(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】ショット処理装置
(51)【国際特許分類】
B24C 3/20 20060101AFI20250121BHJP
B24C 9/00 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B24C3/20
B24C9/00 H
(21)【出願番号】P 2021057182
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】平尾 通章
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-263446(JP,A)
【文献】特開2015-077638(JP,A)
【文献】特開2020-165507(JP,A)
【文献】特開2010-149215(JP,A)
【文献】特開2021-028216(JP,A)
【文献】米国特許第05272897(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C1/00-11/00
F16H27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にショット処理を行うショット処理装置であって、
前記対象物が載置される自転テーブルと、
前記自転テーブルを回転させる駆動部と、
検出部と、を備え、
前記自転テーブルは、自転軸と、前記自転軸に固定された第1歯車と、を有し、
前記駆動部は、駆動軸と、前記駆動軸に固定された第2歯車と、を有し、
前記第1歯車及び前記第2歯車は、互いに噛み合うように配置されており、
前記第1歯車は、
歯欠部を有する間欠歯車であり、回転の基準位置を示すマーク
であって、前記歯欠部により構成されているマークを有し、
前記検出部は、
前記第1歯車と前記第2歯車との接触による振動の検出、又は、前記第1歯車の歯先の位置に照射されたレーザを検出することで前記マークを検出する、
ショット処理装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記第1歯車と前記第2歯車との接触による振動を検出する、
請求項
1に記載のショット処理装置。
【請求項3】
前記第1歯車は、3つ以上の前記歯欠部を有する、
請求項
1又は
2に記載のショット処理装置。
【請求項4】
前記第1歯車では、前記歯欠部と前記歯欠部との間に歯が配置されている、
請求項
3に記載のショット処理装置。
【請求項5】
前記自転テーブルは、前記自転軸の回転抵抗を調整する抵抗調整部を更に有する、
請求項1~
4のいずれか一項に記載のショット処理装置。
【請求項6】
前記自転テーブルは、前記自転軸を回転可能に支持する軸受と、前記自転軸と前記軸受との間に配置されたシール部材と、を有し、
前記抵抗調整部は、前記シール部材により構成されている、
請求項
5に記載のショット処理装置。
【請求項7】
前記自転軸の回転抵抗は、前記シール部材の数により調整される、
請求項
6に記載のショット処理装置。
【請求項8】
前記自転テーブルが配置された公転テーブルを更に備える、
請求項1~
7のいずれか一項に記載のショット処理装置。
【請求項9】
前記公転テーブルには、周方向に沿って複数の前記自転テーブルが配置されている、
請求項
8に記載のショット処理装置。
【請求項10】
前記駆動部は、ショット処理が行われる領域に位置する前記自転テーブルごとに設けられている、
請求項
9に記載のショット処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショット処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物のスケール落としやバリ取りや面粗度調整等を行うショットブラスト加工、又は、疲労強度向上等を行うショットピーニング加工等の表面加工として、対象物に向けてショット媒体を投射して衝突させるショット処理が知られている。ショット処理を行うショット処理装置は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の装置では、ワークが載置される小テーブルが大テーブルに対して回転可能であり、大テーブルがキャビネットに対して回転可能である。これにより、ワークは自公転可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置では、小テーブルが公転するので、小テーブルの自転軸に駆動部を直結させることが困難である。そこで、小テーブルの自転軸をベルトで間接的に駆動する構成が考えられる。しかしながら、この構成では、ベルトの駆動力が小テーブルの自転軸に正確に伝わっているか把握できない。よって、自転軸の位相及び回転数を検出することができない。
【0005】
本開示は、自転軸の位相及び回転数を検出することが可能なショット処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るショット処理装置は、対象物にショット処理を行う。ショット処理装置は、対象物が載置される自転テーブルと、自転テーブルを回転させる駆動部と、検出部と、を備える。自転テーブルは、自転軸と、自転軸に固定された第1歯車と、を有する。駆動部は、駆動軸と、駆動軸に固定された第2歯車と、を有する。第1歯車及び第2歯車は、互いに噛み合うように配置されている。第1歯車は、回転の基準位置を示すマークを有する。検出部は、マークを検出する。
【0007】
このショット処理装置では、自転テーブルの自転軸に固定された第1歯車は、回転の基準位置を示すマークを有する。したがって、検出部でマークを検出することにより、自転軸の位相及び回転数を検出することができる。
【0008】
本開示の一実施形態において、第1歯車は、歯欠部を有する間欠歯車であってもよい。マークは、歯欠部により構成されていてもよい。この場合、第1歯車と第2歯車との接触による振動が歯欠部では生じないので、検出部で検出された振動波形に基づき、マークを検出することができる。この結果、自転軸の位相及び回転数を検出することができる。
【0009】
本開示の一実施形態において、検出部は、第1歯車と第2歯車との接触による振動を検出してもよい。この場合、検出された振動からマークを検出することができる。
【0010】
本開示の一実施形態において、第1歯車は、3つ以上の歯欠部を有してもよい。この場合、振動波形により自転軸の回転方向を検出することができる。
【0011】
本開示の一実施形態において、第1歯車では、歯欠部と歯欠部との間に歯が配置されていてもよい。この場合、駆動部の回転力が自転軸に伝達され易い。
【0012】
本開示の一実施形態において、自転テーブルは、自転軸の回転抵抗を調整する抵抗調整部を更に有してもよい。この場合、第1歯車の回転速度を安定させ、第1歯車と第2歯車とを常に噛み合った状態とすることができる。
【0013】
本開示の一実施形態において、自転テーブルは、自転軸を回転可能に支持する軸受と、転軸と軸受との間に配置されたシール部材と、を有してもよい。抵抗調整部は、シール部材により構成されてもよい。この場合、シール部材の接触抵抗により自転軸の回転抵抗を調整することができる。
【0014】
本開示の一実施形態において、自転軸の回転抵抗は、シール部材の数により調整されてもよい。この場合、シール部材の接触抵抗の大きさを容易に調整することができる。
【0015】
本開示の一実施形態において、上記ショット処理装置は、自転テーブルが配置された公転テーブルを更に備えてもよい。この場合、対象物を公転させることができる。
【0016】
本開示の一実施形態において、公転テーブルには、周方向に沿って複数の自転テーブルが配置されていてもよい。この場合、複数の対象物に対してショット処理を順次行うことができる。
【0017】
本開示の一実施形態において、駆動部は、ショット処理が行われる領域に位置する自転テーブルごとに設けられていてもよい。この場合、対象物を自転させながらショット処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係るショット処理装置によれば、自転軸の位相及び回転数を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係るショット処理装置を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のショット処理装置の内部構成を模式的に示す端面図である。
【
図4】
図4は、第1歯車及び第2歯車を示す平面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る第1歯車を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0021】
図1~
図3に示される実施形態に係るショット処理装置1は、対象物Wにショット処理を行う装置である。ショット処理装置1は、例えば、ショットブラスト装置、ショットピーニング装置である。ショットブラスト装置としては、エアブラスト装置及び遠心式のブラスト装置が挙げられる。ショット処理装置1は、筐体2と、投射装置3と、公転テーブル4と、複数の自転テーブル5と、複数の駆動部6と、検出部10とを備える。ショット処理装置1は、例えば、マルチテーブル式エアブラスト装置である。
【0022】
筐体2は中空の箱型形状を有し、内部空間Sを規定している。筐体2は、内部空間Sに公転テーブル4及び複数の自転テーブル5を収容している。筐体2は、底壁2a、上壁2b及び複数の側壁2cを有している。
図1では、上壁2bが図示されていない。底壁2a及び上壁2bは、互いに対向している。複数の側壁2cは、底壁2a及び上壁2bの対向方向に延在し、底壁2aと上壁2bとを互いに接続している。以下では、底壁2a及び上壁2bの対向方向を上下方向とも言うが、対向方向は重力方向と異なる方向であってもよい。
【0023】
投射装置3は、ショット媒体を投射する装置である。投射装置3は、筐体2の一つの側壁2cに取り付けられている。投射装置3は、内部空間Sのうち、この一つの側壁2c寄りの領域Rに位置する対象物Wに対してショット媒体を投射し、ショット処理を行う。本実施形態では、
図2に示されるように、2つの投射装置3A,3Bが上下方向に並んで配置されている。投射装置3Aは、対象物Wに対し、斜め上方からショット媒体を投射可能に設けられている。投射装置3Bは、対象物Wに対し、斜め下方からショット媒体を投射可能に設けられている。投射装置3A,3Bは、対象物Wに対し、例えば、斜め45度の角度でショット媒体を投射する。
【0024】
公転テーブル4及び複数の自転テーブル5は、内部空間Sに配置されている。公転テーブル4及び複数の自転テーブル5は、
図1に示されるように、平面視で円形状をそれぞれ有している。公転テーブル4の直径は、自転テーブル5の直径よりも大きい。公転テーブル4は、上下方向に沿って延びる中心軸の周りに回転可能に構成されている。公転テーブル4は、筐体2の外部に設けられたモータ(不図示)と直結されており、当該モータにより回転駆動される。公転テーブル4には、複数の自転テーブル5(ステーション)が互いに離間して配置されている。複数の自転テーブル5は、公転テーブル4の周方向に沿って一定間隔をあけて配置されている。
【0025】
公転テーブル4は、例えば、間欠的に回転する。公転テーブル4は、一定時間ごとに一定角度ずつ回転する。公転テーブル4の一回の回転角度は、自転テーブル5の数をnとすると、(360/n)度である。公転テーブル4は、n回の回転で一回転、すなわち、360度回転する。本実施形態では、自転テーブル5の数は10であり、複数の自転テーブル5は、公転テーブル4の中心軸の周りに36度の間隔で配置されている。公転テーブル4の一度の回転角度は、36度である。公転テーブル4は、10回の回転で一回転する。
【0026】
自転テーブル5は、
図3に示されるように、中心軸C1の周りに回転可能に公転テーブル4に保持されている。中心軸C1は、公転テーブル4の中心軸と平行に設定されている。自転テーブル5は、対象物Wが載置される載置面5aを有している。対象物Wは、公転テーブル4及び自転テーブル5により自公転可能となっている。
【0027】
自転テーブル5は、第1歯車7、自転軸11、軸受12、ボールベアリング13、及び、シール部材14を有している。第1歯車7については、後述する。自転軸11は、円柱状部材である。自転軸11は、一体的に形成された第1円柱部11a及び第2円柱部11bを含む。第1円柱部11aの一端は、自転軸11の一端を構成し、載置面5aが設けられている。第1円柱部11aの他端は、第2円柱部11bの一端と接続されている。第2円柱部11bの他端は、自転軸11の他端を構成し、第1歯車7に固定されている。
【0028】
軸受12は、自転軸11を包囲する円筒部材であり、自転軸11を回転可能に支持している。第1円柱部11aの外周面と軸受12の内周面との間には、2つのボールベアリング13が配置されている。第2円柱部11bの外周面と軸受12の内周面との間には、2つのシール部材14が配置されている。シール部材14は、第2円柱部11bと軸受12との間をシールしている。シール部材14は、例えば、Vリングである。シール部材14は、投射装置3から投射されたショット媒体が軸受12の内部に入り込むことを防いでいる。また、シール部材14は、ボールベアリング13に用いられる潤滑剤が内部空間Sに流出することを防いでいる。シール部材14は、公転テーブル4と第1円柱部11aの外周面との間にも設けられ、この間をシールしていてもよい。この場合、ショット媒体が軸受12の内部に入り込むこと、及び、潤滑剤が内部空間Sに流出することが更に抑制される。
【0029】
シール部材14は、自転軸11の回転抵抗を調整する抵抗調整部を構成している。自転軸11の回転抵抗は、例えば、シール部材14の数により調整される。自転軸11の回転抵抗は、シール部材14の数が増えると大きくなる。シール部材14は、数以外にも、例えば、幅、厚さ、形状、素材、又はこれらの組み合わせにより自転軸11の回転抵抗を調整してもよい。
【0030】
軸受12の一端は、例えば、ボルト(不図示)により公転テーブル4の下面4aに固定されている。軸受12が公転テーブル4に固定されることにより、自転テーブル5が公転テーブル4に保持されている。公転テーブル4には、自転テーブル5の自転軸11を貫通させる貫通孔が設けられている。自転テーブル5は、載置面5aが公転テーブル4から突出するように公転テーブル4に取り付けられている。
【0031】
駆動部6は、自転テーブル5を回転させる。駆動部6は、ショット処理が行われる領域Rに位置する自転テーブル5ごとに設けられている。すなわち、駆動部6の数は、領域Rに位置する自転テーブル5の数と同じである。本実施形態では、領域Rに5つの自転テーブル5が位置する。したがって、ショット処理装置1は、5つの駆動部6を備えている。駆動部6は、筐体2に取り付けられている。
【0032】
駆動部6は、第2歯車8、駆動軸21、軸受22、ボールベアリング23、及び、シール部材24を有している。第2歯車8については、後述する。駆動軸21は、自転軸11と同じ構成を有している。すなわち、駆動軸21は、円柱状部材である。駆動軸21の中心軸C2は、自転軸11の中心軸C1と平行に設定されている。駆動軸21は、一体的に形成された第1円柱部21a及び第2円柱部21bを含む。第1円柱部21aの一端は、駆動軸21の一端を構成し、モータMに接続されている。モータMは、筐体2の外部に設けられている。駆動軸21には、駆動軸21の回転角度を検出するためのエンコーダが設けられている。もしくは、モータMとしてサーボモータを用いてもよい。第1円柱部21aの他端は、第2円柱部21bの一端と接続されている。第2円柱部21bの他端は、駆動軸21の他端を構成し、第2歯車8に固定されている。
【0033】
軸受22は、軸受12と同じ構成を有している。すなわち、軸受22は、駆動軸21を包囲する円筒部材であり、駆動軸21を回転可能に支持している。第1円柱部21aの外周面と軸受22の内周面との間には、2つのボールベアリング23が配置されている。第2円柱部21bの外周面と軸受22の内周面との間には、1つのシール部材24が配置されている。シール部材24は、第2円柱部21bと軸受22との間をシールしている。シール部材24は、例えば、Vリングである。シール部材24は、投射装置3から投射されたショット媒体が軸受22の内部に入り込むことを防いでいる。また、シール部材24は、ボールベアリング23に用いられる潤滑剤が内部空間Sに流出することを防いでいる。
【0034】
軸受22の一端は、例えば、ボルト(不図示)により筐体2の底壁2aの内面に固定されている。軸受22が筐体2に固定されることにより、駆動部6が筐体2に保持されている。底壁2aには、駆動部6の駆動軸21を貫通させる貫通孔が設けられている。駆動部6は、第1円柱部21aの一端が底壁2aから突出し、筐体2の外部に設けられたモータMに直結されている。
【0035】
図4を参照して、第1歯車7及び第2歯車8について説明する。
図4に示されるように、第1歯車7及び第2歯車8は、互いに噛み合うように配置されている。第2歯車8は、周方向に沿って配置された複数の歯8aを有している。複数の歯8aは、等間隔で設けられている。第1歯車7は、周方向に沿って配置された複数の歯7aを有している。第1歯車7は、間欠歯車であり、歯7aが設けられていない歯欠部7bを有する以外は、第2歯車8と同形状を有している。すなわち、第1歯車7の外径及び第2歯車8の外径は、互いに同等である。歯7a及び歯8aは、互いに同形状である。
【0036】
複数の歯7aは、歯欠部7b以外の部分において、周方向に沿って等間隔で配置されている。歯7a及び歯欠部7bは、周方向に沿って等間隔で配置されている。歯欠部7bを介して隣り合う歯7a同士の間隔は、歯欠部7bを介することなく隣り合う歯7a同士の間隔よりも長い。歯欠部7bは、回転の基準位置を示すマークを構成している。
【0037】
検出部10は、歯欠部7bにより構成されるマークを検出する。検出部10は、例えば、マークの検出された角度を自転軸11の0度として認識する。検出部10は、例えば、第1歯車7と第2歯車8との接触による振動を検出する振動計である。検出部10は、自転テーブル5及び駆動部6の組み合わせごとに設けられている。すなわち、検出部10の数は、自転テーブル5及び駆動部6の組み合わせの数と同じである。本実施形態では、ショット処理装置1は、5つの検出部10を備える。複数の検出部10は、例えば、筐体2の外部において、対応する駆動部6の近傍に配置されている。
【0038】
図5は、第1歯車と第2歯車との接触による振動波形を示すグラフである。横軸は時間を示す。縦軸は振動加速度(dB)を示す。
図5に示されるように、第1歯車7と第2歯車8との接触による振動は、間欠的に発生する。歯欠部7bがない場合に発生する振動の周期は、回転数×歯数で決定される。上述のように、歯欠部7bを介して隣り合う歯7a同士の間隔は、歯欠部7bを介することなく隣り合う歯7a同士の間隔よりも長い。よって、振動の間隔により歯欠部7bを検出することができる。
図5において、破線により示される部分には振動がないので、この部分が歯欠部7bであるとわかる。
【0039】
以上説明したように、ショット処理装置1では、自転テーブル5の自転軸11に固定された第1歯車7は、回転の基準位置を示すマークを有する。したがって、検出部10でマークを検出することにより、自転軸11の回転の基準位置が検出できる。これにより、自転軸11の回転数、及び、回転の位相(基準位置からの回転角度)といった回転状態を検出することができる。よって、自転テーブル5を特定角度で停止させれば、対象物Wの特定位置のみにショット処理を行ったり、特定位置に重点的にショット処理を行ったりすることが可能となる。これにより、不要部への投射を削減し、生産性の向上、ショット媒体等のランニングコストの低減、省エネ効果が期待できる。
【0040】
第1歯車7は、歯欠部7bを有する間欠歯車である。マークは、歯欠部7bにより構成されている。このため、第1歯車7と第2歯車8との接触による振動が歯欠部7bでは生じない。検出部10は、第1歯車7と第2歯車8との接触による振動を検出する振動計である。したがって、検出部10により検出された振動波形に基づき、歯欠部7bを検出することができる。これにより、自転軸11の位相及び回転数を検出することができる。振動波形によれば、ボールベアリング13,23の損耗状態が把握できるので、ボールベアリング13,23が破損する前にメンテナンスすることが可能となる。
【0041】
自転テーブル5は、自転軸11の回転抵抗を調整する抵抗調整部を有している。自転軸11の回転抵抗が低すぎると、自転軸11の回転速度が安定せず、第1歯車7と第2歯車8とが常に噛み合った状態にならないおそれがある。抵抗調整部によれば、自転軸11の回転速度を安定させ、第1歯車7と第2歯車8とが常に噛み合った状態にすることができる。
【0042】
自転テーブル5は、自転軸11を回転可能に支持する軸受12と、自転軸11と軸受12との間に配置された2つのシール部材14と、を有している。シール部材14は、自転軸11の外周面に設けられ、軸受12の内面と接している。抵抗調整部は、シール部材14により構成されている。このため、シール部材14の接触抵抗により自転軸11の回転抵抗を調整することができる。
【0043】
自転軸11の回転抵抗は、シール部材14の数により調整されている。このため、シール部材14の接触抵抗の大きさを容易に調整することができる。
【0044】
ショット処理装置1は、自転テーブル5が配置された公転テーブル4を備えている。このため、対象物Wを公転させることができる。
【0045】
公転テーブル4には、周方向に沿って複数の自転テーブル5が配置されている。公転テーブル4の公転により複数の自転テーブル5はショット処理が行われる領域Rに順次送られる。このため、複数の対象物Wに対してショット処理を順次行うことができる。
【0046】
駆動部6は、ショット処理が行われる領域Rに位置する自転テーブル5ごとに設けられている。このため、対象物Wを自転させながらショット処理を行うことができる。よって、ショット処理を対象物Wの表面全体に均一に行うことができる。駆動部6は、自転テーブル5の自転軸11に直結されておらず、筐体2に固定されている。駆動部6は公転しないので、配線が容易である。
【0047】
モータM及び検出部10は内部空間Sではなく、筐体2の外部に設けられている。このため、モータM及び検出部10では、ショット媒体による損傷のおそれがない。
【0048】
ショット処理装置1では、第1歯車7及び第2歯車8を用いて自転テーブル5の自転軸11を回転させるので、ベルトのようにスリップすることがない。これにより、対象物Wを正確に回転させることができるので、均一なショット処理が可能となる。
【0049】
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0050】
図6は、変形例に係る第1歯車を示す平面図である。
図6に示されるように、変形例に係る第1歯車7Aは、3つの歯欠部7bを有している。第1歯車7Aでは、周方向において、第1歯欠部7bと第2歯欠部7bとの間隔と、第2歯欠部7bと第3歯欠部7bとの間隔とが互いに異なるように3つの歯欠部7bが配置されている。第1歯車7Aを用いると、振動波形により自転軸11の回転方向を検出することができる。
【0051】
具体的には、例えば、第1歯車7Aには、時計回りで、歯欠部7b、歯7a、歯7a、歯欠部7b、歯7a、歯欠部7bの順で3つの歯欠部7bが配置されている。振動波形において、振動無し、有り、有り、無し、有り、無しの順であれば、第1歯車7Aの回転方向が時計回りであることがわかる。振動波形において、振動無し、有り、無し、有り、有り、無しの順であれば、第1歯車7Aの回転方向が反時計回りであることがわかる。
【0052】
第1歯車7Aでは、歯欠部7bと歯欠部7bとの間に1つ以上の歯7aが配置されている。歯欠部7bが連続して配置されていると、第1歯車7と第2歯車8とが常に噛み合った状態にならず、駆動部6の回転力が自転軸11に伝達されないおそれがある。第1歯車7Aでは、複数の歯欠部7bを有していても、歯欠部7bが連続して配置されていないので、駆動部6の回転力が自転軸11に伝達され易い。第1歯車7Aは、2つ、又は4つ以上の歯欠部7bを有していてもよい。
【0053】
上記実施形態では、検出部10は振動計であるが、検出部10は、例えば、第1歯車7の歯先の位置に照射されたレーザを検出することにより、第1歯車7の歯7a及び歯欠部7bを検出する光検出器であってもよい。光検出器は、内部空間Sにおいてレーザを検出可能な位置に設けられる。この場合、第1歯車7は、歯欠部7bの代わりに、高さが低い歯7aを有していてもよい。高さが低い歯7aは、レーザが照射される歯先が欠けた状態であるため、マークを構成し得る。また、高さが低い歯7aは、歯先以外の部分によって、駆動部6の回転力を自転軸11に伝達することができる。
【0054】
検出部10は、近接センサであり、近接センサにより検出可能なマークを自転軸11に設けてもよい。近接センサは、内部空間Sにおいて、第1歯車7に照射されたレーザを検出可能な位置に設けられる。
【0055】
ショット処理装置1は、複数の自転テーブル5を備えるが、少なくとも1つの自転テーブル5を備えればよい。
【0056】
ショット処理装置1では、駆動部6は、ショット処理が行われる領域Rに位置する自転テーブル5に設けられているが、駆動部6は、対象物Wの搬出ステーションとなる自転テーブル5に設けてもよい。この場合、位相(向き)を一定にした状態で対象物Wを次工程に搬出することができる。
【0057】
上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…ショット処理装置、2…筐体、3…投射装置、4…公転テーブル、5…自転テーブル、6…駆動部、7…第1歯車、7a…歯、7b…歯欠部、8…第2歯車、10…検出部、11…自転軸、12…軸受、14…シール部材、21…駆動軸、R…領域、W…対象物。