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特許7622539疲労推定装置、余寿命推定システムおよび疲労推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】疲労推定装置、余寿命推定システムおよび疲労推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
G01M17/007 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021075704
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169951
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
(72)【発明者】
【氏名】棗 浩志
(72)【発明者】
【氏名】外海 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 岳志
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132358(JP,A)
【文献】特開2015-219029(JP,A)
【文献】特開2011-093504(JP,A)
【文献】特開2010-076622(JP,A)
【文献】国際公開第2015/132838(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記実行装置は、取得処理、起動検知処理、応力変数記憶処理、および疲労変数算出処理を実行し、
前記取得処理は、応力変数の値を繰り返し取得する処理であり、
前記応力変数は、駆動源からの動力が伝達される動力伝達装置の応力を示す変数であり、
前記起動検知処理は、前記駆動源の起動を検知する処理であり、
前記応力変数記憶処理は、前記取得処理によって都度取得される応力変数の値のそれぞれを前記記憶装置に記憶する処理であり、
前記疲労変数算出処理は、前記記憶装置に新たに記憶された前記応力変数の時系列データが所定量に達する都度、前記所定量の前記時系列データに基づき、疲労変数の値を算出する処理であり、
前記疲労変数は、前記動力伝達装置の疲労を示す変数であり、
前記応力変数記憶処理は、前記所定量以上となる都度、および前記起動検知処理によって前記起動が検知される都度、すでに前記応力変数の値が記憶された記憶領域への新たな前記応力変数の値の上書きを開始する処理を含む疲労推定装置。
【請求項2】
前記実行装置は、前記駆動源の停止を検知する停止検知処理を実行し、
前記疲労変数算出処理は、前記停止検知処理によって停止が検知される場合、前記停止が検知されるまでに前記記憶装置に新たに記憶された前記時系列データに基づき、前記疲労変数の値を算出する処理を含む請求項1記載の疲労推定装置。
【請求項3】
前記疲労変数算出処理は、前記応力変数の値の極大値および極小値に基づき前記疲労変数の値を算出する処理である請求項1または2記載の疲労推定装置。
【請求項4】
前記実行装置は、疲労変数記憶処理を実行し、
前記疲労変数記憶処理は、前記疲労変数算出処理によって算出された前記疲労変数の値を、該疲労変数の値の大きさに応じて分類し、各大きさに分類された回数をカウントすることによって、前記カウントされた値を前記記憶装置に記憶する処理である請求項1~3のいずれか1項に記載の疲労推定装置。
【請求項5】
前記駆動源は、車両の推力を生成する装置であり、
前記動力伝達装置は、前記駆動源の動力を前記車両の駆動輪に伝達する装置である請求項1~4のいずれか1項に記載の疲労推定装置。
【請求項6】
前記起動検知処理は、前記車両の発進を検知する処理であり、
前記取得処理は、スタンバイ検知処理と、規定量記憶処理と、応力変数算出処理と、を含み、
前記スタンバイ検知処理は、前記車両のシフトポジションが走行レンジである場合にスタンバイ状態であると判定する処理であり、
前記規定量記憶処理は、前記応力変数の値または応力相関変数の値の2つのうちのいずれか1つに関する都度の値のそれぞれを前記記憶装置に記憶し、記憶したデータ量が規定量に達するたびに、前記都度の値がすでに記憶された記憶領域への新たな前記都度の値の上書きを開始する処理であり、
前記応力相関変数は、前記応力変数の値を算出するための変数であって且つ、前記駆動源の状態を示す変数であり、
前記応力変数算出処理は、前記応力相関変数の値に基づき前記応力変数の値を算出する処理であり、
前記起動が検知される場合に前記記憶領域に上書きされるデータには、前記起動が検知される前に前記規定量記憶処理によって記憶された前記1つに関する値に基づくデータが含まれ、
前記規定量は、前記所定量よりも小さい請求項5記載の疲労推定装置。
【請求項7】
前記実行装置は、前記疲労変数算出処理による前記疲労変数の値の算出結果に応じたデータを前記車両の外部に出力する出力処理を実行する請求項5または6記載の疲労推定装置。
【請求項8】
請求項7記載の疲労推定装置と、
前記疲労変数の値に基づき、前記動力伝達装置の余寿命を推定する余寿命推定装置と、を備える余寿命推定システム。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の疲労推定装置における前記各処理を実行するステップをコンピュータによって実行させる疲労推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疲労推定装置、余寿命推定システムおよび疲労推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、車両の疲労の診断対象の疲労損傷度を算出する装置が記載されている。この装置は、診断対象に加わるひずみを検出するセンサの検出値を累積的に記憶し、記憶した検出値に基づき、診断対象の疲労損傷度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-79920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ひずみの極大値が大きいほど、疲労損傷度が大きくなりやすい。そのため、ひずみの極大値の周辺におけるひずみの大きさの推移を十分に記憶できない場合には、疲労損傷度の算出精度が低下するおそれがある。一方、上記装置のように検出値を累積的に記憶する場合、記憶装置の記憶領域が有限であることから、検出値の時系列データに断絶が生じる。そしてこれにより、極大値の周辺におけるひずみの大きさの推移を十分に記憶することができず、疲労損傷度の算出精度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.実行装置と、記憶装置と、を備え、前記実行装置は、取得処理、起動検知処理、応力変数記憶処理、疲労変数算出処理、および疲労変数記憶処理を実行し、前記取得処理は、応力変数の値を繰り返し取得する処理であり、前記応力変数は、駆動源からの動力が伝達される動力伝達装置の応力を示す変数であり、前記起動検知処理は、前記駆動源の起動を検知する処理であり、前記応力変数記憶処理は、前記取得処理によって都度取得される応力変数の値のそれぞれを前記記憶装置に記憶する処理であり、前記疲労変数算出処理は、前記記憶装置に新たに記憶された前記応力変数の時系列データが所定量に達する都度、前記所定量の前記時系列データに基づき、疲労変数の値を算出する処理であり、前記疲労変数は、前記動力伝達装置の疲労を示す変数であり、前記疲労変数記憶処理は、前記疲労変数の値に応じた疲労変数データを前記記憶装置に記憶する処理であり、前記応力変数記憶処理は、前記所定量以上となる都度、および前記起動検知処理によって前記起動が検知される都度、すでに前記応力変数の値が記憶された記憶領域への新たな前記応力変数の値の上書きを開始する処理である疲労推定装置である。
【0006】
上記構成では、疲労変数算出処理の入力となる応力変数の値を記憶する記憶領域に記憶されるデータ量が所定量となる都度、同記憶領域のデータが上書きされる。そのため、疲労変数算出処理の入力は、応力変数の値の極大値の付近のデータを余すことなく含んでいるとは限らない。ここで、上記構成では、起動が検知される都度、疲労変数算出処理の入力となる応力変数の値を記憶する記憶領域に記憶されているデータ量を上書きする。これにより、同記憶領域には、起動時からの応力変数の値を示す十分な量のデータを記憶することができる。特に、起動時の応力変数の値は大きくなりやすいことから、動力伝達装置の疲労が顕著となるときに、疲労変数の値を高精度に算出できる。そのため、上記構成では、起動時からの応力変数の値を示すデータが少量となりうる場合と比較して、疲労変数の値を、動力伝達装置の劣化度合いを把握するうえでより高精度に算出できる。
【0007】
2.前記実行装置は、前記駆動源の停止を検知する停止検知処理を実行し、前記疲労変数算出処理は、前記停止検知処理によって停止が検知される場合、前記停止が検知されるまでに前記記憶装置に新たに記憶された前記時系列データに基づき、前記疲労変数の値を算出する処理を含む上記1記載の疲労推定装置である。
【0008】
上記構成では、停止が検知される場合に、疲労変数の値を算出することから、停止後の起動時に記憶領域を上書きする場合であっても、停止前に記憶領域に記憶されたデータを用いて疲労変数の値を算出できる。
【0009】
3.前記疲労変数算出処理は、前記応力変数の値の極大値および極小値に基づき前記疲労変数の値を算出する処理である上記1または2記載の疲労推定装置である。
上記疲労変数算出処理は、応力変数の値の極大値および極小値に基づき疲労変数の値を算出する。ここで、応力変数の値を記憶する記憶領域の上書きがなされる場合、極大値または極小値を精度良く特定できないことがある。特に、起動時のように極大値が大きくなる傾向があるときに、極大値および極小値を精度良く特定できない場合には、疲労変数の値を高精度に算出できないおそれがある。そのため、起動を検知する時点で記憶領域の上書きを開始することが特に有効である。
【0010】
4.前記疲労変数記憶処理は、前記疲労変数算出処理によって算出された前記疲労変数の値を、該疲労変数の値の大きさに応じて分類し、各大きさに分類された回数をカウントすることによって、前記カウントされた値を前記疲労変数データとして前記記憶装置に記憶する処理である上記1~3のいずれか1項に記載の疲労推定装置である。
【0011】
上記構成では、疲労変数の大きさ毎に分類された回数を記憶することにより、少ないデータ記憶容量によって、動力伝達装置の疲労度合いに関する精度の良い情報を記憶できる。
【0012】
5.前記駆動源は、車両の推力を生成する装置であり、前記動力伝達装置は、前記駆動源の動力を前記車両の駆動輪に伝達する装置である上記1~4のいずれか1つに記載の疲労推定装置である。
【0013】
車両の推力を生成する装置の起動時には、車両を静止状態から走行状態に移行させるために動力伝達装置に加わる応力が特に大きくなる。そのため、起動時付近の応力変数の値を途切れなく利用して疲労変数の値を算出することが、動力伝達装置の劣化度合いを高精度に把握するうえで特に有効である。
【0014】
6.前記起動検知処理は、前記車両の発進を検知する処理であり、前記取得処理は、スタンバイ検知処理と、規定量記憶処理と、応力変数算出処理と、を含み、前記スタンバイ検知処理は、前記車両のシフトポジションが走行レンジである場合にスタンバイ状態であると判定する処理であり、前記規定量記憶処理は、前記応力変数の値または応力相関変数の値の2つのうちのいずれか1つに関する都度の値のそれぞれを前記記憶装置に記憶し、記憶したデータ量が規定量に達する都度、前記都度の値がすでに記憶された記憶領域への新たな前記都度の値の上書きを開始する処理であり、前記応力相関変数は、前記応力変数の値を算出するための変数であって且つ、前記駆動源の状態を示す変数であり、前記応力変数算出処理は、前記応力相関変数の値に基づき前記応力変数の値を算出する処理であり、前記起動が検知される場合に前記記憶領域に上書きされるデータには、前記起動が検知される前に前記規定量記憶処理によって記憶された前記1つに関する値に基づくデータが含まれ、前記規定量は、前記所定量よりも小さい上記5記載の疲労推定装置である。
【0015】
上記構成では、スタンバイ状態が検知されると、記憶装置に応力変数の値、または応力変数の値を算出するために用いられる応力相関変数の値、の2つのうちの1つの値が記憶される。そして、車両の発進が検知されると、発進の検知前に記憶された上記1つの値に応じた応力変数の値が記憶領域に上書きされる。そのため、発進付近の応力変数の値の時系列データを、記憶領域に詳細に記憶することができる。
【0016】
7.前記実行装置は、前記疲労変数算出処理による前記疲労変数の値の算出結果に応じたデータを前記車両の外部に出力する出力処理を実行する上記5または6記載の疲労推定装置である。
【0017】
上記構成では、疲労変数の値の算出結果に応じたデータを車両の外部に出力することにより、車両の外部において、同データに基づき動力伝達装置の余寿命等を把握し、その情報を活用できる。
【0018】
8.上記7記載の疲労推定装置と、前記疲労変数の値に基づき、前記動力伝達装置の余寿命を推定する余寿命推定装置と、を備える余寿命推定システムである。
余寿命変数の値は、疲労変数の値と比較して動力伝達装置の状態を把握しやすいことから、上記構成によれば、余寿命変数の値を算出することにより、動力伝達装置の状態を容易に把握できる。
【0019】
9.上記1~7のいずれか1つに記載の疲労推定装置における前記各処理を実行するステップをコンピュータによって実行させる疲労推定方法である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態にかかる余寿命推定システムの構成を示すブロック図。
図2】同実施形態にかかる疲労推定装置が実行する処理の手順を示す流れ図。
図3】同実施形態にかかる分類データを例示する図。
図4】(a)および(b)は、同実施形態にかかる余寿命推定システムが実行する処理の手順を示す流れ図。
図5】(a)および(b)は、同実施形態の効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる余寿命推定システムを示す。図1に示すように、車両VCは、車両VCの推力生成装置としてのモータジェネレータ10を備えている。モータジェネレータ10は、動力伝達装置12を介して駆動輪14に機械的に連結されている。動力伝達装置12は、ディファレンシャルギアを備えている。モータジェネレータ10の端子には、インバータ16の出力電圧が印加される。
【0022】
疲労推定装置20は、動力伝達装置12の疲労の度合いを推定する処理を実行する装置である。なお、疲労推定装置20は、車両VCを制御対象としてその制御量を制御する制御装置によって構成されてもよい。疲労推定装置20は、疲労の度合いを推定する際、電流センサ30によって検出されるインバータ16の出力電流である電流iu,iv,iwを参照する。また、疲労推定装置20は、モータジェネレータ10の回転角を検出する回転角センサ32の出力信号Smを参照する。また、疲労推定装置20は、シフトポジションセンサ34によって検出されるシフト位置を示す変数であるシフト変数Vsftを参照する。シフト変数Vsftは、ブレーキ、パーキング、ドライブ、リバース等を示す。
【0023】
疲労推定装置20は、CPU22、ROM24、RAM26、記憶装置27、および外部インターフェース28を備えており、それらがローカルネットワーク29によって通信可能とされている。記憶装置27は、電気的に書き換え可能な不揮発性の装置である。外部インターフェース28は、無線通信および有線通信の2つのうちの少なくとも一方により、疲労推定装置20の外部にデータを出力する出力装置である。
【0024】
余寿命推定装置50は、車両VCからのデータを取り込み、取り込んだデータに基づき動力伝達装置12の余寿命を推定する装置である。余寿命推定装置50は、CPU52、ROM54、記憶装置57および外部インターフェース58を備えており、それらがローカルネットワーク59によって通信可能となっている。外部インターフェース58は、無線通信および有線通信の2つのうちの少なくとも一方により、余寿命推定装置50の外部からのデータが入力される入力装置である。
【0025】
図2に、疲労推定装置20が実行する処理の手順を示す。図2に示す処理は、ROM24に記憶されたプログラムをCPU22がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって各処理のステップ番号を表現する。
【0026】
図2に示す一連の処理において、CPU22は、まず走行レンジであるか否かを判定する(S10)。CPU22は、シフト変数Vsftの値が、パーキングおよびニュートラルのいずれかを示す値ではない場合に、走行レンジであると判定する。CPU22は、走行レンジであると判定する場合(S10:YES)、dq軸の電流id,iqをサンプリングする(S12)。この処理は、電流iu,iv,iwをサンプリングし、サンプリングした値をdq変換する処理を含む。次にCPU22は、新たにサンプリングされた電流id,iqによって、図1に示すROM24の一時保存領域26aに記憶されているデータを更新する(S14)。ここで、CPU22は、一時保存領域26aの予め定められたアドレスに従って、電流id,iqの時系列データを順次記憶する。そして、CPU22は、S14の処理によるデータの更新量が規定量に達したか否かを判定する(S16)。規定量は、一時保存領域26aに保存可能なデータ量である。したがって、規定量は、上述の予め定められたアドレスの最初から最後までデータを更新した時点の更新量と一致する。CPU22は、規定量に達したと判定する場合(S16:YES)、一時保存領域26aの更新アドレスを初期化する(S18)。これにより、次回のS14の処理においては、上述の予め定められたアドレスのうちの最初のアドレスのデータが更新されることとなる。
【0027】
CPU22は、S18の処理が完了する場合と、S16の処理において否定判定する場合と、には、フラグFが「1」であるか否かを判定する(S20)。フラグFは、車両VCが走行状態の場合に「1」となり、停止状態の場合に「0」となる。CPU22は、フラグFが「0」であると判定する場合(S20:NO)、車両VCが発進したか否かを判定する(S22)。CPU22は、モータジェネレータ10の回転速度Nmが発進判定値Nstart以上となる場合に、車両VCが発進したと判定する。回転速度Nmは、CPU22により、出力信号Smを入力として算出される。
【0028】
CPU22は、発進したと判定する場合(S22:YES)、フラグFに「1」を代入する(S24)。次にCPU22は、一時保存領域26aに記憶されている電流id,iqの組のそれぞれから、モータジェネレータ10のトルクTrqを算出する(S26)。次にCPU22は、算出したトルクTrqによって、図1に示すRAM26の収録領域26bに記憶されたデータを更新する(S28)。ここで、CPU22は、収録領域26bの予め定められたアドレスに従って、トルクTrqの時系列データを順次記憶する。
【0029】
そして、CPU22は、S28の処理によるデータの更新量が所定量に達したか否かを判定する(S30)。所定量は、収録領域26bに記憶可能なデータ量である。したがって、所定量は、収録領域26bにおける予め定められたアドレスの最初から最後までデータを更新した際の更新量に一致する。所定量は、上記規定量よりも大きい量となっている。CPU22は、所定量に達したと判定する場合(S30:YES)、収録領域26bの更新アドレスを初期化する(S32)。これにより、次回のS28の処理においては、収録領域26bにおける予め定められたアドレスのうちの最初のアドレスのデータが更新されることとなる。
【0030】
一方、CPU22は、フラグFが「1」であると判定する場合(S20:YES)、車両VCが停止したか否かを判定する(S46)。CPU22は、モータジェネレータ10の回転速度Nmが停止判定値Nstop以下となる場合に、車両VCが停止したと判定する。停止判定値Nstopは、発進判定値Nstartよりも小さい値に設定されている。
【0031】
CPU22は、停止していないと判定する場合(S46:NO)、S26の処理に移行する。なお、この場合のS26の処理においては、CPU22は、S14の処理において新たに更新された電流id,iqの1つの組から1つのトルクTrqを算出する。そしてその場合、S28の処理において新たに更新されるデータも、1つのトルクTrqのデータのみとなる。
【0032】
一方、CPU22は、停止したと判定する場合(S46:YES)、フラグFに「0」を代入する(S48)。そしてCPU22は、S32の処理に移行する。
CPU22は、S32の処理を完了する場合、収録領域26bに記憶されたトルクTrqの時系列データに基づき、レインフロー処理を実行する(S34)。そしてCPU22は、レインフロー処理によって算出される疲労変数Vfの値を、その大きさによって分類して、図1に示す記憶装置27に記憶する(S36)。ここで、疲労変数Vfは、動力伝達装置12の劣化度合いを示す変数である。劣化度合いは、レインフロー処理によって把握される応力のヒステリシスループに応じて定量化される。疲労変数Vfの分類とは、疲労変数Vfの大きさに応じて予め分割された複数の領域のいずれに該当するかを定める行為である。記憶装置27には、上記複数の領域のそれぞれに該当した回数を示すデータである分類データ27aが記憶されている。
【0033】
図3に、分類データ27aを例示する。図3には、疲労変数Vfの値の大きさが「0~20」の領域、「20~40」の領域、「40~60」の領域等で、疲労変数Vfの大きさが分類されることを例示している。
【0034】
CPU22は、S36の処理において、S34の処理によって新たに算出された疲労変数Vfの値のそれぞれを分類して、各領域に該当する値の数をカウントする。そして、CPU22は、カウントした値によって、記憶装置27に記憶されている分類データ27aを更新する。
【0035】
なお、CPU22は、S36の処理を完了する場合には、図2に示す一連の処理を一旦終了する。
図4に、分類データ27aを用いた余寿命変数Vrlの算出処理の手順を示す。図4(a)に示す処理は、疲労推定装置20のROM24に記憶されたプログラムをCPU22がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。図4(b)に示す処理は、余寿命推定装置50のROM54に記憶されたプログラムをCPU52がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。
【0036】
図4(a)に示す一連の処理において、CPU22は、まず分類データ27aを出力する要求があるか否かを判定する(S40)。たとえば外部インターフェース28が無線通信によって分類データ27aを出力する装置を備える場合、S42の処理が実行されてから所定の長さを有する時間が経過したことを、要求が生じたとしてもよい。また、たとえば、外部インターフェース28が有線通信によって分類データ27aを出力する装置を備える場合、外部インターフェース28に車両VCの外部の部材が接続されたことを、要求が生じたとしてもよい。
【0037】
CPU22は、要求が生じたと判定する場合(S40:YES)、外部インターフェース28を介して分類データ27aを外部に出力する(S42)。なお、CPU22は、S42の処理を完了する場合と、S40の処理において否定判定する場合と、には、図4(a)に示す一連の処理を一旦終了する。
【0038】
これに対し図4(b)に示す一連の処理において、CPU52は、分類データ27aを取得する(S50)。ここで、たとえばS42の処理において分類データ27aが余寿命推定装置50へと無線通信にて送信されたものである場合、S50の処理は、送信された分類データ27aを受信する処理とすればよい。また、たとえばS42の処理において分類データ27aが有線通信にて出力されたものである場合、分類データ27aを取り込んだ装置から無線通信にて送信された分類データ27aを受信する処理としてもよい。またこれに代えて、出力された分類データ27aを記憶する記憶媒体が外部インターフェース58に接続されることにより、分類データ27aを有線通信にて取得する処理としてもよい。
【0039】
次にCPU52は、分類データ27aに基づき、動力伝達装置12の部品毎に、余寿命変数Vrlの値を算出する(S52)。余寿命変数Vrlは、余寿命の推定対象の余寿命を示す変数である。余寿命変数は、劣化度合いの上限値から現在の劣化度合いを減算した値として定量化される。劣化度合いは、CPU52により、分類データ27aを入力として算出される。
【0040】
具体的には、たとえば、次のようにすればよい。すなわち、CPU52は、分類データ27aにおける各領域における回数によって、劣化度合いを示す変数としての分別損傷度を算出する。そして、CPU52は、複数の領域のそれぞれの分別損傷度の和である累積疲労損傷度を算出する。この累積疲労損傷度と「1」との差が余寿命に比例する。そのため、CPU52は、「1」から累積疲労損傷度を減算した値に、予め定められた寿命を示す値を乗算することによって、余寿命変数Vrlの値を算出する。
【0041】
ここで、各領域における回数と分別損傷度との関係は、動力伝達装置12を構成する部品毎に各別に設定されている。これは、疲労変数Vfの大きさに対する疲労の度合いが部品毎に異なるためである。
【0042】
次にCPU52は、図1に示す記憶装置27に余寿命データ57aを記憶する(S54)。なお、すでに対象とする動力伝達装置12の余寿命データ57aが記憶装置27に記憶されている場合には、S42の処理は、すでに記憶されている余寿命データ57aを、S50の処理によって新たに生成されたデータに更新する処理となる。余寿命データ57aは、部品毎の余寿命変数Vrlの値を示す変数である。
【0043】
なお、CPU52は、S54の処理を完了する場合には、図4(b)に示す一連の処理を一旦終了する。
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
【0044】
CPU22は、インバータ16の出力する電流id,iqを周期的にサンプリングし、RAM26の一時保存領域26aに、予め定められた順序に従って順次記憶する。一時保存領域26aのデータ容量は、規定量であることから、CPU22は、一時保存領域26aに記憶される電流id,iqのデータ量が規定量となる都度、一時保存領域26aのうちの次に電流id,iqを記憶すべきアドレスを初期化する。これにより、一時保存領域26aには、規定量のデータが書きこまれる都度、上書きがなされることとなる。
【0045】
CPU22は、モータジェネレータ10の回転速度Nmが発進判定値Nstart以上となることにより、発進を検知する場合、その時点で一時保存領域26aに記憶されていた電流id,iqのそれぞれからトルクTrqを算出し、収録領域26bに記憶する。これにより、電流id,iqの規定量のデータから算出されたトルクTrqの時系列データが、収録領域26bに記憶される。さらに、CPU22は、車両VCの発進後、周期的にサンプリングされる電流id,iqに基づきトルクTrqを算出し、収録領域26bに記憶する。これにより、収録領域26bには、車両VCの発進直前からのトルクTrqの時系列データが記憶されることとなる。
【0046】
そして、CPU22は、収録領域26bに記憶されたデータ量が所定量に達する場合、収録領域26bに記憶されているトルクTrqの時系列データを用いたレインフロー処理によって、疲労変数Vfの値を算出する。
【0047】
ここで、動力伝達装置12に加わる応力は、車両VCの発進時に特に大きくなる傾向がある。その理由の1つは、駆動輪14と路面との摩擦係数は、静止摩擦係数の方が動摩擦係数よりも大きいためである。ここで、動力伝達装置12の劣化は、応力が大きい場合に顕著となる。特に、応力の大きさが大きい場合、劣化は指数関数的に促進される。
【0048】
一方、レインフロー処理によれば、応力の大きさは、応力と正の相関を有するトルクTrqの時系列データの極大値および極小値の差に応じて把握される。したがって、発進前後におけるトルクTrqの時系列データを途切れなく用いることによって、発進時の応力を精度良く把握できる。
【0049】
図5(a)に、本実施形態にかかるトルクTrqの時系列データを例示する。図5(a)において、CPU22は、時刻t2において発進を検知し、それ以前の時刻t1以降のトルクTrqの時系列データTrqを収録領域26bに収録する。そして、時刻t3において車両の停止を検知すると、時刻t1~t3までのトルクTrqの時系列データを用いたレインフロー処理によって、疲労変数Vfの値を算出する。また、CPU22は、時刻t5に発進を検知し、それ以前の時刻t4以降のトルクTrqの時系列データTrqを収録領域26bに収録する。そして、時刻t6において車両VCの停止を検知すると、時刻t4~t6までのトルクTrqの時系列データを用いたレインフロー処理によって、疲労変数Vfの値を算出する。
【0050】
ここで、時刻t4~t6の期間におけるトルクTrqの時系列データに基づくレインフロー処理は、以下となる。
すなわち、時系列データの中の最小値となる点P1、最大値となる点P2、最小値となる点P3を抽出し、点P1を始点とし、点P3を終点とする。
【0051】
図5の左側を上方として、点P1から雨だれが流れる場合を考える。点P2まで流れた雨だれは、点P2の次の極小値である点P3が点P1よりも大きいため、点P3へと流れ続ける。次に、点P3まで流れた雨だれは、点P3の次の極大値P4が点P2よりも小さいため、図中水平方向に流れ続け、点P3aに到達すると、点P5まで流れる。これにより、点P1,P3,P3a,P5が1つのひずみ幅を定めることとなる。なお、レインフロー処理によって、時刻t4~t6において定められるひずみ幅としては、他にもあるが、上記のものが最大となる。それ以外のひずみ幅については、以下の議論に影響しないため、その説明を省略する。
【0052】
これに対し、図5(b)に、発進の検知および停止の検知を収録領域26bへのトルクTrqの時系列データの記録の開始および停止に利用しない場合を例示する。なお、図5(b)と図5(a)とのトルク波形は同一である。
【0053】
図5(b)には、時刻11以降のトルクTrqの時系列データを収録領域26bに収録し、時刻t12において、収録領域26bに収録されたデータ量が所定量に達する例を示す。その場合、図5(a)に記載した時刻t4~t6における連続的なトルクTrqの時系列データを収録できない。そのため、点P1,P2,P6によって1つのひずみ幅を定めることとなる。そのため、時刻t4の直後における発進に起因して動力伝達装置12に加わる応力の最大値を過小評価してしまう。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
(1)CPU22は、車両VCの停止が検知される場合、収録領域26bに記憶されたデータ量が所定量に満たなくても収録領域26bにおいて次にデータを記録すべきアドレスを初期化した。そして、CPU22は、車両VCの停止が検知される場合、収録領域26bに記憶されたトルクTrqの時系列データに基づき、疲労変数Vfの値を算出した。これにより、車両VCの停止後の発進時に収録領域26bの書き込みの開始時のアドレスからトルクTrqの時系列データを記憶しつつも、停止するまでに加わった応力を用いて疲労変数Vfの値を算出できる。ここで、車両VCの停止時には、動力伝達装置12に加わる応力が小さい傾向にある。そのため、本実施形態によれば、停止するまでに加わった応力と、発進後の応力とを漏れなく算出することができる。したがって、疲労変数Vfの値を高精度に算出できる。
【0055】
(2)トルクTrqの時系列データを用いたレインフロー処理によって疲労変数Vfの値を算出した。レインフロー処理は、隣接する極大値の大小と、隣接する極小値の大小とによって、1つのひずみ幅を算出するために用いる時系列データのデータ量が変化する。そして、時系列データが途中で切れる場合、本来なら1つのひずみ幅を算出するうえで用いるべき時系列データを用いることができないおそれがある。そのため、車両VCの発進直前から収録領域26bのデータ容量の上限まで時系列データを記憶可能な上記設定の利用価値が特に大きい。
【0056】
(3)CPU22は、疲労変数Vfの大きさ毎に分類された回数を分類データ27aとして記憶した。これにより、少ないデータ記憶容量によって、疲労変数Vfの値に関する情報を記憶できる。
【0057】
(4)疲労変数Vfの値の算出対象を、車両VCの動力伝達装置12とした。車両VCの推力を生成する装置の発進時には、車両VCを静止状態から走行状態に移行させることから、動力伝達装置12に加わる応力が特に大きくなる。そのため、発進時付近のトルクTrqの時系列データを途切れなく利用して疲労変数Vfの値を算出することが、疲労変数Vfの値を高精度に算出するうえで特に有効である。
【0058】
(5)CPU22は、車両VCの発進を検知した時点で、一時保存領域26aに記憶されていた電流id,iqの全てを用いてトルクTrqの時系列データを生成して収録領域26bに記憶した。これにより、収録領域26bに、車両VCの発進が検知される前からのトルクTrqの時系列データを記憶することができる。
【0059】
特に、本実施形態では、モータジェネレータ10の回転速度Nmに基づき発進を検知していることから、発進が検知された時点よりも前に、動力伝達装置12に加わる応力が増加している。そのため、発進が検知される前からの時系列データを記憶することにより、動力伝達装置12に加わる応力が上昇する期間におけるトルクTrqの時系列データを収録領域26bに記憶できる。
【0060】
(7)CPU22は、分類データ27aを、車両VCの外部に出力した。これにより、余寿命推定装置50によって、余寿命変数Vrlの値を算出できる。そして、余寿命変数Vrlの値から得られる余寿命に関する情報を活用することができる。すなわち、たとえば余寿命推定装置50を車両VCの製造業者が所持するか、製造業者にデータを提供する業者が所持する場合、製造業者が、新たな車両の開発等において余寿命データ57aを活用できる。またたとえば、余寿命推定装置50が、車両の部品のリユースをする業者または同業者に情報を提供する業者が所持する場合、リユースをする業者が余寿命データ57aを活用できる。
【0061】
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1,5]実行装置は、CPU22およびROM24に対応する。記憶装置は、RAM26に対応する。取得処理は、S26の処理に対応する。応力相関センサは、電流センサ30に対応する。駆動源は、モータジェネレータ10に対応する。動力伝達装置は、動力伝達装置12に対応する。起動検知処理は、S22の処理に対応する。応力変数記憶処理は、S28の処理に対応する。応力変数は、トルクTrqに対応する。疲労変数算出処理は、S34の処理に対応する。疲労変数は、疲労変数Vfに対応する。[2]停止検知処理は、S46の処理に対応する。[3]S34の処理において、レインフロー法により疲労変数Vfの値が算出されることに対応する。[4]疲労変数記憶処理は、S36の処理に対応する。[6]スタンバイ検知処理は、S10の処理に対応する。規定量記憶処理は、S14~S18の処理に対応する。応力変数算出処理は、S26の処理に対応する。[7]出力処理は、S42の処理に対応する[8]余寿命推定システムは、疲労推定装置20および余寿命推定装置50に対応する。[9]コンピュータは、CPU22に対応する。
【0062】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0063】
「起動検知処理について」
・上記実施形態では、S22の処理において、モータジェネレータ10の回転速度Nmが発進判定値Nstart以上となる場合に発進したと判定したが、これに限らない。換言すれば、回転速度Nmが発進判定値Nstart以上となる場合に、駆動源としてのモータジェネレータ10の起動を検知したが、これに限らない。たとえば、モータジェネレータ10に対するトルクの指令値の絶対値がゼロからゼロよりも大きい値に切り替わる場合に、モータジェネレータ10の起動を検知してもよい。
【0064】
「規定量記憶処理について」
・上記実施形態では、S12の処理において、電流id,iqを記憶したが、これに限らない。たとえば、同電流から算出されるトルクTrqであってもよい。
【0065】
・一時保存領域26aと収録領域26bとが別の領域であることは必須ではない。たとえば、収録領域26bの一部を、フラグFが「0」である場合に、一時保存領域26aとして利用してもよい。その場合、フラグFが「1」の場合には、S14の処理は行わない。
【0066】
「応力変数記憶処理について」
・上記実施形態では、S22の処理において肯定判定される場合、それ以前にS14の処理において記憶されたデータに基づくトルクTrqを算出して、収録領域26bに記憶したが、これに限らない。たとえば「起動検知処理について」の欄に記載したように、モータジェネレータ10に対するトルクの指令値がゼロよりも大きくなる時点を検知する場合、その時点からのトルクTrqを記憶してもよい。
【0067】
・フラグFが「1」の場合、電流id,iqのサンプリング値を一時保存領域26aに保存することなく、同電流id,iqから算出されるトルクTrqを収録領域26bに記憶してもよい。
【0068】
「応力相関変数について」
・たとえば「車両の推力を生成する装置について」の欄に記載したように、内燃機関が車両の推力を生成する装置である場合、応力相関変数は、燃料噴射弁からの噴射量等とすればよい。また、推力を生成する装置が内燃機関およびモータジェネレータの場合には、応力相関変数を、内燃機関の噴射量とモータジェネレータを流れる電流との組とすればよい。
【0069】
・応力相関変数としては、モータジェネレータの電流などの駆動源の状態を示す変数に限らない。たとえば、駆動輪に加わるトルクを推定するための変数であってもよい。これは、路面の摩擦係数、車速および車両の加速度などの組によって構成される。
【0070】
「疲労変数算出処理について」
・上記実施形態では、疲労変数Vfを、分別損傷度を算出するための変数としたが、これに限らず、たとえば、分別損傷度自体としてもよい。
【0071】
・上記実施形態では、レインフロー法を用いて疲労変数の値を算出したが、これに限らない。たとえば、応力またはひずみの上昇レンジと下降レンジとの等しい対を計数するレンジペア法を用いてもよい。またたとえば、応力またはひずみの変化幅を計数するレンジ法を用いてもよい。またたとえば、応力またはひずみの最大値および最小値を計数するピーク法を用いてもよい。
【0072】
「停止検知処理について」
・上記実施形態では、モータジェネレータ10の回転速度Nmが停止判定値Nstop以下となることで、停止と判定したが、これに限らない。たとえば回転速度Nmが停止判定値Nstop以下となることと、モータジェネレータ10に対するトルクの指令値がゼロとなることとの論理積が真となることで、停止と判定してもよい。
【0073】
「余寿命変数について」
・上記実施形態では、余寿命変数Vrlを、余寿命が長いほど大きい値となる変数としたが、これに限らない。たとえば余寿命が短いほど大きい値となる変数としてもよい。換言すれば、疲労劣化度合いが大きい場合に小さい場合よりも大きい値となる変数としてもよい。
【0074】
「出力処理について」
・車両VCの外部に出力されるデータである疲労変数データとしては、分類データ27aに限らない。たとえば、S34の処理を実行する都度、S40の処理において肯定判定されることとし、1回のS34の処理で算出された1または複数の疲労変数Vfの値を外部に送信することとしてもよい。
【0075】
・たとえば、S52の処理を疲労推定装置20によって実行するのであれば、S40,S42の処理を削除してもよい。換言すれば、出力処理は必須ではない。
「余寿命変数の用途について」
・動力伝達装置12の余寿命変数の用途としては、上記実施形態において例示したものに限らない。たとえば車両VCの配給業者が車両VCの状態を把握するために利用してもよい。
【0076】
「車両の推力を生成する装置について」
・上記実施形態では、車両の推力を生成する装置として、モータジェネレータ10を例示したが、これに限らない。たとえば、内燃機関であってもよい。また、たとえば車両をハイブリッド車とし、推力を生成する装置を、モータジェネレータおよび内燃機関としてもよい。その場合、動力伝達装置に加わる応力を算出するために用いられる動力伝達装置に入力されるトルクを、駆動輪に伝達されるトルクとすればよい。
【0077】
「駆動源について」
・駆動源としては、車両の推力を生成する装置に限らない。たとえば、工作機械を駆動する電動機であってもよい。
【0078】
「実行装置について」
・実行装置としては、CPU22とROM24とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、実行装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【0079】
「記憶装置について」
・上記実施形態では、電流id,iqおよびトルクTrqをRAM26に記憶したが、これに限らない。たとえば記憶装置27に記憶してもよい。
【0080】
・一時保存領域26aと、収録領域26bとが、同一の記憶装置の異なる記憶領域であることは必須ではない。
「コンピュータについて」
図2に示す処理を単一のコンピュータによって実行することは必須ではない。たとえば、S36の処理を、余寿命推定装置50のCPU52によって実行してもよい。これは、「出力処理について」の欄に記載したように、S34の処理を実行する都度、出力処理を実行する場合などして実現できる。
【0081】
なお、互いに離間した位置に配置される複数のコンピュータの協働で実行する場合であっても、それらコンピュータが、CPUとROMとを備えて、ソフトウェア処理を実行することは必須ではない。それら各コンピュータは、上記「実行装置について」の欄に記載した実行装置の任意の構成であってよい。
【符号の説明】
【0082】
10…モータジェネレータ
12…動力伝達装置
14…駆動輪
16…インバータ
20…疲労推定装置
27…記憶装置
50…余寿命推定装置
59…ローカルネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5