(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】充電装置、バッテリ暖機方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20250121BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250121BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20250121BHJP
H01M 10/667 20140101ALI20250121BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20250121BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20250121BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20250121BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20250121BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20250121BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20250121BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20250121BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20250121BHJP
【FI】
H01M10/633
H02J7/00 P
H02J7/04 L
H01M10/667
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/625
H01M10/615
H01M10/613
B60L53/14
B60L58/27
B60L3/00 S
(21)【出願番号】P 2021085386
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 聡
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-231807(JP,A)
【文献】特開2016-146252(JP,A)
【文献】特開2001-333573(JP,A)
【文献】特開2010-272289(JP,A)
【文献】特開2013-119259(JP,A)
【文献】特開2019-004547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
H02J 7/00
H02J 7/04
H01M 10/667
H01M 10/6568
H01M 10/6556
H01M 10/625
H01M 10/615
H01M 10/613
B60L 53/14
B60L 58/27
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源と接続し、給電される電力を変換して車両のバッテリを充電する充電装置であって、
前記充電装置の熱をクーラント液により前記バッテリに伝熱する伝熱構造と、
前記充電装置に流れる電流を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記バッテリの温度を監視する第1処理と、
前記バッテリの温度が所定の閾値以下となる場合、前記充電装置に流れる電流を増加させる第2処理と、
を実行する
ことを特徴とする充電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の充電装置であって、
電力の力率を調整するPFC回路と、
前記PFC回路の出力側に接続し、前記PFC回路の出力電圧を前記バッテリの充電電圧に変換するDCDCコンバータと、
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2処理において、前記PFC回路の出力電圧を低下させることにより前記電流を増加させる
ことを特徴とする充電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の充電装置であって、
前記制御装置は、
前記第1処理において、
さらに前記クーラント液の温度及び前記系統電源の電圧を監視し、
前記第2処理において、
前記クーラント液の温度及び前記系統電源の電圧に応じて前記PFC回路の出力電圧を定める
ことを特徴とする充電装置。
【請求項4】
系統電源と接続する充電装置により車両のバッテリを充電中に、前記充電装置の熱をクーラント液により前記バッテリに伝熱させて前記バッテリを温めるバッテリ暖機方法であって、
前記バッテリの温度を監視する第1ステップと、
前記バッテリの温度が所定の閾値以下となる場合、前記充電装置に流れる電流を増加させる第2ステップと、
を含むことを特徴とするバッテリ暖機方法。
【請求項5】
請求項4に記載のバッテリ暖機方法であって、
前記充電装置は、
電力の力率を調整するPFC回路と、
前記PFC回路の出力側に接続し、前記PFC回路の出力電圧を前記バッテリの充電電圧に変換するDCDCコンバータと、
を備え、
前記第2ステップは、
前記PFC回路の出力電圧を低下させることにより前記電流を増加させることを含む
ことを特徴とするバッテリ暖機方法。
【請求項6】
請求項5に記載のバッテリ暖機方法であって、
前記第1ステップは、
さらに前記クーラント液の温度及び前記系統電源の電圧を監視することを含み、
前記第2ステップは、
前記クーラント液の温度及び前記系統電源の電圧に応じて前記PFC回路の出力電圧を定めることを含む
ことを特徴とするバッテリ暖機方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、系統電源と接続し、給電される電力を変換して車両のバッテリを充電する充電装置、並びに、系統電源と接続する充電装置により車両のバッテリを充電中に、バッテリを暖機するバッテリ暖機方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリは温度が下がると過電圧の増加のため、放電時の電池出力の低下や、充電時の電池容量の低下が起きることが知られている。このため、バッテリの温度が過度に低下しないように、適度にバッテリを温める技術が求められている。
【0003】
特許文献1には、主機電池から電気暖房手段への電力供給を制御することで、バッテリを暖機する電池暖機システムが開示されている。この電池暖機システムは、主機電池から電気暖房手段への電力供給を制御することで主機電池の電池温度を制御する制御装置を備え、制御装置は、電気暖房手段に要求される暖房要求出力に加算される電気暖房出力増加量を、主機電池の電池温度、車室温度、及び主機電池の電池残量に基づいて算出し、暖房要求出力に電気暖房出力増加量を加算した値を電気暖房指令値とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示される技術では、バッテリ(主機電池)の温度が制御されることで、電池出力の低下を抑制することができる。しかしながら、バッテリを温めるためには、バッテリからの電力供給を上げることとなる。従って、充電時に適用すると、充電効率が低下する。このため、充電時の電池容量の低下を抑制する手段としては適当ではない。
【0006】
本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、バッテリの充電時において、バッテリの電力を使用することなくバッテリを温めることが可能な充電装置、並びにバッテリ暖機方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の開示に係る充電装置は、系統電源と接続し、給電される電力を変換して車両のバッテリを充電する充電装置である。この充電装置は、充電装置の熱をクーラント液によりバッテリに伝熱する伝熱構造と、充電装置に流れる電流を制御する制御装置と、を備えている。そして、制御装置は、バッテリの温度を監視する第1処理と、バッテリの温度が所定の閾値以下となる場合、充電装置に流れる電流を増加させる第2処理と、を実行する。
【0008】
第2の開示に係る充電装置は、第1の開示に係る充電装置に対して、さらに以下の特徴を含んでいる。
充電装置は、電力の力率を調整するPFC回路と、PFC回路の出力側に接続し、PFC回路の出力電圧をバッテリの充電電圧に変換するDCDCコンバータと、をさらに備えている。そして、制御装置は、第2処理において、PFC回路の出力電圧を低下させることにより充電装置に流れる電流を増加させる。
【0009】
第3の開示に係る充電装置は、第2の開示に係る充電装置に対して、さらに以下の特徴を含んでいる。
制御装置は、第1処理において、さらにクーラント液の温度及び系統電源の電圧を監視する。また、制御装置は、第2処理において、クーラント液の温度及び系統電源の電圧に応じてPFC回路の出力電圧を定める。
【0010】
第4の開示に係るバッテリ暖機方法は、系統電源と接続する充電装置により車両のバッテリを充電中に、充電装置の熱をクーラント液によりバッテリに熱を伝熱させてバッテリを温めるバッテリ暖機方法である。このバッテリ暖機方法は、バッテリの温度を監視する第1ステップと、バッテリの温度が所定の閾値以下となる場合、充電装置に流れる電流を増加させる第2ステップと、を含んでいる。
【0011】
第5の開示に係るバッテリ暖機方法は、第4の開示に係るバッテリ暖機方法に対して、さらに以下の特徴を含んでいる。
充電装置は、電力の力率を調整するPFC回路と、PFC回路の出力側に接続し、PFC回路の出力電圧をバッテリの充電電圧に変換するDCDCコンバータと、を備えている。そして、第2ステップは、PFC回路の出力電圧を低下させることにより充電装置に流れる電流を増加させることを含んでいる。
【0012】
第6の開示に係るバッテリ暖機方法は、第5の開示に係るバッテリ暖機方法に対して、さらに以下の特徴を含んでいる。
第1ステップは、さらにクーラント液の温度及び系統電源の電圧を監視することを含んでいる。また、第2ステップは、クーラント液の温度及び系統電源の電圧に応じてPFC回路の出力電圧を定めることを含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る充電装置及びバッテリ暖機方法によれば、充電装置の熱はクーラント液によりバッテリに伝熱する。また、バッテリの温度が所定の閾値以下となる場合、充電装置に流れる電流が増加する。これにより、バッテリを充電中に、充電装置の発熱を大きくし、バッテリを温めバッテリの温度を高くすることができる。また、系統電源の電力によって充電装置の発熱を大きくするため、バッテリの電力を使用することなくバッテリを温めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る充電装置が適用される充電システムを示す概念図である。
【
図2】充電装置及びバッテリの冷却時の水冷システムの動作について説明するための概念図である。
【
図3】充電装置及びバッテリの暖機時の水冷システムの動作について説明するための概念図である。
【
図4】充電装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】制御装置によるPFC回路の出力電圧制御に係る処理を示すブロック図である。
【
図6】
図5に示す出力電圧指令値算出処理における処理の例について説明するためのブロック図である。
【
図7】本実施形態に係る充電装置が適用された充電システムにより実現されるバッテリの暖機方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】本実施形態の変形例に係る出力電圧指令値算出処理における処理の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数が特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構成等は、特に明示した場合や原理的に明らかにそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を附しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0016】
1.充電システム
本実施形態に係る充電装置は、系統電源から給電される電力により車両に搭載されたバッテリを充電する充電システムに適用される。
図1は、本実施形態に係る充電装置100が適用される充電システム10を示す概念図である。ただし、
図1では、車両1に備える装置のうち、充電システム10によるバッテリ200の充電に係る装置について示し、それ以外の装置については省略している。例えば、バッテリ200から車両1の駆動モータに動力を伝達する動力伝達機構に係る装置(インバータ、パワーコントロールユニット、駆動モータ等)や、バッテリ200の充電と放電を切り替えるためのリレー等は省略している。
【0017】
車両1は、典型的には、バッテリ200に充電された電力を動力源として走行する電気自動車である。あるいは、内燃機関の出力及びバッテリ200に充電された電力を動力源として走行するハイブリッドカーである。ただし、バッテリ200は、車両1の外部の系統電源2から充電可能である。典型的には、車両1は、系統電源2の電力を供給する充電コネクタを接続可能な充電インレットを有している。
【0018】
系統電源2は、典型的には、交流電源である。例えば、電圧200V、周波数50Hz又は60Hzの商用電源である。
【0019】
充電装置100は、系統電源2から電力を受電し、バッテリ200に電力を送電することができるように構成されている。
図1では、充電装置100は、系統電源2と電力伝送路3aにより接続し、バッテリ200と電力伝送路3bにより接続している。
【0020】
電力伝送路3aは、典型的には、系統電源2の電力を供給する充電コネクタと、充電コネクタが接続する充電インレットと、充電インレットと充電装置100を接続するケーブルと、により構成される。電力伝送路3bは、一般的な電力伝送用のケーブルであって良い。
【0021】
充電装置100は、系統電源2から給電される電力を変換し、変換した電力をバッテリ200に送電することにより、バッテリ200を充電する。典型的には、充電装置100は、車両1に備えるOBC(On Board Charger)である。充電装置100は、電力変換回路と、電力変換回路に係る制御を実行する制御装置と、を備えている。充電装置100の構成については後述する。
【0022】
バッテリ200は、典型的には、再充電可能な二次電池である。例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池である。バッテリ200は、放電時において車両1に備える駆動モータに動力を供給する駆動用バッテリである。典型的には、複数の電池セルが直列に接続されてパッケージされた高電圧バッテリである。
【0023】
なお、バッテリ200は、車両1の制動時の回生エネルギーにより充電が行われるように構成されていても良い。
【0024】
車両1は、車両1に備える低電圧機器(ECU(Electronic Control Unit)、ACコンプレッサ、カーナビゲーション等)に動力を供給するための補機バッテリを備えていても良い。
【0025】
充電システム10は、充電装置100及びバッテリ200の温度を調節するための水冷システムを有している。水冷システムは、クーラント液と、流路4と、ウォーターポンプ300と、ラジエーター400と、ラジエーターファン410と、サーモスタット500と、により構成されている。ここで、クーラント液は、流路4を流れている。
【0026】
流路4は、典型的には、合成樹脂により形成されたホースである。なお、
図1において、流路4の各部分を区別するために符号に記号(a、b、・・・)を附している。
【0027】
ウォーターポンプ300は、クーラント液を循環させるためのポンプである。典型的には、流路4上に設けられた回転部材を駆動しクーラント液を循環させる遠心ポンプである。ウォーターポンプ300は、流路4fから流路4aに向けて(矢印の方向)クーラント液を送液する。
【0028】
ラジエーター400及びラジエーターファン410は、クーラント液の放熱を行うための装置である。ラジエーター400及びラジエーターファン410は、一般的なものであって良く、流路4dに流れるクーラント液の放熱を行い、放熱を行ったクーラント液を流路4eに流す。
【0029】
サーモスタット500は、クーラント液の温度に応じてクーラント液が流れる流路4を切り替えるための装置である。サーモスタット500は、典型的には、温度変化により部材が変形しバルブが開閉する装置である。ただし、クーラント液の温度を検出し、電気的に動作する装置であっても良い。
【0030】
クーラント液の温度が高い場合は、サーモスタット500は、流路4cから流路4fにはクーラント液が流れず、流路4eから流路4fにクーラント液が流れるように動作する。一方で、クーラント液の温度が低い場合は、サーモスタット500は、流路4eから流路4fにクーラント液が流れず、流路4cから流路4fにクーラント液が流れるように動作する。
【0031】
ただし、サーモスタット500は、クーラント液の温度に応じて、流路4cから流路4fに流れるクーラント液の量と、流路4eから流路4fに流れるクーラント液の量と、の比が変動するように動作しても良い。この場合、サーモスタット500は、クーラント液の温度が高くなるほど、流路4eから流路4fに流れるクーラント液の量が多くなるように動作する。
【0032】
クーラント液が充電装置100及びバッテリ200を通過して、クーラント液と充電装置100及びバッテリ200との間で伝熱が行われることで、充電装置100及びバッテリ200の温度が調節される。つまり、充電装置100及びバッテリ200は、流路4に流れるクーラント液を通過させ、クーラント液との間で伝熱を行うための構造を備えている。例えば、充電装置100は、アルミニウム等の熱伝導性の高い素材により形成され、電力変換回路を取り囲むような形状の流路を備えている。同様に、バッテリ200は、熱伝導性の高い素材により形成され、電池セルを取り囲むような形状の流路を備えている。
【0033】
ここで、充電装置100は、充電装置100を通過したクーラント液をバッテリ200に流す伝熱路110を備えている。伝熱路110は、流路4と同等の構造であって良い。クーラント液は、流路4aから充電装置100を通過した後、伝熱路110を伝ってバッテリ200に到達する。そして、バッテリ200を通過して、流路4bに流れ出る。
【0034】
すなわち、充電装置100は、充電装置100の熱をクーラント液によりバッテリ200に伝熱構造を備えている。
【0035】
水冷システムによる充電装置100及びバッテリ200の温度を調節する動作の詳細については後述する。
【0036】
充電システム10は、複数のセンサ600を備えている。センサ600には、バッテリ200の状態を検出するセンサ600a、伝熱路110に流れるクーラント液の温度を検出するセンサ600b、系統電源2の電圧を検出するセンサ600cが含まれている。ここで、センサ600aが検出するバッテリ200の状態は、バッテリ200の温度、バッテリ200の電池電圧等である。ただし、センサ600には、その他のセンサが含まれていても良い。
【0037】
充電装置100は、これらのセンサ600と互いに情報を伝達することができるように構成されている。典型的には、ワイヤーハーネスにより電気的に接続される。そして、これらのセンサ600の検出情報は充電装置100に伝達される。
【0038】
2.水冷システム
以下、
図2及び
図3を参照して、水冷システムによる充電装置100及びバッテリ200の温度を調節する動作について説明する。
図2は、冷却時の水冷システムの動作を示し、
図3は、暖機時の水冷システムの動作を示している。なお、
図2及び
図3において、矢印はクーラント液の流れを示している。
【0039】
まず、
図2を参照して、冷却時の水冷システムの動作について説明する。
図2に示すように、冷却時は、クーラント液の温度が高くサーモスタット500が、流路4cから流路4fにクーラント液が流れず、流路4eから流路4fにクーラント液が流れるように動作している状態である。
【0040】
これにより、クーラント液は、充電装置100及びバッテリ200の熱を吸熱する一方で、ラジエーター400において放熱が行われることで、充電装置100及びバッテリ200を冷却する。
【0041】
次に、
図3を参照して、暖機時の水冷システムの動作について説明する。
図3に示すように、暖機時は、クーラント液の温度が低くサーモスタット500が、流路4eから流路4fにクーラント液が流れず、流路4cから流路4fにクーラント液が流れるように動作している状態である。
【0042】
暖機時においては、
図3に示すように、クーラント液は、放熱が行われることなく循環し、充電装置100及びバッテリ200の発熱により暖機が行われる。
【0043】
バッテリ200の充電時においては、典型的には、充電装置100及びバッテリ200が冷却を必要とするまで発熱することはなく、暖機時の状態である。このとき、充電装置100が動作し、充電装置100に流れる電流により発生する銅損等によって充電装置100は発熱している。そして、充電装置100が備える伝熱構造により、充電装置100の熱がクーラント液によりバッテリ200に伝熱する。すなわち、充電装置100に流れる電流が増加し充電装置100の発熱が大きくなるほど、バッテリ200の温度は高くなる。
【0044】
本実施形態に係る充電装置100は、バッテリ200の充電時において、バッテリ200の温度が所定の閾値以下となる場合、充電装置100に流れる電流を増加させるように動作することを特徴とする。これにより、バッテリ200の温度が低い場合は、充電装置100に流れる電流が増加することで充電装置100の発熱が大きくなり、バッテリ200の温度を高くすることができる。延いては、充電時においてバッテリ200の電池容量をより高くすることができる。
【0045】
3.充電装置
図4は、充電装置100の構成を説明するためのブロック図である。充電装置100は、電力変換回路120と、制御装置130と、を備えている。
【0046】
電力変換回路120は、AC入力フィルタ121と、PFC回路122と、DCDCコンバータ123と、DC出力フィルタ124と、を含んでいる。ここで、AC入力フィルタ121、PFC回路122、DCDCコンバータ123、及びDC出力フィルタ124は、
図4に示すように、それぞれ縦続接続している。また、AC入力フィルタ121の入力側は、系統電源2と接続し、DC出力フィルタ124の出力側は、バッテリ200と接続している。
【0047】
AC入力フィルタ121は、系統電源2から給電される交流電力のフィルタリングを行う。AC入力フィルタ121は、例えば、ローパスフィルタやバイパスコンデンサにより構成される。
【0048】
PFC回路122は、AC入力フィルタ121から出力される交流電力を、力率が調整され高調波を抑制した直流電力に変換し出力する。PFC回路122は、例えば、整流回路と昇圧チョッパ回路により構成される。あるいは、PWMコンバータにより構成されていても良い。PFC回路122は、スイッチング素子を含んでおり、制御装置130によるスイッチング制御によって出力電圧の力率及び大きさが制御される。制御装置130によるスイッチング制御は、PFC回路122のスイッチング素子が制御装置130から伝達される制御信号に従って動作することにより実現される。
【0049】
DCDCコンバータ123は、PFC回路122の出力側に接続し、PFC回路122の出力電圧をバッテリ200の充電電圧に変換する。DCDCコンバータ123は、例えば、インバータと、トランスと、整流回路と、により構成される。DCDCコンバータ123は、スイッチング素子を含んでおり、制御装置130によるスイッチング制御によって出力となる充電電圧が制御される。制御装置130によるスイッチング制御は、DCDCコンバータ123のスイッチング素子が制御装置130から伝達される制御信号に従って動作することにより実現される。
【0050】
ここで、DCDCコンバータ123の入力電圧(PFC回路122の出力電圧)が小さくなるほど、DCDCコンバータ123において流れる電流、延いては、充電装置100に流れる電流が増加する。
【0051】
DC出力フィルタ124は、DCDCコンバータ123から出力される電力のフィルタリングを行う。DC出力フィルタ124は、例えば、コモンモードフィルタやバイパスコンデンサにより構成される。
【0052】
制御装置130は、取得する情報に基づいて、電力変換回路120に係る制御を実行し、制御信号を出力する。制御装置130が取得する情報には、センサ600の検出情報が含まれる。ただし、その他の情報を含んでいても良い。例えば、バッテリ200の車両1に備えるECUの制御情報を含んでいても良い。
【0053】
ここで、制御装置130は、センサ600から、バッテリ200の状態、クーラント液の温度、及び系統電源2の電圧に係る検出情報を所定の周期毎に取得し、バッテリ200の温度、クーラント液の温度、及び系統電源2の電圧を監視する(第1処理)。
【0054】
制御装置130は、メモリと、プロセッサと、を備えるコンピュータである。メモリは、プロセッサで実行可能なプログラムと、制御装置130が取得する情報やプログラムに係る種々の情報を含むデータを記憶している。プロセッサは、メモリからプログラムを読み出し、メモリから読み出すデータの情報に基づいて、プログラムに従う処理を実行する。
【0055】
制御装置130が実行する処理、より詳しくは、プログラムに従ってプロセッサが実行する処理には、PFC回路122の出力電圧の力率及び大きさの制御と、DCDCコンバータ123の出力となる電池電圧の制御と、が含まれる。
【0056】
ここで、本実施形態に係る充電装置100では、PFC回路122の出力電圧の大きさの制御(以下、単に「出力電圧制御」とも称する。)に特徴を有している。制御装置130によるPFC回路122の出力電圧制御の詳細については後述する。PFC回路122の出力電圧の力率、及びDCDCコンバータ123の出力となる電池電圧の制御については、PFC回路122及びDCDCコンバータ123の構成に応じて適当な公知技術を採用して良く、本開示において詳細な説明は省略する。
【0057】
なお、制御装置130は、複数のコンピュータにより構成される系であっても良い。また、制御装置130が実行する処理は、複数のプログラムの組み合わせに従って実行されても良い。
【0058】
4.PFC回路の出力電圧制御
以下、制御装置130によるPFC回路122の出力電圧制御について説明する。
図5は、制御装置130によるPFC回路122の出力電圧制御に係る処理(第2処理)を示すブロック図である。出力電圧制御は、電流増加判定処理131と、出力電圧指令値算出処理132と、制御信号生成処理133と、により構成される。なお、これらの処理は、プログラムの部分として実現されていても良いし、制御装置130を構成する別個のコンピュータにより実現されていても良い。
【0059】
電流増加判定処理131は、バッテリ200の温度をより高くするために、充電装置100に流れる電流を増加させるように充電装置100を動作させるか否かを判定し、判定結果を出力する。電流増加判定処理131では、制御装置130が監視するバッテリ200の温度(バッテリ温度)が、所定の閾値を超える場合に、充電装置100に流れる電流を増加させると判定する。ここで、判定結果は、典型的には、充電装置100に流れる電流を増加させると判定する場合に1となり、増加させないと判定する場合に0となるブール値である。また、所定の閾値は、プログラムにあらかじめ与えられ、実験的に最適に定められて良い。
【0060】
出力電圧指令値算出処理132は、PFC回路122の出力電圧の大きさの指令値(出力電圧指令値)を算出し出力する。出力電圧指令値算出処理132は、電流増加判定処理131における判定が否定である場合は、通常動作として与える出力電圧指令値を出力する。一方で、電流増加判定処理131における判定が肯定である場合は、クーラント液の温度(クーラント液温度)及び系統電源2の電圧(系統電源電圧)に応じて定める出力電圧指令値を出力する。以下、
図6を参照して、出力電圧指令値算出処理132における処理の例について説明する。
【0061】
まず、第1マップに基づいて、クーラント液温度に応じた電圧値(第1電圧値)を算出する(132a)。第1マップは、クーラント液温度が低いほど、より小さな第1電圧値を与えるマップである。つまり、バッテリ200の温度が適当な温度よりも低いほど、充電装置100の発熱をより大きくするように出力電圧指令値を与えようとするものである。ここで、第1マップは最適なものを採用して良い。例えば、クーラント液温度に比例して第1電圧値を与えるマップであっても良いし、クーラント液温度を変数とする所定の関数により第1電圧値を与えるマップであっても良い。あるいは、クーラント液温度に対して離散的に第1電圧値を与えるマップであっても良い。
【0062】
次に、第2マップに基づいて、系統電源電圧に応じた電圧値(第2電圧値)を算出する(132b)。第2マップは、系統電源電圧に対してPFC回路122の動作(力率の調整や昇圧等)を保障することが可能な電圧値を与えるマップである。典型的には、そのような電圧値の下限が与えられる。ただし、第2マップは、PFC回路122の特性に準じて最適に与えられて良い。
【0063】
次に、第1電圧値と第2電圧値を比較し、大きい方の電圧値(電流増加用電圧指令値)を算出する(132c)。これは、PFC回路122の動作を保障することが可能な範囲で、クーラント液温度(バッテリ200の温度)に対して十分な充電装置100の発熱を与える電圧値を定めるものである。
【0064】
最後に、判定結果に応じて、電流増加用電圧指令値又は通常動作用電圧指令値を出力電圧指令値として出力する(132d)。つまり、電流増加判定処理131における判定が否定である場合は、通常動作用電圧指令値を出力電圧指令値として出力し、電流増加判定処理131における判定が肯定である場合は、電流増加用電圧指令値を出力電圧指令値として出力する。
【0065】
ここで、通常動作用電圧指令値は、充電装置100が通常動作をする場合の出力電圧指令値を定めるものである。典型的には、系統電源電圧が高い場合であってもPFC回路122が適当に動作することができるように、PFC回路122の動作を保障することが可能な範囲で十分大きな電圧値が与えられる。つまり、通常動作用指令値は、電流増加用電圧指令値より大きな値となる。
【0066】
従って、電流増加用電圧指令値を出力電圧指令値とする場合は、通常動作用電圧指令値を出力電圧指令値とする場合に対して、PFC回路の出力電圧は低下する。延いては、充電装置100に流れる電流が増加し、充電装置100の発熱が大きくなる。
【0067】
再度
図5を参照する。制御信号生成処理133は、出力電圧指令値算出処理132が算出した出力電圧指令値を実現するように制御信号を生成する。典型的には、出力電圧指令値を目標値とするPFC回路122のスイッチング制御を行う。ここで、スイッチング制御は、PFC回路122の構成に応じて適当な公知技術を採用して良く、本開示において詳細な説明は省略する。
【0068】
制御信号生成処理133により生成された制御信号が、制御装置130からPFC回路122に伝達されることで、PFC回路122の出力電圧制御が実現される。
【0069】
5.バッテリ暖機方法
以下、
図7を参照して、本実施形態に係る充電装置100が適用された充電システム10により実現されるバッテリ200の暖機方法について説明する。
【0070】
図7は、本実施形態に係る充電装置100が適用された充電システム10により実現されるバッテリ200の暖機方法を説明するためのフローチャートである。
図7に示す処理は、充電時に充電装置100において実行され、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0071】
ステップS100において、検出情報を取得し、バッテリ200の温度、クーラント液の温度、及び系統電源の電圧を監視する(第1ステップ)。ステップS100の後、ステップS110に進む。
【0072】
ステップS110において、バッテリ200の温度が所定の閾値以下となるか否かを判定する。バッテリ200の温度が所定の閾値以下となる場合(ステップS110;Yes)、ステップS120に進む。バッテリ200の温度が所定の閾値より大きい場合(ステップS110;No)、ステップS130に進む。
【0073】
ステップS120において、充電装置100に流れる電流を増加させる(第2ステップ)。これは、前述したように、PFC回路122の出力電圧を、電流増加用電圧指令値とすることにより行われる。これにより、充電装置100の発熱が大きくなり、伝熱構造を介してバッテリ200の温度を高くすることができる。ステップS120の後、処理は終了する。
【0074】
ステップS130において、充電装置100は通常動作を行う。ステップS130の後、処理は終了する。
【0075】
6.効果
以上説明したように、本実施形態に係る充電装置100は、充電装置100の熱をクーラント液によりバッテリ200に伝熱する伝熱構造を備えている。また、充電装置100に備える制御装置130は、バッテリ200を充電中にバッテリ200の温度が所定の閾値以下となる場合、充電装置100に流れる電流を増加させる処理を実行する。これにより、充電装置100の発熱を大きくし、バッテリ200の温度を高くすることができる。延いては、充電時においてバッテリ200の電池容量をより高くすることができる。
【0076】
また、充電装置100の発熱によりバッテリ200を温めているため、系統電源2の電力を使用する一方で、バッテリ200の電力を使用することはない。さらに、PFC回路122の出力電圧を制御することにより充電装置100に流れる電流を増加させるため、PFC回路122の出力電圧に応じてDCDCコンバータ123の出力電圧を適当に制御することで、バッテリ200の充電制御を従来通り実施することができる。延いては、充電効率の低下を抑制することができる。
【0077】
なお、充電装置100が備える伝熱構造は、充電装置100の熱をクーラント液によりバッテリ200に伝熱することができる構造であれば良く、
図1において説明した伝熱構造に限定されなくても良い。例えば、冷却用の流路が、充電装置100が備える伝熱構造と独立に設けられていても良い。
【0078】
7.変形例
本実施形態に係る充電装置100は、以下のように変形した態様を採用しても良い。以下の説明において、前述した内容と重複する事項については適宜省略している。
【0079】
出力電圧指令値算出処理132において、電流増加用電圧指令値の算出は、バッテリ200の電池電圧及び充電電力指令値が考慮されても良い。ここで、充電電力指令値は、バッテリ200の充電状態や電池電圧等の情報に基づいて制御装置130が実行する処理により算出されるものであって良い。
図8は、本実施形態の変形例に係る出力電圧指令値算出処理132における処理の例を示すブロック図である。
【0080】
本実施形態の変形例においては、第3マップに基づいて、電池電圧及び充電電力指令値に応じた電圧値(第3電圧値)を算出する(132e)。第3マップは、電池電圧に対して充電電力指令値を満足することが可能な電圧値を与えるマップである。典型的には、そのような電圧値の下限が与えられる。ただし、第3マップは、PFC回路122の特性に準じて最適に与えられて良い。
【0081】
そして、本実施形態の変形例においては、第1電圧値、第2電圧値、及び第3電圧値を比較し、大きい方の電圧値を電流増加用電圧指令値とする(132c)。
【0082】
このように変形した態様を採用することで、充電装置100に流れる電流を増加させる場合であっても、充電電力指令値を満足する範囲でPFC回路122の出力電圧を与えることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 車両
2 系統電源
10 充電システム
100 充電装置
110 伝熱路
120 電力変換回路
121 AC入力フィルタ
122 PFC回路
123 DCDCコンバータ
124 DC出力フィルタ
130 制御装置
200 バッテリ
300 ウォーターポンプ
400 ラジエーター
410 ラジエーターファン
500 サーモスタット
600 センサ