記空気層との屈折率差によって前記光は前記セルと前記空気層との界面で
反射する、
請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項5】
前記セルの高さ方向の寸法は前記セルの前記高さ方向に直交する面内での寸法よりも大
きい、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の波長変換装置。
【請求項6】
前記複数のセルは互いに離間している、
請求項5に記載の波長変換装置。
【請求項7】
前記光学アレイ層のセルの大きさは前記入射側光学アレイ層のセルの大きさよりも小さ
い、
請求項に記載の波長変換装置。
【請求項8】
励起光源と、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の波長変換装置と、
前記励起光源から射出された励起光が前記波長変換装置の波長変換層に照射される、
光源装置。
【請求項9】
請求項に記載の光源装置と、
前記光源装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
を備える、
プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換装置、光源装置及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクター用光源として、従来主流であった蛍光ランプや白熱灯に代わり、低消費電力、小型且つ軽量、光量を容易に調節できる等の優れた特徴を有する発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の固体光源が用いられている。例えば、青色光を射出する固体光源に、当該固体光源からの光を励起光として吸収して黄色光に変換する波長変換機構(波長変換装置)を組み合わせた発光装置が知られている。この発光装置を備える光源装置では、固体光源から射出された青色光と波長変換装置から射出された黄色光とが合成され、プロジェクター等の照明光としての白色光が生成される。例えば特許文献1には、蛍光体層と、当該蛍光体層の両面に形成され、蛍光体層よりも高い熱伝導率を有する透光性放熱層と、を含む積層体を備えた波長変換部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-027613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された波長変換部材では、励起光が蛍光体層に入射する前に、励起光の進行方向から見たときに励起光が透光性放熱層で平面方向に拡がり、蛍光が射出される蛍光面積が増大することによって、波長変換効率が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様の光源装置は、励起光を波長変換する波長変換層と、波長変換層で波長変換された光が入射する第1面と、光を射出する第2面とを有する複数のセルからなる光学アレイ層と、を備える。光学アレイ層は、第1面から第2面にかけて隣り合うセルとの界面で光を反射する反射面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
図2図1のプロジェクターが備える光源装置の概略構成図である。
図3図2の光源装置が備える第1実施形態の波長変換装置の一部の断面図である。
図4図3に示す波長変換装置の一部において励起光及び蛍光が伝搬する様子を示す断面図である。
図5図3に示す波長変換装置の光学アレイ層に励起光が入射する様子を示す平面図である。
図6図3に示す波長変換装置の波長変換層に励起光が入射する様子を示す平面図である。
図7図3に示す波長変換装置の波長変換層及び光学アレイ層から蛍光が射出される様子を示す平面図である。
図8】第2実施形態の光源装置の概略構成図である。
図9図8の光源装置が備える第2実施形態の波長変換装置の一部の断面図である。
図10】第2実施形態の変形例の波長変換装置の一部の断面図である。
図11】光学アレイ層の第1変形例の平面図である。
図12】光学アレイ層の第2変形例の平面図である。
図13】光学アレイ層の第3変形例の斜視図である。
図14】光学アレイ層の第4変形例の斜視図である。
図15】光学アレイ層の第5変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1図7を用いて説明する。
図1は、第1実施形態のプロジェクター1を示す概略構成図である。図2は、プロジェクター1が備える光源装置2の概略構成図である。以下の各図面では、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を変えている場合がある。
【0008】
プロジェクター1は、光変調装置として3つの透過型液晶ライトバルブを用いたプロジェクターの一例である。光変調装置として、例えば、反射型液晶ライドバルブを用いてもよい。光変調装置として、マイクロミラーを用いたデバイスや、DMD(Digital Micromirror Device)等を備える装置等のように、液晶以外の光変調装置を用いてもよい。
【0009】
(プロジェクター)
始めに、プロジェクター1の構成について説明する。
図1に示すように、プロジェクター1は、光源装置2と、色分離光学系3と、光変調装置4R、光変調装置4G及び光変調装置4Bと、光合成光学系5と、投射光学系6と、を備える。光源装置2は、照明光として白色光WLを射出する。色分離光学系3は、光源装置2から射出された白色光WLを赤色光LR、緑色光LG及び青色光LBに分離する。光変調装置4R、光変調装置4G及び光変調装置4Bは各々、赤色光LR、緑色光LG及び青色光LBを画像情報に応じて変調され、各色の画像光を形成する。光合成光学系5は、光変調装置4R、光変調装置4G及び光変調装置4Bから射出された各色の画像光を合成する。投射光学系6は、光合成光学系5によって合成された画像光をスクリーンSCRに向かって投射する。
【0010】
図2を参照して後述するように、光源装置2は、色分離光学系3に向けて照明光である白色光WLを射出する。白色光WLには、アレイ光源20から射出された青色の励起光ELすなわち青色光BL0のうち、波長変換されずに波長変換装置50から射出される青色光BLと、青色光BL0の波長変換によって生じる黄色の蛍光YLと、を含む。白色光WLは、光源装置2によって略均一な照度分布を有するように調整される。
【0011】
図1に示すように、色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aと、第2ダイクロイックミラー7bと、第1反射ミラー8aと、第2反射ミラー8bと、第3反射ミラー8cと、を備える。第1ダイクロイックミラー7aは、光源装置2から射出された白色光WLを、赤色光LRと、緑色光LGと青色光LBとが混合された光と、に分離する。そのため、第1ダイクロイックミラー7aは、赤色光LRを透過すると共に、緑色光LG及び青色光LBを反射する。第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGと青色光LBとが混合された光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。そのため、第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを反射すると共に、青色光LBを透過する。
【0012】
第1反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置され、第1ダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。第2反射ミラー8b及び第3反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置され、第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを反射し、青色光LBを光変調装置4Bに導く。
【0013】
光変調装置4Rは、赤色光LRを通過させる間に画像情報に応じて当該光を変調し、赤色の画像光を形成する。同様に、光変調装置4Gは、緑色光LGを通過させる間に画像情報に応じて当該光を変調し、緑色の画像光を形成する。光変調装置4Bは、青色光LBを通過させる間に画像情報に応じて当該光を変調し、青色の画像光を形成する。光変調装置4R、光変調装置4G及び光変調装置4Bの各々は、例えば液晶パネルによって構成されている。光変調装置4R、光変調装置4G及び光変調装置4Bの各々の光入射側及び光射出側には、偏光板(図示略)が配置されている。光変調装置4Rの赤色光LRの入射側には、光変調装置4Rに入射する赤色光LRを平行光に変換するフィールドレンズ10Rが設けられている。光変調装置4Gの緑色光LGの入射側には、光変調装置4Gに入射する緑色光LGを平行光に変換するフィールドレンズ10Gが設けられている。光変調装置4Bの青色光LBの入射側には、光変調装置4Bに入射する青色光LBを平行光に変換するフィールドレンズ10Bが設けられている。
【0014】
光合成光学系5は、例えばクロスダイクロイックプリズムによって構成されている。光合成光学系5は、光変調装置4R、光変調装置4G及び光変調装置4Bの各々から射出された各色の画像光を合成し、合成された画像光を投射光学系6に向けて射出する。
【0015】
投射光学系6は、複数の投射レンズによって構成されている。投射光学系6は、光合成光学系5によって合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投射する。スクリーンSCR上には、拡大されたカラー映像が表示される。
【0016】
(光源装置)
次に、光源装置2の構成について説明する。
図2に示すように、第1実施形態の光源装置2Aは、発光部11と、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳レンズ33Aと、を備える。インテグレーター光学系31と重畳レンズ33Aとは、重畳光学系33を構成している。
【0017】
発光部11は、アレイ光源20と、コリメーター光学系22と、集光光学系23と、第1の位相差板28Aと、偏光分離素子150Aを含む光学素子25Aと、第1の集光光学系26と、波長変換装置50と、第2の位相差板28Bと、第2の集光光学系29と、拡散反射素子30と、を備える。
【0018】
アレイ光源20と、コリメーター光学系22と、集光光学系23と、第1の位相差板28Aと、光学素子25Aと、第2の位相差板28Bと、第2の集光光学系29と、拡散反射素子30とは、光軸AX1上に順次並んで配置されている。一方、波長変換装置50と、第1の集光光学系26と、光学素子25Aと、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳レンズ33Aとは、光軸AX2上に順次並んで配置されている。光軸AX1と光軸AX2とは、同一面内にあり、互いに直交する。
【0019】
アレイ光源20は、固体光源としての複数の半導体レーザー(励起光源)21を備える。複数の半導体レーザー21は、光軸AX1と直交する面内において、アレイ状に配置されている。半導体レーザー21は、波長変換装置50の波長変換層80の励起光ELとして例えば青色光BL0を射出する。青色光BL0のピーク波長は、例えば445nmであるが、前述のように波長変換層80を励起可能であれば任意に変更可能であって、波長変換層80の蛍光材料に応じて決まり、例えば460nmであってもよい。
【0020】
アレイ光源20から光線束として射出された青色光BL0は、コリメーター光学系22に入射する。コリメーター光学系22は、アレイ光源20から射出された青色光BL0を平行光に変換する。コリメーター光学系22は、例えばアレイ状に配置された複数のコリメーターレンズ22Aを備える。複数のコリメーターレンズ22Aの各々は、複数の半導体レーザー21の各々に対応して配置されている。
【0021】
コリメーター光学系22を通過した青色光BL0は、集光光学系23に入射する。集光光学系23は、青色光BL0の光束径を調整する。集光光学系23は、例えば凸レンズ23Aと、凹レンズ23Bと、を備える。
【0022】
集光光学系23を通過した青色光BL0は、第1の位相差板28Aに入射する。第1の位相差板28Aは、例えば光軸AX1を略中心として回転可能に構成された1/2波長板である。半導体レーザー21から射出された青色光BL0は、直線偏光である。第1の位相差板28Aの回転角度を適切に設定することによって、第1の位相差板28Aを透過する青色光BL0を、光学素子25Aに対するS偏光成分とP偏光成分とを所定の比率で含む光線に変換することができる。第1の位相差板28Aを回転させることによって、S偏光成分とP偏光成分との比率を変化させることができる。
【0023】
第1の位相差板28Aを通過することによって生成されたS偏光成分とP偏光成分とを含む青色光BL0は、光学素子25Aに入射する。光学素子25Aは、例えば波長選択性を有するダイクロイックプリズムである。ダイクロイックプリズムは、光軸AX1及び光軸AX2に対して互いに同一面内で45°の角度をなす傾斜面50aを有する。
【0024】
傾斜面50aには、波長選択性を有する偏光分離素子150Aが設けられている。偏光分離素子150Aは、青色光BL0を、偏光分離素子150Aに対するS偏光成分の青色光BLとP偏光成分の青色光BLとに分離する偏光分離機能を有する。つまり、偏光分離素子150Aは、入射する青色光BL0のうち、青色光BLを反射させ、青色光BLを透過させる。また、偏光分離素子150Aは青色光BL0とは波長帯が異なる蛍光YLを、蛍光YLの偏光状態にかかわらず透過させる色分離機能を有する。
【0025】
偏光分離素子150Aから射出された青色光BLは、第1の集光光学系26に入射する。第1の集光光学系26は、青色光BLを波長変換装置50に向けて集光させる。第1の集光光学系26は、例えば第1レンズ26Aと、第2レンズ26Bと、を備える。
【0026】
第1実施形態の光源装置2Aでは、波長変換装置50として、第1実施形態の波長変換装置51が用いられている。図3は、波長変換装置51の主要部分の拡大図であり、光軸AX2に沿って切断した断面図である。波長変換装置51は、図3を参照して後述するように青色光(励起光)BLを波長変換する波長変換層80を備える。波長変換層80は、青色光BLを吸収して励起され、例えば500nm以上700nm以下の波長域にピーク波長を有する黄色の蛍光YLを射出する。蛍光YLのピーク波長は、少なくとも青色光BLのピーク波長とは異なり、波長変換層80の蛍光材料に応じて決まる。
【0027】
図2及び図3に示すように、波長変換層80の青色光BLが入射する側とは反対側には、反射層90が設けられている。反射層90は、波長変換層80で生成された蛍光YLのうち、波長変換装置51の基板35に向かって進む成分を反射する。波長変換層80で生成された蛍光YLのうち、一部の蛍光YLは、反射層90によって反射され、波長変換層80の外部へ射出される。波長変換層80で生成された蛍光YLのうち、他の一部の蛍光YLは、反射層90を介さずに波長変換層80の外部へ射出される。
【0028】
基板35の波長変換層80及び反射層90を支持する面とは反対側の面には、ヒートシンク38が配置されている。波長変換装置51では、波長変換層80で発生した熱をヒートシンク38を介して放熱できるため、波長変換層80の熱劣化を防ぐことができる。
【0029】
波長変換層80から射出された蛍光YLは、非偏光である。蛍光YLは、第1の集光光学系26を通過した後、偏光分離素子150Aに入射する。偏光分離素子150Aに入射した蛍光YLは、偏光分離素子150Aからインテグレーター光学系31に向けて進む。
【0030】
一方、図2に示すように、偏光分離素子150Aから射出されたP偏光の青色光BLは、第2の位相差板28Bに入射する。第2の位相差板28Bは、例えば偏光分離素子150Aと拡散反射素子30との間の光路中に配置された1/4波長板である。したがって、偏光分離素子150Aから射出された青色光BLは、第2の位相差板28Bによって、例えば、光軸AX1を中心に右回り円偏光の青色光BL1に変換された後、第2の集光光学系29に入射する。第2の集光光学系29は、例えばレンズ29Aを備え、青色光BL1を集光させた状態で拡散反射素子30に入射させる。
【0031】
拡散反射素子30は、偏光分離素子150Aにおける蛍光体34の反対側に配置され、第2の集光光学系29から射出された青色光BL1を偏光分離素子150Aに向けて拡散させつつ反射させる。拡散反射素子30には、例えば青色光BL1をランバート反射させつつ、且つ、偏光状態を乱さない素子等が用いられる。
【0032】
以下では、拡散反射素子30によって拡散された状態で反射された光を青色光BL2と称する。青色光BL1を拡散させつつ反射させることによって、略均一な照度分布の青色光BL2が生成される。例えば、右回り円偏光の青色光BL1は、左回り円偏光の青色光BL2として反射される。青色光BL2は、第2の集光光学系29によって平行光に変換された後に、再び第2の位相差板28Bに入射する。
【0033】
左回り円偏光の青色光BL2は、第2の位相差板28BによってS偏光の青色光BL1に変換される。青色光BL1は、偏光分離素子150Aによってインテグレーター光学系31に向けて反射される。
【0034】
青色光BL1は、偏光分離素子150Aを透過した蛍光YLと共に、白色光WLとして用いられる。つまり、青色光BL1及び蛍光YLは、偏光分離素子150Aから互いに同一方向に向けて射出され、青色光BL1と黄色の蛍光YLとが混ざった白色光WLとして合成される。
【0035】
白色光WLは、インテグレーター光学系31に向けて射出される。インテグレーター光学系31は、例えば、レンズアレイ31A、レンズアレイ31Bを備える。レンズアレイ31A、31Bの各々では、光軸AX2に直交する方向、すなわち光軸AX1に沿って複数のマイクロレンズが配列されている。インテグレーター光学系31を透過した白色光WLは、偏光変換素子32に入射する。偏光変換素子32は、偏光分離膜と、位相差板と、を有する。偏光変換素子32は、非偏光の白色光WLを直線偏光に変換する。
【0036】
偏光変換素子32によって偏光変換された白色光WLは、重畳レンズ33Aに入射する。重畳レンズ33Aは、インテグレーター光学系31と協同し、被照明領域における白色光WLによる照度の分布を均一化する。上述したように、光源装置2Aは、光軸AX2に沿って白色光WLを射出する。
【0037】
(波長変換装置)
次に、第1実施形態の波長変換装置51について説明する。波長変換装置51は、光学アレイ層60と、波長変換層80と、反射層90と、基板35と、ヒートシンク38と、を備える。光学アレイ層60、波長変換層80及び反射層90は、波長変換装置51において青色光BLを吸収して蛍光YLを生成する波長変換部100を構成している。波長変換部100の反射層90、波長変換層80及び光学アレイ層60は、基板35の表面35aに順次積層されている。基板35は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等の放熱性に優れた金属材料で構成されている。
【0038】
図4は、波長変換装置51の波長変換部100に励起光ELとして青色光BLが入射する様子と蛍光YLが射出される様子とを示す断面図である。図3及び図4に示すように、基板35の表面35aに、反射層90が積層されている。反射層90の表面90aに、波長変換層80が積層されている、波長変換層80の表面80aに、光学アレイ層60が設けられている。
【0039】
波長変換層80には、図2を参照して説明した第1の集光光学系26から射出された青色光BLが集光状態で表面80aから入射する。波長変換層80は、青色光BLを波長変換し、蛍光YLを生成する。すなわち、波長変換層80は、入射する青色光BLを吸収し、励起され、且つ蛍光YLを発する蛍光材料を含んでいる。蛍光材料は、例えば賦活剤としてセリウム(Ce)が添加されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG(YAl12):Ce)、或いはY(Al,Ga)12、LuAl12、TbAl12の少なくとも何れか1つの酸化物蛍光体を含んでいる。波長変換層80は、賦活剤として、Ceに替えて、ユーロピウム(Eu)を含んでいてもよい。また、波長変換層80は、散乱剤を含んでいてもよい。波長変換層80で生成された蛍光YLは、波長変換層80の表面80aと反対側の表面80bから射出される。
【0040】
光学アレイ層60は、複数のセル62から構成されている。各々のセル62は、表面(第1面)62bと、表面(第2面)62aと、を有する。表面62bには、波長変換層80で波長変換され、表面80aから射出された蛍光(光)YLが入射する。表面62aから、蛍光YLが波長変換装置51の外部且つ青色光BLが入射した側に射出される。各々のセル62は、例えばサファイア、アルミナ、YAG、石英等の高熱伝導率と、少なくとも青色光BL及び蛍光YLに対して高透過性とを有する材料によって形成されている。セル62が高熱伝導率且つ高透過性を有する材料で形成されていることによって、波長変換層80における波長変換時に生じる熱THがセル62を通して波長変換装置51の外部に効率良く放出される。また、波長変換層80から射出された蛍光YLが表面62aから高効率に射出されるとともに、青色光BLが波長変換層80に対して高効率で入射する。
【0041】
図5は、青色光BLの進行方向に沿って平面視したときに、光学アレイ層60に対して略円形状を有する青色光BLが入射する様子を示す平面図である。図6は、平面視したときに、図5の青色光BLが波長変換層80に対して入射する様子を示す平面図である。図7は、図6に示すように青色光BLは波長変換装置51に入射した場合に、蛍光YLが射出される様子を示す平面図である。図5及び図6に示すように、各々のセル62は、青色光BLの進行方向すなわち光軸AX2に沿って見た平面視において、正方形状に形成されている。図3及び図4に示すセル62の高さ方向Hの寸法h62は、図5及び図6に示すセル62の平面視での寸法w62よりも大きい。セル62の寸法w62は、セル62の高さ方向Hに直交する面内での寸法であり、青色光BLの進行方向及び光軸AX2に直交する面内での寸法である。セル62の高さ方向Hの寸法h62は、セル62の平面視での寸法w62の例えば1.0倍から1.5倍の大きさを有する。
【0042】
第1実施形態の波長変換装置51では、光学アレイ層60における複数のセル62同士の間に、誘電体膜66が介在している。誘電体膜66は、例えば銀(Ag)、Alを含む反射材料によって形成されていてもよく、適切な複数の誘電体を交互に積層した誘電体多層膜等によって形成されていてもよい。
【0043】
光学アレイ層60は、複数のセル62の表面62bから表面62aにかけて、表面60a、60b上で互いに隣り合うセル62、62の界面で、青色光BL及び蛍光YLを反射する反射面68を有する。すなわち、反射面68は、互いに隣り合うセル62同士の間に配置された誘電体膜66の側面66c、66dで構成されている。セル62から反射面68に入射する青色光BL及び蛍光YLは、反射面68によって正反射される。
【0044】
図3では、波長変換装置51における青色光BL及び蛍光YLの方向成分ごとの伝搬の様子及び熱流束の動きが各種矢印によって示されている。一方で、図4では、青色光BL及び蛍光YLの各々の全体すなわち光束としての伝搬の様子が示されている。図3に示すように、波長変換部100の外部、すなわち図3及び図4において波長変換部100の上方から波長変換層80に入射する青色光BLのうち、青色光成分BL11の進路は、高さ方向Hに対してなす角度が小さく、且つ反射面68に当たらない。そのため、青色光成分BL11は、反射面68によって反射されずに光学アレイ層60を通って、波長変換層80に入射する。一方、上述のように波長変換層80に入射する青色光BLのうち、青色光成分BL12の進路は、セル62内で反射面68に当たる。そのため、青色光成分BL12は、反射面68によって反射されつつ、光学アレイ層60を通って、波長変換層80に入射する。同様に、波長変換層80から波長変換部100の外部に射出される蛍光YLのうち、蛍光成分YL11の進路は、高さ方向Hに対してなす角度が小さく、且つ反射面68に当たらない。そのため、蛍光成分YL11は、反射面68によって反射されずに光学アレイ層60を通って、波長変換部100の外部に射出される。一方、波長変換層80から波長変換部100の外部に射出される蛍光YLのうち、蛍光成分YL12の進路は、セル62内で反射面68に当たる。そのため、蛍光成分YL12は、反射面68によって反射されつつ、光学アレイ層60を通って、波長変換部100の外部に射出される。
【0045】
青色光BL及び蛍光YLの各成分がセル62内で反射面68によって反射される回数は、光軸AX2に対する青色光BL及び蛍光YLの各成分の進行方向のなす角度によって決まる。青色光BL及び蛍光YLの各成分の進行方向が光軸AX2に対してなす角度が大きくなる程、反射面68によって反射される回数が多くなる。
【0046】
上述のように、第1実施形態の波長変換装置51は、青色光BLを蛍光YLに波長変換する波長変換層80と、波長変換層80で波長変換された蛍光YLが入射する表面62bと、蛍光YLを射出する表面62aとを有する複数のセル62からなる光学アレイ層60と、を備える。光学アレイ層60は、高さ方向Hで表面62bから表面62aにかけて、表面62a、62b上で隣り合うセル62、62との界面で蛍光YLを反射する反射面68を有する。図5に示すように、例えば青色光BLの進行方向及び光軸AX2に沿って平面視したときに、青色光BLが円形状を有し、光学アレイ層60の表面60aすなわち複数のセル62の表面62aにおいて5個×5個の合計25個のセル62が占める領域内に入射する。その場合、図3及び図4を参照するとわかるように、光学アレイ層60では青色光BLが表面60aで重なるセル62が占める領域内で進行する。
【0047】
青色光BLは、反射面68で反射されることによって、表面60aで重なるセル62が占める領域よりも外側のセル62を通ることなく、表面60aでのビーム面積を略保持した状態で波長変換層80に入射する。但し、図5及び図6に示すように、光学アレイ層60のセル62の表面62aにおいて平面視で少なくとも一部に入射した青色光BLは、当該セル62の全体に拡がる可能性があるため、青色光BLは光学アレイ層60の表面60aで重なった全てのセル62に対してにじむ。つまり、図6に示すように、光学アレイ層60の表面60b及び波長変換層80の表面80aに照射される青色光BLは、5個×5個の合計25個のセル62が占める矩形状の領域と重なる。
【0048】
波長変換層80で生成された蛍光YLは、光学アレイ層60で略保持された青色光BLのビーム面積と同程度のビーム面積で射出され、光学アレイ層60の表面60bで蛍光YLと重なるセル62が占める領域内で、青色光BLとは反対の向きに進行する。図3及び図4を参照するとわかるように、蛍光YLは、反射面68で反射されることによって、表面60bで重なるセル62が占める領域よりも外側のセル62を通ることなく、表面60bでのビーム面積を略保持した状態で光学アレイ層60から射出される。したがって、図7に示すように、波長変換層80の表面80a及び光学アレイ層60の表面60aから射出される蛍光YLは、5個×5個の合計25個のセル62が占める矩形状の領域と重なる。
【0049】
第1実施形態の波長変換装置51によれば、上述の光学アレイ層60を備えるので、青色光BLの少なくとも一部を光学アレイ層60において当該少なくとも一部の青色光BLが入射したセル62の反射面68で青色光成分BL12を反射させつつ、光学アレイ層60における青色光BLの平面視領域を保持し、波長変換層80に入射させることができる。このことによって、光学アレイ層60を備えない場合に比べて、青色光BLの平面視での拡がりが増大することによる波長変換層80での波長変換効率の低下を抑えることができる。
【0050】
また、第1実施形態の波長変換装置51によれば、蛍光YLが入射したセル62の反射面68で蛍光成分YL12を反射させつつ、蛍光YLの平面視での拡がりを抑え、波長変換層80の表面80aから射出される蛍光YLの平面視領域と、光学アレイ層60の表面60aから射出される蛍光YLの平面視領域とを略一致させることができる。このことによって、光学アレイ層60を備えない場合に比べて、蛍光YLの平面視での拡がりが増大することによる蛍光YLの利用効率の低下を抑えることができる。
【0051】
第1実施形態の波長変換装置51では、反射面68は誘電体膜66の側面66c、66dで構成されている。そのため、反射面68に入射する青色光BL及び蛍光YLを高効率に反射し、セル62内を導光することができる。その結果、青色光BL及び蛍光YLの損失を抑えることができる。
【0052】
第1実施形態の波長変換装置51では、反射面68が拡散反射面であってもよい。例えば、反射面68に青色光BL及び蛍光YLの各波長に対応して設計された微細な凹凸が形成されていてもよい。反射面68が拡散反射面を含むことによって、青色光BL及び蛍光YLの進行方向及び光軸AX2に対する指向性を高めることができる。
【0053】
なお、第1実施形態の波長変換装置51では、反射面68の構成する材料は、誘電体膜66に限定されず、セル62との界面によって反射面68を形成し、セル62を構成する材料との屈折率差によって青色光BL及び蛍光YLを反射可能な材料或いは媒質であればよい。言い換えれば、反射面68の構成する材料或いは媒質として、セル62を構成する材料との屈折率、青色光BL及び蛍光YLの各ピーク波長に応じて、適当な屈折率を有する材料或いは媒質を採用することができる。また、反射面68において青色光成分BL12及び蛍光成分YL12が全反射するように、反射面68の構成する材料或いは媒質が選定されてもよい。この構成によれば、青色光BLをより高効率に波長変換層80に入射させるとともに、蛍光YLをより高効率に光学アレイ層60から射出させることができる。光学アレイ層60のセル62の材料として前述のサファイア等を用いた場合、光学アレイ層60の屈折率は1.7程度である。
【0054】
第1実施形態の波長変換装置51では、光学アレイ層60の表面60a、60b上で互いに隣り合うセル62、62間に空気層を備え、セル62と当該空気層との屈折率差によってセル62の側面(界面)62c、62dで青色光BL及び蛍光YLを反射させてもよい。このことによって、青色光BL及び蛍光YLの進行方向及び光軸AX2に対する指向性を高めることができる。また、セル62が空気層を介して波長変換装置51の外気に触れる表面積が増えるため、波長変換装置51の放熱性を向上させ、波長変換層80における蛍光YLの生成時に生じる熱THに起因する温度上昇を抑制することができる。
【0055】
第1実施形態の波長変換装置51は、上述のように波長変換層80の光学アレイ層60が対向する表面80aとは反対側の表面80bに反射層90を備える。青色光BLは、光学アレイ層60を介して波長変換層80に入射する。波長変換層80の表面80bから射出された蛍光YLは、反射層90で反射され、波長変換層80を通って光学アレイ層60に入射する。第1実施形態の波長変換装置51では、光学アレイ層60を用いて、光学アレイ層60から波長変換層80に入射する青色光(光)BLの実質的な照射領域を、当該照射領域と平面視で重なるセル62が占める領域に略一致させる。そのため、第1実施形態の波長変換装置51によれば、波長変換層80が射出する蛍光YLの照射領域の平面視での拡がり及び蛍光YLの拡散を抑え、光学アレイ層60から射出される蛍光YLの拡散を抑制することができる。その結果、従来の波長変換装置に比べて、第1実施形態の波長変換装置51における波長変換効率の低下を抑えることができる。
【0056】
[第2実施形態]
次いで、本発明の第2実施形態について、図8図10を用いて説明する。
第2実施形態以降の実施形態において、第1実施形態等の前述の実施形態と共通する構成には、前述の実施形態の当該構成と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
光源装置2Aに替えて図8に示す光源装置2Bを備えること以外は、第2実施形態のプロジェクターは、第1実施形態のプロジェクター1と同様の構成を備える。図8は、第2実施形態のプロジェクターが備える光源装置2Bの概略構成図である。
【0058】
(光源装置)
図8に示すように、第2実施形態の光源装置2Bは、発光部12と、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳レンズ33Aと、を備える。
【0059】
発光部12は、アレイ光源20と、コリメーター光学系22と、集光光学系42と、ダイクロイック膜45と、第2実施形態の波長変換装置52と、ピックアップ光学系160と、を備える。アレイ光源20と、コリメーター光学系22と、集光光学系42と、波長変換装置52と、ピックアップ光学系160とは、光軸AX2上に順次並んで配置されている。
【0060】
アレイ光源20は、固体光源としての複数の半導体レーザー(励起光源)21を備える。複数の半導体レーザー21は、光軸AX2と直交する面内においてアレイ状に配置されている。
【0061】
集光光学系42は、例えば1枚の凸レンズ42Aから構成されている。集光光学系42は、アレイ光源20から射出される白色光BLの光軸AX2上に配置され、コリメーター光学系22によって平行光に変換された励起光ELとしての青色光BLを波長変換装置52に集光させる。
【0062】
波長変換装置52は、アレイ光源20から射出される青色光BLの一部を透過させ、残りの青色光BLを蛍光YLに変換する機能を有する。波長変換装置52は、残りの青色光Bを吸収して赤色光及び緑色光を含む黄色の蛍光YLを射出する蛍光材料を含んでいる。蛍光YLの発光強度のピーク波長は、例えば約550nmである。
【0063】
ダイクロイック膜45は、波長変換装置52における白色光BLの入射側に設けられている。ダイクロイック膜45は、青色光BLを透過し、蛍光YLを反射する。蛍光YLと波長変換装置52とを透過した青色光BLとが合成されることによって白色光WLが生成される。
【0064】
ピックアップ光学系160は、例えばピックアップレンズ162とピックアップレンズ164とを備える。ピックアップ光学系160は、波長変換装置52から射出される白色光WLを取り込むとともに、略平行光に変換してインテグレーター光学系31に向けて射出する。インテグレーター光学系31は、例えば、レンズアレイ31C、レンズアレイ31Dを備える。レンズアレイ31C、31Dの各々では、光軸AX2に直交する方向に沿って複数のマイクロレンズが配列されている。
【0065】
インテグレーター光学系31に入射した白色光WLは、偏光変換素子32に入射する。偏光変換素子32は、非偏光の蛍光YLを含む白色光WLを直線偏光に変換する。偏光変換素子32を透過した白色光WLは、重畳レンズ33Aとインテグレーター光学系31との協同によって、被照明領域における照度の分布が均一化された白色光WLを生成する。すなわち、光源装置2Bは、第2実施形態のプロジェクターの照明光としての白色光WLを生成する。
【0066】
第2実施形態の光源装置2Bでは、光軸AX2に沿って概ね直線的に光学系を構成可能であり、光学系の組み立て及び設計を容易に行うことができる。
【0067】
(波長変換装置)
図9は、第2実施形態の波長変換装置52の断面図である。波長変換装置52は、第1実施形態の波長変換装置51の反射層90を備えず、反射層90に替えて光学アレイ層(入射側光学アレイ層)70を備える。つまり、波長変換装置52は、光学アレイ層60と、波長変換層80と、光学アレイ層70と、を備える。光学アレイ層60、波長変換層80及び光学アレイ層70は、波長変換装置52において青色光BLを吸収して蛍光YLを生成する波長変換部100を構成している。
【0068】
光学アレイ層70は、複数のセル72から構成されている。各々のセル72は、表面(第3面)72bと、表面(第4面)72aと、を有する。表面72bには、図8を参照して説明した集光光学系42から射出された青色光(励起光)BLが集光状態で入射する。表面72aから、セル72を伝搬した青色光BLが射出される。各々のセル72は、セル62と同様に、例えばサファイア、アルミナ、YAG、石英等の高熱伝導率と、少なくとも青色光BL及び蛍光YLに対して高透過性とを有する材料によって形成されている。セル72が高熱伝導率且つ高透過性を有する材料で形成されていることによって、波長変換層80における波長変換時に生じる熱THがセル62のみならずセル72を通して波長変換装置52の外部に効率良く放出される。波長変換装置52では、波長変換層80から射出された蛍光YLが表面62bから光学アレイ層60に入射し、表面60aから高効率に射出される。
【0069】
青色光BLの進行方向に沿って平面視したときに、各々のセル72は、例えば正方形状に形成されている。セル72の高さ方向Hの寸法h72は、セル72の平面視での寸法w72よりも大きい。セル72の寸法w72は、セル72の高さ方向Hに直交する面内での寸法であり、青色光BLの進行方向及び光軸AX2に直交する面内での寸法である。セル72の高さ方向Hの寸法h72は、セル72の平面視での寸法w72の例えば1.2倍から2.0倍の大きさを有する。また、波長変換装置52では、セル72の平面視での寸法w72は、セル62の平面視での寸法w62と略同等である。
【0070】
波長変換装置52では、光学アレイ層70における複数のセル72同士の間に、誘電体膜76が介在している。誘電体膜76は、誘電体膜66と同様に、Ag、Alを含む反射材料によって形成されていてもよく、適切な複数の誘電体を交互に積層した誘電体多層膜等によって形成されていてもよい。
【0071】
光学アレイ層70は、複数のセル72の表面72bから表面72aにかけて、表面70a、70b上で互いに隣り合うセル72、72の界面で、青色光BLを反射する反射面78を有する。すなわち、反射面78は、互いに隣り合うセル72同士の間に配置された誘電体膜76の側面76c、76dで構成されている。セル72から反射面78に入射する青色光BLは、反射面78によって正反射される。
【0072】
波長変換部100の外部、すなわち図9において波長変換部100の下方から波長変換層80に入射する青色光BLのうち、進路が高さ方向Hに対してなす角度が小さく、且つ反射面78に当たらない青色光成分は、反射面78によって反射されずに光学アレイ層70を通って、波長変換層80に入射する。一方、上述のように波長変換層80に入射する青色光BLのうち、進路がセル72内で反射面78に当たる青色光成分は、反射面78によって反射されつつ、光学アレイ層70を通って、波長変換層80に入射する。
【0073】
青色光BLの成分がセル72内で反射面78によって反射される回数は、光軸AX2に対する青色光BLの成分の進行方向のなす角度によって決まる。青色光BLの成分の進行方向が光軸AX2に対してなす角度が大きくなる程、反射面78によって反射される回数が多くなる。
【0074】
上述のように、第2実施形態の波長変換装置52は、波長変換層80の表面80bに青色光BLを入射させる光学アレイ層70を第1実施形態の光学アレイ層60とは別に備える。光学アレイ層70は、青色光BLが入射する表面70bと、入射した青色光BLを射出する表面70aとを有する複数のセル72からなり、表面70bから表面70aにかけて、表面70a、70b上で互いに隣り合うセル72、72との界面で光を反射する反射面78を有する。青色光BLは、光学アレイ層70を介して波長変換層80に入射し、波長変換により生成された蛍光YLは光学アレイ層60に入射する。
【0075】
上述の構成を備える波長変換装置52において、光学アレイ層70では、青色光BLが表面70bで重なるセル72が占める領域内で進行する。青色光BLの少なくとも一部の成分は、反射面78で反射されることによって、表面70bで重なるセル72が占める領域よりも外側のセル72を通ることなく、表面70bでのビーム面積及び照射領域を略保持した状態で波長変換層80に入射する。但し、第1実施形態における青色光BLのにじみと同様に、光学アレイ層70のセル72の表面72bにおいて平面視で少なくとも一部に入射した青色光BLは、当該セル72の全体に拡がる可能性がある。つまり、青色光BLは、光学アレイ層70の表面70bで重なった全てのセル72に対してにじむ。
【0076】
波長変換装置52において、波長変換層80で生成された蛍光YLは、光学アレイ層70で略保持された青色光BLのビーム面積と同程度のビーム面積及び照射領域で射出され、光学アレイ層60の表面60bで蛍光YLと重なるセル62が占める領域内で、青色光BLの波長変換層80への入射方向と同じ向きに進行する。蛍光YLは、表面60bで重なるセル62が占める領域よりも外側のセル62を通ることなく、表面60bでのビーム面積を略保持した状態で光学アレイ層60から射出される。
【0077】
第2実施形態の波長変換装置52によれば、上述の光学アレイ層60、70を備えるので、青色光BLの少なくとも一部を光学アレイ層70において当該少なくとも一部の青色光BLが入射したセル72の反射面78で反射させつつ、光学アレイ層70における青色光BLの平面視領域を保持し、波長変換層80に入射させることができる。このことによって、光学アレイ層70を備えない場合に比べて、青色光BLの平面視での拡がりが増大することによる波長変換層80での波長変換効率の低下を抑えることができる。
【0078】
また、第2実施形態の波長変換装置52によれば、蛍光YLが入射したセル62の反射面68で蛍光成分YL12を反射させつつ、蛍光YLの平面視での拡がりを抑え、波長変換層80の表面80aから射出される蛍光YLの平面視領域と、光学アレイ層60の表面60aから射出される蛍光YLの平面視領域とを略一致させることができる。このことによって、光学アレイ層60を備えない場合に比べて、蛍光YLの平面視での拡がりが増大することによる蛍光YLの利用効率の低下を抑えることができる。また、第2実施形態の波長変換装置52によれば、光学アレイ層70で青色光BLの平面視での拡散を抑制することができる。
【0079】
第2実施形態の波長変換装置52では、第1実施形態の波長変換装置51と共通する構成についての変形例と同様の変形例が挙げられ、それらの変形例について第1実施形態の波長変換装置51と同様の作用効果が得られる。
【0080】
また、第2実施形態の波長変換装置52の変形例として、図10に示す波長変換装置53が挙げられる。図10は、第2実施形態の変形例の波長変換装置53の断面図である。図10に示すように、波長変換装置53では、光学アレイ層60のセル62の平面視での寸法(セルの大きさ)w62は、光学アレイ層60よりも青色光BLの入射側に配置されている光学アレイ層70のセル72の平面視での寸法(セルの大きさ)w72よりも小さい。第2実施形態の変形例の波長変換装置53によれば、励起光ELとしての青色光BLよりも蛍光YLの光軸AX2に平行な方向での指向性を高めることができる。
【0081】
[その他の実施形態]
次いで、上述の第1実施形態及び第2実施形態の波長変換装置51、52の光学アレイ層60、及び第2実施形態の波長変換装置52、当該変形例の波長変換装置53の光学アレイ層70に共通する変形例について説明する。
【0082】
図11及び図12は、光学アレイ層60の第1変形例及び第2変形例の平面図である。光学アレイ層60のセル62の平面視形状は、上述の各実施形態で例示した正方形状に限定されない。図11に示すように、セル62の平面視形状は、正六角形状であってもよい。図12に示すように、セル62の平面視形状は、正方形の一対角線で分割した二等辺三角形状であってもよい。セル62の平面視形状が正六角形状である場合、寸法w62は、正六角形の直径で表される。セル62の平面視形状が二等辺三角形状である場合、寸法w62は、二等辺三角形の二辺の各々の長さで表される。セル62の平面視形状は、正方形状や、図11及び図12に例示した正六角形状及び二等辺三角形状以外の任意の形状であってもよく、前述の励起光ELとしての青色光BL、BLのにじみの発生を考慮し、所望の蛍光YLの平面視形状を形成するように適宜設定されることが好ましい。
【0083】
図13から図15は、光学アレイ層60の第3変形例から第5変形例の斜視図である。図13及び図14に示すように、セル62は、柱状構造体であってもよい。セル62が柱状構造体である場合、セル62の高さ方向Hの寸法h62は、セル62の平面視での寸法w62の例えば2.0倍から10.0倍の大きさを有する。このようにセル62が柱状構造体であることによって、青色光BL、BLや蛍光YLにおけるセル62の高さ方向Hに平行な方向への指向性を高めることができる。その結果、波長変換装置における波長変換効率の低下を抑えることができる。
【0084】
図14に示すように、セル62が柱状構造体であって、且つ複数のセル62同士が互いに離間していてもよい。この構成によれば、セル62が柱状構造体ではない場合に比べて空気層を介して波長変換装置51の外気に触れる表面積がさらに増えるため、波長変換装置の放熱性を向上させ、波長変換層80で生じる熱THに起因する温度上昇を抑制することができる。
【0085】
また、図15に示すように、光学アレイ層60では、柱状構造体である複数のセル62が、励起光ELの進行方向すなわち高さ方向Hで所定の高さ間隔ごとに軸芯方向を、励起光ELの進行方向に沿った平面視で90°回転して積層されていてもよい。図15に示す光学アレイ層60によれば、平面視したときに高さ方向Hで互いに重なる複数のセル62の部分同士が2次的なセルとして機能し、セル62内を伝搬する青色光BL、BLや蛍光YLの照射領域の拡がりが高さ方向Hに直交する平面内において互いに90°をなす二方向で交互に抑制される。このことによって、光学アレイ層における励起光ELや蛍光YLの平面視での照射領域を保持し、波長変換層80に入射させる、或いは波長変換層80から射出させることができる。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、複数の実施形態の構成要素は適宜組み合わせ可能である。
【0087】
例えば、上述の第2実施形態では、所謂透過型の波長変換装置52について説明したが波長変換装置52は、不図示の回転ホイールの周面上に配置されていてもよい。すなわち、本発明の光源装置の構成は特に限定されず、本発明の光源装置は、少なくとも励起光WLを射出する励起光源と本発明の波長変換装置とを備える。
【0088】
上述の実施形態では、本発明による光源装置をプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト、ヘッドマウントディスプレイ等にも適用することができる。
【0089】
本発明の態様の波長変換装置は、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様の波長変換装置は、励起光を波長変換する波長変換層と、波長変換層で波長変換された光が入射する第1面と、光を射出する第2面とを有する複数のセルからなる光学アレイ層と、を備え、光学アレイ層は、第1面から第2面にかけて隣り合うセルとの界面で光を反射する反射面を有する。
【0090】
本発明の一つの態様の波長変換装置において、反射面は誘電体膜で構成されていてもよい。
【0091】
本発明の一つの態様の波長変換装置において、反射面は拡散反射面を含んでもよい。
【0092】
本発明の一つの態様の波長変換装置において、隣り合うセル間に空気層が形成され、セルと前記空気層との屈折率差によって光はセルと空気層との界面で反射してもよい。
【0093】
本発明の一つの態様の波長変換装置において、セルの高さ方向の寸法はセルの高さ方向に直交する面内での寸法よりも大きくてもよい。
【0094】
本発明の一つの態様の波長変換装置において、前記複数のセルは互いに離間していてもよい。
【0095】
本発明の一つの態様の波長変換装置において、波長変換層の光学アレイ層が対向する対向面とは反対側の面に反射層を備え、励起光は光学アレイ層を介して波長変換層に入射し、反射層で波長変換された光は光学アレイ層に入射する。
【0096】
本発明の一つの態様の波長変換装置において、波長変換層の光学アレイ層が対向する対向面とは反対側の面に励起光を入射させる入射側光学アレイ層を備え、入射側光学アレイ層は、前記励起光が入射する第3面と、入射した励起光を射出する第4面とを有する複数のセルからなり、前記第3面から前記第4面にかけて隣り合うセルとの界面で光を反射する反射面を有し、励起光は、入射側光学アレイ層を介して波長変換層に入射し、波長変換された光は光学アレイ層に入射してもよい。
【0097】
本発明の一つの態様の波長変換装置において、光学アレイ層のセルの大きさは入射側光学アレイ層のセルの大きさよりも小さくてもよい。
【0098】
本発明の一つの態様の光源装置は、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様の光源装置は、励起光源と、本発明の上記態様の光源装置と、を備え、前記励起光源から射出された励起光が波長変換装置の波長変換層に照射される。
【0099】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の上記態様の光源装置と、光源装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える。
【符号の説明】
【0100】
1…プロジェクター、2、2A、2B…光源装置、11、12…光源装置、50、51、52、53…波長変換装置、EL…励起光、BL、BL…青色光、YL…蛍光
図1
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