(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】妨害光補正装置、PONシステム、及び妨害光補正方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/03 20130101AFI20250121BHJP
H04L 12/44 20060101ALI20250121BHJP
H04B 10/272 20130101ALI20250121BHJP
【FI】
H04B10/03
H04L12/44 200
H04B10/272
(21)【出願番号】P 2021062668
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐介
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-244478(JP,A)
【文献】特開2009-296322(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0269051(US,A1)
【文献】米国特許第09806807(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
H04L 12/28
H04L 12/44-12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PON(Passive Optical Network)システムにおける障害ONU(Optical Network Unit)から発せられる妨害光を測定する第1測定装置と、
前記第1測定装置が測定した前記妨害光を解析し、前記妨害光を補正する補正光の光パワーを算出する制御装置と、
前記制御装置で算出された前記光パワーを有する前記補正光を発する発光装置と、を備え、
前記制御装置は、前記補正光と前記妨害光とが集約された場合に、集約により補正された前記妨害光の光パワーが一定となるように、前記補正光の前記光パワーを算出する妨害光補正装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記妨害光の発光パターンの周期を特定し、
前記妨害光の1周期を複数の時間に分割し、
前記妨害光の前記光パワーの最大値と、前記妨害光の時間ごとの前記光パワーとの差を、前記補正光の前記時間ごとの前記光パワーとする請求項1に記載の妨害光補正装置。
【請求項3】
OLT(Optical Line Terminal)からの信号を遮断する遮断装置をさらに備え、
前記遮断装置によって前記OLTからの信号を遮断することで、前記第1測定装置によって前記妨害光が測定される請求項1又は2に記載の妨害光補正装置。
【請求項4】
前記補正光により補正された前記妨害光を測定する第2測定装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記第2測定装置で測定された前記妨害光の光パワーが一定でない場合に、前記補正光の前記光パワーを修正する請求項1~3の何れか一項に記載の妨害光補正装置。
【請求項5】
複数のONUと、
OLTと、
請求項1~4の何れか一項に記載の妨害光補正装置と、を備え、
前記妨害光補正装置は、前記複数のONUと前記OLTとの間に接続されるPONシステム。
【請求項6】
PONシステムにおける障害ONUから発せられる妨害光を測定するステップと、
測定した前記妨害光を解析し、前記妨害光を補正する補正光の光パワーを算出するステップと、
算出された前記光パワーを有する前記補正光を発するステップと、を備え、
前記算出するステップは、前記補正光と前記妨害光とが集約された場合に、集約により補正された前記妨害光の光パワーが一定となるように、前記補正光の前記光パワーを算出する妨害光補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PON(Passive Optical Network)システムに用いられる妨害光補正装置、PONシステム、及び妨害光補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、局側光終端装置であるOLT(Optical Line Terminal)と、複数の加入者光終端装置であるONU(Optical Network Unit)と、からなるPON(Passive Optical Network)システムが知られている。PONシステムでは、光伝送路を複数のONUにて共用するため、ONUに障害が発生して妨害光が送出されると、OLTは正常なONUからの光信号を判別できなくなってしまう。そこで、特許文献1には、妨害光を発生する障害ONUを特定する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1では、PONシステムにおける障害ONUの発生を検知した場合、まず、光パワー計によって妨害光の光パワーを計測する。そして、各ONUを順番に指定して論理リンクを確立させる。論理リンクが確立すると、各ONUに上り帯域での上り光信号を出力させ、光パワー計によりそのときの上り光の光パワーを計測する。そして、計測された上り光の光パワーが妨害光の光パワーに所定閾値を加算した値以下である場合に、そのONUを障害ONU候補とし、障害ONU候補の中で、OLTに光学的に最も近い障害ONU候補を障害ONUと特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の障害ONUの特定方法では、PONシステムでのディスカバリ手順を用いて正常なONUを指定し、論理リンクを確立する必要がある。しかしながら、障害ONUが、正常なONUとOLTとの接続を完全に阻害するような妨害光を発している場合には、ディスカバリ手順を実行することができなくなり、OLTと正常なONUとの通信が不可となる。その結果、障害ONUの特定もできなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記のような課題を背景としたものであり、妨害光を発する障害ONUが存在する場合においても、OLTと正常なONUとの通信を可能とすることができる妨害光補正装置、PONシステム及び妨害光補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る妨害光補正装置は、PON(Passive Optical Network)システムにおける障害ONU(Optical Network Unit)から発せられる妨害光を測定する第1測定装置と、第1測定装置が測定した妨害光を解析し、妨害光を補正する補正光の光パワーを算出する制御装置と、制御装置で算出された光パワーを有する補正光を発する発光装置と、を備え、制御装置は、補正光と妨害光とが集約された場合に、集約により補正された妨害光の光パワーが一定となるように、補正光の光パワーを算出するものである。
本発明に係るPONシステムは、複数のONUと、OLTと、上記の妨害光補正装置と、を備え、妨害光補正装置は、複数のONUとOLTとの間に接続されるものである。
本発明に係る妨害光補正方法は、PONシステムにおける障害ONUから発せられる妨害光を測定するステップと、測定した妨害光を解析し、妨害光を補正する補正光の光パワーを算出するステップと、算出された光パワーを有する補正光を発するステップと、を備え、算出するステップは、補正光と妨害光とが集約された場合に、集約により補正された妨害光の光パワーが一定となるように、補正光の光パワーを算出するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る妨害光補正装置、PONシステム及び妨害光補正方法によれば、妨害光の光パワーが一定となるような補正光で妨害光を補正することで、障害ONUが存在する場合でもOLTと正常なONUとの通信を確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るPONシステムの概略構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る妨害光補正装置の制御装置の機能ブロック図である。
【
図4】妨害光の発光パターン1周期における光パワーと時間との関係を示すグラフである。
【
図5】記憶部に記憶される妨害光の時間ごとの光パワーのデータである。
【
図6】補正光の光パワーの算出を説明するためのグラフである。
【
図7】記憶部に記憶される補正光の時間ごとの光パワーのデータである。
【
図8】発光パターン1周期における補正光の波形データである。
【
図10】実施の形態1に係る妨害光補正方法のフローチャートである。
【
図11】妨害光の補正後にOLTに入力される通信光の波形データである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るPONシステム100の概略構成図である。本実施の形態におけるPONシステム100は、複数の加入者光終端装置であるONU1と、局側光終端装置であるOLT2と、分岐カプラ3と、妨害光補正装置4とからなる。
【0011】
図1に示すように、ONU1は、障害ONU11と、N個の正常ONU12-1~12-Nを含む。障害ONU11は、何らかの障害により、OLT2からの制御に関係なく、正常ONU12-1~12-NがOLT2と通信不可となるような妨害光を周期的に発するものである。正常ONU12-1~12-Nは、正常に動作し、光伝送路を介してOLT2と通信するものである。
【0012】
OLT2は、正常に動作し、光伝送路を介して正常ONU12-1~12-Nと通信するものである。OLT2は、ONU1の登録情報及び警報ログを記録することができる。OLT2は、ONU1からの上り光をモニタし、本来存在しない期間に上り光が存在した場合、又は想定範囲よりも強い上り光が存在した場合などに、障害が発生した、すなわち障害ONU11が存在するとして、警報ログを記録する。また、OLT2は、PONシステム100における障害の発生を妨害光補正装置4に通知する。
【0013】
分岐カプラ3は、ONU1とOLT2との間の通信光を分岐及び集約するものである。本実施の形態では、分岐カプラ3は、ONU1と妨害光補正装置4との間に接続される。
【0014】
妨害光補正装置4は、ONU1とOLT2との間に接続され、障害ONU11からの妨害光を補正する装置である。より詳しくは、妨害光補正装置4は、分岐カプラ3とOLT2との間に接続される。妨害光補正装置4は、WDM(Wavelength Division Multiplex)カプラ41a及び41b、遮断装置42、第1カプラ43a、第2カプラ43b、第3カプラ43c、第1測定装置44a、第2測定装置44b、発光装置45、並びに制御装置46を備える。
【0015】
WDMカプラ41a及び41bは、波長分割多重カプラであり、通信光をONU1からOLT2への上り光と、OLT2からONU1への下り光に分割するものである。WDMカプラ41aは分岐カプラ3に接続され、WDMカプラ41bはOLT2に接続されている。
【0016】
遮断装置42は、WDMカプラ41aとWDMカプラ41bとの間に接続され、通信光を遮断する光スイッチである。遮断装置42は、制御装置46によってOLT2がPONシステム100における障害の発生を検出した際にオンとされ、妨害光補正装置4による補正が完了するとオフにされる。遮断装置42がオンの場合、WDM41bからの通信光、すなわちOLT2からONU1への通信光が遮断される。これにより、正常ONU12-1~12-Nからのディスカバリ通信が停止される。このとき、障害ONU11は、OLT2の制御に関係なく妨害光を発光しているため、障害ONU11からの妨害光のみが妨害光補正装置4に入力される。
【0017】
遮断装置42がオフの場合、WDM41bからの通信光、すなわちOLT2からONU1への通信光の遮断が解除される。これにより、正常ONU12-1~12-NとOLT2とが通信可能となる。なお、以下の説明においては、遮断装置42がオンの間、すなわち、OLT2がPONシステム100における障害の発生を検出してから、妨害光補正装置4により妨害光が補正されるまでの間を「障害発生時」と称する。
【0018】
第1カプラ43aは、2分岐カプラであり、WDMカプラ41aからの上り光を第1測定装置44a及び第2カプラ43bに分岐する。障害発生時におけるWDMカプラ41aからの上り光は、障害ONU11からの妨害光のみとなる。
【0019】
第2カプラ43bは、2分岐カプラであり、第1カプラ43aからの上り光と発光装置45からの上り光とを1つに集約し、第3カプラ43cに出力する。障害発生時における第1カプラ43aからの上り光は障害ONU11からの妨害光であり、発光装置45からの上り光は後述する補正光である。すなわち、第2カプラ43bでは、障害ONU11からの妨害光と発光装置45からの補正光とが集約され、補正光により補正された妨害光が出力される。
【0020】
第3カプラ43cは、2分岐カプラであり、第2カプラ43bからの上り光をWDMカプラ41bと第2測定装置44bとに分岐する。障害発生時における第2カプラ43bからの上り光は補正された妨害光である。
【0021】
第1測定装置44aは、光オシロスコープであり、障害発生時において、障害ONU11から出力される妨害光を測定する。具体的には、第1測定装置44aは、障害ONU11から、分岐カプラ3、WDMカプラ41a、及び第1カプラ43aを介して入力される妨害光を測定し、妨害光の波形データを制御装置46に出力する。
【0022】
発光装置45は、障害ONU11から出力される妨害光を補正する光を出力する。以下の説明において、妨害光を補正する光を「補正光」という。発光装置45は、集光レンズとレーザダイオードなどの発光素子とからなる。発光装置45から出力された補正光は、第2カプラ43bに出力される。
【0023】
第2測定装置44bは、光オシロスコープであり、補正された妨害光を測定する。具体的には、第2測定装置44bは、第2カプラ43bにおいて集約され、第3カプラ43cを介して入力される補正された妨害光を測定し、補正された妨害光の波形データを制御装置46に出力する。
【0024】
制御装置46は、遮断装置42、第1測定装置44a、第2測定装置44b及び発光装置45の制御、第1測定装置44a及び第2測定装置44bから取得した波形データの記憶、並びに妨害光を補正するために必要な演算等を行う。制御装置46は、CPUなどのプロセッサと、RAM、ROM又はフラッシュメモリなどのメモリと、を備える。
【0025】
図2は、実施の形態1に係る妨害光補正装置4の制御装置46の機能ブロック図である。制御装置46は、遮断制御部461と、妨害光解析部462と、補正光算出部463と、発光制御部464と、記憶部465と、を有する。遮断制御部461と、妨害光解析部462と、補正光算出部463と、発光制御部464とは、プロセッサがソフトウェア(プログラム)を実行することにより実現されるか、又はASIC等の専用回路により実現される機能部である。
【0026】
遮断制御部461は、PONシステム100の状況に応じて、遮断装置42を制御する。具体的には、遮断制御部461は、OLT2からPONシステム100における障害の発生の通知を受信した際に、遮断装置42をオンにして、OLT2からONU1への通信光を遮断する。また、遮断制御部461は、障害の発生後、補正光算出部463からの補正完了の通知を受信した際に、遮断装置42をオフにして、OLT2からONU1への通信光の遮断を解除する。なお、遮断制御部461は、ONU1からの上り光をモニタし、障害の発生を検出してもよい。この場合は、OLT2からの通知は不要となる。
【0027】
妨害光解析部462は、第1測定装置44aによって測定された妨害光の波形データに基づき、妨害光を解析する。
図3は、妨害光の波形データの一例である。妨害光解析部462は、まず、妨害光の発光パターンの周期を解析する。そして、妨害光解析部462は、妨害光の発光パターンの1周期における光パワー(dBm)と時間(s)との関係を求め、記憶部465に記憶する。
図4は、妨害光の発光パターン1周期における光パワーと時間との関係を示すグラフであり、
図5は、記憶部465に記憶される妨害光の時間ごとの光パワーのデータである。
【0028】
妨害光解析部462は、妨害光の光パワーと、妨害光の1周期とをそれぞれ複数に分割する。
図4及び
図5の例では、妨害光の光パワーが最小値P1~最大値Pmaxまでの7段階、妨害光の1周期がT0~T10の11段階に分割される。そして、妨害光の波形データから各時間T0~T10における光パワーがそれぞれ求められ、記憶部465に記憶される。
【0029】
補正光算出部463は、妨害光を補正するための補正光の光パワーを算出する。ここで、正常ONU12-1~12-NとOLT2とを通信可能にするためには、妨害光の光パワーの変動をなくし、妨害光の光パワーが時間に依らず一定となるようにすればよい。
図6は、補正光の光パワーの算出を説明するためのグラフである。
図6に示すように、妨害光の光パワーをPmaxに一定にするためには、Pmaxと時間ごとの光パワーとの差分ΔPを補正光の光パワーとすればよい。
【0030】
補正光算出部463は、各時間T0~T10におけるΔPを算出し、記憶部465に記憶する。
図7は、記憶部465に記憶される補正光の時間ごとの光パワーのデータである。
図7に示すように、時間T0~T2及びT10においては、妨害光の光パワーがPmaxであるため、補正光の光パワーは0である。時間T3~T9においては、Pmaxから各時間の光パワーを減算した値(ΔP)が補正光の光パワーとされる。
図8は、発光パターン1周期における補正光の波形データである。なお、補正光の発光パターンの周期は、妨害光の発光パターンの周期と同じである。
【0031】
発光制御部464は、発光装置45が、記憶部465に記憶されるデータに基づく補正光を周期的に出力するように、発光装置45を制御する。
図9は、補正された妨害光の波形データである。
図9では、補正前の妨害光を破線で示し、補正後の妨害光を実線で示している。
図9に示すように、妨害光が補正光によって補正されることで、妨害光の光パワーがPmaxにて一定になる。
【0032】
また、補正光算出部463は、第2測定装置44bが測定した補正された妨害光の波形データに基づき、補正光の光パワーを修正する。第2測定装置44bが測定した、補正後の妨害光の光パワーがPmaxにて一定となっていない場合、補正光算出部463は、Pmaxとの差分ΔPに基づいて、記憶部465に記憶される補正光の光パワーを修正する。そして、補正光算出部463は、第2測定装置44bが測定した補正後の妨害光の光パワーがPmaxに一定となったと判断した場合、遮断制御部461に補正完了の通知を行う。補正完了後は、新たな障害の発生が検出されるまで、記憶部465に記憶されるデータに基づいた補正光が発光装置45から出力される。
【0033】
ここで、上記では、妨害光の光パワーがPmaxに一定となるように補正光の光パワーを算出すると説明したが、「一定」とは厳密に一定であるものに限定されず、OLT2が検出しない範囲の誤差があってもよい。許容できる誤差の範囲は、Pmax±1.2(dBm)である。許容範囲は、国際標準規格IEEE802.3ahで規定されるPONシステムのアイパターンのマスクの内部に、妨害光の波形が含まれないような範囲として求められたものである。
【0034】
記憶部465は、RAM、ROM又はフラッシュメモリなどの不揮発性又は揮発性のメモリである。記憶部465には、妨害光の波形データ、妨害光の時間ごとの光パワー、補正光の時間ごとの光パワー、補正光の波形データ、及び補正された妨害光の波形データなどが記憶される。
【0035】
図10は、実施の形態1に係る妨害光補正方法のフローチャートである。
図10の各処理は、妨害光補正装置4の制御装置46によって実行される。本方法は、制御装置46がOLT2からPONシステム100における障害の発生の通知を受信した際に開始される。まず、遮断制御部461によって遮断装置42がオンとされる(S1)。これにより、OLT2からの下り光が遮断され、上り光は妨害光のみが入力される。
【0036】
そして、第1測定装置44aによって、妨害光が測定される(S2)。第1測定装置44aによって測定された妨害光の波形データは、制御装置46に出力される。そして、妨害光解析部462によって、妨害光の波形データに基づき、妨害光が解析される(S3)。ここでは、妨害光の発光パターン1周期における時間ごとの光パワーが求められ、記憶部465に記憶される。
【0037】
続いて、補正光算出部463によって、補正光の光パワーが算出される(S4)。ここでは、妨害光の1周期における光パワーの最大値Pmaxと、時間ごとの光パワーとの差ΔPが、補正光の時間ごとの光パワーとして算出され、記憶部465に記憶される。そして、補正光算出部463により算出された光パワーを有する補正光が発光装置45から出力される(S5)。
【0038】
続いて、補正された妨害光が第2測定装置44bによって測定され、補正光算出部463によって、補正された妨害光の光パワーがPmaxに一定となっているか否かが判断される(S6)。補正された妨害光の光パワーがPmaxに一定となっていない場合は(S6:NO)、補正された妨害光の光パワーがPmaxに一定となるよう補正光が修正され(S7)、ステップS6に戻る。一方、補正された妨害光がPmaxに一定となっている場合は(S6:YES)、妨害光の補正が完了したとして、遮断制御部461により遮断装置42がオフとされる(S8)。
【0039】
遮断装置42がオフとされることで、正常ONU12-1~12-NとOLT2との通信が再開される。
図11は、妨害光の補正後にOLT2に入力される通信光の波形データである。
図11の実線が、OLT2に入力される正常ONU12-1~12-Nからの通信光を示す。また
図11では、参考のため、補正前の妨害光を破線で示し、補正後の妨害光を二点鎖線で示している。
図11に示すように、障害ONU11からの妨害光をPmax一定となるように補正することで、OLT2が受信する通信光のLOWレベルは、Pmax一定となる。これにより、OLT2において、正常ONU12-1~12-Nが出力する上り光を識別できるようになる。その結果、PONシステム100において、正常ONU12-1~12-NがOLT2と通信不可となるような妨害光を周期的に発する障害ONU11が存在する場合でも、正常ONU12-1~12-NとOLT2との通信を可能とすることができる。
【0040】
また、正常ONU12-1~12-NとOLT2との通信が可能になることで、OLT2の警報ログと、通信復旧後のONU1の稼働状況とを確認して、妨害光の補正前後でどのONU1が現在も稼働していないかを確認することができる。その結果、どのONU1が障害ONU11かを早期に発見することができる。
【0041】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明は、上記の実施の形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形又は組み合わせが可能である。例えば、補正光算出部463では、妨害光の光パワーがPmaxに一定となるように補正光の時間ごとの光パワーを算出したが、妨害光の光パワーが一定となればよく、Pmaxより大きい光パワーに一定としてもよい。
【0042】
また、上記実施の形態では、障害の発生の有無にかかわらずPONシステム100が妨害光補正装置4を備える構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、PONシステム100が妨害光補正装置4を備えない構成とし、障害が発生した場合に妨害光補正装置4を組み込む構成としてもよい。この場合は、OLT2からの通知等により障害の発生を検知した管理者が、ONU1とOLT2との間に妨害光補正装置4を接続し、妨害光補正装置4の遮断装置42をオンにしてもよい。又は、妨害光補正装置4の遮断装置42は初期状態でオンとなっていてもよい。その後の妨害光補正装置4の動作は、実施の形態1と同じである。この場合は、妨害光補正装置4の遮断制御部461は、OLT2からPONシステム100における障害の発生の通知を受信する必要がない。
【符号の説明】
【0043】
1 ONU、2 OLT、3 分岐カプラ、4 妨害光補正装置、11 障害ONU、12-1~12-N 正常ONU、41a WDMカプラ、41b WDMカプラ、42 遮断装置、43a 第1カプラ、43b 第2カプラ、43c 第3カプラ、44a 第1測定装置、44b 第2測定装置、45 発光装置、46 制御装置、100 PONシステム、461 遮断制御部、462 妨害光解析部、463 補正光算出部、464 発光制御部、465 記憶部。