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特許7622507直交座標系からフレネ座標系への座標変換方法、座標変換装置、およびプログラム
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  • 特許-直交座標系からフレネ座標系への座標変換方法、座標変換装置、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】直交座標系からフレネ座標系への座標変換方法、座標変換装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20250121BHJP
   G01M 13/02 20190101ALI20250121BHJP
【FI】
G01B21/00 Z
G01M13/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021053616
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150835
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠崎 晃司
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-211454(JP,A)
【文献】特開2016-61631(JP,A)
【文献】特開2005-273899(JP,A)
【文献】特開2009-212057(JP,A)
【文献】特開2011-89555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00
G01M 13/02 - 13/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換方法であって、
前記点の直交座標系の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行う第1の変換工程と、
前記第1の変換工程にて得られたフレネ座標系の座標を示すパラメータを、直交座標系への座標へ座標変換を行う第2の変換工程と、
前記点の直交座標系の座標と、前記第2の変換工程にて得られた直交座標系の座標とに差分に基づいて、直交座標系における仮の座標を設定する設定工程と、
前記仮の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行うことにより、フレネ座標系における前記点の座標を示すパラメータを算出する第3の変換工程と
を有することを特徴とする座標変換方法。
【請求項2】
前記設定工程では、直交座標系において、前記点のx軸の値が、前記第2の変換工程にて得られた座標のx軸の値と前記仮の座標のx軸の値の中点となるように、前記仮の座標が設定されることを特徴とする請求項1に記載の座標変換方法。
【請求項3】
前記第1の変換工程と前記第3の変換工程は、同じ変換方法を用いて変換処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の座標変換方法。
【請求項4】
前記第1の変換工程および前記第3の変換工程では、
前記螺旋の螺旋軸に対応する直交座標系のx軸に対する座標の値が0となるように直交座標系を設定し、
前記設定された直交座標系における着目点の座標を(0,y,z)とし、フレネ座標系における前記着目点の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)とした場合に、以下の式(1)に基づいて、座標変換を行い、
【数1】
前記式(1)において、三次関数をテイラー展開した際の3次以上の項を0とした近似値を用いて得られる連立方程式を解くことにより、フレネ座標系における前記着目点の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)を導出することを特徴とする請求項3に記載の座標変換方法。
【請求項5】
フレネ座標系は、前記螺旋上の点を原点として、前記螺旋の進行方向をξ軸とし、前記螺旋の中心方向をη軸とし、前記ξ軸と前記η軸それぞれに直交する方向をζ軸として規定される座標系であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の座標変換方法。
【請求項6】
螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換装置であって、
前記点の直交座標系の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行う第1の変換手段と、
前記第1の変換手段にて得られたフレネ座標系の座標を示すパラメータを、直交座標系への座標へ座標変換を行う第2の変換手段と、
前記点の直交座標系の座標と、前記第2の変換手段にて得られた直交座標系の座標とに差分に基づいて、直交座標系における仮の座標を設定する設定手段と、
前記仮の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行うことにより、フレネ座標系における前記点の座標を示すパラメータを算出する第3の変換手段と
を有することを特徴とする座標変換装置。
【請求項7】
コンピュータに、
螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換方法を実行させるためのプログラムであって、
前記座標変換方法は、
螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換方法であって、
前記点の直交座標系の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行う第1の変換工程と、
前記第1の変換工程にて得られたフレネ座標系の座標を示すパラメータを、直交座標系への座標へ座標変換を行う第2の変換工程と、
前記点の直交座標系の座標と、前記第2の変換工程にて得られた直交座標系の座標とに差分に基づいて、直交座標系における仮の座標を設定する設定工程と、
前記仮の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行うことにより、フレネ座標系における前記点の座標を示すパラメータを算出する第3の変換工程と
を有することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、直交座標系からフレネ座標系への座標変換方法、座標変換装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールねじなどの機械部品においては、螺旋形状の部位(例えば、転動体が転動可能に動作する溝)を備えている。このような螺旋形状を有する機械部品において、各部位の動作状態や形状などを適切に解析するための様々な手法が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、螺旋形状を有するねじ部において、螺旋形状の谷底部分のデータを抽出し、その螺旋形状を解析する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3971968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ボールねじなどの螺旋形状を有する機械部品において、その内部の転動体(たま)との接触状態を計算する上では、その螺旋形状における転動体の位置を適切に特定することが必要となる。このとき、任意の位置にあるねじ軸又はナットと転動体の接触を計算するためには、転動体の座標がねじ軸の螺旋近傍のどの位置にあるのかを探索する必要がある。特に機構解析などを行う場合には、ねじ軸や転動体などの機械部品の構成要素全てが任意の位置に移動し得るため、その都度位置を特定するために計算処理の繰り返し回数が多くなる。更には、このような近傍探索の計算において高い精度が求められている。
【0006】
しかしながら、このような計算は逆問題となり、3元の非線形連立方程式の解であるため、代数的にその解を求めることができない。その一方、螺旋形状を有する機械部品では、その構成に着目すると、転動体の移動範囲は螺旋近傍の一定の範囲に限定されるという特徴がある。
【0007】
一方、ボールねじは例えば工作機械の搬送テーブルの駆動系などに用いられ、ボールねじの送り精度はそのまま加工品質に直結する最も重要な要素のひとつである。送り精度の計算や予測を行うためには転動体にかかる荷重および摩擦などの力学的挙動の計算が不可欠である。また、力学的挙動の計算には厳密な接触計算が不可欠であり、接触計算にはリード誤差や真円度誤差などの加工誤差の考慮が必要になる。これまでの直交座標系での玉と螺旋溝の接近量の計算においては、前提としてナットとねじ軸が同一螺旋であることを仮定しているため、現物のナットとねじ軸間の微小なねじれの影響が無視されるほか、ナットとねじ軸の二部材のリード間が同一でない場合(例えば、ナットやねじ軸の現物に加工誤差が生じてしまった場合など)に適切に計算することができないという課題があった。そこで現物のナットとねじ軸間の微小なねじれの影響を考慮できる座標系を使うことが考えられる。このような座標系の一つとしてフレネ座標系が知られている。しかし、直交座標系とフレネ座標系の相互の座標変換を精度良く行うことは必ずしも容易ではない。
【0008】
上記課題を鑑み、本願発明は、ボールねじなどの螺旋形状を有する機械部品の構成を考慮し、螺旋近傍の点の座標を特定するための、直交座標系からフレネ座標系への精度の高い変換を可能とする変換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本願発明は以下の構成を有する。すなわち、螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換方法であって、
前記点の直交座標系の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行う第1の変換工程と、
前記第1の変換工程にて得られたフレネ座標系の座標を示すパラメータを、直交座標系への座標へ座標変換を行う第2の変換工程と、
前記点の直交座標系の座標と、前記第2の変換工程にて得られた直交座標系の座標とに差分に基づいて、直交座標系における仮の座標を設定する設定工程と、
前記仮の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行うことにより、フレネ座標系における前記点の座標を示すパラメータを算出する第3の変換工程と
を有する。
【0010】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換装置であって、
前記点の直交座標系の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行う第1の変換手段と、
前記第1の変換手段にて得られたフレネ座標系の座標を示すパラメータを、直交座標系への座標へ座標変換を行う第2の変換手段と、
前記点の直交座標系の座標と、前記第2の変換手段にて得られた直交座標系の座標とに差分に基づいて、直交座標系における仮の座標を設定する設定手段と、
前記仮の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行うことにより、フレネ座標系における前記点の座標を示すパラメータを算出する第3の変換手段と
を有する。
【0011】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、コンピュータに、
螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換方法を実行させるためのプログラムであって、
前記座標変換方法は、
螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換方法であって、
前記点の直交座標系の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行う第1の変換工程と、
前記第1の変換工程にて得られたフレネ座標系の座標を示すパラメータを、直交座標系への座標へ座標変換を行う第2の変換工程と、
前記点の直交座標系の座標と、前記第2の変換工程にて得られた直交座標系の座標とに差分に基づいて、直交座標系における仮の座標を設定する設定工程と、
前記仮の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行うことにより、フレネ座標系における前記点の座標を示すパラメータを算出する第3の変換工程と
を有する。
【発明の効果】
【0012】
本願発明により、螺旋近傍の点の座標に関し、直交座標系からフレネ座標系への精度の高い変換を可能とする変換方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願発明の一実施形態に係る装置構成の例を示す概略図。
図2】本願発明に係る座標変換方法を適用可能な機械部品の一例を示す概略図。
図3】螺旋の各要素を説明するための図。
図4】本願発明の一実施形態に係る螺旋の進行方向に一致するx軸と任意の点qでの単位ベクトルを示す図。
図5】本願発明の一実施形態に係る座標変換を説明するための図。
図6】本願発明の一実施形態に係る座標平面を説明するための図。
図7】本願発明の一実施形態に係るxyz座標系の移動を説明するための図。
図8】本願発明の一実施形態に係る全体処理のフローチャート。
図9】本願発明の一実施形態に係る微小螺旋角および座標の算出処理のフローチャート。
図10】本願発明の一実施形態に係る座標系間にて変換を行った際の関係を説明するための図。
図11】本願発明の一実施形態に係る繰り返し処理のフローチャート。
図12】本願発明の一実施形態に係る算出結果の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本願発明を説明するための一実施形態であり、本願発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本願発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0015】
<第1の実施形態>
以下、本願発明の第1の実施形態について説明を行う。
【0016】
[装置構成]
図1は、本実施形態に係る座標変換方法を実行可能な座標変換装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。本実施形態に係る座標変換装置1は、例えば、PC(Personal Computer)などの情報処理装置が用いられてよく、その構成は特に限定するものではない。
【0017】
座標変換装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、ROM(Read Only Memory)11、RAM(Random Access Memory)12、HDD(Hard Disk Drive)13、入力装置14、表示装置15、および通信装置16を含んで構成される。CPU10は、座標変換装置1全体の制御を司る部位であり、例えば、HDD13に格納されたプログラムを読み出して実行することで各種機能を実現してよい。ROM11は、不揮発性の記憶領域である。RAM12は、揮発性の記憶領域であり、一時的なデータの保存場所として用いられる。HDD13は、不揮発性の記憶領域であり、各種プログラムやデータが記憶、管理される。入力装置14は、外部からの入力を受け付ける部位であり、例えば、マウスやキーボードなどから構成される。表示装置15は、各種情報を表示するための部位であり、例えば、液晶ディスプレイなどが該当する。なお、入力装置14と表示装置15が一体となったタッチパネルディスプレイが用いられてもよい。通信装置16は、外部装置(不図示)とネットワーク(不図示)を介して通信するための部位である。ここでの通信は、有線/無線は問わず、また、通信規格なども特に限定するものではない。
【0018】
本実施形態に係る座標変換方法は、例えば、ボールねじなど螺旋構造を有する機械部品の動作のシミュレーションに用いることが可能である。図2は、本実施形態に係る座標変換方法を適用可能なボールねじ20の構成例を示す図である。ボールねじ20は、ナット21、ねじ軸22、および複数の転動体23を含んで構成される。ねじ軸22の外周面には、転動体23が接触して転がる螺旋溝22aが形成されている。螺旋溝22aは、弦巻線(常らせん)状の3次元曲線を描く。また、図2において、直交座標系におけるx軸、y軸、z軸を示している。以下の説明において、各座標系の軸は対応している。
【0019】
図3は、本実施形態で扱う螺旋の各要素を説明するための図である。ここでは、xyz座標系において、螺旋である弦巻線がx軸周りに反時計回りにて示されている。lは、螺旋のピッチを示す。rは、螺旋の半径を示す。θは螺旋角を示す。
【0020】
[座標系]
本実施形態に係る2つの座標系について説明する。1つ目の座標系は螺旋軸を基準とし、x軸と螺旋軸とが一致した直交座標系である。直交座標系において、3つの軸をx軸、y軸、z軸とし、xyz座標系とも称する。2つ目の座標系は螺旋の任意の点を基準としたフレネ・セレ標構にて示される座標系(以下、フレネ座標系と称する)である。フレネ座標系において、3つの軸をξ軸、η軸、ζ軸とし、ξηζ座標系とも称する。本実施形態では、この2つの座標系間の座標の変換を座標変換と称する。
【0021】
図3に示した要素に基づき、螺旋のピッチをl、螺旋の始点角をα、螺旋の半径をr、螺旋角に対応するパラメータをθとした場合、xyz座標系において、螺旋上の任意の点qは以下の式(1)にて定義される。
【0022】
【数1】
【0023】
l:螺旋のピッチ
α:螺旋の始点角
r:螺旋の半径
θ:パラメータ(螺旋角)
【0024】
式(1)に示されるように、パラメータθが増加するに従って、x軸方向の正方向に進む。式(1)における始点角αは、y軸方向に沿って螺旋を見た場合のx-z平面におけるx=0の位相角に相当する。
【0025】
一方、フレネ座標系において、ξ軸、η軸、ζ軸それぞれの方向の単位ベクトルをt、n、bとした場合、これらはそれぞれ以下の式(2)、式(3)、式(4)のように定義される。なお、各変数は式(1)と同様である。
【0026】
【数2】
【0027】
【数3】
【0028】
【数4】
【0029】
図4は、本実施形態に係る螺旋の進行方向に一致するx軸と任意の点qでの単位ベクトルを示す図である。図4において、xyz座標系のx軸と螺旋軸とが一致するように、螺旋が示されている。また、螺旋上に任意の点qが示されている。ξ軸の方向は、図4および上記の式(2)に示すように、螺旋の進行方向に対応し、tは点qにおける接ベクトルである。η軸の方向は、図4および上記の式(3)に示すように、螺旋の中心方向に対応し、nは点qにおける法線ベクトルである。そして、図4および上記の式(4)に示すように、ζ軸の方向に対応するベクトルb(θ)は点qにおける従法線ベクトルであり、接ベクトルt(θ)と法線ベクトルn(θ)の外積となる。
【0030】
ここで、3次元空間の螺旋周辺における任意の点をxとし、そのxyz座標系における座標を(x,y,z)とする。これをξηζ座標系に対応付けるためにパラメータθ、ζ、ηを用いて以下の式(5)のように表す。本実施形態では、式(5)に基づいた変換処理を、xyx座標系とξηζ座標系の座標変換と定義する。
【0031】
【数5】
【0032】
図5は、螺旋上の点qを基準として、螺旋の進行方向(ξ軸の方向)に直交するη-ζ平面を示している。このη-ζ平面上に点xが位置する。この図5に示す関係から、点xのξηζ座標系におけるζ軸方向の座標とη軸方向の座標を規定する。言い換えると、η-ζ平面は、螺旋上の点qを原点とし、xの座標は、ζ軸とη軸それぞれからの距離として規定される。また、η-ζ平面は、螺旋角に対応するパラメータθによりその位置を特定できる。
【0033】
なお、式(1)~式(5)によると、xの値によって複数の解が存在し得る。そのため、複数の解が存在する場合には、ζ、ηが最も小さいものを単一解として扱う。なお、本実施形態に係る座標変換方法の適用対象の一例であるボールねじの場合、図2に示したように、転動体23は、螺旋溝22aにて規定される螺旋に対して十分に近い位置にある。このような機械部品を想定した場合、複数の解が存在する可能性は極めて低い。本実施形態では、転動体23が螺旋に対して十分に近くに位置するものとして近似を用いて算出を行う。近似を用いることで、解を1つに限定することができる。
【0034】
[近似を用いた座標変換]
本実施形態に係る近似を用いた座標変換について説明する。まず、xyz座標系における任意の点xを考える。点xは、螺旋上とは異なる位置にあるが、螺旋に十分近い位置にある。例えば、任意の点xは、図2の例の場合、転動体23の中心位置であってもよいし、螺旋溝22aとの距離が最も近い転動体23の表面の点であってもよい。ボールねじ20において、その構成によっては、転動体23とねじ軸22が接触する場合もあれば、その間に隙間が生じる場合もある。隙間が生じた場合に、螺旋溝22aに最も近い転動体23の表面の点を任意の点xとして想定してもよい。
【0035】
(x=0,α=0の場合)
図6は、xyz座標系における点xの座標を示す図である。図6は、x=0のy-z平面を示しており、また、螺旋の始点角α=0である。この時の点xのxyz座標系における座標(x,y,z)を座標(0,y,z)とする。上述したように点xが螺旋に十分近い位置であるという仮定は、x=0、y≒r、z≒0であるという条件に置き換えても一般性を失わない。つまり、xyz座標系において、x軸方向の座標が0の場合、点xの座標は、螺旋上の座標である(0,r,0)に近似するものとして扱うことができる。
【0036】
そして、図6に示すy-z平面上において、上記の式(5)を適用した場合、点xに対するxyz座標系およびξηζ座標系の対応関係として、以下の式(6)を導くことができる。
【0037】
【数6】
【0038】
このとき、転動体23が螺旋溝22aにて規定される螺旋に十分近い位置にあることから、θ≪1となり、上記の式(6)において、以下の近似値を用いることができる。つまり、本実施形態では、三角関数のテイラー展開において、2次までの値にて近似し、この2次の近似解を代数的に定義して用いる。
【0039】
【数7】
【0040】
【数8】
【0041】
上記の式(6)~(8)から以下の式(9)が得られる。
【0042】
【数9】
【0043】
式(9)から、以下の式(10)に示す連立方程式が導出される。
【0044】
【数10】
【0045】
式(10)を解くことで、以下の2つの座標系間の座標変換を行うための式(11)を定義する。
【0046】
【数11】
式(10)を解くことで定義された式(11)にxyz座標系の座標の値を代入することで、フレネ座標系における座標に対応するパラメータθ、η、ζを導出することができる。
【0047】
(x=x,α=αの場合)
上記では、x=0、α=0の場合の計算について説明した。次に、x=x,α=αの場合に拡張した場合の算出について説明する。図7(a)は、xyz座標系における任意の点xの座標を示す。この時の点xのxyz座標系における座標(x,y,z)を座標(x,y,z)とする。また、螺旋の始点角α=αとする。この場合においても点xは、螺旋に対して十分に近い位置にあるものとして説明する。
【0048】
この場合において、xyz座標系全体をx軸周りに以下の式(12)にて示す角度(螺旋角β)の分、回転させる。上記と同様、αは螺旋の始点角を示し、本例ではαとなる。式(12)は、螺旋の進行方向とは逆の方向にxyz座標系全体を回転させることを示す。例えば、図7(a)に示すように、反時計回りに進行する螺旋の場合、時計回りにxyz座標系全体を回転させる。
【0049】
【数12】
【0050】
次に、点xのxyz座標系におけるx軸の値が0になるように、xyz座標系全体を-xの分、移動させる。その結果、点xの座標は、図7(b)に示すような関係となり、この場合の点xの座標を(0,y,z)にて示す。これにより、図6にて示した関係と同様になる。そして、上記のx=0,α=0の場合にて説明した式(10)、式(11)において、(x,y,z)を(0,y,z)に置き換えて代入することで同様の座標変換を行うことが可能となる。具体的には、以下の式(13)を用いる。
【0051】
【数13】
【0052】
[処理フロー]
図8は、本実施形態に係る座標変換処理のフローチャートである。本処理は、座標変換装置1により実行され、例えば、座標変換装置1が備える制御装置(不図示)が本実施形態に係る処理を実現するためのプログラムを記憶装置(不図示)から読み出して実行することにより実現される。
【0053】
S801にて、座標変換装置1は、対象となる螺旋の螺旋軸と、xyz座標系のx軸とが一致するようにxyz座標系を設定する。螺旋軸は、例えば、図2の場合、ねじ軸22の中心軸に対応する。このとき、着目する座標点xのxyz座標系における座標を、図7(a)に示すように、(x,y,z)とする。
【0054】
S802にて、座標変換装置1は、xyz座標系内の着目する座標点xの高さから、仮の螺旋角βを算出する。ここでの座標点の高さとは、座標点xのx軸方向の値xに対応する。仮の螺旋角βは、図3に示した螺旋の構成(ピッチl、始点角α)と座標点の高さ(=x)とに基づいて、特定することができる。
【0055】
S803にて、座標変換装置1は、xyz座標系全体を仮の螺旋角βの分、螺旋の進行方向とは逆方向に回転させる。すなわち、上記の式(12)にて示した値にて、S801にて設定したxyz座標系を回転させる。
【0056】
S804にて、座標変換装置1は、着目する座標点xのx軸方向の値分であるxだけ、xyz座標系全体を平行移動する。ここまでの処理により、着目する座標点xのxyz座標系における座標を、図7(b)に示すように、(0,y,z)に変換することができる。
【0057】
S805にて、座標変換装置1は、微小螺旋角および座標の算出を行う。本工程の処理は、図8を用いて詳細に説明する。
【0058】
S806にて、座標変換装置1は、S805の処理にて導出した微小螺旋角と、仮の螺旋角βとを合算し、ξηζ座標系における座標点xの座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)のうちのθの値を算出する。
【0059】
S807にて、座標変換装置1は、S805およびS806にて算出したξηζ座標系における座標点xの座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)を出力する。ここでの出力方法は特に限定するものではなく、xyz座標系における座標点xの座標と対応付けて出力してもよいし、そのほかの座標の変換条件を併せて出力してもよい。そして、本処理フローを終了する。
【0060】
(微小螺旋角および座標算出処理)
図9は、図8のS805の工程における処理の詳細を示すフローチャートである。
【0061】
S901にて、座標変換装置1は、変換処理に伴う微小量に関する近似値の設定を行う。本実施形態では、上記の式(7)、式(8)に示したように、三角関数においてテイラー展開した際の3次以上の項を0とする2次近似の値を用いるものとして、近似値が設定される。
【0062】
S902にて、座標変換装置1は、S901にて設定したテイラー展開の近似値を用いて、微小螺旋角θの算出を行う。ここでの微小螺旋角θは、ξηζ座標系における座標点xの座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)のθと仮の螺旋角βとの差分に相当する。
【0063】
S903にて、座標変換装置1は、微小捩じれ方向の変位を算出する。ここでの捩じれ方向は、ζ軸方向に対応する。したがって、微小捩じれ方向の変位は、ξηζ座標系における座標点xの座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)のζの値に対応する。
【0064】
S904にて、座標変換装置1は、微小曲がり方向の変位を算出する。ここでの曲がり方向は、η軸方向に対応する。したがって、微小曲がり方向の変位は、ξηζ座標系における座標点xの座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)のηの値に対応する。そして、図8のS806の工程に進む。
【0065】
なお、図9に示すフローチャートでは、微小捩じれ方向を算出してから微小曲がり方向の算出を行ったが、この順に限定するものではなく、逆の順序にて算出してもよい。
【0066】
また、上記の算出方法では、三角関数の値に対して2次近似の値を用いる例を示したが、これに限定するものではない。そのほかにも計算過程において含まれる3次以上の項に関し、本実施形態に係る座標変換方法を適用する機械部品の構成に応じて、近似値を用いるような構成であってもよい。
【0067】
(繰り返し処理)
本実施形態では、上記の座標変換方法を繰り返し適用することで、座標変換の精度を更に向上させる。以下、本実施形態に係る繰り返し処理について、図を用いて説明する。
【0068】
図10は、ξηζ座標系とxyz座標系の変換の関係を説明するための図である。ここでは、ξηζ座標系におけるθと、xyz座標系におけるxとに着目して説明を行う。図10において、xは、xyz座標系からξηζ座標系に変換する点のx軸方向の座標の値であるとする。このxに対して、上記の図8図9にて説明した近似を用いる変換処理を適用することで、変換結果としてパラメータθが得られる(図10の(1))。
【0069】
次に、パラメータθを用いてξηζ座標系からxyz座標系へ変換することを考える。このときの変換方法は、公知の手法を用いてよく、特に限定するものではない。ξηζ座標系の各パラメータからxyz座標系の各パラメータを求める手法は様々なものがあるが、一般的に精度良く変換することが可能であることが知られている。ξηζ座標系からxyz座標系へ変換した結果、xyz座標系におけるパラメータxが得られたものとする(図10の(2))。上記の図8図9にて説明した変換処理では、近似を用いてパラメータθを算出していたため、xyz座標系における元のパラメータxと、再変換により得られたパラメータxとでは差異が生じ得る。ここでの差異をdとする。言い換えると、変換処理の特性上、xとθの対応関係よりも、xとθの対応関係の方がより確度の高い対応関係となる。
【0070】
そこで本実施形態では、パラメータxに対応するパラメータθをより精度よく算出するために、差異dに基づき仮のパラメータxを設定する。ここでは、図10に示すように、xとxの中点がxとなるように、xを設定する(図10の(3))。つまり、近似を用いて生じる変換誤差を考慮して、xyz座標系における座標変換用のパラメータ(座標)を調整する。
【0071】
そして、このxに対して、上記の図8図9にて説明した変換処理を適用することで、変換結果としてパラメータθが得られる(図10の(4))。このパラメータθを用いて、図10の(2)のように公知の手法を用いてξηζ座標系からxyz座標系へ変換した場合、xyz座標系におけるパラメータxが得られたものとする。このときのxyz座標系における元のパラメータxと、上記処理により得られたパラメータxとでは差異としてdが生じ得る。しかしながら、図10に示すように、(0≦)d<dとなり、より精度良く元のパラメータxに対応するパラメータθ(すなわち、θ)を求めることが可能となる。
【0072】
つまり、本実施形態では、以下に示す関係式を用いることで、より精度の高い座標変換を行う。なお、式(14)に示すθは、図10に示す変数に対応し、η、ζは、θと共に変換処理により算出されるパラメータである。
【0073】
【数14】
【0074】
図11は、図10を用いて説明した処理のフローチャートである。
【0075】
S1101にて、座標変換装置1は、近似によるフレネ座標系への変換処理を行う。本工程では、図8図9を用いて説明した処理が行われる。なお、本工程は、図10の(1)に対応し、xyz座標系の元のパラメータ(座標)から、ξηζ座標系の各パラメータが算出される。
【0076】
S1102にて、座標変換装置1は、S1101にて算出されたξηζ座標系の各パラメータを用いて、xyz座標系の各パラメータを算出することで変換処理を行う。本工程は、図10の(2)に対応し、xyz座標系の各パラメータが算出される。上述したように、ここでの変換方法は公知の手法を用いてよく、特に限定するものではない。
【0077】
S1103にて、座標変換装置1は、S1101にて用いたxyz座標系の元の点のパラメータ(座標)と、S1102の座標変換処理にて得られたxyz座標系におけるパラメータとの差分に基づき、再変換用のxyz座標系における仮のパラメータ(座標)を設定する。本工程は、図10の(3)に対応する。
【0078】
S1104にて、座標変換装置1は、S1103にて設定したパラメータを用いて、近似によるフレネ座標系への変換処理を行う。本工程では、図8図9を用いて説明した処理が再度行われる。なお、本工程は、図10の(4)に対応し、xyz座標系の仮のパラメータから、ξηζ座標系の各パラメータが算出される。そして、本処理により得られたξηζ座標系の各パラメータを、S1101にて用いたxyz座標系の元のパラメータに対応する変換結果として出力する。そして、本処理フローを終了する。
【0079】
[変換例]
図12は、本実施形態に係る座標変換方法を用いた変換結果に関する精度を説明するための図である。ここでは、対象をボールねじとし、以下の条件下にて算出を行った。
螺旋のピッチ(l):600[mm]
螺旋の半径(r):800[mm]
螺旋角(θ):1000[°]
螺旋と座標点との距離:1μm~100mm
【0080】
図12において、横軸は(座標点が螺旋から離れている距離)/(螺旋半径)を示す。また、縦軸は(座標の変換誤差)/(螺旋半径)を示す。図12の上のグラフは、図8図9にて示した変換処理を1回行うことにより得られた結果の精度を示す。また、図12の下のグラフは、図11に示すように変換処理を2段階で行うことにより得られた結果の精度を示す。
【0081】
図12に示すように、螺旋半径で誤差と距離を正規化した結果、1回の変換処理であっても、誤差が10-11~10-3となる範囲で高い精度により座標変換を行うことが可能であった。特に、座標点が螺旋に近い位置にあるほど、高い精度にて座標変換を行ことが可能となる。2段階の変換処理により、更に精度を向上させることが可能となり、10-17~10-5となる範囲で座標変換を行うことができた。
【0082】
特に、螺旋近傍の10-3付近では、64bitの倍精度浮動小数点の場合の離散化誤差と同等のズレの小ささを実現している。これは、標準的なボールねじの螺旋半径~10cmオーダーに対して、~10μmオーダーのズレの計算結果である。一般的なボールねじの隙間は~10μmで作成されていることから、本実施形態に係る手法は、通常の数値シミュレーションにおいて十分な精度を実現している。
【0083】
以上、本実施形態では、ボールねじなどの螺旋形状を有する機械部品の構成を考慮した上で、処理負荷を低減させるための近似値を用いる。更に、2段階での座標変換を行う。これにより、本実施形態では、螺旋近傍の点の座標を特定するための、直交座標系からフレネ座標系への精度の高い変換が可能となる。
【0084】
<その他の実施形態>
【0085】
また、本願発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0086】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0087】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0088】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換方法であって、
前記点の直交座標系の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行う第1の変換工程と、
前記第1の変換工程にて得られたフレネ座標系の座標を示すパラメータを、直交座標系への座標へ座標変換を行う第2の変換工程と、
前記点の直交座標系の座標と、前記第2の変換工程にて得られた直交座標系の座標とに差分に基づいて、直交座標系における仮の座標を設定する設定工程と、
前記仮の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行うことにより、フレネ座標系における前記点の座標を示すパラメータを算出する第3の変換工程と
を有することを特徴とする座標変換方法。
この構成によれば、螺旋近傍の点の座標に関し、直交座標系からフレネ座標系への精度の高い変換を可能とする変換方法を提供することが可能となる。
【0089】
(2) 前記設定工程では、直交座標系において、前記点のx軸の値が、前記第2の変換工程にて得られた座標のx軸の値と前記仮の座標のx軸の値の中点となるように、前記仮の座標が設定されることを特徴とする(1)に記載の座標変換方法。
この構成によれば、近似を用いた座標変換の誤差を反映した上で、精度の高い座標変換が可能となる。
【0090】
(3) 前記第1の変換工程と前記第3の変換工程は、同じ変換方法を用いて変換処理を行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の座標変換方法。
この構成によれば、直交座標系からフレネ座標系への座標変換のための構成を共通化することができ、また、同じ手法を用いることで近似により生じる誤差の特性を適切に反映することができる。
【0091】
(4) 前記第1の変換工程および前記第3の変換工程では、
前記螺旋の螺旋軸に対応する直交座標系のx軸に対する座標の値が0となるように直交座標系を設定し、
前記設定された直交座標系における着目点の座標を(0,y,z)とし、フレネ座標系における前記着目点の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)とした場合に、以下の式(1)に基づいて、座標変換を行い、
【0092】
【数15】
【0093】
前記式(1)において、三次関数をテイラー展開した際の3次以上の項を0とした近似値を用いて得られる連立方程式を解くことにより、フレネ座標系における前記着目点の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)を導出することを特徴とする(3)に記載の座標変換方法。
この構成によれば、ボールねじなどの螺旋形状を有する機械部品の構成を考慮し、螺旋近傍の点の座標を比較的低い処理負荷にて座標変換を行うことが可能となる。
【0094】
(5) フレネ座標系は、前記螺旋上の点を原点として、前記螺旋の進行方向をξ軸とし、前記螺旋の中心方向をη軸とし、前記ξ軸と前記η軸それぞれに直交する方向をζ軸として規定される座標系であることを特徴とする請求項(1)~(4)のいずれかに記載の座標変換方法。
この構成によれば、直交座標系から、螺旋状の点に対応するフレネ座標系への座標変換が可能となる。
【0095】
(6) 螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換装置であって、
前記点の直交座標系の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行う第1の変換手段と、
前記第1の変換手段にて得られたフレネ座標系の座標を示すパラメータを、直交座標系への座標へ座標変換を行う第2の変換手段と、
前記点の直交座標系の座標と、前記第2の変換手段にて得られた直交座標系の座標とに差分に基づいて、直交座標系における仮の座標を設定する設定手段と、
前記仮の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行うことにより、フレネ座標系における前記点の座標を示すパラメータを算出する第3の変換手段と
を有することを特徴とする座標変換装置。
この構成によれば、螺旋近傍の点の座標に関し、直交座標系からフレネ座標系への精度の高い変換を可能とする変換方法を提供することが可能となる。
【0096】
(7) コンピュータに、
螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換方法を実行させるためのプログラムであって、
前記座標変換方法は、
螺旋近傍の点について直交座標系の座標(x,y,z)からフレネ座標系の座標を示すパラメータ(θ,η,ζ)へ座標変換を行う座標変換方法であって、
前記点の直交座標系の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行う第1の変換工程と、
前記第1の変換工程にて得られたフレネ座標系の座標を示すパラメータを、直交座標系への座標へ座標変換を行う第2の変換工程と、
前記点の直交座標系の座標と、前記第2の変換工程にて得られた直交座標系の座標とに差分に基づいて、直交座標系における仮の座標を設定する設定工程と、
前記仮の座標を、フレネ座標系の座標を示すパラメータへ座標変換を行うことにより、フレネ座標系における前記点の座標を示すパラメータを算出する第3の変換工程と
を有することを特徴とするプログラム。
この構成によれば、螺旋近傍の点の座標に関し、直交座標系からフレネ座標系への精度の高い変換を可能とする変換方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0097】
1…座標変換装置
10…CPU(Central Processing Unit)
11…ROM(Read Only Memory)
12…RAM(Random Access Memory)
13…HDD(Hard Disk Drive)
14…入力装置
15…表示装置
16…通信装置
20…ボールねじ
21…ナット
22…ねじ軸
22a…螺旋溝
23…転動体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12